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半導体産業(その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと) [産業動向]

半導体産業については、2月24日に取上げた。今日は、(その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと)である。

先ずは、本年4月5日付けダイヤモンド・オンライン「東エレク、レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341305
・『半導体株高をけん引する日本の製造装置メーカー。東京エレクトロンやレーザーテックなど、高い世界シェアで業界をリードしている企業が多い一方で、業界全体を見渡してみると深刻な状況に陥っている。市場規模が大きく、成長性が高い製品と分野で負けが続き、日本全体ではシェアが急落、米国に突き放され欧州に抜かれる状況になっているのだ。強い日本の製造装置業界に何が起こっているのか。特集『高成長&高年収! 半導体160社図鑑』の#5では、有望銘柄とその強みと共に、一見好調な製造業界の構造的問題について取り上げた』、興味深そうだ。
・『株価が130倍、20倍に暴騰した製造装置銘柄  その強さの秘密と本当の実力は  今の半導体関連株の高値をけん引する最大の立役者が半導体製造装置株だ。2014年には2000円台で推移していた東京エレクトロン(TEL)株は、現在なんと20倍の4万円台を付けている。 同じ製造装置のディスコ株は14年には3000円台で同じく16倍、14年に300円台だったレーザーテックは130倍の4万円台にまで伸びた。同期間でデバイスのルネサスエレクトロニクスは約2倍、素材の信越化学工業は約4倍の伸びだ。これに比較してもいかに装置株の伸び方が異常か分かるだろう。 「世界シェアトップ」「世界で他のどこにもできない技術を持つ」というきらびやかな修飾語が製造装置業界には付いて回る。そもそも、なぜ日本の製造装置は強いのか。歴史をひもといてみよう。 1980年代日本のデバイス企業が世界トップだった時代に、一蓮托生で製造技術を磨き併走することで成長してきたのが製造装置メーカーだ。 その後90年代以降、日本のデバイスメーカーは次々と凋落、事業撤退や縮小をしていく。だが、装置メーカーはその後台頭してきた韓国、台湾、それに米国のデバイス企業に広く製造装置を販売することで、事業を拡大してきた。 「経営のスピードが速く、経営者が事業に愛情を持ち、顧客との信頼関係を大事にするという経営スタイルが、アジア・米国の顧客企業にも受け入れられた。最初は欧米のものを優先するスタンスだった顧客も徐々に日本メーカーの製品に切り替えてくれるようになり、シェアを伸ばしていった」と、20年来製造装置企業の分析を行っているモルガン・スタンレーMUFG証券の和田木哲哉シニアアナリストは解説する。 中でも最近特異的に伸びているのが、生成AIのビジネスに絡む装置を販売できている企業だ。 例えば生成AI半導体に使われる米エヌビディアのGPU(グラフィックプロセッサユニット)を生産するのに必要なのが、最先端の微細加工が可能なEUV露光装置(極端紫外線を使い、シリコンウエハーに回路を焼き付けるための装置)だが、EUV向けのマスク(回路を焼き付ける元となる原板)検査技術を世界で唯一持っているのがレーザーテックだ。 EUVの登場と普及で、以前は100億円企業だった同社は売上高が10倍の1000億円規模に伸びた。同様に、GPUを動かすにはHBM(広帯域高速メモリー)という次世代DRAM(一時記憶用のメモリー)が必要だが、このHBM関連ビジネスに深く絡める研磨装置メーカーのディスコや検査装置メーカーのアドバンテストなどが大きく伸びている、といった具合だ。 今後半導体製造装置株に投資する場合は、どのような視点が必要なのか。さらに、一見絶好調の製造装置業界にアキレス腱はないのか。 実は、絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ。これほど株価も高く市場に評価されている企業が多数あるだけに、意外な事実だ。その理由と企業ごとの注目ポイントや、中長期的な展望について和田木シニアアナリストに分析してもらった』、「絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ」。なるほど。
・『既存・新規事業とも強い東京エレクトロンと業界トップの収益性のディスコに要注目  企業別に見ていこう。まずは代表格のTELだ。 多数の装置を抱える製造装置のデパートであるTELだが、特にコータ・デベロッパー(シリコンウエハー上に回路を焼き付けるための感光剤を塗り、現像する装置)、熱処理装置(シリコンウエハーを高温で熱して酸化、薄膜を形成する装置)、エッチング(回路を現像した後余分な部分を剥ぎ取るための装置)といった装置でシェアが昔から高い。「人材レベル、営業力、マーケティング力が向上し、既存ビジネスのシェアが上がっているのみならず、これまでの2倍以上の価格で売れる優れもののオンリーワン新製品を投入しており、収益性が向上している。高シェアを取れているコータ・デベロッパーでも大手の顧客との関係性が極めて良好で、ライバルを寄せ付けない」と和田木シニアアナリストは評価する。 さらに、グラインダ(ウエハーの裏側を研磨して薄くする装置)、ダイサー(ウエハーをチップごとに切り分ける装置)などで高シェアを持つのがディスコだ。売上高営業利益率では業界トップで「独自の経営スタンスを持ち、新興企業が価格競争を仕掛けてくるカテゴリに対しても高い競争力を維持している」(和田木シニアアナリスト)。 また、アドバンテストは、前ページで取り上げたようにGPUとHBM向けのテスタ(製品状態になった半導体を最終検査する装置)で他社を大きく突き放すシェアを握る。