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公共部門の民間委託(PFI・PPP)(関空冠水で考える…空港民営化は万能薬なのか 公共財の自覚どこへ 関空運営会社の経営陣、水道民営化促進で内閣府に出向した人の正体 7日成立予定の改正水道法に不透明な背景、水道法改正が「民営化」でないばかりかタチが悪い理由) [経済政策]

今日は、公共部門の民間委託(PFI・PPP)(関空冠水で考える…空港民営化は万能薬なのか 公共財の自覚どこへ 関空運営会社の経営陣、水道民営化促進で内閣府に出向した人の正体 7日成立予定の改正水道法に不透明な背景、水道法改正が「民営化」でないばかりかタチが悪い理由)を取上げよう。なお、PFI、PPPについては、第二の記事にあるように、(Private Finance Initiative、民間資金、運営で公共サービスの提供を行う)、PPP(Public Private Partnership、公民の連携で行う)のこと。今日取上げるものは、いずれもPPPである。

先ずは、Aviation Wire編集長の吉川 忠行氏が9月20日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「関空冠水で考える…空港民営化は万能薬なのか 公共財の自覚どこへ 関空運営会社の経営陣」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/246820/091800070/?P=1
・『訪日需要が好調だ。日本政府観光局(JNTO)によると、2018年1月から6月までの訪日客は1590万人と、前年同期比で15.6%増を記録し、4月には過去最速で累計1000万人を突破した。近年は中国からのクルーズ船などもあるが、多くは空の便で日本を訪れている。 旺盛な訪日需要を背景に、航空会社や空港運営会社の業績も改善している。成田国際空港会社(NAA)の18年3月期純利益は前年同期比41.7%増の359億1800万円、関西国際空港と大阪国際空港(伊丹空港)を運営する関西エアポート(KAP)も同67%増の283億円と、大幅な増益となっている。 こうした中、近年相次いでいるのが空港民営化だ。先駆けとなったのは関空と伊丹。いずれも国が出資する空港会社の管轄下にある「会社管理空港」だったが、16年4月1日から純民間企業の関西エアポート(KAP)が運営している。これを皮切りに18年4月には神戸と高松の2空港も民営化を果たした。直後の5月には、19年4月の民営化を目指す福岡空港の運営権について、優先交渉権者が決まった。さらに新千歳空港を核とする北海道7空港の民営化についても、2019年7月をめどに運営会社を選定する。 筆者は当連載で以前、空港民営化の問題点を指摘した(記事はこちら)。当時、関空に就航する航空会社の関係者から聞こえてきたのは、民営化前なら「あうんの呼吸」で進んでいたプロモーションや空港の施設運営が思うように進まなくなっている、という悲痛な声だった。 あれから1年が過ぎた今も、残念ながら状況は好転していない。重ねて言うが、消費者にとってサービス向上につながるとされている「民営化」は、こと空港運営の手法としては、「万能薬」とは言い切れない側面があるのだ。9月4日の台風21号により滑走路の冠水など大きな被害を被った関空では、KAP経営陣が早期の暫定再開案を打ち出せなかった。現在は事実上、国主導での復旧作業が進んでいると言っても過言ではない。運営会社の業務と責任として、災害からの復旧も含まれるにもかかわらずだ。 今年4月、民営化3年めに突入した関空と伊丹の運営実態と、台風21号の被害に対するKAP経営陣の不十分な初動対応から、改めてこのことを問いたい』、確かに関空のトラブルではKAPがなす術なく呆然としていたので、国が直接乗り出したことは記憶に新しい。
