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ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略(その6)(日本の観光地に欠けている集客のための「戦略」とは、外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」、日本は「最も稼げる武器」が宝の持ち腐れに) [経済政策]

ビジット・ジャパン(インバウンド)戦略については、3月6日に取上げたが、今日は、(その6)(日本の観光地に欠けている集客のための「戦略」とは、外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」、日本は「最も稼げる武器」が宝の持ち腐れに) である。

先ずは、7月3日付けダイヤモンド・オンライン「日本の観光地に欠けている集客のための「戦略」とは 『観光立国の正体』」を紹介しよう(▽、◆、◇は小見出し)。
▽要約者レビュー
・観光はサービス業である。ゆえに、観光を地域の基幹産業に据えるのであれば、観光客に「また来たい」と思わせるサービスを提供してリピーターを獲得していかなくてはならない。それを怠れば客から旅先に選ばれなくなり、やがて観光地として寂れていく。そして、地域全体の活力までもが失われていくことにもつながる。
・日本の観光地は、かつては団体客を効率よく回していくことで収益を上げていた。しかし、団体客が減って個人客の割合が高くなった途端に、客をリピーターに変える魅力や価値が十分に備わっていないことを露呈し、多くの観光地は集客に悩むようになっていった。
・著者の一人である山田桂一郎氏は、山岳ガイドやスキー教師としてスイスの観光産業に携わってきた人物だ。日本各地を回り、スイスで培った経験や知識をもとに観光地の再生、ひいては地域の再生のためのアドバイスをしている。そのポイントは「住民主体の地域経営」と「地域全体の価値向上」である。本書『観光立国の正体』ではこれらの点を踏まえて立て直しに取り組み、成果を上げた地域が紹介されている。
・観光産業だけが潤うだけでは意味がない。農林漁業や商工業などの他の産業、そして一般住民までもが豊かさを実感できるようになることが重要なのだと山田氏は強調する。その地域が真の意味で豊かであれば、訪れたものに幸せを実感させ、良き思い出となる。まさに観光地を「感幸地」にするためのヒントが詰まった一冊だ。(山崎 裕介)
▽本書の要点
・(1)スイスのツェルマットは、小さい村ながらも多くのリピーター数を誇る世界有数の山岳リゾートである。住民主体の「ブルガーゲマインデ」という組織が村役場と連携し、地域経営を支えている。
・(2)北海道弟子屈町はブルガーゲマインデの理念のもとに地域経営組織を立ち上げ、再生を果たした。
・(3)地域全体に大きな経済効果をもたらすには、富裕層を取り込むという視点が必要不可欠である。そのためには、その地域ならではの付加価値を持つサービスや商品を用意しなければならない。
▽要約本文
◆スイスの観光立国
◇リピーターと「異日常」
・スイスのツェルマットは人口約5700人の小さな村であるが、年間約200万泊もの観光客が訪れる。その7割以上がリピーターで、帰り際に翌年の宿の予約をしていく客もいるほどだ。まさに世界でもトップレベルの山岳リゾートといえる。
・なぜツェルマットのような小さな村が多くのリピーターを獲得するに至ったのか。たしかに当地はスキーやトレッキングのコースが豊富で、雄大なアルプスの絶景を堪能できる。しかし、それらの観光資源だけでは毎年リピートする理由にはならない。一度体験すれば十分と感じる人も多いだろう。
・真の理由は、ツェルマットに住む人々が地域に対して愛着と誇りを持ち、長い年月をかけて住みよい環境を整えてきたことにある。例えば、ツェルマットでは燃焼燃料機関を使った自動車の乗り入れ規制が行われている。これは、自然と共生した伝統的な生活を、次世代により良い環境で伝えたいという思いから実施している。このように住民の生活満足度を満たしていくことが、住民の表情や態度に本質的な豊かさをもたらしている。そして、訪問者はこんな場所に住んでみたいと感じ、リピーターとなっていく。
・つまり、ツェルマットが多くのリピーターを獲得しているのは、アルプスの絶景からなる「非日常」の世界だけではなく、魅力的なライフスタイルを持つ「異日常」の空間があるからなのである。
◇国として生き残るために
・スイスという国は、国土の約7割が山岳地帯で天然資源もない。かつては周囲を「列強」の国々に囲まれ、豪雪や土砂崩れなどの自然災害にも悩まされてきた。自分たちの力で食べていくためにはどうすればよいのか、生き残るための手段を模索する必要があった。
・19世紀半ば、イギリスの富裕層の間で登山ブームが起こって貴族たちがアルプスを訪れるようになると、スイスは観光産業が生き残る術であることを見いだした。きれいな水や空気、新鮮なミルクやチーズ、生ハムなど、アルプスのライフスタイルからなるもてなしの数々は、当時公害とスモッグに悩まされていたイギリス人たちを大いに喜ばせた。評判はすぐに広まり、山岳リゾートとしてのスイスの存在は世界中に知られるようになった。
・ここで忘れてはならないのが、これからどうやって生き残っていくのかという「サバイバル意識」があったからこそ、スイスの観光産業は成立したということである。放牧しか手段がなかったヨーロッパの辺境国は、自然と調和した自分たちのライフスタイルの価値を再発見しサービスの質を高めたことで、多くの訪問者を惹きつけるようになったのだ。
◆地域経営の視点
◇日本の観光地が生き残るには
・日本は観光立国を自負しているものの、多くの観光地が問題を抱えている。マーケティングをすることもなくバブル崩壊後の景気低迷のせいにして、選ばれなくなった原因を見抜くことができていない事業者も多い。
