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株式・為替相場(その21)(ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?、株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本 春闘高賃上げは“悪循環”?、株高は「日本を見る目が変わった」論の正体 株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?) [金融]

株式・為替相場については、本年3月2日に取上げた。今日は、(その21)(ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?、株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本 春闘高賃上げは“悪循環”?、株高は「日本を見る目が変わった」論の正体 株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?)である。

先ずは、本年3月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載sた多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339838
・『3月4日、日経平均株価の終値が史上初めて4万円を超えた。主に海外投資家の積極的な日本株買いによって、株価だけは“失われた30年”の出口にたどり着きつつある。問題は、わが国の実体経済を前に進められるか否かだ。さらなる株価上昇に必要な取り組みとは?』、興味深そうだ。
・『34年ぶり高値更新!4万円台突入の意味  日経平均株価が連日、最高値を更新している。背景にはまず、世界的な金融市場の“カネ余り”がある。米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げへの期待も、株価が上昇する支えになっている。わが国だけでなく、景気がかなり厳しいドイツなど欧州諸国の株価も上昇している。一方、不動産バブル崩壊で景気低迷が深刻な中国の株価は下落し、中国から逃避した投資資金がわが国やインド株に流れている。 また、海外投資家の日本経済の見方が変化してもいる。高い賃金を提示し中途採用を増やす企業が増えるなど、日本の労働市場にも徐々に変化が見られ始めたからだ。東証が株価純資産倍率(PBR)1倍割れの企業に、成長戦略の提示と説明などを求めたことも、日本経済の変化への期待につながった。 政府の産業政策の修正も追い風だ。今のところ、米欧以上にわが国の半導体関連の助成金支給スピードは速い。台湾の半導体ファウンドリーTSMCが熊本県に大型工場を開所したことを呼び水に、同県内では半導体および製造装置、関連部材メーカーなどが積極的に設備投資を実施している。自動車けん引型の日本の産業構造が変わると期待する、欧米の機関投資家は増えている。 23年初旬から日本株を購入したある海外投資家は、「インフレ傾向の中、賃上げに対して企業が積極的な姿勢を強めていることや、産業政策の変化で日本経済と日本株は長期停滞から脱却する入り口に到達した」と指摘していた。 米国経済の想定以上の成長も重要だ。米国では労働市場の需給がタイトに推移し、賃金上昇の勢いは強い。それは個人消費の増勢を支えている。生成AIの需要が急増したことで米国の半導体関連株が上昇していることも、日本株上昇にプラスに作用している』、「海外投資家は、「インフレ傾向の中、賃上げに対して企業が積極的な姿勢を強めていることや、産業政策の変化で日本経済と日本株は長期停滞から脱却する入り口に到達した」と指摘」、なるほど。
