政府財政問題(その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か) [経済政策]
政府財政問題については、昨年11月25日に取上げた。今日は、(その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か)である。
先ずは、11月28日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績 氏による「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/471734
・『今回は「財政破綻は日本では起きない」という主張は、完全に誤りであることを説明しよう。 10月16日配信のコラム「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」では、「日銀が国債を買えば大丈夫だ」「国全体のバランスシートは問題ない」」「MMT(現代貨幣理論)は有効だ」「インフレが起きてないから大丈夫」などと完全に誤った主張をする、エコノミスト、有識者たち、いや有害な言説を撒き散らす人々を論破することが、唯一の日本を救う道だと書いた。今回は、その仕事に取りかかりたい』、「小幡」氏は数少ない論争型の学者で、興味深そうだ。
・『「国全体では貯蓄があるから大丈夫」は大間違い この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら まず「日本全体では対外債権があり、国全体では貯蓄があるから、日本が破綻することは絶対にない」というのは、単純な誤りだ。なぜなら、国全体でお金があっても、政府が倒産するからである。 これは、企業の例を考えてみれば、すぐにわかる。「日本全体で金余りだ」「銀行は貸す先がない」、と言われていても、資金繰り倒産する企業は必ずある。それは、金が余っていても、その企業には貸さないからだ。なぜ、貸さないかといえば、返ってくる見込みがないからである。 借金を積み上げ、一度も借金を減らしたことのない政府、そして、毎年の赤字額は年々増えていく。毎年新しく借り入れる額が増えていく政府。貸しても返ってこない、と考えるのが普通で、誰も貸さなくなるだろう。つまり、政府が借金をしたいと、新しく国債を発行しても、それを買う人がいなくなるのである。銀行も投資家も金はあるが、買わないのである。 それは、地方政府と違って、日本政府には日本銀行がついており、日本銀行が買うから問題ない、ということらしい。これこそ誤りだ。 「日銀が国債を買い続けるから問題ない」という議論は、100%間違っているのである。なぜなら、日銀が国債を買い続けることは、現実にはできないからである。 なぜ日銀が国債を買い続けることは難しいのか? また「自国通貨建ての国は、理論的に絶対財政破綻しない」という議論は、元日銀の著名エコノミストですら書いているが、それは、机上の理屈であり、現実には実現不可能なシナリオである。それは、日本銀行が国債を引き受け続けるとインフレになるからではない。その場合は、インフレまで時間稼ぎができるが、インフレになる前に、即時に財政破綻してしまうからである。 日本銀行は、すでに発行されている国債を、市場で買うことはできる。だから、理論的には、日本国内に存在するすべての国債を買い尽くすことはできる。しかし、財政破綻回避のために買う必要があるのは、既存の国債ではない。新発債、つまり、日本政府が借金をするために新たに発行する国債である。そして、これを日本銀行が直接買うこと、直接引き受けは、法律で禁止されている。だからできない。 これを回避する方法は2つである。 1つは、民間金融機関に買わせて、それを日本銀行が市場で買うことである。これは、現在すでに行われている。民間主体から見れば、いわゆる「日銀トレード」で、日銀が確実に買ってくれるから、政府から新規に発行された国債を引き受け、それに利ざやを乗せて、日銀に売りつけるのである。 この結果、日本国債のほぼ半分は日銀が保有することになってしまった。 問題は、これがいつまで継続できるか、ということである。日銀は、継続性、持続性が危ういとみて、イールドカーブコントロールという前代未聞の、中央銀行としてはもっともやりたくない金融政策手段に踏み切り、国債の買い入れ量を減少させることに成功した。 逆に言えば、これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできないのである。それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をすることになる。理論的に日本では財政破綻は起きないと主張している人々は、この手段があるから、自国通貨建ての国債を発行している限り、財政破綻しないと言っているのである』、「日銀」が「国債」を「これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできない」、「それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をする」、なるほど。
・『直接引き受けの話が出れば「日本は秒殺」される 残念ながら、この手段は現実には不可能である。 なぜなら「中央銀行に国債を直接引き受けさせる」という法律を成立させれば、いや国会に提出されたら、いや、それを政府が自ら検討している、と報じられた時点で、政府財政よりも先に、日本が破綻するからである。 日銀、国債直接引き受けへ、という報道が出た瞬間、世界中のトレーダーが日本売りを仕掛け、世界中の投資家もそれに追随して投げ売りをする。 まず、円が大暴落し、その結果、円建ての国債も投げ売りされ、円建ての日本株も投げ売られる。混乱が収まった後には、株だけは少し買い戻されるだろうが、当初は大暴落する。 つまり、為替主導の、円安、債券安、株安のトリプル安であり、生易しいトリプル安ではなく、1998年の金融危機ですら比較にならないぐらいの大暴落である。1997年から1998年の1年間で、1ドル=112円から147円まで暴落したが、「日銀直接引き受け報道」が出て、政府が放置すれば、その時のドル円が110円程度であれば、1週間以内に150円を割る大暴落となり、状況によっては、200円を突破する可能性もある。 ただし、これも現実には起きない。なぜなら、日銀国債直接引き受け報道が出れば、直ちに為替取引も債券取引も株式取引もまったく成り立たなくなり、金融市場は全面取引停止に追い込まれるからだ。 メディアも政治家も、やっと大騒ぎを始め、日銀の直接引き受け報道を政府は否定することになるからだ。しかし、否定しても、いったん火のついた疑念は燃え盛り、取引は再開できないか、再開すれば、さらなる暴落となる。よって、これを収めるには、日銀直接引き受けなど絶対にありえない、という政府の強力で具体的な行動が必要となる。