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日本の構造問題(その31)(実質賃金下落続く日本と上昇する米国 歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か、日本のGDP「4位転落」の“犯人”は  政府の間違った経済政策の継続) [経済政治動向]

日本の構造問題については、1月18日に取上げた。今日は、(その31)(実質賃金下落続く日本と上昇する米国 歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か、日本のGDP「4位転落」の“犯人”は  政府の間違った経済政策の継続)である。

先ずは、2月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「実質賃金下落続く日本と上昇する米国、歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339600
・『近づく?アメリカの利下げ 株価活況でも日米経済の内実に差  いま世界経済の鍵を握っているのは、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が、いつどのように金利引き下げに転じるかだ。 この3年近く、コロナ禍やウクライナ戦争による資源価格などの急騰で歴史的なインフレが続いてきたが、ようやくインフレ率が鈍化、FRBがインフレ抑制から景気重視へと舵を切るタイミングが近づいている。 これを巡ってさまざまな予測や思惑が交錯し、株価や為替レートを大きく変動させている。これを象徴するのが、アメリカや日本などでも株価が歴史的な高水準になっていることだ。 日本では、FRBの緩和政策への転換や日本銀行が金融政策を正常化に踏み出すとしても緩和の方向は変わらいとの見方が、日経平均株価の最高値更新の大きな要因になっている。だがこの流れは続くのか。 アメリカの金融政策の行方を正確に予測することはできないのだが、将来を正しく見通すために、特に重要なのは、アメリカのインフレがどのように発生し、それをどのようにコントロールしたかの経緯を理解しておくことだ。この背後にある経済の状況も金融政策の対応も、日本の場合とは大きく異なる。 表向きは同じでも、いまの“活況”を生み出したものは全く違うことに注意する必要がある』、「背後にある経済の状況も金融政策の対応も、日本の場合とは大きく異なる。 表向きは同じでも、いまの“活況”を生み出したものは全く違うことに注意する必要がある」、どう違うのだろうか。
・『実質賃金は23年6月からプラス アメリカと日本の経済状況は大きく違う  最初にアメリカのマクロ経済的な指標を見ておこう。アメリカの消費者物価の推移は、図表1の通りだ。 物価上昇が始まったのは、2021年の春だ。それまで、1~2%程度だった消費者物価の対前年同月比が、4月に4%になった。そして、22年3月から9月までの期間では8%を超えた。しかし、その後低下して、23年4月から3%台になっている。 一方、総報酬の推移は、図表2に示す通りだ(総報酬は、賃金とボーナスの合計)。実質総報酬の対前年同月比は、21年6月期から23年3月期までの間だけマイナスになったが、23年6月期ですでにプラスになった。このように、実質報酬伸びがマイナスだったのは、一時的だった。 アメリカ長期金利の推移を見ると、図表3の通りだ。19年には2%程度であったが、コロナショックに対応するために大幅な金融緩和がなされ、0.6%程度まで引き下げられた。 その後、21年からは、インフレに対応するために金融引締めに転換し、長期金利はかなり急速に上昇してきた。 これに対して、日本の実質賃金は、2年間にわたって下落を続けている。これがいつ終わるのか、見当がつかない。日米間の経済状況は大きく異なる』、「日米間の経済状況は大きく異なる」、その通りだ。
