イスラエル・パレスチナ(その1)(ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?、イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転 望めなくなった中東の安定、イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機 和平の機会はあるか?) [世界情勢]
今日は、イスラエル・パレスチナ(その1)(ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?、イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転 望めなくなった中東の安定、イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機 和平の機会はあるか?)を取上げよう。
先ずは、10月12日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707835
・『10月7日の夜明けにイスラエルへの奇襲攻撃が行われる前、イスラエル情報部は、監視しているパレスチナ自治区の武装勢力のネットワークの一部で活動が急増しているのを察知していた。イスラエルの治安当局の高官2人によれば、異変を察知した彼らは、ガザ地区国境を警備するイスラエル軍兵士に警告を送った。 ところが、兵士がそれを受け取らなかったか、兵士がそれを読まなかったために、警告は実行されなかった』、「イスラエル軍兵士」はもっとピリピリしていると思っていたが、そうでもないようだ。
・『遠隔操作を「阻止」 その直後、ガザ地区を支配するイスラム勢力の1つ、ハマスが無人偵察機を送り込み、イスラエル軍の携帯通信局と国境沿いの監視塔のいくつかを機能停止させ、当直将校がビデオカメラで遠隔監視するのを妨げた。ドローンはまた、イスラエルが国境の要塞に設置した遠隔操作の機関銃を破壊し、地上攻撃に対抗する重要な手段を取り除いた。 そのため、ハマスの戦闘員が国境フェンスに近づき、その一部を爆破したり、数カ所で驚くほど簡単にブルドーザーで破壊したりすることが容易になり、何千人ものパレスチナ人がその隙間を通り抜けることができるようになった。 センシティブな案件であり、現段階での評価しかできないとの理由で匿名を条件に取材に応じたイスラエル安全保障当局の4人の高官によれば、当局による後方支援や情報面でのさまざまな不手際は、ガザからイスラエル南部への侵入を容易にした。) イスラエルの20以上の町と軍基地への大胆な侵入は、過去50年間で最悪のイスラエル防衛網の破壊であり、国民の安全意識を打ち砕いた。何時間にもわたって、中東最強の軍隊は、自軍よりはるかに戦力的に劣る敵を反撃する力を失い、下着姿の兵士を含む900人以上のイスラエル人を殺害し、少なくとも150人を拉致、4つの軍事キャンプを制圧し、イスラエル領土の30平方マイル以上にわたって拡散した攻撃者集団に対してほとんど無防備のままだった』、「ハマス」側の作戦は見事で、「イスラエル側」の対応はお粗末だったようだ。
・『安全保障上4つの致命的失敗 この4人の当局者は、初期の評価に基づくと、ハマスによる攻撃の成功は、イスラエルの情報機関や軍による以下のような安全保障上の失敗に根ざしているとしている。 ・パレスチナの攻撃者が使用する主要な通信チャネルを監視する情報将校の怠慢 ・国境監視装置に過度に依存し、攻撃者が簡単にシャットダウンできたため、攻撃者が軍事基地を襲撃し、兵士を寝床で殺害することができた ・侵攻の初期段階で制圧された単一の国境基地に司令官を集中させ、他の軍隊との連絡を妨げたこと ・そして、パレスチナ人がイスラエルに監視されていることを知りながら民間チャネルで行った、ガザ地区の軍事指導者たちによる「戦闘の準備はしていない」という主張を額面通りに受け入れる姿勢 「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」。) 最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。 ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた』、「「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」、「最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。 ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた」、なるほど。
・『ハマス側の「演出」にだまされた? イスラエルの国家安全保障顧問であるツァチ・ハネグビは、襲撃の6日前にラジオのインタビューで、「ハマスがこれ以上反抗することの意味を理解している」と語った。 イスラエル情報当局が先週、国の防衛に対する最も差し迫った脅威について上級安全保障責任者に説明した際、彼らはイスラエル北部の国境沿いのレバノン過激派がもたらす危険に焦点を当てた。ハマスによる活動についてはほとんど触れられなかった。情報筋によると、イスラエル当局は、ハマス自体が抑止力になっていると伝えたという。 イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという。 次の失敗は作戦上のものだった。 2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。 イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた。) 長年、イスラエル南部の地上部隊を指揮し、2003年から2005年までイスラエル国防軍の作戦部長を務め、最近、戦争のために再び予備役として採用されたイスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍はヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。 「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」とジブは話す』、「イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという」、偽のオトリ情報を信じ込むとは。 初歩的な失敗だ。「次の失敗は作戦上のものだった。 2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。 イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた・・・イスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍はヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。 「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」、監視システムへの過信が原因になったようだ。
・『遠隔操作システムの「脆弱性」 しかし、遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばしたと、関係者や、7日にハマスによって利用され、ニューヨーク・タイムズによって分析されたドローンの映像は示している。 携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。 そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した。 イスラエル政府関係者の1人が公開した写真によれば、多数のイスラエル軍兵士が宿舎で寝ているところを銃撃された。中には下着姿の兵士もいた。 第2の作戦上の失敗は、陸軍ガザ師団の指導者たちが国境沿いの1カ所に集まっていたことだ。イスラエル政府関係者2人によれば、基地が制圧されると、幹部のほとんどが殺されるか、負傷するか、人質に取られた。) この状況は、無人機による空爆によって引き起こされたコミュニケーションの問題と相まって、協調的な対応を妨げていた。このため、イスラエルのほかの地域から反撃に駆けつけた司令官を含め、国境沿いの誰もが攻撃の全容を把握することができなかった。 反撃の指揮を執ったイスラエル軍司令官のダン・ゴールドファス准将は、「さまざまなテロ攻撃の全体像を把握するのは非常に困難だった」と語る。 ある地点で、同氏は偶然、別隊の司令官と出会った。その場で2人は、それぞれの部隊が奪還を試みる村をその場その場で決めた。「自分たちだけで決めた」とゴールドファスは語る。「そうやって村から村へと移動していった」』、「遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばした・・・携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。 そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した」、なんということだろう。