実質的で実効的でかつ大規模な財政再建策とその強い意志を示さざるを得ないだろう。こうなって初めて、暴落は止まる。 つまり、禁じ手といわれている、日銀の直接引き受けは、タブーを犯せば理論的には可能だ。だが現実にはタブーを犯した政府と中央銀行は国際金融市場に打ちのめされるため、結局、禁じ手はやはり禁じ手のままとなる。「自国通貨建ての政府債務なら、いくらでも借金できる」というのは幻想で、為替取引が国際的に行われている限り、それは、自国通貨建てであろうとも、金融市場から攻撃を受ける。 そして、為替の暴落を許容しても、結局国債が暴落してしまい、借金はできなくなり、すべてを日銀に依存することになる、同時に、株式も短期的には大暴落となるから、政治的に持ちようがなく、政権は株式市場により転覆されるだろう。その結果、その政権あるいは次の政権は、財政再建をせざるを得ず、日銀引き受けは結局実現することはない。 日銀直接引き受けがあり得ない、となれば「財政破綻はしない」という論者の議論はほぼすべて破綻する。だから、これ以上議論することもないが、この際、すべての点において彼らを打ちのめしておこう。 まず、政府と日銀を一体で考える、連結政府という議論は、前述したように無意味だ。連結政府という考えで借金しようとすれば、即金融市場暴落だから、一体で考えることは、打ち出の小槌どころか、反対に地獄への道である。 その次に、借金という負債と対になる資産も考えろというバランスシート議論も無意味だ。日本は負債も多いが資産も多いので大丈夫というのは、現実的には、まったく間違いである。 政府が不足しているのは現金である。キャッシュがなければ、国民にも配れないし、公共事業もできないし、国民の医療費の肩代わりもできない。資産があっても現金がなければ、政府の資金調達には使えないので、現金資産あるいはすぐに現金化できる資産しか意味がない。 したがって、特別会計の剰余金は使えるが、それ以外はほとんど使えないのである。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の厚生年金の積立金の運用資産の株式、債券などを売却すれば、確かに100兆円以上現金は入ってくる。 だが、たとえその資産が200兆円で売れたとしても、1000兆円を超える負債を相殺するには遠く及ばないし、もちろん、将来の年金支払い原資が不足するから、将来200兆円不足額が増えるだけのことである さらに、道路や森林などは問題外である。買い手がいない。道路に価値があっても、買う人がいなければ売却はできない。価値があっても価格がつかないというのは、金融市場でなくとも普通のことである。高速道路だけでなくすべての道路に課金すれば、というような議論は意味がない。なぜなら、消費税も政治的に上げられない政府が、すべての道路に課金するなどということを実行するはずはないからだ。万が一、それをするとすれば、財政破綻後であろう。 こう追い詰められれば「財政破綻あり得ない派」の論者たちは、今度は「そもそも借金を返す必要などない。個人や企業と違って、国は返さなくていいんだ」と言うだろう。それならば、バランスシートで考えること自体に意味がない。バランスシートで考えろという議論はそもそも無意味なのである。 前述した金融市場による財政破綻のプロセスで見たように、財政破綻が起こるかどうかは、政府がそのとき必要な現金を調達できるかどうかにかかっているのであって、バランスシートも借金残高も直接は関係ないのである。 しかし、現金化できる資産をすべて売りさばいても、せいぜい1年ちょっとで、2年も持たないだろう。なぜなら、新しい国債が発行できなければ、借り換えもできない。現在、日本政府は、毎年借り換えも含めて国債を170兆円以上新規発行しており、今後は200兆円を超えてくると思われるので、現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである』、「現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである」、意外に額は少ないようだ。
・『借金残高が大きいとどうなる? では、借金残高の大きさはまったく関係ないのか?500兆円でも1200兆円でも関係ないのか? 借金の大きさには、2つの大きな影響がある。まず第1に、借金残高が大きいと「こいつ返せるのか、返す気あるのか」という疑念を持たれ、新たに貸してもらえなくなる。その意味では、GDP比で250%でも財政破綻しないのだから、300%でも400%でも大丈夫、60%程度で破綻したギリシャなどとは日本は根本的に違う、という議論は間違いだ。 つまり、日本がこれまで破綻しなかったのは、政府に金を貸してくれる人がいたからで、いまやそれが日銀しかいなくなりつつある、というのが問題であり、250%で破綻しないことは、今後破綻しないことを意味しない。何より、日銀に半分を買わせないといけないという現実は、まもなく破綻することを示している。 第2に、破綻した後の再生の困難さに大きく影響する。日本にとってはこれが最大の問題だ。 ギリシャと違って「自国通貨建てで、国内で借金をしているから大丈夫だ」というのは、厳しい国際金融市場ではない、馴れ合いのそして政府の影響力のある金融機関それと中央銀行が保有しているから、破綻がすぐには起こりにくい、という意味では正しい。 だが、それは逆に言えば、市場が鈍感であり、鈍感な投資家が保有している(鈍感に振舞うことを強制されているとも言えるが)ことを示しているのであり、破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こるのである。 そして、破綻後、政府の財政再建が非常に困難になる。国内の資金は使いつくしている。個人の金融資産は銀行に預けられ、地域金融機関やあるいは半公的な金融機関、ゆうちょ銀行などに預けられている多くの部分は国債になっているから、返ってこない。国民の金融資産の実質価値は激減してしまうのであり、国債の返済は先送り(リスケ)されていつかは返済されるとしても、長期にわたり、インフレ分は目減りするし、何より、すでに老後を迎えている多くの国民は貯金が今必要なのに使えなくなってしまう。 開き直って、財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き)』、「破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こる」、「国民の金融資産の実質価値は激減してしまう」、「財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き」、恐ろしいことだ。
