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イノベーション(その4)(日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋、一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは) [イノベーション]

イノベーションについては、2019年1月31日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋、一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは)である。

先ずは、2020年5月24日付け東洋経済オンラインが掲載したマッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー の野崎 大輔氏と同社 アソシエイトパートナーの 田口 弘一郎氏による「日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/346923
・『日本から生まれた新たな製品やサービスが世界を席巻する──。かつて度々耳にしたそうした輝かしい報道を聞かなくなって久しい。企業も研究機関も、そして個人も日々努力を重ねているのだが、頓挫したり空回りしたり、思ったような成果が出せないケースが多く見られる。その問題の真因はどこにあるのか。昨年、『マッキンゼー ホッケースティック戦略成長戦略の策定と実行』を監訳した野崎大輔氏と、一部翻訳を担当した田口弘一郎氏が、新規事業において日本企業が陥りがちな罠とその処方箋を解き明かす』、興味深そうだ。
・『研究開発費自体は増えている  近年、日本企業のイノベーション力が低下しているという声をよく聞くようになった。例えば中国に特許出願数や論文の被引用数で後れを取り始めたというのはその証左であろう。 リチウムイオン電池のように、革新的な技術を開発して世界を席巻するということについては強さを誇ってきた日本企業であるはずだが、今何が起きているのか。そこには、日本ならではの課題が存在しているとわれわれは考えている。 本稿では80年代からの長期にわたるデータ分析と共に、これまで数多くのクライアントをご支援してきた経験から、日本企業がイノベーションを推進するうえで陥りがちな罠と、今後必要な取り組みについて考えてみたい。 まず、日本の研究開発に対するリソースがどう推移してきたか見てみたい。 1987年から2019年までの日本企業における研究開発費売上高比率と企業研究者の人数を見ると、実は80年代後半から今に至るまで、基本的には日本企業の研究開発にかけるリソースは継続的に増加してきている。 研究開発費売上高比率では、1987年に2.8%だったものが継続的に増加し2017年では3.9%、企業における研究者も1987年に26万人だったものが2017年では50万人近くまで、年率2%程で継続的に増えてきている。 では、なぜ特許出願数などで中国に後れを取り始めているのか。単純に、中国の研究開発費や研究者の増加が日本よりも急激だからであろうか』、「なぜ特許出願数などで中国に後れを取り始めているのか」、不思議だ。
・『課題は研究者1人当たりの生産性  ここで、日本とアメリカ・中国の間で研究開発の生産性の比較を行ってみたい。あくまでも一つの指標ではあるが、研究者1人当たりの研究開発費(インプット)と、研究者1人当たりの特許出願件数(アウトプット)がどのように推移してきたか、それぞれの国で見ていく。横軸に1人当たり研究開発費(インプット)、縦軸に1人当たり特許出願件数(アウトプット)をプロットして時系列で見てみると、面白いことが見えてくる。 (出所:OECD Stat, WIPO Statistics database より筆者作成) まず、中国について。2000年代前半まで1人当たり研究開発費は10万ドル未満、特許出願件数も0.1件程度であったが、2009年に1人当たり研究開発費が15万ドルを超え、特許出願数0.2件と倍増したあたりから、毎年1人当たり研究開発費と1人当たり特許出願件数がきれいに相関を持って増加し、2017年では1人当たり研究開発費は約28万ドル、特許出願件数は0.75件程度となり、インプット・アウトプットともに日本の水準を超えている。 アメリカについては、1980年代に1人当たり研究開発費は20万ドル未満で特許出願件数も約0.1件程度であったが、その後継続的にインプットもアウトプットも増加し、2016年では1人当たり研究開発費が38万ドル程度、特許出願件数が0.4件程度と増加してきている。 つまり、アメリカでも中国同様、緩やかではあるものの、基本的にはインプットが増えればアウトプットが増える、という相関が維持されている。 一方日本はどうか。1980年代前半までは1人当たり研究開発費が10万ドル未満、1人当たり特許出願件数は0.6件程度であったが、そこから2000年代前半まで、1人当たり研究開発費が継続的に増加し17万ドル程度となり、1人当たり特許出願件数もそれに伴って0.8件程度まで増加していった。 つまり2000年代前半までは、日本もインプットを増やすほどアウトプットが増えていたのである。 ところが2000年代後半からは様子が大きく変わる。2017年までに1人当たり研究開発費は27万ドル程度まで増加したが、1人当たり特許出願件数はむしろ減少し、0.7件を下回っている。1人当たり研究開発費が10万ドル増えたにもかかわらず、特許出願件数が減っている。 つまり、インプットを増やしてもアウトプットが増えない、むしろ減ってしまうという壁に突き当たってしまっているのである。) もちろん、特許出願数はイノベーション力の1つの指標にすぎず、これはあくまでも1つの可能性にすぎないが、日本のイノベーション力の低下は、人員数や資金の問題ではなく、研究者1人当たりの生産性の低下がボトルネックになっていることが可能性として考えられる。 仮にそうであった場合、なぜこういった生産性の低下が起こってしまっているのであろうか』、「日本のイノベーション力の低下は、人員数や資金の問題ではなく、研究者1人当たりの生産性の低下がボトルネックになっていることが可能性として考えられる」、その原因は何なのだろう。
