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インド(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説) [世界情勢]

インドについては、本年6月13日に取上げた。今日は、(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説)である。

先ずは、本年6月7日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677456#:~:text=%E6%9C%80%E5%89%8D%E7%B7%9A%20%3E%E6%B5%B7%E5%A4%96-,%EF%BD%A2%E4%BB%8A%E4%B8%96%E7%B4%80%E6%9C%80%E6%82%AA%EF%BD%A3%E3%81%AE%E5%88%97%E8%BB%8A%E4%BA%8B%E6%95%85%EF%BD%A4%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AE%E9%89%84%E9%81%93%E5%AE%89%E5%85%A8,%E8%A3%85%E7%BD%AE%E6%95%B4%E5%82%99%E3%81%AF%E9%80%B2%E3%81%BE%E3%81%9A&text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E6%9D%B1%E9%83%A8%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A3%E5%B7%9E,%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%81%8C%E7%B6%9A%E3%81%8F%E3%81%8C%E3%80%81%E2%80%A6
・『死者が300人近くに及ぶ今回の事故は、インドで今世紀に入ってから最大の列車事故とされる。これだけの規模の事故が起きれば、誰でもインドの鉄道の安全性に疑問を感じるに違いない。 英国の公共放送BBCは、インドにおける鉄道事故について、過去最悪の例は1981年6月、サイクロンの時に橋を渡っていた列車が川に転落し800人弱が亡くなったものだとしている。その後100人以上の死者を出した事故は3度起きており、直近では2016年11月に「インドール―パトナ・エクスプレス」という優等列車が脱線、150人近くが死亡する悲劇が起きている。 しかし、データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった。安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少。2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少」、今回の事故を除いた長期的現減少向はなかなか立派なものだ。
・『路線延長世界4位の「国民の足」  国連人口基金(UNFPA)の推計によると、インドの人口は今年14億2860万人となり、中国を抜いて世界一になる見通しだ。人々の重要な足として鉄道のシェアは大きい。 約6万8000kmに及ぶ路線の総延長はアメリカ・中国・ロシアに次いで世界第4位。そのうち、5万9000km余りが交流25kV・50Hzで電化されている。2020年の旅客輸送実績は80億8600万人。長距離列車と近郊列車を加えた旅客列車は1日当たり1万3000本が運行されている。国内の駅数は7325カ所に及ぶ。 歴史的にみると、インドはアジアで最初に鉄道が導入された国だ。イギリスで旅客輸送が始まった1825年から間もない1830年代には、すでに道路やダムの建設に使う資材運搬用の鉄道が敷設されていた歴史もある。 軌間(線路の幅)は長らく複数が混在していたが、現在はほとんどが1676mmの広軌に統一されている。これは新幹線などの標準軌(1435mm)よりもさらに200mm余り広い。当時、インド総督の任にあったダルハウジー卿が「広いほうが望ましい」と言ったことから広軌で敷かれたという。) 経済発展著しいインドでは、人々の往来需要も年々拡大している。そんな中、主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト(Vande Bharat)・エクスプレス」が2019年に登場した。普通車と1等車からなる16両編成で、車内にはUSB電源やWi-Fiも装備している。これまでに18区間に導入されており、テスト中に最高時速180kmまで出した記録もある。 だが、線路の許容速度と運行上の制約から、デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車(エクスプレスまたはメール)の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速いと言っていいだろう。 インドでは現在、高速鉄道のプロジェクトも進んでいる。最も先行しているのは、西部の商業都市ムンバイ(旧ボンベイ)とその北にあるアーメダバードとを結ぶ路線で、日本の新幹線システムが導入される予定だ』、「日本の新幹線システムが導入される予定」、日本製の機器を揃えるだけでは不十分で、定時運行を守ろうとする従業員の姿勢も不可欠だが、これはどうするのだろう。