・『国内保有が多いほど、破綻したら大変な事態に この場合、海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない。つまり、夜逃げすらできないのである。自分の処理はすべて自分でしなければならないのである。これが、国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソである。 むしろ、国内保有だからこそ、破綻したら本当に終わりであり、再起がほぼ不能になってしまうのである。そして、その額が莫大であれば、1200兆円であれば、1200兆円の負担を国内で負うことになり、2000兆円になってから破綻すれば、そのときの日本国民が2000兆円負担することになるのである。 だから、政府の借金の大きさは致命的に重要なのであり、ほぼ国内から借金をしていることは、日本政府の財政破綻リスクにおいて、もっとも致命的なリスクなのである。 MMT理論の誤り、インフレにならないことの誤り、これについては長くなったので、次回にしよう(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない」、これが「国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソ」、なるほど。
次に、この続き、12月14日付け東洋経済オンライン「日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/473925
・『「MMT(現代貨幣理論)」が、いまだに日本では言及されているようだ。 改めてひとことで言えば、これは「独自通貨を持つ国であれば、債務返済のための通貨発行に制約を受けないため、いくら借金をしても財政破綻は起きない」という理論である。 だが、結論から言えば、これは理論的に誤りであるうえに、現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる。以下、理由を説明しよう』、「現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる」、恐ろしいことだ。
・『MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは? 理論的には、以下の4つの大きな誤りがある。 第1に、価格メカニズムをまったく無視している。 第2に、リスクという概念が存在していない。 第3に、その結果、金融市場をまったく無視している。 第4に、その結果、マネー自体を無視している。 つまり、現代貨幣理論とは「現代ではマネーを無視していいのだ」という理論である。 だから、貨幣理論なのに財政がすべてを決めるのである。その結果出てくる政策提言は、インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策であることがわかる。しかし、MMT論者はそれが理解できないようなので、現実の大きな問題点も指摘しよう。 現実の政策としては、3つの害悪がある。 第1に、財政支出の中身がどうであっても、気にしない。 第2に、金融市場が大混乱しても、気にしない。 第3に、インフレが起きにくい経済においては、その破壊的被害を極限まで大きくする。 理論と現実の政策としての問題点の説明は、現実的に日本経済が破壊されることを何よりも防止するために、政策の害悪を先に説明しよう。 日本においてはとりわけ、2013年、2014年と需給ギャップが解消されてもインフレが起きず、インフレ率は景気の指標としても有効でないことが示されているから、日本こそ、MMTをいちばんやってはいけない国なのである。これは第3の点のところで詳しく議論しよう』、「インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策」、その通りだ。
・『政府が大規模な財政支出を続ければどうなるのか? 第2の害悪として挙げた「金融市場がどうなってもよい」という考え方は、財政支出の適切な規模をMMTでは判断できないこと以上に、経済を壊滅的に破壊する可能性がある。 例えば「財政出動をとことん行って金利が大幅に上昇しても、インフレがターゲットを超えない限り、財政支出を続ける」ということが起こりうる。これは、大規模な財政支出により、民間投資が大幅に縮小する、という典型的なクラウディングアウト(英語の元は「押し出す」の意味)を起こすということである。その結果、民間経済の活力、経済成長力は大幅に低下し、経済は長期的な大不況に陥ることになる。 これに対する彼らの反応は「理論的にはそのとおりだが、現在、世界経済は低金利で困っている。とりわけ日本はその最たるものだ。したがって、金利が上がらない現代でそのような心配をするのは杞憂だ」というものである。 これも、明らかに間違いで、金利が低いのは世界各国の中央銀行が無理やり低金利に押さえ込む、大規模な金融緩和を行っているからである。もし、低金利を維持したまま、大規模財政支出を継続すれば、民間の投資は、干上がってしまう。 投資資金は限られており、金利という価格による需給調節が効かなくても、政府セクターに取られてしまえば、リスク資金は民間へ回ってこない。さらに、人手が不足する。労働力は限られており、とりわけ優秀な人材はすぐに枯渇する。すると、民間投資として適切で利益の上がる投資を行える人材が不足する。彼らは、大規模財政支出に乗じて、その分野で稼ぐために活動しているからである。 中央銀行が資金を供給したところで、それを受け取る民間経済主体はいない。将来の経済見通し、リスクが不透明のため、投資も控えるし、儲かるかわからない投資のための資金も利子率ゼロでも借りない。 ただで資金をくれるのであれば、それはもらうだろうが、それは中央銀行が行うのではなく、政府財政で行うことになるから、これは財政政策であり、民間投資ではない。この財政支出がうまくいくかどうかが、保証されていない以上、この財政出動は意味がない。これは第1の、ワイズスペンディングの議論にも関係する。 この結果、自らリスクをとって金融機関も貸し出しを行うことはせず、企業も個人も借り入れで投資は行わなくなる。 中央銀行が異常な量的緩和を行っていなければ、つまり、国債の実質直接引き受けをせずに、通常の範囲での金融緩和を行っていれば、資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう。 そして、金融(株式や債券)市場は、暴落することになるだろう。金利が上がるし、中央銀行が金利を押さえ込んだとしても、そうなると経済も将来の市場の不透明性が増大し、リスクが高まる。ましてや、インフレになるリスク、そしてそのときに大増税、財政支出の急減による大不況のリスクがあるから、誰も投資しなくなるだろう。 つまり、リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう』、「資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう」、典型的な「クラウディングアウト」だ。「リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう」、弊害は甚大だ。
