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年金制度(その6)(2022年度年金額マイナス改定の裏にある重要課題 マクロ経済スライドの給付調整が再び繰り越し、巷で話題、「公的年金をめぐる2つの提案」の背景 2024年財政検証は出生数減少で一段と厳しく、「年金崩壊」シナリオに現実味 厚生年金は2040年代前半に単年度10兆円赤字で破綻する!?) [経済政策]

年金制度については、2021年11月16日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その6)(2022年度年金額マイナス改定の裏にある重要課題 マクロ経済スライドの給付調整が再び繰り越し、巷で話題、「公的年金をめぐる2つの提案」の背景 2024年財政検証は出生数減少で一段と厳しく、「年金崩壊」シナリオに現実味 厚生年金は2040年代前半に単年度10兆円赤字で破綻する!?)である。

先ずは、昨年1月10日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「2022年度年金額マイナス改定の裏にある重要課題 マクロ経済スライドの給付調整が再び繰り越し」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/501222
・『今月にも開会される通常国会では、2022年度予算政府案が審議される。2022年度予算案では、一般会計歳出総額が107.6兆円と、当初予算案として過去最大規模となっている。そのうち、社会保障関係費が36.3兆円と33.7%を占めて、全費目の中で最大となっている。 社会保障関係費の中で最も多いのが、年金給付費(12.8兆円)である。これは、年金給付のすべてではなく、基礎年金給付の2分の1を賄う国庫負担に相当する。 2022年度予算案を決めるためには、2022年度にいくら年金給付をするかも同時に決めておかなければならない。そうしなければ、予算が組めないからである。実際に個々人が受け取る年金額は毎年見直されているが、前年度に比べてどれだけ変化するかを示すのが年金額改定率である』、年金制度の基本を改めて考えるのは、興味深そうだ。
・『2022年度の年金額改定率はマイナス0.4%  年金額改定率は、あらかじめ定められたルールに基づいて決める。それに基づいて決まった2022年度の年金額改定率は、マイナス0.4%となった。つまり、2022年度の年金額は、2021年度よりも0.4%減るということである。 ただし、厳密に言うと、マイナス0.4%というのは、予算政府案が閣議決定された2021年12月時点での物価上昇率の推計を基にした予算積算上の値であり、今月公表される2021年平均の全国消費者物価指数の上昇率に基づいて実際の年金額改定率は確定する。 では、このマイナス0.4%は、どのようなルールに従って決まったものなのか。それは、次のとおりである。まず、年金額改定率は、原則として、名目手取り賃金変動率とマクロ経済スライド調整率の和で決まる。 名目手取り賃金変動率が、年金額改定率に反映されるのは、年金の給付水準は現役世代の名目手取り賃金の水準との比率(所得代替率)を見極めながら制度が運営されていることに基づいている。さらには、年金保険料を払う現役世代の手取り賃金が減っているのに、年金の給付水準は減らなかったり、むしろ増えたりすれば、現役世代へのしわ寄せが大きくなるという関係も見逃せない。) マクロ経済スライドとは、東洋経済オンラインの拙稿「新首相を待ち受ける『基礎年金問題』という難題給付水準低下で高齢の生活保護受給者が増える」でも言及しているように、給付水準の世代間格差是正と年金財政の維持のために設けられた仕組みである。 少子化によって将来の年金保険料収入が減るが、それに合わせて将来の年金給付を減らすと給付水準の世代間格差が拡大する。それを防ぐためにも、今の高齢世代の給付水準を抑制することを意図している。 これを踏まえて、マクロ経済スライド調整率は、公的年金被保険者数の変動率と平均余命の伸び率を加味して決めることとなっている。2022年度のマクロ経済スライド調整率は、マイナス0.2%と算出されていた。 2022年度の年金額改定率に反映する名目手取り賃金変動率は、予算案の閣議決定時点では、マイナス0.4%と算出された。これらの和は、マイナス0.6%となる』、「マクロ経済スライド調整率」は、「給付水準の世代間格差是正と年金財政の維持のために設けられた仕組みで、「2022年度」は、「マイナス0.2%と算出」、「年金額改定率に反映する名目手取り賃金変動率は」「マイナス0.4%と算出」、「これらの和は、マイナス0.6%となる」、なるほど。