・『保安装置の導入前倒しなるか  そのような発展が進む一方で発生した今回の大惨事を受け、インドでは鉄道の安全対策についての議論が高まっている。 インドの鉄道では、運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)という。大事故を教訓に導入計画が前倒しで進められる可能性も高まっているが、はたしてどうなるだろうか。 安全設備の整備はまだ発展途上にあるようだが、事故件数は減少傾向にあっただけに、1000人を超える死傷者を出す事故が起きてしまったのは残念だ。 ある日本人駐在者は「事故翌日に開催された現地団体の集まりで犠牲者に対して黙祷を捧げた」といい、「事故に関する報道は盛んだが、原因分析に関する報道姿勢は思った以上に慎重。第一報ではコロマンデル・エクスプレスの脱線原因は不明とした上で、考えられる仮説を取り上げており、インドメディアは信頼できるかも、と改めて感じた」と話していた。 モディ首相は事故発生翌日の3日、現場へ急行。直ちに「責任のある者に厳罰を与える」と強く述べた。再発防止のための原因究明は欠かせない。これ以上の悲劇を起こさぬために、最善の対応を望みたいものだ』、「責任のある者に厳罰を与える」との「モディ首相」発言は、システムなどの問題を単に人的過失として断罪するだけの責任転嫁になる恐れがある。

次に、9月26日付けNewsweek日本版「シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/09/post-102711_1.php
・『<カナダ在住のシーク教独立運動指導者が殺害された事件で、インド政府の関与を疑うカナダ政府に対し、インドが猛反発。怒りの背景には、積年の恨みがあった> カナダ在住のシーク教指導者ハーディープ・シン・ニジェールが殺害された事件について、インド政府が関与した可能性があるとカナダのジャスティン・トルドー首相が発言したことで、インドとカナダの関係は外交的危機の瀬戸際に立たされている。背景にはこの事件や発言だけでなく、インドのシーク教徒の分離主義運動をカナダ政府が支援しているのではないか、という長年の疑心暗鬼が大きな流れとしてある。 この衝突を世界が注視するなか、インドは断固として暗殺との関わりを否定。カナダの特定の政治家や当局者が、独立国家カリスタンの創設を目指すシーク教徒の分離主義グループを間接的に支援している可能性を指摘して、それが両国関係を緊張させていると主張した。 カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった、というのだ。 トルドー首相は2023年7月、記者団に対し、カナダは「表現の自由」を支持しているに過ぎないと述べた。「この国は多様性が非常に豊かな国であり、われわれには表現の自由がある」 トルドーはこの危機について公然とインドを非難し、議会下院で、ニジェールの死についてインド政府のいかなる関与も「容認できない」と述べた。カナダのメラニー・ジョリー外相も、インドが関与しているという主張が事実であれば、それは「わが国の主権に対する重大な侵害」になると述べた』、「カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。 ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった」、「ニジェール」が「「テロリスト」との判断があくまで「インド」裁判所の判断で、「カナダ」では「表現の自由がある」と、全く嚙み合わない。
・『カナダ野党も「造反」  この騒動で、カナダに駐在するインドの高官らは国外退去となった。インド政府も対抗してカナダの高等弁務官を召喚し、インドに駐在するカナダの外交官を国外追放すると伝えた。 インド外務省の声明によれば、「今回の決定は、カナダ外交官の内政干渉や反インド活動への関与に対するインド政府の懸念の高まりを反映したものである」。 トルドーにとってさらに事態を悪化させたのは、カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」 インド政府もシーク教徒の分離主義運動を取り締まらないカナダの姿勢を批判した。 「この問題に対するカナダ政府の不作為は、長年の懸念だった。カナダの政治家がこのような勢力に公然と同調を表明していることは、非常に重要な問題だ」 「カナダでは以前から、殺人、人身売買、組織犯罪など、さまざまな違法行為が容認されている。われわれは、インド政府とこのような動きを結びつけるいかなる試みも拒否する。