外食産業(その4)(スシローが客に「2つの裏切り」 おとり広告のひどすぎる実態とは、スシロー くら寿司 「寿司テロ」なぜ格安チェーンばかりで起こる?せっかくの努力が裏目に出ている可能性、「回転ずしテロ」の大きすぎる代償 高額の賠償金や懲役・罰金の可能性は) [産業動向]
外食産業については、2021年7月19日付けで取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(スシローが客に「2つの裏切り」 おとり広告のひどすぎる実態とは、スシロー くら寿司 「寿司テロ」なぜ格安チェーンばかりで起こる?せっかくの努力が裏目に出ている可能性、「回転ずしテロ」の大きすぎる代償 高額の賠償金や懲役・罰金の可能性は)である。
先ずは、昨年6月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した消費者問題研究所代表・食品問題評論家の垣田達哉氏による「スシローが客に「2つの裏切り」、おとり広告のひどすぎる実態とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304738
・『6月9日、消費者庁は、回転ずし「スシロー」の運営会社「あきんどスシロー」(以降スシロー)に対し、景品表示法に違反する行為(おとり広告に該当)が認められたとして、再発防止を求める措置命令という行政処分を行った。スシローのあきれた集客行為の実態とは』、興味深そうだ。
・『おとり商品で集客し別商品を売りつける手口 おとり広告とは「実際には買えないのに、買えるかのような広告をして顧客を呼び寄せること」である。チラシ広告などで「超特価品100点限り」と表示しているにもかかわらず、この商品を全く用意していない場合や表示した量より少ない量しか用意していない場合、消費者(顧客)が店を訪問したとき「まだ開店したばかりなのに売り切れ!」となる。 そこで店側は「大好評のため品切れになりましたので、他の商品をご用意いたしました」「あっちは売り切れたので、こっちを買ってください」と別の商品を売りつけるのだ。 スーパーなどの小売店(物販店)やスシローのような飲食店は、顧客が店舗に来てくれなければ商売ができない。逆に顧客が店にさえ来れば、何も買わずに帰る客もいるが、多くは何かを買ってくれる(食べてくれる)のだ。ウェブサイトでも同じだが、サイトに来てくれなければ商売が始まらない。そこで販売する側は、顧客誘引のためにいろいろな手段を使う。 今回、公正取引委員会(以降公取委)(※注)は、スシローの違反行為であるおとり広告について後述する2点を指摘している。 ※景品表示法の所管は消費者庁だが、地方に出先機関がない消費者庁は、今回も公取委に調査を依頼している。スシローの違反記者会見も、関西の公取委が主催している』、「おとり商品で集客し別商品を売りつける手口 とは悪質だ。
・『全国9割以上の店舗で販売停止の違反行為 そもそもおとり広告とは、公取委の告示によれば、次の4つと規定されている。 (1)取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示 (2)取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品又は役務についての表示 (3)取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品又は役務についての表示 (4)取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示 上記の(4)に「実際には取引する意思がない場合(の広告)」がある。ある商品を販売する日(あるいは時間)を広告に掲載しているにもかかわらず、初めから掲載した商品を販売するつもりがなかった場合は違反となる。 公取委が指摘したスシローの違反行為の一つがこれである。 スシローが昨秋に実施したキャンペーンの中で「新物!濃厚うに包み」(期間は21年9月8日~20日)と「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」(期間は21年9月8日~10月3日)の2商品について、「新物!濃厚うに包み」は21年9月14日~17日までの4日間、「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」は21年9月18日~20日までの3日間、スシローは、どちらも販売を終日停止することを21年9月13日に決定し、各店舗の店長等に周知していた。販売停止を決めていた(販売する意思がなかった)にもかかわらず、消費者には通知していなかったのだ。 スシローは、自社のウェブサイトだけでなく地上波でのテレビコマーシャルもしている。サイトやCMで中止が告知されていないので、多くの消費者が中止されていることを知らずに、ウニを目当てに店舗を訪れていた可能性がある。まさに、ウニをおとりに集客していたことになるのだ。 販売停止の決定により、終日提供しなかった日がある店舗が「新物!濃厚うに包み」は583店舗、「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」は540店舗もあった。おとり広告は、1店舗であろうと、違反行為が1日間だけであっても違反となる。だが、スシローは全国594店舗(当時)の大半で違反行為を行っていたのである』、「スシローは全国594店舗(当時)の大半で違反行為を行っていた」とは極めて悪質だ。
・『キャンペーン期間中に1日も販売しない店舗も 公取委が指摘したスシローの違反行為の二つ目が、先述の「おとり広告」規定の(1)にある「取引を行うための準備がなされていない場合」である。広告で打ち出した商品を準備すらしていないのだから、当然ながらそれを目当てに来店した顧客に販売できるはずがない。 スシローは「冬の味覚!豪華かにづくし」(期間は21年11月26日~12月12日)について、提供するための準備をしておらず、終日提供しなかった日がある店舗は583店舗ある。 その中で、すでにキャンペーンの初日(21年11月26日)に販売していなかった(欠品していた)店が、583店舗中4店舗ある。しかも大阪府の歌島店は、期間中(21年11月26日~12月12日)の17日間、この商品が一切販売されていなかった。 さらに、キャンペーン期間である17日間のうち、開始早々の21年11月中(26日~30日)に欠品を起こしていた店は、583店舗中30%強、期間中の半分(9日間)以上提供できなかった店は70%強あった。 こうした事実から、公取委は「提供するための準備をしていなかった」と断定している』、「「提供するための準備をしていなかった」と断定」、悪質そのものだ。
