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中国国内政治(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?) [世界情勢]

中国国内政治については、昨年2月18日に取上げた。今日は、(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?)である。

先ずは、昨年3月17日付けNewsweek日本版が掲載した在米ジャーナリストのゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98308_1.php
・『<冬季オリンピックをどうにか終えて、異例の「3期目」党総書記を狙う習近平が直面する党上層部と軍の批判派、そして莫大な債務の山という時限爆弾> 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、オリンピックによってトップの座に上り詰めたと言っても過言ではない。そして今、オリンピックによって、その座を失う可能性がある。 2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった。 今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている。今秋開催予定の第20回党大会で、党総書記として前代未聞の3期目に突入する計画も必ずしも盤石ではない。冬季五輪の失敗が許されないのはもちろん、スキャンダルもテロもウイグル問題への抗議行動も起こさせず、何より「ゼロコロナ」戦略を成功させなければならない』、「2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった」、「今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、「基盤」が「脆弱」になったとはどういうことだろう。
・『集団指導体制を廃止したツケ  だからだろう。習は準備段階から細かなことにまで目を配ってきた。「オリンピックの準備作業は習の統治スタイルそのものだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。「選手村の配置からスキーやスキーウエアのブランドまで、あらゆる決定の中心に習がいた」。建設中のオリンピック関連施設を視察に訪れ、現場監督に指示を与えることもあった。 何か間違いがあれば、自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした。) 実際、習の弱肉強食のメンタリティーは多くの党員を震え上がらせた。そして習は「もしその時が来たら、去るべき人物」と彼らに見なされるようになった。絶対的服従を求める習の統治スタイルは、中国の台頭が好調な間は機能した。だが今、長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している。食料不足も深刻で、資源は枯渇し、新型コロナウイルス感染症の拡大を加速させる一因となった。さらに中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという』、「自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、「長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している」、「中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという」、こんな難問を抱えて、「トップダウン式の意思決定システム」で乗り切ろうというのは、およそ正気の沙汰とは思えない。
・『露呈する内紛と、公然と表明される異論  習の強権的な統治スタイルを考えれば、指導部内に不和が生じている明らかな兆候があっても驚きではない。いい例が、共産党の汚職摘発を主導する中央規律検査委員会の機関紙、中国紀検監察報が昨年12月号に掲載した記事だ。 「党中央に反する意見を公然と表明する独善的な幹部がいる」と、同記事は述べている。党中央とは一般的に、習その人を指す用語だ。一部の幹部は「党中央の決定や政策を拒否し、ゆがめ」ており「大それた野心の下で公然と、またはひそかに党中央に背く者もいる」という。 政府のプロパガンダ機関が国家指導者へのあからさまな反抗を報じるのだから、内紛がよほど激烈になっているのは間違いない。 この数週間、中国では複数の高官が習と一致しない見解を公表している。国政助言機関、中国人民政治協商会議の賈慶国(チア・チンクオ)常務委員は、過剰な費用を投じて安全保障を追求する姿勢に警告を発した。これは明らかに、習の路線に対する批判だ。 昨年12月には、共産党機関紙の人民日報が経済改革の特集記事を掲載したが、習には全く触れていなかった。英文メディアの日経アジアが指摘するように「中国の主要紙が習を無視するなら、全ては未知数」だ。) こうした不和への反応として、習は軍の支持獲得に力を入れている。共産主義青年団(共青団)とつながっていた前任者の胡錦濤(フー・チンタオ)、胡の前任者で「上海閥」に支えられた江沢民(チアン・ツォーミン)と異なり、国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ。将官クラスの「腐敗分子」処分や人民解放軍の全面的再編を通じて、習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか』、「習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか」、これは軍の暴走を抑えられないことを意味し、極めて危険な兆候だ。