・『アメリカ経済の強さがインフレを引き起こした  今回の世界的なインフレを当初、主導したのはアメリカでコロナ禍からの回復期に、深刻な人手不足が起きたことによる要素が大きい。人手不足による賃金の上昇が先導する形で物価上昇につながったのだ。この間の推移を見ると、次の通りだ。 コロナショックに対応して、アメリカ連邦政府は、2021年3月、一人当たり最大1400ドルの現金給付を柱とする総額1.9兆ドルの大規模な財政拡大を行なった。 金融の面でも、FRBが政策金利をゼロに引き下げ、国債を無制限に買上げる大規模な量的緩和政策を実施した。 一方、20年末に医療従事者や高齢者へのコロナワクチンの接種が始まり、21年3月ごろから一般接種が始まった。5月以降に接種が加速した。その結果、経済活動が回復、給付金などの消費で需要が拡大した。 ところが、これに供給が追いつくことができなかった。工場だけでなく港湾や運送会社、倉庫などサプライチェーンがフル稼働できるだけの労働力を確保できなかったのだ。 貨物船が入港できず、沖で待機するという事態が多発した。入港できても、荷役労働者やトラックの運転手の不足のために、国内の流通網に入れなかった。このため、生産活動や出荷が停滞した。 労働市場での需要が高まり就職機会が多くなると、労働者は、離職することによって賃金が上昇することを期待するようになった。これは、「Great Resignation(大量退職時代)」と呼ばれた。つまり、意に添わずに失業するという大恐慌とは正反対の事態が起きたのだ。 結局、コロナ期に過剰な景気拡大政策を行ったことが、労働力不足を引き起こして賃金を上昇させ、その結果、物価が上昇したことになる。 この背後には、アメリカが新しい産業、特にIT産業がAIなどで目覚ましい成長を続けているという状況がある。 こうしたアメリカ国内の状況に加え、22年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始し、対ロ制裁やそれへの報復などで資源・エネルギー価格などの急騰が新しい要因として加わりインフレが加速した』、「コロナ期に過剰な景気拡大政策を行ったことが、労働力不足を引き起こして賃金を上昇させ、その結果、物価が上昇したことになる。 この背後には、アメリカが新しい産業、特にIT産業がAIなどで目覚ましい成長を続けているという状況がある。 こうしたアメリカ国内の状況に加え、22年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始し、対ロ制裁やそれへの報復などで資源・エネルギー価格などの急騰が新しい要因として加わりインフレが加速した」、なるほど。
・『インフレ抑制は引き締め策の成功 FRBは正攻法で政策運営  インフレに対処するため、2021年11月、FRBは金融引き締めに転換した。まず、それまでの量的緩和を縮小する「テーパリング」を開始した。そして、22年3月から利上げを開始した。これよって、図表3で見たように長期金利が上昇したのだ。 アメリカがインフレの抑制に成功したのは、このような金融政策の転換による。そしてこれは、政策金利を操作することによって行われた。FRBは金融政策の正統的なやり方をそのまま行ったのであり、日銀のように国債の指値オペなどで長期金利を直接に操作したのではない。 一般に、金融引き締めは政治的に人気がないので、遅れがちになる。FRBの金融引き締めのタイミングが適切であったかどうかについては、議論の余地がある。インフレの初期の段階で、それを一時的なものとみなして重視せず、引き締めが遅れたために、インフレが高進したという評価はあり得るだろう。しかし、その後の金利引き上げは、極めて急速であった』、「インフレの初期の段階で、それを一時的なものとみなして重視せず、引き締めが遅れたために、インフレが高進したという評価はあり得るだろう。しかし、その後の金利引き上げは、極めて急速であった、なるほど。
・『日本のインフレは輸入物価が主導 競争力や経済衰退で賃上げが追い付かず  一方、日本ではインフレは輸入物価の上昇が主導した。アメリカなどのインフレが輸入物価を通して波及し、原材料やエネルギーなどのコスト上昇が転嫁されて国内の消費者物価が上昇した。この過程で、日本の金融政策は奇妙としか考えられない対応をした。 アメリカの金利引き上げに対して世界の多くの国の中央銀行利上げで追随した。ところが、日銀は金融緩和を続けて、金利の引き上げを行わなかった。このため、大幅な円安を招いた。このために、国内物価への伝播を遮断できなかったのだ。 他方で、物価上昇にもかかわらず企業が賃金を十分に引き上げることができないので、実質賃金の対前年伸び率がマイナスになった。この状況はいまに至るまで続いている。 日本では、長期にわたる金融緩和のもとで企業が生産性向上や新ビジネス展開などの取り組みを怠ったことで産業競争力が低下、経済が衰退し、輸入インフレに賃金が追いつかないのだ』、「アメリカの金利引き上げに対して世界の多くの国の中央銀行利上げで追随した。ところが、日銀は金融緩和を続けて、金利の引き上げを行わなかった。このため、大幅な円安を招いた。このために、国内物価への伝播を遮断できなかったのだ。 他方で、物価上昇にもかかわらず企業が賃金を十分に引き上げることができないので、実質賃金の対前年伸び率がマイナスになった。この状況はいまに至るまで続いている。 日本では、長期にわたる金融緩和のもとで企業が生産性向上や新ビジネス展開などの取り組みを怠ったことで産業競争力が低下、経済が衰退し、輸入インフレに賃金が追いつかないのだ」、なるほど。