・『表示内容が不明確だったスシローの「売切御免」 一般的に「売切御免」といった広告を打つ場合、普通は「○○点限り」のように販売点数を明示するとか「午前9時~午後12時まで」というように時間や販売日を限定した売り方をする。そういう表示があれば、消費者は「限定数が売り切れる前に行こう」とか「限定された時間内に行こう」とする。 ところがスシローは、今回問題となったキャンペーンで、期間を明示するとともに「売り切れ御免」という表示もしているが、そもそも売り切れが何のことを言っているのか、非常に不明確だった。 スシローは「いつの時点でも売り切れたら販売を中止する」という意味で使ったのかもしれないが、公取委は「期間中すべての日で提供するかのような表示をしていた」として、「売切御免と表示しても、期間中はすべて提供する必要がある」と、明確に否定している。だからこそ「終日販売されていなかった店舗」を問題にしている。 これは当然の判断である。期間を明示しておきながら、その一部の日だけ販売することが許されれば、例えば「6月1日から30日の期間、○○半額!売切御免!」と表示をしておいて、消費者が開始2日目に行ったときに「昨日で売り切れました」とすることが可能になってしまう。 スシローは、数量を一切表示することなく「売切御免」と表示をしていた。しかし公取委は、少なくとも「日を超えての売切御免は違反である」ことを指摘しているのだ。 ただし、今回は「一日中販売されていなかった店舗だけ」が公表されたのであって、終日ではなく「午前中に完売」「数時間だけしか販売していなかった」というように、限定販売されていた店もあるだろう。 実際の販売数量が公表されていないので、売り切れがいつ起こったのかは判断しようがないが、「朝早く行ったのになかった」「午前中に行ったのに売り切れていた」といったことも起きていたかもしれない』、「数量を一切表示することなく「売切御免」と表示」、不当だ。
・『公取委がスシローを摘発した2つの意味 公取委が、スシローのおとり広告を摘発した意味は二つある。 一つは、飲食店業界および物販業界への警鐘である。最近は、消費者の購買意欲をかき立てすぎているような「あおり広告」が多くなっている。公取委は、今回の違反事例では「広告と実態がかい離しないこと」「安易に『売切御免』という表示を使わないこと」を警告している。 また、スーパーマーケットのような小売店だけでなく「飲食店業界も監視・摘発するぞ」と忠告をしているのだ。 そしてもう一つが、消費者への注意喚起である。スシローのようなキャンペーン広告は、どの業界でも頻繁に見られる。そのとき、消費者が「これって変だよな?」「裏切られた感じがする」といった感覚を持ったときは、公取委や消費者庁にもどんどん通報してくださいとPRしているのだ。 公取委が記者会見で述べているが、実際、今回の件では、消費者からの苦情がスシローには多数届いていたようである。 景品表示法は、一般消費者の利益を守ることと同様、正直に商売をしている事業者を守ることも目的である。そういう意味では、今回のスシロー摘発は、消費者にも事業者にも大きなインパクトを与えたといえるだろう』、「公取委は、今回の違反事例では「広告と実態がかい離しないこと」「安易に『売切御免』という表示を使わないこと」を警告」、「消費者が「これって変だよな?」「裏切られた感じがする」といった感覚を持ったときは、公取委や消費者庁にもどんどん通報してくださいとPRしている」、「公取委」には大いに頑張ってもらいたい。
次に、本年2月1日付け東洋経済オンラインが掲載したフードジャーナリストの三輪 大輔氏による「「寿司テロ」格安チェーンばかりで起こる特殊事情」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/649825
・『いわゆる「回転寿司テロ」が止まらない。「もう回転寿司には行けない」という声も聞こえてきて、回転寿司業界が対策に追われている。事の発端は、「はま寿司」で撮影された、レーンを流れる寿司にワサビを勝手に乗せる動画だ。これを皮切りに、「スシロー」や「くら寿司」でも、類似のイタズラ動画がSNSで次々と拡散されている。中には4年前のものと見られるものある。 こうした問題に対して、回転寿司各社は毅然とした対応を取る姿勢を示している。はま寿司を運営する株式会社はま寿司は、客からの謝罪の申し入れを断り、警察に相談の上、被害届を提出。同様に、スシローを運営するあきんどスシローも「警察と相談し刑事民事の両面から厳正に対処する」という声明を発表するとともに、くら寿司も過去にさかのぼって警察に相談し、場合によっては相応の対応を取っていく。 ただ今回の回転寿司テロは、いわゆる100円回転寿司チェーンと呼ばれる店舗で起きている。「回転寿司 根室花まる」や「金沢まいもん寿司」「がってん寿司」に代表されるグルメ系回転寿司ではまだ同様の事件が起きていない』、「今回の回転寿司テロは、いわゆる100円回転寿司チェーンと呼ばれる店舗で起きている。・・・グルメ系回転寿司ではまだ同様の事件が起きていない」、不思議だ。
・『回転寿司チェーンが力を入れる3つの戦略 あくまで現時点では、という前提だが、回転寿司テロが100円回転寿司チェーン特有の問題とすると、その背景には「低価格の維持」と「テクノロジー化」「ファミレス化」という回転寿司チェーンならではの戦略の課題が見えてきた。 まず低価格の維持だ。原材料費の高騰などの理由により、昨年、スシローが最低価格を一皿120円、くら寿司が一皿115円に値上げを行い、大きな話題を呼んだ。しかし、スシローは中国では一皿170円の価格設定をする一方、アメリカで店舗展開をするくら寿司も現地では一皿300円と日本より高価格で提供している。 各国で給与水準が違うので、単純な物価比較はできないが、日本で値段を上げられない背景には、多くの日本人の可処分所得が減っている事情がある。実際、スシローやくら寿司が値上げをしたときも、「回転寿司にいきづらくなる」という声が聞こえていた。今後、さらなる値上げとなると、どれだけ受け入れられるかは不透明だ。 一方、原材料費だけでなく人件費の高騰も続いている。東京都と神奈川県、大阪府では、アルバイトの最低時給が1000円を超えた。一方で、外食業界は慢性的な人手不足に悩まされている。必要な人材を確保するには、平均以上に時給を上げざるを得ない。その結果、あまり人数をかけると低価格が維持できなくなってしまう事態が起きている。 また、そもそも回転寿司は原価率も高い。一般的な飲食店では原価率が20〜30%だ。その中で100円回転寿司チェーンだと40%を超えて、中には50%近い企業もある。つまり、お客にそれだけ還元しているということだ。 こうした中、低価格を守るため、各社がテクノロジーの活用に力を注いでいる。自動案内やタッチパネルでの注文、セルフレジが導入され、入店から退店までスタッフとコミュニケーションをしなくてもいい店舗もあるほどだ。テクノロジーは仕入れや物流、調理にも利用されている』、「回転寿司は原価率も高い・・・100円回転寿司チェーンだと40%を超えて、中には50%近い企業も」、「低価格を守るため、各社がテクノロジーの活用に力を注いでいる」、なるほど。