・『日本でMMTを絶対にやってはいけないワケ MMT理論を現実の政策として実行することにより、金融市場が混乱にとどまらず、崩壊してしまう危機に追い込まれる可能性は、世界で日本が最も大きい。日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら、これが政策としての第3の問題点であるが、インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである。 インフレがなぜ起きにくいのかは、また改めて詳しく議論したいが、大まかにいって理由は3つある。第1に、企業の価格設定行動の結果の合計がマクロ的な物価水準であるから、企業が値上げをできるだけしないようにする日本ではインフレが起きにくい。 企業が値上げをできるだけしない理由は、消費者が値上げに過度に敏感であり、値上げで失う売り上げがあまりに大きいため、日本では商品提供者はできるだけ値上げしないのである。だから、卸売物価は変動しても消費者物価にはあまり反映されないのである。) 第2に、これは世界的な現象でもあるが、過熱した実体経済において生み出された利益や所得は、実物財に回らず、現代ではその多くが資産市場に投資される。だから、モノの値段は上がらず、株式や不動産だけが上がるのである。そして、物価で上がっているのは不動産、つまり家賃が最も大きなものの1つなのである。 第3に、モノの供給が世界中からなされるために、一国内の経済が過熱しても、その国の物価が上がるとは限らない、という普通のこともある。 これら3つの影響で、インフレ率は、現代においては、景気、需給ギャップの指標の役割を果たさなくなっているのである。 だから、金融緩和が過大になって資産市場がバブルになることが21世紀になって頻繁になっているのである。しかし、中央銀行は物価だけでなく資産市場にも目配りをしているから(少なくとも多少は)、MMT論者よりはましなのである。 経済や社会における、過大な財政支出の悪影響、コストはインフレだけではない。労働力や設備など経済資源の無駄遣い、民間経済と公共部門とのバランスの喪失、成長力の低下などがあることは前述したとおりだ』、「日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら・・・インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである」、なるほど。
・『MMTは資本市場の機能や国の長期成長力を破壊 これらは、経済における資本の配分、誰が資本をどの程度利用するのが経済にとって望ましいか、ということを行う資本市場の機能をMMTが破壊することによっておこる。価格メカニズムが資本市場において機能しなくなり、しかも、その代わりに配分を行う主体を考えないことにより、資本の利用の非効率性が計画経済よりもひどいものになってしまうのである。 そして、それは、現在において「誰に資本を配分するか」という問題を無視するだけではない。現在と未来において「どれだけ資本を使うか、資源を今投入するか、消費するか、それとも長期的な投資に回すか、さらには、すべての金融資本を今使い切るのではなく、将来に金融資本を実物資本に転換することのほうが効率的か、それをどのくらいのペースで、現在から10年後、20年後、100年後の未来に配分していくか」など、それらを一切考慮しないことにより、経済の長期成長力を徹底的に破壊する。 資本市場は、資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能を果たしているのである。 このようにMMTは、この2つの機能を無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視しているのである。 これらの機能を果たすための媒介手段が貨幣、マネーである。MMTは、これらの機能を無視し、貨幣を、政府の手段、そして納税の手段とだけとらえ、経済、市場を無視しているのである。この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅するのである。 理論的な4つの誤りのほうも、ここに明確になっただろう。したがって、これ以上、MMT理論を批判する必要はない。もうたくさんだ』、「MMT]が「資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能」を「無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視している」、「この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅する」、極めて明確な「MMT理論」「批判」である。アメリカの主導学者たちの見解が知りたいところだ。
先ずは、11月28日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績 氏による「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/471734
・『今回は「財政破綻は日本では起きない」という主張は、完全に誤りであることを説明しよう。 10月16日配信のコラム「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」では、「日銀が国債を買えば大丈夫だ」「国全体のバランスシートは問題ない」」「MMT(現代貨幣理論)は有効だ」「インフレが起きてないから大丈夫」などと完全に誤った主張をする、エコノミスト、有識者たち、いや有害な言説を撒き散らす人々を論破することが、唯一の日本を救う道だと書いた。今回は、その仕事に取りかかりたい』、「小幡」氏は数少ない論争型の学者で、興味深そうだ。
