フランス(その4)(フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く、日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】) [世界情勢]
フランスについては、昨年1月3日に取上げた。今日は、(その4)(フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く、日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】)である。
先ずは、本年7月14日付け東洋経済オンラインが掲載した第一生命経済研究所主席エコノミストの田中 理氏による「フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く」を紹介しよう。
・『フランスのパリ郊外のナンテールで6月27日に起きた、北アフリカにルーツを持つ17歳の少年が警察に射殺された事件は、人種差別や自身の置かれた境遇に不満を持ち、国家や社会から見捨てられていると感じている移民二世や三世の若者による暴動を引き起こした。 パリ北東部や南東部の移民やその家族が多く居住するバンリュー地区(フランス語で「郊外」を意味する)やフランス各地の地方都市で、暴徒化した若者が警察署、学校、図書館、市庁舎、バス、路面電車、車、商店などを襲撃・放火し、警官隊や治安維持隊と激しく衝突した。 事件後の数日間で数千人が逮捕され、炎上する車や花火を投げる若者の姿が世界中に伝えられたが、暴動は1週間足らずでひとまず沈静化の兆しをみせている』、「事件後の数日間で数千人が逮捕」、とは大規模だ。
・『移民地区で警察との間に不信感 暴動のきっかけとなった射殺事件は、無免許でレンタカーを運転中だった「ナヘルM」少年(ナヘルは少年の名前、Mは苗字の伏せ字)のスピード違反を目撃した2人の警官が車両を追走。停止した車から降りるように命じられた少年がこれを拒絶し、警官の制止を振り切って車を再発進させたところ、1人の警官が運転席にいた少年に向かって発砲した。 バンリュー地区では、貧困、教育の荒廃、麻薬の密売、暴力犯罪などが蔓延し、不良化した少年と警察による衝突やいざこざが後を絶たず、両者の間に不信感が渦巻いている。2005年には北アフリカ出身の10代の少年2人が警察からの逃走中に変電所に逃げ込み、感電死する事件が発生し、フランス各地で3週間にわたって暴動が続いた。 類似した事件は最近もたびたび発生しているが、今回は少年と警官のやり取りを撮影した動画がソーシャルメディアで拡散され、若者の不満が爆発した。 フランスは古くはアフリカの旧植民地諸国から、最近ではより幅広い国々から多くの移民を受け入れてきた。人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する。 移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される』、「人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する」、「移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される」、なるほど。
・『こうした状況は、フランス語の運用能力やフランスの文化や生活習慣への理解が十分でなかった第一世代の移民だけでなく、フランスで生まれ育った第二世代や第三世代の移民の子孫でもそれほど改善していない。2020年の調査では、両親が移民である子弟の30%が「民族、国籍、人種に基づく差別を経験したことがある」と回答している。 マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの北アフリカ諸国の総称)にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある』、「マグレブ・・・にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある」、やはり就職差別もあるようだ。
・『9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先 暴動が比較的短期間で落ち着きそうなことから、フランス経済への影響は、それほど深刻なものとはならないだろう。とはいえ、フランスはこれから観光シーズンの最盛期に入り、新型コロナウイルスの感染拡大で自粛していた海外からの観光客が押し寄せてくることが期待されていた。暴動の発生を受け、宿泊予約の一部がキャンセルされたようだ。 9月初旬から10月下旬までの間、フランス各地で開催されるラグビー・ワールドカップの準決勝や決勝戦が行われるパリ郊外のスタッド・ド・フランス(サン=ドニ・スタジアム)は、バンリュー地区に隣接し、今回の暴動の発生現場の1つから目と鼻の先だ。 サン=ドニ・スタジアムは、2024年夏のパリ・オリンピック=パラリンピックの開会式・閉会式が行われるメインスタジアムでもあり、選手村、メディアセンター、水泳・バドミントン・バレーボール競技の会場もパリ北部の移民居住地域の中に点在する。 同スタジアム周辺は、2015年のパリ同時多発テロ事件での自爆テロ現場の1つだったほか、2023年のサッカー・チャンピオンズリーグの決勝戦後にも暴動が発生した。 マクロン大統領は就任以来、教育や公共住宅など、バンリュー地区に大規模な投資を行ってきた。この地域では、2024年夏のオリンピック・パラリンピック関連の建設工事も同時に進んでいる』、「9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先」、やはり地価が安いからなのだろう。