・日本の観光地は、団体の一見(いちげん)客を効率よく回していくことばかり考え、満足度やリピーターの獲得を怠ってきた。そして、目先の利益ばかりにとらわれて、魅力ある地域づくりに取り組んでこなかった。 団体旅行が主流だった時代はそれでも問題なかったのかもしれない。しかし、個人旅行の割合が約9割を占め、インターネットなどによって情報収集が容易になり選択肢が多様化した現代においては致命的である。
・観光産業は流行れば流行るほど人手を要し、新たな雇用を生みだす。日本政府の景気対策に効果が見られず地域経済が先細りしていくなか、観光産業を強くして生き残りを図ろうとするのであれば、スイスで取り組まれてきた地域経営の手法を大いに参考にすべきであろう。
・そのためには地域が持つ「本当の魅力・本当の宝」を洗いだし、観光事業者にかぎらず農林漁業や商工業、そして一般住民にいたるまで、地域内のあらゆる層を取り込んだ連携が不可欠となる。
◇住民主体の組織
・スイスの各市町村には「ブルガーゲマインデ」という住民主体の組織が存在する。立場を超えた様々な住民が集まって、地域全体の経営を推進する組織である。 ツェルマットでもブルガーゲマインデが村役場と連携し、地域経営を機能させている。また、山や森などの共有財産の維持管理を徹底し、地域全体の価値を高めて収益性を向上させ、雇用を確保している。
・ツェルマットの場合、まずブルガーゲマインデが地域の経営方針を決める。そして、観光局がその方針にもとづいてマーケティングとブランディングを担当する。その結果、ツェルマットの宿泊キャパシティはここ数十年ほとんど変わっていないにもかかわらず、地域全体の収益は伸びつづけている。宿泊キャパシティを上げて宿泊者数を増やすことが物理的にできないぶん、サービスの質を向上させ、一人当たりの消費額(客単価)を上昇させているというわけだ。
・ツェルマットでは、様々な事業者が連携を取って自然を生かした体験プログラムやツアー、アクティビティなどを企画している。これらをじっくり楽しんでもらうことが訪問客に「時間消費」、すなわち滞在時間の引き延ばしをうながし、飲食や購買などのさらなる消費を生んでいるのである。
【必読ポイント!】
◆観光地再生の狼煙(のろし)
◇誰もが自慢し誇れる町へ
・日本にもブルガーゲマインデの理念のもとに地域経営組織を立ち上げた自治体がある。この事例は今後の日本における地域振興やまちづくりの参考になるといえるだろう。 北海道弟子屈町(てしかがちょう)は、屈斜路湖や摩周湖、川湯温泉などの観光資源を擁する、道東有数の観光地である。しかし、1990年代以降は集客に苦しみ、町内の小売販売額はピーク時の半分ほどにまで落ちこんだ。
・地域再生のため、弟子屈町は「てしかがえこまち推進協議会」を立ち上げた。地域経営組織の立ち上げにあたって気をつけるべきことは、観光事業者のみを潤すような取り組みに偏ると、他の産業や住民たちの不満を買い、地域全体の連携が取れなくなってしまうということである。そこで協議会は、「観光と農業を基軸として、様々な産業を包括した総合産業化」を活動目的として位置づけた。
・また、住民が当事者意識を持って活動に参加できるように「誰もが自慢し、誰もが誇れる町」というビジョンを掲げた。協議会には弟子屈町民なら誰でも参加でき、8つの専門部会から好きな部会を選ぶことができる。このしくみによって横のつながりが充実した。そして、グルメや地場産品、体験型のツアーなど、様々な商品やサービスが生みだされた。 さらに、旅行商品を扱う「株式会社ツーリズムてしかが」を行政の補助金なしで設立し、旅行ビジネスを強化させた。雇用も創出され、初年度(2009年)で黒字化に成功した。
◇その地でなければならないものを
・国内には、他にも興味深い取り組みを実施している地域や自治体がある。 たとえば岐阜県飛騨市古川では、「株式会社美(ちゅ)ら地球(ぼし)」が「SATOYAMA EXPERIENCCE(里山体験)」という日本の里地里山を体験するツアーを提供している。飛騨の食文化である麹づくりや豆腐づくりを体験する「フード&カルチャーウォーク」や、古民家に滞在する「ロングステイ」プランなどは、外国人を中心に人気を誇る。
・このようなリアルな日常生活体験が好評を博していることは、「名所旧跡などの観光資源や公共交通機関が存在しないから集客に結びつかない」という言い訳を真っ向から否定する。さらには、無名な地域であろうが交通が不便な場所であろうが、「その地でなければ手に入らないもの、体験できないもの」があれば、世界中から人がやってくることを証明している。
・また、富山県は2011年度から「とやま観光未来塾」を主催し、人材育成に力を入れている。5年間で延べ370名の事業者が卒塾し、現役生たちとのネットワークを構築して連携を図っている。参加者はスキルや携わっている事業に合わせて、「観光おもてなしコース」などのなかから4つのコースを選択する。
・北陸新幹線は終点の石川県金沢市ばかりがクローズアップされがちだ。そのため、富山県としては、乗客に新幹線を降りて立ち寄ってもらう理由が必要だった。そこで、富山ならではの商品やサービスを創り出して事業として成立させるため、開業前から人材育成に力を入れてきたのである。
◆日本が観光立国になるために
◇富裕層と「地消地産」
・地域経済の活性化を観光で図ろうとするのであれば、富裕層を取り込むことで客単価を上昇させる手段を講じるべきである。市場を「ピラミッド」に例えると、頂上に位置する彼らがお金を多く落とすことで「シャワー効果」が起こり、地域全体に経済効果がもたらされるからだ。
・スイスでは、イギリスの富裕層を相手に観光産業を発展させてきた経緯がある。一方、日本の場合は高級ホテルやレストランなどのような場所を除き、地域全体で富裕層を意識した取り組みを行ってこなかった。富裕層のニーズをイメージできず、そんな高額なものを用意しても売れるはずがないと決めつけて商機を逃してきた事例も少なくない。
・2007年に北海道運輸局が地元の旬の食材を使った「1万円ランチ」を企画したときも、地元関係者の間では冷ややかな反応が多かったという。しかし、実際にいくつかの店舗でやってみると予約が殺到し、大きな話題となった。高額でも「北海道ならでは」という付加価値をもってすれば、1万円はけっして高くなかったのである。
