SSブログ

組み体操事故問題 [社会]

今日は運動会シーズンのなかで、学校での組み体操事故問題を取上げたい。

10月5日付け日経新聞夕刊は「組み体操「ピラミッド」事故、3年で8人骨折 大阪の中学校」を報じた。そのポイントは以下の通り。
・大阪府八尾市の市立中学校で今年9月と2014年、13年の体育大会や直前の練習中、組み体操の「ピラミッド」が崩れるなどして、生徒8人が骨折する事故。同校や同市教育委員会によると、今年9月27日の体育大会本番で、男子生徒が四つんばいの姿勢で積み重なってつくる10段ピラミッドが崩れて1年の男子生徒が骨折、ほかの生徒5人が軽傷。大会前の練習中にもバック転をした生徒が指を骨折
・また、14.9にはピラミッドなどの演目中、当時3年の生徒2人が右足首や足の指の骨を折ったほか、練習中に生徒2人が骨折。13年の練習中にも2人が骨折。今年9月の大会本番では、周囲に教員11人が補助役として配置されていたが事故を防げなかった。大阪市教委は、重大事故を防ぐため、ピラミッドの高さを5段までとする規制を採択

さらに同紙は、17日付けで「小中の組み体操、10年で139人骨折 大阪・八尾」を報じた。そのポイントは以下の通り。
・八尾市は、2006年度以降、36の市立小中学校の児童、生徒計139人が組み体操中に骨折のけがを負っていたと発表。市立大正中で今年9月、体育大会中に「10段ピラミッド」が崩れて生徒が骨折した事故があり、実態調査を進めていた。市によると、組み体操は計44の全小中学校で実施。けがは大正中の20人が最多。小学校1校、中学校3校では4年連続で骨折事故が発生。10年に小学校で起きた事故で、骨折した結果、肘を動かしにくい障害が残った女子も