・『影響が大きい「名目下限措置」ルール  ところが、年金額改定率の算定ルールには、もう1つ別の条件が定められている。それは、マクロ経済スライドを発動する際には、マクロ経済スライド調整率を加えた最終的な年金額改定率はゼロ%を下限とするというものだ。名目下限措置とも呼ばれる。そして、名目手取り賃金変動率自体がマイナスの場合は、マクロ経済スライド調整自体を行わないというルールになっている。 2022年度については、この名目下限措置に該当する状況となり、これに従い年金額改定率は名目手取り賃金変動率と同率とすることとなったのである。つまり、マクロ経済スライドは発動しないこととしたのである。 結局、2022年度は、2021年度に続き2年連続で、マクロ経済スライドは、「抜かずの伝家の宝刀」となり下がったのである。) マクロ経済スライドは、2004年の年金制度改正で導入されて以降、23年間で2015年度と2019年度と2020年度の3回しか発動されていない。特に、初めて発動されたのが制度導入から10年経ってからだったこともあり、発動されないことにより年金財政の持続可能性に支障を来しうるとして、マクロ経済スライド調整率にキャリーオーバー制を設けることとした。2018年度の年金額改定以降においてである。 キャリーオーバー制とは、前述の名目下限措置によってマクロ経済スライドが発動されなかった場合、その調整率分を翌年度に繰り越す仕組みである。 2018年度の年金額改定で、マクロ経済スライドが発動されず、早速キャリーオーバー制が適用され、マイナス0.3%分が2019年度に繰り越された。 2019年度は物価上昇率が上がったことから、名目下限措置には該当せず、マクロ経済スライドが発動されることとなったため、2018年度からキャリーオーバーされた分も含めて年金額改定率に反映された』、「マクロ経済スライドを発動する際には、マクロ経済スライド調整率を加えた最終的な年金額改定率はゼロ%を下限とするというものだ・・・名目手取り賃金変動率自体がマイナスの場合は、マクロ経済スライド調整自体を行わないというルールになっている。 2022年度については、この名目下限措置に該当する状況となり、これに従い年金額改定率は名目手取り賃金変動率と同率とすることとなった」、「マクロ経済スライドは、2004年の年金制度改正で導入されて以降、23年間で2015年度と2019年度と2020年度の3回しか発動されていない。特に、初めて発動されたのが制度導入から10年経ってからだったこともあり、発動されないことにより年金財政の持続可能性に支障を来しうるとして、マクロ経済スライド調整率にキャリーオーバー制を設けることとした。2018年度の年金額改定以降においてである。 キャリーオーバー制とは、前述の名目下限措置によってマクロ経済スライドが発動されなかった場合、その調整率分を翌年度に繰り越す仕組みである」、「2018年度の年金額改定で、マクロ経済スライドが発動されず、早速キャリーオーバー制が適用され、マイナス0.3%分が2019年度に繰り越された。 2019年度は物価上昇率が上がったことから、名目下限措置には該当せず、マクロ経済スライドが発動されることとなったため、2018年度からキャリーオーバーされた分も含めて年金額改定率に反映された」、なるほど。
