中国経済(その18)(中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」、中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する、「投資制限」発表前から投資家は「撤退済み」...「中国の自爆」が引き起こした 25年ぶり「外国投資」低水準) [世界経済]
中国経済については、本年7月12日に取上げた。今日は、(その18)(中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」、中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する、「投資制限」発表前から投資家は「撤退済み」...「中国の自爆」が引き起こした 25年ぶり「外国投資」低水準)である。
先ずは、8月8日付け現代ビジネスが掲載した『現代ビジネス』編集次長の近藤 大介氏による「中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114425?imp=0
・『恒大物業の再上場で分かったこと(先週8月3日、香港証券取引所は、ある会社の「復牌」(フーパイ)に注目が集まった。「復牌」とは、再上場のことだ。 その会社とは、2021年秋に経営破綻が取り沙汰された中国第2位の不動産大手、中国恒大集団(チャイナ・エバグランデ・グループ)の一角を担う恒大物業(HK06666)である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ。 香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」(1人民元≒19.9円、以下同)を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ。 恒大物業自体は、経営にさほどの遜色はない。昨年の売上高は、前年比約10%減ではあるものの、118億900万元。粗利益は27億1900万元で、純利益も14億7800万元出している。総請負建築面積は8億1900万㎡、管理面積は約5億㎡で、中国国内の約330万戸の物件管理を行っている。 それでも、年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループではなくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ。 例えば、恒大集団と同じ広東省に本社があり、「最大のライバル会社」と言われた碧桂園集団(カントリー・ガーデン・グループ HK02007)。昨年の売上高は、3574億元にも上る。中国全土で500万戸以上の不動産を提供し、約30万人の従業員を抱えている。8月2日に発表されたばかりの「2023年版 フォーチュン・グローバル500」では、世界206位につけている巨大企業だ。 この中国を代表する不動産会社の一角が、先月18日から、上場している香港市場で、社債を暴落させている。7月21日には関連の5社が2割以上暴落し、臨時取引停止措置が取られた。その後、取引は再開されたが、7月31日に再び、関連3社が2割以上暴落し、取引停止となった。 同日には、同社のHPで、今年上半期は純利益がマイナスになりそうだとの見解を示していた。2007年に上場を果たして以降、昨年初めて赤字に転落したものの、さらなる業績悪化が見込まれるため、市場が悲観的になったのだ。 中国メディアの報道によれば、7月31日までに公表された上場している中国の不動産企業52社中、31社が、今年上半期でマイナスの純利益を計上している。実に全体の約6割だ。 昨年までは、習近平政権のゼロコロナ政策によって、不動産企業の赤字は当然視されていた。だが、ゼロコロナ政策を完全にやめた昨年12月以降も、不動産業界は引き続き、沈滞しているのである』、「中国第2位の不動産大手、中国恒大集団・・・の一角を担う恒大物業・・・である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ」、「香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」・・・を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ」、「年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループではなくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ」、なるほど。
・『国家統計局発表「不動産10大データ」 中国の不動産の沈滞ぶりは、先月17日に国家統計局が発表した今年上半期の経済統計にも、如実に表れている。「不動産10大データ」は、以下の通りだ。 1)全国不動産開発投資は、前年同期比(以下同)で-7.9%。そのうち住宅投資は-7.3%。 2)不動産開発企業家屋施工面積は-6.6%。そのうち住宅施工面積は-6.9%。 3)家屋新着工面積は-24.3%。そのうち住宅新着工面積は-24.9%。 4)家屋竣工面積は+19.0%。そのうち住宅竣工面積は+18.5%。 5)商品家屋販売面積は-5.3%。そのうち住宅販売面積は-2.8%。 6)商品家屋販売額は+1.1%。そのうち住宅販売額は+3.7%。 7)6月末時点での販売中商品家屋面積+17.0%。そのうち販売中住宅面積+18.0%。 8)不動産開発企業調達資金-9.8%。