・『政治体制内で最も好戦的な集団が得た力  いずれにしても、この力学は危険だ。急速な影響力拡大を受けて、人民解放軍には、より多くの国家資源が割かれている。制服組が多くを占める強硬派が政府の方針を決定していると見受けられ、彼らの「軍事外交」が外交政策になっている。 軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ。 オリンピック・パラリンピックが終わったら中国で何が起きるのか。オーストラリアの元外交官で中国専門家のロジャー・アーレンが言う「際限のない無意味な権力闘争」を、共産党幹部が再開するのは確実だ。 だが今度ばかりは、少なくとも中国の最高指導者にとって、党内争いが重要な結果を伴うことはほぼ間違いない。習が国家主席の座にとどまれば、共産党は事実上、制度として成り立たなくなる。 毛沢東時代の絶対的権力の恐怖を経験した共産党は80年代以降、指導者を制約する規定や慣行の確立に動いてきた。だが毛の強権的システムへの回帰こそ、習が望むものだ。) 3月13日のパラリンピック閉会式をもって「オリンピック期間中の停戦」も終わり、中国政治はますます不穏な時期に突入した。秦剛(チン・カン)駐米大使は今年1月、米メディアのインタビューでアメリカとの「軍事衝突」の可能性を口にした。 冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある。 習が権力を維持するために、決定的な勝利を必要としているのは明らかだ。かねてから、自分には中国だけでなく世界を統治する権利と義務があると主張してきたし、中国は領土獲得を永遠に延期することはできないとも言ってきた。台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる。 昨年7月の中国共産党創立100年の大演説で習は、中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」と語った。 オリンピックは終わったが、本当の競争は始まったばかりだ』、「軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ」、「習近平」が「軍部」を賢明に抑えることを期待したい。

次に、7月16日付け現代ビジネスが掲載した国際ジャーナリストの林 愛華氏による「林愛華の「中南海ディープスロート」第2回 習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀」を紹介しよう。
・『李強首相がビジネスチャーター便を利用した意味  6月18日、中国国務院総理の李強はドイツを訪問した。国務院総理になって、初めての公式な外国訪問だったが、李強が乗っていたのは政府専用機ではなく、ビジネスチャーター機だった。 新華社はわざわざ「国務院総理の李強はビジネスチャーター機を使って北京を離れた。ドイツ総理ショルツとフランス政府の招きを受けて、ドイツとフランスを公式訪問する(中略)」と報じた。 2013年5月27日、当時の総理の李克強がドイツ訪問を終え、大きな成果を挙げて政府専用機で帰国したと中央テレビ網が報じた。違いは鮮明だ。現任の李強国務院総理はビジネスチャーター機を使い、前の総理の李克強は政府専用機だった。中国においてこれは意味が大きく違う。 中国語で「専機」(ジュアンジー)は政府専用機を指し、「包機」(バオジー)はビジネスチャーター機を意味する。字面の通り、政府専用機とビジネスチャーター機の待遇の違いは鮮明だ。 2012年12月4日に「中共中央八項規定(中共中央の八項目の規約)」を審議し、決議された。「中共中央総書記、国務院総理が訪問をするとき、政府専用機を使用する。ほかの中央政治局常務委員が訪問する際は、必要に応じてビジネスチャーター機あるいは定期便を使うべき」と規定した。 これに従うと、李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた』、「李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた」、奥ゆかしいようだ。
・『習近平の子分のようにしか見えない  香港のメディア「星島網」は「ビジネスチャーター機を使って外遊するのは李強が自ら選んだのであろう。その目的は(自分が中国のリーダーで二番目と言うより)、他の常務委員と同じであることを示して、習近平の突出した地位を浮かび上がらせようとしている」と指摘した。 李強のこの行動からもう一つの信号が読み取れる。彼と習近平の関係である。習氏に信頼されているが、恐れと遠慮もかなり強い。 李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう。初外遊にも関わらず、規約に定められた専用機の使用を辞退した。 中国のことわざに「伴君如伴虎(君主に仕えるのは虎に仕える如し)」というものがある。習近平に対する忠誠心だけで任用されたので、常に姿勢を低くしなければならないのだろう。 他の常務委員会メンバーも同じで、すべて、習氏の言う通りにしているように見える。 今年の5月10日に、習近平は、北京から130kmほどの雄安新区を視察した。北京の機能の移転先と位置づける、習肝いりの新区だ。習は訪問に李強を含む3名の政治局常務委員を同行させた。これは中国において極めてまれなことだ。 胡錦涛時代には、国家主席が国務院総理と同時に地方視察した例は、ほぼなかった。安全保障の視点からは、主席と国務院総理は同時に外出してはならない。しかし、習近平は慣例を破った。現場の写真からは、李強は子分のようにしか見えなかった』、「李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう」、わざわざ格下の「ビジネスチャーター機」を使うとは涙ぐましい努力だ。