・地域のモノやサービスの価値を高めるためには、地元で消費するものには極力地元産を使う 「地消地産」が大前提となる。客は価値があると思えば遠くても足を運び消費していく。そして地域全体に高収益がもたらされれば、移住者や若者たちが定着しやすい環境が整備され、人口増加につながっていく。
◇日本の「ファン」を獲得する
・ビジョンがぼんやりしたまま迷走する自治体は多いが、政府が掲げる観光ビジョンも明確さに欠けている。「美しい国」や「世界が訪れたくなる日本へ」と言われても、どのような姿を指すのか漠然としている。姿が見えない限り、成果を評価することはできない。
・政府は様々な目標数値を掲げているが、人数や消費額を強調しているものが多い。だが重要なのは、満足度向上のための目標である。観光事業者だけがやる気を出すような目標数値だけではなく、世界中の人たちに日本を訪れたいと思わせる価値を打ち出さなければならない。 外国人旅行者たちを日本の「ファン」として獲得できれば、国際社会における日本へのリスペクトにもつながっていき、将来的には世界中がうらやむ観光立国が実現するだろう。
▽一読のすすめ
・本書は二部構成で、前半は山田氏による観光地・地域再生のための考察が、後半は二人の著者たちによる対談の内容が掲載されている。対談では、著者たちが全国を回ったなかで目にした観光業界の問題点が、「観光立国の裏側」として事細かに記されている。 日本政府は、2020年に2015年の2倍強の外国人旅行者数を獲得することを目標にしている。
・しかし本書の対談を読むと、ガイドの養成や公共交通システムの問題、顧客フィードバックの不在など、まだまだ課題は山積していることがわかるだろう。今後これらの課題がどのように解決されていくのか、注意深く見守っていきたい。 日本総合研究所主席研究員 藻谷浩介、「観光カリスマ」山田 桂一郎
http://diamond.jp/articles/-/133684

次に、元外資系証券会社のアナリストで小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏が7月14日付け東洋経済オンラインに寄稿した「外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」 「5つの大問題」が外国人を遠ざけている」を紹介しよう(▽は小見出し。+は段落)。
・『新・観光立国論』が6万部のベストセラーとなり、山本七平賞も受賞したデービッド・アトキンソン氏。 安倍晋三首相肝いりの「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」委員や「日本政府観光局」特別顧問としても活躍している彼が、渾身のデータ分析と現場での実践とを基に著した『世界一訪れたい日本のつくりかた』が刊行された。
・本連載では、訪日観光客が2400万人を超え、新たなフェーズに入りつつある日本の観光をさらに発展させ、「本当の観光大国」の仲間入りを果たすために必要な取り組みをご紹介していく。
・右肩上がりで成長を続け、何の問題もないかに見える日本の観光が、実はまだまだ多くの改善点や「伸び代」に満ちあふれている。そのことをわかっていただくための具体的な例として、前回、日本には「5つ星ホテル」が28軒しかないという問題を指摘させていただきました。
・外国人観光客が年間2900万人訪れ、観光収入でも世界第6位につけているタイには「5つ星ホテル」が110軒あります。年間3200万人訪れているメキシコでも93軒。実際、139カ国を対象に分析すると、観光収入と高級ホテルの数との間には91.1%の相関があることがわかりました。 それをふまえると、日本の観光が「金持ちの客から稼ぐ」ことを重視してこなかったのは明らかです。だから日本は、観光客1人あたりの消費額が世界第46位と、かなり低いのです。
・この記事は非常に多くの方に読んでいただいたようで、コメント欄にもさまざまな意見が寄せられました。このテーマが日本の観光戦略を考えていくうえで、非常に大事な議論だということを改めて感じました。 そのコメントのなかに、「5つ星ホテルはなくても、高級旅館があるからそちらに泊まればいいのでは」という主旨のものがありました。 「5つ星ホテル」のようなサービスをありがたがるのは海外の価値観に過ぎず、日本にはそぐわない。日本文化を体験しようとやってきているのなら「旅館」に泊まるのが筋であると言いたいのでしょうか。だとすれば、それは「郷に入れば郷に従え」ということで、かなり「日本人目線」です。
・しかしそれをいったん脇に置き、外国人の立場から言わせていただくと、日本の「旅館」には、外国人が泊まるには多くの「ハードル」が存在するのです。 滞在中ずっと日本の旅館に泊まるという選択は、外国人にとっていろいろな点でハードルが高いと言わざるをえません。まして、普段「5つ星ホテル」に宿泊するような富裕層であればなおさらです。
・それにくわえて、多くの方たちが主張する「旅館が伝統的な日本文化」という考え方にも疑問を感じます。いまのような「日本旅館」のスタイルは、戦後に人口が右肩あがりで増え、観光が大衆レジャー化していくなかで確立されました。新著『世界一訪れたい日本のつくりかた』のなかでも指摘している、いわゆる「昭和の観光業」です。 昭和時代の日本人観光客と、遠く離れた国から十数時間かけて訪日する、文化も価値観も異なる外国人観光客をいっしょくたにしてしまうのは、かなり乱暴な「おもてなし」ではないでしょうか。
▽旅館が抱える「5つの大問題」
・そこで今回は、「日本旅館」が訪日外国人観光客の受け皿になりづらい理由として、5つの問題点を指摘させていただこうと思います。
・問題点1:長期滞在に不向き
+これからの日本がとるべき観光戦略を考えた際、「観光客数」よりも「観光収入」を重視していくべき、つまり「量より質」をとるべきだということは、かねてからお伝えしているとおりです。そこでカギになるのは「長期滞在」だというのは言うまでもありません。 1カ所に長く留まって、その周辺でさまざまな観光、飲食、ショッピングにおカネを落としてもらうのが理想的な稼ぎ方です。事実、外国人観光客の平均滞在日数は約10日間。アジア地域からの観光客を除くともっと延びて、約14日間になります。