・『周りの目が届きにくい環境になっている 最後に、ファミレス化だ。近年、回転寿司は業態として進化を続け、デザートやサイドメニューなどが豊富になり、ファミレスと遜色のないメニューラインアップとなっている。コロナ禍では、「ガスト」や「ロイヤルホスト」が大量閉店してファミレスの苦戦が目立った一方、回転寿司は家族連れを中心に好調だった。 コロナ禍で息苦しさのある日常の中、寿司という贅沢感のある食べ物を、家族や気の置けない仲間とゆっくりと楽しめる点が人気を集めた要因だろう。コロナ禍の勝ち組とまで言われたのが回転寿司業界だ。 以上を踏まえて、なぜ回転寿司テロが100円回転寿司チェーンで多発しているのかを探っていきたい。 100円回転寿司チェーンの客単価は1000円〜2000円なうえ、メニューが豊富なので幅広い層が来店しやすい。加えて、店内にはファミリーでゆっくりと過ごせるボックス席が並ぶとともに、テクノロジーの活用で省人化が進んでいる。つまり、店員やほかの客の目を盗みやすい座席も少なくなく、“悪ノリ”をしやすい環境になってしまっているのではないか。) それでは、どうすれば同様の事件が防げるのだろうか。もちろん刑事民事の両面から厳正に対処する方法も効果を発揮するだろう。実際、過去にくら寿司は、飲食店を中心に相次いだ「バイトテロ」の流れに終止符を打った実績を持つ。 2019年2月5日、くら寿司のアルバイトが、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻す様子が撮影された動画がSNSで拡散され、一気に炎上した。その3日後、くら寿司は法的措置を取る準備を始めたとのニュースリリースを発表。 そこに「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影したSNSの投稿に対し、当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、抑止力とするため」という理由が記載されていて、当時、大きな話題を呼んだ。ただそれ以来、大きな問題となるバイトテロが起きていないので、今回の回転寿司テロでも一定の抑止力になるだろう』、「コロナ禍の勝ち組とまで言われたのが回転寿司業界」、「店員やほかの客の目を盗みやすい座席も少なくなく、“悪ノリ”をしやすい環境になってしまっている」、「刑事民事の両面から厳正に対処する方法も効果を発揮するだろう。実際、過去にくら寿司は、飲食店を中心に相次いだ「バイトテロ」の流れに終止符を打った実績を持つ」、なるほど。
・『防犯カメラの設置は現実的ではない 合わせて、現場レベルでの改善も必要だ。防犯カメラの設置という案があるが、客と店との信頼関係の構築が難しくなるため現実的ではない。また、店内でスタッフが行き交う環境をつくるために人数を増やす案もあるが、そうなると今以上に値上げをしないとビジネスが成り立たなくなる。それを客が許容してくれるかというと難しいだろう。 となると、テクノロジーで解決するしかない。突破口は、同じくくら寿司の「抗菌寿司カバー」だ。抗菌寿司カバーは、ウイルスや飛沫から寿司を守ってくれるため、コロナ禍では人気が高かった。 それを活用して、注文者しか開けない仕組みにしたりすれば、こうしたイタズラを防げる可能性が高い。さらなる設備投資が必要になるが、回転寿司テロをきっかけに起こる客離れを考えたら安いものだろう。 もともと回転寿司は、高級だった寿司を庶民でも楽しめるようにと考案された業態だ。その後、各社の熱意と独創性があって、誰もが手軽に寿司を食べられることが当たり前となった。今回も業界の創意工夫が問題を解決し、誰もが安心、安全に寿司を楽しめる環境を実現することを、いち回転寿司ファンとして期待している』、「防犯カメラの設置は現実的ではない」、「突破口は、同じくくら寿司の「抗菌寿司カバー」だ。抗菌寿司カバーは、ウイルスや飛沫から寿司を守ってくれるため、コロナ禍では人気が高かった。 それを活用して、注文者しか開けない仕組みにしたりすれば、こうしたイタズラを防げる可能性が高い。さらなる設備投資が必要になるが、回転寿司テロをきっかけに起こる客離れを考えたら安いものだろ」、「誰もが安心、安全に寿司を楽しめる環境を実現」してほしいものだ。
第三に、2月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「回転ずしテロ」の大きすぎる代償、高額の賠償金や懲役・罰金の可能性は」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317356
・『今年に入り、回転ずしチェーン店で商品や備品にいたずらする映像がSNSで相次いで出回った。炎上後、謝罪を申し出た投稿者もいたが、事態を重く見た回転ずし店側は受け入れを拒否。刑事・民事での責任追及を表明した。刑事的にはさまざまな罪が考えられ、民事的にも店側の損害が大きく、賠償金も高額になる可能性もある』、「謝罪を申し出た投稿者もいたが、事態を重く見た回転ずし店側は受け入れを拒否。刑事・民事での責任追及を表明した」、法的にハッキリさせるのは望ましい。
・『謝罪受け入れ拒否し「正な対処」表明 最初に発覚したのは1月7日頃だった。TikTokに若い男性がレーンに流れてくる2貫のすしのうち1貫を箸でつまんで食べる動画が拡散。「おいしそうだったので食べちゃいました#人の注文#はま寿司」の文字が入っていた。 同9日ごろには、インスタグラムのストーリーで同じく「はま寿司」で撮影された「他人握りわさび乗せ」の文字が入った動画が投稿された。見る限り、他人が注文したすしにわさびを混入したようだ。これは24時間で削除されたが、数日後、ツイッターで拡散され一気に炎上した。 はま寿司はわさびを入れたとみられる人物から店舗に電話で謝罪の申し入れがあったとしているが、受け入れを拒否。既に警察に被害届を提出している。 同24日ごろには「くら寿司」で、若い男性3人がお皿の回収口にヘディングするように投入したり、一度取ったお皿をレーンに戻す動画が拡散された。レーンに流れている商品から4年前に撮影されたとみられるという。くら寿司も、警察に相談する意向を示している。 同29日ごろには「スシロー」で、男性客がテーブルのしょうゆ差しの注ぎ口や積まれた湯飲み茶碗の周囲をなめ回したり、つばを付けた手でレーンを流れるすしにこすりつけたりしている動画が拡散。瞬く間に炎上した。この動画もストーリーズ(注)に投稿されたとみられる。 スシローは同30日、公式サイトで「刑事、民事の両面から厳正に対処してまいります」と表明。さらに2月1日には店舗が岐阜市内の店舗だったことを公表し、当事者と保護者から連絡があり、会って謝罪を受けたことを明らかにしたが「厳正に対処」の方針は維持する構えだ』、バイト・テロ事件の時と同じように面白がって悪ふざけをしているようだ。