・『民営化後に生じた「公共性」への温度差  3空港の民営化は、国や自治体に所有権を残したまま運営権を売却する「コンセッション方式」で実施。KAPはオリックスと仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートのコンソーシアムが設立したもので、株式はオリックスとヴァンシが40%ずつ同率で持ち、関西を拠点とする企業・金融機関30社が残り20%を保有している。 2017年度の旅客数が、国際線と国内線合わせて前年度比12%増の2880万2506人と、3年連続で過去最高を更新した関空。このうち国際線は14%増の2190万人と6年連続で前年度を上回り、開港以来の年度合計として、2000万人を初めて突破した。さらに外国人に絞ると、68.5%を占める2190万人。日本人が海外へ向かう空港というよりは、訪日客の玄関口としての存在感が増している。これは同時に、訪日客を増やしていきたい政府にとって、関空が戦略的に重要な位置にあることも意味している。 こうしたデータから見ると関空の民営化は、確かに「成功」の部類に入るかもしれない』、これは筆者が問題点を指摘する前に、一応「お世辞」として記述したに過ぎず、実態はインバウンド・ブームに乗っただけで、到底「成功」といえるものではない。
・『だが筆者が昨年指摘したような関空の問題点が、改善されたとの声は国内や海外いずれの航空会社からも聞こえてこない。 むしろテナント企業などからは、放置しておけば関空のプレゼンス低下につながりかねない話ばかりが耳に入ってくる。例えば以前から航空会社などが懸念していた、空港地下に集中する重要施設の冠水対策は、民営化後も後回しになっている。あるテナント企業に対しては、関空にとどまる必然性が薄れるほどの法外な値上げ提案がなされたという。 後述する伊丹のターミナル改修でも、民営化前に計画されていたプランと比べ、空港が利用者から求められる利便性を重視するよりも、商業施設としてのにぎわい創出に舵が切られた。関空の第1ターミナル改修に至っては、今年3月としていた計画概要の発表すら到達できていない。 航空会社や自治体などからも関空に対する様々な意見を集約していくと一つの問題が見えてくる。それは、営利企業とは対極にある「公共性」という概念の欠如だ。KAPの経営陣からも「公共性」という言葉は出てくるが、どうやら航空会社や自治体の考えるものとはかけ離れているようだ。 昨年末、KAPの山谷佳之社長に「訪日需要が大きく落ち込んだ際、どのように対処するか」と尋ねたことがある。山谷社長は「短期的な落ち込みは怖くないが、長引くと問題だ。コンセッション(運営権の民間への売却)も継続できないだろう。国にお返ししなければならなくなる。国もコンセッションを解除するだろう」と応じた。 こうした言葉から見え隠れするKAPの経営姿勢に、違和感を感じる関係者は少なくない。複数の航空会社の幹部が異口同音にこう指摘する。「何かあったら国に運営権を返すような気構えでは、安心して就航し続けることができない」』、こんな甘い考えで経営している背景には、契約条件のいい加減さがあるのではなかろうか。一旦、契約した以上、債務超過になるギリギリまで頑張らせるべきだろう。
・『クレーン船による橋桁の撤去作業が進む関空連絡橋  別の幹部も「山谷社長は“民間の知恵”と、ことあるごとに言っているが、出てくるのは商業施設の話ばかり。ターミナルも不動産投資のような改修の話にとどまり、将来像が見えてこない」と、飛行機が乗り入れられるショッピングモールのようになりつつある関空と伊丹の現状に危機感を抱く。 新路線の誘致など関空が民営化した後も進むプロジェクトの多くは、国が出資する新関西国際空港会社の時代にスタートしたものだ。そして、現場を支えているのは、民営化前から閑古鳥が鳴く関空不遇の時代を支えてきた社員たちだ。  空港が所在する自治体の幹部から聞いた、この話が印象的だった。「自治体は逃げられないんですよ。空港から航空会社が撤退してしまったら、都市としてのプレゼンスが下がってしまい、一度下がったものを戻すのは非常に難しく、さまざまな問題に飛び火する。だから支え続けなければならない。空港民営化の動きを見ていると、運営会社にその覚悟があるのか」 航空会社も、地震などの天災に見舞われても、運航を維持しなければならないなど、社会から常に高い公共性が求められている。