+そのような「長期滞在」戦略をふまえて、あらためて「旅館」がその受け皿になるか考えてみてください。  夕飯に出てくる豪華なコース料理も1日、2日なら新鮮で喜ばれるかもしれませんが、10日間食べ続けるのはかなりハードルが高いです。せっかく異国にきたのだから、さまざまな料理を食べてみたいと思うのは当然です。
+日本人でも、同じ旅館に10日間泊まれと言われたら、多くの方が断ると思います。それは外国人ならなおさらです。「旅館を変えればいい」という意見もあるかもしれませんが、たとえ別の旅館だったとしても、10日間連続で旅館に泊まるのは、やはり厳しいのではないでしょうか。
・問題点2:ファミリー層に不向き
+日本の旅館が家族旅行に向いているというのは、あくまで1~2泊しかしない日本人の話であって、残念ながら外国人にはあてはまりません。 そもそも、家族が同じ部屋で宿泊するという文化のない国もあります。1泊くらいならば「これが日本の文化か」と布団をしいて川の字になって寝ることを体験しても、それを2週間も続けようとは思いません。
+また、日本の「旅館」は宿泊費に食事が含まれていることが多く、なかには料理がメインになっているところもありますので、非常にコストがかかります。それほど食事をとらない小さな子供がいるようなファミリーの場合、ホテルよりもかなり割高になってしまうのです。
+さらに一部屋いくらではなく、同じ部屋でも人数分の宿泊料を取られますので、家族連れにとって2週間分のコストはまったく割に合わないのです。
▽旅館の「常識」は世界の「非常識」
・問題点3:ルームサービスが不十分
+外国人が日本に10日間滞在するとなると当然、衣類などを洗濯しなくてはいけません。しかし、そのようなルームサービスを行っている「旅館」は少ないです。ほとんどが、地図を書いて近所のコインランドリーを教えるという対応でしょう。 「貧乏旅行」を楽しむバックパッカーならばそれでも問題ありませんが、限られた時間のなかでできるかぎり日本を堪能しようとしている外国人観光客に対する「おもてなし」としては、気のきいた対応とは言えません。
+また、長いフライトを経て来るわけですから「時差ボケ」でなかなか眠りにつけないこともあります。夜中になにか食べたいという要望に応えられるルームサービスを行っている旅館も少ないのではないでしょうか。
・問題点4:「夜のエンターテインメント」がない
+日本の旅館のフロントは、10時くらいになると人がいなくなってしまいます。「門限」が決められている旅館も少なくありません。部屋には仲居さんがやってきて、布団をしいてしまいます。お隣のお客さんもいますので、静かにしなくてはいけません。 そう、完全に「おやすみなさいモード」なのです。
+外国人観光客からすれば、これも1日くらいであれば「これが日本の旅館か」という体験になりますが、10日間もこれを続けるのはさすがに「酷」であると言わざるをえません。 みなさんも自分に置き換えて考えていただきたいのですが、かなりの費用をかけて航空券や旅行代金を支払い、時間を捻出して遊びに来た海外のホテルで、夜になったら強制的に寝るように勧められたらどうでしょうか。 大きなお世話だと思うのではないでしょうか。
+せっかく遊びにきたのですから、その国のナイトライフを最大限楽しみたいと思うのは当然です。訪日外国人観光客もしかりで、日本の夜を最大限に満喫したいのです。そのようなニーズに「旅館」がどれだけ応えられるのか、私には大いに疑問です。
・問題点5:老朽化が目立つところも
+最後の大きな問題は設備です。特に地方の旅館の設備は、残念ながら遠い異国からやってきた観光客をもてなすのに十分とは言えません。 実は私も、自身が社長をつとめる「小西美術工藝社」の出張や観光関係の視察で、地方の旅館をよく利用しています。文化財に携わっている職業柄、どうしても建物の傷み具合などを確認してしまうのですが、悲しくなるくらい老朽化してしまっているところが多くあります。 壁紙が剝がれている、水回りや浴室が古い、しばらく畳を替えた形跡がない……例をあげればきりがありません。
+みなさんが観光に訪れた国で「この国の観光の発展のためですから、こちらのメンテナンスができていない部屋で我慢してください」と言われたらどうでしょうか。「2度と来るか」と落胆するのではないでしょうか。
▽そもそも、今のスタイルは「日本文化」なのか
・ここまで、「旅館」がなぜ訪日外国人観光客の主な受け皿として不適切なのかを指摘させていただきました。このような話をすると、「日本の文化にケチをつけるなら来なくていい」と、建設的とは言いがたい議論になってしまうことがたびたびあります。
・ただ、「旅館」に関して言わせていただくと、「そもそも日本文化なのか」という大きな問題もあります。 鬼怒川温泉、箱根、熱海などにある宴会場をそなえた大型観光旅館は、企業の慰安旅行や、町内会の親睦旅行などの「団体旅行」を対象に発展してきました。 団体でバスに乗り込んでみな同じような観光をするので、食事も同じ、部屋もみな同じ。滞在するのはほぼ1泊か2泊なので、布団をしけるだけの狭い部屋をたくさんつくったほうが効率良く稼げるのは言うまでもないでしょう。
・では、このような「団体旅行」が、江戸時代などから続く日本の伝統的な観光のスタイルかというと、決してそうではありません。 たとえば、いまは多くが取り壊され、大型ホテル風の建物に変わってしまっていますが、明治期の文学作品などを読んでいただければわかるとおり、当時は長期滞在をすることもよくありました。
・つまり、多くの方が「日本文化だ」と信じている「旅館」のスタイルは、実は戦後、人口が急激に増えたことによってポピュラーになった「団体旅行」をさばくために発展したものにすぎないのです。 実際、昭和時代に造られた大型の旅館は、つぶれてしまったところも多くあります。これからは、よりコンパクトで環境に配慮したものに変えていくべきでしょう。東京は1990年代から大再開発されていますが、観光の盛り上がりを受け、これからは地方の大再開発が活発になると思われます。
▽そもそも「5つ星ホテル」の基準とは?