(注)ストーリーズ:スライドショーのような形式で、画像や動画が投稿できるインスタグラムの機能(COLOR ME)。
・『窃盗や器物損壊 業務妨害罪の可能性も それでは、それぞれの行為は刑事・民事でどれぐらいのペナルティーが科せられるのだろうか。 まず刑事だが、他人が注文したすしを食べたはま寿司のケースでは、その客が1貫を取られたことに気付かずお皿を取ってしまった場合は客が、おかしいと気付いた客がお皿を取らなければ店が、被害者となり窃盗罪(刑法235条)に該当する可能性が考えられ、10年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。 わさびを混入したり、一度取ったお皿を戻したりする行為、しょうゆ差しの注ぎ口をなめ回したりする行為は、器物損壊罪(刑法261条)の可能性がある。同罪は「他人の物を損壊・傷害」することが前提だが、実際に壊さなくても心理的に使用できなくしたり、その価値を低下させたりする行為も損壊とみなされ、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となる。 そのほか、動画が拡散した結果について偽計業務妨害罪(刑法233条)か威力業務妨害罪(同234条)に問われる可能性がある。いずれも「他人の業務を妨害する」点で一致しているが、特徴としては偽計が「不可視的」、威力が「可視的」に妨害する行為と解釈され、両罪とも3年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。 もちろん、複数の罪に問われる可能性もある。加えて当事者だけでなく、撮影や動画を拡散したり、一緒にいてけしかけたりした仲間も、共犯や幇助(ほうじょ)として刑事責任が問われる可能性も考えられる』、「客が1貫を取られたことに気付かずお皿を取ってしまった場合は客が、おかしいと気付いた客がお皿を取らなければ店が、被害者となり窃盗罪(刑法235条)に該当する可能性」、「わさびを混入したり、一度取ったお皿を戻したりする行為、しょうゆ差しの注ぎ口をなめ回したりする行為は、器物損壊罪(刑法261条)の可能性」、「撮影や動画を拡散したり、一緒にいてけしかけたりした仲間も、共犯や幇助(ほうじょ)として刑事責任が問われる可能性も」、なるほど。
・『民事での賠償額は数十万~数百万円か 民事ではどうか。SNSではスシローの株価が一日で百数十億円下落したことを受け「株価が下がった分を損害として賠償請求すべき」などのコメントが散見されるが、そもそも株価下落で損害を被ったのは株主であり、スシロー側ではない。 損害賠償請求訴訟を起こすなら株主であり、所有する株価が下がったことによる金額を請求するのが筋だろうが、動画が拡散した事実と株価が下がった因果関係を法的に立証するのはまず不可能で、現実的ではないだろう。 それではどれぐらいの請求額になるのだろうか。株価と同様、動画が拡散した事実と売り上げが減少した(場合の)因果関係を法的に立証するのは難しい。ただ、各社とも「厳正な対処」を表明しているだけに、清掃や備品の入れ替え・交換などにかかった実費だけ請求というわけにはいかないだろう。 全国紙社会部デスクによると、実はこうした行為に対する損害賠償請求訴訟というのはあまり例がなく、具体的な相場というのは不明らしい。ただ、東京都多摩市の老舗そば店で2013年、アルバイトの男子大学生4人が「洗浄機で洗われてきれいになっちゃった」のコメントを付けて洗浄機に横たわったり、顔を突っ込んだりする画像などを投稿。 ネットで炎上する事態となり、倒産に追い込まれたそば店は4人に1385万円の損害賠償を求めて訴訟を起こしたが、結局、200万円を支払うことで和解が成立したケースがあった。ただ、この訴訟はそば店が個人経営で、さまざまな出来事が重なったこともあり疲れ果てていたのだろうと推測される。 しかし、回転ずしチェーン各社は違う。全国展開する組織力と財力があり、抑止力・再発防止のためには中途半端な交渉に応じるつもりはないだろう。 前述のデスクは「この件で弁護士何人かと話しましたが『よくて実費だけ』『風評被害なども含め実費プラスアルファ』『動画拡散前と直後の売り上げを精査しきっちり請求すべき』など、回答はまちまちでした。ただ『払えない金額を請求してもペナルティーにはならない』という点では一致しており、行為によって数十万~数百万円と幅がある気はします」と説明。その上で「やはりスシローの件は高額になるでしょう」と予想した』、「行為によって数十万~数百万円と幅がある気はします」、「やはりスシローの件は高額になるでしょう」、なるほど。
・『回転ずしチェーン各社が毅然とした対応を行う理由 本稿では刑事・民事両面での展開について言及したが、実は刑事については非行歴のない未成年であれば「厳重注意」程度で、実際に罪に問われる可能性は薄いとみられる。 しかし民事では、客と店とのルールと信頼関係で成り立っている営業スタイルを根幹から揺るがすような悪質な行為のため、回転ずしチェーン各社が一斉に謝罪を拒否する姿勢で連帯しているように見える。 ぬるい対応では模倣犯が出たり、迷惑系ユーチューバーらが「この程度か」と高をくくり、アクセス数を稼ぐためやりたい放題になったりする可能性さえあるからだろう。 回転ずしチェーン各社は訴訟で請求が認められるかどうかではなく、とにかく毅然(きぜん)とした対応を示すことを最優先している。おそらく、和解などには応じるつもりはないだろう。そうなれば、刑事裁判と違い、民事訴訟は組織力・財力が勝負を決める事が多く、回転ずしチェーン各社vs一般市民では、結果がどうなるかはいわずもがなだ。 当事者や投稿者は「ちょっとしたいたずら」「目立ちたかった」レベルのつもりだったのだろうが、その代償は思いのほか高くつくことになりそうだ』、「回転ずしチェーン各社は訴訟で請求が認められるかどうかではなく、とにかく毅然(きぜん)とした対応を示すことを最優先している。おそらく、和解などには応じるつもりはないだろう。そうなれば、刑事裁判と違い、民事訴訟は組織力・財力が勝負を決める事が多く、回転ずしチェーン各社vs一般市民では、結果がどうなるかはいわずもがなだ」、「当事者や投稿者は「ちょっとしたいたずら」「目立ちたかった」レベルのつもりだったのだろうが、その代償は思いのほか高くつくことになりそうだ」、今後の「刑事裁判」「民事訴訟」の行方が注目される。