・『「習近平思想を指導する」  李強は着任してまもなく、「国務院工作規則」を修正し、公表した。指導思想からマルクス主義、毛沢東思想、鄧小平理論、(江沢民の)三つの代表、(胡錦涛の)科学的発展観を全部削除し、「国務院は習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導とする」とした。 李強はこうして、習近平とともに国の行政を管理する国務院総理から、単なる習氏の追従者に成り下がった。李強が用心深くビジネスチャーター機を使う心理が理解できる。 7月6日から9日まで、イエレン米財務長官が訪中した際、李強のほかに前の副総理の劉鶴とも会談した。本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している』、「本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している」、同感である。

第三に、この続きを、7月21日付け現代ビジネスが掲載した国際ジャーナルストの林愛華氏による「「消えた秦剛外相のミステリー」を追う…林愛華の「中南海ディープスロート」第3回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/113504?imp=0
・『秦剛の行方  中国の国務委員兼外相の秦剛が、6月25日のロシア外務次官との会談の後、もう1ヵ月近くも動静が途絶えている。外国人記者たちはこれに注目し、7月7日以降、中国外務省の定例の記者会見でたびたび問いただしているが、誤魔化されている。 秦剛外相は、EUの外相にあたるジョセップ・ボレル氏と北京で会談する予定だったが、到着予定の7月5日のわずか2日前になって、中国外務省はEU側に、秦外相は欠席すると伝えた(米メディア『ポリティコ』)。 そのため外国人記者たちは、秦剛に健康問題が生じたのではないかと問いただした。香港のメディアも7月10日、「秦外相が新型コロナウイルスに感染した」と報じた。 誤魔化しきれないと判断したのか、中国外務省は7月11日になって、秦氏が健康上の理由で、インドネシアで行われるアジア地域フォーラム(ARF)などの会議を欠席すると公表した。中国では、国家指導者の健康問題は高度な国家秘密。このように認めたことは極めて例外的な対応だった。 一石が投じられると千層の波が広がる。秦外相にまつわる様々な不穏な話が、中国内外のSNSで取りざたされた。日本のマスコミも取り上げたが、秦外相は香港フェニックステレビの著名な女性ジャーナリストとの不倫関係で調査を受け、動静が途絶えたのではないかと言われたほどだ。 中国のネット上では、裏に政治闘争の匂いをちらつかせるものも、次々と出てきた。 7月13日には、秦剛が6月25日に中央紀律検査委員会の取り調べを受けたと、北京に住むフリーランスの記者、高瑜がツイートした。7月14日には、中国の公安が現れ、秦外相に関するツイッターを削除させられたと、彼女は再びツイートした。 秦外相と不倫関係にある女性のスパイ説や、秦外相自身がアメリカに対して、中国のロケット部隊の秘密を漏洩したことに関して調査されたなどという話も流れた。7月17日には、秦外相が北京の「301病院」(中央軍事委員会が管理する幹部用病院)で死亡したという情報まで飛び出した。 中国では、権力闘争が激しくなると、このような噂が飛び交うものだ。秦外相の失脚を望む人間もいるからだ』、現職の外務大臣が1カ月近く消息不明というのは、いくら秘密国家とはいえ、異常事態だ。
・『水面下で起こる政治闘争  かつて中国外務省の看板スポークスマンと言われた趙立堅。過激な民族主義的発言で「戦狼(せんろう)外交官」(オオカミのように吠える外交官)の代表格と言われた人物であった。しかし秦剛が外相になる直前に降格されて、国境海洋事務局に異動し、その副局長に就任した。 当時、彼の降格人事は、秦剛に嫌われたからだと言われた。趙立堅の妻、湯天如は中国版SNSの「微博」(ウェイボー)で不満をぶちまけ、しばらく微博が更新停止となっていた。しかし今年の7月5日、唐突に、湯天如は「パキスタンのシャリフ総理から花束を贈られた、ありがとう」と、写真とともに「微博」に公開した。 7月10日、つまり中国外務省が秦外相の病気を公にした前日には、彼女は再び、「今天是个好日子(今日はいい日だ)」と「微博」を更新し、夫がスポークスマンだった当時の姿を記録するVTRとともに公開した。 その1時間後には再度、外交官を讃える旗の写真とともに、「皆様の支持に感謝する」とのコメントを公表した。「微博」での「復権」への嬉しさは隠せなかったようだ。 中国外務省では、1年前まで親ロシア派が重視され、勢力が強かった。しかし、2022年6月14日、外務副大臣(外交部副部長)で次期外相とも目された楽玉成が突然、国家ラジオテレビ局の副局長に異動。事実上の降格だった。 それから半年後、趙立堅スポークスマンも更迭された。この一連の動きは、外務省の親米派が絡んでいると見られてきた。