・『数分で着くところに数時間かかった こうしたことから、特に初期の段階では、テルアビブの軍最高司令部に事態の深刻さを伝えるのは困難だった。 その結果、多くのコミュニティで攻撃の報告がソーシャルメディアに上がっても、大規模で迅速な航空援護が直ちに必要だとは誰も感じなかった。イスラエル政府関係者と奇襲の生存者の2人によれば、空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。 この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。 7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。 イスラエル安全保障局は、最初の失敗の規模に異論はない。しかし、戦争が終わってからしか本格的な調査はできないとしている。 「まずはこれを終わらせる」と、軍のスポークスパーソンであるリチャード・ヘクト中佐は、軍がこの地域における支配権を取り戻そうとする準備をする中でこう語った。また、失敗についても「調査されるはずだ」と語っている』、「空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。 この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。 7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。 「資産」ではなくなったとすれば、さしずめマイナスの効果を持つ負債なのかも知れない。
次に、10/14東洋経済オンラインが掲載した米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長の渡辺 亮司氏による「イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転、望めなくなった中東の安定」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/708324
・『「9.11(アメリカ同時多発テロ事件)の10倍に値する」。 10月12日、イスラエルを訪問したアントニー・ブリンケン米国務長官は、パレスチナ・ガザ地区を実効支配する武装組織ハマスによるイスラエル攻撃の被害の大きさを、アメリカ国民も理解できるよう国の人口に対する被害者数の比率の大きさで語った。 ハマスの攻撃後、バイデン政権はイスラエル支援を表明し、イスラエル軍のガザ地区への地上侵攻も事実上支持。イスラエル・ハマス紛争を契機に、アメリカは泥沼化する中東情勢に再び深く関与せざるをえない様相を呈している』、興味深そうだ。
・『アメリカ社会で影響力を持つユダヤ系 欧州などの迫害を逃れたユダヤ系がアメリカに移住した長い歴史から、アメリカとイスラエルの関係は近い。ハマスのイスラエル侵攻以降、ワシントン近郊在住のユダヤ系アメリカ人から、イスラエルに住む親戚や友人を心配する声を聞くようになった。 長年、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)など圧力団体のロビー活動もあり、アメリカ政治では、イスラエル寄りの見方が支配的だ。産業界やメディアでも同じだ。この背景にはアメリカ社会におけるユダヤ系の大きな影響力がある。 ピュー研究所によるとアメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人、全国民の約2.4%に過ぎない。とはいえ、その人口はイスラエルに住むユダヤ人に匹敵する。アメリカ在住のユダヤ系は都市部に集中し、金融をはじめとする産業界や大手メディア、シンクタンク、学界、政界などアメリカ社会の中枢で活躍している。) バイデン政権は2021年8月にアメリカ軍のアフガニスタン撤退を完了し、同年末にイラク駐留軍の戦闘任務を終了させた。2022年に発表した国家安全保障戦略(NSS)からも、バイデン政権は対テロ戦争から「唯一の競争相手」として位置付ける中国との覇権争いに焦点をシフトしたことが明確であった。 そのため、バイデン政権は中東の安定を望んできた。 バイデン政権の外交政策の中核を担うジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は9月末、「中東地域は、過去20年で最も安定している」と語り、楽観的な見方を示したばかりであった。 しかし、イスラエル・ハマス紛争は今後、ますます中東地域の不安定化をもたらし、アメリカの中東に対する関与の拡大は必至だ。アジアに焦点をシフトしていたバイデン政権だが、少なくとも当面は中東情勢に対処しなければならなくなった』、「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人、全国民の約2.4%に過ぎない。とはいえ、その人口はイスラエルに住むユダヤ人に匹敵する。アメリカ在住のユダヤ系は都市部に集中し、金融をはじめとする産業界や大手メディア、シンクタンク、学界、政界などアメリカ社会の中枢で活躍している」、「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人」と「イスラエルに住むユダヤ人に匹敵する」、とは初めて知った。
・『最大のリスクは中東全域への飛び火 今日、バイデン政権が最も恐れるのが、中東地域で戦火が拡大することだ。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻すれば、レバノンを拠点とするシーア派組織ヒズボラが、イスラエルを北部から本格的に攻撃する可能性が高まる。ヒズボラはイスラエル全域を射程範囲とするミサイルを保有することからも、アメリカ政府はとくに警戒している。 イスラエルがヒズボラに応戦することで、ヒズボラの背後にいるイランも応戦するリスクがある。さらには、親イラン武装勢力のフーシ派などが、サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸諸国・周辺国を攻撃するリスクなども懸念されている。 つまり、戦火はガザ・イスラエルに止まらず、中東全域に拡大するリスクを秘めている。 そのため、ワシントンでは今のうちに念のため、中東各国の駐在員などの国外退避計画を準備しておくべきといった議論も出てきている。仮に戦火が拡大した場合、フライト手配などがより困難となるリスクがあるというのだ。) 10月13日、首都ワシントンの南バージニア州ノーフォーク海軍基地より、ドワイト・アイゼンハワー航空母艦がイスラエル沖の東地中海に向け出航。イタリア海軍との軍事訓練を終えたばかりのジェラルド・フォード航空母艦とともにイスラエル沖に配備され、アメリカは戦火拡大を抑止することを狙っている。 しかし、ヒズボラなどがアメリカの意図を正確に把握するかどうか、あるいは把握していてもロジカルに行動するかは不明だ。ガザ地区にイスラエル軍が侵攻した後、事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ』、「イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻すれば、レバノンを拠点とするシーア派組織ヒズボラが、イスラエルを北部から本格的に攻撃する可能性が高まる。ヒズボラはイスラエル全域を射程範囲とするミサイルを保有することからも、アメリカ政府はとくに警戒している。 イスラエルがヒズボラに応戦することで、ヒズボラの背後にいるイランも応戦するリスクがある。さらには、親イラン武装勢力のフーシ派などが、サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸諸国・周辺国を攻撃するリスクなども懸念されている。 つまり、戦火はガザ・イスラエルに止まらず、中東全域に拡大するリスクを秘めている」、「事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ」、なるほど。