先ずは、昨年6月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した消費者問題研究所代表・食品問題評論家の垣田達哉氏による「スシローが客に「2つの裏切り」、おとり広告のひどすぎる実態とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304738
・『6月9日、消費者庁は、回転ずし「スシロー」の運営会社「あきんどスシロー」(以降スシロー)に対し、景品表示法に違反する行為(おとり広告に該当)が認められたとして、再発防止を求める措置命令という行政処分を行った。スシローのあきれた集客行為の実態とは』、興味深そうだ。
・『おとり商品で集客し別商品を売りつける手口 おとり広告とは「実際には買えないのに、買えるかのような広告をして顧客を呼び寄せること」である。チラシ広告などで「超特価品100点限り」と表示しているにもかかわらず、この商品を全く用意していない場合や表示した量より少ない量しか用意していない場合、消費者(顧客)が店を訪問したとき「まだ開店したばかりなのに売り切れ!」となる。 そこで店側は「大好評のため品切れになりましたので、他の商品をご用意いたしました」「あっちは売り切れたので、こっちを買ってください」と別の商品を売りつけるのだ。 スーパーなどの小売店(物販店)やスシローのような飲食店は、顧客が店舗に来てくれなければ商売ができない。逆に顧客が店にさえ来れば、何も買わずに帰る客もいるが、多くは何かを買ってくれる(食べてくれる)のだ。ウェブサイトでも同じだが、サイトに来てくれなければ商売が始まらない。そこで販売する側は、顧客誘引のためにいろいろな手段を使う。 今回、公正取引委員会(以降公取委)(※注)は、スシローの違反行為であるおとり広告について後述する2点を指摘している。 ※景品表示法の所管は消費者庁だが、地方に出先機関がない消費者庁は、今回も公取委に調査を依頼している。スシローの違反記者会見も、関西の公取委が主催している』、「おとり商品で集客し別商品を売りつける手口 とは悪質だ。
・『全国9割以上の店舗で販売停止の違反行為 そもそもおとり広告とは、公取委の告示によれば、次の4つと規定されている。 (1)取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示 (2)取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品又は役務についての表示 (3)取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品又は役務についての表示 (4)取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示 上記の(4)に「実際には取引する意思がない場合(の広告)」がある。ある商品を販売する日(あるいは時間)を広告に掲載しているにもかかわらず、初めから掲載した商品を販売するつもりがなかった場合は違反となる。 公取委が指摘したスシローの違反行為の一つがこれである。 スシローが昨秋に実施したキャンペーンの中で「新物!濃厚うに包み」(期間は21年9月8日~20日)と「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」(期間は21年9月8日~10月3日)の2商品について、「新物!濃厚うに包み」は21年9月14日~17日までの4日間、「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」は21年9月18日~20日までの3日間、スシローは、どちらも販売を終日停止することを21年9月13日に決定し、各店舗の店長等に周知していた。販売停止を決めていた(販売する意思がなかった)にもかかわらず、消費者には通知していなかったのだ。 スシローは、自社のウェブサイトだけでなく地上波でのテレビコマーシャルもしている。サイトやCMで中止が告知されていないので、多くの消費者が中止されていることを知らずに、ウニを目当てに店舗を訪れていた可能性がある。まさに、ウニをおとりに集客していたことになるのだ。 販売停止の決定により、終日提供しなかった日がある店舗が「新物!濃厚うに包み」は583店舗、「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」は540店舗もあった。おとり広告は、1店舗であろうと、違反行為が1日間だけであっても違反となる。だが、スシローは全国594店舗(当時)の大半で違反行為を行っていたのである』、「スシローは全国594店舗(当時)の大半で違反行為を行っていた」とは極めて悪質だ。
・『キャンペーン期間中に1日も販売しない店舗も 公取委が指摘したスシローの違反行為の二つ目が、先述の「おとり広告」規定の(1)にある「取引を行うための準備がなされていない場合」である。広告で打ち出した商品を準備すらしていないのだから、当然ながらそれを目当てに来店した顧客に販売できるはずがない。 スシローは「冬の味覚!豪華かにづくし」(期間は21年11月26日~12月12日)について、提供するための準備をしておらず、終日提供しなかった日がある店舗は583店舗ある。 その中で、すでにキャンペーンの初日(21年11月26日)に販売していなかった(欠品していた)店が、583店舗中4店舗ある。しかも大阪府の歌島店は、期間中(21年11月26日~12月12日)の17日間、この商品が一切販売されていなかった。 さらに、キャンペーン期間である17日間のうち、開始早々の21年11月中(26日~30日)に欠品を起こしていた店は、583店舗中30%強、期間中の半分(9日間)以上提供できなかった店は70%強あった。 こうした事実から、公取委は「提供するための準備をしていなかった」と断定している』、「「提供するための準備をしていなかった」と断定」、悪質そのものだ。
