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異次元緩和政策(その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界) [金融]

異次元緩和政策については、昨年4月23日に取上げた。異次元緩和政策の全面的見直しを踏まえた今日は、(その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界)である。なお、「異次元緩和政策」は今回で終わりとし、次回からは金融政策にタイトルを変更する予定である。

先ずは、本年3月2日付け0現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126001?imp=0
・『日本銀行が2024年3月18日、19日に開催された金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の変更に踏み切った。利上げは17年ぶりであり、長く続いたゼロ金利政策がいよいよ終わりを告げる。今回の決定は、大規模緩和策によって激しく歪んだ日本の金融システムを正常化するための、長く険しい道のスタートラインに過ぎない。金利の上昇によって、むしろ国民生活への逆風は強くなる可能性が高く、ここからがむしろ本番といえるかもしれない』、興味深そうだ。
・『「インフレ」「デフレ」は悪いことなのか  日銀は2013年4月から市場に資金を大量投入して国債を買い上げ、金利をほぼゼロに抑える大規模緩和策を実施してきた。短期金利の調整だけでは不十分と判断した日銀は、本来、政策の対象外である長期金利にもその範囲を広げ、「イールドカーブ・コントロール」と呼ばれる長短金利操作に染めた。 短期間に大量の資金が提供されれば、市場にはインフレ期待が生じる。インフレ期待が生じれば、多くの企業が設備投資などを活性化させ、これが実体経済にプラスの効果を与えると、当時の安倍政権は考えていた。安倍政権は「デフレ脱却」を政治的なスローガンとして掲げていたが、本来、デフレ脱却という言葉は政治的スローガンにはなりえない。 なぜなら、インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス(=大規模緩和策)というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう』、「インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス・・・というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう」、その通りだ。
・『デフレだから不景気になったわけではない  上記で説明したように、当初、日本政府はインフレ期待に働きかけることによって設備投資を起点とする持続的な成長を実現しようと試みた。経済学的な一般論として市場にインフレ期待が醸成されれば、現金保有は相対的に不利になるため設備投資が増加する可能性が出てくる。 だが、それは経済全体が健全であればの話であって、将来に対する不安材料が大き過ぎたり、経済が機能不全を起こしている状況では、企業は設備投資に資金を回さない。不動産や外貨など安全資産に資金を退避させるにとどまり、インフレだけが進んで、実体経済はまったくよくならないというシナリオが濃厚となる。 筆者を含め、一部の専門家は、経済全体の仕組みを変えていく政策とセットにしなければ、単に物価上昇だけが進み、景気は良くならず、国民生活が苦しくなる可能性について指摘してきた。 だが当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった。 ちなみに、不景気の時にはモノが売れず、物価が下がりがちなので、デフレになりやすい。したがって景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう』、「当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった・・・景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう」、その通りだ。
・『本当の「円安最大の原因」  だが多くの国民が、「物価が上がって景気が良くなる」という意味で、「デフレ脱却」という言葉を理解しただろうし、ひょっとすると安倍氏自身も、そう思っていたかもしれない。さらに言えば、今でも大半の人がデフレ脱却=好景気と理解しているのではないだろうか。 だが何度も説明しているように、インフレ、デフレと景気が良いことは何の関係もなく、私たちの生活水準向上とも関係がない。景気が良くならなければ、私たちの生活水準も上がらないが、現状では景気が良くなっていない以上、私たちの生活も向上していない。むしろインフレによって物価が上がり、逆に生活が苦しくなっているのではないだろうか。 アベノミクスによる大規模緩和策は、世界でも突出した水準であり、失敗した際に被るリスクも超ド級である。