・『原油価格の上昇でインフレ再燃も 仮にヒズボラが参戦すれば、バイデン政権はイランに対する原油制裁の取り締まりを厳格化し、イラン産原油の輸入国にも圧力を強めるであろう。またイラン政府によるホルムズ海峡封鎖の懸念の声もある。原油増産などでサウジアラビアの協力を得るのも、イスラエル軍を支援するアメリカはより困難となるであろう。 中東での戦火拡大は原油価格上昇、ガソリン価格上昇をもたらす公算が大きい。 9月、アメリカの消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.7%上昇と、2022年ピーク時の9.1%上昇からは大幅に下落。だが、中東情勢悪化を契機にインフレ懸念が再燃し、バイデン政権の経済政策に対する不満が高まるかもしれない。今後、大方の予想通り紛争が長引けば、2024年11月大統領選でバイデン再選に向かい風が吹くことが予想される。) 共和党の一部は、バイデン政権の対イラン弱腰外交がハマスのイスラエル攻撃の原因とも訴えている。バイデン政権のアメリカ軍アフガニスタン撤退の失態を発端に、ロシアのウクライナ侵攻、そしてイスラエル・ハマス紛争など連鎖が起きているとの指摘もある。 上院外交委員長や副大統領など経験が豊富なバイデン氏は、政権発足当初、外交政策が強みと見られていた。だが、今やその外交政策が同氏の信頼喪失を招き、支持回復の足を引っ張っている』、「上院外交委員長や副大統領など経験が豊富なバイデン氏は、政権発足当初、外交政策が強みと見られていた。だが、今やその外交政策が同氏の信頼喪失を招き、支持回復の足を引っ張っている」、確かに最近の「バイデン」は見ていられない。
・『国内でデモ拡大にテロリスクも なお、イスラエル・ハマス紛争で、アメリカ国内のテロリスクも懸念され始めている。ここ数日、ワシントン近郊のユダヤ系の建物、教会などでは警備が強化されている。 アメリカ国内ではイスラエル支持が強い。だが、イスラエル政府によるパレスチナ人迫害が、ハマスのイスラエル攻撃を招いたとの主張も一部に存在する。全米の大学のキャンパスでは、イスラエル支持派とパレスチナ支持派で意見の対立が浮き彫りとなっている。筆者も、卒業生の間で非難の応酬を目の当たりにした。 今後、国内でのデモ活動拡大やテロなど社会不安リスクは懸念材料だ。 9.11から約2年後の2003年10月、ドナルド・ラムズフェルド国防長官(当時)は、国防総省幹部に送付した書簡で「神学校と過激な聖職者がアメリカに対抗する人物をリクルート、育成、派遣するよりも多く、われわれはテロリストを毎日、捕獲、殺害、抑止、説得しているだろうか」と記述。自らが指揮を執っていたアメリカの対テロ戦争の成果について疑問を投げかけた。 ハマス破滅を狙うイスラエルに強力な支援を表明しているアメリカ政府だが、中東での戦火が拡大し、人道危機が長期化すれば、国民から同様の疑問の声が出てくるかもしれない。その際、アメリカ社会の中枢にいるユダヤ系の政権への影響力が試される。 いずれにせよ、バイデン政権は再び中東情勢に深入りすることとなり、当面は同地域がアメリカの頭痛の種となること必至だ』、「ハマス破滅を狙うイスラエルに強力な支援を表明しているアメリカ政府だが、中東での戦火が拡大し、人道危機が長期化すれば、国民から同様の疑問の声が出てくるかもしれない。その際、アメリカ社会の中枢にいるユダヤ系の政権への影響力が試される。 いずれにせよ、バイデン政権は再び中東情勢に深入りすることとなり、当面は同地域がアメリカの頭痛の種となること必至だ」、ユダヤ系の政権への影響力がいくら強いとはいえ、「アメリカ」が「イスラエル」全面支持というは頂けない。アラブ諸国を再び敵に回すのはいかにも不味い。トランプだったら、どうするだろうか。
第三に、10月20日付け東洋経済オンラインが掲載した 歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機、和平の機会はあるか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/709887
・『パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けて以来、激しい軍事衝突が続いている。はたして和平は可能なのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する』、興味深そうだ。
・『政治はしばしば科学実験のように行われる イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ。イスラム原理主義組織ハマスに占領された地域からのニュースと画像には身の毛がよだつ。私自身の友人や親族の多くも、言語に絶する残虐行為の被害に遭った。これは、今やパレスティナの人々もまた、計り知れぬ危険に直面していることを意味する。中東で最強の国であるイスラエルが、痛みと恐れと怒りで青ざめているのだから。パレスティナの人々の目に現状がどう映っているか、私にはわからないし、それについて語る道徳的権限もない。だが、イスラエルがこの上ない痛みを覚えている今、フェンスのイスラエル側からは、状況がどのように見えるかに関して、警告を発したい。 政治はしばしば、科学実験のように行われる。膨大な数の人を対象にし、倫理的な限度もほとんどない。福祉予算を増やしたり、ポピュリズム(大衆迎合主義)の大統領を選出したり、和平を申し入れたりするなど、何かを試し、結果を見届け、さらにその路線で進むことにしたり、あるいは方針を変え、何か別のことを試したりする。イスラエルとパレスティナの紛争も、そのように試行錯誤を重ねながら、数十年にわたって展開してきた。) イスラエルは、1990年代にオスロでの交渉で和平の機会を作った。パレスティナ人や一部の外部オブザーバーの視点からは、イスラエルの和平の申し出が不十分で傲慢なものだったことは私も承知しているが、それでも、イスラエルがそこまで譲歩したことは後にも先にもない。この交渉の最中に、イスラエルはパレスティナの自治政府にガザ地区の支配権を部分的に譲り渡した。その結果、どうなったか? イスラエルは、それまで経験したなかで最悪のテロ活動にさらされた。イスラエル人は、バスやレストランが毎日のように爆破された2000年代前半の日常生活の記憶に、今なおつきまとわれている。このテロ活動のせいで、何百人ものイスラエルの一般市民が亡くなったばかりでなく、和平のプロセスとイスラエルの左派も葬り去られた。イスラエルの和平の申し出は、譲歩が足りなかったのかもしれない。だが、それにテロ行為で応じるしかなかったのだろうか?』、「イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ」、犠牲者数がそこまで多かったとは初めて知った。「イスラエルはパレスティナの自治政府にガザ地区の支配権を部分的に譲り渡した。その結果、どうなったか? イスラエルは、それまで経験したなかで最悪のテロ活動にさらされた」、いイスラエル」側の見方であるにしても、やはりやり切れない思いがありそうだ。
・『目指したのは「中東のシンガポール」 和平プロセスが頓挫した後、イスラエルは次の実験として、ガザから撤退した。2000年代半ば、イスラエルはガザ地区全域から一方的に撤兵し、地区内のすべての入植地から引き揚げ、国際的に認められた1967年以前の国境線まで退いた。たしかにイスラエルは、ガザ地区の部分的封鎖とヨルダン川西岸地区の占領を続けた。それでもイスラエルにとって、ガザ地区からの撤退は依然として重大な一歩だったので、この実験の結果がどうなるかを、イスラエルの人々は固唾(かたず)をのんで見守った。そして、パレスティナ人がガザを、中東のシンガポールとでも呼ぶべき、繁栄する平和な都市国家に変えようと真摯に努力し、自治の機会を与えられれば何ができるかを世界やイスラエルの右派に示すことを、左派の残党は願った』、「パレスティナ人がガザを、中東のシンガポールとでも呼ぶべき、繁栄する平和な都市国家に変えようと真摯に努力し、自治の機会を与えられれば何ができるかを世界やイスラエルの右派に示すことを、左派の残党は願った」、しかし、そうした実験は失敗し、右派のネタニヤフ政権が「ガザ」を締め上げるに至ったようだ。
・『避難民用のテント もちろん、部分的封鎖の下でシンガポールのような国を築くのは難しい。それでもなお、誠実な試みはできたはずだ。そうしていれば、イスラエル政府は外国勢力と国民から、ガザ地区の封鎖を解除し、ヨルダン川西岸地区についても公正な合意に達するようにという、もっと大きな圧力がかかったことだろう。ところが、ハマスがガザ地区を武力制圧してテロ基地に変え、そこからイスラエルの一般市民に対する攻撃を繰り返した。こうして、この実験も失敗に終わった。 イスラエルの左派の残党は、これで完全に信用を失い、ベンヤミン・ネタニヤフが権力の座に就き、彼のタカ派の政権が成立した。そして、ネタニヤフが先頭に立って新たな実験を始めた。平和共存が失敗に終わったので、彼は暴力的共存政策を採用した。イスラエルとハマスは毎週のように攻撃し合い、ほぼ毎年大規模な軍事作戦を展開したが、それでもイスラエルの一般市民は15年にわたり、フェンスを挟んでハマスの基地から数百メートル以内で暮らし続けることができた。イスラエルの熱狂的なメシア(救世主)信仰者たちでさえ、ガザ地区の再占領にはほとんど熱意を示さなかったし、右派さえ、ハマスも200万を超える人々を統治する責任を負えば、徐々に過激でなくなるだろうと期待した。) 実際、イスラエルの右派には、ハマスのほうがパレスティナ自治政府よりも与(くみ)しやすいと見る人が多かった。イスラエルのタカ派は、ヨルダン川西岸地区の支配の継続を願っており、平和協定の締結を恐れていたからだ。ハマスはイスラエルの右派に、願ってもない状況をもたらしてくれるように見えた。すなわち、ガザ地区を治める義務からイスラエルを解放し、しかも、ヨルダン川西岸地区のイスラエル支配を放棄させかねない和平の申し出をせずに済むという状況だ。だが、イスラエルが経験したばかりの恐怖の1日は、暴力的な共存というネタニヤフの実験の終わりを告げた』、「ハマスはイスラエルの右派に、願ってもない状況をもたらしてくれるように見えた。すなわち、ガザ地区を治める義務からイスラエルを解放し、しかも、ヨルダン川西岸地区のイスラエル支配を放棄させかねない和平の申し出をせずに済むという状況だ。だが、イスラエルが経験したばかりの恐怖の1日は、暴力的な共存というネタニヤフの実験の終わりを告げた」、なるほど。