われわれは、カナダ政府に対し、自国内で活動するすべての反インド勢力に対し、迅速かつ効果的な法的措置をとるよう求める」) その後、インドは正式な通達を出すことなく、突然カナダ市民へのビザ発行を中止した。カナダのビザ申請センターを運営するBLSインターナショナルは、カナダのウェブサイトに理由をあいまいにぼかした次のような告知を掲載した。「インド代表部からの重要なお知らせ。運営上の理由により、2023年9月21日より、インド・ビザサービスは追って通知するまで停止します」 インド外務省のアリンダム・バグチ報道官は、この措置の理由として、「カナダにあるインドの高等弁務官事務所や領事館の安全を脅かす事態が生じているため、通常の機能が停止している」と記者団に語った。 一方、ニューデリーの在インドのカナダ高等弁務団は、インド国内にいるカナダの外交スタッフがソーシャルメディア上で脅迫を受けたとして、すでに現地インド人職員に建物から避難するよう促している』、「カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」、いくら「野党」とはいえ、外交問題では、「政府」を批判するというのは、本来、避けるべきことだ。
・『カナダで活動する過激派  ニジェールが殺されたのは、今年6月。ブリティッシュコロンビア州サレーにあるシーク教寺院の駐車場で射殺された。 インドの法執行機関によれば、1977年にパンジャブ州で生まれたニジェールは、武装組織カリスタン・タイガー・フォース(KTF)とつながりがあった。1990年代にインドで逮捕されたが、1997年には地下に潜り、身分を偽って逃亡した。 インド政府によれば、ニジェールが過激派組織とつながっている証拠は時間の経過とともに濃厚になっていった。その結果、彼の名前は、2018年に当時のパンジャブ州のアマリンダー・シン知事からトルドーに渡された最重要指名手配リストに含まれることになった。 過激派組織に対するカナダの姿勢は、カナダのインド人コミュニティーでも物議をかもしている。インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している、というのだ』、「インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している」、「カナダ政府」にとっては、これら「組織」が「カナダ」の法律で合法的に活動している限り、規制するわけにはいかない。「インド政府」の要求は無理難題なのではなかろうか。

第三に、10月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した防衛大学校人文社会科学群国際関係学科教授の伊藤 融氏による「「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329764
・『安倍晋三元総理は、民主主義国家である日米豪印(クアッド)の連携を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」戦略を提唱した。膨張の度を強める中国への牽制として、岸田総理も継承している国策だが、肝心のインドの態度が煮えきらない。「ヨガとカレーの国」から「グローバルサウスを牽引する新興大国」へと変貌したインドは、民主主義陣営からも専制国家陣営からも、何としても取り込みたい存在だが、「これほど食えない国はない」という声も多い。わが道を行く大国の実情とは?本稿は、伊藤融『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『日米豪印によるクアッドは「アジア版NATO」か?  これからのインド太平洋秩序はどうなっていくのか?もちろん、われわれ自由民主主義陣営が望むのは、「自由で開かれた」インド太平洋秩序を維持することだろう。 2030~50年のインド太平洋地域の勢力図では、米中の、また日米豪自由民主主義陣営と中ロの権威主義陣営の力の差が、かぎりなく縮小し、ひょっとすると逆転してしまっているかもしれない。そうなると、そのとき、いまよりも大きな力をもっていると予測されるインドは、なんとしても取り込みたい、ということになる。 安倍晋三が2012年末に第2期政権を樹立する際に披歴した「セキュリティダイヤモンド構想」にはそうした思惑があった。安倍は国際NPOのプロジェクト・シンジケートに発表した英語論文のなかで、オーストラリア、インド、日本、米ハワイ州で四角形をつくり、中国の進出によって危機に晒されている海洋のコモンズ(共有地)を守らなければならない、と主張した。 しかし問題は、インドという国が、アメリカや日本、オーストラリアに、現状よりも接近するということがありうるのか、である。日米、米豪間にみられるような同盟を、自由民主主義陣営と結ぶようなことはあるのだろうか? 現時点で、インドはどの国とも同盟関係にはなく、アメリカとであれ、日本とであれ、オーストラリアとであれ、その他ヨーロッパ諸国とであれ、すべて、同盟国未満の「戦略的パートナーシップ」関係にとどめている。クアッドについても、同盟ではないという立場だ。 