・『2022年度は2年連続のキャリーオーバー  2021年度には再び名目下限措置に該当して、マクロ経済スライドが発動されず、その調整率マイナス0.1%が2022年度に繰り越された。そして、2022年度も、前述のとおりマクロ経済スライドが発動されず、2年連続でのキャリーオーバーとなった。これにより、2年分合計の調整率マイナス0.3%が2023年度に繰り越される。新型コロナウイルス禍という状況下とはいえ、2年連続でのキャリーオーバーは、制度導入後初めてである。 キャリーオーバーされた分は、近い将来いずれマクロ経済スライドが発動されれば、年金額改定に反映されるから、そのときにはマクロ経済スライドが毎年度発動されたも同然となる。だから、一時的にキャリーオーバーされたところで、年金財政の持続可能性に疑義が生じることはない。 しかし、キャリーオーバー制が導入された2018年度以降、5年のうち3年はマクロ経済スライド調整率がキャリーオーバーされている。こうも頻繁にキャリーオーバーされていると、いざマクロ経済スライドが発動されるときには、年金額改定率を大きく引き下げることとなり、激変が起きる恐れがある。) キャリーオーバー制は、ないよりあったほうがよく、年金財政の持続可能性を大いに高めることは間違いない。ところが、キャリーオーバーがたまりにたまると、逆にマクロ経済スライドを発動するときの影響が大きくなり、そこで国民の反発を招きかねない。 それならば、キャリーオーバーするのではなく、マクロ経済スライドを毎年度フルに発動して、緩やかに年金額改定を進めて行くほうが、かえって国民の反発が避けられるだろう。 2022年度では、マクロ経済スライド調整率は、前掲のとおりマイナス0.2%だった。もしこれを年金額改定に反映すれば、基礎年金1人分の満額給付額では年約1600円減るに過ぎない。厚生年金の報酬比例部分(1人分)では、平均で年約2200円減るに過ぎない。 他方、2023年度にキャリーオーバーして、そこでマクロ経済スライドを発動するとどうなるか。仮に2023年度単年度のマクロ経済スライド調整率がマイナス0.2%とすると、キャリーオーバー分マイナス0.3%分も合わせてマイナス0.5%年金額改定率を引き下げる。これを年金額に換算すると、基礎年金1人分の満額給付額では年約4000円に相当し、厚生年金の報酬比例部分(1人分)では、平均で年約5500円になる。 このように、キャリーオーバー分もまとめて引き下げると、インパクトは大きいのである。 年金財政の持続可能性を高めるために導入したキャリーオーバー制だが、こうも頻繁に用いられるとなると、いざ発動するときにはその調整率が大きくなってしまい、マクロ経済スライドへの反感を募らせる意味でアダとなりかねない』、「年金財政の持続可能性を高めるために導入したキャリーオーバー制だが、こうも頻繁に用いられるとなると、いざ発動するときにはその調整率が大きくなってしまい、マクロ経済スライドへの反感を募らせる意味でアダとなりかねない」、確かにその通りだ。
・『名目下限措置撤廃への合意形成が必要  むしろ、マクロ経済スライドを毎年度フルに発動できるように名目下限措置を撤廃したほうがよい。フル発動によって、年金財政の持続可能性がより高まるだけでなく、厚生労働省が試算したように将来の年金給付をより多く維持できる意味で給付水準の世代間格差を是正でき、今の高齢世代が受け取る年金額をより緩やかに調整できて激変を回避できる。 2024年には5年に1度の年金の財政検証が待っている。それに向けた年金制度の改善策の議論が予定されている。その際には、名目下限措置を撤廃してマクロ経済スライドを毎年度フルに発動できるよう、国民的なコンセンサスを醸成することが望まれる』、「2024年には5年に1度の年金の財政検証が待っている・・・その際には、名目下限措置を撤廃してマクロ経済スライドを毎年度フルに発動できるよう、国民的なコンセンサスを醸成することが望まれる」、確かにその方が、調整がスムースでよさそうだ。

次に、昨年10月31日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授 の土居 丈朗氏による「巷で話題、「公的年金をめぐる2つの提案」の背景 2024年財政検証は出生数減少で一段と厳しく」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/629384