・『デフレからインフレへ経済環境の変化  株高と併せて何といっても見逃せない変化の一つは、経済がインフレ傾向に変わっていることだ。わが国のインフレは、基本的に円安と資源や食料の価格上昇(コストプッシュ型)ではあるものの、デフレからインフレへと変化したことは事実。ここ数年、企業は収益を守るために値上げを実施していて、家計はそれを受け入れざるを得ず、消費者物価指数の上昇率は2%を上回った。 日経平均株価は、1989年末に当時の高値(3万8915円87銭)を付けたが、90年の年初から下落し、資産バブルは崩壊した。90年以降の経済環境を改めて振り返ると、バブル崩壊により企業は急激な資産価格下落と景気悪化に直面し、極端なリスク回避に傾いた。政府は不良債権処理を加速するよりも、97年度までは公共事業関係費を増やした。こうしてバブルの後始末は遅れ、97年には金融システム不安が起きた。 不良債権問題が深刻化すると、デフレ圧力が高まった。さらに2008年9月のリーマンショックも、景気低迷を長引かせた。賃金水準は低迷して需要が減少し、持続的に物価が下落するという負の循環にわが国は陥った。また、電機産業などで国際分業への対応が遅れたことで、デジタル化への対応も遅れ、企業業績への懸念から国内の株価は低迷した。 ちなみに米国は、1929年の大恐慌で株価が暴落した後、当時の高値更新に約25年かかった。一方、わが国の高値更新に要した34年の歳月は、米国に比較してはるかに長い。それだけ80年代後半のわが国では、大規模な資産バブルが発生し崩壊の負の影響も深刻だったということだ。 デフレから脱しつつあるのと時を同じくして、新卒一括採用・年功序列・終身雇用の雇用慣行が徐々に崩れ、実力に応じた賃金制度を採用する企業が増えている。労働市場の流動性は高まっており、賃上げできなければ淘汰(とうた)される企業も増えるだろう。 労働市場の流動性が高まり、生産性の高い分野に経営資源が再配分されるようになることは、経済の本来あるべき姿であり、そこにわが国も向かい始めた。「現状維持を優先するだけでは成長は難しい」と考える経営者は増えている。 収益性の向上に取り組み、株主への価値還元やさらなる賃上げ、研究開発体制の強化など成長戦略を強化する企業も増えている。こうした結果、やっとのことで“失われた30年”から抜け出す入り口に日本はたどり着いたといえるだろう』、「米国は、1929年の大恐慌で株価が暴落した後、当時の高値更新に約25年かかった。一方、わが国の高値更新に要した34年の歳月は、米国に比較してはるかに長い。それだけ80年代後半のわが国では、大規模な資産バブルが発生し崩壊の負の影響も深刻だったということだ・・・収益性の向上に取り組み、株主への価値還元やさらなる賃上げ、研究開発体制の強化など成長戦略を強化する企業も増えている。こうした結果、やっとのことで“失われた30年”から抜け出す入り口に日本はたどり着いたといえるだろう」、その通りだ。
・『実体経済の回復なき株価上昇、課題は?  株価が最高値を更新する一方、わが国では「景気回復を感じない」との声が多い。「実体経済の力強い回復なき株価上昇」の様相を呈していることは注目すべきだ。今後は、わが国が“失われた30年”から本当に抜け出せるかが重要なポイントとなる。少子高齢化、人口の減少、社会保障関係費の増大による財政悪化など、状況は厳しい。 ただ、希望はあるはずだ。企業で賃上げの重要性が高まっている。賃上げは、従業員の生活の安定のみならず、学び直しやリスキリングへの意欲も支える。これは、企業が成長性を高めることや、雇用の流動化、本来あるべき経済の循環の実現に必要だ。 政府や企業は、限りのある人材が実力を高め、さらに高い賃金を手にできる環境を整備することに注力すべきだ。それは、先端分野へ経営資源を再配分する促進となり、より高付加価値のモノやサービスの創出を支える。こうした変化が本格化すると、今のようなインフレではなく、安定的な物価上昇の可能性が高まり、真の意味でデフレマインドを根本から克服するチャンスとなる。 また、国を挙げて成長産業を育成することは欠かせない。米エヌビディアの好決算を見ても、世界中で生成AIの需要が急増していることは明らかだ。AIチップを製造するTSMCの熊本工場に続けと言わんばかりに、関連する精密機械、パワー半導体などの分野でも工場建設が相次ぐ。北海道ではラピダスが回路線幅1ナノ(ナノは10億分の1)メートルのチップ生産を計画する。わが国で半導体産業が復活を遂げる可能性に期待が高まっている。 23年7~9月期、10~12月期、国内のGDP成長率はマイナスだった。1~3月期もマイナス成長に陥る可能性は高い。中国経済が低迷する懸念が追加的に高まれば、設備投資の下ぶれリスクも上昇する。 今後、海外投資家がわが国経済に一段と期待を高めるか否かは、政府や企業のやり方次第だ。決して株高を楽観視せずに、政府は半導体分野などで民間企業のリスクテイクをサポートする。