・『移民地区への支援に「農村軽視」と批判 一方、過去2度の大統領選挙でマクロン氏と対峙した極右政党・国民連合のルペン氏は、政府によるバンリュー地区への手厚い政策支援の結果、地方の貧しい農村地域が軽視されていると批判してきた。 長期的な財政安定に向けて、国民に年金の支給開始年齢の引き上げでの協力を求めてきたマクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない。 ルペン氏は2022年の大統領選挙での敗北後、極端な政策主張を封印し、責任ある政党への脱皮を有権者にアピールしている。物価高騰による生活困窮や年金改革での国民の反発も追い風に、支持を伸ばしてきた』、「マクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない」、「ルペン氏」はズル賢いようだ。
・『フランスでは大統領の3選が禁止され、マクロン大統領は2027年の大統領選に出馬できない。マクロン大統領の誕生以降、フランス政界を引っ張ってきた伝統的な右派の共和党と伝統的な左派の社会党は党勢凋落が著しい。 今回の問題への対応は、ポスト・マクロンをにらんだ政局展開を左右しかねない。) 事件はフランス内外で政治的な波紋を広げている。 マクロン大統領は6月30日、ブリュッセルで開かれていた欧州連合(EU)首脳会議を途中で切り上げて帰国し、7月2日からのドイツへの公式訪問を取りやめ、事件への対応に当たった。 3月には年金改革を巡る混乱の発生を受け、英国のチャールズ新国王がフランス訪問を延期したばかりで、フランスの内政混乱はマクロン大統領が重視する外交にも少なからず影響を及ぼしている。 EUの二大国であるドイツとフランスは最近、将来的な原子力エネルギー利用の是非、対空防衛システムの共同調達、ウクライナ支援、財政規律の見直し協議など、さまざまな政策分野で足並みの乱れを露呈してきた。 フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていないとも噂される』、「フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていない」、残念ながらその通りだ。
・『独仏のスキマ風はEUにもマイナス フランスは年金改革に暴動と内政が混乱、ドイツはイデオロギーの異なる3党が集まる連立政権内の不協和音に追われ、両国とも内向きになっている。ドイツは合意したはずの政策が連立政権内でひっくり返されることもあり、フランスの政府関係者からは、「ドイツにはまるで3人の首相がいるようだ」との不満の声も聞かれる。 独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない。) フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある。 マクロン大統領の議会会派アンサンブルは、2022年の国民議会(下院)選挙で過半数を失い、法案成立に野党の協力が必要となる』、「独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない」、「フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある」、なるほど。『野党の協力が得られなかった年金改革では、憲法第49条第3項の特例を用いて議会採決なしで法案を成立させ、このことが国民の反発をさらに高めた。秋にはグリーン産業促進法、移民法改正、来年度予算など、重要法案の審議が目白押しだ。議会を迂回する非常手段を多用することは難しい』。