・『和平プロセスにとどめを刺す可能性が高い では、次はどうなるのか? 確かなことは誰にもわからないが、イスラエルでは、ガザ地区の再征服、あるいは砲爆撃による粉砕に傾く声も一部で上がっている。そのような政策をとれば、この地域に1948年以降最悪の人道的危機を招きうる。イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとヨルダン川西岸地区のパレスティナ人の勢力がこの争いに加わればなおさらで、死者の数は何千人にも達し、それに加えて何百万もの人が住まいを追われることになりかねない。フェンスの両側には、神の約束と1948年の戦争(訳注:第1次中東戦争)に固執する宗教的狂信者がいる。パレスティナ人は、あの戦争の結果を覆すことを夢見る。ベザレル・スモトリッチ財務相のようなユダヤ教の熱狂的信者は、イスラエルのアラブ系市民に対してさえ、「諸君は手違いによってここにいるのだ。なぜならベン=グリオン[イスラエルの初代首相]が48年にけりをつけそこなって、諸君を追い出さなかったからだ」と警告した。2023年は、両陣営の狂信者たちが自らの宗教的幻想を追い求め、1948年の戦争を徹底的に再現することを許しうる。 たとえ事態がそこまで極端な局面を迎えることがなかったとしても、今回の争いは、イスラエルとパレスティナの和平プロセスにとどめを刺す可能性が高い。ガザ地区との境界に沿ったキブツはみな、これまでずっと社会主義のコミューンであり、イスラエルの左派のとりわけ頑強な砦だった。ガザ地区からの何年にもわたるほぼ連日のロケット弾攻撃の後でさえ、カルト宗教にしがみつくように、依然として和平の希望に執着していたそれらのキブツの住民を、私は知っている。だが、そうしたキブツは、今や跡形もなくなった。そして、最後まで残っていた平和運動家たちの一部は、殺害されたか、愛する者たちを埋葬しているか、ガザ地区に連れ去られて人質にされているかのいずれかだ。たとえば、長年ガザ地区の病人をイスラエルの病院に搬送してきた、キブツ・ベエリの平和活動家ヴィヴィアン・シルヴァーは行方不明になっており、人質としてガザ地区に拘束されているらしい。) すでに起こったことは、取り消しにはできない。死者を生き返らせることは不可能だし、個人的なトラウマも完全に癒えることはけっしてないだろう。だが、これ以上の事態の悪化は防がなければならない。現在この地域の勢力の多くは、無責任な宗教的狂信者が率いている。したがって、外部の勢力が介入して、この紛争を鎮静化させる必要がある。和平を望む人は誰であれ、ハマスの残虐行為を断固非難し、人質全員をただちに無条件解放するようハマスに圧力をかけ、ヒズボラとイランが介入するのを思いとどまらせるのに協力しなければならない。そうすれば、イスラエルの人々は一息ついて考え、かすかな希望を抱く余裕を得られるだろう』、「依然として和平の希望に執着していたそれらのキブツの住民を、私は知っている。だが、そうしたキブツは、今や跡形もなくなった。そして、最後まで残っていた平和運動家たちの一部は、殺害されたか、愛する者たちを埋葬しているか、ガザ地区に連れ去られて人質にされているかのいずれかだ。たとえば、長年ガザ地区の病人をイスラエルの病院に搬送してきた、キブツ・ベエリの平和活動家ヴィヴィアン・シルヴァーは行方不明になっており、人質としてガザ地区に拘束されているらしい」、イスラエルの左派が「キブツ」を中心に活動していたとは、初めて知った。
・『ガザ地区を非武装化すべき さらに、アメリカ合衆国とEU(欧州連合)からサウジアラビアとパレスティナ自治政府に及ぶ有志連合を結成して、ガザ地区の支配権をハマスから取り去り、この地区を再建すると同時に、ハマスを完全に武装解除し、ガザ地区を非武装化するべきだ。 こうした措置が実行される可能性はわずかしかない。だが、今回の戦慄の事態の後、イスラエル人のほとんどは、それが実現しないかぎり、とうてい生きていけないと考えているのだ。 (訳・柴田裕之氏) ユヴァル・ノア・ハラリイスラエルの歴史学者、哲学者。ヘブライ大学教授。著書『サピエンス全史』『ホモ・デウス』、近著に『人類の物語 Unstoppable Us』シリーズなど(いずれも河出書房新社刊)。 *本寄稿文の英語版は、2023年10月12日、英ガーディアン紙に掲載された』、「ガザ地区を非武装化すべき」というのは、いいアイデアのようだが、「実行される可能性はわずかしかない」ようだ。ただ、それに向けた努力が必要だ。ただ、そのためには、ガザ地区へのイスラエル軍の侵攻は、極めて自制したものである必要がある。
先ずは、10月12日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707835
・『10月7日の夜明けにイスラエルへの奇襲攻撃が行われる前、イスラエル情報部は、監視しているパレスチナ自治区の武装勢力のネットワークの一部で活動が急増しているのを察知していた。イスラエルの治安当局の高官2人によれば、異変を察知した彼らは、ガザ地区国境を警備するイスラエル軍兵士に警告を送った。 ところが、兵士がそれを受け取らなかったか、兵士がそれを読まなかったために、警告は実行されなかった』、「イスラエル軍兵士」はもっとピリピリしていると思っていたが、そうでもないようだ。
・『遠隔操作を「阻止」 その直後、ガザ地区を支配するイスラム勢力の1つ、ハマスが無人偵察機を送り込み、イスラエル軍の携帯通信局と国境沿いの監視塔のいくつかを機能停止させ、当直将校がビデオカメラで遠隔監視するのを妨げた。ドローンはまた、イスラエルが国境の要塞に設置した遠隔操作の機関銃を破壊し、地上攻撃に対抗する重要な手段を取り除いた。 そのため、ハマスの戦闘員が国境フェンスに近づき、その一部を爆破したり、数カ所で驚くほど簡単にブルドーザーで破壊したりすることが容易になり、何千人ものパレスチナ人がその隙間を通り抜けることができるようになった。 センシティブな案件であり、現段階での評価しかできないとの理由で匿名を条件に取材に応じたイスラエル安全保障当局の4人の高官によれば、当局による後方支援や情報面でのさまざまな不手際は、ガザからイスラエル南部への侵入を容易にした。) イスラエルの20以上の町と軍基地への大胆な侵入は、過去50年間で最悪のイスラエル防衛網の破壊であり、国民の安全意識を打ち砕いた。何時間にもわたって、中東最強の軍隊は、自軍よりはるかに戦力的に劣る敵を反撃する力を失い、下着姿の兵士を含む900人以上のイスラエル人を殺害し、少なくとも150人を拉致、4つの軍事キャンプを制圧し、イスラエル領土の30平方マイル以上にわたって拡散した攻撃者集団に対してほとんど無防備のままだった』、「ハマス」側の作戦は見事で、「イスラエル側」の対応はお粗末だったようだ。
・『安全保障上4つの致命的失敗 この4人の当局者は、初期の評価に基づくと、ハマスによる攻撃の成功は、イスラエルの情報機関や軍による以下のような安全保障上の失敗に根ざしているとしている。 ・パレスチナの攻撃者が使用する主要な通信チャネルを監視する情報将校の怠慢 ・国境監視装置に過度に依存し、攻撃者が簡単にシャットダウンできたため、攻撃者が軍事基地を襲撃し、兵士を寝床で殺害することができた ・侵攻の初期段階で制圧された単一の国境基地に司令官を集中させ、他の軍隊との連絡を妨げたこと ・そして、パレスチナ人がイスラエルに監視されていることを知りながら民間チャネルで行った、ガザ地区の軍事指導者たちによる「戦闘の準備はしていない」という主張を額面通りに受け入れる姿勢 「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」。) 最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。 ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた』、「「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」、「最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。 ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた」、なるほど。