企業はより積極的に収益性の向上を実現する。世界経済の変化を迅速に捉えつつ、この両輪を回すことこそ、わが国経済が真の意味で生まれ変わり、さらなる株価上昇に必要な取り組みである。 【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正します。 8段落目:日経平均株価は、1987年末に→日経平均株価は、1989年末に(2024年3月5日13:21 ダイヤモンド編集部)』、「今後、海外投資家がわが国経済に一段と期待を高めるか否かは、政府や企業のやり方次第だ。決して株高を楽観視せずに、政府は半導体分野などで民間企業のリスクテイクをサポートする。企業はより積極的に収益性の向上を実現する。世界経済の変化を迅速に捉えつつ、この両輪を回すことこそ、わが国経済が真の意味で生まれ変わり、さらなる株価上昇に必要な取り組みである」、同感である。

次に、3月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本、春闘高賃上げは“悪循環”?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340415
・『1月も消費者物価2%上昇、実質GDPは低迷 定義どおりのスタグフレレーション  日本の消費者物価上昇率は、一時よりは低下したものの、依然として高い。 2024年1月の生鮮食品を除く総合指数の前年同月比は2.0%だった。日本銀行も現在の状況はインフレーションだと認めている。 他方で、23年10~12月の実質GDP(国内総生産)速報値(1次)は前期比0.1%減(年率0.4%減)となった。3月11日に公表された2次速報では、同0.1%増(同0.4%増)と修正され2四半期連続のマイナス成長は免れたものの、低迷していることは間違いない。 経済が成長せずに物価が上昇するのだから、これは定義どおりの明白なスタグフレーションだ。 日経平均株価が史上最高値を更新しつつあったことから、日本経済が新たな発展の局面に入ったという意見がある。これから新しい発展の時代が始まるという見方だ。 しかし実際に起きているのは、それとは全く逆であり、日本経済がスタグフレーションという「深刻な病」に落ち込んでいることなのだ。 春闘の主要製造業の集中回答日だった13日には、トヨタ自動車や新日本製鉄などで「満額回答」や「最高水準」の賃上げ回答が目立った。 春闘などでの賃上げが経済停滞を抜け出す糸口になることへの期待もあるが、今の状況では賃上げが“逆効果”になることもあり得る』、「経済が成長せずに物価が上昇するのだから、これは定義どおりの明白なスタグフレーションだ。 日経平均株価が史上最高値を更新しつつあったことから、日本経済が新たな発展の局面に入ったという意見がある。これから新しい発展の時代が始まるという見方だ。 しかし実際に起きているのは、それとは全く逆であり、日本経済がスタグフレーションという「深刻な病」に落ち込んでいることなのだ」、その通りだ。
・『さまざまな指標が経済活動停滞を裏付け 家計消費や鉱工業生産も減少  経済活動の停滞は、GDP以外にもさまざまな指標で確かめることができる。 家計調査によると、23年12月の家計消費支出(2人以上の世帯)の実質増減率は、前年同月比で2.5%の減少だった。24年1月は同6.3%減とさらに落ち込んだ。 輸出でも同様の傾向が見られる。22年の輸出額は、円建てでは前年比18.2%増となったものの、ドル建てでは同0.9%の減少となった。輸出数量で見ても、同0.6%減と落ち込んだ。23年も同様の結果で、円建ての輸出額は同2.8%増だったものの、ドル建てでは4.3%減と2年連続で減少。輸出数量も同3.9%減と落ち込んだ(ジェトロの統計による)。 輸出数量が増えないため、国内の生産活動も増加しない。生産活動の落ち込みは鉱工業生産指数で確かめることができる。21年に新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みから回復して以来、指数は104~105程度でほとんど変化がない(2020年=100、季節調整済み)。 最近の計数をみると、1月の鉱工業生産指数速報値は97.6となり前月比で7.5%低下した。低下幅はコロナの感染が広がった20年5月以来の大きさだ。これには、品質不正による自動車メーカーの工場停止が影響しているが、生産は全15業種のうち14業種で下がったので、自動車だけが問題であるわけではない。 なお、円安が輸出数量や鉱工業生産指数に影響を与えないのは、過去の円安局面でも起きていることだ』、「1月の鉱工業生産指数速報値は97.6となり前月比で7.5%低下した。低下幅はコロナの感染が広がった20年5月以来の大きさだ。これには、品質不正による自動車メーカーの工場停止が影響しているが、生産は全15業種のうち14業種で下がったので、自動車だけが問題であるわけではない」、確かに1月の落ち込みは深刻だ。