・『「国全体では貯蓄があるから大丈夫」は大間違い この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら まず「日本全体では対外債権があり、国全体では貯蓄があるから、日本が破綻することは絶対にない」というのは、単純な誤りだ。なぜなら、国全体でお金があっても、政府が倒産するからである。 これは、企業の例を考えてみれば、すぐにわかる。「日本全体で金余りだ」「銀行は貸す先がない」、と言われていても、資金繰り倒産する企業は必ずある。それは、金が余っていても、その企業には貸さないからだ。なぜ、貸さないかといえば、返ってくる見込みがないからである。 借金を積み上げ、一度も借金を減らしたことのない政府、そして、毎年の赤字額は年々増えていく。毎年新しく借り入れる額が増えていく政府。貸しても返ってこない、と考えるのが普通で、誰も貸さなくなるだろう。つまり、政府が借金をしたいと、新しく国債を発行しても、それを買う人がいなくなるのである。銀行も投資家も金はあるが、買わないのである。 それは、地方政府と違って、日本政府には日本銀行がついており、日本銀行が買うから問題ない、ということらしい。これこそ誤りだ。 「日銀が国債を買い続けるから問題ない」という議論は、100%間違っているのである。なぜなら、日銀が国債を買い続けることは、現実にはできないからである。 なぜ日銀が国債を買い続けることは難しいのか? また「自国通貨建ての国は、理論的に絶対財政破綻しない」という議論は、元日銀の著名エコノミストですら書いているが、それは、机上の理屈であり、現実には実現不可能なシナリオである。それは、日本銀行が国債を引き受け続けるとインフレになるからではない。その場合は、インフレまで時間稼ぎができるが、インフレになる前に、即時に財政破綻してしまうからである。 日本銀行は、すでに発行されている国債を、市場で買うことはできる。だから、理論的には、日本国内に存在するすべての国債を買い尽くすことはできる。しかし、財政破綻回避のために買う必要があるのは、既存の国債ではない。新発債、つまり、日本政府が借金をするために新たに発行する国債である。そして、これを日本銀行が直接買うこと、直接引き受けは、法律で禁止されている。だからできない。 これを回避する方法は2つである。 1つは、民間金融機関に買わせて、それを日本銀行が市場で買うことである。これは、現在すでに行われている。民間主体から見れば、いわゆる「日銀トレード」で、日銀が確実に買ってくれるから、政府から新規に発行された国債を引き受け、それに利ざやを乗せて、日銀に売りつけるのである。 この結果、日本国債のほぼ半分は日銀が保有することになってしまった。 問題は、これがいつまで継続できるか、ということである。日銀は、継続性、持続性が危ういとみて、イールドカーブコントロールという前代未聞の、中央銀行としてはもっともやりたくない金融政策手段に踏み切り、国債の買い入れ量を減少させることに成功した。 逆に言えば、これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできないのである。それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をすることになる。理論的に日本では財政破綻は起きないと主張している人々は、この手段があるから、自国通貨建ての国債を発行している限り、財政破綻しないと言っているのである』、「日銀」が「国債」を「これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできない」、「それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をする」、なるほど。
・『直接引き受けの話が出れば「日本は秒殺」される 残念ながら、この手段は現実には不可能である。 なぜなら「中央銀行に国債を直接引き受けさせる」という法律を成立させれば、いや国会に提出されたら、いや、それを政府が自ら検討している、と報じられた時点で、政府財政よりも先に、日本が破綻するからである。 日銀、国債直接引き受けへ、という報道が出た瞬間、世界中のトレーダーが日本売りを仕掛け、世界中の投資家もそれに追随して投げ売りをする。 まず、円が大暴落し、その結果、円建ての国債も投げ売りされ、円建ての日本株も投げ売られる。混乱が収まった後には、株だけは少し買い戻されるだろうが、当初は大暴落する。 つまり、為替主導の、円安、債券安、株安のトリプル安であり、生易しいトリプル安ではなく、1998年の金融危機ですら比較にならないぐらいの大暴落である。1997年から1998年の1年間で、1ドル=112円から147円まで暴落したが、「日銀直接引き受け報道」が出て、政府が放置すれば、その時のドル円が110円程度であれば、1週間以内に150円を割る大暴落となり、状況によっては、200円を突破する可能性もある。 ただし、これも現実には起きない。なぜなら、日銀国債直接引き受け報道が出れば、直ちに為替取引も債券取引も株式取引もまったく成り立たなくなり、金融市場は全面取引停止に追い込まれるからだ。 メディアも政治家も、やっと大騒ぎを始め、日銀の直接引き受け報道を政府は否定することになるからだ。しかし、否定しても、いったん火のついた疑念は燃え盛り、取引は再開できないか、再開すれば、さらなる暴落となる。よって、これを収めるには、日銀直接引き受けなど絶対にありえない、という政府の強力で具体的な行動が必要となる。実質的で実効的でかつ大規模な財政再建策とその強い意志を示さざるを得ないだろう。こうなって初めて、暴落は止まる。 つまり、禁じ手といわれている、日銀の直接引き受けは、タブーを犯せば理論的には可能だ。だが現実にはタブーを犯した政府と中央銀行は国際金融市場に打ちのめされるため、結局、禁じ手はやはり禁じ手のままとなる。「自国通貨建ての政府債務なら、いくらでも借金できる」というのは幻想で、為替取引が国際的に行われている限り、それは、自国通貨建てであろうとも、金融市場から攻撃を受ける。 そして、為替の暴落を許容しても、結局国債が暴落してしまい、借金はできなくなり、すべてを日銀に依存することになる、同時に、株式も短期的には大暴落となるから、政治的に持ちようがなく、政権は株式市場により転覆されるだろう。その結果、その政権あるいは次の政権は、財政再建をせざるを得ず、日銀引き受けは結局実現することはない。 日銀直接引き受けがあり得ない、となれば「財政破綻はしない」という論者の議論はほぼすべて破綻する。だから、これ以上議論することもないが、この際、すべての点において彼らを打ちのめしておこう。 まず、政府と日銀を一体で考える、連結政府という議論は、前述したように無意味だ。連結政府という考えで借金しようとすれば、即金融市場暴落だから、一体で考えることは、打ち出の小槌どころか、反対に地獄への道である。 その次に、借金という負債と対になる資産も考えろというバランスシート議論も無意味だ。日本は負債も多いが資産も多いので大丈夫というのは、現実的には、まったく間違いである。 政府が不足しているのは現金である。キャッシュがなければ、国民にも配れないし、公共事業もできないし、国民の医療費の肩代わりもできない。資産があっても現金がなければ、政府の資金調達には使えないので、現金資産あるいはすぐに現金化できる資産しか意味がない。 したがって、特別会計の剰余金は使えるが、それ以外はほとんど使えないのである。