・『変わらない研究領域  こういった生産性低下の原因の1つのヒントとなるのが、日本の研究開発領域の硬直性である。日本の研究開発領域は、過去20年ほとんど変わっていない。 アメリカや中国は、過去20年間で大きく研究開発分野をシフトさせてきた。例えば特許登録件数の分野別比率(8技術分野)を見ると、アメリカは2000年から2018年の間で、特許登録件数に占める情報通信分野の割合が16%から29%へほぼ倍増し、代わりに化学や機械工学といった分野の比率が大きく下がった。 一方日本は、構成比率が最も大きく増減した分野でも、輸送機械分野の7%から10%へ移行した、約3%ポイントのみである。それ以外の分野に至っては、構成比率は3%ポイント未満しか増減していないのである。19年間という期間を考えれば、むしろ驚くべき硬直性である。また、毎年総務省が行っている科学技術研究調査という研究開発に関するサーベイの結果を見ても、少なくともここ10年間、研究者の専門分野構成はほとんど変わっていないことがわかる。 これは、ある程度成熟してしまった研究領域の中でさらに深掘りをし続けているということでもあるし、世界のニーズが大きくシフトしてきている中で、新たなニーズが生まれ多くのイノベーションが求められている領域での勝負ができていないということかもしれない。 こういったところに、日本企業の研究開発における生産性低下の一因があるのではないだろうか。つまり、アウトプットとしての事業領域がシフトできていない、新たなニーズをうまくとらえた事業を展開できていないために、研究開発も既存の領域にとどまり、結果的に生産性が低下してきてしまっているのではないか。 実際、携帯電話の顔認証機能など、先に基礎技術としての研究開発で成果は出していても、結局消費者のニーズをうまく捉えて製品化・事業化したのは海外企業であった、という例も見られる。 これを解決するためには、そもそもの日本企業の事業領域シフトを加速させることが重要である。 しかし、ここに日本特有の難しさが存在している。) たとえば上場企業の新陳代謝は、アメリカに比べ日本は非常に緩やかである。2017年の日経新聞調査によれば、ニューヨーク証券取引所の上場企業における平均寿命(上場維持年数の平均値)は15年であるのに対し、日本取引所上場企業の平均寿命は89年。経営の安定性が高い一方で、新陳代謝が進みにくく、新たな産業領域の開拓は苦手な傾向にある。 こういった事業のシフトを加速すること、そして、事業上のニーズに合わせて研究開発の方向性を調整し生産性を高めていくためには、まずそのかじ取りを行うマネジメント側が変わっていく必要があるのではないか。 既存企業の中において、新たな事業構築にかかわるマネジメントの行動様式を整え、そして組織としてのスキルを獲得すること(リスキリング)で、企業の新陳代謝を高め、新たな事業領域を切り開くことができるのではないだろうか』、「アメリカや中国は、過去20年間で大きく研究開発分野をシフトさせてきた。例えば特許登録件数の分野別比率(8技術分野)を見ると、アメリカは2000年から2018年の間で、特許登録件数に占める情報通信分野の割合が16%から29%へほぼ倍増し、代わりに化学や機械工学といった分野の比率が大きく下がった。 一方日本は、構成比率が最も大きく増減した分野でも、輸送機械分野の7%から10%へ移行した、約3%ポイントのみである。それ以外の分野に至っては、構成比率は3%ポイント未満しか増減していないのである。19年間という期間を考えれば、むしろ驚くべき硬直性である」、本当に「驚くべき硬直性」だ。「ニューヨーク証券取引所の上場企業における平均寿命(上場維持年数の平均値)は15年であるのに対し、日本取引所上場企業の平均寿命は89年。経営の安定性が高い一方で、新陳代謝が進みにくく、新たな産業領域の開拓は苦手な傾向にある。 こういった事業のシフトを加速すること、そして、事業上のニーズに合わせて研究開発の方向性を調整し生産性を高めていくためには、まずそのかじ取りを行うマネジメント側が変わっていく必要があるのではないか」、その通りなのだろう。