・『輸出企業の利益増は円安効果 円高になれば反転する現象  一方、企業の利益は円安によって増大している。 企業全体としてはあまり大きな増加でないのだが、一部の企業、とくに輸出関連の大企業で利益が顕著に増えている。 その典型がトヨタ自動車だ。22年3月期の営業利益は対前年比36.3%増の2兆9956億円と3兆円に迫った。23年3月期の営業利益は原材料高の影響でやや落ち込んだものの、24年3月期は過去最高の4.9兆円に達する見通しだ(トヨタ自動車、業績ハイライト・財務指標)。 円安が経済活動の実態を変化させずに企業利益だけを増加させるのは、従来の円安局面と同じ現象であり、新しいことではない。輸出数量が増えなくても円安によって円ベースの輸出額が増え、他方で、円安による原材料価格の上昇は製品価格に転嫁するからだ。 24年になってからの円安についても、同じことが起きるとの期待があり、これが株価が上昇している一因と考えられる。だがこれは、円高になれば反転する現象であり、永続的なものでない』、「円安が経済活動の実態を変化させずに企業利益だけを増加させるのは、従来の円安局面と同じ現象であり、新しいことではない。輸出数量が増えなくても円安によって円ベースの輸出額が増え、他方で、円安による原材料価格の上昇は製品価格に転嫁するからだ・・・24年になってからの円安についても、同じことが起きるとの期待があり、これが株価が上昇している一因と考えられる」、なるほど。
・『輸入物価下落しても消費者物価は上昇 価格転嫁のメカニズムが変化?  現在の局面が従来と大きく違うのは、輸入物価と消費者物価の関係だ。 従来の円安局面では、円ベースの輸入物価は上昇することが多かった。しかし、現在は世界的なインフレが収束しつつあるので、契約通貨ベースの輸入物価が下落している。このため、円安が進行しているにもかかわらず、円ベースの輸入物価の対前年同月比が2023年4月以降、下落を続けているのだ。 また輸入物価と消費者物価の関係も従来と違ってきている。 これまでの日本では、消費者物価の動向はほぼ円ベース輸入物価の動向によって決まっていた。具体的には、消費者物価の対前年上昇率は半年ほど前の円ベース輸入物価の対前年上昇率の10分の1程度の値になっていた。 これは、輸入物価の上昇が取引段階ごとに製品価格に転嫁されていくが、下流に行くにしたがってその影響が薄められることから、当然の現象だ。 もしこのメカニズムがいまも働いているとすれば、消費者物価はいま下落しているはずだ。なぜなら、前述のように円ベースの輸入物価指数は2023年4月から、対前年比でマイナスに転じているからだ。 しかし、実際には、消費者物価上昇率は対前年比2%という、かなり高い値だ。だから、従来の価格転嫁メカニズムに変化が生じたと考えざるを得ない。 なぜ変わったのか?その理由として第1に考えられるのは、この数年の輸入物価上昇率があまりに高かったため、転嫁に時間がかかっていることだ。 第2に考えられるのは、賃金上昇の影響だ。実際、調理食品(6.6%)や宿泊費(26.9%)などいくつかの品目で消費者物価の対前年上昇率が高い(2024年1月)。そして、この分野で賃金が上昇している。 毎月勤労統計調査によると、飲食サービス業の現金給与総額の対前年増加率は8.5%というかなり高い値になっている(一般労働者、2023年速報)。だから賃金上昇が価格に転嫁されている可能性がある。 ただし、これが永続的なものなのか一時的なものなのかはわからない』、「従来の価格転嫁メカニズムに変化が生じたと考えざるを得ない。 なぜ変わったのか?その理由として第1に考えられるのは、この数年の輸入物価上昇率があまりに高かったため、転嫁に時間がかかっていることだ。 第2に考えられるのは、賃金上昇の影響だ。実際、調理食品(6.6%)や宿泊費(26.9%)などいくつかの品目で消費者物価の対前年上昇率が高い(2024年1月)」、なるほど。