米テラダインというライバルはいるものの、その追撃を許さない状態になっている。また、米中摩擦で米国産の半導体製造装置が買えない中国メーカーからの受注を一手に引き受けることができたのも、好業績に貢献した。 装置各社の業績推移予測と将来の給与の伸びを見てみよう。下記にまとめた。 (図表:製造装置企業の業績予測 はリンク先参照) 市場データ企業IFISによる市場コンセンサス予想でも、これらの企業の売上高成長率は著しい。そしてIFISデータを基にダイヤモンド編集部で試算(試算方法は上記図注参照)した将来の給与水準は若干減少傾向にある企業が多い。そもそもこれらはエレクトロニクス業界最強の給与水準にある企業で、さすがにこれらがこのまま右肩上がりで伸び続けるのは厳しそうだという。それでもアドバンテストやローツェなどまだ伸びしろがありそうな企業もある。 このように、日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる。 (図:国籍別半導体製造装置のシェアの推移 はリンク先参照) どうしてこうしたことが起こったのか。その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがあると和田木シニアアナリストは指摘する。 以下は、モルガン・スタンレーMUFG証券作成の半導体の製造装置の市場規模と成長率の分布図だ。さらに、日本企業が50%以上のシェアを押さえている装置を編集部でマーキングしてみた。これで見ると、市場規模が大きいのはエッチング装置、露光装置、枚葉式CVD装置(シリコンウエハーに膜を付ける装置)などだ。そして成長率が高いのはマスク検査装置、ALD(新方式の成膜装置)などとなる。 ところが、このどちらも、日本企業はシェアが取れていない。 (図:装置別に見た成長率と市場規模の関係 はリンク先参照) 例えば、現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落としてしまった。 これまで取り上げてきた日本が強い市場は、全体の規模からするとそこまで大きいわけではない。エッチング装置で2位に付けているTELや、EUVのレーザーテックなど一部を除くと、小さなしかも今後の成長率がいまひとつの池での高シェアを取っているにすぎない、ということになる。 この事態には、この30年間最先端の半導体技術を磨くための場が、国内には不在だった影響もありそうだ。前述のASMLは、ベルギーに拠点を置く世界最大級の独立系半導体研究開発機関、アイメックと密接な連携を行っている。 「近隣にこうした研究所があることは、新規で伸びる技術の見極めや、それを持ち帰り自社で行う開発・検証のスピード、それに顧客へのマーケティング面でも明らかに有利に働く」(和田木アナリスト)。欧州には先端技術をいち早く見いだし製品化するためのエコシステムがあるのだ。 各デバイスメーカーが国内での量産や先端技術の開発から次々と撤退してきた日本とは、環境面でかなりの差が生まれてしまった。 経済産業省が追加出資を発表した国策半導体会社ラピダスの設立に、各製造装置メーカーが期待を寄せるのはこのためだ。同社の東哲郎会長はTELで会長・社長職を長く務めた中興の祖でもある。国内でもう一度最先端半導体を作る、という一見無謀なチャレンジには、TELの経営を通して日本の半導体産業の失われた20年間を目撃しており、なんらかの打開策が国として必要という思いがあるからなのかもしれない。 失われた20年間を独自の経営努力で切り抜け、成長してきた輝かしい実績を持つ装置メーカー。だがさらなる成長のためには、国内の半導体産業全体の底上げが欠かせない。それには装置メーカーのみならず、国全体としての強化策と、その成否が鍵を握るのだ』、「日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる・・・どうしてこうしたことが起こったのか。その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがある・・・現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落としてしまった」、「これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまった」、など誠に残念な結果だ。

次に、4月9日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」を紹介しよう』、興味深そうだ。
・『追加支援を行うと発表  齋藤健・経済産業大臣は先週火曜日(4月2日)の記者会見で、政府・経済産業省が最先端半導体の受託生産を目指すRapidus(ラピダス)に対し、今2024年度中に最大で5900億円の追加支援を行うと発表した。既存の支援額(3300億円)と併せて、政府の同社に対する直接的な支援の規模は1兆円に迫ることになる。 手厚い支援の背景には、経済安全保障の観点から半導体のサプライチェーン確立が必要不可欠な状況や、ラピダスが2027年頃の量産を目指している2ナノメートルサイズの半導体が「生成AIや自動運転など日本産業全体の競争力の鍵を握るキーテクノロジーである」(斎藤経産大臣)との問題意識がある。 今回、支援が決定した資金の使途は、従来から取り組んでいる米IBM社やベルギーの研究機関imecとの共同研究、量産化へ向けた製造プロセスのふかぼり、製造装置の購入などに充てる計画だ。また、半導体業界で「後工程」と呼ばれている技術(複数の半導体を1つの基盤に収納するチップレット技術など)の開発など、新たな分野にも充てると説明している。 ただ、今回で政府による支援が終わりということはないはずである。というのは、ラピダス自身も量産開始までに総額で5兆円程度の資金が必要だと認めているからだ。 客観的に見れば、ラピダスは、政府支援の積み増しのほか、民間金融機関からの借り入れ、上場を通じた公募増資や売り出しなど、様々な資金調達を実現できないと、量産の開始前に経営が行き詰まるリスクを抱えているのが実情だ。 そこで、今週は、ラピダスがそうしたハードルを超えるために。何が必要になっているのかを考えてみたい。 かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ』、「かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ」、なるほど。