・『ハマス側の「演出」にだまされた? イスラエルの国家安全保障顧問であるツァチ・ハネグビは、襲撃の6日前にラジオのインタビューで、「ハマスがこれ以上反抗することの意味を理解している」と語った。 イスラエル情報当局が先週、国の防衛に対する最も差し迫った脅威について上級安全保障責任者に説明した際、彼らはイスラエル北部の国境沿いのレバノン過激派がもたらす危険に焦点を当てた。ハマスによる活動についてはほとんど触れられなかった。情報筋によると、イスラエル当局は、ハマス自体が抑止力になっていると伝えたという。 イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという。 次の失敗は作戦上のものだった。 2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。 イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた。) 長年、イスラエル南部の地上部隊を指揮し、2003年から2005年までイスラエル国防軍の作戦部長を務め、最近、戦争のために再び予備役として採用されたイスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍はヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。 「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」とジブは話す』、「イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという」、偽のオトリ情報を信じ込むとは。 初歩的な失敗だ。「次の失敗は作戦上のものだった。 2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。 イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた・・・イスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍はヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。 「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」、監視システムへの過信が原因になったようだ。
・『遠隔操作システムの「脆弱性」 しかし、遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばしたと、関係者や、7日にハマスによって利用され、ニューヨーク・タイムズによって分析されたドローンの映像は示している。 携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。 そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した。 イスラエル政府関係者の1人が公開した写真によれば、多数のイスラエル軍兵士が宿舎で寝ているところを銃撃された。中には下着姿の兵士もいた。 第2の作戦上の失敗は、陸軍ガザ師団の指導者たちが国境沿いの1カ所に集まっていたことだ。イスラエル政府関係者2人によれば、基地が制圧されると、幹部のほとんどが殺されるか、負傷するか、人質に取られた。) この状況は、無人機による空爆によって引き起こされたコミュニケーションの問題と相まって、協調的な対応を妨げていた。このため、イスラエルのほかの地域から反撃に駆けつけた司令官を含め、国境沿いの誰もが攻撃の全容を把握することができなかった。 反撃の指揮を執ったイスラエル軍司令官のダン・ゴールドファス准将は、「さまざまなテロ攻撃の全体像を把握するのは非常に困難だった」と語る。 ある地点で、同氏は偶然、別隊の司令官と出会った。その場で2人は、それぞれの部隊が奪還を試みる村をその場その場で決めた。「自分たちだけで決めた」とゴールドファスは語る。「そうやって村から村へと移動していった」』、「遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばした・・・携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。 そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した」、なんということだろう。
・『数分で着くところに数時間かかった こうしたことから、特に初期の段階では、テルアビブの軍最高司令部に事態の深刻さを伝えるのは困難だった。 その結果、多くのコミュニティで攻撃の報告がソーシャルメディアに上がっても、大規模で迅速な航空援護が直ちに必要だとは誰も感じなかった。イスラエル政府関係者と奇襲の生存者の2人によれば、空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。 この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。 7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。 イスラエル安全保障局は、最初の失敗の規模に異論はない。しかし、戦争が終わってからしか本格的な調査はできないとしている。 「まずはこれを終わらせる」と、軍のスポークスパーソンであるリチャード・ヘクト中佐は、軍がこの地域における支配権を取り戻そうとする準備をする中でこう語った。また、失敗についても「調査されるはずだ」と語っている』、「空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。 この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。 7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。 「資産」ではなくなったとすれば、さしずめマイナスの効果を持つ負債なのかも知れない。
次に、10/14東洋経済オンラインが掲載した米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長の渡辺 亮司氏による「イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転、望めなくなった中東の安定」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/708324
・『「9.11(アメリカ同時多発テロ事件)の10倍に値する」。 10月12日、イスラエルを訪問したアントニー・ブリンケン米国務長官は、パレスチナ・ガザ地区を実効支配する武装組織ハマスによるイスラエル攻撃の被害の大きさを、アメリカ国民も理解できるよう国の人口に対する被害者数の比率の大きさで語った。 ハマスの攻撃後、バイデン政権はイスラエル支援を表明し、イスラエル軍のガザ地区への地上侵攻も事実上支持。イスラエル・ハマス紛争を契機に、アメリカは泥沼化する中東情勢に再び深く関与せざるをえない様相を呈している』、興味深そうだ。
・『アメリカ社会で影響力を持つユダヤ系 欧州などの迫害を逃れたユダヤ系がアメリカに移住した長い歴史から、アメリカとイスラエルの関係は近い。ハマスのイスラエル侵攻以降、ワシントン近郊在住のユダヤ系アメリカ人から、イスラエルに住む親戚や友人を心配する声を聞くようになった。 長年、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)など圧力団体のロビー活動もあり、アメリカ政治では、イスラエル寄りの見方が支配的だ。産業界やメディアでも同じだ。この背景にはアメリカ社会におけるユダヤ系の大きな影響力がある。 ピュー研究所によるとアメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人、全国民の約2.4%に過ぎない。とはいえ、その人口はイスラエルに住むユダヤ人に匹敵する。アメリカ在住のユダヤ系は都市部に集中し、金融をはじめとする産業界や大手メディア、シンクタンク、学界、政界などアメリカ社会の中枢で活躍している。) バイデン政権は2021年8月にアメリカ軍のアフガニスタン撤退を完了し、同年末にイラク駐留軍の戦闘任務を終了させた。2022年に発表した国家安全保障戦略(NSS)からも、バイデン政権は対テロ戦争から「唯一の競争相手」として位置付ける中国との覇権争いに焦点をシフトしたことが明確であった。 そのため、バイデン政権は中東の安定を望んできた。 バイデン政権の外交政策の中核を担うジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は9月末、「中東地域は、過去20年で最も安定している」と語り、楽観的な見方を示したばかりであった。 しかし、イスラエル・ハマス紛争は今後、ますます中東地域の不安定化をもたらし、アメリカの中東に対する関与の拡大は必至だ。アジアに焦点をシフトしていたバイデン政権だが、少なくとも当面は中東情勢に対処しなければならなくなった』、「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人、全国民の約2.4%に過ぎない。とはいえ、その人口はイスラエルに住むユダヤ人に匹敵する。アメリカ在住のユダヤ系は都市部に集中し、金融をはじめとする産業界や大手メディア、シンクタンク、学界、政界などアメリカ社会の中枢で活躍している」、「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人」と「イスラエルに住むユダヤ人に匹敵する」、とは初めて知った。