・『生産性上昇しないコストプッシュインフレで 賃金と物価の「悪循環」が生じるおそれ  日本銀行は、金融政策の正常化の条件として、2%を超える消費者物価上昇率を望んでいる。しかし、重要なのは物価上昇率が2%を超えるかどうかではなく、物価上昇がどのようなメカニズムで起きるかだ。 生産性の上昇に基づいて賃金が上昇し、そのために家計の消費需要が増え、そのために物価が上昇するというルートでなければならない。 しかし、生産性上昇を伴わずに賃金が上昇し、それが売上げ価格に転嫁されるというコストプッシュインフレであれば、賃金上昇も物価上昇も望ましくない現象だということになる。そうしたメカニズムが、少なくとも経済の一部で進行している可能性がある。 今春闘については政府や日銀は高い賃上げを期待しているが、こうした状況下で、春闘などを通じて賃金を無理矢理に引き上げれば、それが物価に転嫁され、コストプッシュインフレが経済全体に広がる危険がある。 つまり、賃金上昇と物価上昇の「悪循環」が始まるわけだ。 その一方で実体経済がマイナス成長を続ければ、日本経済はスタグフレーションの罠から抜け出せなくなるおそれがある』、「春闘などを通じて賃金を無理矢理に引き上げれば、それが物価に転嫁され、コストプッシュインフレが経済全体に広がる危険がある。 つまり、賃金上昇と物価上昇の「悪循環」が始まるわけだ。 その一方で実体経済がマイナス成長を続ければ、日本経済はスタグフレーションの罠から抜け出せなくなるおそれがある」、その通りだ。

第三に、3月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏による「株高は「日本を見る目が変わった」論の正体、株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340555
・『年初からの株高で「日本を見る目が変わっている」論が幅を利かせている。日本経済、日本企業の変革が期待されているというわけである。しかし、株高の実態は、円安から波及してきたインフレと輸出企業の業績向上に過ぎない。実質成長率は低迷している。これは、日本が「先進国」ではなく「中進国」であると、見る目が変わってきている証左ではないだろうか』、「株高の実態は、円安から波及してきたインフレと輸出企業の業績向上に過ぎない。実質成長率は低迷している。これは、日本が「先進国」ではなく「中進国」であると、見る目が変わってきている証左ではないだろうか」、由々しい出来事だ。
・『年初からの株高はインフレのおかげ  普段、筆者は為替市場を中心とした経済・金融分析を中心としており、株式の専門家ではないが、今年に入ってから日本が直面している株高の真因を問われた場合は「インフレのたまもの」と回答するようにしている。 現在の日本は株や不動産の価格が上がり、自国通貨の値段が下がり、高級外車や高級時計のような輸入品の価格も押し上げられている。それら全てを説明できるフレーズはインフレである。植田日銀総裁を筆頭に日銀から物価目標達成をにおわせるような情報発信が相次ぎ、遂に政府・与党がデフレ脱却宣言に踏み切るという観測報道まで出ている。 これまで慢性的な円高や上がらない株価、低位安定する円金利や停滞する名目賃金などはデフレの象徴のように忌み嫌われてきた。裏を返せば、デフレ脱却の暁にはそれらの現象は逆転しても不思議ではない。 現に、円安は終わらず、株価は急伸、円金利も(政策的に抑えているので、わずかだが)浮揚が見られ、名目賃金も続伸している。もちろん、日本企業の業績改善を織り込んだ部分もあろうが、デフレ脱却というパラダイムシフトを前提として、日本経済に対する「見る目が変わっている」という評価はできる。 だが、「見る目が変わっている」が良い意味とは限らない。次ページ以降、その正体について検証していく』、「円安は終わらず、株価は急伸、円金利も(政策的に抑えているので、わずかだが)浮揚が見られ、名目賃金も続伸している。もちろん、日本企業の業績改善を織り込んだ部分もあろうが、デフレ脱却というパラダイムシフトを前提として、日本経済に対する「見る目が変わっている」という評価はできる。 だが、「見る目が変わっている」が良い意味とは限らない」、どういうことだろうか。