・時代に合わせて「旅館」というスタイルが生み出されたのなら、訪日外国人観光客が2400万人を突破したいまの日本社会にマッチする宿泊インフラが求められるのも当然でしょう。 このようなお話をしても「日本の旅館やホテルは施設の質が高いから、新しい5つ星ホテルなどいらない」と主張される方もいます。 このような方の意見を聞くと、もしかしたら「5つ星ホテル」というものの定義自体が、まだ日本国内では十分に理解されていないのではないかと感じます。
・英国政府観光局によると、「3つ星ホテル」と「4つ星ホテル」と「5つ星ホテル」の決定的な違いは、設備の豪華さなどの「ハード面」ではなく、サービスに代表される「ソフト面」、つまり「スタッフの質」です。 「3つ星ホテル」は、一般のホテルよりもややルームサービスの選択の幅が広いものの、限定的。「4つ星ホテル」はスタッフの経験が豊富で、客の細かい要望に応える。そして「5つ星ホテル」になると、滞在中の「すべて」の要望にしっかりと応える。
・「すべて」ですから、館内にいるときに丁寧な対応をするだけではありません。 ビジネスパーソンであればイベントの企画なども手伝います。観光客ならば、どこへ行ってどのように観光をすれば最大の満足が得られるのかといったコーディネートから、ガイドブックに掲載されていない隠れ的なレストランの紹介や予約など、そこに宿泊している間のすべての面倒事を解決してくれるのです。
・このようなサービスを提供するため、一般的には「1つの部屋に2~4人のスタッフが必要」と言われているのです。 さて、それをふまえて日本の「旅館」を考えてみてください。はたしてそのようなサービスを提供できていると言えるでしょうか。
▽宿泊施設の日本人スタッフには、もっと高い給料を
・もうひとつ「5つ星ホテル」に否定的な意見として、「日本は土地が狭くて給料が高いので、そんな高級ホテルをつくっても収益をあげられない」という主張がありますが、これは事実ではありません。 欧州には日本より土地が狭く、給料が高い国はいくらでもありますが、「5つ星ホテル」は日本よりも多く、きちんと運営されています。 日本では考えられないほど高い宿泊料でも泊まる富裕層がいるので、働いている人たちも、格安ホテルで働く人たちよりはるかに高い給料をもらっています。
・よその国が当たり前にできていることを、優秀な日本のホテルマンたちができないとは、私はとても思えません。 まだ整備されていない「5つ星ホテル」をつくって、海外の富裕層にも満足してもらえるサービスを提供して、そのサービスの高さなりの宿泊料をもらって、ホテルマンたちが今よりも高い給料をもらう。これがなぜ悪いのでしょうか。
・私は日本の「旅館」を否定しているわけではありません。観光は「多様性」が命ですので、外国人観光客のなかには、「日本の旅館は最高だ」という人もいるでしょう(そういう人でも、2週間も泊まるのは無理だと思いますが)。 ただ、時代も客も変わってきているなかで、新しいサービスが整備されていくのは当然です。「旅館」という昭和のスタイルですべてに対応するのは、やはり無理があるのではないでしょうか。
・今のマニュアル化された「旅館」というスタイルを見直し、日本の人口が1億人になる前の時代には存在した「日本の魅力」を再発見して、今の時代にも多少合わせた形に変える時期にさしかかっているのではないでしょうか。
http://toyokeizai.net/articles/-/180391

第三に、同じデービッド・アトキンソン氏が7月28日付け東洋経済オンラインに寄稿した「外国人が心底うらやむ「最強観光資源」とは? 日本は「最も稼げる武器」が宝の持ち腐れに」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・(冒頭の書き出しは上記と同じなので省略) 前回(「外国人よ、嫌なら来るな」は無責任な暴論だ)、日本の観光を考えるうえで、「日本のやり方が気に入らないなら外国人は来るな」という主張は、日本の現実を見据えていない感情論にすぎないことを指摘させていただきました。 ただ、コメント欄を見てみると、一部納得していない方がいらっしゃるようです。しかし、さまざまな社会問題を起こしている経済の低迷から脱却するためには、「観光の産業化」は不可欠です。
・そこで今回は、「日本のやり方に従わない外国人は来るな」ではなく、「どうすれば外国人が来てくれるか」という発想へ転換すれば、いかに明るい未来が待っているのかをお話ししたいと思います。 さて、これまでホテル(外国人が心底失望する「日本のホテル事情」)や旅館(外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」)の改善点を指摘させていただきましたが、日本の観光がまったく改善していないというわけではありません。2015年に出した『新・観光立国論』のなかで指摘した「多言語対応」や「外国人向け観光ガイド」などは、この2年でかなり進んでいます。
・それを示すのが、2年に1度のペースでWorld Economic Forumが発表している、世界各国の「観光産業国際競争力」のランキングです。 このランキングでは、日本は2009年に第25位というポジションでしたが、2017年の最新のランキングではなんと第4位まであがっているのです。しかも、そこでは「この2年、世界で最も改善している」という評価も受けています。
・ただし、もちろんそれで浮かれていてはいけません。 これまでほとんど整備していなかった国が整備を始めれば、それだけで劇的に改善するのは当然です。客観的に見れば、日本は「観光の産業化」という世界の流れに乗り遅れた分を取り返しているだけと言えるでしょう。