・『賃上げを実現させる第一の条件は緩和策をやめ企業に変革努力を促すこと  今後、アメリカが金利を引き下げれば、日米金利差が縮小し、為替レートは円高になる可能性がある。それに加えて日銀が金融正常化を行なって金利が上昇すれば、急激な円高が進行する可能性もある。 これは、これまで日本の企業の利益が円安によって増加してきた状況を大きく変えるだろう。日本で株価の急激な上昇が進んだのも、円安による面が強いと思われるので、その状況が変わることがあり得る。 しかし、これを恐れて金融正常化を行なわなければ、経済構造が改善されず、実質賃金上昇率がマイナスである状態から脱出できない状態が続く可能性が強い。 だが賃金について言われるのは、企業は賃金を「引き上げよ」という掛け声ばかりだ。その半面で、有効な政策は何も行われていない。 賃金を引き上げるには、新しい技術や新しいビジネスモデルによって、生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ。金利を上げることで、企業にそれを上回る収益をあげ、賃上げができるよう変革の努力を促すのだ。日本は経済政策の基本原則に戻る必要がある』、「賃金を引き上げるには、新しい技術や新しいビジネスモデルによって、生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ。金利を上げることで、企業にそれを上回る収益をあげ、賃上げができるよう変革の努力を促すのだ。日本は経済政策の基本原則に戻る必要がある」、「生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ」、かなり思い切った提言だ。

次に、3月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家の中野剛志氏による「日本のGDP「4位転落」の“犯人”は、政府の間違った経済政策の継続」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340991
・『23年はGDPでドイツにも抜かれる 人口減少などではない「根本原因」  日本経済は、日経平均株価の34年ぶりのバブル期の最高値更新や初の「4万1000円」台などに沸いているが、直近公表の2023年10~12月期の実質GDP(国内総生産)は2四半期連続で前年比マイナスは免れたものの、低迷は続く。23年のドル建ての名目GDPはドイツに抜かれ、世界4位に転落した。 10年にも世界2位の座を中国に明け渡したが、中国の場合は人口が日本よりはるかに多く、また高度成長期にあったため、人口減少局面にある成熟社会の日本が名目GDPで中国に凌駕(りょうが)されるのは仕方がないというような風潮が当時はあった。 しかし、ドイツは違う。人口は8,300万人と日本より少なく、人口が増加しているわけでもない成熟社会だ。しかも、近年はドイツ経済も停滞が続いており、特に23年はマイナス成長だった。 日本経済の長期停滞の原因や背景として、人口減少や高齢化、成熟社会などが言われているが、したがって、今回はそういった言い訳は通用しない。 より「根本的な原因」がある』、「より「根本的な原因」」とは何なのだろうか。
・『98年以降、日本だけが成長せずデフレを放置した経済政策が原因  そもそも、日本経済は1998年以降、ほとんど成長しない状態が続いているが、これほど長期にわたって成長しない国は、戦後のOECD(経済協力開発機構)加盟国でも、他に例がない。 しかも、91年にバブルが崩壊したとはいえ、日本経済は90年代半ばまでは成長していたのだ。それが98年以降、突如として成長しなくなった。 当時は、アジア通貨危機があったとはいえ、他の国々は、アジア通貨危機であれ、2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)であれ、危機を克服した後は、再び成長している。