そのうち国内の借り入れ-11.1%、外資の利用-49.1%、自己資金-23.4%、預金及び前受け金-0.9%、個人住宅ローン+2.7%。 9)6月の不動産開発景気指数94.06(100が最適)。 10)6月の70大中都市の新築商品住宅販売価格指数(前月比)は、上昇31都市、不変1都市、下降38都市。前年同月比では、上昇27都市、不変1都市、下降42都市。 これらのデータから、中国の不動産の惨憺たる現状が見えてくる。以下、簡単に解説しよう。 まず、1)の不動産開発投資や、2)の施工面積、3)の着工面積、5)の販売面積がマイナスなのは、主に3つの理由による。 第一に、不動産会社の開発資金が枯渇していること。第二に、不動産を建てても売れないこと。第三に、新たな住宅やオフィスを建設する前に、いまある在庫の山を売ってしまわないといけないからだ。 逆に、4)の竣工面積がプラスなのは、昨年までのゼロコロナ政策によって、昨年まで工事が滞っていたからだ。6)の販売額のプラスも同様である。 不動産によらず、中国政府が「経済統計がこんなに伸びています」と喧伝する時は、だいたいこのパターンである。例えば、「第2四半期(4月~6月)のGDPは6.3%も伸びた」と誇ったが、昨年の第2四半期に何をしていたか? 最大の経済都市上海では、丸2ヵ月にわたってロックダウン(都市封鎖)し、昨年第2四半期の経済成長率は-13.7%。他の大都市も、ゼロコロナ政策によって経済活動は大いに滞っていた。そんな「前年同期」と比べて、たったの6.3%しか成長していないことの方が、むしろ問題である。) 次に、7)の販売中の家屋や住宅が+17%~18%と「成長が際立っている」のは、それだけ物件が売れ残っているという証だ。北京や上海のショッピングモールなどを見ても、客で賑わっているのはレストラン街だけだ。 コロナ前にもそうした傾向は見られたが、少なくとも都市部の繁華街のオフィスビルは、ある程度、活況を呈していた。だがいまや、どこへ行っても「有租房」(空き部屋あります)のオンパレードだ。各都市が「丸ごと不景気」という感じなのだ。 8)の不動産開発企業の調達資金も、-9.8%と枯渇している。うち外資の利用が-49.1%と、マイナスが突出しているのは、中国経済の先行きを悲観視している外資系企業が、「脱中国」を図っている表れだ。 それは日本も例外ではない。日本にとって中国は、昨年も全貿易額の20.3%と最大の貿易相手国ではあったが、「これから中国に大型投資します」という日本企業には、あまりお目にかからない。 実際、中国税関総署の統計によれば、今年上半期の日中貿易は、前年同期比で-4.9%と、5%近く落ちている。日本にとって中国からの輸入は+2.1%だが、これは前述のように、中国が1年前にゼロコロナ政策を取っていた要員が大きい。逆に、日本から中国への輸出は-11/1%で、これは明らかに日本企業が「脱中国」を図りつつあることを示している。 9)の不動産開発景気指数は、中国で不動産販売元年とも言える2000年を基点として作った指数だ。100が最適レベルで、100~105が適正レベルである。105以上は、住宅バブルの危険レベル。逆に95以下ならば、不況やデフレを示す危険レベルだ。 不動産開発景気指数は、昨年9月に95を割って以降、何と一度も95に達していない。それどころか、先月発表した今年6月分は94.06と、過去1年で最低を記録してしまった。5月の94.55から、1ヵ月で0.49ポイントも下落しているのだ。下落幅は、過去1年で最大。この傾向が続けば、7月は94を切ってしまうことになり、いよいよ危険水域突入だ。 こうした傾向は、10)の70大中都市の新築商品住宅販売価格指数にも、如実に表れている。上昇している都市は、前月比で見ると31都市、前年同期比で見ても27都市と、いずれも過半数割れしている。 前年同期比では、大連95.8、秦皇島95.9、温州95.9……と、本来なら経済発展の「優等生都市」である沿岸部の3都市が、一年で4%以上も価格を下げている。これは深刻である。 このように、習近平政権の「大本営発表」を分析しても、中国の不動産は惨憺たる事態に陥っていることが分かる。統計に表れない「陰の部分」も勘案すれば、さらに深刻だということが推察できる』、「不動産10大データ」は詳しい解説を合わせてみないとよく分からない。
・『発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」だが 一体なぜこんなことになってしまったのか? それには、いくつかの大きな要因が考えられる。 第一に、前任の胡錦濤政権の責任である。2008年秋にリーマン・ショック(アメリカ発の金融危機)が起こった時、当時の胡錦濤政権は、北京夏季オリンピック・パラリンピックを成功させたばかりでイケイケドンドンだった。そこで、同年11月に初めてワシントンで行われたG20(主要国・地域)首脳会議で、4兆元(当時のレートで約58兆円)もの緊急財政支出を宣言した。 そのことで世界経済は救われたし、「米中2大国時代」と言われるようにもなった。ところが、中国の地方政府に重い財政負担を強いることとなったのだ。 中国で予算法が改正されて、地方政府が地方債を発行できるようになるのは、習近平時代になった2014年のことだ。地方政府としては、地方債という「抜け道」もないまま、高速鉄道建設を始めとする多額の負担を押しつけられたのである。 それでも、胡錦涛政権は割合まともな経済政策を取っていたし、欧米との関係も良好だった。そのため、「4兆元問題」がすぐに問題化することもなかった。 そして、中国は2013年3月から、習近平政権にバトンタッチした。