・『与野党の亀裂深まり、政策停滞は必至 これまでのところマクロン大統領は、射殺事件とそれを機に起きた暴動に手堅く対処している。右派の主張に肩入れし過ぎれば、弱者切り捨てや差別容認と受け止められかねず、左派の主張に傾き過ぎると、極右政党の伸長を招く恐れがある。 マクロン大統領は発砲した警官を擁護せず、移民社会への配慮を示すと同時に、若者による暴力行為を厳しく非難している。非常事態を宣言すべきとの極右政党の主張を退け、警官隊や治安維持隊の大規模投入で暴動を比較的早期に沈静化することに成功した。緊急閣議を招集し、事態の収拾に向けて指導力を発揮した。 不安要素もある。 今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている。 極右政党・国民連合のルペン氏は、政府が暴徒や犯罪に甘いと批判し、刑事事件で成人として責任追及される年齢を18歳から16歳に引き下げることや、有罪判決を受けた住民の公営住宅に住む権利や生活保護を受給する権利を剥奪することを訴えている。 極左政党・不服従のフランスを率いるメランション氏は、警察による暴力行為を非難し、低所得者への支援拡大を求めている。 マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない』、「今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている」、「マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない」、「マクロン大統領」は中国寄りの姿勢など、問題が多い。国内政治は難題が多そうだ。
次に、8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏とジャーナリストの増田ユリヤ氏の対談「日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326960
・『フランスでは6月に移民の子の少年が警察官に射殺された事件が起きてから、デモや暴動が続発した。ジャーナリストの増田ユリヤ氏は「日本では『やっぱり移民は問題だ』で終わってしまいがちだが、移民大国フランスでは20年近く試行錯誤を繰り返し、少しずつ前に進んでいる」という。池上彰氏が聞いた』、興味深そうだ。
・『年始からデモが続発 五輪ムードとは程遠いパリ 池上 2024年夏、パリ五輪・パラリンピックが開催されます。五輪は7月26日から、パラリンピックは8月28日からと開催を1年後に控え、日本での関連報道も増えてきています。パリ五輪は第1次世界大戦と第2次世界大戦の「戦間期」である1924年にも開催されており、ちょうど100年目に再び、同じ地で五輪が開かれることでも注目されていますね。 でもパリは五輪ムードには程遠いのではないですか。 増田 パリは年始から「年金支給年齢引き上げ」を決めた政府に反対するデモが続発しており、私は3月下旬に続いて、6月6日にも現地取材に行きました。大規模なデモが起きるという情報があったからなのですが、実際に現地では鉄鋼業や農業など、各組合が呼び掛けて集まった人々が合流した、当初よりも小規模のデモが行われていました。 ナポレオンのお墓があるアンバリッドから、プラス・ディタリー(イタリア広場)までのコースを行進するもので、この政府批判デモにはフランス国内の地方自治体の市長や副市長も参加していたんです。しかも、トリコロールのたすきをかけて。 池上 日本ではなかなか考えられないことですね』、なるほど。
・『移民系の人たちの怒りに火を付けた警察官による少年射殺事件 増田 日本の多くの人はデモと暴動を同一視していて、「パリで大規模なデモ」というと、パリ中のそこかしこで暴徒や抗議者が店舗の窓ガラスを割ったり放火したりと過激な行為に及んでいる、と思っているのではないでしょうか。日本でパリの様子が報じられる際に使われているのは、デモでなく暴動の映像ということも多いです。 6月27日にアフリカにルーツを持つ移民の子の少年が警察官に銃で撃たれ死亡した事件が起きてから抗議活動は激化しており、ベルギーのブリュッセルでも大規模な暴動が起きています。射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた。これが市民、特に移民系の人たちの怒りに火を付けたのです』、「射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた」、「警察」の発砲はやむを得ないと思われるが、現地ならではの事情もあるのだろうか。
・『フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」 増田 フランスでは凶悪犯罪の増加に伴い、2017年に法律が改正され、警察の発砲条件が緩和されています。また、右派のマリーヌ・ルペンを支持するなど移民に対する厳しい措置を望む人たちは、今回の件でも警察側を支持しているようです。 池上 元々フランスはデモの権利を最大限認めている一方、警察国家でもあるんですよね。日本では現行犯か、裁判所による逮捕状がなければ怪しい人物を逮捕できませんが、フランスの警察は警察官自身の判断で、最大24時間、特定の人物の身柄を拘束することができます。今回のデモ、あるいは抗議活動や暴動によって6月末までに3500人が拘束されたと報じられていますが、これは日本でいう「逮捕」とは違います。 増田 多数の拘束者が出るのも無理はない面もあって、事件を口実に暴れたいだけの若者も少なくない、と話す現地の声もあります。 中には動画を撮影してYouTubeで拡散し、再生回数を稼ぐために店舗を襲っているケースもある。