金融危機が収束した後も、まったく成長しない状態が続いたのは、日本だけと言ってよい。その原因は、産業構造の変化や少子高齢化などではとうてい説明がつかない。 日本経済の停滞の原因については、これまで人口減少などのほかにも、デジタル化で後れを取ったからだとか、グローバル化に乗り遅れたからだとか、雇用制度が硬直的だからといった説明が好まれてきた。しかし、それでは、なぜ98年を境に突如として、20年以上もの長期にわたり、しかも日本だけが成長しなくなり、ドイツにすら抜かれた理由を説明できないのだ。 この異様な現象を説明できるのは、ただ一つ、経済政策という要因だ。90年代半ば以降、継続して、誤った経済政策が行われてきたからとしか考えられないのだ。 では、何をどう間違えたのか。 まず注目すべきは、98年から、日本はデフレーション(デフレ)に陥り、しかも、このデフレが20年以上も続いたということだ。 このことだけでも異様なことだ。戦後、デフレを経験したのは98年以降の日本だけだからだ。 30年代の世界恐慌という大デフレ不況を経験して以降、デフレだけは避けなければならないという認識が政策担当者たちの間での常識となっていたはずだった。しかも、30年代ですら数年でデフレから脱却している。そのデフレを日本は20年以上も放置したのだ』、「30年代の世界恐慌という大デフレ不況を経験して以降、デフレだけは避けなければならないという認識が政策担当者たちの間での常識となっていたはずだった。しかも、30年代ですら数年でデフレから脱却している。そのデフレを日本は20年以上も放置したのだ」、なるほど。
・『デフレ下では、企業は債務を減らし投資をしないのが経済合理的  なぜ、デフレを放置してはならないのか。 デフレとは、需要不足(供給過剰)の状態が継続することで、物価が下落し続ける現象だ。物価が下落し続けるということは、裏を返せば、貨幣の価値が上昇し続けるということだ。 貨幣の価値が上昇し続けるのであれば、企業は、設備投資などをせず、貯蓄をした方が経済合理的となる。特に、貨幣の価値が上昇する中では、借り入れによって債務を負うと、将来、返済する際に債務が実質的に膨らんでいるということになるので、融資を受けようとはしなくなる。むしろ、企業は債務の返済を急ぐだろう。 こうして、デフレ下では、企業は融資を受けず、出資もせず投資をしないということになる。そうなると、需要はさらに縮小するというデフレ・スパイラルが発生し、経済は成長しなくなる。だから、政策担当者たちは、インフレ以上にデフレを恐れてきたのだ』、「デフレ下では、企業は融資を受けず、出資もせず投資をしないということになる。そうなると、需要はさらに縮小するというデフレ・スパイラルが発生し、経済は成長しなくなる。だから、政策担当者たちは、インフレ以上にデフレを恐れてきたのだ」、なるほど。
・『需要不足なのに需要抑制と供給拡大 逆にデフレを起こす政策続ける  日本政府は、このデフレに対してどのような政策をとってきたのか。 1996年に成立した橋本政権以降、政府がしてきた政策は、おおむね、以下のようなものだった。財政健全化や「小さな政府」、消費増税、金融緩和、規制緩和、自由化、民営化、労働市場の流動化、グローバル化の促進。 このうち、財政健全化や「小さな政府」は、公共需要を抑制するものであり、消費増税は民間の消費需要を縮小するものだ。 そして、規制緩和や自由化、民営化、労働市場の流動化は、競争を促進し、生産性を向上させて供給力を拡大しようとするものだ。それをもっと大規模に実施するのが、グローバル化といっていいだろう。 デフレとは、需要が不足し、供給が過剰になる現象なのに、これまで日本政府がしてきたのは、金融緩和を除くと、需要を抑制し供給を拡大する政策ばかりだった。要するにデフレを引き起こす政策を実施してきたのだ。 デフレ対策として、とりわけ重要なのは、積極財政だ。 貨幣価値が上昇するデフレ下では、企業は投資を抑制する方が経済合理的なため、民間主導の経済成長はほぼ不可能なのだ。そこで、企業に代わって、政府が大規模な投資を行って需要を創出しなければならない。 1930年代の世界恐慌という大デフレ不況でも、大規模な公共投資が実施された。日本における高橋財政や米国におけるニューディール政策がその典型だった。 ところが日本の場合、90年代初頭のバブル崩壊の後、5年ほどは公共投資を増やしてデフレを防いだ。しかし、その結果として拡大した財政赤字に恐れをなした政府は、97年以降は、公共投資を抑制しただけでなく、消費増税を行ってしまい、デフレをひどくしたのだ。 