ところが習近平という指導者は、それまでの鄧小平、江沢民、胡錦涛という3代の指導者たちとは、明らかに「異質」だった。 1992年以降の中国は、「社会主義市場経済」というシステムで国を運営してきたが、習近平主席は、ゴリゴリの「社会主義絶対主義者」だったのだ。同様の存在だった初代の毛沢東主席を崇拝していた。 歴史に「もしも」はタブーと言われるが、もしも2013年に習近平政権のナンバー2となった李克強首相がトップに立っていたなら、「4兆元の副作用」について配慮した国家運営を行っただろう。李首相は胡錦涛氏の長年の「弟分」だったからだ。 だが習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた。 それでも、2014年に地方政府が地方債を発行できるようになり、今年は過去最高の3.8兆元(約75兆円)もの「専項債」(後に利益を回収できる見込みのあるものに投資する地方債)の予算が計上されている。「4兆元の副作用」に苦しむ地方政府は、こうした資金をもとに、主にインフラ投資のため、「陰の銀行」とも言うべき「地方融資平台」(LGFT)を次々に作っていった。 経済が悪化するほど、国有銀行(中国の銀行はほとんどが国有)は国有企業に優先的に融資した。そのため、本来なら経済の主力であるはずの民営企業は、すっかり先細っていった。これを「国進民退」と呼ぶ。 そこで民営企業が頼ったのが、「地方融資平台」だった。だが、高い利子を払えず倒産した民営企業は数知れず。その結果、中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ。 だがそんな中で、全国各地の不動産が、健全に発展していくのは困難だ。不動産の停滞は、もともとは「4兆元の副作用」とは言え、明らかにこの10年あまりの習近平政権の経済失政によるところが大きい』、「発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」、習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた」、「中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ」、なるほど。
・『習近平政権の「恐るべき鈍感力」 習近平氏は、2012年11月に共産党総書記に就任するや、その翌月に「八項規定」(贅沢禁止令)を出して、いきなり不動産市場を暴落させた。 その後、2015年9月には、国有企業を「焼け太り」させるような「国有企業改革」を発表し、翌2016年からは「供給側構造改革」という「5つの緊縮政策」を打ち出した。不動産の在庫整理はこの緊縮政策のトップであり、不動産市場は冷めていった。 続いて、同年12月の中央経済工作会議で、「家は住むためのもので、投機するためのものではない」(房子是用来住的、不是用来炒的)と唱えた。そして翌2017年から、不動産の購入を厳格化した。頭金や住宅ローン規制などを強めて、「2軒目」を買いにくくしたのだ。 さらに、2020年8月に打ち出した「3つのレッドライン」が、不動産業界を「自壊」させる要因となった。負債の対資産比率70%以下、純負債の対資本比率100%以下、手元資金の対短期負債比率100%以上という「3つのレッドライン」に従って、不動産会社を4分類し、それぞれの債務規模を制限するという政策だ。その上、銀行側にも不動産会社や住宅ローンに対する融資制限をかけた。 習近平政権はこのような経済政策を、新型コロナウイルスが蔓延した年に行ったのだ。まさに「恐るべき鈍感力」と言える。 こうしたことが重なって、2021年秋、中国第2位の不動産会社だった恒大集団の破綻騒動となったのだ。もっとも恒大集団に関しては、習近平主席の「政敵」だった「共青団」(中国共産主義青年団)の最大の後ろ盾企業だったから潰しにかかったという有力な説もあるが。 そして「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである。 そして、中国政府や官製メディアは、このところしきりに中国経済の「V字回復」を強調しているが、GDPの10%~15%を牽引すると言われる不動産が低迷している限り、中国経済の「V字回復」も望めない。 実際のところは、「L字型」ではないか。いわゆる「落ちてから回復せず横ばい状態」だ。だが、この話を旧知の中国人経済学者にしたら、苦笑しながら言った。 「本当は『I字型』かもしれないぞ。ゼロコロナ政策によって経済はズドンと落ちたが、また何か別な政策が始まるかもしれないからだ。徹底した『共同富裕』政策などだ。ともかくいまの中国は、いくらマンション価格や住宅ローン金利が多少下がったからといって、安心して新たに一軒買おうなどというマインドにはない。いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』(捨てる、諦める)だ」』、「「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである」、「いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』・・・だ。なるほど。
次に、8月14日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114635?imp=0