日本では「移民問題が噴出した」という定型的な切り口で報じられていますが、移民を巡る問題は、一口ではとても言い表せないほど複雑な課題を孕んでいるのです。 池上 欧州の移民というと多くの人は中東やアフリカから来た人たちのことを思い浮かべると思いますが、フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです。 増田 フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ。もちろん、欧州外から来た移民との間であつれきがあるのは事実ですが』、「フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです」、なるほど。「フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ」、これには驚かされた。
・『学校長が治安の悪い地域に住み込んで毎朝、校門前で生徒と握手する 池上 移民系の若者たちが契機となり、フランス全土に波及した事件は以前にもありました。パリ郊外で北アフリカ出身の移民の若者が窃盗を働き、警察に追われながら変電所に逃げ込んで感電死するという痛ましい事件が起きたのは2005年のことです。 増田 その後、事件が起こった地域では、保育所や小中学校が協力して教育改革に取り組んでいました。例えば、民間団体の協力を得て、フランス各地を回っての歴史教育を行うプログラムの拡充を図ったり、ある中学校では毎朝、校長先生が校門に立って、移民を含む全ての生徒たちとあいさつと握手を交わして学校になじんでもらう努力をしていました。 フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいるのです』、「フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいる」、初めて知ったが、いい試みだ。もっとも、「治安の悪い地域」なら住宅を見つけるのは簡単だが、「治安」が良い「地域」では見つけるのはそんなに簡単にはいかないだろう。
・『階層の違う人々が同じ場所に暮らす、保護者にも語学指導…様々な取り組み 池上 フランスは移民の存在を前提として、どうすればあつれきを減らせるかを考えている。そのためにはまずは教育だ、と。 増田 はい。当時も現地を取材しましたが、鍵になるのはフランス語。学習内容を理解するには不可欠ですから、移民の子どもを対象に補習を行ったり、フランス語を話せない保護者にも学んでもらおうと活動をしたりしている団体もありました。フランス政府も、移民の子でも頑張ればグランゼコール(高等教育機関)にまで行ける教育改革を始めました。 また、移民の多い英国のロンドンで実施されているような、「社会の階層の違う人たちを、あえて同じ場所に住まわせ、交流させる」取り組みも導入しています。もちろん生活上のいざこざもありますが、相互理解を深める以外にないという観点から少しずつ努力を重ね、社会も少しずついい方向へ進みつつあるのも事実なのです。 池上 「移民による暴動」という報道だけでは見えてこない、社会の実相ですね。 増田 日本では「やっぱり移民は問題だ」「差別はなくならない」で終わってしまいがちですが、試行錯誤を繰り返し少しずつ前に進んでいる欧州の取り組みを、まずは知る必要があるでしょう』、私は日本の場合は、「移民」を引き続き制限的に扱えば、さほど問題にならないと考える。
先ずは、本年7月14日付け東洋経済オンラインが掲載した第一生命経済研究所主席エコノミストの田中 理氏による「フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く」を紹介しよう。
・『フランスのパリ郊外のナンテールで6月27日に起きた、北アフリカにルーツを持つ17歳の少年が警察に射殺された事件は、人種差別や自身の置かれた境遇に不満を持ち、国家や社会から見捨てられていると感じている移民二世や三世の若者による暴動を引き起こした。 パリ北東部や南東部の移民やその家族が多く居住するバンリュー地区(フランス語で「郊外」を意味する)やフランス各地の地方都市で、暴徒化した若者が警察署、学校、図書館、市庁舎、バス、路面電車、車、商店などを襲撃・放火し、警官隊や治安維持隊と激しく衝突した。 事件後の数日間で数千人が逮捕され、炎上する車や花火を投げる若者の姿が世界中に伝えられたが、暴動は1週間足らずでひとまず沈静化の兆しをみせている』、「事件後の数日間で数千人が逮捕」、とは大規模だ。