ある意味で日本人は世界の中で自ら先頭に立ち、失敗した場合のリスクが致命的に大きい政策を、危険を顧みず実施するという、大変な役割を買って出た。 想定されていた通り、十分な成果は得られず、600兆円という空前絶後の国債の山という時限爆弾のみが残ってしまった。過去2年、日本円は1ドル=100円台から150円台まで、一気に3分の2まで減価している。 メディアでは日米の金利差が原因と報じているが、厳密にいえば金利差で為替が動くことはありえない。最終的には日米のマネー供給量の違い(とそれにともなう物価見通し)が円安最大の原因であり、エベレストのように積みあがった600兆円の国債の処理ができていないことが、激しい円安を招いているのだ。 GDP(国内総生産)と同規模のマネーを短期間で市場に大量供給しているにもかかわらず、それを吸収する経済活動の拡大が見込めない以上、当然のことながら、その大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった』、「大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった」、その通りだ。
・『正常化のタイミングは今しかない  日銀の本音としては、すぐにでも大規模緩和策をやめ、金利を引き上げないと日本経済が最悪の事態を迎える可能性があり、このタイミングでの政策転換以外、選択肢など存在しなかっただろう。 だが、多くの日本人はこうした現状について理解しておらず、景気にとって逆風となる金利の引き上げを実施することには大きな政治的ハードルを伴う。 しかし「神風」といってしまうと不謹慎かもしれないが、今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう。 つい最近まで、自民党の安倍派を中心に、日銀のマイナス金利解除について「アベノミクスを否定するのか!」といった意見が出され、日銀の行動を強くけん制していた。だが、裏金問題が政権を揺るがす事態にまで発展し、今の自民党内にアベノミクス云々を議論している余裕はない。 逆に言えば、今のタイミングしか日銀にとっては正常化に踏み切ることはできず、ここで失敗すれば半永久的にタイミングを失う可能性が高かった。その意味では、日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない』、「今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう・・・日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない」、その通りだ。

次に、3月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本銀行元副総裁・日興リサーチセンター理事長の山口廣秀氏インタビュー:「前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340302
・『日本銀行が3月18、19日に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除する可能性が高まっている。今後の景気・物価動向、金利の見通し、異次元緩和からの出口戦略の進め方などについて日銀元副総裁である山口廣秀・日興リサーチセンター理事長へのインタビューを2回に分けてお届けする。前編では、もっと早くマイナス金利解除をすべきだった主張する山口氏に、2%物価目標達成の可否、金利引き上げの着地点などについて聞いた』、本音で語ることが多い「山口氏」への「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『足元の景気に一服感 物価上昇が消費を抑制  Q:2024年の日本経済の動向をどうみますか。 A:足元、景気全体として一服感がでています。23年7~9月期はマイナス成長となり、10~12月期は小幅のプラス成長となるなど、一進一退です。物価上昇が影響して個人消費が停滞しています。世界経済が減速していくという見通しもあり、企業は設備投資に慎重になっています。 欧州の景気は停滞していますし、不動産バブルの崩壊で中国経済も振るいません。米国の景気も底堅いと言いながら減速しているのは間違いありません。日本の輸出を巡る環境も徐々に悪くなっています。 個人消費はいまひとつ、設備投資も伸び悩み、輸出は後退ということで景気に一服感が出るのも仕方がない状況です。 今後も物価の上昇は続くと思われますから、急減することはないにしても個人消費は下振れる可能性は高いでしょう。輸出環境が悪化すると設備投資はやはり伸び悩みます。海外経済の減速は続くでしょうから、日本の景気も下振れの公算が大きくなってくるとみています。 私が当初予測していたよりは、景気のスローダウンが早く来ています。物価上昇による個人消費の下振れ、先行き警戒感による企業の設備投資姿勢の慎重化が思っていたより強いためです。 Q:予想より物価上昇が個人消費を押し下げる力が強くなった原因はどこにあるのでしょうか。 A:物価動向に対し消費者がやはり敏感であることと、実質賃金のマイナスが続いていることです。ただ、目先、消費者物価の上昇率はやや低下してくると予想しています。春闘で昨年を上回る賃上げが実現すれば実質賃金も上向きますから、個人消費の下支えになると思います。 マイナス金利解除の鍵を握るのは24年春闘における賃上げと今後の物価が安定的に2%の上昇を維持できるかどうかだ。次ページ以降、山口廣秀氏に賃上げ動向、物価動向を検証してもらい、マイナス金利解除、YCC(イールドカーブ・コントロール)の行方について聞いた』、「バランスが取れた見方だ」。