そうした企業や自治体の立場では、「経営難に陥れば将来の運営撤退を視野に入れるような企業と、よいパートナーシップを築くのは難しい」と考えるのは自然なことだろう。 そして今回の台風21号による被害では、KAP経営陣は有効な早期復旧策を打ち出せなかった。運営権を売却したはずの国がしびれを切らし、復旧計画の大枠を裏で描く形になってしまった。国土交通省が職員5人を派遣して以降、「復旧作業が加速し、計画全体を見通せるようになった」(航空会社幹部)という』、自治体や航空会社は「逃げられない」のに、運営会社KAPは逃げ出せるというもおかしな話だ。「国土交通省が職員5人を派遣」して漸く復旧作業が加速というのもみっともない話だ。
・『利便性よりブランディングを優先  大阪万博開幕を控えた1969年に開業し、現在は2020年の全面刷新を目指して改修工事が進む伊丹空港。今年4月18日に、ターミナル中央エリアがリニューアルオープンした。これまで南北に分かれていた到着口を中央1カ所に集約し、商業エリアには世界初となる空港内ワイン醸造所を併設したレストランや、関西の有名店などが出店した。 民営化というと、こうした商業施設のリニューアルや、LCC(低コスト航空会社)の誘致が目玉となる。運営事業者を選定するコンペに提案される書類でも、ターミナル改修は提案事項の上位に据えられることが多い。 しかし、空港の本来の役目は、言うまでもなく発着便の玄関口であることだ。地域の名店を揃えることも大事だが、空港に到着した乗客が迷わずに空港から都心部へ出たり、都心部から空港までスムーズに到着したりできるかどうかも、空港としての重要な資質と言える。  筆者がかねて多用する伊丹で最近、そのことを痛感させられる出来事が増えている。リニューアル前より不便になったと感じるのだ。 例えば空港から梅田行きのリムジンバスに乗ろうとした際、到着口が中央に集約されたことで、左右にある階段のどちらを降りれば梅田行き乗り場に近いのかが、直感的に分かりにくくなった。 確かに、到着口を出てバス乗り場へ向かうまでに案内表示の看板などがないわけではないが、商業施設ばかりが目に付き、相対的に目立たなくなってしまった。ターミナル改修の経緯を知る関係者は、「当初の改修案では、バスなど二次交通について、到着口周辺でわかりやすく案内する計画だった。民営化後、商業施設があふれかえる計画になってしまった」と打ち明ける。 そして、大阪の梅田駅などから空港へ向かうリムジンバスの乗り場についても、利便性に関わる変化があった。関空と伊丹のどちらへ向かうかに関わらず、バスの案内表示などが同じデザインや色調で統一されたのだ。 民営化前、バスの案内表示は行き先によって「水色の関空、黄緑色の伊丹」とはっきり色分けされていた。このため「伊丹に行くには黄緑色」と一目で分かるようになっていた。バス乗り場ではわかりやすく、どちらの空港に行くか迷う外国人旅行者にも、色で説明することもできたのだが。 確かに、各空港を示す文字のデザインや色などを統一することでブランドを高めたい、というKAPの方針も理解できる。しかし、空港という通過点を利用する人にとっては、直感的に分かりやすいことの方がより重要なはずだ。バスの誤乗を色分けによって防ぐといった気配りは、地味ながらも効果が期待できるものだ。 たかがデザイン、されどデザイン。利用者に寄り添うような工夫を積み重ねていかなければ、空港のブランドを地層のように築き上げることは難しいのではないだろうか』、KAPには仏空港運営会社ヴァンシ・エアポートも入っており、運営ノウハウは豊富な筈なのに、このような体たらくとは解せない。
・『ノウハウある割に外部コンサル起用  こうした変化は、働く社員のモチベーションにも影を落としている。今年で3年目に入ったKAPは、夏にボーナスが初めて支給された。これを機に、KAPを離れるという声が社員から漏れ伝わってきており、航空会社や関係企業は「ノウハウを持った人材が流出してしまうのではないか」(航空会社幹部)と危惧する。 KAPの関係者によると、民営化後は毎月2~3人程度は退職しているといい、ボーナス支給を契機にこの気運が高まっているという。