・『移民地区で警察との間に不信感 暴動のきっかけとなった射殺事件は、無免許でレンタカーを運転中だった「ナヘルM」少年(ナヘルは少年の名前、Mは苗字の伏せ字)のスピード違反を目撃した2人の警官が車両を追走。停止した車から降りるように命じられた少年がこれを拒絶し、警官の制止を振り切って車を再発進させたところ、1人の警官が運転席にいた少年に向かって発砲した。 バンリュー地区では、貧困、教育の荒廃、麻薬の密売、暴力犯罪などが蔓延し、不良化した少年と警察による衝突やいざこざが後を絶たず、両者の間に不信感が渦巻いている。2005年には北アフリカ出身の10代の少年2人が警察からの逃走中に変電所に逃げ込み、感電死する事件が発生し、フランス各地で3週間にわたって暴動が続いた。 類似した事件は最近もたびたび発生しているが、今回は少年と警官のやり取りを撮影した動画がソーシャルメディアで拡散され、若者の不満が爆発した。 フランスは古くはアフリカの旧植民地諸国から、最近ではより幅広い国々から多くの移民を受け入れてきた。人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する。 移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される』、「人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する」、「移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される」、なるほど。
・『こうした状況は、フランス語の運用能力やフランスの文化や生活習慣への理解が十分でなかった第一世代の移民だけでなく、フランスで生まれ育った第二世代や第三世代の移民の子孫でもそれほど改善していない。2020年の調査では、両親が移民である子弟の30%が「民族、国籍、人種に基づく差別を経験したことがある」と回答している。 マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの北アフリカ諸国の総称)にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある』、「マグレブ・・・にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある」、やはり就職差別もあるようだ。
・『9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先 暴動が比較的短期間で落ち着きそうなことから、フランス経済への影響は、それほど深刻なものとはならないだろう。とはいえ、フランスはこれから観光シーズンの最盛期に入り、新型コロナウイルスの感染拡大で自粛していた海外からの観光客が押し寄せてくることが期待されていた。暴動の発生を受け、宿泊予約の一部がキャンセルされたようだ。 9月初旬から10月下旬までの間、フランス各地で開催されるラグビー・ワールドカップの準決勝や決勝戦が行われるパリ郊外のスタッド・ド・フランス(サン=ドニ・スタジアム)は、バンリュー地区に隣接し、今回の暴動の発生現場の1つから目と鼻の先だ。 サン=ドニ・スタジアムは、2024年夏のパリ・オリンピック=パラリンピックの開会式・閉会式が行われるメインスタジアムでもあり、選手村、メディアセンター、水泳・バドミントン・バレーボール競技の会場もパリ北部の移民居住地域の中に点在する。 同スタジアム周辺は、2015年のパリ同時多発テロ事件での自爆テロ現場の1つだったほか、2023年のサッカー・チャンピオンズリーグの決勝戦後にも暴動が発生した。 マクロン大統領は就任以来、教育や公共住宅など、バンリュー地区に大規模な投資を行ってきた。この地域では、2024年夏のオリンピック・パラリンピック関連の建設工事も同時に進んでいる』、「9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先」、やはり地価が安いからなのだろう。
・『移民地区への支援に「農村軽視」と批判 一方、過去2度の大統領選挙でマクロン氏と対峙した極右政党・国民連合のルペン氏は、政府によるバンリュー地区への手厚い政策支援の結果、地方の貧しい農村地域が軽視されていると批判してきた。 長期的な財政安定に向けて、国民に年金の支給開始年齢の引き上げでの協力を求めてきたマクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない。 ルペン氏は2022年の大統領選挙での敗北後、極端な政策主張を封印し、責任ある政党への脱皮を有権者にアピールしている。物価高騰による生活困窮や年金改革での国民の反発も追い風に、支持を伸ばしてきた』、「マクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない」、「ルペン氏」はズル賢いようだ。
