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トランプ大統領(その31)(トランプの同盟国をも振り回す外交の根源は共和党自身の変質にある、トランプ欧州歴訪が示したポピュリスト帝国主義の脅威、リアリティー次第で豹変する「トランプ原則」 フォックス・ニュースにみる「トランプ外交擁護論」) [世界情勢]

トランプ大統領については、4月16日に取上げた。今日は、(その31)(トランプの同盟国をも振り回す外交の根源は共和党自身の変質にある、トランプ欧州歴訪が示したポピュリスト帝国主義の脅威、リアリティー次第で豹変する「トランプ原則」 フォックス・ニュースにみる「トランプ外交擁護論」)である。

先ずは、みずほ総合研究所調査本部 欧米調査部長の安井明彦氏が6月28日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「トランプの同盟国をも振り回す外交の根源は共和党自身の変質にある」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/173465
・『有力誌のアトランティックが電子版に掲載した3つの論評だ。そこから浮かびが上がるのは、一見すると破天荒なトランプ外交を貫く3つの原則である。 第一の原則は、イデオロギーよりも実利を優先する姿勢である・・・冷戦期の共和党では、民主主義や自由経済といったイデオロギー面での判断が、外交政策を決定する際の重要な指針となり、同盟国との関係が重視されてきた。いわば、冷戦型の価値観外交である。しかしトランプ大統領の場合には、そうした価値観は軽視されている。通商政策では同盟国を敵に回す一方で、イデオロギー面では相容れない北朝鮮との首脳会談に臨んだ上に、ロシアとの関係改善にすら色気を見せている』、「トランプ外交を貫く3つの原則」とは驚かされた。確かにアメリカの専門家からみれば、そう言えるのかも知れない。
・『第二の原則は、米国の力に対する圧倒的な自信と自負である。アトランティック編集長のジェフリー・ゴールドバーグは、6月11日に同誌の電子版に掲載された論評で、最もトランプ外交の特徴を捉えた表現は、「我々は米国だ、文句あるか!」だと指摘している・・・第二の原則は、トランプ大統領の対中姿勢を読み解くカギになる。第一の原則だけを考えれば、中国とのイデオロギー面での違いは、トランプ大統領の対中姿勢を決める要因にはなり得ない。しかし、トランプ大統領が「米国の圧倒的な力」への脅威として中国を意識しているのだと考えるのであれば、強硬な対中姿勢は説明がつきやすい』、とすれば、米中の和解は当面、期待薄のようだ。
・『第三の原則は、敵や味方を固定せず、いかなるときにも相手国を安心させないことである。前述のゴールドバーグの論評では、「敵もいなければ、味方もいない」「恒久的な不安定さこそが、米国の利点になる」といった表現が紹介されている・・・トランプとの付き合い方に戸惑う各国』、米国以外の国にとっては、「迷惑この上ない」話だ。
・『ゴールドバーグは、こうしたトランプ外交の特徴を包括する概念として、「独立した国際主義・・・」を挙げる。砕けた言い方をすれば、「わが道を行く国際主義」だ。米国の実利を重視する視点から、圧倒的な力への自信を頼りに、あらゆる国を不安に陥れるトランプ外交は、孤立主義という言葉では語り切れない。米朝首脳会談の例にもあるように、これまで以上に米国は国際政治に関わっているとも言える。 興味深いのは、わが道を行く国際主義が米国で浮上するのは、トランプ外交が初めてではないことだ。そもそも、わが道を行く国際主義という概念は、20世紀前半の共和党の外交姿勢を評した言葉である。言い換えれば、トランプ外交には、20世紀前半の共和党への先祖返りの側面がある・・・第一次世界大戦後のハーディング、クーリッジ、フーヴァーといった大統領の時代が典型であり、友好国との関係を深めることを拒み、国際連盟への不参加やスムート・ホーリー法による高関税を主導したのは、当時の共和党だった』、「トランプ外交には、20世紀前半の共和党への先祖返りの側面がある」というのも初耳で大いに参考になった。