・『このところ、公的年金をめぐる新たな提案がちまたの話題となっている。「国民年金保険料の納付期間の5年延長」や「国民年金の厚生年金による穴埋め」である。 なぜこんな話題が、今取り沙汰されるのか。 それは、2024年央に予定されている年金の「財政検証」(将来の公的年金の財政見通し、5年に1度実施)を見据えた議論が、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会年金部会で10月25日から始まったことによる。その会合の開催前に、観測記事などが出たことから、にわかに世間の注目を集めた。ただ、これらの「新たな提案」は、以前にも提起されたことがあるものだから、新しいわけではない』、興味深そうだ。
・『大幅な給付低下が見込まれる基礎年金を「救済」  「国民年金の厚生年金による穴埋め」ともいわれる提案は、東洋経済オンラインの本連載の記事「国民年金・厚生年金『積立金統合案』、何が問題か」ですでに言及したものである。 そもそも、従業員が101人以上の企業に勤務し、週20時間以上働き、2カ月以上の雇用の見込みがある、などの要件を満たした被用者は、厚生年金に加入して老後に基礎年金と所得比例年金の両方を受けることができる。その要件を満たさない人は厚生年金には加入できず、国民年金に入って老後に基礎年金の給付のみを受けることができる。 ところが、現行の公的年金制度のままでは、基礎年金の給付は将来大きく低下することが見込まれることから、基礎年金給付が目減りしないように、厚生年金が国民年金を「救済」するのが、この案の肝である。 今ある厚生年金の積立金と国民年金の積立金とを文字どおり統合するというわけではないのだが、厚生年金の積立金のほうが圧倒的に多いため、基礎年金給付の財源に厚生年金の積立金を現行制度が想定しているよりも多く拠出してもらうことで、基礎年金の給付が目減りしないようにする、という仕組みだ。) もう1つの話題である「国民年金保険料の納付期間の5年延長」は、現行の受給開始年齢は65歳なのに、国民年金の保険料納付は60歳になるまでだから、保険料納付を受給開始直前まで5年延ばすことで、受給開始後の給付を増やそうという案である。 この案も、実はすでに2019年の財政検証の際にも出されており、オプション試算としてその影響が分析されている。確かに、これによって、厚生年金が国民年金を救済する形ではない方法で、基礎年金の給付水準を維持することができる。 現に、厚生年金加入者は、60歳を超えて引き続き勤務するならば、要件を満たす限り70歳になるまで保険料を払い続ける仕組みとなっている。だから、今回の案は、国民年金加入者もそれに倣って保険料を納付し続けるものとみることができる。巷間、無理やり保険料を払わせられるといった報道も見られるが、そのように解することは妥当でない。 むしろ、厚生年金加入者は60歳を超えて保険料を払い続けているのに、国民年金加入者は60歳を超えたら保険料を払わない、というのでは、国民年金加入者の年金給付は少なくなっても致し方ない。 ただでさえ、基礎年金の給付が目減りすることが懸念されているのだから、国民年金加入者も、厚生年金加入者と同様にせめて65歳になるまでは保険料を払えば、老後の年金給付の水準を上げることができる』、「国民年金加入者も、厚生年金加入者と同様にせめて65歳になるまでは保険料を払えば、老後の年金給付の水準を上げることができる」、その通りだ。
・『2分の1を負担する税財源の確保が課題に  しかし、国民年金保険料の納付期間の5年延長でも、厚生年金積立金による国民年金の負担軽減でも、越えなければならない難関がある。 それは、基礎年金給付の財源は2分の1が税財源(国庫負担)となっていることから、その税財源をどう確保するかである。率直に言えば、基礎年金給付の水準を目減りさせないようにするためには追加的な増税が必要であり、それに国民が応じるかどうかという問題だ。 国民年金の保険料納付期間を5年延ばすということは、これに合わせて基礎年金給付に必要な税財源を5年分別途確保しなければならないということを意味する。国民年金加入者に5年多く保険料を納付してもらうとしても、それは給付に必要な財源の半分にとどまる。