これに対し、KAPは外部のコンサルタントを起用し、社員満足度の向上に取り組んでいるというが、前述の航空会社幹部は「空港運営のノウハウがあるという割に、外部コンサルばかり使っているのでは、ノウハウを持っていないのと同じではないか」と、首をかしげる。この幹部によると、外部コンサルを起用しているのは、空港運営という本業にかかわることも含まれるという。  前述の自治体幹部は「空港会社だけでなく、電力会社などインフラ系企業で働く若手を見ていると、自治体に近い公共性に対する覚悟を感じる。それが良い方向に働くことばかりではないかもしれないが、あまりにも民間企業然とした考え方は、受け入れ難いのではないか」と、退職者たちの気持ちをおもんばかる。 かつて取材した国交省の幹部は「役人の発想の限界を打破して欲しい」と、空港民営化に期待を寄せていた。筆者も同様で、民営化そのものを否定する気はなく、仙台空港のように地の利のなさに苦しみながらも、地元と活性化の道筋を模索する動きも見てきた。 ただ、空港民営化に対する問題意識は世界の航空関連業界に広がりつつある。 「われわれの調査では、民営化された各国の空港で、効率性や投資水準が向上していないことがわかった。民営化に、すべての答えがあると仮定するのは間違いだ」。6月上旬、オーストラリア最大の都市、シドニー。世界的な航空業界団体「IATA(国際航空運送協会)」の年次総会で、アレクサンドル・ド・ジュニアック事務局長兼CEO(最高経営責任者)はこう発言した。各国政府が不十分な検討で空港民営化を進めた場合、長期的に空港の社会的な便益が損なわれる可能性があると、警鐘を鳴らしたのだ。 翻って日本。空港を擁する自治体の首長から聞こえてくるのは「我も我も」という民営化の話ばかりだ。ただ、民営化で先行した関空や伊丹の例からは、空港運営において営利追及と公共性確保のバランスを取ることの難しさが浮かび上がってくる。航空会社や自治体など周囲から利益第一主義に見えてしまうKAPの経営姿勢について、十分な検証と関係者による本質的な議論が必要な段階にきているのではないだろうか。 そして、空港の運営権者を選定する際、公共財を扱う経営者の資質を厳しく見る必要がある』、日本は周回遅れで空港民営化に走っているようだ。問題は、経営者の資質ではなく、契約条項にどれだけ公共性を盛り込めるかなのではなかろうか。

次に、ジャーナリストの安積 明子氏が12月7日付け東洋経済オンラインに寄稿した「水道民営化促進で内閣府に出向した人の正体 7日成立予定の改正水道法に不透明な背景」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/253769
・『水道事業を民間委託できる水道法改正案が、12月5日午前の参議院本会議で通った後、同日午後の衆議院厚生労働委員会で可決された。同法案は今年の通常国会で衆議院ですでに可決されて継続審議となっていたため、反対弁論だけ行われた。これに野党は猛然と反発。 「外国人労働者受け入れを拡大する出入国管理法改正といい、漁業権を骨抜きにする漁業法改正といい、なぜ会期が短い臨時国会にこんな重要法案を次々に出し、短い審議時間で成立させようとするのか」と怒りをぶちまけた。 「通常国会での衆議院の採決から(同日午前の)参議院の採決まで、大きな状況の変化があった」 12月5日の衆議院厚生労働委員会で水道法改正案について反対討論に立った立憲民主党の初鹿明博衆議院議員は、新潟県議会で10月12日に「水道民営化を推し進める水道法改正案に反対する意見書」が採択された事例を挙げた。 同意見書は、老朽した水道施設の更新や耐震化推進のために民営化を進めることによって、「水道法の目的である公共の福祉を脅かす事態となりかねない」と警鐘を鳴らしている。その他、同意見書は水道を民営化したフィリピン・マニラ市での料金高騰やボリビア・コチャバンバ市での暴動の発生、フランス・パリ市では料金高騰に不透明な経営状態が発覚した事例まで挙げていた』、安倍政権の拙速な国会運営は民主主義の根幹を揺るがすものだ。パリでは民営化で水道料金は1.7倍になり、最終的に再公営化されたようだ。しかし、こうした海外の失敗例を野党は追求したのだろうか。
