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資本市場(その10)(簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”、東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、PBR1倍割れ多発 東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標、千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠) [金融]

資本市場については、本年2月3日に取上げた。今日は、(その10)(簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”、東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、PBR1倍割れ多発 東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標、千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠)である。

先ずは、本年4月27日付け日経ビジネスオンラインが掲載したUBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントのエクイティ・リサーチ・ヘッドの居林 通氏による「簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”」を紹介しよう。Qは聞き手の質問。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00130/00026/
・『居林:「市場は『晴れ、ときどき台風』」を長きにわたって連載させていただきましたが、次回をもって最終回となります。 Q:2016年2月15日の「大荒れ相場? いえ、これって“普通”です。」で始まって、まる7年を越えましたね。長い間ありがとうございました。それではラストは何のお話を。 
・最後のテーマは「日本企業の将来」  居林:株価は市場の誤解による変動の波こそあれ、最終的には業績予想の関数として説明できる、と、この7年間ずっとご説明してきましたよね。 Q:はい。だから「市場が現状を誤解して」、その企業の業績予想に対して高すぎる、あるいは安すぎる株価を付けているときに、周囲の流れに逆らって、胃薬を飲みながら投資しましょう、と。 居林:はい(笑)。長年にわたり日本株を見てきた投資家として、最後に語りたいのは「日本企業の将来」についてです。前半は企業視点、後半は投資家視点となります。今回はボリューム多めです。さて、まずは日本企業の時価総額の変遷を見てみましょう。 各国のトップ100社の時価総額(兆円、中央値)のグラフはリンク先参照) 居林:日本企業の時価総額(中央値)は、2010年の1.3兆円から22年に2.9兆円まで復活しました。しかし、米国の19.6兆円と比べると、この差は一体何なんだと言いたくなりますよね。 Q:何がこの差を生んだのでしょう。 居林:2000年ごろの日本企業には「六重苦」がありました。(1)円高、(2)高い法人税率、(3)厳しい労働・解雇規制、(4)経済連携協定の遅れ、(5)厳しい温暖化ガス削減目標、(6)電力不足です。 このうち、円高と高い法人税率についてはある程度緩和されました。不採算部門の閉鎖を行ったことで利益水準も純利益率で5~6%程度まで戻ってきました。しかし、利益は一定水準出るようになったのですが、日本企業の経営、事業展開、バランスシート、事業価値創造にはまだまだ課題が多いです。 Q:具体的な数字では何がそれを物語っていますか? 居林:それが顕著に表れているのが、日本の上場株の半分程度が簿価割れ(株価純資産倍率=PBRが1倍以下)で取引されているという事実です。 純資産は、企業が「今すぐ負債を返済し終わったとして、会社に残る資産」、いわゆる解散価値ですね。それを発行済み株式数で割ると「1株当たり純資産(BPS)」になる。PBRは株価をBPSで割ったもの。それが1倍以下というのは、「今、株を全部買い占めて会社を買い取って潰すと儲かる」ってことですから、投資家から見れば「この会社は、事業を続けるより売却したほうがいいんじゃないか」という……』、確かに「日本の上場株の半分程度が簿価割れ(株価純資産倍率=PBRが1倍以下)で取引されている」というのは極めて深刻な事態だ。
・『上場企業の約5割が簿価割れ  居林:株価=株主資本+将来の付加価値と考えれば、株価が1株当たり純資産=株主資本よりも下で取引されているということは、投資家はその企業の将来の付加価値がマイナスであると考えていることになります。これは日本企業の低いROE(株主資本純利益率)の結果でもあり、「伊藤リポート」(14年8月、伊藤邦雄一橋大学教授(当時)を座長とする経済産業省の「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」の最終報告書の通称。これに盛り込まれたROE目標水準は8%だった)が鋭く指摘したところです。 なぜこんな事態になったのか。2000年代初めの日本の銀行の不良債権危機、08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災、20年の新型コロナ危機など、予想外のネガティブイベントが次々と起こったため、企業は生き残ることを第一に考え、成長戦略に二の足を踏むことになりました。兎にも角にも負債を減らし、自己資本(株主資本)を積み上げて、その結果、日本企業は大きすぎる自己資本、多すぎる現金を抱え込むようになった。ある程度の安定はもちろん必要ですが、現状維持にきゅうきゅうとしている……かのように見える企業もいくつもある。というのが私の推察です。 しかし、この状況は変わりつつあると考えます。そのきっかけは外圧です。「アクティビスト」と呼ばれる投資家集団が日本の経営陣により効率的な経営を求め始めました。 Q:えっ、アクティビスト。 居林:渋い顔をしましたね(笑)。