・『日本企業の新規事業構築「5つのポイント」  特に近年、我々のクライアントに対しても、こういったリスキリングと新規事業創出の具体的支援を並行して進めるケースが増えてきている。さまざまなご支援をさせていただく中で、我々は特に日本企業のマネジメントが陥りがちな罠がいくつか存在すると考えている。 今回は、その中でも主な5つをご紹介しつつ、それぞれにどう対処すべきか考えてみたい。 (1)「製品開発」の発想で「事業開発」を推進しない(これまで既存事業を長く続けてきた日本企業は、「製品開発」と「事業開発」が根本的に異なるものであることを意識しなければならない。 例えば既存事業において、製品開発の中止は稀にしか起きない憂慮すべき事態である。新型車の開発は遅延こそ起きるが、中止されることは比較的まれである。 一方で新規事業についてはどうか。事業開発は、そのほとんどが失敗する、もしくはピボット(注)が必要になるというのが前提である。VCの事業ポートフォリオは平均30社以上で、その内1?2社がIPOすれば成功であり、それらの事業もIPOまでに3~4回程度のピボットを経験することが普通であると言われている。それに対し、例えば自動車のような製品開発の発想だと、30の製品開発を始めて、1製品でもヒットすればいい、しかも途中で大きな設計変更が3?4回生じるというのは通常許容されないだろう。 新規事業開発は製品開発と違い、そもそも顧客のニーズが存在するのか、事業モデル・マネタイズモデルが機能するのか不明確なところからスタートするため、当然確度は低くなる。複数の案件を、そのほとんどがうまくいかない前提で、顧客ニーズの確度を検証しつつ、頻度高くポートフォリオ管理を実施していくことが求められる。 また製品開発は、ある技術やサービス単品の開発をロードマップに沿って行うことが多いが、事業開発は事業として10年後、20年後の広がりを見据えて行う。仮にロードマップ通りに製品やサービスが開発されて単体として成功しても、事業としての長期的な展開に対するビジョンがないと、散発的な新規事業の一つとして数年で成長が止まってしまうことが多い。この製品開発から事業開発への考え方の切り替えが、リスキリングの重要な一歩となる』、「VCの事業ポートフォリオは平均30社以上で、その内1?2社がIPOすれば成功であり、それらの事業もIPOまでに3~4回程度のピボットを経験することが普通であると言われている。それに対し、例えば自動車のような製品開発の発想だと、30の製品開発を始めて、1製品でもヒットすればいい」、なるほど。
(注)ピボット:本来「回転軸」の意味ですが、最近ではアメリカのシリコンバレーなどのベンチャー企業で「方向転換」「路線変更」といった意味で盛んに使われるように(HRpro)。
・『(2)既存事業の物差しで新規事業を見ない  上記のようなものの見方の違いを頭ではわかっても、いざ同じ経営会議の俎上にのせて同じメンバーで議論をしてしまうと、必然的に同じ物差しに寄せるバイアスが働くのは人の性といえる。場合によっては新規事業が経営企画部の管掌であったり、新規事業担当役員が既存事業と兼任であったりして、どうしても既存事業のKPI(重要業績評価指標)や成功確率やスピードに引きずられてしまう。) 日本企業、特に産業の中心を担ってきた自動車などの製造業は既存事業の確度が比較的高いことが多い。もちろん、そういった業界でも不確定性は常に存在するが、生産性・効率性等オペレーショナルなKPIをきっちりとやり切ればそれなりの成果は見込める。 一方で新規事業については、ニーズそのものが不透明で、何がKPIかも決まっておらず、わずかに垣間見える顧客ニーズの一端といった定性的な要素に基づいて頻度高い経営判断を行うことが求められる。 もちろんこういったことができるように既存経営陣に対してリスキリングを進めていく必要はあるが、同じ土俵・メンバーで議論している限り、リスキリングの進みはどうしても遅くなってしまう。 新規事業については組織を分け、担当役員も完全に分離した上で、新規事業に係る意思決定は既存の経営会議と分けて実施をするのがあるべき姿といえる。そして新規事業担当役員については、社内に適任者がいない場合、外部登用も積極的に検討すべきである』、「既存経営陣に対してリスキリングを進めていく必要はあるが、同じ土俵・メンバーで議論している限り、リスキリングの進みはどうしても遅くなってしまう。 新規事業については組織を分け、担当役員も完全に分離した上で、新規事業に係る意思決定は既存の経営会議と分けて実施をするのがあるべき姿といえる」、なるほど。
・『既存事業の物差しも必要  一方で、いつかは新規事業も既存事業の物差しで評価していくことが必要となってくる。例えばある大手電機メーカーの社内ベンチャー制度では、立ち上げた新規事業に対して社内の他部門から引き合いが来た段階で、既存事業部に事業ごと引き渡すということを行っている。 また、営業キャッシュフローが黒字になるタイミングをマイルストーンとして事業部として独立させ、それ以降は既存事業と同等の評価指標で見るといった工夫も考えられるであろう』、「いつかは新規事業も既存事業の物差しで評価していくことが必要となってくる。例えばある大手電機メーカーの社内ベンチャー制度では、立ち上げた新規事業に対して社内の他部門から引き合いが来た段階で、既存事業部に事業ごと引き渡すということを行っている。 また、営業キャッシュフローが黒字になるタイミングをマイルストーンとして事業部として独立させ、それ以降は既存事業と同等の評価指標で見るといった工夫も考えられる」、なるほど。
・『(3)新規事業の成功体験を持つ外部人材の活用  新興国の台頭やデジタル化の進展、CASE(自動車業界に大きな影響を与えつつある4つのトレンド:Connected, Autonomous, Shared, Electrificationの頭文字を取ったもの)など破壊的トレンドによって日本企業が本格的に新規事業に取り組み始めたのは比較的最近のことである。 その中で、まだ新規事業の創出に成功したプレーヤーは多くはない。ほとんどの企業で、新規事業の成功体験がないのである。よって、社内でリスキリングを推進できるコーチ役となる人材は通常ほぼいない。 また、その中で、概念的に見るべきKPIや組織体制など他社のベストプラクティスを模倣しても、具体的なKPIの粒度や顧客ニーズの掘り起こし方など、成功体験を持ち肌感覚でわかる人材がいなければ成功確度は当然下がってしまう。 リスキリングを加速させるためには、起業経験・VC経験を持つ社外の人材をアドバイザーとして起用したり、短期契約でも新規事業創出のプロセスを一緒にひと回ししてもらい、社内の人材に実体験を蓄積したりすることが効果的である。一部の国内メーカーでは、既に社外有識者をアイデア創出等の取り組みにおいて積極的に活用し始めている』、「リスキリングを加速させるためには、起業経験・VC経験を持つ社外の人材をアドバイザーとして起用したり、短期契約でも新規事業創出のプロセスを一緒にひと回ししてもらい、社内の人材に実体験を蓄積したりすることが効果的である」、なるほど。