・『水道民営化のために任用された大臣補佐官  水道法改正の背景が怪しい――実は今年10月末に、そのような話を耳にした。11月9日に菅義偉官房長官の大臣補佐官を辞任した福田隆之氏をめぐる怪文書がきっかけだ。 福田氏は野村総合研究所で国が初めて実施した国家公務員宿舎建て替えのPFI(Private Finance Initiative、民間資金、運営で公共サービスの提供を行う)案件を担当した。2012年からは新日本有限責任監査法人のインフラPPP(Public Private Partnership、公民の連携で行う)支援室長としてコンセッション関連アドバイザリー業務を統括した。 そのような福田氏が内閣府大臣補佐官に就任したのは2016年1月で、PPP/PFIの活用を盛り込んだ「『日本再興戦略』改定2015」が閣議決定された5カ月後のことだった。 ちょうどその頃、産業競争力会議も「成長戦略進化のための今後の検討方針」を決定。「観光振興や人口減少等の地域的、社会的課題に対する公共施設等運営権方式を含めたPPP/PFI の活用方策を検討するとともに、 積極的な広報活動や地域の産官学金による連携強化等により、広く地方公共団体や民間等の関係者の理解促進や機運醸成を図る」とPPP/PFI導入の本格的取り組みを宣言した。 これを主導したひとりがパソナグループ代表取締役会長を務める竹中平蔵氏で、同氏が主導してPPP/ PFIの活用促進に向けた環境整備について検討した「産業競争力会議フォローアップ分科会」などには福田氏が参加していた。福田氏の補佐官登用も竹中氏の意向があったと言われている。 内閣府は2018年2月9日、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(略称PFI法改正案)を国会に提出した。同法改正案は6月13日に成立し、8月1日から施行。水道法改正を待つばかりだったが、同改正法案は日切れ法案として継続審議に付された。 しかし臨時国会で水道法改正法案が成立することはほぼ確実で、そうなると水道事業の民営化に向けて本格的に始動するはずだったが、ここで思わぬ逆風が吹いた。外国でのひどい失敗例や、高いコストを負担して再公営化を進めなければならかったという事実が示されたのだ』、「外国でのひどい失敗例」が臨時国会で取上げられたようだが、もっと前の通常国会で取上げるべきだった。福田氏もPFI・PPPの利害関係者なのに、補佐官に登用するとは竹中もいい加減だ。
・『水メジャーの社員が内閣府の政策調査員に  そればかりではなく、不透明な問題も持ち上がった。そのひとつが上記の福田氏の突然の辞任であり、もうひとつがヴェオリア社の女性社員が内閣府の「民間資金等活用事業推進室」に政策調査員として2017年4月1日から2019年3月31日までの予定で出向していることだ。ヴェオリア社はフランスの多国籍水処理企業で、世界で上下水道の民営化を扱って成長してきた。この出向者の任期はまさに水道民営化のための審議の期間に重なっている。 これを明らかにしたのは11月29日の参議院厚生労働委員会で社民党の福島瑞穂参議院議員。 「もっともこの法案で利益を得る可能性のあるヴェオリア社、水メジャーですよね。まさにその担当者がPPP推進室にいる。これって受験生が採点者になって、自分の答案をこっそり採点しているようなものではないですか」 また福島氏は12月4日の参議院厚生労働委員会で、PFI法改正案が審議された2018年6月12日参議院内閣委員会で当該女性職員が大臣の補佐をしていたことを暴露したが、内閣府は「単に資料を持参したりメモを取っていた」と女性職員と同法案との深い関与を否定した。 しかしこの女性職員は「GJジャーナル(下水道女子ジャーナル)2016年7号」で、「官民連携により自治体の下水道事業運営をサポートするべく、処理場、管路等の施設運転管理を中心とした提案、業務支援を担当しています」と自己紹介するなど、PFIの専門家を自任している。政府が専門家である職員を雑務だけのためにわざわざ登用するというのは、どう考えてもありえない』、福島瑞穂参議院議員は頑張っているようだが、惜しむらくは事前にGJジャーナルも読んで、女性職員の身元も調べておけば、内閣府もいい加減な答弁は出来なかった筈だ。