・『フランスでは大統領の3選が禁止され、マクロン大統領は2027年の大統領選に出馬できない。マクロン大統領の誕生以降、フランス政界を引っ張ってきた伝統的な右派の共和党と伝統的な左派の社会党は党勢凋落が著しい。 今回の問題への対応は、ポスト・マクロンをにらんだ政局展開を左右しかねない。) 事件はフランス内外で政治的な波紋を広げている。 マクロン大統領は6月30日、ブリュッセルで開かれていた欧州連合(EU)首脳会議を途中で切り上げて帰国し、7月2日からのドイツへの公式訪問を取りやめ、事件への対応に当たった。 3月には年金改革を巡る混乱の発生を受け、英国のチャールズ新国王がフランス訪問を延期したばかりで、フランスの内政混乱はマクロン大統領が重視する外交にも少なからず影響を及ぼしている。 EUの二大国であるドイツとフランスは最近、将来的な原子力エネルギー利用の是非、対空防衛システムの共同調達、ウクライナ支援、財政規律の見直し協議など、さまざまな政策分野で足並みの乱れを露呈してきた。 フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていないとも噂される』、「フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていない」、残念ながらその通りだ。
・『独仏のスキマ風はEUにもマイナス フランスは年金改革に暴動と内政が混乱、ドイツはイデオロギーの異なる3党が集まる連立政権内の不協和音に追われ、両国とも内向きになっている。ドイツは合意したはずの政策が連立政権内でひっくり返されることもあり、フランスの政府関係者からは、「ドイツにはまるで3人の首相がいるようだ」との不満の声も聞かれる。 独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない。) フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある。 マクロン大統領の議会会派アンサンブルは、2022年の国民議会(下院)選挙で過半数を失い、法案成立に野党の協力が必要となる』、「独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない」、「フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある」、なるほど。『野党の協力が得られなかった年金改革では、憲法第49条第3項の特例を用いて議会採決なしで法案を成立させ、このことが国民の反発をさらに高めた。秋にはグリーン産業促進法、移民法改正、来年度予算など、重要法案の審議が目白押しだ。議会を迂回する非常手段を多用することは難しい』。
・『与野党の亀裂深まり、政策停滞は必至 これまでのところマクロン大統領は、射殺事件とそれを機に起きた暴動に手堅く対処している。右派の主張に肩入れし過ぎれば、弱者切り捨てや差別容認と受け止められかねず、左派の主張に傾き過ぎると、極右政党の伸長を招く恐れがある。 マクロン大統領は発砲した警官を擁護せず、移民社会への配慮を示すと同時に、若者による暴力行為を厳しく非難している。非常事態を宣言すべきとの極右政党の主張を退け、警官隊や治安維持隊の大規模投入で暴動を比較的早期に沈静化することに成功した。緊急閣議を招集し、事態の収拾に向けて指導力を発揮した。 不安要素もある。 今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている。 極右政党・国民連合のルペン氏は、政府が暴徒や犯罪に甘いと批判し、刑事事件で成人として責任追及される年齢を18歳から16歳に引き下げることや、有罪判決を受けた住民の公営住宅に住む権利や生活保護を受給する権利を剥奪することを訴えている。 極左政党・不服従のフランスを率いるメランション氏は、警察による暴力行為を非難し、低所得者への支援拡大を求めている。 マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない』、「今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている」、「マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない」、「マクロン大統領」は中国寄りの姿勢など、問題が多い。国内政治は難題が多そうだ。
次に、8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏とジャーナリストの増田ユリヤ氏の対談「日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326960
・『フランスでは6月に移民の子の少年が警察官に射殺された事件が起きてから、デモや暴動が続発した。ジャーナリストの増田ユリヤ氏は「日本では『やっぱり移民は問題だ』で終わってしまいがちだが、移民大国フランスでは20年近く試行錯誤を繰り返し、少しずつ前に進んでいる」という。池上彰氏が聞いた』、興味深そうだ。
