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イスラエル・パレスチナ(その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、本年10月22日に取上げた。今日は、(その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング)である。

先ずは、10月25日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/710395
・『イスラエルはよく知られているように、欧米先進国並みの民主主義国であるとともに、世界に離散したユダヤ人が集まったユダヤ人の国である。1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている(2022年、IMF統計)。数字の上では堂々たる先進国である。 ところが、この「民主主義国」であると同時に「ユダヤ人の国家」であることは、イスラエルの場合、乗り越えがたい深刻な矛盾をはらんでいる。そして、それが今回のハマスによるイスラエル侵攻の最大の原因の1つになっているにじゅう』、「1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている」、ずいぶん日本より多いようだ。
・『2022年12月に発足した「最右翼」の連立政権  現在のイスラエルのネタニヤフ政権はイスラエル史上、最右翼の政権と言われている。首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ。 しかもこうした極右、宗教政党の党首が、占領地であるヨルダン川西岸やガザ地区の民生を担当する第2国防相、あるいはヨルダン川西岸の警察業務担当の国家安全保障相という重要な閣僚に就任し、パレスチナ人に対して厳しい政策を実施し始めたのである。) ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない』、「首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ・・・ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない」、なるほど。
・『司法制度改革が招いた政権批判がかき消えた  当然のことながら、政権の司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した。ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。) ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない』、「司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した・・・ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。 ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない」、なるほど。
・『民主国家から「ユダヤ人民族国家」に変質  イスラエルの「建国宣言」(1948年)や基本法の「人間の尊厳と自由」(1992年)には、すべての国民に開かれた「民主国家」「人間の尊厳と自由を守る」などと書かれている。それと比較すると、ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める。 ここ数年、大きな武力衝突がないことから、アメリカ国務省関係者らからは「こんなに静かな中東は久しぶりだ」などという声が出ていたが、一方で少なからぬ専門家が「大規模な軍事衝突はいつあってもおかしくない状況だ」と論じていた。 残念なことにその予想が当たり、10月7日に悲劇が起きてしまった。) ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版)が興味深い話を紹介している。イスラエルの初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地(ヨルダン川西岸とガザ地区)をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している』、「ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める・・・初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地・・・をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している」、なるほど。
・『占領地を併合すれば、ユダヤ人とパレスチナ人が半々に  イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている。 連立与党の極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家が並立する「二国家解決案」だった。) ところが「オスロ合意」をピークに和平に向けた動きは失速していった。 ラビン首相の暗殺以後、テロや武力衝突が繰り返され、市民の不安、不満が強まり寛容性は消えてしまった。それを受けてパレスチナに対する強硬論を訴える右派、タカ派が支持を増やす。 一方で、和平交渉を進めてきた左派勢力が衰退していく。その先に出現したのがネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ』、「イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている・・・極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家が並立する「二国家解決案」だった・・・ネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ」、なるほど。
・『占領地の抑圧支配は続けられるのか  前述の『イスラエル』によると、ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない。しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテロ組織ハマスにある。特に戦闘員でもない一般市民を対象とした大量無差別殺人は徹底的に追及されるべきだ。ガザに住む200万人の命を、イスラエルに向けたロケット弾で守ることはできない。ハマスにはもはや統治者としての責任感は感じられない。 2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している』、「ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない」、まともな考え方だ。「しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテロ組織ハマスにある・・・2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している」、「ネタニヤフ政権」も全く困ったものだ。