これらの事件の前に、組み体操事故問題を掘り下げた記事として、9月17日付け東洋経済オンライン「学校はなぜ「巨大組体操」をやめられないのか"保護者が望んでいるから"は本当か?」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し、記者の問いかけをQ、内田氏の回答をAとした)。
・巨大化する「組体操」、子どもたちの多様な家庭背景を無視した「二分の一成人式」、教員たちの土日を潰し続ける部活動顧問――。「教育」という輝かしい活動の陰で生じる「負の側面」に目を向け警鐘を鳴らす、名古屋大学大学院准教授・内田良氏。なぜ学校は変わらないのか?話を伺った
▽組体操は、学習指導要領に記載がない
・Q:新刊『教育という病』(光文社新書)を拝読しました。組体操や二分の一成人式など「感動のシーン」の裏側で、多くの深刻な問題が起きていることに衝撃を受けました。たとえば運動会で行われる組体操では、中学や高校では10段を超える巨大ピラミッドが組まれ、小学校にも高層ピラミッドやタワーが広まり、後遺症が残るほどの事故が毎年起きているとのこと。そもそも、組体操は学習指導要領に記載がないんですね?
・A:ええ、戦後間もなく記載があった時期も少しだけあるんですが、いまは何の記述もありません。にもかかわらず、ここ10年くらいで組体操は学校現場に急速に拡がり、事故が多発している。とくに頭や首など、重度障害にもつながりかねない負傷が多いのが特徴です
・Q:昨年からこの問題について、Yahoo!ニュース個人に記事を書かれるなどして警鐘を鳴らされています。状況は変わりましたか?
・A:これまで巨大組体操を推していた小学校の先生向けの雑誌が2つあるんですが、1つはこの春、安全を優先する方向にカラーが変わったんです。それで「だいぶ世論は変わったな」と思っていたんですけれど……。 先日ちょうどもう1つの雑誌が届いたんですが、またもや高層ピラミッドが推奨されていたので、がっくりしました(苦笑)。保護者から「(巨大組体操を)やめてほしい」と声が上がっても、学校が「いやいや、安全対策はやっていますから」と言ってはねのけた、という話もけっこう聞いています
・Q:学校が巨大組体操をやりたがっている、ということですか?それはなぜ?
・A:理由はふたつあると思うんですが、ひとつは「保護者ウケ」がいいから、ということです。 保護者のなかにも、巨大組体操を支持する人は少なくない。ある小学校では校長先生自らが問題提起して、ピラミッドをとりやめにしたんですけれど、PTA関係者から「勝手にやめるなんて、けしからん」ということで、ひどくののしられたそうです
・Q:PTA関係者というのは、立場によってはけっこうな発言力がありますからね……。でもそれって保護者の総意ではなく、その方の個人的な考えですよね
・A:そうなんですけれどね。でも、そういう「巨大組体操をやってほしい」という保護者の声は、まだまだ多いのも事実です。 ただ、僕はそれが「先生の言い訳に使われている」という気もしています。保護者のなかには「巨大組体操をやめてほしい」という声だってたくさんあるんだけれど、先生たち自身がやりたいから、「保護者がやってほしがっている」と言っているところも、あると思うんですよ
▽ケガのリスクより、「クラスのまとまり」
・Q:巨大組体操をやって、先生に何かメリットがあるんですか?
・A:学校の先生にとっていちばん大事なことって、「学級経営」であり、「クラスのまとまり」なんですね。組体操っていうのは、あたかも「まとまり」をつくるようなものじゃないですか。そういう意味でも、とても先生ウケがいいんです。 「クラスみんな仲がいい」とか、「まとまりがある」っていうのは、担任の先生にとって、学校の中でのステータスでもあるので
・Q:ある意味そっちのほうが、組体操でケガ人が出るリスクよりも大事だってことでしょうか
・A:そうですね、だからなかなかリスクを受け入れられないんだろうな、と思います。 また巧妙だと感じるのが、誰かがケガをしても、「その子のために、みんなが一致団結するんだ」っていう物語をつくってしまうところ。よくあるのが、誰かが骨折で入院したりすると、クラス全員からの手紙を届けるんですって。それを読むと、親も子どももジーンとなって、すべてを忘れるっていう。すごい技術だなーと思って(苦笑)
・Q:それは、ちょっとひきます……
・A:それでいて、保護者から「巨大組体操をやめたほうがいい」という声が上がると、先生たちは「昔からやっている“伝統”だからやめられない」とか「保護者がみんなやりたがっているから、やめられない」っていうんです。 でもそもそも、始めるときは保護者の了解も得ずに巨大なものを作っておいて、いざ「やめろ」っていう声が出てくると、保護者のせいにして「やめられない」というのは不思議なことです。 先生を敵にまわすと僕の声が現場に届かなくなってしまうので、あんまり言わないようにはしているんですけれど。せこい!(苦笑)
▽観客に見えない場所の子ほど負荷がかかっている
・Q:わたしもPTA関連の取材をしているとき、それはたまに感じます(苦笑)。それにしても、組体操以外では、一体感が生まれるものはないんでしょうか?
・A:わかりやすい代替手段としては「ダンス」がありますよね。“見栄え”もいいですし。 立体ピラミッドも見栄えはいいんですけれど、顔が見えるのはいちばん前の子どもだけです。 最前列の子たちって、土台でも0.4人分しか重みがかかっていない。だからキリッと凛々しい顔を見せられるんだけれど、奥のほうの子たちは「うーーーーーーーっ!!!」って雄たけびみたいな声をあげながら、ただ耐え忍んでいるんです。  しかも、誰からも見えていない。タワーだって、てっぺんの子以外は全員観客にお尻を向けていますから、絵面的には全然よくないです
・Q:そろそろ秋の運動会シーズンですが、巨大組体操は減りそうですか?
・A:たぶん減ってくるとは思うんですけれど、いま少し危惧しているのが、「ピラミッド以外ならいい」「巨大じゃなきゃいいだろう」という方向にいくんじゃないか、ということです。 実際、「ピラミッドはダメだから、タワーにする」っていう学校もあるんですけれど、タワーのほうがむしろ重度の障害が残ったケースが多いんですよ。肩の上に立つので、3段くらいでもけっこう高さがある。しかも崩れるとき、ピラミッドだと「ぐちゃー」って潰れていくんですが、タワーだと高いところから「すとん!」と壊れるので、落ちるエネルギーが大きいんでしょうね
・Q:巨大ピラミッドに比べたらよさそうに見えますが、むしろ危険が増すのですね
・A:あとは、3段で騎馬みたいなものを組んで、動きを入れる、なんていう形も出てきましたが、これも子どもがちょっと練習してやるようなことじゃないんですよ。チアリーディングがトレーニングを積んでやるようなものであって、体格の差や、運動のうまい下手がある子どもたちにやらせるものではない。 巨大ピラミッドほどの危険性はないものの、やっぱりちょっと気掛かりなところです
▽運動会本来の主旨を思い出そう
・Q:線引きも難しいですね。どこまでならOKで、どこからはダメ、という……
・A:あんまり言うと、「何にでもケチをつける」って言われちゃいますからね(笑)。でもまあ、2段までは僕も全然OKだと思うし、3段でも最近の組み方は、2段目の子が地面に足を着いているので、安定性はわりとあるんですね。そこまでならやむなしかなって思います
・Q:組体操を指導する先生たちも、毎年かなりの労力ですよね。それも、どうなのかなと思うんですが
・A:運動会って本当は、日ごろの子どもたちの体育の成果をみんなに見てもらう、というものなんです。でもいまは「運動会の見世物のために練習する、体育の時間が使われる」ってことになっちゃっている。そういうのは、あんまりよくないんですよね。 だから保護者も本当は、そういうものとして受け取らなきゃいけないんですよね。華やかなものを求めるんじゃなく、「子どもが元気に育っている!」というところで、満足する。そういう運動会が、本当はいいんでしょうね
http://toyokeizai.net/articles/-/83619

上記の引用にはないが、骨折程度であればまだしも、ひどい障害が残ってしまう生徒もあるようだ。
「安全・安心」を殊の外重視する日本の学校で、何故、このような危険なことが学校行事として行われ続けているのか、私には理解できなかったが、上記の東洋経済オンラインの記事でようやく分かった。「先生たち自身がやりたいから、「保護者がやってほしがっている」と言っているところも、あると思うんですよ」との指摘は、狭い学校という社会のなかではあり得る話だ。八尾市の事故を相次いで起こした市立中学校、さらには36の市立小中学校での事故報告は驚くべきことだ。教育委員会や文科省も、国旗・国歌問題の指導以前に、この問題にもっと責任ある姿勢で取り組むべきだろう。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0