・『ヨーロッパ視察も、報告書は提出されず辞任  また11月9日に内閣府大臣補佐官を辞任した福田氏は、パリなどの水道民営化について視察するために2016年、2017年、2018年と3度にわたって渡欧している。3度目は2018年10月で、辞任の直前だ。 福田氏の辞任理由は「業務に一定の区切りがついたため」とされているが、最後の仕事となった10月のヨーロッパ視察の報告書はいまだ公表されていず、中途半端な印象は否めない。 「一区切りというのなら、(PFI法改正法が成立した)6月ではなかったか」 福島氏が指摘する通り、この時期の福田氏の補佐官辞任はまったく矛盾に満ちたものとしか言いようもないが、その真相が究明されることは永遠にないだろう。 12月6日の衆議院本会議で改正水道法が成立。翌7日には外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法や漁民法の改正法も成立するはずだ。そして臨時国会は延長されず、12月10日に当初の予定どおりに閉じられる』、福田氏の突然の辞任の真相は何だったのだろう。利益相反の非難を逃れるためだったのだろうか。ヨーロッパ視察の報告書は提出されなかったとはいい加減だが、「都合のいい」話が出てこなかったためなのだろうか。

第三に、室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏が12月25日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「水道法改正が「民営化」でないばかりかタチが悪い理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/189383
・『12月16日、水道法の一部を改正する法律案が衆議院本会議で再可決され成立した。「水道民営化」と誤解する人も多いが、これはいわゆる「民営化」ではない。しかし、実態は「民営化」よりもタチが悪いものだ。その問題点などを解説する』、興味深そうだ。
・『水道法改正は「水道民営化」ではない  多くの反対や疑問の声が上がる中、12月6日、先の通常国会から継続審議となっていた水道法の一部を改正する法律案が衆議院本会議で再可決され成立した。 今回の水道法改正の目玉は、水道施設運営権を設定して民間企業による水道施設運営等事業を可能とすること。この点について世間では「水道民営化」とされることが多い、というよりほとんどのようだ。 しかし、これは「地方公共団体が保有する水道インフラを使って、民間企業がある程度自由度を持って事業を行う仕組み」であって、インフラごと民間企業に売り渡すいわゆる「民営化」ではない。 どうも「民営化」という言葉が独り歩きをして、さまざまな誤解が生まれ、そうした誤解に基づいた奇妙奇天烈(きみょうきてれつ)で頓珍漢(とんちんかん)な議論が、さも正しいかのようにまかり通っているようである。 このことについては制度論の観点も含め、拙稿『水道法改正案は「民営化案」ではないが別の大きな問題がある』で解説し、併せて水道法改正の問題点についても分析しているのでそちらを参照いただきたい。 そこで本稿では、水道施設運営権の設定による水道施設運営等事業(以下「水道コンセッション」という)の仕組みとその性格、問題点、なぜ懸念する必要があるのかについて概説するとともに、よくありがちな水道コンセッションを巡る誤解等について、何がどう間違っているのかについて解説してみたい』、マスコミ報道もいい加減なので、ここで整理する意味は大きい。
・『水道コンセッション事業の仕組みと問題点  まず、水道コンセッションの事業の仕組みについて。 上水道事業を行っている地方公共団体が、運営権実施契約(運営権契約、コンセッション契約)により契約の相手方である民間事業者に数十年の期間で運営権を設定、民間事業者側は運営権対価を支払い、水道施設運営等事業を行う、というのが基本的な構造である。 事業の主な収入は当然のことながら水道料金であり、これを自己収入として、自らのリスクを取りながら事業、つまり水の供給・水道施設の維持管理・保守、場合によっては施設更新等を行うことになる。 別の言い方をすれば、水道料金で人件費等のコストを賄い、収益を出す事業。