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人民元切り下げ騒動 [世界経済]

今日は、8月12日以降、3日間にわたって日経新聞を賑わせた「人民元切り下げ騒動」を取上げよう。

これは、中国人民銀行(中央銀行)が、人民元の対ドルの基準値を11日から13日の3日間にわたって合計で4.5%切り下げ、これが、通貨切り下げに踏み切らなければならないほど、経済の実態が悪いのではとの観測から、日本の株安要因にまでなった。
しかし、13日に中国人民銀行が、基準値と市場実勢の乖離が「3%前後だった」としたうえで「乖離の是正は基本的に終えた」と明言。基準値の大幅な切り下げは、もはや必要ないとの考えを示し、「元相場を10%切り下げて輸出を刺激するといった見方は事実無根だ」と発言したことで、騒ぎは収束。その後、基準値は多少元高に戻した水準で推移。

そこで、三菱UFJ国際投信の17日付け「投資環境ウィークリー」の6頁のポイントを紹介しよう。
・中国では人民銀行が毎朝同基準相場を公表し、市場相場は同相場±2%の範囲で変動する管理変動相場制を採用。しかし、市中銀行からの聞取りに基づくはずの基準相場は前日の市場相場終値ではなく、前日の基準相場に近い水準に設定されてきました
・この結果、国際収支赤字局面では、市場相場が基準相場を2%程度下回る水準で動かない事態が恒常化(図1右)。人民銀行は管理変動相場制の看板を掲げつつ、基準相場を動かさず事実上の固定相場制を運営していると言われてきました
・11日、人民銀行は、今後の基準相場は前日の市場相場終値等を反映すると公表。名前ばかりの変動相場から本当の変動相場への一歩を踏み出した模様です
・特別引出権(SDR)の見直し中の国際通貨基金(IMF)が、今月3日の報告書で同基準相場が市場実勢を反映していないことを指摘したことも背景にあるとみられます。また、ドル独歩高で上昇した人民元の実質実効相場(図2左)を押下げ低迷する輸出を支えたいとの意図も働いたと思われます
・11日の市場相場終値は基準相場を1.5%下回る水準まで下落し、12日の基準相場は前日比1.6%安の水準に。二日連続基準相場引下げは、景気低迷に悩む同国が通貨切下げを始めたとの印象を広め、米上院議員等はこの動きを非難、持続的相場下落を恐れる国内投資家は元売りを急ぎ始めた模様です。事態を懸念した人民銀行は、12日午後に市場介入で市場相場の下落を抑え、翌13日には会見で基準相場と市場相場の調整は終了と表明
・同日の市場相場終値は基準相場とほぼ同水準となり、混乱はひとまず終息しました。 今回の基準相場設定方法の見直しで同国は管理変動相場制へと一歩前進。今後は相場の変動が増すでしょう。人民銀行は市場介入等で市場相場終値が連日で2%近く下落することを防ぐとみられるものの、今後、米利上げ開始を意識したドル高が進む局面では緩やかな対ドルの元安が進むと予想されます
http://www.kokusai-am.co.jp/report/weekly/2015/150817.pdf

今回の騒動は、人民銀行の当初の説明不足、米国や市場の反応についての読み違い、日本の記者の勉強不足、などが相まったもので、中国が管理変動相場制へと一歩前進するのであれば、誠に結構なことだ。
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