・それは、周囲を見ても明らかです。観光産業の競争力が改善したトップ15カ国のなかで日本は見事第1位に輝いていますが、第2位はアゼルバイジャン、第3位はタジキスタン、第4位がベトナムとなっています。第9位の韓国までは正直、「観光」というイメージが確立していない国ばかりです。 これは裏を返せば、観光においては、日本は成長著しい「新興国」というポジションだったということです。あらゆる分野で成長が停滞しているこの国で、「観光」が経済成長を牽引していく切り札になることがよくわかっていただけるでしょう。
▽観光ランキングからわかる日本の強みと弱み
・では、第1位になるほど高く評価された日本の「改善点」とはなんでしょうか。 ビザの緩和や国の観光整備に対する予算が増えたことなどを反映して、「国際開放度」が121ランク上がって第10位になりました。政府による「観光に対する優先度」も、32ランク上がって第18位になっています。つまり、この2年で、国として観光戦略に対して非常に積極的になったことが大きな「改善点」として評価されているのです。
・そう聞くと、「これだけ高い評価を得ているのなら今のままで十分ではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これは今までほとんど手をつけていなかったというだけです。同じデータからは、多くの課題も浮かび上がっています。 たとえば、特に一部の地方の観光地にはレンタカーが欠かせませんが、その普及率は世界第85位です。アメリカなどを旅行した際、レンタカーを借りて自由にいろいろなところを観光したという人も多いでしょう。外国人が北海道のような広大な大地を観光する際も同様で、外国人向けのレンタカーが普及していたほうが、より多くの外国人観光客を招くことができるのは言うまでもありません。
・日本国内にいるとなかなかそう感じないでしょうが、日本の航空インフラも観光産業的に見ると足りておらず、世界第97位。 観光インフラの整備に関しても、これまで力を注いでこなかった名残で世界第29位となっています。決して「今のままで十分」と構えていられるような立場ではないということがわかっていただけたのではないでしょうか。
・しかし、それは逆に言えば大きなチャンスです。日本の観光が「発展途上」だということは、これから戦後の高度経済成長のように多くの雇用が生まれ、さまざまな社会課題へまわすおカネも生まれる可能性があるということです。
▽日本最強の観光資源は「自然」
・そのカギとなるのが、「自然」です。 実は「自然」は世界のなかで最も誘致能力が高い観光資源だといわれています。みなさんも海外を訪れて、ビーチやトレッキングなどで、その国の美しい自然を堪能されるのではないでしょうか。 「観光大国」というのは、自然・気候・文化・食という4条件を満たしているといわれています。この4つの順番は、単に偶然や語呂の良さではなく、観光誘致に力のある順番に並んでいるのです。
・では、なぜ「自然」は集客力が高いのでしょうか。ここでは3つの観点からご説明しましょう。
 1.「客層の幅」が広い(まず、「自然観光」は「文化観光」と比べて、「客層の幅」が広いという特徴があります。たとえば文化観光ですと、メインターゲットはやはり、ある程度年を重ねた、教養のある人が中心となります。 一方、「自然観光」は、スキーやスキューバダイビングに代表されるように、若い人も呼べます。「客の層」が圧倒的に広いのです。
 2.長期滞在が期待できる(観光においては、ちょっと来てすぐに帰ってしまう人より、長く滞在してくれる人のほうがおカネをたくさん落としてくれるのは、言うまでもないでしょう。 文化財ですと「見て終わり」ですから、長くても半日程度しか滞在しませんが、自然観光は違います。トレッキングなどは丸1日かかりますし、スキーやスキューバダイビングなら、宿泊して何日も楽しむのが一般的です。
 3.日本の自然は多様性に満ちている(日本に生まれ、日本に住んでいる人にとっては気づきにくい部分ですが、日本ほど「自然の多様性」に満ちている国は、世界を見わたしてもそれほど多くはありません。 ビーチがある海から少し内陸に入ると、3000メートル級の山があります。ヨーロッパなどの森林と比べると、日本の動植物の多様性には目を見張るものがあります。 また、南北に長いため、北海道や東北のような豪雪地帯から沖縄のビーチリゾートまで、あらゆる「自然」がそろっています。日本の「自然」は、世界がうらやむ多様性に満ちているのです。
▽日本の自然は「宝の持ち腐れ」になっている
・しかし、先ほどのWorld Economic Forumのデータによると、日本はこれほどすばらしい自然を持ちながらも、「自然観光」は世界第29位、その整備も世界第66位となっています。 これまで日本は、「日本文化」を積極的に海外に発信してきました。日本の文化資源のランキングは世界第4位という高い評価を受けています。
・にもかかわらず、観光客数も他の先進国と比べると不十分ですし、最も大事な観光収入もまだかなり少ないです。文化をメインに発信しているフランスを見てください。たしかに観光客数は多いですが、それに比して収入は異常に少ないのです。それを考慮すると、やはり日本も「文化」だけでは観光大国にはなれません。
・日本の観光PRは富士山、芸妓(げいこ)、茶道、歌舞伎、お能、城、神社などが発信の大半を占めており、「文化・歴史」に偏重しすぎています。日本のdestination campaignに登場するのもほとんど文化財です。  「文化・歴史」が非常に大事な観光資源であることは言うまでもありませんが、『新・観光立国論』などでも繰り返し述べてきたように、観光とは「多様性」が命です。
・「文化・歴史」のPRだけでは肩苦しく、観光客の「幅」が狭くなってしまいます。これはある意味で、日本人観光客の目線と言えるかもしれません。といっても、「文化・歴史」を否定しているわけではありません。「文化・歴史」を打ち出す観光戦略だけでは限界があると申し上げているのです。
・より多くの「日本ファン」を誘致していくには、多種多様な観光資源を最大限活用すべきです。つまり、「文化・歴史」を打ち出している現状にくわえて、さらに「自然」という強みをもっとアピールしていけば、日本の観光はまだ大きく成長することができるのです。