・『「中進国」容疑をかけられる日本 GDPの名実格差が意味するもの  下表は日経平均株価が初めて4万円台に乗せた2024年3月4日について、過去1年間の主要株価指数の上昇率トップ10と当該国通貨の対ドル変化率を並べたものだ。 (図表1:世界の主要株価指数(上昇率トップ10) はリンク先参照) 対ドル変化率に関し、上位10カ国平均が約マイナス26%、上位5カ国平均が約マイナス40%にもなる。また、見ての通り、上位10カ国において先進国は日本だけだ。また、対ドル変化率について、日本より下落幅が小さい国は4カ国、大きい国が5カ国である。濃淡はあるものの、いずれの国も対ドルで下落しているという事実は共通する。 インフレ体質の国では自国通貨が減価しやすく、それにより自国通貨建てで見た株価指数の水準も押し上げられやすくなる。それは理論的に言って正しい姿だ。そのような症状は途上国に多く見られるが、日本のような先進国ではあまり見られるものではない。 結局、日本経済に対する「見る目が変わっている」というのは先進国や途上国といった所属する国グループについて猜疑(さいぎ)心が向けられているという意味ではないか。 発展途上国から脱し、先進国に至る途上にある国を中進国と呼ぶことがあるが、その容疑がかかっている可能性もある。 株高にもかかわらずそれを喜ぶ議論があまり見られず、実体経済の弱さばかりに焦点がいくのはそもそも日本の家計部門において株式・出資金の保有比率が低いという以前に、インフレになった分が、十分家計部門に分配されていないという根本的問題があるだろう。 「株式・出資金保有比率が低い」という点については目下、「資産運用立国」論を旗印として対処中であり、良しあしは別として、今後は違った姿に変わっていくことが期待される。この点は時間の問題であり、待つしかない。 しかし、株高(や円安や不動産価格上昇など)がインフレ由来のものであったと考えた場合、当然、実体経済を分析する上ではGDP(国内総生産)の名実格差に触れないわけにはいかなくなる。 デフレ下の日本ではGDPの名実逆転(実質GDP>名目GDP)が象徴な事実として取り上げられてきた。しかし、インフレ社会となれば、通常想定される姿(実質GDP<名目GDP)が定着することになる。 既に政府見通しが出ているように、24年度の日本経済は第2次安倍政権が掲げていた「GDP600兆円」という目標達成が視野に入るといわれている(※安倍政権が「2020年度までに600兆円」と掲げたのが2015年だ)。この点、好意的な報道が多いと感じるが、そもそも600兆円は名目ベースの目標であり、実質ベースの目標には何も言及されてこなかったことには注意を要する。 周知の通り、インフレになれば名目GDPは当然膨らむ。本質的に重要になるのはインフレを除いた部分、端的には実質GDPでどの程度の伸びを実現しているかという点だ。実質GDPが成長を伴わず、名目GDPだけが600兆円を達成しても景気実感は生じにくい。 例えば22年から23年にかけて名目GDPは約560兆円から約591兆円へ、約31兆円増えた。しかし、同じ期間に実質GDPは約548兆円から約559兆円へ約11兆円しか増えていない。つまり、残る約20兆円がインフレによる上乗せであり、これは日本国民にとって成長とは言えない。このような状況もあって2023年の日本経済では名目GDP成長率5.7%に対し、実質GDP成長率は1.9%にとどまった。 (図表2:日本のGDP はリンク先参照)』、「インフレになれば名目GDPは当然膨らむ。本質的に重要になるのはインフレを除いた部分、端的には実質GDPでどの程度の伸びを実現しているかという点だ。実質GDPが成長を伴わず、名目GDPだけが600兆円を達成しても景気実感は生じにくい」、なるほど。