・『物価は下げ止まり反転 再び3%台乗せも(Qは聞き手の質問、Aは山口氏の回答)  Q:賃上げ率はどうみていますか。 A:大企業の経営者の方と話をしていると、人手不足の折、人材を確保するために賃金を上げざるを得ないと考えている方が少なくありません。地方の中小企業の経営者の見方も同じです。最低でも昨年と同水準、うまくすると昨年を上回る賃上げになる可能性は高いと思います。 そうなれば実質賃金もプラスに転じる可能性が出てきます。個人消費が景気の足を引っ張るようなことにはならなくなるでしょう。ただ、日本の消費者は慎重なので消費が盛り上がるということはないとみています。 (山口氏の略歴はリンク先参照) Q:物価はスローダウンしていくのですね。 A:ただ、そのペースは速くない。今回の物価上昇は輸入インフレから始まりました。そこに賃上げが織り込まれ、物価上昇がサービス価格にまで広がってきて、それがまた財の価格上昇につながるホームメードインフレの状況になってきています。物価上昇はある程度の期間持続すると考えます。 原油価格の動きには不透明感はありますが、円相場の対前年比は物価を押し上げる方向に働いてくるはずです。従って、物価はしばらくすると下げ止まって反転上昇に向かうのではないでしょうか。場合によっては3%前後の水準にまで再び上昇することも十分あると思っています。 ただ、私自身は、賃金と物価の好循環という捉え方をしていません。 Q:それはどういう意味ですか。 A:賃金は中央銀行にとって政策目標ではありません。賃金が上がるかどうかは、景気の状況、労働需給、生産性の動向に関わってきます。ですから、賃金と物価の好循環という単純な二つの変数で回っていくものではありません。 景気が良くなれば物価が上がる、物価が上がっていくと企業の売り上げが伸びる、売り上げが伸びれば収益が上向き賃金が上がる。こういう循環が働きはするのですが、持続するかどうかは企業の生産性向上の持続力に左右されます。景気が拡大し、生産性が向上しなければ賃金は上昇しません。 Q:物価はすんなりと下がってはいかないということですね。 A:物価の動きは粘着的です。景気の動きに直ちに連動するということではありません。日本銀行にとっては苦しい状況になると思います。景気は先ほど触れたようにスローダウンしていきます。物価は再び上向きに転じます。スタグフレーションとまでは言いませんが、そういったニュアンスの経済状況になりかねません。景気と物価の両にらみとなると、政策運営で日銀にとって悩ましい局面になるでしょう。 Q:その場合、景気と物価のどちらを優先すべきなのでしょうか。 A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです』、「A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです」、さすがにしっかりした見方だ。
・『マイナス金利解除後0.1%刻みで2~3回の利上げ  Q:マイナス金利解除はどのタイミングですべきと考えていますか。 A:私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません。いずれにしても、やろうとしているのはマイナス0.1%の金利をゼロにする程度です。経済にそんなに抑制的な力は働きません。 現在は、金融機関が日銀に預ける当座預金のうち一部である政策金利残高に適用される金利をマイナス0.1%にしていて、それを政策金利としていますが、政策金利は(金融機関同士が資金を融通し合うコール市場の)無担保コール翌日物に変えたらいいと思っています。今の状態は分かりにくいです。 Q:マイナス金利からゼロ金利にしてさらに引き上げていく可能性はありますか。 A:あると思います。ただ、日銀幹部の発言からすると0.1%刻みで進めていくとして2回か3回でしょう。米国は今後、利下げに転じるにしてもこれまでの利上げの効果が表れて景気が減速することは避けられません。加えて、欧州や中国の景気の停滞を考えると追加の利上げを進めるに当たって日銀はかなり悩むことになるでしょう。 Q:YCCの枠組みについては、どうすべきだと考えていますか。 A:YCCは、できるだけ早期に撤廃することが必要だと考えています。YCCの形骸化がいわれていますが、形骸化と撤廃は違います。高い物価上昇が続くと、YCCによって長期金利の上昇が抑えられてしまう。要するに、YCCによって市場の声が封じられるということなので、この声が聞こえるようにしておくことが必要です。 Q:現在の米国景気はあまり減速していないにもかかわらず、インフレ率は低下してきています。