ましてや、その間に、保険料の減免が適用されれば、減免された分までも税財源で穴埋めしなければならない。 2019年財政検証のオプション試算によると、将来このための追加の税財源確保のために、消費税率に換算すると最低でも1~2%ほどは上げなければならないほどの税収が必要となる。 それは、厚生年金積立金による国民年金の負担軽減であっても同様だ。要するに、基礎年金の給付水準を上げる際には、その半分は、税財源を現行で予定しているよりも多く注ぎ込まなければならない。 前掲の「国民年金・厚生年金『積立金統合案』、何が問題か」でも述べたように、基礎年金の給付水準が目減りして、高齢の生活保護受給者が増えれば、それはそれで生活保護給付は全額税財源で賄わなければならない。だから、基礎年金の給付水準を維持することは重要だ。 しかし、基礎年金の給付水準を維持するのに、増税なしに実現できると安直に考えることは禁物だ。税財源の確保なくして、基礎年金の給付水準の維持はありえない』、「税財源の確保なくして、基礎年金の給付水準の維持はありえない」、その通りだ。
・『厚生年金のさらなる加入者拡大は必要  他方、国民年金加入者のうち、厚生年金に加入できる人を増やす取り組みも進んでいる。これによって、基礎年金だけでなく所得比例年金も受け取れる対象者が増えるから、老後の年金給付の目減りを防ぐ効果が期待できる。 今年10月からは中小企業等への厚生年金の適用拡大が実施された。それまでは、従業員が501人以上の企業に勤務し、1年以上の雇用の見込みがある人までが厚生年金に加入することとされていたが、10月からはそれが、従業員が101人以上の企業に勤務し、2カ月以上の雇用の見込みがある人まで厚生年金に加入することとなった。 しかし、10月から新たに厚生年金の適用を受けることとなった人は、約45万人にとどまる。厚生年金のさらなる適用拡大が今後の課題である。) 岸田文雄首相は、自民党総裁選に立候補した時から、「勤労者皆保険」を掲げている。わが国では、国民皆年金であるから、国民は必ず国民年金か厚生年金のいずれかには加入している。 ここでいう「勤労者皆保険」を年金についていえば、従業員規模が100人以下の企業に勤めている人であっても、週20時間未満の短時間労働者であっても、娯楽業や宿泊業、飲食サービス業など被用者保険の非適用業種に勤めている人であっても、雇われている人(被用者)であれば原則として厚生年金に加入する、ということを意図している。 それは、年金財政の救済のためではなく、年金加入者本人の老後の所得保障のためである。厚生年金のさらなる適用拡大を行って、基礎年金だけでなく所得比例年金も受け取れる形で、給付水準を維持することが必要である。現在、さらなる適用拡大については、全世代型社会保障構築会議で議論が進んでいる』、「10月からは・・・従業員が101人以上の企業に勤務し、2カ月以上の雇用の見込みがある人まで厚生年金に加入することとなった。 しかし、10月から新たに厚生年金の適用を受けることとなった人は、約45万人にとどまる。厚生年金のさらなる適用拡大が今後の課題である」、「約45万人にとどまる」、その理由は何なのだろう。それを解明することが、「さらなる適用拡大」の前提条件だ。
・『出生数の減少で年金財政は一段と厳しくなる  2024年に行われる年金の財政検証では、2019年の検証結果よりも厳しい結果になることが予想される。というのも、コロナ禍で出生数が減少しているからである。 2017年に公表された将来人口推計における中位推計では、2028年に出生数が約80万人となると見込まれていたが、既に2021年の出生数は81.2万人まで減っており、7年も早く出生数の減少が実現してしまっている。この出生数の減少は、約20年先から就業者数の減少となって影響が出始め、年金保険料収入の減少という形で年金財政に効いてくる。 保険料水準固定方式をとっている現行の公的年金制度では、保険料率は今後上がらないものの、保険料を納める就業者が減ることは、保険料収入の減少を通じて年金給付を抑制する方向に作用する。だから、老後の年金給付の水準を維持する方策について、今まで以上に真剣に検討しなければならないのである。 