・『またとない再興のチャンス  そうした中で、千載一遇の半導体産業再興のチャンスが巡ってきた。米国が中国とのデカップリング(経済の分断)を進める中で、世界の半導体業界のトップ3の中に自国企業がインテル1社しか含まれていないうえ、そのインテルが3位とはいえ、1位の台湾TSMCや2位の韓国サムスン電子に大きく後れを取っている状況に危機感を持ったからだ。そして、米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった。 かねて政府に対して、半導体産業の再興の支援を働きかけていた、半導体製造装置会社・東京エレクトロンの社長・会長経験者である東哲郎氏(現ラピダス会長)と元日立製作所半導体グループ・生産技術本部本部長の小池淳義氏(現ラピダス社長)の2人に「白羽の矢を立てた」経緯がある。 ちなみに、日、米両政府はそれぞれ、巨額の支援をして半導体業界世界一の台湾のTSMCの工場の誘致も進めている。 話を戻すと、実際のラピダスの設立は、2022年8月のことだった。同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円(2022年11月時点)にとどまっている。 この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている。 そして、細かい市場ごとの上場基準などはさておき、新興企業が上場するために最も必要なことは、その企業のポテンシャルを示す成長シナリオをしっかりと描き出してみせることである。 この条件を、半導体のファブレス企業から発注を受けて量産するファウンドリを目指しているラピダスにあてはめると、最も重要なことは、実績のある、実在のファブレス企業から具体的な受注契約を獲得することになる。 では、ラピダスが量産の開始を目指す3年後、つまり2027年を想定して、2ナノ半導体の供給を必要としている企業は、いったいどこになるのだろうか』、「米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった・・・ラピダスの設立は、2022年8月のことだった。同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円・・・この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている」、なるほど。
・『ラピダスに熱視線  誰もが容易に想定できるのは、生成AIの開発でしのぎを削っているグーグルやマイクロソフトといった米国の巨大IT企業群GAFAMだ。また、トヨタやテスラといった全自動運転の実用化を急ぐ自動車メーカーも大いに2ナノサイズの先端半導体を必要としているはずである。医療機器メーカーにもニーズがありそうだ。 言い換えれば、ラピダスは、そうしたIT大手や自動車メーカー大手、医療機器メーカーから、実際に、2ナノ半導体の製造を受注してみせる必要があるのである。 つまり、政府・経済産業省だけでなく、ラピダス自身も、今回の政府支援で獲得する資金を、これまで取り組んできた前工程に加えて、後工程の開発力の獲得に充てると製造面の体制作りの重要性を強調しているが、それだけでは不十分というワケだ。 むしろ、それらの製造技術の開発・強化と並行して、2ナノ半導体の顧客の獲得が待ったなしなのである。これらの企業とは、必要なスペックを詳細に詰めたうえで、委託(受注)契約に漕ぎ着けなければならない。そして、その契約を開示することで、持続的な成長力があることを実証して見せる必要があるのである。 そして、筆者の取材によれば、こうしたIT企業や自動車メーカー、医療機器メーカーは概して、ラピダスが2ナノ半導体を量産するファウンドリとして名乗りを上げたことをかなり好意的に受け止めているとみてよさそうなのだ。 というのは、現在、ファウンドリとしてこうしたAIや全自動運転用、医療機器用の最先端の半導体の量産に対応できる企業と言えば、米半導体大手のエヌビディア1社しかなく、独り勝ち状態になりかねないと見られていたからだ。GAFAMにしろ、自動車メーカーにしろ、医療危機メーカーにしろ、そろって自社のサプライチェーンの強靭性を維持するためには、半導体の供給元を複数以上にしたいとの思いも強く持っている。それゆえ、ラピダスに対しても相応に熱い視線を送っているというワケだ。 まとめると、ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである』、「ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである」、「ラピダス」にはこうした期待に応えてもらいたいものだ。

第三に、4月11日付け東洋経済オンラインが掲載したフリージャーナリストの杉本 りうこ氏による「TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/746571