・『最大のリスクは中東全域への飛び火 今日、バイデン政権が最も恐れるのが、中東地域で戦火が拡大することだ。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻すれば、レバノンを拠点とするシーア派組織ヒズボラが、イスラエルを北部から本格的に攻撃する可能性が高まる。ヒズボラはイスラエル全域を射程範囲とするミサイルを保有することからも、アメリカ政府はとくに警戒している。 イスラエルがヒズボラに応戦することで、ヒズボラの背後にいるイランも応戦するリスクがある。さらには、親イラン武装勢力のフーシ派などが、サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸諸国・周辺国を攻撃するリスクなども懸念されている。 つまり、戦火はガザ・イスラエルに止まらず、中東全域に拡大するリスクを秘めている。 そのため、ワシントンでは今のうちに念のため、中東各国の駐在員などの国外退避計画を準備しておくべきといった議論も出てきている。仮に戦火が拡大した場合、フライト手配などがより困難となるリスクがあるというのだ。) 10月13日、首都ワシントンの南バージニア州ノーフォーク海軍基地より、ドワイト・アイゼンハワー航空母艦がイスラエル沖の東地中海に向け出航。イタリア海軍との軍事訓練を終えたばかりのジェラルド・フォード航空母艦とともにイスラエル沖に配備され、アメリカは戦火拡大を抑止することを狙っている。 しかし、ヒズボラなどがアメリカの意図を正確に把握するかどうか、あるいは把握していてもロジカルに行動するかは不明だ。ガザ地区にイスラエル軍が侵攻した後、事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ』、「イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻すれば、レバノンを拠点とするシーア派組織ヒズボラが、イスラエルを北部から本格的に攻撃する可能性が高まる。ヒズボラはイスラエル全域を射程範囲とするミサイルを保有することからも、アメリカ政府はとくに警戒している。 イスラエルがヒズボラに応戦することで、ヒズボラの背後にいるイランも応戦するリスクがある。さらには、親イラン武装勢力のフーシ派などが、サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸諸国・周辺国を攻撃するリスクなども懸念されている。 つまり、戦火はガザ・イスラエルに止まらず、中東全域に拡大するリスクを秘めている」、「事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ」、なるほど。
・『原油価格の上昇でインフレ再燃も 仮にヒズボラが参戦すれば、バイデン政権はイランに対する原油制裁の取り締まりを厳格化し、イラン産原油の輸入国にも圧力を強めるであろう。またイラン政府によるホルムズ海峡封鎖の懸念の声もある。原油増産などでサウジアラビアの協力を得るのも、イスラエル軍を支援するアメリカはより困難となるであろう。 中東での戦火拡大は原油価格上昇、ガソリン価格上昇をもたらす公算が大きい。 9月、アメリカの消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.7%上昇と、2022年ピーク時の9.1%上昇からは大幅に下落。だが、中東情勢悪化を契機にインフレ懸念が再燃し、バイデン政権の経済政策に対する不満が高まるかもしれない。今後、大方の予想通り紛争が長引けば、2024年11月大統領選でバイデン再選に向かい風が吹くことが予想される。) 共和党の一部は、バイデン政権の対イラン弱腰外交がハマスのイスラエル攻撃の原因とも訴えている。バイデン政権のアメリカ軍アフガニスタン撤退の失態を発端に、ロシアのウクライナ侵攻、そしてイスラエル・ハマス紛争など連鎖が起きているとの指摘もある。 上院外交委員長や副大統領など経験が豊富なバイデン氏は、政権発足当初、外交政策が強みと見られていた。だが、今やその外交政策が同氏の信頼喪失を招き、支持回復の足を引っ張っている』、「上院外交委員長や副大統領など経験が豊富なバイデン氏は、政権発足当初、外交政策が強みと見られていた。だが、今やその外交政策が同氏の信頼喪失を招き、支持回復の足を引っ張っている」、確かに最近の「バイデン」は見ていられない。
・『国内でデモ拡大にテロリスクも なお、イスラエル・ハマス紛争で、アメリカ国内のテロリスクも懸念され始めている。ここ数日、ワシントン近郊のユダヤ系の建物、教会などでは警備が強化されている。 アメリカ国内ではイスラエル支持が強い。だが、イスラエル政府によるパレスチナ人迫害が、ハマスのイスラエル攻撃を招いたとの主張も一部に存在する。全米の大学のキャンパスでは、イスラエル支持派とパレスチナ支持派で意見の対立が浮き彫りとなっている。筆者も、卒業生の間で非難の応酬を目の当たりにした。 今後、国内でのデモ活動拡大やテロなど社会不安リスクは懸念材料だ。 9.11から約2年後の2003年10月、ドナルド・ラムズフェルド国防長官(当時)は、国防総省幹部に送付した書簡で「神学校と過激な聖職者がアメリカに対抗する人物をリクルート、育成、派遣するよりも多く、われわれはテロリストを毎日、捕獲、殺害、抑止、説得しているだろうか」と記述。自らが指揮を執っていたアメリカの対テロ戦争の成果について疑問を投げかけた。 ハマス破滅を狙うイスラエルに強力な支援を表明しているアメリカ政府だが、中東での戦火が拡大し、人道危機が長期化すれば、国民から同様の疑問の声が出てくるかもしれない。その際、アメリカ社会の中枢にいるユダヤ系の政権への影響力が試される。 いずれにせよ、バイデン政権は再び中東情勢に深入りすることとなり、当面は同地域がアメリカの頭痛の種となること必至だ』、「ハマス破滅を狙うイスラエルに強力な支援を表明しているアメリカ政府だが、中東での戦火が拡大し、人道危機が長期化すれば、国民から同様の疑問の声が出てくるかもしれない。その際、アメリカ社会の中枢にいるユダヤ系の政権への影響力が試される。 いずれにせよ、バイデン政権は再び中東情勢に深入りすることとなり、当面は同地域がアメリカの頭痛の種となること必至だ」、ユダヤ系の政権への影響力がいくら強いとはいえ、「アメリカ」が「イスラエル」全面支持というは頂けない。アラブ諸国を再び敵に回すのはいかにも不味い。トランプだったら、どうするだろうか。
第三に、10月20日付け東洋経済オンラインが掲載した 歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機、和平の機会はあるか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/709887
・『パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けて以来、激しい軍事衝突が続いている。はたして和平は可能なのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する』、興味深そうだ。