・『表示内容が不明確だったスシローの「売切御免」 一般的に「売切御免」といった広告を打つ場合、普通は「○○点限り」のように販売点数を明示するとか「午前9時~午後12時まで」というように時間や販売日を限定した売り方をする。そういう表示があれば、消費者は「限定数が売り切れる前に行こう」とか「限定された時間内に行こう」とする。 ところがスシローは、今回問題となったキャンペーンで、期間を明示するとともに「売り切れ御免」という表示もしているが、そもそも売り切れが何のことを言っているのか、非常に不明確だった。 スシローは「いつの時点でも売り切れたら販売を中止する」という意味で使ったのかもしれないが、公取委は「期間中すべての日で提供するかのような表示をしていた」として、「売切御免と表示しても、期間中はすべて提供する必要がある」と、明確に否定している。だからこそ「終日販売されていなかった店舗」を問題にしている。 これは当然の判断である。期間を明示しておきながら、その一部の日だけ販売することが許されれば、例えば「6月1日から30日の期間、○○半額!売切御免!」と表示をしておいて、消費者が開始2日目に行ったときに「昨日で売り切れました」とすることが可能になってしまう。 スシローは、数量を一切表示することなく「売切御免」と表示をしていた。しかし公取委は、少なくとも「日を超えての売切御免は違反である」ことを指摘しているのだ。 ただし、今回は「一日中販売されていなかった店舗だけ」が公表されたのであって、終日ではなく「午前中に完売」「数時間だけしか販売していなかった」というように、限定販売されていた店もあるだろう。 実際の販売数量が公表されていないので、売り切れがいつ起こったのかは判断しようがないが、「朝早く行ったのになかった」「午前中に行ったのに売り切れていた」といったことも起きていたかもしれない』、「数量を一切表示することなく「売切御免」と表示」、不当だ。
・『公取委がスシローを摘発した2つの意味 公取委が、スシローのおとり広告を摘発した意味は二つある。 一つは、飲食店業界および物販業界への警鐘である。最近は、消費者の購買意欲をかき立てすぎているような「あおり広告」が多くなっている。公取委は、今回の違反事例では「広告と実態がかい離しないこと」「安易に『売切御免』という表示を使わないこと」を警告している。 また、スーパーマーケットのような小売店だけでなく「飲食店業界も監視・摘発するぞ」と忠告をしているのだ。 そしてもう一つが、消費者への注意喚起である。スシローのようなキャンペーン広告は、どの業界でも頻繁に見られる。そのとき、消費者が「これって変だよな?」「裏切られた感じがする」といった感覚を持ったときは、公取委や消費者庁にもどんどん通報してくださいとPRしているのだ。 公取委が記者会見で述べているが、実際、今回の件では、消費者からの苦情がスシローには多数届いていたようである。 景品表示法は、一般消費者の利益を守ることと同様、正直に商売をしている事業者を守ることも目的である。そういう意味では、今回のスシロー摘発は、消費者にも事業者にも大きなインパクトを与えたといえるだろう』、「公取委は、今回の違反事例では「広告と実態がかい離しないこと」「安易に『売切御免』という表示を使わないこと」を警告」、「消費者が「これって変だよな?」「裏切られた感じがする」といった感覚を持ったときは、公取委や消費者庁にもどんどん通報してくださいとPRしている」、「公取委」には大いに頑張ってもらいたい。
次に、本年2月1日付け東洋経済オンラインが掲載したフードジャーナリストの三輪 大輔氏による「「寿司テロ」格安チェーンばかりで起こる特殊事情」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/649825
・『いわゆる「回転寿司テロ」が止まらない。「もう回転寿司には行けない」という声も聞こえてきて、回転寿司業界が対策に追われている。事の発端は、「はま寿司」で撮影された、レーンを流れる寿司にワサビを勝手に乗せる動画だ。これを皮切りに、「スシロー」や「くら寿司」でも、類似のイタズラ動画がSNSで次々と拡散されている。中には4年前のものと見られるものある。 こうした問題に対して、回転寿司各社は毅然とした対応を取る姿勢を示している。はま寿司を運営する株式会社はま寿司は、客からの謝罪の申し入れを断り、警察に相談の上、被害届を提出。同様に、スシローを運営するあきんどスシローも「警察と相談し刑事民事の両面から厳正に対処する」という声明を発表するとともに、くら寿司も過去にさかのぼって警察に相談し、場合によっては相応の対応を取っていく。 ただ今回の回転寿司テロは、いわゆる100円回転寿司チェーンと呼ばれる店舗で起きている。「回転寿司 根室花まる」や「金沢まいもん寿司」「がってん寿司」に代表されるグルメ系回転寿司ではまだ同様の事件が起きていない』、「今回の回転寿司テロは、いわゆる100円回転寿司チェーンと呼ばれる店舗で起きている。・・・グルメ系回転寿司ではまだ同様の事件が起きていない」、不思議だ。
・『回転寿司チェーンが力を入れる3つの戦略 あくまで現時点では、という前提だが、回転寿司テロが100円回転寿司チェーン特有の問題とすると、その背景には「低価格の維持」と「テクノロジー化」「ファミレス化」という回転寿司チェーンならではの戦略の課題が見えてきた。 まず低価格の維持だ。原材料費の高騰などの理由により、昨年、スシローが最低価格を一皿120円、くら寿司が一皿115円に値上げを行い、大きな話題を呼んだ。しかし、スシローは中国では一皿170円の価格設定をする一方、アメリカで店舗展開をするくら寿司も現地では一皿300円と日本より高価格で提供している。 各国で給与水準が違うので、単純な物価比較はできないが、日本で値段を上げられない背景には、多くの日本人の可処分所得が減っている事情がある。実際、スシローやくら寿司が値上げをしたときも、「回転寿司にいきづらくなる」という声が聞こえていた。今後、さらなる値上げとなると、どれだけ受け入れられるかは不透明だ。 一方、原材料費だけでなく人件費の高騰も続いている。東京都と神奈川県、大阪府では、アルバイトの最低時給が1000円を超えた。一方で、外食業界は慢性的な人手不足に悩まされている。必要な人材を確保するには、平均以上に時給を上げざるを得ない。その結果、あまり人数をかけると低価格が維持できなくなってしまう事態が起きている。 また、そもそも回転寿司は原価率も高い。一般的な飲食店では原価率が20〜30%だ。その中で100円回転寿司チェーンだと40%を超えて、中には50%近い企業もある。つまり、お客にそれだけ還元しているということだ。 こうした中、低価格を守るため、各社がテクノロジーの活用に力を注いでいる。自動案内やタッチパネルでの注文、セルフレジが導入され、入店から退店までスタッフとコミュニケーションをしなくてもいい店舗もあるほどだ。テクノロジーは仕入れや物流、調理にも利用されている』、「回転寿司は原価率も高い・・・100円回転寿司チェーンだと40%を超えて、中には50%近い企業も」、「低価格を守るため、各社がテクノロジーの活用に力を注いでいる」、なるほど。