・『(4)リスキリングを組織として消化する  せっかく外部人材を登用してリスキリングを推進しようとしても、実際のオペレーションや、人材の評価・育成の仕組みが既存のままだと、組織としての慣性力(イナーシャ)が働き、リスキリングは停滞するか、以前の状況に簡単に戻ってしまう。 これを避けるためには、上述のようなオペレーションや、人材の評価・育成を新規事業に即したものに変えていき、リスキリングを継続させる仕組みを組織として構築する必要がある。 このためには、上述のように新規事業組織を分けるとともに、そこに新規事業スキルを保有する人材、新たな研究開発領域の知見を持つ人材を集約し、オペレーションや人材評価・育成を既存事業と分けて実施することが重要である。) たとえばある国内の鉄道会社では、そもそも採用の時点で既存の鉄道事業部門と電子マネーなど新規事業を担当する部門を分け、人事制度も既存事業とは分けている。 このように、新規事業として独立した人事制度・採用枠を作り、必要な人材がクリティカルマスを超えるように、新卒・中途双方での採用を行うべきである。 そして、新規事業を推進できる魅力的な人材を採用できるだけの柔軟な処遇や、新規事業からのキャリアパスが描けることなど、人事制度上の工夫が必須である。 人事制度の独立が必須(このように、新規事業は新規事業として、独立した人事制度・採用枠を作り、必要な人材がクリティカルマスを超えるように、新卒・中途双方での採用をすべきである。そのためには、新規事業を推進できる魅力的な人材を採用できるだけの柔軟な処遇や、新規事業からのキャリアパスが描けることなど、人事制度の独立が必須である』、「新規事業組織を分けるとともに、そこに新規事業スキルを保有する人材、新たな研究開発領域の知見を持つ人材を集約し、オペレーションや人材評価・育成を既存事業と分けて実施することが重要」、「新規事業として独立した人事制度・採用枠を作り、必要な人材がクリティカルマスを超えるように、新卒・中途双方での採用を行うべきである」、なるほど。
・『(5)新規事業=ゼロイチというバイアスの克服  これまで見てきたように、新規事業といっても、本当にゼロから事業を創出しスケールアップさせることは、確率が低く忍耐を伴い、見通しも不透明なものである。 1つの手法として、プログラマティックなM&Aを活用して新たな領域にどう入っていくかを検討することも重要な新規事業のアプローチである。 特に、対象とする事業領域の人材や組織をそのまま手に入れることが可能であるため、上記で述べたような陥りがちな罠はM&Aという手法を取ることによってある程度回避できる。 ゼロイチからの新規事業を検討する前に、どういった新規事業を目指すのか、本当にM&Aではなくゼロからの立ち上げを目指す必要があるのかを具体的に検討したうえで新規事業立ち上げの手法を選択すべきである。 そして本当にゼロから立ち上げる新規事業を目指すのであれば、経営陣として覚悟を持ち、外部役員の登用や人事制度の独立など、これまで述べてきたようなドラスティックなやり方を取ってリスキリングも並行して進めていくことが必要となる』、「ゼロイチからの新規事業を検討する前に、どういった新規事業を目指すのか、本当にM&Aではなくゼロからの立ち上げを目指す必要があるのかを具体的に検討したうえで新規事業立ち上げの手法を選択すべきである。 そして本当にゼロから立ち上げる新規事業を目指すのであれば、経営陣として覚悟を持ち、外部役員の登用や人事制度の独立など、これまで述べてきたようなドラスティックなやり方を取ってリスキリングも並行して進めていくことが必要となる」、やはり中途半端なやり方は失敗する可能性が高いようだ。

次に、2021年9月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した野村マネジメント・スクールによる「一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282773
・『今日の企業にとって最も重要な課題、それは継続的なイノベーションを起こすことだといっても過言ではない。では、それを可能にする企業文化をいかに生み出すか、すなわちイノベーションを促す企業文化へと変革できるか。さらに、危機に備えビジネスモデル変革に取り組むための経営チームのあり方とは――。書籍『有事の意思決定 一枚岩の経営チームがリードする』の教授陣にさまざまな視点から意見を伺った。連載第2回は、イノベーションに挑戦する企業経営者の行動と意思決定の指針を提示する』、「有事の意思決定」とは興味深そうだ。