アクティビストというと、目先の利益しか考えず、日本的経営の美点を破壊する連中、というイメージがあります。00年代のスティール・パートナーズとブルドックソース、英ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンドと電源開発(現Jパワー)のケースを覚えておられる方も多いと思います。 Q:そうそう、もっと遡るとブーン・ピケンズ氏と小糸製作所とか。 居林:アクティビストの提案全てが正しいわけではもちろんありません。しかし、日本市場に上場している企業の50%程度がPBR1倍割れ、つまり簿価割れで取引されているという事態は、どう考えても異常です。 Q:投資家が将来性を見限っている企業が半分って、確かにおかしいですね。 居林:23年に入って東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して、「対応策を強く要請」するという事態になっているほどです』、「企業は生き残ることを第一に考え、成長戦略に二の足を踏むことになりました。兎にも角にも負債を減らし、自己資本(株主資本)を積み上げて、その結果、日本企業は大きすぎる自己資本、多すぎる現金を抱え込むようになった。ある程度の安定はもちろん必要ですが、現状維持にきゅうきゅうとしている……かのように見える企業もいくつもある。というのが私の推察です。 しかし、この状況は変わりつつあると考えます。そのきっかけは外圧です。「アクティビスト」と呼ばれる投資家集団が日本の経営陣により効率的な経営を求め始めました」、なるほど。
・『アクティビストが決断を迫る  居林:そのため、ここにきて日本的経営の良いところは残しつつも、直すべきところは直そう、という機運が高まっています。14年に導入された機関投資家向けの行動規範である「スチュワードシップ・コード」は、それまで物言わぬ株主であった機関投資家を、「責任ある投資家」に変貌させるという大きな転機になり、投資先の企業の株主総会の議案について一定の基準を持って、賛成・反対意見を表明するようになりました。端的に言えば、アクティビストの提案であっても「企業のためになる」と考えれば、国内の機関投資家が賛成に回るケースが出てきたのです。これによって、日本企業の経営は、今まさに大きく変化しようとしています。 Q:具体例では。 居林:オリンパスの例が分かりやすいかもしれませんね。 日経ビジネスでも記事にしていました(「物言う株主味方に最高益へ オリンパス 反骨・竹内改革の内幕」)。 居林:オリンパスは、祖業である顕微鏡や映像事業(デジタルカメラ)と収益源の内視鏡のビジネスの間にシナジーがないので、これを切り分けることで、ディスカウントが減少しました。ロジックはシンプルですが、注意すべきは、なかなか意思決定ができなかった会社が、アクティビストに背中を押してもらうことで、決断できるようになったというところだと思います。 日本の企業の最大の問題は、決められないことだと思います。アクティビティストが入ることで、そこを変えられる可能性がある。 Q:日本企業は変わる余地があるということだと思いますが、実際にどんなことが変わるのでしょうか? 居林:よく聞かれるのが「終身雇用制度はなくなるのか」ですが、中長期的にはそうなるだろうと思いつつ、なかなか急には難しいだろうと思いますので、そこは当面の論点ではありません。そして、それよりも重要なことがあるのです。 Q:何でしょう。 居林:それは、投資家と企業との目的の共有です。これがなければ、日本企業の経営のコペルニクス的転回はないと私は思います。逆に、これができれば、簿価を大きく割りこんでいた企業の価値が上がり始めるはずです』、「日本の企業の最大の問題は、決められないことだと思います。アクティビティストが入ることで、そこを変えられる可能性がある」、「投資家と企業との目的の共有です。これがなければ、日本企業の経営のコペルニクス的転回はないと私は思います。逆に、これができれば、簿価を大きく割りこんでいた企業の価値が上がり始めるはずです」、なるほど。
・『「コングロマリット・ディスカウント」は大企業に限らない  Q:目的の共有でそこまで可能になるんですか。でも目的の共有って、当たり前のような、あり得ないような。これまで共有が難しかったのだとしたら、それはなぜなんでしょうか。 居林:そのからくりはこうです。そもそも日本の企業は、一体何の事業をやっているのか、理解するのが大変です。例えば、業種が化学であったとしても、実際の事業領域は石油化学から特殊化成品や医薬品、繊維まで多岐にわたることが多い。投資家は企業をどのように評価してよいか分かりにくくて、いわゆる「コングロマリット・ディスカウント」に陥ってしまいます。 Q:株価は1つなのに、携わる事業範囲が広すぎて、しかもそれぞれの関連性が低い、ってやつですね。でもそれは大企業に限ったお話では。 居林:ではないのです。コングロマリット・ディスカウントは、祖業から枝分かれして様々な事業を展開する多くの日本企業に当てはまるのです。 コングロマリット・ディスカウントとその解消例としては大企業、例えばオリンパス、ソニーグループ、日立製作所の例がよく出ますが、もう少し小さい企業の例ではJSRが目を引きます。JSRはもともとJapan Synthetic Rubberという名の通り合成ゴムをつくる企業でしたが、その祖業とも言える合成ゴムのエラストマー事業を売却してしまいました。そして、新しく投資をしているのがバイオテックのビジネスです。こんなダイナミックな動きをしている日本企業がいくつか現れています。 一つひとつの事業を切り出したり、他社の同じ事業と合併したりという経営判断をすることで、会社の注力する分野を明確にして、投資・開発リソースを集中する。それによって競争力も上がります。 社員の方も投資家も今後の事業方針を理解しやすくなり、経営・事業に対する理解の解像度が大幅に上昇する、という道筋を描けます。すでに申し上げましたが、株価=企業価値=株主資本+将来の付加価値と分解すれば、簿価割れというのは、「将来の価値がマイナスである」ということを意味しているわけです。企業はプラスの将来価値をつくり出すことができると会社側は投資家に(そして社員、取引先にも)納得してもらう必要があります。日本企業の経営が大きく変わる必要があるとしたら、まずここです。 