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の厚生年金の積立金の運用資産の株式、債券などを売却すれば、確かに100兆円以上現金は入ってくる。 だが、たとえその資産が200兆円で売れたとしても、1000兆円を超える負債を相殺するには遠く及ばないし、もちろん、将来の年金支払い原資が不足するから、将来200兆円不足額が増えるだけのことである さらに、道路や森林などは問題外である。買い手がいない。道路に価値があっても、買う人がいなければ売却はできない。価値があっても価格がつかないというのは、金融市場でなくとも普通のことである。高速道路だけでなくすべての道路に課金すれば、というような議論は意味がない。なぜなら、消費税も政治的に上げられない政府が、すべての道路に課金するなどということを実行するはずはないからだ。万が一、それをするとすれば、財政破綻後であろう。 こう追い詰められれば「財政破綻あり得ない派」の論者たちは、今度は「そもそも借金を返す必要などない。個人や企業と違って、国は返さなくていいんだ」と言うだろう。それならば、バランスシートで考えること自体に意味がない。バランスシートで考えろという議論はそもそも無意味なのである。 前述した金融市場による財政破綻のプロセスで見たように、財政破綻が起こるかどうかは、政府がそのとき必要な現金を調達できるかどうかにかかっているのであって、バランスシートも借金残高も直接は関係ないのである。 しかし、現金化できる資産をすべて売りさばいても、せいぜい1年ちょっとで、2年も持たないだろう。なぜなら、新しい国債が発行できなければ、借り換えもできない。現在、日本政府は、毎年借り換えも含めて国債を170兆円以上新規発行しており、今後は200兆円を超えてくると思われるので、現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである』、「現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである」、意外に額は少ないようだ。
・『借金残高が大きいとどうなる? では、借金残高の大きさはまったく関係ないのか?500兆円でも1200兆円でも関係ないのか? 借金の大きさには、2つの大きな影響がある。まず第1に、借金残高が大きいと「こいつ返せるのか、返す気あるのか」という疑念を持たれ、新たに貸してもらえなくなる。その意味では、GDP比で250%でも財政破綻しないのだから、300%でも400%でも大丈夫、60%程度で破綻したギリシャなどとは日本は根本的に違う、という議論は間違いだ。 つまり、日本がこれまで破綻しなかったのは、政府に金を貸してくれる人がいたからで、いまやそれが日銀しかいなくなりつつある、というのが問題であり、250%で破綻しないことは、今後破綻しないことを意味しない。何より、日銀に半分を買わせないといけないという現実は、まもなく破綻することを示している。 第2に、破綻した後の再生の困難さに大きく影響する。日本にとってはこれが最大の問題だ。 ギリシャと違って「自国通貨建てで、国内で借金をしているから大丈夫だ」というのは、厳しい国際金融市場ではない、馴れ合いのそして政府の影響力のある金融機関それと中央銀行が保有しているから、破綻がすぐには起こりにくい、という意味では正しい。 だが、それは逆に言えば、市場が鈍感であり、鈍感な投資家が保有している(鈍感に振舞うことを強制されているとも言えるが)ことを示しているのであり、破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こるのである。 そして、破綻後、政府の財政再建が非常に困難になる。国内の資金は使いつくしている。個人の金融資産は銀行に預けられ、地域金融機関やあるいは半公的な金融機関、ゆうちょ銀行などに預けられている多くの部分は国債になっているから、返ってこない。国民の金融資産の実質価値は激減してしまうのであり、国債の返済は先送り(リスケ)されていつかは返済されるとしても、長期にわたり、インフレ分は目減りするし、何より、すでに老後を迎えている多くの国民は貯金が今必要なのに使えなくなってしまう。 開き直って、財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き)』、「破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こる」、「国民の金融資産の実質価値は激減してしまう」、「財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き」、恐ろしいことだ。
・『国内保有が多いほど、破綻したら大変な事態に この場合、海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない。つまり、夜逃げすらできないのである。自分の処理はすべて自分でしなければならないのである。これが、国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソである。 むしろ、国内保有だからこそ、破綻したら本当に終わりであり、再起がほぼ不能になってしまうのである。そして、その額が莫大であれば、1200兆円であれば、1200兆円の負担を国内で負うことになり、2000兆円になってから破綻すれば、そのときの日本国民が2000兆円負担することになるのである。 だから、政府の借金の大きさは致命的に重要なのであり、ほぼ国内から借金をしていることは、日本政府の財政破綻リスクにおいて、もっとも致命的なリスクなのである。 MMT理論の誤り、インフレにならないことの誤り、これについては長くなったので、次回にしよう(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない」、これが「国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソ」、なるほど。
次に、この続き、12月14日付け東洋経済オンライン「日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/473925
・『「MMT(現代貨幣理論)」が、いまだに日本では言及されているようだ。 改めてひとことで言えば、これは「独自通貨を持つ国であれば、債務返済のための通貨発行に制約を受けないため、いくら借金をしても財政破綻は起きない」という理論である。 だが、結論から言えば、これは理論的に誤りであるうえに、現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる。以下、理由を説明しよう』、「現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる」、恐ろしいことだ。