・先日おもしろいデータを見ました。東京都が「都民が外国人観光客に東京で体験してほしいこと」と、「外国人観光客が東京都でやってみたいこと」を調査したところ、最も大きなギャップが出たのが「自然体験」でした。 外国人の立場では、高尾山、庭園、公園など、東京都ならではの「自然」も体験したい。しかし、都民としてはせっかく遠い国からわざわざ来たのだから、日本の伝統や歴史を学んでほしいと考えます。
・誤解を恐れず言えば、「観光は勉強であり、修業である。外国人に日本の文化を教える」などという、バブル以前に生まれた感覚と慣習がまだ残っているという印象を受けるときすらあります。 このような「ギャップ」を埋めることができれば、日本の観光は新たなステージに立つことができるでしょう。
・たとえば、外国人観光客にも人気の鎌倉や日光を考えてみましょう。いま彼らが向かうのは、鎌倉の場合は大仏、日光ならば東照宮というのが定番となっています。しかし、ご存じのように、鎌倉には由比ヶ浜や江の島などがあってマリンスポーツが楽しめます。日光は豊かな自然に囲まれていますので、トレッキングやフィッシング、カヌーなどさまざまなアウトドアが楽しめます。 これらを外国人観光客も楽しめるように整備して発信すれば、地域経済的にも大きなプラスになることは言うまでもありません。
▽「観光化」こそ、自然保護の切り札だ
・このような説明をすると、ただでさえ外国人が増えて観光地が混み合っていると問題になっているのに、日本の美しい自然まで荒らされたらたまらないと主張される方もいます。 しかし、文化財の問題と同様で、カネの成る木などどこにもありませんので、しっかりと「保護」して後世に遺すためにも、「観光」などでその「原資」を稼がなくてはいけません。先立つものがなければ「保護」などできないということは、東洋経済オンラインの読者であればおわかりいただけると思います。
・かつて富士山に多くの登山客が訪れたことで、「自然破壊」が問題になりましたが、「観光地」としてしっかりと整備することで改善されていきました。中途半端な「手つかずの自然」より、観光地としてしっかりと整備されることで、スタッフや予算がつき、結果、美しい自然が守られる。それはアメリカの国立公園などをはじめとした「世界の常識」なのです。
・つまり、「自然観光」の整備は、まわりまわって「自然保護」を持続させる原動力になっているのです。 ビジネスチャンスというだけではなく、社会課題を解決することができる「自然観光」は、実は日本に秘められた高いポテンシャルの象徴と言えるでしょう。
http://toyokeizai.net/articles/-/182174

第一の記事で、 『日本の観光地は、かつては団体客を効率よく回していくことで収益を上げていた。しかし、団体客が減って個人客の割合が高くなった途端に、客をリピーターに変える魅力や価値が十分に備わっていないことを露呈し、多くの観光地は集客に悩むようになっていった』、 『これからどうやって生き残っていくのかという「サバイバル意識」があったからこそ、スイスの観光産業は成立したということである。放牧しか手段がなかったヨーロッパの辺境国は、自然と調和した自分たちのライフスタイルの価値を再発見しサービスの質を高めたことで、多くの訪問者を惹きつけるようになったのだ』、 『政府は様々な目標数値を掲げているが、人数や消費額を強調しているものが多い。だが重要なのは、満足度向上のための目標である』、などの指摘はその通りだ。
第二の記事で、 『日本には「5つ星ホテル」が28軒しかない・・・タイには110軒』、との指摘は確かに考えさせる問題だ。 『旅館が抱える「5つの大問題」』、 『そもそも、今の(旅館の)スタイルは「日本文化」なのか』、 『今のマニュアル化された「旅館」というスタイルを見直し、日本の人口が1億人になる前の時代には存在した「日本の魅力」を再発見して、今の時代にも多少合わせた形に変える時期にさしかかっている』、などの指摘はその通りだ。
第三の記事で、 『World Economic Forumが発表している、世界各国の「観光産業国際競争力」のランキング・・・では、日本は2009年に第25位というポジションでしたが、2017年の最新のランキングではなんと第4位まであがっている・・・この2年で、国として観光戦略に対して非常に積極的になったことが大きな「改善点」として評価されている』、というのは、『「観光の産業化」という世界の流れに乗り遅れた分を取り返しているだけ』、という面があるにせよ喜ばしいことだ。ただ、 『日本の自然は「宝の持ち腐れ」になっている』、 『日本の観光PRは・・・「文化・歴史」に偏重しすぎています。・・・「観光は勉強であり、修業である。外国人に日本の文化を教える」などという、バブル以前に生まれた感覚と慣習がまだ残っているという印象を受けるときすらあります』、などの指摘はその通りで、日本の観光庁などは考え直す必要があろう。アトキンソン氏の指摘は、いつもながら外国人ならではの視点のユニークさもあって参考になり、面白い。