Q:なるほど。そういう意識でニュースを見ると、「なるほど」と思えるものが出てきていますね。 居林:しかしまだまだこれからです。例えば「スピンオフ(事業を新会社として独立させた後、既存の株主にその株式を交付すること)」への課税繰り延べ制度が17年に整備され、その後改正も加えられたのですが、実績は2件しかありません。これではいけません。 米国では多くのアクティビストが企業の再編の提案をして、実際にそれが行われています。その全てが成功しているとは言えませんが、投資家と経営陣の対話が実際の経営に反映されており、投資家としては評価しやすい。 企業価値は事業利益と投資家の評価の結果のはずです。日本企業は一定水準の事業利益は達成できましたが、手元資金を厚めにするほうに熱心で、将来への投資に及び腰になっている。現状維持に見えては投資家から高い評価を得るのは難しい。) Q:「成長したい」という意志と、それを社内外に分かりやすく伝えることが必要だと。 居林:その通りです。そのためには大胆な事業再編と組織運営の変更は避けて通れないでしょう。これはアクティビストのみならず、日本の機関投資家、個人投資家、東証など各方面から要請されていると言えます』、「「スピンオフ・・・」への課税繰り延べ制度が17年に整備され、その後改正も加えられたのですが、実績は2件しかありません。これではいけません」、「日本企業は一定水準の事業利益は達成できましたが、手元資金を厚めにするほうに熱心で、将来への投資に及び腰になっている。現状維持に見えては投資家から高い評価を得るのは難しい」、なるほど。
・『利益率が低く、将来への投資を株主還元に回している  Q:ちなみに、伊藤リポートで指摘されたROEですが、近年、それなりに上昇しているのではありませんでしたっけ。 居林:はい、ROEは利益÷株主資本ですから、文字通り「株主が預けた資本に対して、どれだけの利益を生んでいるのか」を示します。会計上の株主資本に対する利回りとも呼べるもので、これが高い方が株主としては好ましいわけです。しかし、ROEは比率ですから、分子が大きくなるだけでなく、分母が小さくなっても上昇します。 日本企業のROEは低いと言われますが、よく見ると日本企業は利益率が低いのです。利益額が小さい、ということに目が行きがちですが、実は利益「率」が低いほうがはるかに大きな、構造的問題なのです。 なぜなら、企業の利益率が低いということは、売り上げが減少するとすぐに利益がなくなってしまう、ということを意味するからです。このため、利益率の低い企業、利益額が安定しない企業は、利益率の改善よりも、即効性がある方法、バランスシートに余分に現金を保有しようという動機が生まれます。これがROEの分母を大きくすることにつながるわけです。そして、海外投資家に「日本企業は不況に弱い」といわれる最大の理由だと思います。 結局、将来への不安から財務健全性を高めようとして、負債をどんどん返済し、確かに財務的には健全になった。でも、根本原因の事業の利益「率」は改善していない、厚みを増した手元資金で、自社株買いや増配(株主還元)をすることで株主資本を小さくして、ROEの数値を改善しようとしている、ここまでが日本企業の現状です。 居林:コングロマリット・ディスカウントで「どこに投資すれば成長できるのか」が分かりにくくなり、そもそも投資を行わないことで、将来への期待が持ちにくい。これが日本企業の多くが陥っている状態です。加えて、この負債返済とその後の自社株買いが、将来への投資が不足している状態を引き起こしてしまう、というさらに悪い循環に今日本企業は入ろうとしているように見えます。) Q:株価が業績予想の関数であるならば、将来への投資が足りないし方向性も見えなければ、そりゃ、上がるわけはないですね。 居林:ROEを上げるには分母の株主資本を減少させるという自社株買いや株主還元も確かに有効ですが、本来、重要なのは利益「率」を上げるというところです。ならばどうすれば上がるのか。そのコミュニケーションを投資家と企業が取るためには、「投資家と企業との目的の共有」が必要です。 Q:目的というのは……。 居林:基本的に経営の目的は事業の継続と成長、そしてその存在によって社会に何らかの貢献をなすことでしょう。そのどれにも前向きな投資は欠かせない。日本企業の財務体質はこの10年強で大きく改善しました。手元に現金もたっぷりある。今こそ、技術、設備、人材に投資をすべきタイミングです。 Q:「何に投資して、生き残り、成長して、社会に貢献するか」を、経営者は積極的に、明確に、投資家に、世の中に対して語るときがきましたよ、と。 居林:「成長して社会に役立ちたいと考えているよね」と投資家から聞かれれば、どんな経営者も「もちろん」と答えるでしょう。だけどそこに行動が伴わなければコミュニケーションに必要な信頼が生まれません。この場合の行動とは、コングロマリット・ディスカウントの解消と、成長の目標、そのための手段を経営者がしっかり語ること、だと思います』、「企業の利益率が低いということは、売り上げが減少するとすぐに利益がなくなってしまう、ということを意味するからです。このため、利益率の低い企業、利益額が安定しない企業は、利益率の改善よりも、即効性がある方法、バランスシートに余分に現金を保有しようという動機が生まれます。これがROEの分母を大きくすることにつながるわけです・・・結局、将来への不安から財務健全性を高めようとして、負債をどんどん返済し、確かに財務的には健全になった。でも、根本原因の事業の利益「率」は改善していない、厚みを増した手元資金で、自社株買いや増配(株主還元)をすることで株主資本を小さくして、ROEの数値を改善しようとしている、ここまでが日本企業の現状です」、「手元に現金もたっぷりある。今こそ、技術、設備、人材に投資をすべきタイミングです」、なるほど。