・『債務不履行の恐れも ここへ来て中国経済はかなり厳しい状況に追い込まれている。 不動産市況の悪化は鮮明だ。不動産関連分野はGDPの3割程度を占めるとの試算もあり、経済に与える負の影響は大きい。 価格の下落、住宅販売の減少によってデベロッパーの経営体力は低下し、債務不履行の恐れも高まっている。 土地譲渡益の減少によって地方財政も悪化した。 地方政府がインフラ投資などの景気刺激策を発動することは難しくなった。 雇用、所得環境は悪化し中国の需要は減少した。7月の主要経済指標から確認できる。 輸入は前年同月比12.4%減少した。川上の物価動向を示す生産者物価(PPI)は同4.4%、消費者物価指数(CPI)も同0.3%下落した』、興味深そうだ。
・『日本のバブル崩壊後を想起させる 自動車、家電、家賃などの価格は下落し、デフレ圧力は高まっている。かつて、わが国が経験した、バブル崩壊後のデフレ不況への道を歩んでいるようだ。 また、海外経済の環境の悪化や半導体など先端分野での米中対立の影響もあり、7月の輸出は前年同月比14.5%減少した。 共産党政権は経済成長率の低下を食い止めるため、不良債権処理を本格化し規制緩和などを進めることが必要だろう。中国経済の本格的な回復にはまだ時間がかかる。 足許、中国の経済全体で債務の返済を優先し、支出を抑制する個人や企業が増えている。 思い起こされるのは1990年代のわが国の状況だ。バブル崩壊による資産価格の急落によってわが国経済全体でバランスシート調整が進んだ。 消費や投資を減らし債務圧縮に取り組む家計が増えた。1990年後半にわが国はデフレ経済に突入し、“失われた30年”と呼ばれる長期の停滞に陥ってしまったのだ』、確かに「日本のバブル崩壊後を想起させる」ようだ。
・『地方政府の財政も悪化 中国経済もそうした環境に向かいつつあるように見える。きっかけは、2020年8月に共産党政権が“3つのレッドライン”と呼ばれる不動産融資規制を実施したことだった。 多くの市場参加者は、共産党政権が不動産バブルの抑制に真剣に取り組み始めたと急速に危機感を高めた。 結果、不動産の投機熱は冷めた。 不動産デベロッパーは資金繰り確保のために資産の切り売りを急いだ。中国の不動産市況全体で“売るから下がる、下がるから売る”という負の連鎖は鮮明化。マンションなどの価格は下落し、不動産業界全体で資金繰りに行き詰まる企業は増えた。 8月8日、碧桂園(カントリー・ガーデン)はドル建て社債の利払いを実施しなかったと報じられた。 マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる』、「マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる」、その通りだ。
・『若年層の失業率が46.5%に インフラ投資に用いられる基礎資材、建設機械などの需要も減少し、生産活動は停滞した。過剰生産応力は累積し、7月まで生産者物価指数は10ヶ月続けて下落した。 不動産や設備投資の減少などによって雇用、所得環境も悪化した。 アリババなどIT先端分野の企業に対する締め付け強化もあり若年層(16〜24歳)の失業率は46.5%に達したとの研究結果も報じられた。 個人消費の減少により7月の消費者物価指数も下落した。共産党政権は金融緩和を強化したが、目立った効果は出てい・・・・・ 習政権は景気の減速を食い止めるために財政支出を増やす考えも強調しているが、不動産分野や地方政府の債務問題が深刻であるため大規模な対策は打ち出しづらい。 消費者心理は悪化し、半導体、自動車部品など輸入も減少基調だ。 外需に関しても環境は厳しい。先端分野での米中対立、世界的なスマホやパソコンの出荷台数減少などによって、輸出減少は鮮明だ』、これでは打つ手はなさそうだ。
・『盛り返す展開は見えない また、労働コストの上昇や政策に関する不透明感の高まりなどを背景に、中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている。 若年層を中心とする雇用、所得環境の悪化懸念を背景に、共産党政権が本格的に不良債権処理を進めることも容易ではない。 1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる。・・・・・ さらに関連記事『中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」』では、いま起きている“もう一つの異変”について詳報しています』、この「関連記事」は第一の記事そのおのだ。「中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている」、「1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる」、その通りだ。
先ずは、8月8日付け現代ビジネスが掲載した『現代ビジネス』編集次長の近藤 大介氏による「中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114425?imp=0