2024年の年金の財政検証は、こうした人口動態や就業実態を踏まえつつ、保守的な経済見通しに基づいて議論されることが望まれる。年金改革にトラウマを持つ政治家に忖度して、楽観的な経済見通しに基づいて年金制度の改革を先送りしても支障がないと思わせるような試算結果を出すことは、日本の将来のためにならない』、「2024年の年金の財政検証は、こうした人口動態や就業実態を踏まえつつ、保守的な経済見通しに基づいて議論されることが望まれる。年金改革にトラウマを持つ政治家に忖度して、楽観的な経済見通しに基づいて年金制度の改革を先送りしても支障がないと思わせるような試算結果を出すことは、日本の将来のためにならない」、同感である。

第三に、5月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「「年金崩壊」シナリオに現実味、厚生年金は2040年代前半に単年度10兆円赤字で破綻する!?」を紹介しよう。この記事は有料だが、今月、無料で読めるのは私の場合、残り4本。
https://diamond.jp/articles/-/322331
・『厚生年金の収支見通し 国庫支出増えても経常収入は減少  日本の公的年金制度は、幾つかの制度がある。 支出給額でみると、厚生年金が48.1兆円、国家公務員共済組合3.0兆円、地方公務員共済組合が8.3兆円、私立学校教職員共済が0.9兆円。自営業者らの国民年金の国民年金勘定が3.7兆円。そして各制度に共通する基礎年金勘定が24.5兆円だ。 国庫支出金は、各制度から基礎年金制度に対する拠出金の2分の1を国庫が負担するものだ(負担割合は従来、3分の1だったが、2004年度から段階的に引上げられ、09年度に2分の1となった)。 厚生年金の場合、20年度で、経常収入(積立金運用益を除く収入をこのように呼ぶこととする)が約47.2兆円、そのうち保険料収入が約32.1兆円、国庫支出金(国庫・公経済負担)が約10.1兆円だ(厚生労働省「公的年金各制度の財政収支状況」による)。 厚生年金から拠出金を基礎年金勘定に繰り入れ、そこから基礎年金として支出される。 20年度で、厚生年金から基礎年金への拠出額は19.4兆円だ。上にみた厚生年金の経常収入中の国庫・公経済負担約10.1兆円は、この約半分になる。 厚生年金について経常収支の推移を示すと、図表1のとおりだ。 (図表1:給付と経常収入の推移(厚生年金) はリンク先参照) ここでは、支給開始年齢が65歳のままであり、物価上昇率も実質賃金上昇率もゼロであるような経済を考えている。 すると、給付は2020年度の48.1兆円から始まり、65歳以上人口の増加に伴って増えていき、40年度には20年度の約1.083倍である52.1兆円となる。これが、図表1のABによって示されている。 他方で、経常収入の約3分の2は保険料だ(正確な比率は20年度で32.0兆円÷47.2兆円=0.678)。これは、15歳~64歳人口の減少に伴って、20年度から40年度にかけて0.807倍に減少する。) 経常収入の残りは国庫支出金などで、これは、65歳以上人口の増加に従って増えると考えると、20年度から40年度にかけて1.083倍に増加する。 したがって、経常収入全体としては、20年度の47.2兆円から40年度までの間に0.678×0.807+0.322×1.083=0.896倍になって、42.3兆円となる。 これが、図表1のDCによって示されている。国庫支出金を含めても、なお厚生年金の経常収入は1割以上減少するのだ』、「厚生年金」では、「給付は2020年度の48.1兆円」から「40年度には・・・52.1兆円」、「経常収入全体」では。「20年度の47.2兆円から40年度・・・42.3兆円」となる。