・『MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは? 理論的には、以下の4つの大きな誤りがある。 第1に、価格メカニズムをまったく無視している。 第2に、リスクという概念が存在していない。 第3に、その結果、金融市場をまったく無視している。 第4に、その結果、マネー自体を無視している。 つまり、現代貨幣理論とは「現代ではマネーを無視していいのだ」という理論である。 だから、貨幣理論なのに財政がすべてを決めるのである。その結果出てくる政策提言は、インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策であることがわかる。しかし、MMT論者はそれが理解できないようなので、現実の大きな問題点も指摘しよう。 現実の政策としては、3つの害悪がある。 第1に、財政支出の中身がどうであっても、気にしない。 第2に、金融市場が大混乱しても、気にしない。 第3に、インフレが起きにくい経済においては、その破壊的被害を極限まで大きくする。 理論と現実の政策としての問題点の説明は、現実的に日本経済が破壊されることを何よりも防止するために、政策の害悪を先に説明しよう。 日本においてはとりわけ、2013年、2014年と需給ギャップが解消されてもインフレが起きず、インフレ率は景気の指標としても有効でないことが示されているから、日本こそ、MMTをいちばんやってはいけない国なのである。これは第3の点のところで詳しく議論しよう』、「インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策」、その通りだ。
・『政府が大規模な財政支出を続ければどうなるのか? 第2の害悪として挙げた「金融市場がどうなってもよい」という考え方は、財政支出の適切な規模をMMTでは判断できないこと以上に、経済を壊滅的に破壊する可能性がある。 例えば「財政出動をとことん行って金利が大幅に上昇しても、インフレがターゲットを超えない限り、財政支出を続ける」ということが起こりうる。これは、大規模な財政支出により、民間投資が大幅に縮小する、という典型的なクラウディングアウト(英語の元は「押し出す」の意味)を起こすということである。その結果、民間経済の活力、経済成長力は大幅に低下し、経済は長期的な大不況に陥ることになる。 これに対する彼らの反応は「理論的にはそのとおりだが、現在、世界経済は低金利で困っている。とりわけ日本はその最たるものだ。したがって、金利が上がらない現代でそのような心配をするのは杞憂だ」というものである。 これも、明らかに間違いで、金利が低いのは世界各国の中央銀行が無理やり低金利に押さえ込む、大規模な金融緩和を行っているからである。もし、低金利を維持したまま、大規模財政支出を継続すれば、民間の投資は、干上がってしまう。 投資資金は限られており、金利という価格による需給調節が効かなくても、政府セクターに取られてしまえば、リスク資金は民間へ回ってこない。さらに、人手が不足する。労働力は限られており、とりわけ優秀な人材はすぐに枯渇する。すると、民間投資として適切で利益の上がる投資を行える人材が不足する。彼らは、大規模財政支出に乗じて、その分野で稼ぐために活動しているからである。 中央銀行が資金を供給したところで、それを受け取る民間経済主体はいない。将来の経済見通し、リスクが不透明のため、投資も控えるし、儲かるかわからない投資のための資金も利子率ゼロでも借りない。 ただで資金をくれるのであれば、それはもらうだろうが、それは中央銀行が行うのではなく、政府財政で行うことになるから、これは財政政策であり、民間投資ではない。この財政支出がうまくいくかどうかが、保証されていない以上、この財政出動は意味がない。これは第1の、ワイズスペンディングの議論にも関係する。 この結果、自らリスクをとって金融機関も貸し出しを行うことはせず、企業も個人も借り入れで投資は行わなくなる。 中央銀行が異常な量的緩和を行っていなければ、つまり、国債の実質直接引き受けをせずに、通常の範囲での金融緩和を行っていれば、資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう。 そして、金融(株式や債券)市場は、暴落することになるだろう。金利が上がるし、中央銀行が金利を押さえ込んだとしても、そうなると経済も将来の市場の不透明性が増大し、リスクが高まる。ましてや、インフレになるリスク、そしてそのときに大増税、財政支出の急減による大不況のリスクがあるから、誰も投資しなくなるだろう。 つまり、リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう』、「資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう」、典型的な「クラウディングアウト」だ。「リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう」、弊害は甚大だ。
・『日本でMMTを絶対にやってはいけないワケ MMT理論を現実の政策として実行することにより、金融市場が混乱にとどまらず、崩壊してしまう危機に追い込まれる可能性は、世界で日本が最も大きい。日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら、これが政策としての第3の問題点であるが、インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである。 インフレがなぜ起きにくいのかは、また改めて詳しく議論したいが、大まかにいって理由は3つある。第1に、企業の価格設定行動の結果の合計がマクロ的な物価水準であるから、企業が値上げをできるだけしないようにする日本ではインフレが起きにくい。 企業が値上げをできるだけしない理由は、消費者が値上げに過度に敏感であり、値上げで失う売り上げがあまりに大きいため、日本では商品提供者はできるだけ値上げしないのである。だから、卸売物価は変動しても消費者物価にはあまり反映されないのである。) 第2に、これは世界的な現象でもあるが、過熱した実体経済において生み出された利益や所得は、実物財に回らず、現代ではその多くが資産市場に投資される。だから、モノの値段は上がらず、株式や不動産だけが上がるのである。そして、物価で上がっているのは不動産、つまり家賃が最も大きなものの1つなのである。 第3に、モノの供給が世界中からなされるために、一国内の経済が過熱しても、その国の物価が上がるとは限らない、という普通のこともある。 これら3つの影響で、インフレ率は、現代においては、景気、需給ギャップの指標の役割を果たさなくなっているのである。 だから、金融緩和が過大になって資産市場がバブルになることが21世紀になって頻繁になっているのである。しかし、中央銀行は物価だけでなく資産市場にも目配りをしているから(少なくとも多少は)、MMT論者よりはましなのである。 経済や社会における、過大な財政支出の悪影響、コストはインフレだけではない。労働力や設備など経済資源の無駄遣い、民間経済と公共部門とのバランスの喪失、成長力の低下などがあることは前述したとおりだ』、「日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら・・・インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである」、なるほど。