・『今、日本は半導体特需で沸きに沸いている。この熱狂の中心にいるのが半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、TSMCだ。2月に完工したTSMCの熊本工場は、日本の半導体産業と株式市場にとって大きな活性剤となっている。 この巨大企業を創業期から取材してきた台湾のハイテクジャーナリスト、林宏文氏が『TSMC 世界を動かすヒミツ」(CCCメディアハウス)』を日本で上梓。世界の半導体企業の興亡史をつぶさに見てきた林氏が、日本の半導体戦略に直言する(Qは聞き手の質問、Aは林宏文氏の回答)』、興味深そうだ。
・『TSMC熊本工場は「トヨタとアップルのため」  Q:2月にTSMCの熊本工場が完成しましたが、TSMCにとって日本で工場を建設する意義や目的はどこにあったのでしょうか。 A:日本に投資する理由については、TSMCのシーシー・ウェイCEOが過去に明確に述べています。すなわち「重要な顧客企業のため」なのだと。日本政府に請われたから、補助金が得られたからではないのだと、そうはっきり語っています。 重要な顧客の1つは、トヨタ自動車です。ウェイCEOは熊本工場の開所式にトヨタの豊田章男会長と面談した際、「(熊本工場は)TSMCが日本で半導体製造に乗り出す第一歩。ぜひトヨタの支援をいただきたい」「(自動車向け半導体が)今はTSMCにおいて小さな割合であっても、将来は伸びる。トヨタと一緒に成長したい」と語っています。 もう1つの重要な顧客は、アップルです。iPhoneはカメラ用の撮像素子(CMOSセンサー)を大量に消費しますが、それを供給しているのはソニーグループです。熊本工場が稼働すればソニーのCMOSセンサーの生産能力も上がり、結果としてアップルに貢献できます。) Q:アップルを筆頭に、TSMCの重要な顧客の多くはアメリカのハイテク企業です。重要市場であるアメリカに工場を作るのは理にかないますが、日本には作らないだろうと半導体関係者の多くは思っていました。TSMCは日本を重視するようになっているのでしょうか。 A:(リン・ホンウェン氏の略歴はリンク先参照)TSMCがアメリカをより重視してきたのは当然のことです。しかしその姿勢に、変化が生じているのではないかと私は感じています。 TSMCの経営陣は当初、アメリカのアリゾナ新工場のプロジェクトを「千載一遇の成長機会」と感じたはず。中国との半導体戦争という環境の中で、アメリカ政府はTSMCの新工場建設に巨額の公的支援を約束しましたからね。 しかし今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。 実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました』、「今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました」、なるほど。
・『補助金で半導体産業は取り戻せるか?  Q:いつからそう指摘していたのですか。 A:アメリカのCHIPS法案(2022年に成立)が議論され始めた頃からです。チャン氏はアメリカの対中制裁には賛同しているものの、半導体製造復興政策に対しては一貫して反対してきました。) たとえば2022年8月にナンシー・ペロシ、アメリカ下院議長が台湾を訪れた際、訪台したアメリカ議員団にチャン氏はこう直言しています。 「TSMCのアリゾナ新工場が補助金の恩恵を受けられるのは喜ばしいことだ。しかし問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではありません。 TSMCの現在の経営陣はアメリカに工場を作ることについて楽観的だったのでしょうが、今となってはチャン氏の予言が正しかったと痛感しているでしょう。さらに日本での順調さが、経営陣の認識を変えつつあります。さらには、アメリカ政府に対しても大きなプレッシャーとなるのではないでしょうか』、「問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではありません」、その通りだ。
・『TSMCのライバルはIBMの技術で「失敗」  Q:日本政府は国策企業であるラピダスにも巨額の支援を行っています。ラピダスの使命は最先端のロジック半導体を国産化することですから、言い換えればTSMCのライバルも育成しているわけです。ラピダス自身は「TSMCとは競わない」と説明していますが、あなたはこの状況をどう見ていますか。 日本が半導体産業を振興すること自体は、私は非常にチャンスがあると思います。 半導体製造装置において、日本はアメリカ、オランダと並ぶ最重要国です。多くの半導体材料でも、日本企業がトップシェアを掌握しています。これは日本企業が長期的なR&D(研究開発)を重視してきた成果です。息の長いR&Dを重視する姿勢は、台湾よりも日本のほうが顕著。製造装置や材料の強みがさらに増す政策であれば、日本にとって大きな価値があると思います。) ただ、ことラピダスについては、日本の皆さんにシビアに伝えたいことがあります。 日本では先端半導体を作るプロセス技術が途絶えているため、ラピダスはIBMからの技術移転を選びましたよね。実はIBMからの技術移転は、台湾を代表する半導体メーカーも選んだことがあります。しかし失敗に終わっています。しかも企業成長を決定的に遅らせるほどの大きなつまずきとなりました。 その企業はUMC(聯華電子)です。UMCはTSMCと同様、台湾政府の支援で生まれました。当初のビジネスモデルは少し違っていたのですが、今はTSMCと同じ半導体受託製造の世界的大手です。しかもUMCの創業は1980年とTSMCより7年早い。 ところがUMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです』、「UMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです」、「UMC」が安易に「IBM」との「共同開発」を選択したことが、敗因になったようだ。