金融政策の選択の幅が広がっているとみていいのでしょうか。 A:FRB(米連邦準備制度理事会)が思っているほどに物価は下がっていません。物価目標である2%に低下していく道筋が見えておらず、自信が持てないというのが今のパウエル議長の心境ではないでしょうか。 加えて、NYCB(ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ)に代表される中小金融機関の経営悪化の問題が生じています。ちょうど1年前にはSVB(シリコンバレーバンク)の破綻がありました。こうした金利引き上げの影響も考慮しながら、パウエル議長はこの先の政策運営について迷っている状況だと思います。 金利を上げると資産価格が下がり、資産価格が下がると金融機関のバランスシートが傷みます。かといって金融緩和をすれば資産価格の低下は止まりますが、インフレが再燃しかねません。 このジレンマにパウエル議長は立たされているとみています。資産価格の動向にかなり気を使っていると思います。 Q:日本では、欧米の金融システムの話はあまり取り上げられていません。 A:米国だけでなくドイツでも小さな銀行の経営問題が生じ、その株価が急落しています。やはり原因は商業用不動産価格の下落です。金融当局者は銀行の経営が悪化していても、大変な問題になっているとは言いません。 Q:米国経済はうまくソフトランディングできるでしょうか。 A:ソフトランディングは簡単なものではないとみています。1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです』、「私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません・・・1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、「見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、元中央銀行マンとしての味わい深い述懐だ。

第三に、3月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本銀行元副総裁・日興リサーチセンター理事長の山口廣秀氏へのインタビュー「後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340360
・『マイナス金利が解除され、利上げが複数回行われたとして日本経済にその耐性はあるのか。10年にわたる異次元緩和の修正はどのように進めるべきなのか。日本銀行元副総裁である山口廣秀・日興リサーチセンター理事長へのインタビューの後編では、あるべき金利水準、金利引き上げの家計、金融機関などへの影響、異次元緩和からの出口戦略について語ってもらった。>>前編から読む』、興味深そうだ。
・『0.1%刻みで3回以上利上げしてもいい  Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきているとみています。 企業は守らないが、人は守る。失業した人たちに対する手当てを厚くするなどの施策を徹底するべきです。 Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう。 日本経済は金利引き上げにどこまで耐えられるのか。異次元緩和で膨らんだ国債やETF(上場投資信託)の残高はどのように減らしていくべきなのか。次ページ以降、山口廣秀氏に分析してもらった』、「Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきているとみています・・・Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう」、なるほど。
・『日本と欧米の物価上昇率格差が為替に与えるインパクトは大きくない  Q:2月8日の内田真一・日銀副総裁の奈良県の講演での発言でも、マイナス金利を解除しても緩和的な政策は続けると言っていますね。 A:超金融緩和を続けてきた以上、大枠としての緩和は続けるということであり、引き締めの領域に入ることはすぐにはできないでしょう。 Q:現状で本来あるべき金利水準はどうみていますか。 A:いわゆる(緩和でも引き締めでもない)中立金利の水準はもっと上にあると思っています。物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています。 Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか。 (山口氏の略歴は前編で紹介いたので、ここでは省略) 目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います。 Q:物価目標の2%という水準は合理的根拠を積み上げたものではないですよね。 A:消費者物価指数には上方バイアスがあり、物価がマイナスになることは避けたい、金利政策を講じる中央銀行としては、金利をマイナスにしたくない以上、景気悪化に備えて引き下げできる余地を残すために一定ののりしろを持てるようにした方がよいということから、2%の上昇率を目標にするとよい(編集部注:通常であれば、政策金利もプラスを維持できるため)ということだったのです。 