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新安保法制(その3))”自民党よ 私の反論を聞きなさい”1 [外交]

今日は、昨日の記事内にも登場した慶応義塾大学名誉教授で改憲論者として知られる小林節氏が、日刊ゲンダイに「自民党よ 私の反論を聞きなさい」と題して、シリーズで寄稿しているもの。これは、自民党全議員に配布された「『安保法制』一問一答35」なる解説と、これに対する小林氏の反論をまとめたもの。

まず。11日付けの「<第1回>安全保障環境が厳しいなら専守防衛に徹するべきだ」のポイントは、概ね以下の通り(→以下が反論)。
・【論点1】[問]憲法解釈を見直し、集団的自衛権行使を容認する必要性。[答]わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増し、もはやどの国も一国のみでは自国の平和と安全を守ることはできず、国際社会と協力して平和を確保していくことが不可欠。また、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態にも切れ目のない対応を可能とする法整備が極めて重要
→安全保障環境が厳しくなっているのは事実だろうが、従来の専守防衛の原則を堅持し、自衛隊と海上保安庁の装備を更新・強化し、さらに、切れ目のない危機対応を整えるべく、領海警備法を制定し、武器使用基準(大臣訓令)を改正すれば済むはず。米国のように世界に軍事展開したら、(1)日本全体の国力が経済的に疲弊し、(2)自国の防衛が手薄になり、(3)新たにイスラム諸国を敵に回し、テロ攻撃を受ける危険が生じる
・【論点2】[問]新安保法案は「戦争」法案。 [答]感情的なレッテル貼りである
→憲法9条の下で一貫して海外派兵を禁じられてきたわが国が、「集団的自衛」または「後方支援」の名で初めて海外で戦争に参加できるようにするものである以上、「戦争」法案以外の何ものでもない
・【論点3】[問]集団的自衛権は重い課題で、拙速な結論は避けなければならない。 [答]この問題は8年前の有識者懇談会で具体的検討が始められ、その後、自民党や与党協議会で議論を重ね、国会の予算委員会や外交委員会でも集中審議を重ねてきた
→形式的にはその通りだが、「有識者」懇談会のメンバーには専門と立場が極端に偏った者だけが集められており、自民党内、与党内の議論にしても世論の関心を無視して内輪で行われた一方的なもの。国会での審議も、政府は野党の質問から「逃げ回って」いるだけで、一番肝心な主権者国民の理解は一向に深まっていない
・【論点4】 [問]日米防衛協力のガイドラインを、国会にも国民にも説明なく米国で合意。主権者国民無視。[答]政府は、与党や国会での議論を踏まえて日米協議に臨んだ。また、前提として、日米間の協力は各々の憲法・法律に基づいて行われるとされており、政府は立法と予算措置を義務付けられてはいない
→安倍政権は集団的自衛権の行使をすでに米国と約束、これは憲法無視、国会無視、主権者国民無視以外の何ものでもない。約束の実行を「義務付けられてはいない」と言うが、実行するつもりのない約束を米国と交わしたのか? 明らかにそうは見えない
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/160693/1

次に、13日付けの「<第2回>自民党は徴兵制はあり得ないというが信じられない」のポイントは、概ね以下の通り
・【論点5】[問]新安保法制は日本国民を「戦地」に送り込む道。[答]支援対象となる他国軍が「現に戦闘行為を行っている現場」では後方支援は行わない
→確かに戦闘休止中、「後方支援」を行うことになっている。しかし、戦闘再開時に帰ってくることはかなわぬ以上、他国軍に後ろから合流して戦争に参加する仕組みになっている
・【論点6】[問]新安保法制の下では自衛隊から初めての戦死者が出る。すると、隊員のなり手がいなくなり、徴兵制が復活。[答]現行憲法18条(その意に反する苦役からの自由)がある以上、徴兵制はあり得ない。自民党新憲法草案でもこの点は継承
→これまでの専守防衛(海外派兵の禁止)を破って海外派兵(集団的自衛権の行使と他国軍への後方支援)を解禁する以上、我が国は戦後初めて「戦死者」を出す危険に直面。現行憲法下で徴兵制がありえないことは確かだが、自民党の新憲法草案には9条の3に国民の国防協力義務が読み取れるので、良心の自由の例外としての徴兵制が導き出されるのではないか
・【論点7】[問]新安保法制の下では、どれだけの自衛隊員が殺し殺されるのか分からない。[答]現憲法の下で認められる自衛権の行使は、「必要最小限度の範囲にとどまる」という従来の基本的立場を変えるものではない
→安保環境の激変を理由にして「必要最小限度の範囲」の適用領域を広げ、今後は米軍の友軍として集団的自衛権を行使し後方支援を行う以上、米軍の活動の実態に照らして、「どれだけの自衛隊員が殺し殺されることになるか分からない」
・【論点8】[問]集団的自衛権は「行使するかしないか」であり、「必要最小限」などという制約は無意味で、行使した途端、相手国にとって日本は敵になる。[答]集団的自衛権の行使は新3要件により、必要最小限度の実力行使にとどまることになっている
→「必要最小限度の実力行使」という原則は、国内における警察権行使を規律するもの。世界の戦場では、勝つために全力で戦うことが常識。集団的自衛権を行使するために海外の戦場に参加した場合に、それが相手との全面対決に発展することがむしろ自然だと考えておくべきである
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/160694/1

こうしてみると、[答]は殆ど答えになっておらず、小林氏の反論が妥当なように思われる。特に、国会審議は今日に至るまで、政府は野党の質問から「逃げ回って」いる状況が続いている。明日は金曜日なので、休みとし、続きは土曜日としたい。
タグ:新安保法制 小林節 自民党よ 私の反論を聞きなさい 『安保法制』一問一答35 <第1回>安全保障環境が厳しいなら専守防衛に徹するべきだ 憲法解釈を見直し 集団的自衛権行使を容認する必要性 安全保障環境は一層厳しさを増し 国際社会と協力して平和を確保 グレーゾーン事態にも切れ目のない対応 領海警備法を制定 武器使用基準(大臣訓令)を改正 世界に軍事展開 国力が経済的に疲弊 自国の防衛が手薄になり イスラム諸国を敵に回し、テロ攻撃を受ける危険 「戦争」法案 集団的自衛権 8年前の有識者懇談会で具体的検討 懇談会のメンバーには専門と立場が極端に偏った者だけが集められ 国会での審議 政府は野党の質問から「逃げ回って」いるだけ 主権者国民の理解は一向に深まっていない 日米防衛協力のガイドライン 米国で合意 主権者国民無視 約束の実行を「義務付けられてはいない」と言うが 実行するつもりのない約束を米国と交わしたのか? 明らかにそうは見えない <第2回>自民党は徴兵制はあり得ないというが信じられない 日本国民を「戦地」に送り込む道 「現に戦闘行為を行っている現場」では後方支援は行わない 自衛隊から初めての戦死者 徴兵制が復活 良心の自由の例外としての徴兵制が導き出されるのではないか 自衛権の行使は、「必要最小限度の範囲にとどまる 「必要最小限度の範囲」の適用領域を広げ 米軍の友軍として集団的自衛権を行使し後方支援を行う どれだけの自衛隊員が殺し殺されることになるか分からない 集団的自衛権の行使 新3要件 国内における警察権行使を規律 世界の戦場では、勝つために全力で戦うことが常識 海外の戦場に参加した場合に、それが相手との全面対決に発展することがむしろ自然
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