・『象徴的なのが、イデオロギー面で対立する国との首脳外交への反応である。1980年代にレーガン大統領がソ連のゴルバチョフ大統領と軍縮交渉を進めようとした際には、ソ連を信用しない共和党の有力な議員から、猛烈な反発の声があがった。しかし、先日の米朝首脳会談に関する共和党議員の反応は、非核化への道筋こそ不透明としつつも、会談が開催されたこと自体は評価する傾向が強く、総じて「慎重ながら楽観的」・・・だった。 通商政策においても、同盟国であるかどうかを問わず保護主義的な姿勢を強めるトランプ政権に対し、共和党議員の反応は煮え切らない。保護主義に警鐘は鳴らしているものの、立法によって制裁関税の発動を封じるなど、トランプ大統領の手足を縛る動きには二の足を踏んでいる』、通商政策で「共和党議員の反応は煮え切らない」というのも困ったことだ。しかし、記事では触れられてないが、貿易戦争のデメリットが米国内に広がるにつれ、流れが変わる可能性があることに期待するしかなさそうだ。
・『必ずしもトランプ外交は突然変異ではなく、共和党支持者の考え方の変化に後押しされているように感じられる。そうであるとすれば、トランプ外交は一過性の現象にとどまらず、共和党の外交姿勢が本格的に変質する可能性がある。果たして同盟国にとって共和党は、頼りになる政党であり続けられるのか。日本としても、予断なく事態を注視する必要がありそうだ』、なるほど。

次に、在独ジャーナリストの熊谷 徹氏が7月20日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「トランプ欧州歴訪が示したポピュリスト帝国主義の脅威」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/071900044/?P=1
・『プーチン氏にすり寄るかのような米国大統領の態度は、米国の保守派政治家たちの眉をひそめさせた。米国大統領の欧州歴訪は、ポピュリストが権力の座に就いた時に国際社会に生じる危険な「ねじれ」を浮き彫りにした。 ねじれ現象とは、冷戦時代に固い結束を誇っていた米国と西欧諸国が対立し、米国の大統領がかつての敵ロシアに対し奇妙なほど宥和的な態度を見せる状態だ。これまでの敵・味方の概念が通用しなくなりつつある』、言われてみれば、確かにその通りだ。
・『トランプ氏は「プーチン大統領は(米大統領選挙介入疑惑を)今日極めて力強く疑惑を否定した・・・」と強調した上で、「プーチン氏は、特別検察官が起訴した12人の諜報機関員の捜査のために、ロシア側の捜査官を協力させる準備があると言ってくれた。これは信じられないくらい素晴らしい提案だ」と相手をほめるかのような言葉も発した。 もしもロシアの捜査官を米国の捜査に参加させた場合、機微な捜査情報がロシア側に漏れたり、ロシア側が容疑者や証人に圧力をかけたりする可能性がある。特別検察官が「違法行為を行ったと見ている国」の捜査官をこの重要な疑惑の捜査に参加させるわけがない・・・ドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネは・・・社説で「トランプ氏は、自国の捜査当局よりもロシアの権力者の言葉を信じている。これはグロテスクだ」と論評した。そして「トランプ氏はプーチン氏の前でロシアの大国としての地位を承認して見せたようなものだ。もはや米国を西側社会の指導者と見ることは難しい」と厳しい批判の言葉を浴びせた』、どう見ても、ロシアへの弱腰外交は、かつて個人的秘密をロシアに握られたとの噂さえ本当ではないかと思えてくる。
・『NATO首脳会議の土壇場でのドイツなど欧州側の軟化に対し、『ドイツの論壇では「トランプ氏は他の国々をまるで手下であるかのように扱った」という強い不満の声が広がっている・・・「トランプ氏はマフィアのようなやり方で、首脳会議の行方を操った。欧州諸国はこの経験を教訓として、多国間関係を重視しなくなった米国と今後どう付き合っていくかについて、じっくりと考えなくてはならない」・・・同盟国の元外務次官が米国大統領の挙動を暴力団にたとえる。これは、オバマ政権の時代までは想像もできなかったことである』、ここまで米独の溝が深まったとは、驚いた。
・『トランプ氏とEU諸国の対立は、まだ始まったばかりだ。同氏は、自動車輸出などドイツが痛みを伴う分野での圧力を強めていくだろう。11月の中間選挙へ向けて、彼のドイツ・バッシングが一段と強まる恐れがある。欧州諸国は安全保障や貿易に関して、米国への依存度を減らそうとする動きを今後加速するに違いない。しかし米国依存度がこれまで高かったために、「脱米」のプロセスにはかなりの歳月がかかるだろう。世界が「ポピュリスト帝国主義」の暗雲から抜け出す道は、当分見つかりそうにない』、その通りで、今後注視してゆく必要がありそうだ。