・『平時の「思い込み」の排除が従業員の創造性を解放する(マイケル・ロベルト教授 (ブライアント大学カレッジ オブ ビジネス) これまで、よりイノベーティブな組織を作るには、何かを加えよというものが大半でした。つまり、創造性の豊かな人を採用しろ、新規事業担当組織を作ってスピンアウトしろ、スカンクワークの仕組みを導入しろといったことでした。 しかし、多くの企業がこれらのことを実施しているにもかかわらず、うまくいっていません。その原因は、組織に根付いた「組織的な思い込み」にあるのです。何かを加えるよりも先に、取り除く必要があるのです。 一つの例として、多くの企業が特別研究室のようなものを設置していますが、私は、これを廃止せよといっているのではありません。イノベーターは、単に集中だけしているのではなく、時には「あえて集中しない」ことも必要ということです。集中しないとは、人々の視野を広げ、目先の問題から一寸距離を置いてみるといったことです。だから、これらの活動を単に止めるのではなく、運営方法を見直せと言うことなのです。 経営者の仕事は、言ってみればゴールまでの道のりをきれいに片付けることであって、創造性豊かな賢い人々に、何をしろなどと指示する必要はないのです。 同様に必ずしもチームメンバーに答えを与えてそれを実行しろと指示するのではなく、チームを一つにまとめ、問題にアプローチする視角を考え、分析を求めるのが良いリーダーだと言えます。 日本の経営者だけに限りませんが、世界中の経営者の喫緊の課題は、今回のパンデミックや、思いがけない競争相手の出現などによって不意打ちを受けたとき、「俊敏に対応する能力」を構築することではないでしょうか。 イノベーションを成し遂げる上で、実験やプロトタイピングはとても重要で、多くの企業で実践項目に取り入れられているのですが、企業文化に根付いている「完璧主義」が問題となるのです。 実験やプロトタイピングに長けているということは言い換えれば、完璧でないことを受け入れることです。だが、これは難しい。 頭では実験やプロトタイピングの重要性を理解しても、実際に行おうとすると完璧主義が邪魔をしてしまいます。 最初から完璧なものを作ろうとすると、イノベーションのプロセスを遅らせることになります。だから、「早期に、何度でも、荒削りでも」を開発のモットーにした会社が生き残る。ある段階では完璧でないことを受け入れなければならないということです』、「思いがけない競争相手の出現などによって不意打ちを受けたとき、「俊敏に対応する能力」を構築することではないでしょうか。 イノベーションを成し遂げる上で、実験やプロトタイピングはとても重要で、多くの企業で実践項目に取り入れられているのですが、企業文化に根付いている「完璧主義」が問題となるのです。 実験やプロトタイピングに長けているということは言い換えれば、完璧でないことを受け入れることです。だが、これは難しい。 頭では実験やプロトタイピングの重要性を理解しても、実際に行おうとすると完璧主義が邪魔をしてしまいます。 最初から完璧なものを作ろうとすると、イノベーションのプロセスを遅らせることになります。だから、「早期に、何度でも、荒削りでも」を開発のモットーにした会社が生き残る。ある段階では完璧でないことを受け入れなければならないということです」、なるほど。
・『実験重視の企業文化構築に向けて(ステファン・トムキ教授(ハーバード・ビジネス・スクール)) 実験重視の企業文化を既存企業が構築するのは、おそらく最も挑戦的な課題と言えます。 まず、「好奇心を啓発する」ことです。組織の底辺からトップリーダー層に至るまで、「サプライズ(驚き)」を価値あるものだと考えるようにならなければなりません。 サプライズの価値を金額で表すのは、コストの数値化に比べて難しいです。これから何が起こるか分からないことを数値化しようとするからです。 したがって、企業文化として、組織全体がサプライズを良いものとみなすようになる必要があります。このようなマインドセットが定着すれば、好奇心が組織全体に広がり、人々は失敗をコストのかかる過ちではなく、学習機会と捉えるようになります。 二つ目に、「データが意見に勝るという原則に固執する」ことです。組織の意思決定が、意見や直感に基づいてなされると、どうしても組織のヒエラルキーが影響を及ぼすようになります。上司の意見が部下のそれより重視されるとか。 先端企業においてすら、10の実験のうち、8〜9は予想された結果を生み出しません。逆に言えば、全体の10~15%の実験しか「成功」しないのです。 つまり、我々はほとんどの場合、間違っているんだということを受け入れなければならないのです。だが、それが難しいのです。 だからこそ実験をすべきなのですが、事実よりも意見に重きが置かれたり、ヒエラルキーが大きな影響を与えたりする組織では、それらが邪魔をしてしまいます。 日本企業の常にカイゼンしようという姿勢は、広い意味で科学的手法に基づいており、QCサークルなどの活動に由来する慣行が長く行われてきたのはプラスです。 しかし、コンセンサス重視の企業文化は、障害となる可能性があります。 全ての意思決定、全ての実験にコンセンサスを求めるとなると、プロセスに時間がかかりすぎてしまいます。そもそも結果の分からないことにコンセンサスを得ることは無理です。だからリスク回避になりがちです。コンセンサスは意思決定後の行動を迅速化しますが、実験という環境では、全てを遅らせることになり、実施の障害になりかねません。 イノベーションは、不確実性を機会に変える行為です。不確実性を排除しようとすると、どうしてもコストサイド重視になってしまいます。オペレーションの効率向上は達成できますが、イノベーションからは遠ざかってしまいかねません』、「コンセンサスは意思決定後の行動を迅速化しますが、実験という環境では、全てを遅らせることになり、実施の障害になりかねません。 イノベーションは、不確実性を機会に変える行為です。不確実性を排除しようとすると、どうしてもコストサイド重視になってしまいます。オペレーションの効率向上は達成できますが、イノベーションからは遠ざかってしまいかねません」、日本企業の弱味のようだ。