インドのジャイシャンカル外相は、クアッドを「数多くあるグループのひとつにすぎない」とし、「(インドは)柔軟性のない同盟は回避する」と主張してきた。この姿勢は、2020年の中国との軍事衝突を受けても変わることはなかった。「民主主義国同盟」を呼びかけるアメリカに対し、同外相は、アメリカは同盟思考を「乗り越える」必要がある、とはねつけた。相当、頑なである。 ということは、現状のままでは、インドがクアッドの同盟化を受け入れるはずはない。少なくともインドを取り巻く環境になにか劇的な変化がないかぎりは、インドが日米豪など西側に、よりいっそう傾斜を強めるというシナリオは起こりえない。 それでは、インドの態度を変えうる環境変化とはなんだろうか?それは、普通に考えれば、現状のままでは、インドの存立が成り立たないとインドが判断した場合ということになる。) 想定されるのは、なんといっても、中国の軍事的攻勢が、2020年のガルワン衝突(編集部注:印中がせめぎあうガルワン渓谷で、パトロール中のインドの部隊を中国側が石やこん棒で突然襲撃。インド兵はつぎつぎと谷底に突き落とされ、20名が殺された)レベル以上に本格化し、それにインドが耐えられなくなる事態だろう。要するに、このままでは、中国に侵略されてしまう、と本気で恐れるようになった時だ。 2050年までには、中国も、総合的な国力でインドからの猛追を受けている可能性が高い。だとすれば、中国としてはそれまでのうちに、インドをたたいてねじ伏せておきたいところだ。中国共産党指導部が、インドとの未解決の国境問題を武力で解決し、中国の秩序をインドに強制しようとしたとしても不思議ではない。 かつてインドは、中国の脅威に対して、自国の軍事力を増強するとともに、ソ連との連携を強化することで対処しようとした。将来も、同じ手法は通じないだろうか? まずは、自前の軍事力増強がどこまで可能かについてだ。CEBR(編集部注:イギリスを本拠とするシンクタンク、「ビジネス経済研究センター」)の予測によると、少なくとも2030年代までは、中国とインドのGDPの差はほとんど縮まらない。そうであれば当然、軍事費の差も、それほど縮小しないだろう。 それに、たとえそれ以降のGDPの伸びとともに、軍事費が増えたとしても、その成果が装備等を含めた軍事力として反映されるには時間を要する。つまり、中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い』、「中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い」、なるほど。
・『ロシアを頼れず中国とは緊張関係 それでもインドはアメリカ陣営を避ける  それでは、ソ連の後継国、ロシアというインドの伝統的パートナーとの関係は使えないのか? こちらのほうは、もっと心もとない。冷戦後のロシアの力は、かつて超大国としてアメリカと張り合ったソ連のものには遠く及ばない。 もともと、インドにとってのロシアの重要性は、相対的に低下傾向にあった。2022年にプーチン大統領がはじめたウクライナとの戦争のなかで、インドがロシアを非難せず、原油やガスの輸入を増やしたのはたしかだが、中長期的には、インドにとってのロシアの価値の低下に拍車がかかることになるだろう。) というのも、戦争の長期化と泥沼化によって、ロシアの国力低下と中国依存が加速することは避けられないと考えられるからだ。インドが、中国の脅威に対処するためにロシアを頼ろうとしたとしても、肝心のロシアが中国に依存するようになってしまっていては、まったく話にならない。 このようにみると、インドが、今後、日米豪の側に、より傾斜するということも、まったくありえないシナリオというわけではない。インド人研究者のなかにも、その可能性を指摘する者も、とくに若手のあいだに出てきている。戦略家として活躍するハルシュ・パントは、インドは民主主義陣営の側につくべきだと明言する。また、中国専門家で、対中警戒論者の筆頭ともいえるジャガンナート・パンダは、2022年の論文で、インドが、「アジア版NATO」を受け入れる可能性もあると期待感をもって論じた。しかしそうした見解はインドの外交・安全保障サークルの主流にはなっていない。インド国家安全保障顧問を務めた経験をもつM・K・ナラヤナン、シヴシャンカル・メノンらは、インドが西側につくことは得策ではなく、安易に中国叩きに乗るべきではないと警鐘を鳴らす。「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある。 このことからもわかるように、インドとしては、「どちらか」の陣営に属するという道ではなく、「どちらにも」関与する、という現状がつづくことが望ましいと考えている。どちらとも、うまく渡り合って「いいとこ取り」をしたいのだ。こうしたインド外交の特質に鑑みると、インドがアメリカを中心とした西側と同盟を構築するシナリオの蓋然性は、きわめて低いと推定される。) それでは、つぎに正反対の、おそらく、われわれにとっては最も望ましくないシナリオについて考えてみよう。インドが中国やロシアの側に傾斜し、印中ロのユーラシア連合、ないし同盟が形成される可能性だ。 