・『IBMからは学べないことがある  Q:ハイテクの世界で、2年分の技術差は致命的です。UMC同様、ラピダスもIBMからの技術移転でつまずくリスクも出てくるかもしれない。 A:過去に台湾企業が失敗したからと言って、ラピダスも「絶対にうまくいかない」とは断言しません。ただ台湾企業の経験を踏まえて、日本政府とラピダスにはIBMの強みと弱みを冷静に分析してもらいたいのです。 IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか?量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか』、「IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか?量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか」、その通りだ。
・『日本はかつての地位を追いかけるな  そもそも半導体というのは、何らかの夢を実現するための1つの部品に過ぎません。アップルのスティーブ・ジョブズはiPhoneの夢を実現するために独自半導体を追究しました。エヌビディアのジェンスン・ファンはAI(人工知能)の夢を実現しようとしています。こういった夢を追いかける顧客がいるからこそ、TSMCの成功があるのです。 Q:かつて日本でも、電機メーカーが家電やコンピューターなど最終製品の競争力を高めるために、半導体を自社で開発・生産していました。まず需要ありきということですね。 A:今ならたとえば、トヨタがハイブリッドカーや水素カーを世界に普及させる夢を抱いているじゃないですか。そのために半導体ができることは、かなりあります。日本はかつて半導体市場で圧倒的なシェアを持っていたため、当時の地位を取り戻したいと思うのかもしれません。 でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです』、「でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです」、その通りだ。
タグ:同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円・・・この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン「東エレク、レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!」 (その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと) 「絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ」。なるほど。 半導体産業 ません」、その通りだ。 「米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった・・・ラピダスの設立は、2022年8月のことだった。 日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる・・・どうしてこうしたことが起こったのか。 「今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 杉本 りうこ氏による「TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと」 その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがある・・・現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落 「問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではあり 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました」、なるほど。 東洋経済オンライン 「ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである」、「ラピダス」にはこうした期待に応えてもらいたいものだ。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ」、なるほど。 「かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか」、その通りだ。 町田 徹氏による「日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」 「IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか? 現代ビジネス できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです」、「UMC」が安易に「IBM」との「共同開発」を選択したことが、敗因になったようだ。 「でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです」、その通りだ。 「UMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映 としてしまった」、「これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまった」、など誠に残念な結果だ。
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