・『周りの目が届きにくい環境になっている 最後に、ファミレス化だ。近年、回転寿司は業態として進化を続け、デザートやサイドメニューなどが豊富になり、ファミレスと遜色のないメニューラインアップとなっている。コロナ禍では、「ガスト」や「ロイヤルホスト」が大量閉店してファミレスの苦戦が目立った一方、回転寿司は家族連れを中心に好調だった。 コロナ禍で息苦しさのある日常の中、寿司という贅沢感のある食べ物を、家族や気の置けない仲間とゆっくりと楽しめる点が人気を集めた要因だろう。コロナ禍の勝ち組とまで言われたのが回転寿司業界だ。 以上を踏まえて、なぜ回転寿司テロが100円回転寿司チェーンで多発しているのかを探っていきたい。 100円回転寿司チェーンの客単価は1000円〜2000円なうえ、メニューが豊富なので幅広い層が来店しやすい。加えて、店内にはファミリーでゆっくりと過ごせるボックス席が並ぶとともに、テクノロジーの活用で省人化が進んでいる。つまり、店員やほかの客の目を盗みやすい座席も少なくなく、“悪ノリ”をしやすい環境になってしまっているのではないか。) それでは、どうすれば同様の事件が防げるのだろうか。もちろん刑事民事の両面から厳正に対処する方法も効果を発揮するだろう。実際、過去にくら寿司は、飲食店を中心に相次いだ「バイトテロ」の流れに終止符を打った実績を持つ。 2019年2月5日、くら寿司のアルバイトが、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻す様子が撮影された動画がSNSで拡散され、一気に炎上した。その3日後、くら寿司は法的措置を取る準備を始めたとのニュースリリースを発表。 そこに「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影したSNSの投稿に対し、当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、抑止力とするため」という理由が記載されていて、当時、大きな話題を呼んだ。ただそれ以来、大きな問題となるバイトテロが起きていないので、今回の回転寿司テロでも一定の抑止力になるだろう』、「コロナ禍の勝ち組とまで言われたのが回転寿司業界」、「店員やほかの客の目を盗みやすい座席も少なくなく、“悪ノリ”をしやすい環境になってしまっている」、「刑事民事の両面から厳正に対処する方法も効果を発揮するだろう。実際、過去にくら寿司は、飲食店を中心に相次いだ「バイトテロ」の流れに終止符を打った実績を持つ」、なるほど。
・『防犯カメラの設置は現実的ではない 合わせて、現場レベルでの改善も必要だ。防犯カメラの設置という案があるが、客と店との信頼関係の構築が難しくなるため現実的ではない。また、店内でスタッフが行き交う環境をつくるために人数を増やす案もあるが、そうなると今以上に値上げをしないとビジネスが成り立たなくなる。それを客が許容してくれるかというと難しいだろう。 となると、テクノロジーで解決するしかない。突破口は、同じくくら寿司の「抗菌寿司カバー」だ。抗菌寿司カバーは、ウイルスや飛沫から寿司を守ってくれるため、コロナ禍では人気が高かった。 それを活用して、注文者しか開けない仕組みにしたりすれば、こうしたイタズラを防げる可能性が高い。さらなる設備投資が必要になるが、回転寿司テロをきっかけに起こる客離れを考えたら安いものだろう。 もともと回転寿司は、高級だった寿司を庶民でも楽しめるようにと考案された業態だ。その後、各社の熱意と独創性があって、誰もが手軽に寿司を食べられることが当たり前となった。今回も業界の創意工夫が問題を解決し、誰もが安心、安全に寿司を楽しめる環境を実現することを、いち回転寿司ファンとして期待している』、「防犯カメラの設置は現実的ではない」、「突破口は、同じくくら寿司の「抗菌寿司カバー」だ。抗菌寿司カバーは、ウイルスや飛沫から寿司を守ってくれるため、コロナ禍では人気が高かった。 それを活用して、注文者しか開けない仕組みにしたりすれば、こうしたイタズラを防げる可能性が高い。さらなる設備投資が必要になるが、回転寿司テロをきっかけに起こる客離れを考えたら安いものだろ」、「誰もが安心、安全に寿司を楽しめる環境を実現」してほしいものだ。
第三に、2月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「回転ずしテロ」の大きすぎる代償、高額の賠償金や懲役・罰金の可能性は」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317356
・『今年に入り、回転ずしチェーン店で商品や備品にいたずらする映像がSNSで相次いで出回った。炎上後、謝罪を申し出た投稿者もいたが、事態を重く見た回転ずし店側は受け入れを拒否。刑事・民事での責任追及を表明した。刑事的にはさまざまな罪が考えられ、民事的にも店側の損害が大きく、賠償金も高額になる可能性もある』、「謝罪を申し出た投稿者もいたが、事態を重く見た回転ずし店側は受け入れを拒否。刑事・民事での責任追及を表明した」、法的にハッキリさせるのは望ましい。
・『謝罪受け入れ拒否し「正な対処」表明 最初に発覚したのは1月7日頃だった。TikTokに若い男性がレーンに流れてくる2貫のすしのうち1貫を箸でつまんで食べる動画が拡散。「おいしそうだったので食べちゃいました#人の注文#はま寿司」の文字が入っていた。 同9日ごろには、インスタグラムのストーリーで同じく「はま寿司」で撮影された「他人握りわさび乗せ」の文字が入った動画が投稿された。見る限り、他人が注文したすしにわさびを混入したようだ。これは24時間で削除されたが、数日後、ツイッターで拡散され一気に炎上した。 はま寿司はわさびを入れたとみられる人物から店舗に電話で謝罪の申し入れがあったとしているが、受け入れを拒否。既に警察に被害届を提出している。 同24日ごろには「くら寿司」で、若い男性3人がお皿の回収口にヘディングするように投入したり、一度取ったお皿をレーンに戻す動画が拡散された。レーンに流れている商品から4年前に撮影されたとみられるという。くら寿司も、警察に相談する意向を示している。 同29日ごろには「スシロー」で、男性客がテーブルのしょうゆ差しの注ぎ口や積まれた湯飲み茶碗の周囲をなめ回したり、つばを付けた手でレーンを流れるすしにこすりつけたりしている動画が拡散。瞬く間に炎上した。この動画もストーリーズ(注)に投稿されたとみられる。 スシローは同30日、公式サイトで「刑事、民事の両面から厳正に対処してまいります」と表明。さらに2月1日には店舗が岐阜市内の店舗だったことを公表し、当事者と保護者から連絡があり、会って謝罪を受けたことを明らかにしたが「厳正に対処」の方針は維持する構えだ』、バイト・テロ事件の時と同じように面白がって悪ふざけをしているようだ。