・『恒大物業の再上場で分かったこと(先週8月3日、香港証券取引所は、ある会社の「復牌」(フーパイ)に注目が集まった。「復牌」とは、再上場のことだ。 その会社とは、2021年秋に経営破綻が取り沙汰された中国第2位の不動産大手、中国恒大集団(チャイナ・エバグランデ・グループ)の一角を担う恒大物業(HK06666)である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ。 香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」(1人民元≒19.9円、以下同)を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ。 恒大物業自体は、経営にさほどの遜色はない。昨年の売上高は、前年比約10%減ではあるものの、118億900万元。粗利益は27億1900万元で、純利益も14億7800万元出している。総請負建築面積は8億1900万㎡、管理面積は約5億㎡で、中国国内の約330万戸の物件管理を行っている。 それでも、年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループではなくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ。 例えば、恒大集団と同じ広東省に本社があり、「最大のライバル会社」と言われた碧桂園集団(カントリー・ガーデン・グループ HK02007)。昨年の売上高は、3574億元にも上る。中国全土で500万戸以上の不動産を提供し、約30万人の従業員を抱えている。8月2日に発表されたばかりの「2023年版 フォーチュン・グローバル500」では、世界206位につけている巨大企業だ。 この中国を代表する不動産会社の一角が、先月18日から、上場している香港市場で、社債を暴落させている。7月21日には関連の5社が2割以上暴落し、臨時取引停止措置が取られた。その後、取引は再開されたが、7月31日に再び、関連3社が2割以上暴落し、取引停止となった。 同日には、同社のHPで、今年上半期は純利益がマイナスになりそうだとの見解を示していた。2007年に上場を果たして以降、昨年初めて赤字に転落したものの、さらなる業績悪化が見込まれるため、市場が悲観的になったのだ。 中国メディアの報道によれば、7月31日までに公表された上場している中国の不動産企業52社中、31社が、今年上半期でマイナスの純利益を計上している。実に全体の約6割だ。 昨年までは、習近平政権のゼロコロナ政策によって、不動産企業の赤字は当然視されていた。だが、ゼロコロナ政策を完全にやめた昨年12月以降も、不動産業界は引き続き、沈滞しているのである』、「中国第2位の不動産大手、中国恒大集団・・・の一角を担う恒大物業・・・である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ」、「香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」・・・を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ」、「年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループではなくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ」、なるほど。
・『国家統計局発表「不動産10大データ」 中国の不動産の沈滞ぶりは、先月17日に国家統計局が発表した今年上半期の経済統計にも、如実に表れている。「不動産10大データ」は、以下の通りだ。 1)全国不動産開発投資は、前年同期比(以下同)で-7.9%。そのうち住宅投資は-7.3%。 2)不動産開発企業家屋施工面積は-6.6%。そのうち住宅施工面積は-6.9%。 3)家屋新着工面積は-24.3%。そのうち住宅新着工面積は-24.9%。 4)家屋竣工面積は+19.0%。そのうち住宅竣工面積は+18.5%。 5)商品家屋販売面積は-5.3%。そのうち住宅販売面積は-2.8%。 6)商品家屋販売額は+1.1%。そのうち住宅販売額は+3.7%。 7)6月末時点での販売中商品家屋面積+17.0%。そのうち販売中住宅面積+18.0%。 8)不動産開発企業調達資金-9.8%。そのうち国内の借り入れ-11.1%、外資の利用-49.1%、自己資金-23.4%、預金及び前受け金-0.9%、個人住宅ローン+2.7%。 9)6月の不動産開発景気指数94.06(100が最適)。 10)6月の70大中都市の新築商品住宅販売価格指数(前月比)は、上昇31都市、不変1都市、下降38都市。前年同月比では、上昇27都市、不変1都市、下降42都市。 これらのデータから、中国の不動産の惨憺たる現状が見えてくる。以下、簡単に解説しよう。 まず、1)の不動産開発投資や、2)の施工面積、3)の着工面積、5)の販売面積がマイナスなのは、主に3つの理由による。 第一に、不動産会社の開発資金が枯渇していること。第二に、不動産を建てても売れないこと。第三に、新たな住宅やオフィスを建設する前に、いまある在庫の山を売ってしまわないといけないからだ。 逆に、4)の竣工面積がプラスなのは、昨年までのゼロコロナ政策によって、昨年まで工事が滞っていたからだ。6)の販売額のプラスも同様である。 不動産によらず、中国政府が「経済統計がこんなに伸びています」と喧伝する時は、だいたいこのパターンである。例えば、「第2四半期(4月~6月)のGDPは6.3%も伸びた」と誇ったが、昨年の第2四半期に何をしていたか? 最大の経済都市上海では、丸2ヵ月にわたってロックダウン(都市封鎖)し、昨年第2四半期の経済成長率は-13.7%。他の大都市も、ゼロコロナ政策によって経済活動は大いに滞っていた。そんな「前年同期」と比べて、たったの6.3%しか成長していないことの方が、むしろ問題である。) 次に、7)の販売中の家屋や住宅が+17%~18%と「成長が際立っている」のは、それだけ物件が売れ残っているという証だ。北京や上海のショッピングモールなどを見ても、客で賑わっているのはレストラン街だけだ。 コロナ前にもそうした傾向は見られたが、少なくとも都市部の繁華街のオフィスビルは、ある程度、活況を呈していた。