そして、その後にアメリカとの関係を重視する駐米大使の秦剛が外相になった。 しかも、彼は弱冠57歳で、駐米中国大使から中央委員、外相、さらには外相兼任でその上の国務委員にまで上りつめた。異例の抜擢だ。外務省内の親米派が完全に勝利したかのように見えた。 楽玉成を始めとした親ロシア派は、面白くなかったろう。秦外相に嫌われたとされる戦狼外交官の趙立堅一家も、今回の秦外相の状況を喜んでいるのではないか。 習近平政権も3期目となり、李克強をはじめとする、いわゆる共青団派は全員、政権外に排除された。代わりに社会主義を固く信じ、民族主義者に映る人たちが台頭している。そのため中国は、現在の国際秩序にむやみに挑戦し、ますます国際社会から乖離している。 秦剛外相にまつわる騒動も、このような中国の情勢と関係がないとは言いきれない。 それにしても、いまだに中国外務省が沈黙を保っているのは不自然だ。1ヵ月近い外相の不在は、政治闘争が起こっているとの憶測を生むだけの十分な空白期間と言えるだろう』、「7月26日付けNHKは「中国 秦剛外相を解任 事実上の更迭か 後任に王毅政治局委」と伝えた。それにしても「後任に王毅政治局委」とは大ベテランの再登場だ、

第四に、8月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際コラムニストの加藤嘉一氏による「中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?」を紹介しよう。
・『日本の政府と企業の間で高まる「反スパイ法」への警戒と懸念  習近平第3次政権が本格始動して5カ月がたとうとしている。新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込めるために、3年以上続けてきた「ゼロコロナ」政策が解除された時期とも重なり、中国の“リオープニング”(再開放)に内外から期待がかけられた。 台湾海峡における潜在的衝突、半導体を巡る輸出規制、軍事交流メカニズムの遮断などに象徴される「米中対立」という地政学的構造問題に、日本の官民も必然的に巻き込まれている。そのたびに日中関係は緊張、不安定化し、中国に関わる事業を営む日本企業は、眠れない日々を過ごしているに違いない。 こうした中、日本政府および企業が、「中国との付き合い方」という意味で、足元最も警戒、懸念しているのが、いわゆる「反スパイ法」であろう。今年3月下旬、アステラス製薬現地法人の幹部が北京で拘束された事件(いまだ釈放されていない)は記憶に新しい。 中国政府は2014年11月に「反スパイ法」を公布、即日施行(同時に、1993年に採択された「国家安全法」は廃止)し、それ以来、計17人の邦人が拘束され、うち9人が実刑判決を受けてきた。 「コロナ禍は終わり、中国に行けるようになったが、行っても大丈夫ですか?」 「国際会議に招待されたが、身の安全のほうが大事だから断ることにした」 「普通のビジネスマンですが、中国で拘束される可能性もあるんですよね?」 「拘束されるリスクに対応するためにどうしたらいいでしょうか?持参しないほうがいいものはありますか?仮に拘束されたらどうすればいいでしょうか?」 特にアステラス製薬幹部の拘束以降、このような質問が筆者の元にも頻繁に寄せられている。この拘束事件が、習近平3期目の本格始動、「ゼロコロナ」解除からのリオープンのタイミングとほぼ重なっており、これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きたこともあり、邦人拘束を巡る法的根拠の一つである「反スパイ法」にますます多くの警戒と懸念が集まっているというのが現状であろう』、「これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きた」、「財界関係者」は短期的視点しか持ってないようなのは残念だ。
・『「反スパイ法」で押さえるべき10のポイント  実態は我々が想像するよりも深刻だと認識すべきだろう。 中国共産党結党記念日に当たる7月1日に「反スパイ法」の改正版が施行されたのである。新旧両バージョンの原文を熟読、比較したが、今回の改正は、単なる文言の修正ではなく、3期目入りした習近平政権の国家戦略を反映したものだというのが筆者の基本的判断である。以下、今回の改正において、押さえておくべきポイントを端的に示す。その上で、我々はそこからどんな示唆をくみ取るべきかについて若干の分析を試みる』、「実態は我々が想像するよりも深刻だと認識すべき」、なるほど。
・『中国における邦人拘束リスクは高まるのが必至  上の図表で整理したように、旧版と比べて新版「反スパイ法」は明らかに“進化”している。筆者が特に着目するのが4、7、8である。 4に関して、例えば、ある日本人が北朝鮮に対するスパイ行為をしたとして、その行為が、本件における“第三国”である中国の国家安全に危害を与えると、中国の国家安全当局が主観的に解釈した場合には、当事者である日本人が中国の国家安全当局によって拘束・逮捕され、中国の法律によって裁かれ得るということである。) しかも、2で示したように、「解釈権」はますます拡大しており、中国が国益に反すると見なした「不適切な人物」に対しては、総じて「反スパイ法」が適用される可能性が高くなったといえる。 7に関して、中国の組織や個人とコミュニケーションを取っているほとんどの日本人はテンセントが運営するWeChatのアカウントを有し、使用していると察するが、そのやりとりはすべて中国国家安全当局に見られている。より正確に言えば、同当局は、それらのやりとりを把握できる手段を有している。 