(注)ストーリーズ:スライドショーのような形式で、画像や動画が投稿できるインスタグラムの機能(COLOR ME)。
・『窃盗や器物損壊 業務妨害罪の可能性も それでは、それぞれの行為は刑事・民事でどれぐらいのペナルティーが科せられるのだろうか。 まず刑事だが、他人が注文したすしを食べたはま寿司のケースでは、その客が1貫を取られたことに気付かずお皿を取ってしまった場合は客が、おかしいと気付いた客がお皿を取らなければ店が、被害者となり窃盗罪(刑法235条)に該当する可能性が考えられ、10年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。 わさびを混入したり、一度取ったお皿を戻したりする行為、しょうゆ差しの注ぎ口をなめ回したりする行為は、器物損壊罪(刑法261条)の可能性がある。同罪は「他人の物を損壊・傷害」することが前提だが、実際に壊さなくても心理的に使用できなくしたり、その価値を低下させたりする行為も損壊とみなされ、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となる。 そのほか、動画が拡散した結果について偽計業務妨害罪(刑法233条)か威力業務妨害罪(同234条)に問われる可能性がある。いずれも「他人の業務を妨害する」点で一致しているが、特徴としては偽計が「不可視的」、威力が「可視的」に妨害する行為と解釈され、両罪とも3年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。 もちろん、複数の罪に問われる可能性もある。加えて当事者だけでなく、撮影や動画を拡散したり、一緒にいてけしかけたりした仲間も、共犯や幇助(ほうじょ)として刑事責任が問われる可能性も考えられる』、「客が1貫を取られたことに気付かずお皿を取ってしまった場合は客が、おかしいと気付いた客がお皿を取らなければ店が、被害者となり窃盗罪(刑法235条)に該当する可能性」、「わさびを混入したり、一度取ったお皿を戻したりする行為、しょうゆ差しの注ぎ口をなめ回したりする行為は、器物損壊罪(刑法261条)の可能性」、「撮影や動画を拡散したり、一緒にいてけしかけたりした仲間も、共犯や幇助(ほうじょ)として刑事責任が問われる可能性も」、なるほど。
・『民事での賠償額は数十万~数百万円か 民事ではどうか。SNSではスシローの株価が一日で百数十億円下落したことを受け「株価が下がった分を損害として賠償請求すべき」などのコメントが散見されるが、そもそも株価下落で損害を被ったのは株主であり、スシロー側ではない。 損害賠償請求訴訟を起こすなら株主であり、所有する株価が下がったことによる金額を請求するのが筋だろうが、動画が拡散した事実と株価が下がった因果関係を法的に立証するのはまず不可能で、現実的ではないだろう。 それではどれぐらいの請求額になるのだろうか。株価と同様、動画が拡散した事実と売り上げが減少した(場合の)因果関係を法的に立証するのは難しい。ただ、各社とも「厳正な対処」を表明しているだけに、清掃や備品の入れ替え・交換などにかかった実費だけ請求というわけにはいかないだろう。 全国紙社会部デスクによると、実はこうした行為に対する損害賠償請求訴訟というのはあまり例がなく、具体的な相場というのは不明らしい。ただ、東京都多摩市の老舗そば店で2013年、アルバイトの男子大学生4人が「洗浄機で洗われてきれいになっちゃった」のコメントを付けて洗浄機に横たわったり、顔を突っ込んだりする画像などを投稿。 ネットで炎上する事態となり、倒産に追い込まれたそば店は4人に1385万円の損害賠償を求めて訴訟を起こしたが、結局、200万円を支払うことで和解が成立したケースがあった。ただ、この訴訟はそば店が個人経営で、さまざまな出来事が重なったこともあり疲れ果てていたのだろうと推測される。 しかし、回転ずしチェーン各社は違う。全国展開する組織力と財力があり、抑止力・再発防止のためには中途半端な交渉に応じるつもりはないだろう。 前述のデスクは「この件で弁護士何人かと話しましたが『よくて実費だけ』『風評被害なども含め実費プラスアルファ』『動画拡散前と直後の売り上げを精査しきっちり請求すべき』など、回答はまちまちでした。ただ『払えない金額を請求してもペナルティーにはならない』という点では一致しており、行為によって数十万~数百万円と幅がある気はします」と説明。その上で「やはりスシローの件は高額になるでしょう」と予想した』、「行為によって数十万~数百万円と幅がある気はします」、「やはりスシローの件は高額になるでしょう」、なるほど。
・『回転ずしチェーン各社が毅然とした対応を行う理由 本稿では刑事・民事両面での展開について言及したが、実は刑事については非行歴のない未成年であれば「厳重注意」程度で、実際に罪に問われる可能性は薄いとみられる。 しかし民事では、客と店とのルールと信頼関係で成り立っている営業スタイルを根幹から揺るがすような悪質な行為のため、回転ずしチェーン各社が一斉に謝罪を拒否する姿勢で連帯しているように見える。 ぬるい対応では模倣犯が出たり、迷惑系ユーチューバーらが「この程度か」と高をくくり、アクセス数を稼ぐためやりたい放題になったりする可能性さえあるからだろう。 回転ずしチェーン各社は訴訟で請求が認められるかどうかではなく、とにかく毅然(きぜん)とした対応を示すことを最優先している。おそらく、和解などには応じるつもりはないだろう。そうなれば、刑事裁判と違い、民事訴訟は組織力・財力が勝負を決める事が多く、回転ずしチェーン各社vs一般市民では、結果がどうなるかはいわずもがなだ。 当事者や投稿者は「ちょっとしたいたずら」「目立ちたかった」レベルのつもりだったのだろうが、その代償は思いのほか高くつくことになりそうだ』、「回転ずしチェーン各社は訴訟で請求が認められるかどうかではなく、とにかく毅然(きぜん)とした対応を示すことを最優先している。おそらく、和解などには応じるつもりはないだろう。そうなれば、刑事裁判と違い、民事訴訟は組織力・財力が勝負を決める事が多く、回転ずしチェーン各社vs一般市民では、結果がどうなるかはいわずもがなだ」、「当事者や投稿者は「ちょっとしたいたずら」「目立ちたかった」レベルのつもりだったのだろうが、その代償は思いのほか高くつくことになりそうだ」、今後の「刑事裁判」「民事訴訟」の行方が注目される。