しかし、指数のバイアスがあるのかどうかは明確ではありませんし、マイナスの物価上昇率となったときに、量的緩和のような非伝統的金融政策を取る余地があるのならのりしろも大きく取る必要があるのかということになるかと思います。やはり、日本のような物価の上がりにくい経済の場合、2%が正しい目標なのか考え直す必要があると思います。 米国が2%、欧州も2%、日本がそれより低い目標とすると、格差の分だけ円高が進むので2%にすべきだといわれてきましたが、日本の物価上昇率が欧米より低い状況が長く続いても現実の為替相場は円高に振れませんでした。これは為替を意識して物価目標を考えていくことが必ずしも正しくない、物価上昇率の違いが為替相場にインパクトを与える程度は必ずしも大きくないということの証左です。 Q:金利を上げることは家計に対してどう影響するでしょうか。 A:ローンを組んでいる個人にとってはマイナスですが、高齢化が進んでいる経済では預金金利やその他の運用金利が上がることによるプラス効果は大きいでしょう。 Q:金融機関への影響はどうみていますか。 A:保有している債券については、金利を引き上げることで評価損が出ます。一方で、金利を引き上げられるだけ経済の活力が出てくるとなれば資金需要も出てきますから、利ざやが拡大して金融機関にとってはプラスになります。全体としてはプラスだとみていますが、評価損が大きく出る金融機関からは悲鳴が上がるかもしれません。 Q:そうしたマイナスの影響を考慮して金利を引き上げないでいると新陳代謝は進みません。 A:金融機関ごとに影響は違ってきます。金利が上昇することでバランスシートが悪化する金融機関はマーケットから退出を迫られることもあるでしょう。合従連衡も加速するかもしれません。ただ、現時点ではそれが起きるほどの金利上昇は想像できません。金融政策を大きく転換していく段階には達しておらず、長年続いた異次元緩和を変えていく方向にようやく一歩を踏み出した程度です。 Q:戦後の金融行政は長く、体力のない金融機関であってもつぶさないといういわゆる護送船団方式でしたが、金利の世界では実質的に護送船団方式が続いてきたようなものですね。 A:約30年間、超金融緩和を続けてきました。その意味で完全に護送船団方式です。過保護の世界を続けてきました』、「物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています」、なるほど。 「Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか・・・目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います」、同感である。
・『国債・ETF購入の効果を検証し 残高縮小に向けた期間、方法を明示すべき  Q:異次元緩和の結果、大量に保有することになった国債やETFを日銀のバランスシートからどう切り離していけばいいのでしょうか。 A:(大量の国債や株式の保有で拡大した)バランスシートを縮小していくことはそれ自体金融を引き締める方向の措置になりますから、十分に影響を考えながら圧縮を進めていかなければなりません。米国は早いうちからバランスシートの縮小の見通しを示していましたし、欧州もバランスシートの縮小を進めています。 金融政策の透明性を確保する意味で、金融政策の方向感、短期金利、長期金利、バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです。 Q:ETFはどうすればいいでしょうか。 A:金融システムを維持する目的で、株価低迷時に金融機関のバランスシートの劣化を防ぐために銀行から買い取った株式を現在、すこしずつ売り始めています。目立たないように売っていますが、株価が上昇するような状況であれば売っていい。 このとき、気を付けなければいけないのは、今度は株価が下落したら、買うのかという話になることです。買い続けるにしても売るにしてもこれまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります。そうでなければ議論ができません。 Q:ETFを買い続けることでやはり株式市場の機能を損ねたのでしょうか。 A:損ねたと思います。どこが底値なのかといったことについての市場参加者の判断が難しくなりました。価格形成は市場に任せるべきだという基本から逸脱しましたね。また、かなりの株を日銀が保有している結果、企業のガバナンスにも影響が出ているかもしれません。 Q:物価見通しや景気見通しを下振れさせるリスクは。 A:米国の資産バブルが大きく崩壊すること、ユーロ圏でも同じ問題が生じること、不動産不況にあえぐ中国の市況がさらに低迷すること。こうした海外のバブル崩壊が日本に波及してくるというリスクです。 今起きているのは、生成AI(人工知能)などを含めて技術革新のバブルではないでしょうか。EV(電気自動車)も含まれます。かつてのITバブルのようなものです。米国の消費者も身の丈を超えた消費をしています。