・『40年以降は単年度赤字10兆円超 厚生年金の積立金が枯渇する  2020年度では、厚生年金の経常収支はほぼ均衡している。しかし、その後は赤字が拡大する。 赤字額の累計は、40年度までだと、四辺形ABCDの面積によって表される。この四辺形の面積は、AとDを同一視した三角形で近似すれば、約100兆円だ。 この赤字を積立金の取り崩しによって賄うとしよう(実際には、積立金の運用益を考慮する必要があるが、それについては後述する。ここでは運用益がない場合を想定する)。 22年12月末の積立金残高は、年金積立金全体で191兆円だ(年金積立金管理運用独立行政法人「2022年度の運用状況」による)。 このうち厚生年金の比率は、過去のデータからすると79%程度と考えられるので、約150兆円だ。したがって、前述のことから40年頃には残高が50兆円程度にまで減る。 ところが、40年度以降は経常収支の単年度の赤字が10兆円を超す。積立金からの繰り入れを続けるとすれば、40年代の前半に積立金が枯渇することになる』、「積立金残高」のうち「厚生年金」の分は、「約150兆円・・・40年頃には残高が50兆円程度にまで減る」、「40年度以降は経常収支の単年度の赤字が10兆円を超す。積立金からの繰り入れを続けるとすれば、40年代の前半に積立金が枯渇することになる」、その通りだ。
・『将来の経済情勢に依存 積立金運用収益には頼れない  年金会計の収入としては、以上で考えた経常収入のほかに積立金の運用収入がある。 運用収入がどの程度の額になるかは、時々の経済情勢によって大きく変動する。 2020年には、35.7兆円という巨額の運用益が発生した(収益率では24.0%)。しかし、収益率がマイナスになった年もある。22年は四半期連続で赤字になった。 01年度からの21年度の間の平均運用利回りは3.7%だ(年金積立金管理運独立行政法人「年金積立金の運用目標」による)。 現在の積立金が約150兆円だから、積立金の額が変わらないとすれば、年間で5.6兆円程度の収入を期待できることになる。 しかし、30年代の後半には経常収支の赤字が6兆円を超える。そうなると、積立金の取り崩しが必要になり、残高が減り始める。すると運用収益も減少する。こうして、積立金の残高が急速に減少するという悪循環が始まる。 したがって、運用益を考慮したとしても、上で述べた収支見通しに大きな違いはないだろう。破綻時点が若干後にずれることはあるだろうが、大勢に影響はないと考えられる。 しかも、運用収益がどうなるかは、将来の経済情勢に依存する。積立金の評価が減少することもある。 だから、運用収入をあてにすることはできない。経常収支についてのバランスを実現することが重要だ。 年金財政の破綻を回避するには、年金支給開始年齢の再引き上げの議論を早急に始める必要がある』、「30年代の後半には経常収支の赤字が6兆円を超える。そうなると、積立金の取り崩しが必要になり、残高が減り始める。すると運用収益も減少」、「運用収益がどうなるかは、将来の経済情勢に依存する。積立金の評価が減少することもある。 だから、運用収入をあてにすることはできない。経常収支についてのバランスを実現することが重要だ。 年金財政の破綻を回避するには、年金支給開始年齢の再引き上げの議論を早急に始める必要がある」、同感である。
タグ:年金制度 (その6)(2022年度年金額マイナス改定の裏にある重要課題 マクロ経済スライドの給付調整が再び繰り越し、巷で話題、「公的年金をめぐる2つの提案」の背景 2024年財政検証は出生数減少で一段と厳しく、「年金崩壊」シナリオに現実味 厚生年金は2040年代前半に単年度10兆円赤字で破綻する!?) 東洋経済オンライン 土居 丈朗氏による「2022年度年金額マイナス改定の裏にある重要課題 マクロ経済スライドの給付調整が再び繰り越し」 年金制度の基本を改めて考えるのは、興味深そうだ。 「マクロ経済スライド調整率」は、「給付水準の世代間格差是正と年金財政の維持のために設けられた仕組みで、「2022年度」は、「マイナス0.2%と算出」、「年金額改定率に反映する名目手取り賃金変動率は」「マイナス0.4%と算出」、「これらの和は、マイナス0.6%となる」、なるほど。 「マクロ経済スライドを発動する際には、マクロ経済スライド調整率を加えた最終的な年金額改定率はゼロ%を下限とするというものだ・・・名目手取り賃金変動率自体がマイナスの場合は、マクロ経済スライド調整自体を行わないというルールになっている。 