そして、文字・通話・写真・文書(特に写真と文書は要注意)を含め、それらのやりとりが中国の国家安全に危害を与えると当局に解釈されれば、その当事者は「反スパイ法」に基づいて拘束・逮捕され、実刑判決を受け得るということである。 8に関して、(特に空港における)出入国時に起こり得る事態というのは、「反スパイ法」および邦人拘束を巡る極めて重要な要素であるが、容疑者の出国を巡る規定が従来以上に、かつ具体的に明文化された事実は重い。 中国と事業を展開している企業であれば、中国から追放された当事者がその日から10年間、中国への入国が禁止されるというのは、会社の事業・収益・評判などあらゆる意味で痛手となるに違いない。ただ、筆者が話を聞いている日本を含む各国の関係者は、中国に入国できないよりも、むしろ中国から出国できないリスクを警戒しているようではあるが。 いずれにせよ、日本企業を取り巻く中国の「反スパイ法」関連の動向、事態は刻一刻と深刻化している。と同時に覚えておかなければならないのは、冒頭の米中対立を含め、日中関係が悪化し、中国政府の日本の対日外交に対する不満や不信が高まれば高まるほど、邦人が「反スパイ法」容疑で中国国家安全当局によって拘束・逮捕される可能性が高まるという不都合な真実である。 ある意味、米中対立下における日本の対中外交、およびそれに対する中国政府の“解釈”が鍵を握っているということだ。そして、いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている。 自分の身は自分で守るしかないのだ』、「いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている」、負け犬根性まる出しだが、その前に「反スパイ法」の問題点を、日系企業の声を入れて堂々と主張するといった法律面の対応は十分に可能なのではなかろうか。
タグ:中国国内政治 (その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?) Newsweek日本版 ゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」 「2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった」、 「今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、「基盤」が「脆弱」になったとはどういうことだろう。 「自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、「長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。 政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している」、「中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという」、こんな難問を抱えて、「トップダウン式の意思決定システム」で乗り切ろうというのは、およそ正気の沙汰とは思えない。 「習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか」、これは軍の暴走を抑えられないことを意味し、極めて危険な兆候だ。 「軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ」、「習近平」が「軍部」を賢明に抑えることを期待したい。 現代ビジネス 林 愛華氏による「林愛華の「中南海ディープスロート」第2回 習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀」 「李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた」、奥ゆかしいようだ。 「李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう」、わざわざ格下の「ビジネスチャーター機」を使うとは涙ぐましい努力だ。 「本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している」、同感である。 林愛華氏による「「消えた秦剛外相のミステリー」を追う…林愛華の「中南海ディープスロート」第3回」 、現職の外務大臣が1カ月近く消息不明というのは、いくら秘密国家とはいえ、異常事態だ。 「7月26日付けNHKは「中国 秦剛外相を解任 事実上の更迭か 後任に王毅政治局委」と伝えた。それにしても「後任に王毅政治局委」とは大ベテランの再登場だ、 ダイヤモンド・オンライン 加藤嘉一氏による「中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?」 「これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きた」、「財界関係者」は短期的視点しか持ってないようなのは残念だ。 「いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている」、負け犬根性まる出しだが、その前に「反スパイ法」の問題点を、日系企業の声を入れて堂々と主張するといった法律面の対応は十分に可能なのではなかろうか。
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