これも一種のバブルです。 地政学リスクも気になります。ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの紛争が激化することになれば世界規模での経済収縮が起きかねません。逆に終息に向かえば、経済が上向くでしょう。 Q:上振れリスクはありますか。 A:バブルは後にならなければその規模は分からないものですが、先に触れたバブルが予想より小さいものであって、崩壊してもインパクトが大きくないという可能性はないとはいえません。そして、さらなる技術革新の波が広がる可能性もあるかもしれません。 Q:日経平均株価が高値を更新しました。 A:年初からの急上昇に驚いています。それは、上昇を裏付けるだけの日本企業の収益力の上昇、将来への期待の高まりといった材料は乏しいからです。ファンダメンタルズに照らして行き過ぎの部分が大きい。ですので、長く続く上昇とは考えていません。 PER(株価収益率)で見て割高感がないといわれますが、上昇が続くとこの先どこかで将来に対する見方が変わり、将来のリターン見通しも変わってきます。企業の実態はすぐに変わるわけではないのに、予想収益力に対する見方が大きく変化してしまうのです。 ただ、現在は、PERは高くなく株価は妥当な水準だとみんなが思っています。そして、リターンが水膨れだったとみんなが気付いたときに、株価は調整されます。 バブルはこうして生まれはじけていくのです。これまでも同じことが繰り返されてきました。1980年代後半の日本やリーマンショック前の米国がいい例です』、「バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです」、なるほど。
「Q:ETFはどうすればいいでしょうか。 A:金融システムを維持する目的で、株価低迷時に金融機関のバランスシートの劣化を防ぐために銀行から買い取った株式を現在、すこしずつ売り始めています。目立たないように売っていますが、株価が上昇するような状況であれば売っていい。 このとき、気を付けなければいけないのは、今度は株価が下落したら、買うのかという話になることです。買い続けるにしても売るにしてもこれまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります』、「これまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります」、同感である。
タグ:異次元緩和政策 (その44)(日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」、前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道、後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界) 現代ビジネス 加谷 珪一氏による「日銀が政策転換で日本経済は「アベノミクス終焉」へ…これから始まる「長く険しい道」」 「インフレ、デフレというのは、あくまでも貨幣価値と物価の関係を示した用語に過ぎず、物価が上がればインフレ、下がればデフレというだけの意味であり、インフレやデフレそのものに良い悪いのニュアンスはないからである。 だがアベノミクスにおける「デフレ脱却」という言葉には明らかに、良いニュアンスが含まれている。この部分こそが、アベノミクス・・・というものが持っていたレトリックの集大成といえるだろう」、その通りだ。 「当時は「デフレ脱却を最優先せよ!」「これしかない!」といった、感情的で声高な議論ばかりが横行し、アベノミクスが持つリスクについて、多くのメディアや専門家が無視するという異様な雰囲気であった・・・景気が悪い時にデフレになるのは自然なことではあるが、あくまで、それは不景気の結果としてデフレになったに過ぎない。 デフレの結果として不景気になったわけではなく、ましてや物価を上げたからといって景気が良くなるわけでもない。その意味では「デフレ脱却」というのは、まったくもって無意味な言葉だったといってよいだろう」、そ の通りだ。 「大量のマネーはいつか制御不能な購買力増大として市場に跳ね返ってくる。つまり激しい円安と物価上昇である。 この2つこそが、経済成長に失敗したアベノミクスのツケとして、この先、日本人が引き受けなければならないリスクであり、過度な円安が進み始めた今、日銀にとってもはや残された時間は消滅しつつあった」、その通りだ。 「今回、日銀には2つの「神風」が吹いた。ひとつは物価上昇があまりにも激しく、多くのサラリーマンの生活が困窮していることから、企業が重い腰を上げ5%の賃上げに踏み切ったこと。もうひとつは自民党の裏金問題である。 今回の春闘で5%を超える回答が出たことで、少なくとも昨年と比較すれば賃金環境は大きく改善した。賃金が大幅に上がっていれば、金利の引き上げも容認されやすくなる。 政治的にも状況が大きく変わった。いくら経済的環境が整っても、大規模緩和策=アベノミクスであり、常に「政治」としてのニュアンスが付きまとう・・・日銀にとっては千載一遇のチャンスだったといえるかもしれない。 