・『ビジネスモデルイノベーションで競走優位に立つ(ラモン・カサデサス=マサネル教授(ハーバード・ビジネス・スクール)) 多くの企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に挑戦し、苦労しています。当初意図していたような結果がもたらされていない原因についての一つの仮説は、BMI(ビジネスモデル・イノベーション)一般に言える、諸活動のコーディネーション問題が生じている可能性です。 デジタル化した時にうまく機能するような諸活動の調整のあり方は、それ以前のノンデジタルの時のそれとはかなり異なっているのかも知れません。両方の世界でうまく機能させるというのは簡単ではないでしょう。 ただし企業が、傘下にある異なるビジネスモデルを共存させることは可能です。 私がBMIに関連して、日本の経営者にお伝えしたいことは次の4点です。 第1に、「進んで実験せよ」ということです。特に実験が安価に行え、何がうまく行き何がうまく行かないかを判断する上での参考になるような状況においてはです。 第2に、「不確実性を歓迎し、リスクを取れ」と申し上げたい。 第3には、「失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまく行かなかった人々に汚名を着せるな」が挙げられます。 そして最後に、「異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなし得る、視野を広げる貢献を過小評価するな」ということを指摘したいと思います。 多様性や相違を受容することは、単に社会的責任であるばかりではなく、自社の競争優位性を高めるイノベーション重視の企業文化を育むことになります』、「私がBMIに関連して、日本の経営者にお伝えしたいことは次の4点です。 第1に、「進んで実験せよ」ということです・・・第2に、「不確実性を歓迎し、リスクを取れ」と申し上げたい。 第3には、「失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまく行かなかった人々に汚名を着せるな」が挙げられます。 そして最後に、「異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなし得る、視野を広げる貢献を過小評価するな」ということを指摘したい」、なるほど。
・『カイゼンから、製品やサービスのカクシンへ(ロバート・オースティン教授(ウェスタン大学アイビー・ビジネス・スクール)) トランスフォーメーションと呼ぶような大きな変革を成し遂げることは難しいものです。今日リーダーにとって、最も困難な課題だと言えるかも知れません。社会が大きく変わっていますので、組織変革は不可避にもかかわらずです。 ここで、2種類の変化を混同しないように注意を喚起したいと思います。一つ目の種類の変化は、自分自身が起こしたのではないものです。世界情勢など自社を取り巻く環境とか競争相手がもたらしたものです。二つ目はリーダー自身が起こし、そちらへ組織を向かわせようとする変化です。 どちらの変化も対処することが難しいです。外から与えられた変化への対応は喫緊の課題です。なぜなら、変化に対応しなければ生き残れないかもしれないからです。 多くの日本企業は、今話題のマイケル・タッシュマン教授らの「両利き性」の議論でいうところの探査(exploration)よりも深耕(exploitation)モードに安住していたように思います。カイゼンはこのモードにとても適合的ですが、カクシンはそうではありません。 日本企業にとってプロセス・イノベーションはより自然にできるものの、「両利き性」を維持してラディカルなイノベーションを起こし、顧客やビジネスモデルに大きな変革をもたらすことはそうでもないということです。 昔、日本の経営者に「革新ということばから想起されるのはプロセス・イノベーションですか製品やサービスのイノベーションですか」と問うたところ、40社中39社の人がプロセス・イノベーションだと回答しました。 もちろんプロセス・イノベーションが悪いわけではなく、効率性向上は日本企業が長年にわたって得意としてきたことです。ただ、プロセス・イノベーションは顧客に対し、価格引き下げなどを通じた間接的なインパクトしか与えないのに対し、ラディカルなイノベーション、あるいはBMI(ビジネスモデル・イノベーション)はより直接的なインパクトがあります。 顧客にとってただ間接的に実感するイノベーションなのか、喜んで対価を支払おうとするイノベーションなのかには差があります。日本企業は後者のことをもっと考えるべきではないかと思います』、「プロセス・イノベーションが悪いわけではなく、効率性向上は日本企業が長年にわたって得意としてきたことです。ただ、プロセス・イノベーションは顧客に対し、価格引き下げなどを通じた間接的なインパクトしか与えないのに対し、ラディカルなイノベーション、あるいはBMI・・・はより直接的なインパクトがあります。 顧客にとってただ間接的に実感するイノベーションなのか、喜んで対価を支払おうとするイノベーションなのかには差があります。日本企業は後者のことをもっと考えるべきではないかと思います」、同感である。