・『輸出企業はインフレを価格転嫁 中進国へのステップダウンが始まったか  身近な例で言えば、家計最終消費は名目ベースでは約11.4兆円伸びているが、このうちインフレによる上乗せは約9.4兆円で、実質ベースでは約2兆円しか増えていない。成長率で見れば、3.8%に対し0.7%なので、ほとんどの消費行動がインフレに食われていることが分かる(下図参照)。 (図表3:日本のGDP はリンク先参照) 当然、インフレになれば短期的には売り上げや利益は増えて、株価も押し上げられやすくなる。しかし、それは消費者が「無い袖を振って」消費している結果でもある。結果、「株高にもかかわらず内需の勢いに乏しい」という今の日本のような状況が生まれる。基本的に「無い袖は振れない」ので、長期的には名目GDPと実質GDPの乖離(かいり)は広がっていく。 ちなみに図表1を見ても分かるように、実質GDPの中でも、輸出だけは健闘しているように見える。名目ベースで約8.1兆円増加しているのに対し、実質ベースでは約3.3兆円、インフレによる上乗せ分は約4.8兆円とやはりインフレ部分が大きいものの、家計最終消費や設備投資と比較すれば相対的にましという印象を受ける。 これは輸出企業が海外においてインフレ部分を価格転嫁できている証拠でもある。関連統計からも確認可能だ。2023年7月以降、輸出物価指数は契約通貨建て(いわゆる現地通貨建て)で見ても上昇基調に入っており、内外のインフレ圧力と整合的に価格転嫁を実現している様子が透ける。 (図表4:輸出物価指数の前年比変化率 はリンク先参照) 理論上、円安が輸出企業に与える影響は「契約通貨建て価格の引き下げ→輸出数量増加」という経路だ。例えば、実勢相場が「1ドル100円」の時に1ドルでボールペンを輸出していたとする。ここから「1ドル=120円」に円安が進めば0.83ドル(0.83×120円≒100円)で輸出しても円建て売上高を維持できる。 しかし、統計を見る限り、今の日本の輸出企業がやっていることはボールペンを1.2ドルや1.5ドルなどに引き上げる動きである。当然、円建て売上高も大きく膨らむ(例:1.2ドル×120円≒144円)。もっと言えば、この例よりもはるかに円安は進んでいるので、輸出企業の円安による業績改善幅はさらに大きいものになる。 結果、輸出企業は実質ベースでの成長も相応に確保できているのだとすると、それを国内の家計部門(≒名目賃金)に還元できるかが焦点になる。 結局、「賃上げはあるのか」といういつも通りの話に戻ってきてしまうわけだが、それが十分ではないからこそ実質ベースで見た家計最終消費がほとんど伸びていないという実情は認めざるを得ないだろう。 日本銀行の言葉を借りれば、賃金・物価の好循環(≒第2の力)が発揮されているとは残念ながら言えない。株高の背景にあるものが「インフレに押し負ける実体経済情勢」であり、それが先進国から中進国へステップダウンを織り込む相場だとすれば、まだ、この円安・株高には先があるようにも読める。残念ながら、そのような仮説を覆すだけの十分な材料が無いのが実情ではないか』、「日本銀行の言葉を借りれば、賃金・物価の好循環(≒第2の力)が発揮されているとは残念ながら言えない。株高の背景にあるものが「インフレに押し負ける実体経済情勢」であり、それが先進国から中進国へステップダウンを織り込む相場だとすれば、まだ、この円安・株高には先があるようにも読める。残念ながら、そのような仮説を覆すだけの十分な材料が無いのが実情ではないか」、「この円安・株高には先があるようにも読める」、どんな先なのだろうか、直ちには思い浮かばないので、じっくり考えてみたい。 
タグ:(その21)(ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?、株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本 春闘高賃上げは“悪循環”?、株高は「日本を見る目が変わった」論の正体 株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?) 株式・為替相場 「海外投資家は、「インフレ傾向の中、賃上げに対して企業が積極的な姿勢を強めていることや、産業政策の変化で日本経済と日本株は長期停滞から脱却する入り口に到達した」と指摘」、なるほど。 真壁昭夫氏による「ついに4万円突破!日経平均株価が大台に乗った意味と「続伸の条件」とは?」 ダイヤモンド・オンライン 「米国は、1929年の大恐慌で株価が暴落した後、当時の高値更新に約25年かかった。一方、わが国の高値更新に要した34年の歳月は、米国に比較してはるかに長い。それだけ80年代後半のわが国では、大規模な資産バブルが発生し崩壊の負の影響も深刻だったということだ・・・収益性の向上に取り組み、株主への価値還元やさらなる賃上げ、研究開発体制の強化など成長戦略を強化する企業も増えている。こうした結果、やっとのことで“失われた30年”から抜け出す入り口に日本はたどり着いたといえるだろう」、その通りだ。 