・『政治はしばしば科学実験のように行われる イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ。イスラム原理主義組織ハマスに占領された地域からのニュースと画像には身の毛がよだつ。私自身の友人や親族の多くも、言語に絶する残虐行為の被害に遭った。これは、今やパレスティナの人々もまた、計り知れぬ危険に直面していることを意味する。中東で最強の国であるイスラエルが、痛みと恐れと怒りで青ざめているのだから。パレスティナの人々の目に現状がどう映っているか、私にはわからないし、それについて語る道徳的権限もない。だが、イスラエルがこの上ない痛みを覚えている今、フェンスのイスラエル側からは、状況がどのように見えるかに関して、警告を発したい。 政治はしばしば、科学実験のように行われる。膨大な数の人を対象にし、倫理的な限度もほとんどない。福祉予算を増やしたり、ポピュリズム(大衆迎合主義)の大統領を選出したり、和平を申し入れたりするなど、何かを試し、結果を見届け、さらにその路線で進むことにしたり、あるいは方針を変え、何か別のことを試したりする。イスラエルとパレスティナの紛争も、そのように試行錯誤を重ねながら、数十年にわたって展開してきた。) イスラエルは、1990年代にオスロでの交渉で和平の機会を作った。パレスティナ人や一部の外部オブザーバーの視点からは、イスラエルの和平の申し出が不十分で傲慢なものだったことは私も承知しているが、それでも、イスラエルがそこまで譲歩したことは後にも先にもない。この交渉の最中に、イスラエルはパレスティナの自治政府にガザ地区の支配権を部分的に譲り渡した。その結果、どうなったか? イスラエルは、それまで経験したなかで最悪のテロ活動にさらされた。イスラエル人は、バスやレストランが毎日のように爆破された2000年代前半の日常生活の記憶に、今なおつきまとわれている。このテロ活動のせいで、何百人ものイスラエルの一般市民が亡くなったばかりでなく、和平のプロセスとイスラエルの左派も葬り去られた。イスラエルの和平の申し出は、譲歩が足りなかったのかもしれない。だが、それにテロ行為で応じるしかなかったのだろうか?』、「イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ」、犠牲者数がそこまで多かったとは初めて知った。「イスラエルはパレスティナの自治政府にガザ地区の支配権を部分的に譲り渡した。その結果、どうなったか? イスラエルは、それまで経験したなかで最悪のテロ活動にさらされた」、いイスラエル」側の見方であるにしても、やはりやり切れない思いがありそうだ。
・『目指したのは「中東のシンガポール」 和平プロセスが頓挫した後、イスラエルは次の実験として、ガザから撤退した。2000年代半ば、イスラエルはガザ地区全域から一方的に撤兵し、地区内のすべての入植地から引き揚げ、国際的に認められた1967年以前の国境線まで退いた。たしかにイスラエルは、ガザ地区の部分的封鎖とヨルダン川西岸地区の占領を続けた。それでもイスラエルにとって、ガザ地区からの撤退は依然として重大な一歩だったので、この実験の結果がどうなるかを、イスラエルの人々は固唾(かたず)をのんで見守った。そして、パレスティナ人がガザを、中東のシンガポールとでも呼ぶべき、繁栄する平和な都市国家に変えようと真摯に努力し、自治の機会を与えられれば何ができるかを世界やイスラエルの右派に示すことを、左派の残党は願った』、「パレスティナ人がガザを、中東のシンガポールとでも呼ぶべき、繁栄する平和な都市国家に変えようと真摯に努力し、自治の機会を与えられれば何ができるかを世界やイスラエルの右派に示すことを、左派の残党は願った」、しかし、そうした実験は失敗し、右派のネタニヤフ政権が「ガザ」を締め上げるに至ったようだ。
・『避難民用のテント もちろん、部分的封鎖の下でシンガポールのような国を築くのは難しい。それでもなお、誠実な試みはできたはずだ。そうしていれば、イスラエル政府は外国勢力と国民から、ガザ地区の封鎖を解除し、ヨルダン川西岸地区についても公正な合意に達するようにという、もっと大きな圧力がかかったことだろう。ところが、ハマスがガザ地区を武力制圧してテロ基地に変え、そこからイスラエルの一般市民に対する攻撃を繰り返した。こうして、この実験も失敗に終わった。 イスラエルの左派の残党は、これで完全に信用を失い、ベンヤミン・ネタニヤフが権力の座に就き、彼のタカ派の政権が成立した。そして、ネタニヤフが先頭に立って新たな実験を始めた。平和共存が失敗に終わったので、彼は暴力的共存政策を採用した。イスラエルとハマスは毎週のように攻撃し合い、ほぼ毎年大規模な軍事作戦を展開したが、それでもイスラエルの一般市民は15年にわたり、フェンスを挟んでハマスの基地から数百メートル以内で暮らし続けることができた。イスラエルの熱狂的なメシア(救世主)信仰者たちでさえ、ガザ地区の再占領にはほとんど熱意を示さなかったし、右派さえ、ハマスも200万を超える人々を統治する責任を負えば、徐々に過激でなくなるだろうと期待した。) 実際、イスラエルの右派には、ハマスのほうがパレスティナ自治政府よりも与(くみ)しやすいと見る人が多かった。イスラエルのタカ派は、ヨルダン川西岸地区の支配の継続を願っており、平和協定の締結を恐れていたからだ。ハマスはイスラエルの右派に、願ってもない状況をもたらしてくれるように見えた。すなわち、ガザ地区を治める義務からイスラエルを解放し、しかも、ヨルダン川西岸地区のイスラエル支配を放棄させかねない和平の申し出をせずに済むという状況だ。だが、イスラエルが経験したばかりの恐怖の1日は、暴力的な共存というネタニヤフの実験の終わりを告げた』、「ハマスはイスラエルの右派に、願ってもない状況をもたらしてくれるように見えた。すなわち、ガザ地区を治める義務からイスラエルを解放し、しかも、ヨルダン川西岸地区のイスラエル支配を放棄させかねない和平の申し出をせずに済むという状況だ。だが、イスラエルが経験したばかりの恐怖の1日は、暴力的な共存というネタニヤフの実験の終わりを告げた」、なるほど。
・『和平プロセスにとどめを刺す可能性が高い では、次はどうなるのか? 確かなことは誰にもわからないが、イスラエルでは、ガザ地区の再征服、あるいは砲爆撃による粉砕に傾く声も一部で上がっている。そのような政策をとれば、この地域に1948年以降最悪の人道的危機を招きうる。イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとヨルダン川西岸地区のパレスティナ人の勢力がこの争いに加わればなおさらで、死者の数は何千人にも達し、それに加えて何百万もの人が住まいを追われることになりかねない。フェンスの両側には、神の約束と1948年の戦争(訳注:第1次中東戦争)に固執する宗教的狂信者がいる。パレスティナ人は、あの戦争の結果を覆すことを夢見る。ベザレル・スモトリッチ財務相のようなユダヤ教の熱狂的信者は、イスラエルのアラブ系市民に対してさえ、「諸君は手違いによってここにいるのだ。なぜならベン=グリオン[イスラエルの初代首相]が48年にけりをつけそこなって、諸君を追い出さなかったからだ」と警告した。2023年は、両陣営の狂信者たちが自らの宗教的幻想を追い求め、1948年の戦争を徹底的に再現することを許しうる。 たとえ事態がそこまで極端な局面を迎えることがなかったとしても、今回の争いは、イスラエルとパレスティナの和平プロセスにとどめを刺す可能性が高い。ガザ地区との境界に沿ったキブツはみな、これまでずっと社会主義のコミューンであり、イスラエルの左派のとりわけ頑強な砦だった。ガザ地区からの何年にもわたるほぼ連日のロケット弾攻撃の後でさえ、カルト宗教にしがみつくように、依然として和平の希望に執着していたそれらのキブツの住民を、私は知っている。だが、そうしたキブツは、今や跡形もなくなった。そして、最後まで残っていた平和運動家たちの一部は、殺害されたか、愛する者たちを埋葬しているか、ガザ地区に連れ去られて人質にされているかのいずれかだ。たとえば、長年ガザ地区の病人をイスラエルの病院に搬送してきた、キブツ・ベエリの平和活動家ヴィヴィアン・シルヴァーは行方不明になっており、人質としてガザ地区に拘束されているらしい。) すでに起こったことは、取り消しにはできない。死者を生き返らせることは不可能だし、個人的なトラウマも完全に癒えることはけっしてないだろう。だが、これ以上の事態の悪化は防がなければならない。現在この地域の勢力の多くは、無責任な宗教的狂信者が率いている。したがって、外部の勢力が介入して、この紛争を鎮静化させる必要がある。和平を望む人は誰であれ、ハマスの残虐行為を断固非難し、人質全員をただちに無条件解放するようハマスに圧力をかけ、ヒズボラとイランが介入するのを思いとどまらせるのに協力しなければならない。そうすれば、イスラエルの人々は一息ついて考え、かすかな希望を抱く余裕を得られるだろう』、「依然として和平の希望に執着していたそれらのキブツの住民を、私は知っている。だが、そうしたキブツは、今や跡形もなくなった。そして、最後まで残っていた平和運動家たちの一部は、殺害されたか、愛する者たちを埋葬しているか、ガザ地区に連れ去られて人質にされているかのいずれかだ。たとえば、長年ガザ地区の病人をイスラエルの病院に搬送してきた、キブツ・ベエリの平和活動家ヴィヴィアン・シルヴァーは行方不明になっており、人質としてガザ地区に拘束されているらしい」、イスラエルの左派が「キブツ」を中心に活動していたとは、初めて知った。