だがいまや、どこへ行っても「有租房」(空き部屋あります)のオンパレードだ。各都市が「丸ごと不景気」という感じなのだ。 8)の不動産開発企業の調達資金も、-9.8%と枯渇している。うち外資の利用が-49.1%と、マイナスが突出しているのは、中国経済の先行きを悲観視している外資系企業が、「脱中国」を図っている表れだ。 それは日本も例外ではない。日本にとって中国は、昨年も全貿易額の20.3%と最大の貿易相手国ではあったが、「これから中国に大型投資します」という日本企業には、あまりお目にかからない。 実際、中国税関総署の統計によれば、今年上半期の日中貿易は、前年同期比で-4.9%と、5%近く落ちている。日本にとって中国からの輸入は+2.1%だが、これは前述のように、中国が1年前にゼロコロナ政策を取っていた要員が大きい。逆に、日本から中国への輸出は-11/1%で、これは明らかに日本企業が「脱中国」を図りつつあることを示している。 9)の不動産開発景気指数は、中国で不動産販売元年とも言える2000年を基点として作った指数だ。100が最適レベルで、100~105が適正レベルである。105以上は、住宅バブルの危険レベル。逆に95以下ならば、不況やデフレを示す危険レベルだ。 不動産開発景気指数は、昨年9月に95を割って以降、何と一度も95に達していない。それどころか、先月発表した今年6月分は94.06と、過去1年で最低を記録してしまった。5月の94.55から、1ヵ月で0.49ポイントも下落しているのだ。下落幅は、過去1年で最大。この傾向が続けば、7月は94を切ってしまうことになり、いよいよ危険水域突入だ。 こうした傾向は、10)の70大中都市の新築商品住宅販売価格指数にも、如実に表れている。上昇している都市は、前月比で見ると31都市、前年同期比で見ても27都市と、いずれも過半数割れしている。 前年同期比では、大連95.8、秦皇島95.9、温州95.9……と、本来なら経済発展の「優等生都市」である沿岸部の3都市が、一年で4%以上も価格を下げている。これは深刻である。 このように、習近平政権の「大本営発表」を分析しても、中国の不動産は惨憺たる事態に陥っていることが分かる。統計に表れない「陰の部分」も勘案すれば、さらに深刻だということが推察できる』、「不動産10大データ」は詳しい解説を合わせてみないとよく分からない。
・『発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」だが 一体なぜこんなことになってしまったのか? それには、いくつかの大きな要因が考えられる。 第一に、前任の胡錦濤政権の責任である。2008年秋にリーマン・ショック(アメリカ発の金融危機)が起こった時、当時の胡錦濤政権は、北京夏季オリンピック・パラリンピックを成功させたばかりでイケイケドンドンだった。そこで、同年11月に初めてワシントンで行われたG20(主要国・地域)首脳会議で、4兆元(当時のレートで約58兆円)もの緊急財政支出を宣言した。 そのことで世界経済は救われたし、「米中2大国時代」と言われるようにもなった。ところが、中国の地方政府に重い財政負担を強いることとなったのだ。 中国で予算法が改正されて、地方政府が地方債を発行できるようになるのは、習近平時代になった2014年のことだ。地方政府としては、地方債という「抜け道」もないまま、高速鉄道建設を始めとする多額の負担を押しつけられたのである。 それでも、胡錦涛政権は割合まともな経済政策を取っていたし、欧米との関係も良好だった。そのため、「4兆元問題」がすぐに問題化することもなかった。 そして、中国は2013年3月から、習近平政権にバトンタッチした。ところが習近平という指導者は、それまでの鄧小平、江沢民、胡錦涛という3代の指導者たちとは、明らかに「異質」だった。 1992年以降の中国は、「社会主義市場経済」というシステムで国を運営してきたが、習近平主席は、ゴリゴリの「社会主義絶対主義者」だったのだ。同様の存在だった初代の毛沢東主席を崇拝していた。 歴史に「もしも」はタブーと言われるが、もしも2013年に習近平政権のナンバー2となった李克強首相がトップに立っていたなら、「4兆元の副作用」について配慮した国家運営を行っただろう。李首相は胡錦涛氏の長年の「弟分」だったからだ。 だが習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた。 それでも、2014年に地方政府が地方債を発行できるようになり、今年は過去最高の3.8兆元(約75兆円)もの「専項債」(後に利益を回収できる見込みのあるものに投資する地方債)の予算が計上されている。「4兆元の副作用」に苦しむ地方政府は、こうした資金をもとに、主にインフラ投資のため、「陰の銀行」とも言うべき「地方融資平台」(LGFT)を次々に作っていった。 経済が悪化するほど、国有銀行(中国の銀行はほとんどが国有)は国有企業に優先的に融資した。そのため、本来なら経済の主力であるはずの民営企業は、すっかり先細っていった。これを「国進民退」と呼ぶ。 そこで民営企業が頼ったのが、「地方融資平台」だった。だが、高い利子を払えず倒産した民営企業は数知れず。その結果、中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ。 だがそんな中で、全国各地の不動産が、健全に発展していくのは困難だ。不動産の停滞は、もともとは「4兆元の副作用」とは言え、明らかにこの10年あまりの習近平政権の経済失政によるところが大きい』、「発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」、習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた」、「中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ」、なるほど。