じつはインドにとって、中ロとの連携は、日米豪とのそれよりも古くからのものだ。日米豪印によるクアッドの枠組みは、2007年に試みられたものの、その後しばらく立ち消えとなり、ふたたび現れたのは2017年のことだった。 クアッドに対し、ロシア、インド、中国の頭文字をとったRICと呼ばれる3カ国の枠組みは、もともと1998年にロシアのプリマコフ首相が訪印した際に提示したものといわれる。多くのロシア専門家は、ロシアには、対米牽制とともに、台頭する中国の影響力を薄めるために、ユーラシアのもうひとつの大国、インドを取り込みたいという思惑があることを指摘する。RICの枠組みは、2002年から非公式の外相会合として動き出し、2005年からは、3カ国が順番にホストを務めるかたちの会合が定例化された。定例化されてはいないが、最初の首脳会合も2006年には行われている。 この経緯をみれば、インドがどういう場合に、中国、ロシアとの連携に傾斜する可能性が出てくるのかがわかる。RICの本格化は、アメリカでブッシュJr.政権が、イラク戦争など、いわゆる単独行動主義的な傾向を強めた時期と符合する。このころのRIC外相会合後の共同声明文をみると、国際関係の民主化や公正な国際秩序の必要性、多極化を推進し、国連が役割を果たすことの重要性などが強調されている。 要するに、超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という場面があるかもしれない』、「「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある・・・超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という場面があるかもしれない」、「インド」をクアッドに取り入れて「アジア版NATO」を目指そうというのが、如何に夢物語であるかがよく理解できた。 
タグ:インド (その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説) 東洋経済オンライン さかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」 「安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少」、今回の事故を除いた長期的現減少向はなかなか立派なものだ。 「日本の新幹線システムが導入される予定」、日本製の機器を揃えるだけでは不十分で、定時運行を守ろうとする従業員の姿勢も不可欠だが、これはどうするのだろう。 「責任のある者に厳罰を与える」との「モディ首相」発言は、システムなどの問題を単に人的過失として断罪するだけの責任転嫁になる恐れがある。 Newsweek日本版「シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは」 「カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。 ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった」、「ニジェール」が「「テロリスト」との判断があくまで「インド」裁判所の判断で、「カナダ」では「表現の自由がある」と、全く嚙み合わない。 「カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」、いくら「野党」とはいえ、外交問題では、「政府」を批判するというのは、本来、避けるべきことだ。 「インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している」、「カナダ政府」にとっては、これら「組織」が「カナダ」の法律で合法的に活動している限り、規制するわけにはいかない。「インド政府」の要求は無理難題なのではなかろうか。 ダイヤモンド・オンライン 伊藤 融氏による「「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説」 伊藤融『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』(中央公論新社) 「中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い」、なるほど。 「「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。 さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある・・・超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という 「インド」をクアッドに取り入れて「アジア版NATO」を目指そうというのが、如何に夢物語であるかがよく理解できた。
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