・『リーマン・ショック時クラスの長期的なチャンス  Q:上場企業の半分程度が簿価以下で取引されている市場というのは、普通に考えておかしな状態ですよね。 居林:はい、非常に特異な事態だと思います。データを振り返るとこんなに多くの企業が簿価割れで取引されているのはリーマン・ショックのときに近いです。ということは、日本の投資家にとっては長期的なチャンスだと思います。 Q:おお、なるほど! 居林:日本企業は変化の岐路に立っています。中には、事業の選択と投資の集中によって、ポジティブな方向に大きく変化する企業があるでしょう。そうした企業を見つけることができれば、長期視点で投資するという個人投資家の強みを発揮することができるはずです。 Q:さて、企業側の話はここまでにして、これからは投資家としての話をしましょうか。 では、そちらは次回に伺いましょう』、「こんなに多くの企業が簿価割れで取引されているのはリーマン・ショックのときに近いです。ということは、日本の投資家にとっては長期的なチャンスだと思います・・・日本企業は変化の岐路に立っています。中には、事業の選択と投資の集中によって、ポジティブな方向に大きく変化する企業があるでしょう。そうした企業を見つけることができれば、長期視点で投資するという個人投資家の強みを発揮することができるはずです」、前向きな気分になった。

次に、5月8日付け東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670115
・『「スタンダード市場上場の選択申請の決定に関するお知らせ」。2023年3月、スマホゲーム開発企業のマイネットがリリースを公表した。同社は東証プライム市場に上場しているが、近くスタンダード市場に移行すると表明したのだ。 プライム市場を捨て、自らスタンダード市場に「降格」する――。マイネットを皮切りに、こうした宣言をする企業が相次いでいる。4月末時点で、スタンダードへの移行を宣言したプライム上場企業は9社にのぼる。突如訪れた「降格ラッシュ」の背景に何があるのか』、興味深そうだ。
・『プライム市場「背伸び組」  発端は、2022年4月の市場区分見直しにさかのぼる。プライム市場は3つの区分のうち最も上場基準が厳しく、高い流動性やガバナンスが求められる市場として発足した。 ところが、旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった。経過措置の期間は「当分の間」とされており、いつまでプライム市場に残れるのかはわからなかった。改善計画を達成できなかった場合にスタンダード市場へ自動的に移れるのか、改めてスタンダード市場の上場審査が必要なのかも不明確だった。「後者の場合、一斉に移行されると審査の人手が足りなくなる」。証券業界からはこんな悲鳴も上がった』、「旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった」、なるほど。
・『スタンダード移行特例の資料  そこで東証は2023年1月の上場規則改正時、背伸び組に「2択」を迫った。3月期決算企業の場合、2026年3月末時点で上場維持基準に適合しなければ、上場廃止予備軍である「監理銘柄」に指定され、最短で同年9月にも上場廃止となる。スタンダード市場に移る場合には、一度上場廃止してから再度審査を受ける必要がある。 その代わりの選択肢として、早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ。では、どんな企業が特例を利用したのか。以下は、4月末時点でスタンダード市場への移行を表明した企業の一覧だ。いずれの企業もプライム市場の要件である「流通株式時価総額100億円」を満たしていない。 (流通株式時価総額が鬼門 ースタンダード選択企業の上場維持基準の適合状況ーの表はリンク先参照) 各社は旧東証1部からプライム市場に移行するにあたり、東証の指示によって流通株式時価総額を引き上げる計画を策定していた。ところが、業績や株価の低迷によって達成の見込みが立たず、およそ1年で撤回したことになる。 土壌汚染調査や産業廃棄物処理を手がけるダイセキ環境ソリューションは2021年末、3年間で純利益を3倍にする中期経営計画を策定した。ところが、首都圏での大型案件受注が想定を下回り、翌2022年に業績予想を2度下方修正。このまま流通株式時価総額が伸び悩めば上場廃止となるリスクを考慮し、スタンダード市場への移行を決めたという。 東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する(ランキングはこちら)。背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない』、「早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ」、なるほど。
・『「6月」が分水嶺?  降格ラッシュは今後も続くのか。みずほ信託銀行の八木啓至・企業戦略開発部次長は、「6月までにスタンダード市場への移行表明が増えるのではないか」と推測する。 スタンダード市場に無条件で移行できるのは、前述のとおり2023年9月末が期限だ。一方、3月期決算企業の場合、流通株式時価総額などの上場維持基準は3月末時点の数値を基に審査され、未達の場合は6月末までに改善計画を提出ないし更新する必要がある。 スタンダード市場への移行表明が7月以降にずれこむと、それまでにプライム市場への上場を維持するための計画を公表する必要があり、矛盾が生じる。そのため、スタンダード市場を選ぶ企業は改善計画の期限までに移行方針を発表し、定時株主総会で株主に説明するという見立てだ。 ほとんどの企業が旧東証1部から横滑りしたことから「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている』、「「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、望ましいことだ。

第三に、5月8日付け東洋経済オンライン「PBR1倍割れ多発、東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670458