・『習近平政権の「恐るべき鈍感力」 習近平氏は、2012年11月に共産党総書記に就任するや、その翌月に「八項規定」(贅沢禁止令)を出して、いきなり不動産市場を暴落させた。 その後、2015年9月には、国有企業を「焼け太り」させるような「国有企業改革」を発表し、翌2016年からは「供給側構造改革」という「5つの緊縮政策」を打ち出した。不動産の在庫整理はこの緊縮政策のトップであり、不動産市場は冷めていった。 続いて、同年12月の中央経済工作会議で、「家は住むためのもので、投機するためのものではない」(房子是用来住的、不是用来炒的)と唱えた。そして翌2017年から、不動産の購入を厳格化した。頭金や住宅ローン規制などを強めて、「2軒目」を買いにくくしたのだ。 さらに、2020年8月に打ち出した「3つのレッドライン」が、不動産業界を「自壊」させる要因となった。負債の対資産比率70%以下、純負債の対資本比率100%以下、手元資金の対短期負債比率100%以上という「3つのレッドライン」に従って、不動産会社を4分類し、それぞれの債務規模を制限するという政策だ。その上、銀行側にも不動産会社や住宅ローンに対する融資制限をかけた。 習近平政権はこのような経済政策を、新型コロナウイルスが蔓延した年に行ったのだ。まさに「恐るべき鈍感力」と言える。 こうしたことが重なって、2021年秋、中国第2位の不動産会社だった恒大集団の破綻騒動となったのだ。もっとも恒大集団に関しては、習近平主席の「政敵」だった「共青団」(中国共産主義青年団)の最大の後ろ盾企業だったから潰しにかかったという有力な説もあるが。 そして「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである。 そして、中国政府や官製メディアは、このところしきりに中国経済の「V字回復」を強調しているが、GDPの10%~15%を牽引すると言われる不動産が低迷している限り、中国経済の「V字回復」も望めない。 実際のところは、「L字型」ではないか。いわゆる「落ちてから回復せず横ばい状態」だ。だが、この話を旧知の中国人経済学者にしたら、苦笑しながら言った。 「本当は『I字型』かもしれないぞ。ゼロコロナ政策によって経済はズドンと落ちたが、また何か別な政策が始まるかもしれないからだ。徹底した『共同富裕』政策などだ。ともかくいまの中国は、いくらマンション価格や住宅ローン金利が多少下がったからといって、安心して新たに一軒買おうなどというマインドにはない。いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』(捨てる、諦める)だ」』、「「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである」、「いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』・・・だ。なるほど。
次に、8月14日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114635?imp=0
・『債務不履行の恐れも ここへ来て中国経済はかなり厳しい状況に追い込まれている。 不動産市況の悪化は鮮明だ。不動産関連分野はGDPの3割程度を占めるとの試算もあり、経済に与える負の影響は大きい。 価格の下落、住宅販売の減少によってデベロッパーの経営体力は低下し、債務不履行の恐れも高まっている。 土地譲渡益の減少によって地方財政も悪化した。 地方政府がインフラ投資などの景気刺激策を発動することは難しくなった。 雇用、所得環境は悪化し中国の需要は減少した。7月の主要経済指標から確認できる。 輸入は前年同月比12.4%減少した。川上の物価動向を示す生産者物価(PPI)は同4.4%、消費者物価指数(CPI)も同0.3%下落した』、興味深そうだ。
・『日本のバブル崩壊後を想起させる 自動車、家電、家賃などの価格は下落し、デフレ圧力は高まっている。かつて、わが国が経験した、バブル崩壊後のデフレ不況への道を歩んでいるようだ。 また、海外経済の環境の悪化や半導体など先端分野での米中対立の影響もあり、7月の輸出は前年同月比14.5%減少した。 共産党政権は経済成長率の低下を食い止めるため、不良債権処理を本格化し規制緩和などを進めることが必要だろう。中国経済の本格的な回復にはまだ時間がかかる。 足許、中国の経済全体で債務の返済を優先し、支出を抑制する個人や企業が増えている。 思い起こされるのは1990年代のわが国の状況だ。バブル崩壊による資産価格の急落によってわが国経済全体でバランスシート調整が進んだ。 消費や投資を減らし債務圧縮に取り組む家計が増えた。1990年後半にわが国はデフレ経済に突入し、“失われた30年”と呼ばれる長期の停滞に陥ってしまったのだ』、確かに「日本のバブル崩壊後を想起させる」ようだ。