・『年始からデモが続発 五輪ムードとは程遠いパリ 池上 2024年夏、パリ五輪・パラリンピックが開催されます。五輪は7月26日から、パラリンピックは8月28日からと開催を1年後に控え、日本での関連報道も増えてきています。パリ五輪は第1次世界大戦と第2次世界大戦の「戦間期」である1924年にも開催されており、ちょうど100年目に再び、同じ地で五輪が開かれることでも注目されていますね。 でもパリは五輪ムードには程遠いのではないですか。 増田 パリは年始から「年金支給年齢引き上げ」を決めた政府に反対するデモが続発しており、私は3月下旬に続いて、6月6日にも現地取材に行きました。大規模なデモが起きるという情報があったからなのですが、実際に現地では鉄鋼業や農業など、各組合が呼び掛けて集まった人々が合流した、当初よりも小規模のデモが行われていました。 ナポレオンのお墓があるアンバリッドから、プラス・ディタリー(イタリア広場)までのコースを行進するもので、この政府批判デモにはフランス国内の地方自治体の市長や副市長も参加していたんです。しかも、トリコロールのたすきをかけて。 池上 日本ではなかなか考えられないことですね』、なるほど。
・『移民系の人たちの怒りに火を付けた警察官による少年射殺事件 増田 日本の多くの人はデモと暴動を同一視していて、「パリで大規模なデモ」というと、パリ中のそこかしこで暴徒や抗議者が店舗の窓ガラスを割ったり放火したりと過激な行為に及んでいる、と思っているのではないでしょうか。日本でパリの様子が報じられる際に使われているのは、デモでなく暴動の映像ということも多いです。 6月27日にアフリカにルーツを持つ移民の子の少年が警察官に銃で撃たれ死亡した事件が起きてから抗議活動は激化しており、ベルギーのブリュッセルでも大規模な暴動が起きています。射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた。これが市民、特に移民系の人たちの怒りに火を付けたのです』、「射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた」、「警察」の発砲はやむを得ないと思われるが、現地ならではの事情もあるのだろうか。
・『フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」 増田 フランスでは凶悪犯罪の増加に伴い、2017年に法律が改正され、警察の発砲条件が緩和されています。また、右派のマリーヌ・ルペンを支持するなど移民に対する厳しい措置を望む人たちは、今回の件でも警察側を支持しているようです。 池上 元々フランスはデモの権利を最大限認めている一方、警察国家でもあるんですよね。日本では現行犯か、裁判所による逮捕状がなければ怪しい人物を逮捕できませんが、フランスの警察は警察官自身の判断で、最大24時間、特定の人物の身柄を拘束することができます。今回のデモ、あるいは抗議活動や暴動によって6月末までに3500人が拘束されたと報じられていますが、これは日本でいう「逮捕」とは違います。 増田 多数の拘束者が出るのも無理はない面もあって、事件を口実に暴れたいだけの若者も少なくない、と話す現地の声もあります。 中には動画を撮影してYouTubeで拡散し、再生回数を稼ぐために店舗を襲っているケースもある。日本では「移民問題が噴出した」という定型的な切り口で報じられていますが、移民を巡る問題は、一口ではとても言い表せないほど複雑な課題を孕んでいるのです。 池上 欧州の移民というと多くの人は中東やアフリカから来た人たちのことを思い浮かべると思いますが、フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです。 増田 フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ。もちろん、欧州外から来た移民との間であつれきがあるのは事実ですが』、「フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです」、なるほど。「フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ」、これには驚かされた。
・『学校長が治安の悪い地域に住み込んで毎朝、校門前で生徒と握手する 池上 移民系の若者たちが契機となり、フランス全土に波及した事件は以前にもありました。パリ郊外で北アフリカ出身の移民の若者が窃盗を働き、警察に追われながら変電所に逃げ込んで感電死するという痛ましい事件が起きたのは2005年のことです。 増田 その後、事件が起こった地域では、保育所や小中学校が協力して教育改革に取り組んでいました。例えば、民間団体の協力を得て、フランス各地を回っての歴史教育を行うプログラムの拡充を図ったり、ある中学校では毎朝、校長先生が校門に立って、移民を含む全ての生徒たちとあいさつと握手を交わして学校になじんでもらう努力をしていました。 フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいるのです』、「フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいる」、初めて知ったが、いい試みだ。もっとも、「治安の悪い地域」なら住宅を見つけるのは簡単だが、「治安」が良い「地域」では見つけるのはそんなに簡単にはいかないだろう。