・『MMTは資本市場の機能や国の長期成長力を破壊 これらは、経済における資本の配分、誰が資本をどの程度利用するのが経済にとって望ましいか、ということを行う資本市場の機能をMMTが破壊することによっておこる。価格メカニズムが資本市場において機能しなくなり、しかも、その代わりに配分を行う主体を考えないことにより、資本の利用の非効率性が計画経済よりもひどいものになってしまうのである。 そして、それは、現在において「誰に資本を配分するか」という問題を無視するだけではない。現在と未来において「どれだけ資本を使うか、資源を今投入するか、消費するか、それとも長期的な投資に回すか、さらには、すべての金融資本を今使い切るのではなく、将来に金融資本を実物資本に転換することのほうが効率的か、それをどのくらいのペースで、現在から10年後、20年後、100年後の未来に配分していくか」など、それらを一切考慮しないことにより、経済の長期成長力を徹底的に破壊する。 資本市場は、資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能を果たしているのである。 このようにMMTは、この2つの機能を無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視しているのである。 これらの機能を果たすための媒介手段が貨幣、マネーである。MMTは、これらの機能を無視し、貨幣を、政府の手段、そして納税の手段とだけとらえ、経済、市場を無視しているのである。この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅するのである。 理論的な4つの誤りのほうも、ここに明確になっただろう。したがって、これ以上、MMT理論を批判する必要はない。もうたくさんだ』、「MMT]が「資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能」を「無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視している」、「この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅する」、極めて明確な「MMT理論」「批判」である。アメリカの主導学者たちの見解が知りたいところだ。
タグ:政府財政問題 (その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か) 東洋経済オンライン 小幡 績 「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い」 「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」 「小幡」氏は数少ない論争型の学者で、興味深そうだ。 「日銀」が「国債」を「これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできない」、「それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そ 日銀国債直接引き受け報道が出れば、直ちに為替取引も債券取引も株式取引もまったく成り立たなくなり、金融市場は全面取引停止に追い込まれる 日銀の直接引き受けは、タブーを犯せば理論的には可能だ。だが現実にはタブーを犯した政府と中央銀行は国際金融市場に打ちのめされるため、結局、禁じ手はやはり禁じ手のままとなる。 「現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである」、意外に額は少ないようだ。 「破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こる」、「国民の金融資産の実質価値は激減してしまう」、「財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き」、恐ろしいことだ。 「海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない」、これが「国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソ」、なるほど。 「日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か」 「現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる」、恐ろしいことだ。 MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは? 「インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策」、その通りだ。 「資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう」、典型的な「クラウディングアウト」だ。「リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう」、弊害は甚大だ。 「日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら・・・インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである」、なるほど。 「MMT]が「資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能」を「無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視している」、「この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅する」、極めて明確な「MMT理論」「批判」である。アメリカの主導学者たちの見解が知りたいところだ。
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