・『東京証券取引所が3月に発表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」が波紋を呼んでいる。プライム・スタンダード市場に上場する全企業に対し、年に1回資本コストや資本収益性、市場評価について取締役会で分析・評価をすることや、改善に向けた計画の開示などを要請した。 東証は現状分析にROE(自己資本利益率)やWACC(負債・株式の加重平均資本コスト)、PBR(株価純資産倍率)といった指標を使うことを例示する。中でも、最も問題になったのはPBR1倍未満の会社への対応だ。 PBRが1倍を割っているということは、時価総額が純資産の大きさを下回っている状態ともいえる。時価総額は、その会社の成長性などを加味した上で、市場がつけた評価だ。つまり市場が、「事業をやめて資産を株主に分配した方が合理的だ」と評価していることを意味する。 地方銀行など、構造的に低いPBRにあえぐ企業にとっては東証の掲げる「1倍」という数字は、すぐに達成できる現実的な数字でもない。PBRがおよそ0.5倍のある上場企業幹部は「株主還元でどうにかなる話ではない。結局地道に利益を積み上げていくしかないが、それでも限界がある」と嘆く』、「PBRが1倍を割っているということは、時価総額が純資産の大きさを下回っている状態ともいえる。時価総額は、その会社の成長性などを加味した上で、市場がつけた評価だ。つまり市場が、「事業をやめて資産を株主に分配した方が合理的だ」と評価していることを意味する」、厳しい評価だ。
・『「共通言語」がずれていた  東証の要請はPBRだけに着目した取り組みを求めているわけではない。今回開示を求めた意図について、東証上場部の池田直隆課長は「それぞれの企業に資本コストやマーケットからの評価を意識してもらって企業価値の向上に取り組んでほしい。そのための『共通言語』がずれていた」と説明する。業界内順位や売上といった指標だけでなく、株主が意識する指標を使った対話を促したいというわけだ。 東証にとって「PBR1倍」はあくまで「ひとつの目安」(池田課長)に過ぎない。PBR1倍を割っているからといって上場廃止になることもないという。 それでも、PBRにばかり注目が集まるのは、今回の要請に至るまでの経緯が関係している。 この議論は、2022年4月の市場区分見直しが上場企業の価値向上につながっていないという問題意識から始まったものだ。経営者や学者などで作る「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」は同年7月から議論を重ね、1月30日に論点整理を発表。市場区分について「全上場会社の約半数がPBR1倍割れの状況にメスを入れない限り意味がない」と断じた。 日本は、PBR1倍割れの企業の数が際立って多い。「多くの機関投資家の投資対象となるのにふさわしい」とされているプライム市場においても、上場する企業のおよそ半数が1倍割れとなっており、テコ入れは急務だ。比較対象として挙げられたアメリカでは、PBR1倍を割っている企業は2割程度だという。 東証を運営するJPX(日本取引所グループ)の清田瞭CEO(最高経営責任者、当時)は3月30日の記者会見で「1倍割れの銘柄が世界的に見ても飛び抜けて多い。直していかなければいけない。資本のコストを意識したリターンを上げる経営に取り組めば十分可能だという企業はたくさんあると思う」と語った。こうした背景が3月末の要請につながったのだ。 それでも、東証はPBR1倍の改善のみを強調はしなかった。それによって小手先のPBR向上策が蔓延することを懸念したからだ。 PBRは、分母である純資産を自社株買いや増配で減らすことで向上させることができる。ただ、これでは本質的な企業価値向上とは言えない。本来は、その企業自身が優れた業績を上げ、株価を向上させる必要があるのだ。東証としては各社が安易に自社株買いなどに走るといった事態は避けたかった。 その結果、PBRのみを明確に示すこともなく、その手法も縛らないという今回の要請の内容に至ったわけだ。具体的な経営指標によって線引きをしなかったことで、企業にとっては「何をすればいいかわからない」(上場企業幹部)要請になった。目指すべき「資本コストや株価を意識した経営」を達成できている企業が何社あるのかも東証は示していない。このあいまいさが、今回の要請の難しさだろう』、「東証としては各社が安易に自社株買いなどに走るといった事態は避けたかった。 その結果、PBRのみを明確に示すこともなく、その手法も縛らないという今回の要請の内容に至ったわけだ」、なるほど。
・『PBRにフォーカスした新指数  要請ではあいまいな表現を使うことになったが、その裏でPBRにフォーカスした取り組みも出てきた。JPX総研が新たに発表した「JPXプライム150指数」だ。 この指数に採用されるには、プライム上場企業のうち時価総額上位500位に入っていなければならない。その上で、推定エクイティスプレッド(ROE-株主資本コスト)上位75社と、PBR上位75社が選ばれる。こちらは明確にPBRを基準に採用した。 5月末までに詳細な選定方法を公表し、7月3日から算出することになっている。この指数が投資信託などに採用されれば、選ばれた銘柄にとっては株価上昇のチャンスになる。指数作成を担ったJPX総研の三浦崇宏インデックスビジネス部長は「指数に選ばれるために上場企業には経営努力をしてもらい、市場全体の底上げになるようにしたい」と話す。) JPXの一連の取り組みに対して、投資家や企業は早くも反応を示した。もの言う株主(アクティビスト)として知られる投資会社シティインデックスイレブンスはコスモエネルギーホールディングスに対して2月22日、東証の取り組みを理由としてPBRを上げるために大規模な株主還元を求めた。 岡三証券グループも3月24日、PBRが1倍を超えるまで年間10億円以上の自己株買いを継続的に実施すると発表した。表向きは「ひとつの目安」としたPBRは、すでに独り歩きを始めている。今後、企業は、PBR1倍を意識しないわけにはいかなくなるだろう』、「表向きは「ひとつの目安」としたPBRは、すでに独り歩きを始めている。今後、企業は、PBR1倍を意識しないわけにはいかなくなるだろう」、なるほど。