2022年度については、この名目下限措置に該当する状況となり、これに従い年金額改定率は名目手取り賃金変動率と同率とすることとなった」、「マクロ経済スライドは、2004年の年金制度改正で導入されて以降、23年間で2015年度と2019年度と2020年度の3回しか発動されていない。特に、初めて発動されたのが制度導入から10年経ってからだったこともあり、発動されないことにより年金財政の持続可能性に支障を来しうるとして、マクロ経済スライド調整率にキャリーオーバー制を設けることとした。 2018年度の年金額改定以降においてである。 キャリーオーバー制とは、前述の名目下限措置によってマクロ経済スライドが発動されなかった場合、その調整率分を翌年度に繰り越す仕組みである」、「2018年度の年金額改定で、マクロ経済スライドが発動されず、早速キャリーオーバー制が適用され、マイナス0.3%分が2019年度に繰り越された。 2019年度は物価上昇率が上がったことから、名目下限措置には該当せず、マクロ経済スライドが発動されることとなったため、2018年度からキャリーオーバーされた分も含めて年金額改定率に反映された」、なるほど。 「年金財政の持続可能性を高めるために導入したキャリーオーバー制だが、こうも頻繁に用いられるとなると、いざ発動するときにはその調整率が大きくなってしまい、マクロ経済スライドへの反感を募らせる意味でアダとなりかねない」、確かにその通りだ。 「2024年には5年に1度の年金の財政検証が待っている・・・その際には、名目下限措置を撤廃してマクロ経済スライドを毎年度フルに発動できるよう、国民的なコンセンサスを醸成することが望まれる」、確かにその方が、調整がスムースでよさそうだ。 土居 丈朗氏による「巷で話題、「公的年金をめぐる2つの提案」の背景 2024年財政検証は出生数減少で一段と厳しく」 「国民年金加入者も、厚生年金加入者と同様にせめて65歳になるまでは保険料を払えば、老後の年金給付の水準を上げることができる」、その通りだ。 「税財源の確保なくして、基礎年金の給付水準の維持はありえない」、その通りだ。 「10月からは・・・従業員が101人以上の企業に勤務し、2カ月以上の雇用の見込みがある人まで厚生年金に加入することとなった。 しかし、10月から新たに厚生年金の適用を受けることとなった人は、約45万人にとどまる。厚生年金のさらなる適用拡大が今後の課題である」、「約45万人にとどまる」、その理由は何なのだろう。それを解明することが、「さらなる適用拡大」の前提条件だ。 「2024年の年金の財政検証は、こうした人口動態や就業実態を踏まえつつ、保守的な経済見通しに基づいて議論されることが望まれる。年金改革にトラウマを持つ政治家に忖度して、楽観的な経済見通しに基づいて年金制度の改革を先送りしても支障がないと思わせるような試算結果を出すことは、日本の将来のためにならない」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「「年金崩壊」シナリオに現実味、厚生年金は2040年代前半に単年度10兆円赤字で破綻する!?」 「厚生年金」では、「給付は2020年度の48.1兆円」から「40年度には・・・52.1兆円」、「経常収入全体」では。「20年度の47.2兆円から40年度・・・42.3兆円」となる。 「積立金残高」のうち「厚生年金」の分は、「約150兆円・・・40年頃には残高が50兆円程度にまで減る」、「40年度以降は経常収支の単年度の赤字が10兆円を超す。積立金からの繰り入れを続けるとすれば、40年代の前半に積立金が枯渇することになる」、その通りだ。 「30年代の後半には経常収支の赤字が6兆円を超える。そうなると、積立金の取り崩しが必要になり、残高が減り始める。すると運用収益も減少」、「運用収益がどうなるかは、将来の経済情勢に依存する。積立金の評価が減少することもある。 だから、運用収入をあてにすることはできない。経常収支についてのバランスを実現することが重要だ。 年金財政の破綻を回避するには、年金支給開始年齢の再引き上げの議論を早急に始める必要がある」、同感である。
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