次に、11月1日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2023/11/post-1331_1.php
・『<日本外交は歴史的に「宗教対立には関与しない」基本方針を貫いてきた> 現地時間10月7日に発生した、武装集団ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃と、これを受けたイスラエルのハマスに対する宣戦布告により、両者は戦闘状態に入っています。米バイデン政権は、直ちにイスラエルへの強力な支持を表明、G7の中でイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダもほぼこれに同調しています。 その一方で、日本はG7諸国の中では唯一この問題に関しては冷静な立場を取っています。勿論、ハマスの人道を無視した乱射、殺人や誘拐などに対する非難は行っていますが、その一方でガザ地区への援助は継続しています。また、国連における決議等での行動も、イスラエルを全面的に支持するアメリカの投票行動とは少し異なった動きをしています。 今回は、上川外相がイスラエルを訪問しますが、前後してヨルダンを訪問、そして可能であればパレスチナ側要人とも会談して、双方に対する敬意を払う姿勢を見せています。つまり、この問題に関して、そして広い意味での中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由としては3つ挙げられると思います』、興味深そうだ。
・『中東産原油への依存  1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです。日本は資源がないだけでなく、先進国型のエネルギー消費をする人口が1億3000万と多く、また衰退したとは言え製造業もあります。そんな中で、原子力の平和利用については技術力があるものの、政財界が世論を説得する努力が不足しているために、どうしても化石燃料への依存が止められません。 歴史的にも、1970年代に中東戦争による第一次石油ショック、イラン革命による第二次石油ショックという2度の原油高により日本経済は大きく揺さぶられました。そして現在は、ロシアのウクライナ侵攻による原油高と円安に深く苦しんでいます。そんな中では、中東の産油国と良好な関係を保つことは、国益の生命線です。そのためには、パレスチナの人々の権利というアラブの大義に理解を示すことは避けて通れません。 2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要です。彼らとの信頼関係を維持するためにも、中東における中立ということは必要です。 3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であったということがあります。国際社会には様々な利害関係が渦巻いています。その中で宗教を軸とした対立というのは無視できない問題です。ですが、日本は歴史的に「宗教による対立には関わらない」ということ、裏返せば「宗教の対立には全方位で臨む」という姿勢を堅持してきました。これは、例えば戦後における度重なる安保理非常任理事国での貢献などで結果を出したことも加わって、日本の国際的信頼の基盤となっています。今回の中立政策も、その日本外交の「非宗教性」という国是に即したものと言えます。) では現在の情勢下、G7の中で、日本だけがこうした姿勢を取ることには問題があるのかというと、それは「ない」と考えられます。 何よりも、上記の3点は求められれば胸を張って説明できるし、アメリカを含むG7諸国はそれぞれに理解を示すと考えられるからです。特にアメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います。 日本の特に保守派の中には、日米同盟の堅持が安全保障の根幹だという認識から、軍事外交においては、アメリカに100%同調すべきという考え方が昔からありました。例えば湾岸戦争、あるいは21世紀初頭の反テロ戦争においては、可能な限りアメリカを支持する姿勢を見せることが、日本の安全を確保する上では「必要不可欠」だと思い詰めていたのです。ですが、現在の世界情勢は当時とは状況が違っており、現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます』、「中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由と1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです・・・2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要・・・3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であった・・・アメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います・・・現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます」、その通りだ。

第三に、11月7日付けNewsweek日本版が掲載した英ブラッドフォード大学教授〔平和学〕のポール・ロジャーズ氏による「イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-102984.php
・『<イスラエル軍がとった過去の軍事行動のパターンから見えてくるネタニヤフ首相の戦略的誤算がもたらす地上侵攻の末路とは?> 過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた。 そして今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた。 今後を占うには歴史が参考になる。9.11同時多発テロの後で、アメリカは国際社会の強い支持を得た。アフガニスタンに侵攻すれば泥沼に陥ると警告する専門家もいたが、タリバンとの戦いは避けられないと国際社会は見なした。 だが、アメリカを含む連合軍はその20年後、混乱の中でアフガンから撤退した』、「過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた・・・今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた」、これまで苦戦を強いられてきたというのは意外だ。
・『国連での孤立が鮮明に  地上戦の拡大に関して、イスラエルでは懸念の声が上がっている。軍部でもベンヤミン・ネタニヤフ政権内でも国民の間でも、今後の動向については意見が分かれる。 ロシア軍に包囲された東部マリウポリでウクライナ軍がアゾフスターリ製鉄所に籠城し、全長24キロの地下トンネルを駆使して3カ月近く持ちこたえたのはつい昨年のこと。ガザのトンネル網ははるかに広大で、ハマスが数カ月の戦闘に備えているのは確実だ。 10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた。 過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない』、「10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた・・・」、「奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない」、「ハマス」に拘束された「人質」がネックの1つの原因なのかも知れないが、現在、「人質」解放交渉が進んでいるとの報道もある。「ネタニヤフ政権」による「ガザ」支援活動への厳しい規制が、人道危機を悪化させているのは確かだ。「イスラエル」は、虎の子の情報機関モサドの情報収集が機能しなかったことあって、「ハマス」への懲罰に血道を挙げているようだが、もっと冷静になってほしいものだ。
タグ:イスラエル・パレスチナ (その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング) 東洋経済オンライン 薬師寺 克行氏による「イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」 「1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている」、ずいぶん日本より多いようだ。 「首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ ・・・ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない」、なるほ ど。 「司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエ ル国内のムードは一変した・・・ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。 ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない」、なるほど。 ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版) 「ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める・・・初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地・・・をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している」、なるほど。 「イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている・・・ 極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。 逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチ ナ人国家が並立する「二国家解決案」だった・・・ネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ」、なるほど。 「ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない」、まともな考え方だ。「しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテ ロ組織ハマスにある・・・2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している」、「ネタニヤフ政権」も全く困ったものだ。 Newsweek日本版 冷泉彰彦氏による「中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?」 「中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由と1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです・・・2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要・・・3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であった ・・・アメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います・・・現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます」、その通りだ。 ポール・ロジャーズ氏による「イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング」 「過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた ・・・今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた」、これまで苦戦を強いられてきたというのは意外だ。 「10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた・・・」 「奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない」、「ハマス」に拘束された「人質」がネックの1つの原因なのかも知れないが、現在、「人質」解放交渉が進んでいるとの報道もある。「ネタニヤフ政権」による「ガザ」支援活動への厳しい規制が、人道危機を悪化させているのは確かだ。「イスラエル」は、虎の子の情報機関モサドの情報収集が機能しなかったことあって、「ハマス」への懲罰に血道を挙げているようだが、もっと冷静になっ てほしいものだ。
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