・『地方政府の財政も悪化 中国経済もそうした環境に向かいつつあるように見える。きっかけは、2020年8月に共産党政権が“3つのレッドライン”と呼ばれる不動産融資規制を実施したことだった。 多くの市場参加者は、共産党政権が不動産バブルの抑制に真剣に取り組み始めたと急速に危機感を高めた。 結果、不動産の投機熱は冷めた。 不動産デベロッパーは資金繰り確保のために資産の切り売りを急いだ。中国の不動産市況全体で“売るから下がる、下がるから売る”という負の連鎖は鮮明化。マンションなどの価格は下落し、不動産業界全体で資金繰りに行き詰まる企業は増えた。 8月8日、碧桂園(カントリー・ガーデン)はドル建て社債の利払いを実施しなかったと報じられた。 マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる』、「マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる」、その通りだ。
・『若年層の失業率が46.5%に インフラ投資に用いられる基礎資材、建設機械などの需要も減少し、生産活動は停滞した。過剰生産応力は累積し、7月まで生産者物価指数は10ヶ月続けて下落した。 不動産や設備投資の減少などによって雇用、所得環境も悪化した。 アリババなどIT先端分野の企業に対する締め付け強化もあり若年層(16〜24歳)の失業率は46.5%に達したとの研究結果も報じられた。 個人消費の減少により7月の消費者物価指数も下落した。共産党政権は金融緩和を強化したが、目立った効果は出てい・・・・・ 習政権は景気の減速を食い止めるために財政支出を増やす考えも強調しているが、不動産分野や地方政府の債務問題が深刻であるため大規模な対策は打ち出しづらい。 消費者心理は悪化し、半導体、自動車部品など輸入も減少基調だ。 外需に関しても環境は厳しい。先端分野での米中対立、世界的なスマホやパソコンの出荷台数減少などによって、輸出減少は鮮明だ』、これでは打つ手はなさそうだ。
・『盛り返す展開は見えない また、労働コストの上昇や政策に関する不透明感の高まりなどを背景に、中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている。 若年層を中心とする雇用、所得環境の悪化懸念を背景に、共産党政権が本格的に不良債権処理を進めることも容易ではない。 1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる。・・・・・ さらに関連記事『中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」』では、いま起きている“もう一つの異変”について詳報しています』、この「関連記事」は第一の記事そのおのだ。「中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている」、「1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる」、その通りだ。
タグ:中国経済 (その18)(中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」、中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する、「投資制限」発表前から投資家は「撤退済み」...「中国の自爆」が引き起こした 25年ぶり「外国投資」低水準) 現代ビジネス 近藤 大介氏による「中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」」 「中国第2位の不動産大手、中国恒大集団・・・の一角を担う恒大物業・・・である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ」、 「香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」・・・を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ」、「年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループでは なくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ」、なるほど。 「不動産10大データ」は詳しい解説を合わせてみないとよく分からない。 「発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」、習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた」、 「中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ」、なるほど。 「「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである」、「いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』・・・だ。なるほど。 真壁 昭夫氏による「中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する」 確かに「日本のバブル崩壊後を想起させる」ようだ。 「マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる」、その通りだ。 これでは打つ手はなさそうだ。 この「関連記事」は第一の記事そのおのだ。「中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている」、 「1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる」、その通りだ。