・『上場企業へ増え続ける要求  上場企業に求められる取り組みはPBRだけに止まらない。東証は「PBR1倍」要請を出した3月31日に、プライム市場の上場企業に対して株主との対話状況を公開するよう要請した。このほか、投資家との対話において説明が不十分な例を出して、注意を促した。 要求が増えるにつれて、プライム市場の上場維持コストは増えていく。実際、そのコストに耐えられない企業も出てきている。 「プライム市場の上場維持を選択した場合、2032年までの累計で、約2億円の費用が発生すると試算している。そのコストを負担するよりも、将来の事業拡大に向けた成長投資に資金を振り向けることが、企業価値向上に資する」。 システム開発・運用を手がけるODKソリューションズは3月29日、プライム市場からスタンダード市場に移ることを選択したと発表した。理由は上述のとおり、プライム市場に適合するにはコストがかかりすぎるということだ。 こうした取り組みは、本来プライム市場かどうかに関係なくすべての上場企業が達成できていることが望ましい。区分を変えてスタンダードに行けば、取り組まなくていいというものではないだろう。市場区分の変更を通じて市場全体を底上げするという、東証の目標が達成されるには、まだまだ遠い道のりが待っている』、「「プライム市場の上場維持を選択した場合、2032年までの累計で、約2億円の費用が発生すると試算している。そのコストを負担するよりも、将来の事業拡大に向けた成長投資に資金を振り向けることが、企業価値向上に資する」。 システム開発・運用を手がけるODKソリューションズは3月29日、プライム市場からスタンダード市場に移ることを選択したと発表した。理由は上述のとおり、プライム市場に適合するにはコストがかかりすぎるということだ」、賢明な選択だ。こうした企業がもっと増えてほしいものだ。

第四に、6月15日付け東洋経済オンライン「千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679601
・『仕組み債の販売からいち早く撤退した「優等生」が、まさかの「問題児」だった。 証券取引等監視委員会は6月9日、ちばぎん証券や親会社の千葉銀行などの3社に対し、仕組み債を顧客に十分な説明なく販売していたとして、行政処分するよう金融庁に勧告した。勧告を受けて金融庁は、業務改善命令など行政処分を検討する。 ちばぎん証券と提携し顧客を紹介していた武蔵野銀行も勧告の対象になった。3社は「厳粛に受け止め、改善・再発防止に取り組む」とのコメントをそれぞれ発表した。 仕組み債はこれまでも個人投資家に販売するには適さないと指摘されてきた商品だ。デリバティブ(金融派生商品)を使うことで、高い利回りを可能にする反面、株価や為替に連動して償還条件が変動するなど商品性は複雑。通常の債券とは異なるリスクがあるうえに手数料も不透明だった。 金融庁は昨年5月に公表したリポートで、仕組み債の1つであるEB債(他社株転換可能債)を「購入する意義はほとんどない」と断じたほどだ』、興味深そうだ。
・『販売をいち早く中止したちばぎん証券  2022年8月、金融庁は仕組み債の販売状況について実態把握に乗り出す。地方銀行系証券会社はとくに仕組み債の販売に積極的だったが、強まる逆風を前に販売を次々と取りやめた。その結果、仕組み債を取り扱う地銀の数は2022年3月末に100行中77行あったが、11月末には33行と激減した。 この流れにいち早く反応していたのが、ちばぎん証券だった。金融庁の実態調査前の6月、他社に先駆けて仕組み債の販売を中止した。 親会社の千葉銀頭取は、業界団体である全国地方銀行協会の会長。「協会長として金融庁とやりとりする中で、調査の実施を事前に知ったのでは。抜け駆けだ」(ある地銀関係者)。そんな恨み節まで漏れていた。 ところが、そのちばぎん証券で無理な販売が横行していた。監視委によると、2022年6月末に仕組み債を保有していた約8400人の顧客のうち、3割が同社の基準でも仕組み債の販売に適さない「低リスク投資」の意向を持っていた。また、顧客の多くは70代以上だったほか、投資経験がまったくなかった例もあった。) 仕組み債で生じた損失について苦情も出ていた。証券会社でつくる自主規制法人の日本証券業協会は、3度にわたってちばぎん証券に注意喚起をしていた。ところが顧客からの苦情を「一方的申し出」として真摯に対応してこなかったという。 銀行が注力してきた銀証連携で生じた「歪み」も、今回の勧告を通じて浮き彫りになった。 監視委によると、千葉銀、武蔵野銀は顧客をちばぎん証券に紹介する際、その顧客の投資知識や経験、投資目的などを十分に考慮しないまま、仕組み債の購入を勧めていたという』、「千葉銀、武蔵野銀は顧客をちばぎん証券に紹介する際、その顧客の投資知識や経験、投資目的などを十分に考慮しないまま、仕組み債の購入を勧めていた」、証券販売の基本中の基本が出来ていなかったようだ。
・『武蔵野銀は役員が支店長に積極仲介を指示  証券会社が仕組み債を販売して受け取った手数料の一部は、紹介した銀行の収益になる。銀行の営業職員にとっては自分の実績になるため、手数料の高い仕組み債は、「効率がよい」商品だった。 武蔵野銀に至っては、役員が支店長に対し店別の「仕組み債収益実績表」を送付して、積極的に仲介をするよう指示していた。行員に対しても投資信託や個別株の販売ではなく、仕組み債の販売に特化した研修を行っていた。 ちばぎん証券にとっても、銀行経由の仕組み債販売は大きな収益源だった。監視委によると、同社の営業収益のうち銀行経由の収益は70~80%。そのうちの多くが仕組み債関連で、2021年3月期には営業収益全体の約半分を占めた。 仕組み債の販売をやめた2023年3月期のちばぎん証券の業績は、純営業収益が39億7700万円と前年同期比で39・1%減となり、11億3700万円の営業赤字に沈んでいる。 「地銀が証券子会社をつくる目的は、リスク許容度の高い顧客の大手証券会社への流出を防ぐことだった。ただ、そうした顧客はすでにほかの証券会社と取引しており、もくろみどおりの顧客は想定より少なかった」 金融庁でかつて主任統括検査官を務めた日本資産運用基盤グループの長澤敏夫主任研究員は、地銀系証券が高リスク商品の販売に走る背景を解説する。そのうえで「親会社から早期黒字化を求められ、銀証連携の掛け声の下、金融機関の都合で、本来仕組み債を販売するべきではない顧客に販売を進めたのではないか」と指摘する。 千葉銀は2022年度、有価証券運用を除く本業利益で518億円を稼いだ。地銀99行のうち3位という優等生だった。融資一辺倒では稼げない危機感が招いた顧客軽視の「ツケ」は、大きな痛手となって回ってきた』、「「親会社から早期黒字化を求められ、銀証連携の掛け声の下、金融機関の都合で、本来仕組み債を販売するべきではない顧客に販売を進めたのではないか」と指摘する」、これでは処分されても当然だ。