・『価値創出の手段としてのM&A(カール・ケスター教授(ハーバード・ビジネス・スクール)) 日本企業は国内企業同士のM&Aだけでなく海外企業を対象とするM&Aも相当数実施するようになっていると思います。しかし、日本における大規模M&Aのほとんどは、買収側の企業が変わるというよりも、被買収側の価値創造を目的とするにとどまるものが多かった印象です。 さらに驚いたのは、買収後の統合がほとんど進んでいない事例が多かった点です。価値を創出しているかどうかをM&Aの成功の基準として考えるのであれば、なかなか成功事例を探すのは難しいと言えるでしょう。 長期的なM&Aの成功を分析すること、すなわち価値創造の如何を測定することは非常に難しいという点です。 日本企業のM&Aでも、買収後の減損件数が3割程度あることなどから考えて、一般にM&Aから価値創造を実現するのは難しいと言えるでしょう。 M&Aの買収時のプロセスにおいて、日本企業が改善すべき点としては、資本コスト(特にエクイティのコスト)の意識を高める必要があることが挙げられます。 日本企業は長らく資金調達を銀行に頼っていたこともあり、資本コストの認識が十分でないといえます。価値をどうやって創造し、計測するかの根本に資本コストの概念があるので、その出発点があやふやだということは大きな問題です。 近年、日本でも、資本市場側との対話が重視されていると聞いていますが、この動きは妥当な資本コストが形成されるという意味で、非常に良い流れであると考えています。 ところで、私は、ESGは現時点ではまだアセットマネジメント会社のマーケティングギミック以上のものではないと考えています。そもそも定義も不明確ですし、それが投資パフォーマンスを向上させるという証拠は見られません。 私が野村マネジメント・スクールで行っている講義では、NPVに基づく投資判断は、少なくとも株主の投資ホライズンの選好とは無関係に使えるということを論証しています。つまり、この枠組みで投資判断すれば、長期投資を考える若い株主の利益も、年金を補完するものとして比較的短期のリターンを求める高齢者の利益も満たすことが出来るのです。 しかし、ESGではそういったことを示すことはできません。ましてやESGの目的である様々なステークホルダーの利益のバランスの最適化ができるとは言えないのです。 一方で、ESGのトレンド自体は不可避な流れになっていることも事実です。今後、機関投資家は、ますます大きな存在となり、その市場における影響力が甚大であることを考えなければなりません。ESGを無視した経営をしている企業は、資金調達面で不利な状況に追い込まれるおそれがあるでしょう』、「日本企業のM&Aでも、買収後の減損件数が3割程度あることなどから考えて、一般にM&Aから価値創造を実現するのは難しいと言えるでしょう。 M&Aの買収時のプロセスにおいて、日本企業が改善すべき点としては、資本コスト(特にエクイティのコスト)の意識を高める必要があること」、「今後、機関投資家は、ますます大きな存在となり、その市場における影響力が甚大であることを考えなければなりません。ESGを無視した経営をしている企業は、資金調達面で不利な状況に追い込まれるおそれがあるでしょう」、同感である。 
タグ:「アメリカや中国は、過去20年間で大きく研究開発分野をシフトさせてきた。例えば特許登録件数の分野別比率(8技術分野)を見ると、アメリカは2000年から2018年の間で、特許登録件数に占める情報通信分野の割合が16%から29%へほぼ倍増し、代わりに化学や機械工学といった分野の比率が大きく下がった。 一方日本は、構成比率が最も大きく増減した分野でも、輸送機械分野の7%から10%へ移行した、約3%ポイントのみである。 「日本のイノベーション力の低下は、人員数や資金の問題ではなく、研究者1人当たりの生産性の低下がボトルネックになっていることが可能性として考えられる」、その原因は何なのだろう。 「なぜ特許出願数などで中国に後れを取り始めているのか」、不思議だ。 『マッキンゼー ホッケースティック戦略成長戦略の策定と実行』 田口 弘一郎氏による「日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋」 野崎 大輔氏 東洋経済オンライン イノベーション (その4)(日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋、一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは) それ以外の分野に至っては、構成比率は3%ポイント未満しか増減していないのである。19年間という期間を考えれば、むしろ驚くべき硬直性である」、本当に「驚くべき硬直性」だ。「ニューヨーク証券取引所の上場企業における平均寿命(上場維持年数の平均値)は15年であるのに対し、日本取引所上場企業の平均寿命は89年。経営の安定性が高い一方で、新陳代謝が進みにくく、新たな産業領域の開拓は苦手な傾向にある。 こういった事業のシフトを加速すること、そして、事業上のニーズに合わせて研究開発の方向性を調整し生産性を高めていくためには、まずそのかじ取りを行うマネジメント側が変わっていく必要があるのではないか」、その通りなのだろう。 「VCの事業ポートフォリオは平均30社以上で、その内1?2社がIPOすれば成功であり、それらの事業もIPOまでに3~4回程度のピボットを経験することが普通であると言われている。それに対し、例えば自動車のような製品開発の発想だと、30の製品開発を始めて、1製品でもヒットすればいい」、なるほど。 (注)ピボット:本来「回転軸」の意味ですが、最近ではアメリカのシリコンバレーなどのベンチャー企業で「方向転換」「路線変更」といった意味で盛んに使われるように(HRpro)。 