第三に、在米ジャーナリストの高濱 賛氏が7月25日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した対談形式の「リアリティー次第で豹変する「トランプ原則」 フォックス・ニュースにみる「トランプ外交擁護論」」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/261004/072400073/?P=1
・『今の米国は真っ二つに割れています。客観的な尺度として世論調査を見ると、米国民の44%前後はトランプ大統領の政策を支持しています・・・それに米上下両院の過半数を占める与党共和党議員たちは一部(重鎮のジョン・マケイン上院議員=元共和党大統領候補のような議員)を除いて、トランプ大統領の政策を支持しています。トランプ大統領は党大会で正式指名を得た共和党の大統領候補ですから、逆らうと後(中間選挙)が怖いと考えているのでしょうね(笑)。中間選挙は4カ月先に迫っています。共和党幹部の中には「外交は選挙には響かない。選挙民の関心事は身近な経済・景気だけだ」と強気の姿勢を見せる者が少なくありません』、なるほど。
・『トランプ大統領のスローガンは「エスタブリッシュメントとの闘い」です。エスタブリッシュメントと言っても、既得権を得ているのは保守派だけではありません。米ニューヨーク・タイムズもエスタブリッシュメントの一角を占める堂々たる存在です。 トランプ氏がこうした主流メディアを嫌うのはそのためです。トランプ氏にしてみれば、いつまでもロシアゲート疑惑を追及する、政策の重箱の隅をつつく。中立性に欠ける主流メディアは度し難い存在です。これは感情論ではないのです。もっと根の深い政治スタンスをめぐる対立なんですね。 トランプ大統領と主流メディアとの対立は、おそらく、トランプ大統領が第1期の任期を終えるまで続くでしょう』、やはり主要メディアを見るだけでは実態は分からないようだ。
・『トランプ政権の発足から1年半たった今、トランプ支持のメディアとトランプ大統領に批判的なメディアとの論争は激しさを増しているのです・・・実は、一大イベントだった金正恩朝鮮労働党委員長とのシンガポール会談、ウラジミール・プーチン ロシア大統領との首脳会談の直後にトランプ大統領が単独インタビューに応じたのはフォックス・ニュースのショーン・ハニティ氏*だけです・・・口の悪いジャーナリストは「ハニティは今やトランプ大統領の政権外ブレーン兼宣伝部長に昇格しているよ」という者もいます』、フォックス・ニュースにとっては、恐らく視聴率も上がってウハウハなのではなかろうか。
・『「最初から壮大な外交構想を描いてそれに沿って外交を動かしていく歴代大統領もいたにはいた。しかしトランプ大統領は異なる。トランプ大統領は、新たなリアリティーに直面するや、これまでの政策や路線は一切無視して、戦術的に動く」・・・言ってみれば「ドクトリンなきトランプ・ドクトリン」ということになりますね』、なるほど。
・『今ワシントン政界筋で囁かれているのが「バノン・カムバック説」です。前首席戦略官のスティーブ・バノン氏が政権の外にいて、いろいろ相談相手になっているというのです・・・それに前述のハニティ氏も「パブリック・ディプロマシー」部門ではいろいろの助言を与えているはずです。 中国との貿易戦争が勃発しました。「宣戦布告」の筋書きを描いたのは対中強硬派の急先鋒、ピーター・ナバロ国家通商会議(NTC)議長・・・とされています。政権発足から1年半、ナバロ氏はあまり表立った動きはしていませんでした。対中貿易が浮上したことで大統領との距離が縮まり、ロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表やウィルバー・ロス商務長官を飛び越える存在になっているとされます。 つまりトランプ大統領のブレーンは、個々の政策・局面でピックアップされて大統領に仕えているのです』、USTR代表や商務長官にとってみれば、個々の政策・局面で自分の頭越しにトランプ大統領に政策提言されるというのは、さぞかし居心地が悪いのではなかろうか。
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