したがって、それに見合った料金設定とするとともに、収益を減らしたり、ましてや赤字が出るといったことがないように、人件費も含めてコストを適正化することが重要となる。 そして、まさにここが水道コンセッションの問題点なのだ。 すなわち、通常の維持管理や保守コストが当初の予想以上にかかってしまった場合、あるいは自然災害が起きて水道管が破損したり、浄水場の機能に不具合が生じたりして想定外の多額の費用が必要となった場合。公的資金を入れないという前提に立てば、削減できるコストを削減するか、一時的なものも含め料金を引き上げることをしなければ、こうした不測の事態によって生じた赤字を解消させたり、収益性を安定させたりすることは極めて困難であろう。 もちろん、不測の事態に備えて、過去の災害発生データも参照しつつ、必要と思われる額の積立金等を用意しておけば、対処できる場合もありうるだろう。しかし、最近の気象状況変化や自然災害の発生状況を踏まえれば、そうした想定が容易に覆される可能性は大いにある。 つまり、杓子定規に考えれば事業者にとってもリスクが高く、軽々に参入できる事業ではないはずであるということである。 しかし、それはあくまでも杓子定規に考えた場合の話である』、いざとなれば公的資金で救済されると安易に考えているとすれば、大問題だ。
・『水道「民営化」よりもタチが悪い  一応、公的資金は入れない建前にはなっているものの、災害による被害が甚大である場合等は、事業者が多大な公的な負担を求めてくることは確実だろうし、こっそりとそれが可能な仕組みにしておく可能性がある。 それどころか、地方公共団体側が住民の不安を払拭すると称して、自ら契約の段階でそのように申し出る可能性さえある。それではまさに「カモネギ」だが、そうなると、民間資金の活用だの何だのと言っていたのに、一体何のための水道コンセッションなのか分からなくなる。 民間企業が「オイシイ」ところだけもっていき、尻拭いは住民の負担や税金。これが水道コンセッション問題の本質というところであろう。 要するに、民営化ではないが、「困ったときの公的資金」とばかりにリスクを極力地方公共団体に寄せることができる分、民営化よりタチが悪いということだろう(むろん、インフラごと民間に売り渡す民営化など論外であるが…)。 加えて、事業者といっても特定企業1社でということはなく、水道事業に強みを持つ企業を中心に金融関係の企業も含めて(コンセッションフィーの支払いもあるため)複数社の出資により特定目的会社(SPC)を設立し、これを表向きの事業主体かつお金の受け皿として、地方公共団体と運営権実施契約を締結する。 実際に維持管理や保守等、料金の徴収等を行うのはSPCから業務の委託を受けたサブコントラクター、いわゆるサブコンであり、そうした企業はSPC参加(出資)企業やその関連会社である。 SPCの資金調達方法は出資(株式)および融資(借入金)である』、「「困ったときの公的資金」とばかりにリスクを極力地方公共団体に寄せることができる」というのはモラルハザードの典型だ。「民間企業が「オイシイ」ところだけもっていき、尻拭いは住民の負担や税金。これが水道コンセッション問題の本質」とは言い得て妙だ。
・『国民の大事なインフラが金融投機の対象に  ここが次の問題点で、出資者に対する配当の支払い、および融資者に対する利払いが発生するので、SPCはそれを加味して料金を設定し、コストの適正化を図る必要がある。出資と融資の割合は対象事業や事業の仕組みによるので一律には言えない。 ただ、基本的に借入金は極力少なくしようとするし、事業の当初に大規模な建設工事等がなければ、巨額の融資を受ける必要性はない。そのためここでは出資を中心に考えると、出資者、つまりSPC参加企業、端的に言えば実際の水道コンセッション事業者たちの収入は配当である。サブコンとしての収入もあるが、こちらはSPCとしての立場で言えば費用だ。 そうした費用も支払いつつ、株主への配当を確保することになるのだが、昨今の株主資本主義の進展、それを進めてコスト削減と配当増を強く求めてきているのはグローバル企業だ。