いずれにせよ、長く続いたアベノミクスはいよいよ終焉の時を迎えた。制御できないインフレという最悪の事態こそ回避できたかもしれないが、今回の決定は、長く続く正常化のほんの始まりに過ぎない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 山口廣秀氏インタビュー:「前編:日銀のマイナス金利解除は「遅きに失した」元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策正常化の道」 本音で語ることが多い「山口氏」への「インタビュー」とは興味深そうだ。 「バランスが取れた見方だ」 「A:物価を優先すべきです。振り返って第1次石油ショック、第2次石油ショックからの教訓は、景気をにらんで引き締めを緩やかにしてしまうと物価上昇が長く続き、結果として景気後退も長期化してしまうから、物価を優先して早めに引き締めるということです。第2次石油ショックのときには、早めの引き締めが功を奏して物価上昇を抑え込むことができました。二兎を追ってはいけないのです」、さすがにしっかりした見方だ。 マイナス金利解除後0.1%刻みで2~3回の利上げ 「私は日銀が言う、安定的に2%を超える物価上昇は既に実現しているとみています。ですから、マイナス金利解除は遅きに失した感があると考えています。3月あるいは4月の実施が取り沙汰されていますが、なるべく早く行った方がいいでしょう。 Q:早く解除していれば物価の状況は現在より落ち着いていたでしょうか。 A:植田和男総裁の就任直後とは言いませんが、間を置かずに手を打っていれば様子は違っていたかもしれません・・・ 1970年代以降、50年間の米国経済を振り返ると、不況に陥らずに物価が落ち着いたことはありません。 ですが、実際に不況に突入するまでは、みんなソフトランディングできると思ってしまう。慎重論を唱えている人、危険だと感じている人が駆逐されてしまう。危険だと警鐘を鳴らすおおかみ少年は、見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、「見方を変えずにひたすらおおかみ少年であり続けるべきだと私は思っていますが、多くの場合、それができないのです」、元中央銀 行マンとしての味わい深い述懐だ。 イヤモンド・オンライン 山口廣秀氏へのインタビュー「後編:日本経済「2%超え金利にも耐性ある」日銀元副総裁の山口氏が語るマイナス金利解除後の世界」 0.1%刻みで3回以上利上げしてもいい 「Q:日本経済に金利上昇に対する耐性はありますか。 A:それなりに耐性があると考えています。そうでなければ現在のように物価が上がったり、ゼロ%前後で長く推移していた長期金利が上昇したりはしません。日本経済が少しずつですが活性化してきている証左ではないでしょうか。ある程度金利を上げても耐えていける経済だと思っています。 金利を上げることで経済の新陳代謝が進みます。金利負担増加に耐えられない生産性や収益力の低い企業がマーケットから退出していくことは必要です。そういうことを促していく力が日本経済の中に出てきてい とみています・・・Q:金利上昇に対する耐性があるとすれば、0.1%刻みで2回ないし3回ではなくもっと引き上げてもいいのではないですか。 A:私自身はもっと引き上げてもいいと思っています。ただ、これまで日本銀行は金利引き上げに相当慎重なスタンスで臨んでいます。それ故大胆に金利を引き上げることはできないでしょう。大胆な利上げができると確信しているのであれば、もっと早く金利を引き上げる方向にかじを切っていたでしょう」、なるほど。 「物価が2%で安定するとして、潜在成長率が0.5%ということになれば名目金利は2%を超えてもおかしくないわけです。実はそういう水準まで日本経済の金利への耐性はあるとみています」、なるほど。 「Q:2%の物価目標は適切なのでしょうか・・・目先、3%前後の上昇もあり得ると言いましたが、中長期的に見て日本経済が持つ物価を押し上げる力はそれほど強くなく、1%の上昇率を維持できる程度かもしれません。 その意味で、リジッドな2%目標をやめて1~3%といった幅のある目標に切り替えていくことが望ましいと思います」、同感である。 「バランスシートの大きさなどをどう調整していくかをある程度明確に対外的に示す義務が日銀にはあると思います。10年、20年かかるものだとしても、長い時間がかかることを示して進め方をできるだけ明らかにするべきだと考えます。 Q:国債など債券は償還がありますから、償還時に再投資しないということで保有残高を減らしていけますね。 A:国債購入については、日銀は緩和効果があると考えているはずですから、引き締め方向に政策を変えていくのであれば国債残高を減らしていくのは基本の流れです。 政策としての効果を検証した上で、償還時に再投資しない形で進めていくのか、市場で売却していくのかなど方法を明らかにすべきです」、なるほど。 「これまでのETF購入の効果とその副作用をきちんと検証し、対外的に示す必要があります」、同感である。
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