しかも、財政支出の抑制は2000年代以降も続けられ、消費税にいたっては、10年代に2度も税率を引き上げた。 このように、デフレにある時にデフレを引き起こす政策を20年以上も実施すれば、デフレが20年以上も続き、経済が成長しなくなるのも当然だ。何も不思議なことはない。 この間、日本企業が、内部留保ばかり積み上げて積極的な投資を躊躇(ちゅうちょ)し、デジタル化の波に乗り遅れたり、魅力のある商品開発や技術革新を怠ったりしたことが指摘される。それは、確かにその通りだろう。しかし、繰り返しになるが、デフレという異常なマクロ環境の下では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ』、「デフレとは、需要が不足し、供給が過剰になる現象なのに、これまで日本政府がしてきたのは、金融緩和を除くと、需要を抑制し供給を拡大する政策ばかりだった。要するにデフレを引き起こす政策を実施してきたのだ。 デフレ対策として、とりわけ重要なのは、積極財政だ。 貨幣価値が上昇するデフレ下では、企業は投資を抑制する方が経済合理的なため、民間主導の経済成長はほぼ不可能なのだ。そこで、企業に代わって、政府が大規模な投資を行って需要を創出しなければならない。 1930年代の世界恐慌という大デフレ不況でも、大規模な公共投資が実施された。日本における高橋財政や米国におけるニューディール政策がその典型だった・・・日本の場合、90年代初頭のバブル崩壊の後、5年ほどは公共投資を増やしてデフレを防いだ。しかし、その結果として拡大した財政赤字に恐れをなした政府は、97年以降は、公共投資を抑制しただけでなく、消費増税を行ってしまい、デフレをひどくしたのだ。 しかも、財政支出の抑制は2000年代以降も続けられ、消費税にいたっては、10年代に2度も税率を引き上げた。 このように、デフレにある時にデフレを引き起こす政策を20年以上も実施すれば、デフレが20年以上も続き、経済が成長しなくなるのも当然だ。何も不思議なことはない。 この間、日本企業が、内部留保ばかり積み上げて積極的な投資を躊躇(ちゅうちょ)し、デジタル化の波に乗り遅れたり、魅力のある商品開発や技術革新を怠ったりしたことが指摘される。それは、確かにその通りだろう。しかし、繰り返しになるが、デフレという異常なマクロ環境の下では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ」、「デフレという異常なマクロ環境の下では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ」、その通りだ。
・『投資を促すにはまずはデフレ脱却だった 「失われた30年」は政策不況  企業に積極的な設備投資や技術開発投資を行わせたければ、デフレから脱却するしかなく、そしてデフレ脱却は政府の経済政策によるしかない。ところが、実際に政府がやり続けたのはデフレを促進する政策だったのだ。 なお、政府が、財政支出を抑制しようとし、消費増税を繰り返した理由は、言うまでもなく、財政赤字を削減しようとしたからだ。しかし、デフレである限り、経済成長はほぼ不可能である。経済が成長しなければ、税率をいくら引き上げたところで、税収は増えず、したがって財政赤字は削減できない。 財政を健全化したければ、デフレを脱却するしかない。そして、デフレを脱却するには、積極財政は不可欠だ。逆説的ではあるが、財政赤字を削減するためには、(一時的に)財政赤字を拡大しなければならないということだ。ところが、日本の政策担当者たちには、この逆説を理解することができなかった。 誤った経済政策の継続、これこそが、日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落した理由だ。いわば「失われた30年」とは、「政策不況」に他ならない。その全責任は日本政府にある』、「経済が成長しなければ、税率をいくら引き上げたところで、税収は増えず、したがって財政赤字は削減できない。 財政を健全化したければ、デフレを脱却するしかない。そして、デフレを脱却するには、積極財政は不可欠だ。逆説的ではあるが、財政赤字を削減するためには、(一時的に)財政赤字を拡大しなければならないということだ。ところが、日本の政策担当者たちには、この逆説を理解することができなかった。 誤った経済政策の継続、これこそが、日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落した理由だ。いわば「失われた30年」とは、「政策不況」に他ならない。その全責任は日本政府にある」、同感である。