・『ガザ地区を非武装化すべき さらに、アメリカ合衆国とEU(欧州連合)からサウジアラビアとパレスティナ自治政府に及ぶ有志連合を結成して、ガザ地区の支配権をハマスから取り去り、この地区を再建すると同時に、ハマスを完全に武装解除し、ガザ地区を非武装化するべきだ。 こうした措置が実行される可能性はわずかしかない。だが、今回の戦慄の事態の後、イスラエル人のほとんどは、それが実現しないかぎり、とうてい生きていけないと考えているのだ。 (訳・柴田裕之氏) ユヴァル・ノア・ハラリイスラエルの歴史学者、哲学者。ヘブライ大学教授。著書『サピエンス全史』『ホモ・デウス』、近著に『人類の物語 Unstoppable Us』シリーズなど(いずれも河出書房新社刊)。 *本寄稿文の英語版は、2023年10月12日、英ガーディアン紙に掲載された』、「ガザ地区を非武装化すべき」というのは、いいアイデアのようだが、「実行される可能性はわずかしかない」ようだ。ただ、それに向けた努力が必要だ。ただ、そのためには、ガザ地区へのイスラエル軍の侵攻は、極めて自制したものである必要がある。
タグ:「ハマス」側の作戦は見事で、「イスラエル側」の対応はお粗末だったようだ。 「イスラエル軍兵士」はもっとピリピリしていると思っていたが、そうでもないようだ。 「ガザ地区を非武装化すべき」というのは、いいアイデアのようだが、「実行される可能性はわずかしかない」ようだ。ただ、それに向けた努力が必要だ。ただ、そのためには、ガザ地区へのイスラエル軍の侵攻は、極めて自制したものである必要がある。 キブツ・ベエリの平和活動家ヴィヴィアン・シルヴァーは行方不明になっており、人質としてガザ地区に拘束されているらしい」、イスラエルの左派が「キブツ」を中心に活動していたとは、初めて知った。 The New York Times「ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?」 「依然として和平の希望に執着していたそれらのキブツの住民を、私は知っている。だが、そうしたキブツは、今や跡形もなくなった。そして、最後まで残っていた平和運動家たちの一部は、殺害されたか、愛する者たちを埋葬しているか、ガザ地区に連れ去られて人質にされているかのいずれかだ。たとえば、長年ガザ地区の病人をイスラエルの病院に搬送してきた、 東洋経済オンラインが転載 「ハマスはイスラエルの右派に、願ってもない状況をもたらしてくれるように見えた。すなわち、ガザ地区を治める義務からイスラエルを解放し、しかも、ヨルダン川西岸地区のイスラエル支配を放棄させかねない和平の申し出をせずに済むという状況だ。だが、イスラエルが経験したばかりの恐怖の1日は、暴力的な共存というネタニヤフの実験の終わりを告げた」、なるほど。 「パレスティナ人がガザを、中東のシンガポールとでも呼ぶべき、繁栄する平和な都市国家に変えようと真摯に努力し、自治の機会を与えられれば何ができるかを世界やイスラエルの右派に示すことを、左派の残党は願った」、しかし、右派のネタニヤフ政権が「ガザ」を締め上げた点に触れてないのは、余りに「イスラエル色」が強いようだ。 「イスラエルはパレスティナの自治政府にガザ地区の支配権を部分的に譲り渡した。その結果、どうなったか? イスラエルは、それまで経験したなかで最悪のテロ活動にさらされた」、いイスラエル」側の見方であるにしても、やはりやり切れない思いがありそうだ。 「イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ」、犠牲者数がそこまで多かったとは初めて知った。 ユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機、和平の機会はあるか?」 ユダヤ系の政権への影響力がいくら強いとはいえ、「アメリカ」が「イスラエル」全面支持というは頂けない。アラブ諸国を再び敵に回すのはいかにも不味い。トランプだったら、どうするだろうか。 「ハマス破滅を狙うイスラエルに強力な支援を表明しているアメリカ政府だが、中東での戦火が拡大し、人道危機が長期化すれば、国民から同様の疑問の声が出てくるかもしれない。その際、アメリカ社会の中枢にいるユダヤ系の政権への影響力が試される。 いずれにせよ、バイデン政権は再び中東情勢に深入りすることとなり、当面は同地域がアメリカの頭痛の種となること必至だ」、 「上院外交委員長や副大統領など経験が豊富なバイデン氏は、政権発足当初、外交政策が強みと見られていた。だが、今やその外交政策が同氏の信頼喪失を招き、支持回復の足を引っ張っている」、確かに最近の「バイデン」は見ていられない。 つまり、戦火はガザ・イスラエルに止まらず、中東全域に拡大するリスクを秘めている」、「事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ」、なるほど。 「イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻すれば、レバノンを拠点とするシーア派組織ヒズボラが、イスラエルを北部から本格的に攻撃する可能性が高まる。ヒズボラはイスラエル全域を射程範囲とするミサイルを保有することからも、アメリカ政府はとくに警戒している。 イスラエルがヒズボラに応戦することで、ヒズボラの背後にいるイランも応戦するリスクがある。さらには、親イラン武装勢力のフーシ派などが、サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸諸国・周辺国を攻撃するリスクなども懸念されている。 「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人、全国民の約2.4%に過ぎない。とはいえ、その人口はイスラエルに住むユダヤ人に匹敵する。アメリカ在住のユダヤ系は都市部に集中し、金融をはじめとする産業界や大手メディア、シンクタンク、学界、政界などアメリカ社会の中枢で活躍している」、「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人」と「イスラエルに住むユダヤ人に匹敵する」、とは初めて知った。 渡辺 亮司氏による「イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転、望めなくなった中東の安定」 東洋経済オンライン 「空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。 この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。 7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。 「資産」ではなくなったとすれば、さしずめマイナスの効果を持つ負債なのかも知れない。 さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。 そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した」、なんということだろう。 「遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばした・・・携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。 ヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。 「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」、監視システムへの過信が原因になったようだ。 「次の失敗は作戦上のものだった。 2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。 イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた・・・イスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍は (その1)(ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?、イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転 望めなくなった中東の安定、イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機 和平の機会はあるか?) イスラエル・パレスチナ 「イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという」、偽のオトリ情報を信じ込むとは。 初歩的な失敗だ。 ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた」、なるほど。 「「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」、「最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。
2023-10-22 17:40
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