「今後、海外投資家がわが国経済に一段と期待を高めるか否かは、政府や企業のやり方次第だ。決して株高を楽観視せずに、政府は半導体分野などで民間企業のリスクテイクをサポートする。企業はより積極的に収益性の向上を実現する。世界経済の変化を迅速に捉えつつ、この両輪を回すことこそ、わが国経済が真の意味で生まれ変わり、さらなる株価上昇に必要な取り組みである」、同感である。 野口悠紀雄氏による「株価最高値の陰で「スタグフレーション」に落ち込んだ日本、春闘高賃上げは“悪循環”?」 「経済が成長せずに物価が上昇するのだから、これは定義どおりの明白なスタグフレーションだ。 日経平均株価が史上最高値を更新しつつあったことから、日本経済が新たな発展の局面に入ったという意見がある。これから新しい発展の時代が始まるという見方だ。 しかし実際に起きているのは、それとは全く逆であり、日本経済がスタグフレーションという「深刻な病」に落ち込んでいることなのだ」、その通りだ。 「1月の鉱工業生産指数速報値は97.6となり前月比で7.5%低下した。低下幅はコロナの感染が広がった20年5月以来の大きさだ。これには、品質不正による自動車メーカーの工場停止が影響しているが、生産は全15業種のうち14業種で下がったので、自動車だけが問題であるわけではない」、確かに1月の落ち込みは深刻だ。 「円安が経済活動の実態を変化させずに企業利益だけを増加させるのは、従来の円安局面と同じ現象であり、新しいことではない。輸出数量が増えなくても円安によって円ベースの輸出額が増え、他方で、円安による原材料価格の上昇は製品価格に転嫁するからだ・・・24年になってからの円安についても、同じことが起きるとの期待があり、これが株価が上昇している一因と考えられる」、なるほど。 「従来の価格転嫁メカニズムに変化が生じたと考えざるを得ない。 なぜ変わったのか?その理由として第1に考えられるのは、この数年の輸入物価上昇率があまりに高かったため、転嫁に時間がかかっていることだ。 第2に考えられるのは、賃金上昇の影響だ。実際、調理食品(6.6%)や宿泊費(26.9%)などいくつかの品目で消費者物価の対前年上昇率が高い(2024年1月)」、なるほど。 「春闘などを通じて賃金を無理矢理に引き上げれば、それが物価に転嫁され、コストプッシュインフレが経済全体に広がる危険がある。 つまり、賃金上昇と物価上昇の「悪循環」が始まるわけだ。 その一方で実体経済がマイナス成長を続ければ、日本経済はスタグフレーションの罠から抜け出せなくなるおそれがある」、その通りだ。 唐鎌大輔氏による「株高は「日本を見る目が変わった」論の正体、株価上昇は“中進国降格”を織り込み始めた?」 「株高の実態は、円安から波及してきたインフレと輸出企業の業績向上に過ぎない。実質成長率は低迷している。これは、日本が「先進国」ではなく「中進国」であると、見る目が変わってきている証左ではないだろうか」、由々しい出来事だ。 「円安は終わらず、株価は急伸、円金利も(政策的に抑えているので、わずかだが)浮揚が見られ、名目賃金も続伸している。もちろん、日本企業の業績改善を織り込んだ部分もあろうが、デフレ脱却というパラダイムシフトを前提として、日本経済に対する「見る目が変わっている」という評価はできる。 だが、「見る目が変わっている」が良い意味とは限らない」、どういうことだろうか。 「インフレになれば名目GDPは当然膨らむ。本質的に重要になるのはインフレを除いた部分、端的には実質GDPでどの程度の伸びを実現しているかという点だ。実質GDPが成長を伴わず、名目GDPだけが600兆円を達成しても景気実感は生じにくい」、なるほど。 「日本銀行の言葉を借りれば、賃金・物価の好循環(≒第2の力)が発揮されているとは残念ながら言えない。株高の背景にあるものが「インフレに押し負ける実体経済情勢」であり、それが先進国から中進国へステップダウンを織り込む相場だとすれば、まだ、この円安・株高には先があるようにも読める。残念ながら、そのような仮説を覆すだけの十分な材料が無いのが実情ではないか」、「この円安・株高には先があるようにも読める」、どんな先なのだろうか、直ちには思い浮かばないので、じっくり考えてみたい。
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