タグ:3.日本の自然は多様性に満ちている 2.長期滞在が期待できる 1.「客層の幅」が広い 日本最強の観光資源は「自然」 これまで日本は、「日本文化」を積極的に海外に発信してきました。日本の文化資源のランキングは世界第4位という高い評価 日本の航空インフラも観光産業的に見ると足りておらず、世界第97位 多くの課題も浮かび上がっています。 たとえば、特に一部の地方の観光地にはレンタカーが欠かせませんが、その普及率は世界第85位です この2年で、国として観光戦略に対して非常に積極的になったことが大きな「改善点」として評価されているのです 観光においては、日本は成長著しい「新興国」というポジションだったということです 、「自然観光」は世界第29位、その整備も世界第66位となっています 「観光の産業化」という世界の流れに乗り遅れた分を取り返しているだけと言えるでしょう 日本は2009年に第25位というポジションでしたが、2017年の最新のランキングではなんと第4位まであがっているのです。しかも、そこでは「この2年、世界で最も改善している」という評価も受けています World Economic Forumが発表している、世界各国の「観光産業国際競争力」のランキング 外国人が心底うらやむ「最強観光資源」とは? 日本は「最も稼げる武器」が宝の持ち腐れに まだ整備されていない「5つ星ホテル」をつくって、海外の富裕層にも満足してもらえるサービスを提供して、そのサービスの高さなりの宿泊料をもらって、ホテルマンたちが今よりも高い給料をもらう 決定的な違いは、設備の豪華さなどの「ハード面」ではなく、サービスに代表される「ソフト面」、つまり「スタッフの質」 「5つ星ホテル」の基準とは 多くの方が「日本文化だ」と信じている「旅館」のスタイルは、実は戦後、人口が急激に増えたことによってポピュラーになった「団体旅行」をさばくために発展したものにすぎないのです 宴会場をそなえた大型観光旅館は、企業の慰安旅行や、町内会の親睦旅行などの「団体旅行」を対象に発展 、「旅館」に関して言わせていただくと、「そもそも日本文化なのか」という大きな問題もあります 問題点5:老朽化が目立つところも 問題点4:「夜のエンターテインメント」がない 旅館の「常識」は世界の「非常識」 問題点3:ルームサービスが不十分 問題点2:ファミリー層に不向き 問題点1:長期滞在に不向き 旅館が抱える「5つの大問題」 日本の「旅館」には、外国人が泊まるには多くの「ハードル」が存在するのです 本は、観光客1人あたりの消費額が世界第46位と、かなり低いのです てしかがえこまち推進協議会 北海道弟子屈町 タイには「5つ星ホテル」が110軒 宿泊キャパシティはここ数十年ほとんど変わっていないにもかかわらず、地域全体の収益は伸びつづけている 村役場と連携し、地域経営を機能させている。また、山や森などの共有財産の維持管理を徹底し、地域全体の価値を高めて収益性を向上させ、雇用を確保している 各市町村には「ブルガーゲマインデ」という住民主体の組織が存在 日本の観光地は、団体の一見(いちげん)客を効率よく回していくことばかり考え、満足度やリピーターの獲得を怠ってきた 日本は観光立国を自負しているものの、多くの観光地が問題を抱えている 放牧しか手段がなかったヨーロッパの辺境国は、自然と調和した自分たちのライフスタイルの価値を再発見しサービスの質を高めたことで、多くの訪問者を惹きつけるようになったのだ 「サバイバル意識」 イギリスの富裕層の間で登山ブームが起こって貴族たちがアルプスを訪れるようになると、スイスは観光産業が生き残る術であることを見いだした 多くのリピーターを獲得しているのは、アルプスの絶景からなる「非日常」の世界だけではなく、魅力的なライフスタイルを持つ「異日常」の空間があるからなのである ツェルマットに住む人々が地域に対して愛着と誇りを持ち、長い年月をかけて住みよい環境を整えてきたことにある 年間約200万泊もの観光客が訪れる。その7割以上がリピーターで、帰り際に翌年の宿の予約をしていく客もいるほどだ。まさに世界でもトップレベルの山岳リゾート ・スイスのツェルマット 山岳ガイドやスキー教師としてスイスの観光産業に携わってきた人物だ。日本各地を回り、スイスで培った経験や知識をもとに観光地の再生、ひいては地域の再生のためのアドバイスをしている 山田桂一郎 日本の観光地は、かつては団体客を効率よく回していくことで収益を上げていた。しかし、団体客が減って個人客の割合が高くなった途端に、客をリピーターに変える魅力や価値が十分に備わっていないことを露呈し、多くの観光地は集客に悩むようになっていった 日本の観光地に欠けている集客のための「戦略」とは 『観光立国の正体』」 ダイヤモンド・オンライン (その6)(日本の観光地に欠けている集客のための「戦略」とは、外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」、日本は「最も稼げる武器」が宝の持ち腐れに) (インバウンド)戦略 ビジット・ジャパン 日本には「5つ星ホテル」が28軒しかないという 本当の観光大国」の仲間入りを果たすために必要な取り組み 日本政府観光局」特別顧問 明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」委員 6万部のベストセラーとなり、山本七平賞も受賞 観光化」こそ、自然保護の切り札だ 誤解を恐れず言えば、「観光は勉強であり、修業である。外国人に日本の文化を教える」などという、バブル以前に生まれた感覚と慣習がまだ残っているという印象を受けるときすらあります 「文化・歴史」のPRだけでは肩苦しく、観光客の「幅」が狭くなってしまいます 新・観光立国論 外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」 「5つの大問題」が外国人を遠ざけている 東洋経済オンライン デービッド・アトキンソン 政府は様々な目標数値を掲げているが、人数や消費額を強調しているものが多い。だが重要なのは、満足度向上のための目標である 富裕層と「地消地産」 古民家に滞在する「ロングステイ」プランなどは、外国人を中心に人気を誇る 飛騨の食文化である麹づくりや豆腐づくりを体験する「フード&カルチャーウォーク」や 里山体験 日本の観光PRは富士山、芸妓(げいこ)、茶道、歌舞伎、お能、城、神社などが発信の大半を占めており、「文化・歴史」に偏重しすぎています 岐阜県飛騨市古川 誰もが自慢し、誰もが誇れる町 「観光と農業を基軸として、様々な産業を包括した総合産業化」を活動目的
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