・『階層の違う人々が同じ場所に暮らす、保護者にも語学指導…様々な取り組み 池上 フランスは移民の存在を前提として、どうすればあつれきを減らせるかを考えている。そのためにはまずは教育だ、と。 増田 はい。当時も現地を取材しましたが、鍵になるのはフランス語。学習内容を理解するには不可欠ですから、移民の子どもを対象に補習を行ったり、フランス語を話せない保護者にも学んでもらおうと活動をしたりしている団体もありました。フランス政府も、移民の子でも頑張ればグランゼコール(高等教育機関)にまで行ける教育改革を始めました。 また、移民の多い英国のロンドンで実施されているような、「社会の階層の違う人たちを、あえて同じ場所に住まわせ、交流させる」取り組みも導入しています。もちろん生活上のいざこざもありますが、相互理解を深める以外にないという観点から少しずつ努力を重ね、社会も少しずついい方向へ進みつつあるのも事実なのです。 池上 「移民による暴動」という報道だけでは見えてこない、社会の実相ですね。 増田 日本では「やっぱり移民は問題だ」「差別はなくならない」で終わってしまいがちですが、試行錯誤を繰り返し少しずつ前に進んでいる欧州の取り組みを、まずは知る必要があるでしょう』、私は日本の場合は、「移民」を引き続き制限的に扱えば、さほど問題にならないと考える。
タグ:フランス (その4)(フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く、日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】) 東洋経済オンライン 田中 理氏による「フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く」 「事件後の数日間で数千人が逮捕」、とは大規模だ。 「人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する」、「移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される」、なるほど。 「マグレブ・・・にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある」、やはり就職差別もあるようだ。 「9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先」、やはり地価が安いからなのだろう。 「マクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない」、「ルペン氏」はズル賢いようだ。 「フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていない」、残念ながらその通りだ。 「独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない」、「フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある」、なるほど。 『野党の協力が得られなかった年金改革では、憲法第49条第3項の特例を用いて議会採決なしで法案を成立させ、このことが国民の反発をさらに高めた。秋にはグリーン産業促進法、移民法改正、来年度予算など、重要法案の審議が目白押しだ。議会を迂回する非常手段を多用することは難しい』。 「今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている」、「マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない」、「マクロン大統領」は中国寄りの姿勢など、問題が多い。国内政治は難題が多そうだ。 ダイヤモンド・オンライン 池上 彰氏 増田ユリヤ氏の対談「日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】」 「射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた」、「警察」の発砲はやむを得ないと思われるが、現地ならではの事情もあるのだろうか。 「フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです」、なるほど。 「フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ」、これには驚かされた。 「フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいる」、初めて知ったが、いい試みだ。 もっとも、「治安の悪い地域」なら住宅を見つけるのは簡単だが、「治安」が良い「地域」では見つけるのはそんなに簡単にはいかないだろう。 私は日本の場合は、「移民」を引き続き制限的に扱えば、さほど問題にならないと考える。
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