第五に、6月19日付け東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679779
・『優雅に達観した生活を送っているように見える富裕層。ただ陰では投資や税金対策に頭を抱え、時にもがき苦しむ様子が垣間見える。6月19日発売『週刊東洋経済』の特集「富裕層のリアル国内150万世帯、受難の時代」では、富裕層の偽らざる実像に迫った。 「こちらがドル建て債券に関する資料です。足元で金利が軒並み上昇している状況なので、円債に比べて高い利回りを確保できます」 今年初め、ある国内証券会社の営業マンは富裕層の顧客にそう言って1枚のリストを見せていた。提示したリストに載っているのは、海外の銀行などが発行するドル建ての「永久劣後債」だ。 劣後債は発行した企業などが倒産した場合に、弁済する優先順位が普通社債などに比べて後回しになる(劣後する)債券のことだ。 中でも永久劣後債は、5年後や10年後といった満期の定めがない。そのため、投資家にとってはかなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品だ』、「永久劣後債」は「かなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品」、なるほど。
・『投資リスクが高いAT1債  先ほどのリストには6?7%台の商品がずらりと並んでいるが、その中で10%超というひときわ高い利回りを示していた債券がある。スイス金融大手クレディ・スイス・グループの永久劣後債だ。別名「AT1(その他ティアワン)債」とも呼ばれる。 クレディ・スイスといえば、富裕層でなくとも投資家であれば誰でも耳にしたことがある、世界的な金融グループだ。その債券で10%もの利回りを得られるとあって、多くの富裕層が飛びつくようにして購入していった。 (投資リスクが高いAT1債の図はリンク先参照)) それが一転して、紙くずになってしまったのは今年3月のこと。クレディ・スイスは経営不安が一気に高まり、同国金融最大手のUBSグループと株式交換による救済的な買収で合意。さらに、中央銀行のスイス国立銀行から流動性支援(臨時の資金供給)を受けた。 スイス連邦金融市場監督機構はそうした支援策が、クレディ・スイスのAT1債が規定する「元本削減条項」に抵触するとして、無価値化すると判断したわけだ。 紙くずになったAT1債の総額は約160億スイスフラン。日本円に換算すると約2.4兆円にも上る。金融庁の調べでは、日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令を出すなど、騒動は広がるばかりだ』、「日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」が多くを販売していたとは、やれやれだ。リスクをきちんと説明していたことを願うのみだ。
・『仕組み債でも損失の悲劇  急転直下の事態を受け、4月に入ると日本でも企業や富裕層から悲鳴が次々と上がった。 ゲームソフトなどの開発を手がけるコーエーテクモホールディングスは、AT1債への投資によって41億円の損失を計上。「箱根駅伝」で名をはせた青山学院大学陸上競技部の原晋監督は、「平均年収のウン倍」を失ったとインターネット番組で嘆き、大きな話題になった。 足元では金融分野に強い弁護士事務所の間で、被害を受けた富裕層に広く声をかけて集団訴訟に持ち込もうとする動きが広がり始めている。 訴訟に向けて弁護士らが着目しているのが、販売していた証券会社が元本削減条項などのリスクについて、どれだけ説明責任を果たしていたかという点だ。 実際のところはどうなのか。ある証券会社が作成した契約締結前交付書面を見てみよう。) 同書面を見ると、元本削減条項という欄に「CET1(普通株等ティアワン)比率が7%を下回ったとき」「公的機関による支援を受け入れたとき」という2つの条件が書いてある。今回はこのうちの後者(支援の受け入れ)がトリガーを引いたことになり、書面上は問題がないように見える。 一方で、大手証券会社の幹部は「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める。 つまり、販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれるということだ』、「「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める」、そうであれば、問題は深刻だ。
・『仕組み債でも大きな損失  金融庁の幹部は、AT1債で被害を受けた顧客の中には「仕組み債においても、大きな損失を被った人が一定数いる」と明かす。 仕組み債とは、債券と金融派生商品(デリバティブ)取引を組み合わせた金融商品のこと。デリバティブ取引は個別株価や株価指数、為替相場などに連動しており価格変動が大きいことから、債券ではあるもののかなりハイリスクな商品だ。商品設計が複雑なため、投資初心者はリスクの認識が難しい。 それを地方銀行などが「高利回り商品」などとして販売。富裕層や高齢者に過剰なリスクを取らせていたことが問題となり、規制が強化されてきた経緯がある。 その規制の抜け穴として、証券業界で脚光を浴びたのが、まさにAT1債だった。そこで大きな悲劇が発生するのは、もはや時間の問題だったのかもしれない』、「利回り」追及の余り「過剰なリスクを取らせていた」のであれば、大問題だ。  