「既存経営陣に対してリスキリングを進めていく必要はあるが、同じ土俵・メンバーで議論している限り、リスキリングの進みはどうしても遅くなってしまう。 新規事業については組織を分け、担当役員も完全に分離した上で、新規事業に係る意思決定は既存の経営会議と分けて実施をするのがあるべき姿といえる」、なるほど。 「いつかは新規事業も既存事業の物差しで評価していくことが必要となってくる。例えばある大手電機メーカーの社内ベンチャー制度では、立ち上げた新規事業に対して社内の他部門から引き合いが来た段階で、既存事業部に事業ごと引き渡すということを行っている。 また、営業キャッシュフローが黒字になるタイミングをマイルストーンとして事業部として独立させ、それ以降は既存事業と同等の評価指標で見るといった工夫も考えられる」、なるほど。 「リスキリングを加速させるためには、起業経験・VC経験を持つ社外の人材をアドバイザーとして起用したり、短期契約でも新規事業創出のプロセスを一緒にひと回ししてもらい、社内の人材に実体験を蓄積したりすることが効果的である」、なるほど。 「新規事業組織を分けるとともに、そこに新規事業スキルを保有する人材、新たな研究開発領域の知見を持つ人材を集約し、オペレーションや人材評価・育成を既存事業と分けて実施することが重要」、「新規事業として独立した人事制度・採用枠を作り、必要な人材がクリティカルマスを超えるように、新卒・中途双方での採用を行うべきである」、なるほど。 「ゼロイチからの新規事業を検討する前に、どういった新規事業を目指すのか、本当にM&Aではなくゼロからの立ち上げを目指す必要があるのかを具体的に検討したうえで新規事業立ち上げの手法を選択すべきである。 そして本当にゼロから立ち上げる新規事業を目指すのであれば、経営陣として覚悟を持ち、外部役員の登用や人事制度の独立など、これまで述べてきたようなドラスティックなやり方を取ってリスキリングも並行して進めていくことが必要となる」、やはり中途半端なやり方は失敗する可能性が高いようだ。 ダイヤモンド・オンライン 野村マネジメント・スクールによる「一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは」 「有事の意思決定」とは興味深そうだ。 「思いがけない競争相手の出現などによって不意打ちを受けたとき、「俊敏に対応する能力」を構築することではないでしょうか。 イノベーションを成し遂げる上で、実験やプロトタイピングはとても重要で、多くの企業で実践項目に取り入れられているのですが、企業文化に根付いている「完璧主義」が問題となるのです。 実験やプロトタイピングに長けているということは言い換えれば、完璧でないことを受け入れることです。だが、これは難しい。 頭では実験やプロトタイピングの重要性を理解しても、実際に行おうとすると完璧主義が邪魔をしてしまいます。 最初から完璧なものを作ろうとすると、イノベーションのプロセスを遅らせることになります。だから、「早期に、何度でも、荒削りでも」を開発のモットーにした会社が生き残る。ある段階では完璧でないことを受け入れなければならないということです」、なるほど。 「コンセンサスは意思決定後の行動を迅速化しますが、実験という環境では、全てを遅らせることになり、実施の障害になりかねません。 イノベーションは、不確実性を機会に変える行為です。不確実性を排除しようとすると、どうしてもコストサイド重視になってしまいます。オペレーションの効率向上は達成できますが、イノベーションからは遠ざかってしまいかねません」、日本企業の弱味のようだ。 「私がBMIに関連して、日本の経営者にお伝えしたいことは次の4点です。 第1に、「進んで実験せよ」ということです・・・第2に、「不確実性を歓迎し、リスクを取れ」と申し上げたい。 第3には、「失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまく行かなかった人々に汚名を着せるな」が挙げられます。 そして最後に、「異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなし得る、視野を広げる貢献を過小評価するな」ということを指摘したい」、なるほど。 「プロセス・イノベーションが悪いわけではなく、効率性向上は日本企業が長年にわたって得意としてきたことです。ただ、プロセス・イノベーションは顧客に対し、価格引き下げなどを通じた間接的なインパクトしか与えないのに対し、ラディカルなイノベーション、あるいはBMI・・・はより直接的なインパクトがあります。 顧客にとってただ間接的に実感するイノベーションなのか、喜んで対価を支払おうとするイノベーションなのかには差があります。日本企業は後者のことをもっと考えるべきではないかと思います」、同感である。 「日本企業のM&Aでも、買収後の減損件数が3割程度あることなどから考えて、一般にM&Aから価値創造を実現するのは難しいと言えるでしょう。 M&Aの買収時のプロセスにおいて、日本企業が改善すべき点としては、資本コスト(特にエクイティのコスト)の意識を高める必要があること」、 「今後、機関投資家は、ますます大きな存在となり、その市場における影響力が甚大であることを考えなければなりません。ESGを無視した経営をしている企業は、資金調達面で不利な状況に追い込まれるおそれがあるでしょう」、同感である。
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