・『コストプッシュ・インフレには減税などで生産性上げる投資の支援を  なお、この1~2年は、デフレというよりインフレが顕著だが、他方で実質賃金は下落が続いており、家計消費などの需要は低迷している。2023年10~12月期の実質GDPマイナスもその反映だ。 需要が増えて経済が成長するデマンドプル・インフレではなく、需要が低迷したまま供給がより不足するコストプッシュ・インフレという、デフレよりさらに難しい局面にある。 こうしたコストプッシュ・インフレに対しては、供給不足を克服するため、生産性向上のための設備投資やインフラ投資を積極財政や減税によって促すことで、あわせて投資需要も創出するという経済政策が最も有効だ。 また、燃料費や食料費を抑制する支援策や、賃上げを促す政策も重要であり、いずれも財政支出の拡大が必要だ。 今のところ、岸田政権は、こうした方向性に則った政策をしており、一定の評価ができる。 しかしながら、コロナ禍の対策や物価高対策によって財政赤字が拡大したため、政策担当者たちは、またしても財政健全化を優先させようとしているようだ。もし、そうなったら、「政策不況」が継続し、日本の名目GDPはさらに順位を落とすことになるだろう』、「コストプッシュ・インフレに対しては、供給不足を克服するため、生産性向上のための設備投資やインフラ投資を積極財政や減税によって促すことで、あわせて投資需要も創出するという経済政策が最も有効だ。 また、燃料費や食料費を抑制する支援策や、賃上げを促す政策も重要であり、いずれも財政支出の拡大が必要だ。 今のところ、岸田政権は、こうした方向性に則った政策をしており、一定の評価ができる。 しかしながら、コロナ禍の対策や物価高対策によって財政赤字が拡大したため、政策担当者たちは、またしても財政健全化を優先させようとしているようだ。もし、そうなったら、「政策不況」が継続し、日本の名目GDPはさらに順位を落とすことになるだろう」、その通りだ。
タグ:日本の構造問題 (その31)(実質賃金下落続く日本と上昇する米国 歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か、日本のGDP「4位転落」の“犯人”は  政府の間違った経済政策の継続) ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「実質賃金下落続く日本と上昇する米国、歴史的インフレ下で「格差」の原因は何か」 「背後にある経済の状況も金融政策の対応も、日本の場合とは大きく異なる。 表向きは同じでも、いまの“活況”を生み出したものは全く違うことに注意する必要がある」、どう違うのだろうか。 「日米間の経済状況は大きく異なる」、その通りだ。 「コロナ期に過剰な景気拡大政策を行ったことが、労働力不足を引き起こして賃金を上昇させ、その結果、物価が上昇したことになる。 この背後には、アメリカが新しい産業、特にIT産業がAIなどで目覚ましい成長を続けているという状況がある。 こうしたアメリカ国内の状況に加え、22年2月にロシアがウクライナ侵攻を開始し、対ロ制裁やそれへの報復などで資源・エネルギー価格などの急騰が新しい要因として加わりインフレが加速した」、なるほど。 「インフレの初期の段階で、それを一時的なものとみなして重視せず、引き締めが遅れたために、インフレが高進したという評価はあり得るだろう。しかし、その後の金利引き上げは、極めて急速であった、なるほど。 「アメリカの金利引き上げに対して世界の多くの国の中央銀行利上げで追随した。ところが、日銀は金融緩和を続けて、金利の引き上げを行わなかった。このため、大幅な円安を招いた。このために、国内物価への伝播を遮断できなかったのだ。 他方で、物価上昇にもかかわらず企業が賃金を十分に引き上げることができないので、実質賃金の対前年伸び率がマイナスになった。この状況はいまに至るまで続いている。 日本では、長期にわたる金融緩和のもとで企業が生産性向上や新ビジネス展開などの取り組みを怠ったことで産業競争力が低下、経済が衰退し、 輸入インフレに賃金が追いつかないのだ」、なるほど。 「賃金を引き上げるには、新しい技術や新しいビジネスモデルによって、生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ。金利を上げることで、企業にそれを上回る収益をあげ、賃上げができるよう変革の努力を促すのだ。日本は経済政策の基本原則に戻る必要がある」、「生産性を引き上げるしかない。それを実現する最初の条件は金融正常化だ」、かなり思い切った提言だ。 中野剛志氏による「日本のGDP「4位転落」の“犯人”は、政府の間違った経済政策の継続」 「より「根本的な原因」」とは何なのだろうか。 「30年代の世界恐慌という大デフレ不況を経験して以降、デフレだけは避けなければならないという認識が政策担当者たちの間での常識となっていたはずだった。しかも、30年代ですら数年でデフレから脱却している。そのデフレを日本は20年以上も放置したのだ」、なるほど。 「デフレ下では、企業は融資を受けず、出資もせず投資をしないということになる。そうなると、需要はさらに縮小するというデフレ・スパイラルが発生し、経済は成長しなくなる。だから、政策担当者たちは、インフレ以上にデフレを恐れてきたのだ」、なるほど。 「デフレとは、需要が不足し、供給が過剰になる現象なのに、これまで日本政府がしてきたのは、金融緩和を除くと、需要を抑制し供給を拡大する政策ばかりだった。要するにデフレを引き起こす政策を実施してきたのだ。 デフレ対策として、とりわけ重要なのは、積極財政だ。 貨幣価値が上昇するデフレ下では、企業は投資を抑制する方が経済合理的なため、民間主導の経済成長はほぼ不可能なのだ。そこで、企業に代わって、政府が大規模な投資を行って需要を創出しなければならない。 1930年代の世界恐慌という大デフレ不況でも、大規模な公共投資が実施された。日本における高橋財政や米国におけるニューディール政策がその典型だった・・・日本の場合、90年代初頭のバブル崩壊の後、5年ほどは公共投資を増やしてデフレを防いだ。しかし、その結果として拡大した財政赤字に恐れをなした政府は、97年以降は、公共投資を抑制しただけでなく、消費増税を行ってしまい、デフレをひどくしたのだ。 しかも、財政支出の抑制は2000年代以降も続けられ、消費税にいたっては、10年代に2度も税率を引き上げた。 このように、デフレにある時にデフレを引き起こす政策を20年以上も実施すれば、デフレが20年以上も続き、経済が成長しなくなるのも当然だ。何も不思議なことはない。 この間、日本企業が、内部留保ばかり積み上げて積極的な投資を躊躇(ちゅうちょ)し、デジタル化の波に乗り遅れたり、魅力のある商品開発や技術革新を怠ったりしたことが指摘される。それは、確かにその通りだろう。しかし、繰り返しになるが、デフレという異常なマクロ環境の下では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ」、「デフレという異常なマクロ環境の下で では、内部留保を積み上げることの方が経済合理的なのだ」、その通りだ。 「経済が成長しなければ、税率をいくら引き上げたところで、税収は増えず、したがって財政赤字は削減できない。 財政を健全化したければ、デフレを脱却するしかない。そして、デフレを脱却するには、積極財政は不可欠だ。逆説的ではあるが、財政赤字を削減するためには、(一時的に)財政赤字を拡大しなければならないということだ。ところが、日本の政策担当者たちには、この逆説を理解することができなかった。 誤った経済政策の継続、これこそが、日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落した理由だ。いわば「失われた30年」とは 、「政策不況」に他ならない。その全責任は日本政府にある」、同感である。 「コストプッシュ・インフレに対しては、供給不足を克服するため、生産性向上のための設備投資やインフラ投資を積極財政や減税によって促すことで、あわせて投資需要も創出するという経済政策が最も有効だ。 また、燃料費や食料費を抑制する支援策や、賃上げを促す政策も重要であり、いずれも財政支出の拡大が必要だ。 今のところ、岸田政権は、こうした方向性に則った政策をしており、一定の評価ができる。 しかしながら、コロナ禍の対策や物価高対策によって財政赤字が拡大したため、政策担当者たちは、またしても財政健全化を優先させようとしているようだ。もし、そうなったら、「政策不況」が継続し、日本の名目GDPはさらに順位を落とすことになるだろう」、その通りだ。
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