タグ:「「プライム市場の上場維持を選択した場合、2032年までの累計で、約2億円の費用が発生すると試算している。そのコストを負担するよりも、将来の事業拡大に向けた成長投資に資金を振り向けることが、企業価値向上に資する」。 「日本の企業の最大の問題は、決められないことだと思います。アクティビティストが入ることで、そこを変えられる可能性がある」、「投資家と企業との目的の共有です。これがなければ、日本企業の経営のコペルニクス的転回はないと私は思います。逆に、これができれば、簿価を大きく割りこんでいた企業の価値が上がり始めるはずです」、なるほど。 「東証としては各社が安易に自社株買いなどに走るといった事態は避けたかった。 その結果、PBRのみを明確に示すこともなく、その手法も縛らないという今回の要請の内容に至ったわけだ」、なるほど。 「PBRが1倍を割っているということは、時価総額が純資産の大きさを下回っている状態ともいえる。時価総額は、その会社の成長性などを加味した上で、市場がつけた評価だ。つまり市場が、「事業をやめて資産を株主に分配した方が合理的だ」と評価していることを意味する」、厳しい評価だ。 東洋経済オンライン「PBR1倍割れ多発、東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標」 「「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、望ましいことだ。 「早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ」、なるほど。 「旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった」、なるほど。 東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」 「こんなに多くの企業が簿価割れで取引されているのはリーマン・ショックのときに近いです。ということは、日本の投資家にとっては長期的なチャンスだと思います・・・日本企業は変化の岐路に立っています。中には、事業の選択と投資の集中によって、ポジティブな方向に大きく変化する企業があるでしょう。そうした企業を見つけることができれば、長期視点で投資するという個人投資家の強みを発揮することができるはずです」、前向きな気分になった。 でも、根本原因の事業の利益「率」は改善していない、厚みを増した手元資金で、自社株買いや増配(株主還元)をすることで株主資本を小さくして、ROEの数値を改善しようとしている、ここまでが日本企業の現状です」、「手元に現金もたっぷりある。今こそ、技術、設備、人材に投資をすべきタイミングです」、なるほど。 「企業の利益率が低いということは、売り上げが減少するとすぐに利益がなくなってしまう、ということを意味するからです。このため、利益率の低い企業、利益額が安定しない企業は、利益率の改善よりも、即効性がある方法、バランスシートに余分に現金を保有しようという動機が生まれます。これがROEの分母を大きくすることにつながるわけです・・・結局、将来への不安から財務健全性を高めようとして、負債をどんどん返済し、確かに財務的には健全になった。 「「スピンオフ・・・」への課税繰り延べ制度が17年に整備され、その後改正も加えられたのですが、実績は2件しかありません。これではいけません」、「日本企業は一定水準の事業利益は達成できましたが、手元資金を厚めにするほうに熱心で、将来への投資に及び腰になっている。現状維持に見えては投資家から高い評価を得るのは難しい」、なるほど。 しかし、この状況は変わりつつあると考えます。そのきっかけは外圧です。「アクティビスト」と呼ばれる投資家集団が日本の経営陣により効率的な経営を求め始めました」、なるほど。 「表向きは「ひとつの目安」としたPBRは、すでに独り歩きを始めている。今後、企業は、PBR1倍を意識しないわけにはいかなくなるだろう」、なるほど。 (その10)(簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”、東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、PBR1倍割れ多発 東証プライム「テコ入れ」の難路 投資家は早くも改善要求、独り歩きする指標、千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠) 資本市場 「企業は生き残ることを第一に考え、成長戦略に二の足を踏むことになりました。兎にも角にも負債を減らし、自己資本(株主資本)を積み上げて、その結果、日本企業は大きすぎる自己資本、多すぎる現金を抱え込むようになった。ある程度の安定はもちろん必要ですが、現状維持にきゅうきゅうとしている……かのように見える企業もいくつもある。というのが私の推察です。 確かに「日本の上場株の半分程度が簿価割れ(株価純資産倍率=PBRが1倍以下)で取引されている」というのは極めて深刻な事態だ。 居林 通氏による「簿価割れが約5割という日本企業の“異常事態”」 日経ビジネスオンライン 東洋経済オンライン「千葉銀など3社で露見した「仕組み債」乱売の実態 銀証連携で生じた「歪み」が処分勧告で明るみに」 システム開発・運用を手がけるODKソリューションズは3月29日、プライム市場からスタンダード市場に移ることを選択したと発表した。理由は上述のとおり、プライム市場に適合するにはコストがかかりすぎるということだ」、賢明な選択だ。こうした企業がもっと増えてほしいものだ。 東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」 興味深そうだ。 「千葉銀、武蔵野銀は顧客をちばぎん証券に紹介する際、その顧客の投資知識や経験、投資目的などを十分に考慮しないまま、仕組み債の購入を勧めていた」、証券販売の基本中の基本が出来ていなかったようだ。 「「親会社から早期黒字化を求められ、銀証連携の掛け声の下、金融機関の都合で、本来仕組み債を販売するべきではない顧客に販売を進めたのではないか」と指摘する」、これでは処分されても当然だ。 「永久劣後債」は「かなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品」、なるほど。 「日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」が多くを販売していたとは、やれやれだ。リスクをきちんと説明していたことを願うのみだ。 「「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める」、そうであれば、問題は深刻だ。 「利回り」追及の余り「過剰なリスクを取らせていた」のであれば、大問題だ。
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