水道コンセッションで日本市場を狙っていると取り沙汰されているのもまた、水メジャーと呼ばれるグローバル企業であることを考えると、配当増とそのためのコスト削減圧力は同様に強くなると容易に想像できる。 ここがさらなる問題点で、こうした事業の構造のため、配当の確保や増額のために、サービスの質の低下や水道料金の値上げが起こる可能性が高いということである。 これは言い方を変えれば、国民の生命に関わる大事なインフラを金融投機の対象にしようという話であり、言ってみれば「インフラの金融化」である。 こんな仕組みを本当に理解して、本気で導入しようとするんですか?と政府のみならず地方公共団体に問うてみたいところだ』、「インフラの金融化」とは、国民にサービスを受けないという選択肢は全くないだけに、料金も言いなりになるしかない。トンデモない話だ。財政難を抱えた地方公共団体にとっては、運営権売却による一時的な収入が入るので、熱を上げるのは当然だ。
・『現状の水道メンテナンス等の民間「委託」とはまったく違う問題  さて、こうした仕組みが分かれば水道コンセッションは何が問題で反対意見が多いのかは理解できると思われるが、残念ながら、それを欠いたまま、誤解に基づくもっともらしい見解がメディア等を通じて飛び交っている。 そうしたものの一つに、「水道の管理や保守は今でも民間事業者に委託しているのだから、既に民営化は行われているので問題などないはずだ」というものがある。 これは「運営権を設定して水道インフラを使って事業をやるということ」と、「業務を委託するということ」の違いが理解できていないことによるものだ。 前者についてはこれまで説明してきたとおりであり、後者、つまり業務の委託とは、特定の業務について、委託料を支払ってその業務を行ってもらうものであり、水道管等も含む水道施設の保守や水道料金の徴収等、さまざまなものがある。 事業者の収入は委託料であり、業務も決められたものを行うので自由度はほとんどない。 こうした業務の委託は国・地方を問わず幅広く行われているが、これは民営化でもなければコンセッションでもない。従って、「業務の委託が行われているからといって、水道コンセッションを導入しても問題がない」という話にはならない』、その通りだが、報じるマスコミの勉強不足も困ったものだ。
・『海外の数多くの失敗事例も理解できていないという「恐ろしさ」  また、水メジャーのヴェオリアの日本法人がいくつかの地方公共団体の水道料金の徴収やメーターの検針等を行っていることをもって、「既に外資は入ってきているから水道コンセッションを導入しても問題はない」といった意見もあるようだ。 これも単なる個別業務の委託であって、水道コンセッションではないし、業務の委託は入札によって委託先の選定が行われるが、入札は基本的には外資にも門戸は開かれており、外資が受託事業者になったとしても不思議な話ではない。分かりやすい例で言えば、国の委託調査など、外資系のコンサル会社が受託している例は多数あることを想起されたい。 この誤解の派生系、「ヴェオリアの日本法人がこうした業務の委託を受けているが水道料金が上がってはいないから大丈夫だ」といったものがある。 この誤解は正直なところ問題外の発想なのだが、一応解説をしておくと、こうした事例ではヴェオリアの日本法人は決められた委託料で個別の業務の委託を受けているだけであり、水道事業を行っているわけではない。水道事業はあくまでも地方公共団体が行っているので、単なる個別委託業者のヴェオリアは水道料金の上下に関与などできない。 これ以外にも、水道コンセッションを巡る摩訶不思議な誤解はいろいろ出回っているようだが、裏を返せば水道コンセッションについて正確に理解している人は極めて少ないということであり、海外の数多くの失敗事例も、何が失敗なのかも理解できていないということであろう。 そんな状況の中で実際に導入されようとしているわけである。なんと恐ろしいことか』、料金設定は水道事業者が勝手に出来るのではなく、地方自治体か、第三者機関による審査が必要なのではないだろうか。「困ったときの公的資金」の余地を塞ぐような契約条項も必須だろう。
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