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ポピュリズムの台頭 [世界情勢]

今日は、難民問題もあって顕在化した ポピュリズムの台頭 を取上げよう。

先ずは、2014年11月12日にNHKBS1で放映(2015年10月7日再放映)された「BS世界のドキュメンタリー ヨーロッパ 台頭するポピュリズム」のポイントを紹介したい(▽は区切り)。
・経済危機で緊縮財政策が講じられているヨーロッパ諸国で、現状への怒りや不満を利用し、大衆を扇動するポピュリズムの政党が勢力を拡大している。そのほとんどが極右のカリスマリーダーを持ち、イスラム系移民や既存エリート層が諸問題の根源と主張する。なぜ今、ヨーロッパでポピュリズムが躍進しているのか。
▽イタリア
・スキャンダルや汚職で政治が機能不全に陥ったイタリアで大人気の政党が「五つ星運動」。人気コメディアンの党首グリッロは巧みな話術で大衆の心を掴む2013総選挙で163議席、第3党に。既存政党を批判、マニュフェストは左右の主張を取り入れ、矛盾していても、民衆の代弁者とする。「五つ星運動」について語ることが許されているのはメッソーラだけ。ネット投票で候補に選ばれた議員たちは、生活費までネットで公開。「人々が議員を直接コントロールする」は幻想(民主党)。左派を支持せよと訴えた議員は、追放され無所属に。議員たちは厳しい党紀に縛られ、自発性が奪われている。彼らは議会であらゆる法案に反対しているだけだ。「みんなウチに帰れ」がスローガン。
▽フランス
・移民をスケープゴートに労働者の権利確保を訴えるフランスの極右政党・国民戦線は、現在、父から党を引き継いだマリー・ルペンが女性党首となり、ソフト路線のイメージを打ち出している(政策はころころ変わる)。炭鉱閉山などで困窮しているロマを標的に不安を煽る。国民戦線はかつて汚職で失敗したが、現在では、共同体主義者を名のり、過激な主張をオブラートに包んでいる。
▽オランダ
・ヘルト・ウィルダースが率いる自由党は、16%獲得、連立政権に加わっている。移民そのものには反対せず、同性愛を認めるなど寛容さを示すが、イスラム教徒はファシズム的として排除を訴える。政策は大きくブレる。小さな政府→福祉国家。EU支持→反対。
▽ハンガリー
・ポピュリズムで初の政権を誕生させたフィデスは、極右・超国家主義・反ロマのヨッピク党に歩み寄る。議会第3党のヨッピク党には自警団があり、ロマへの殺人容疑も。ヨッピク党は最近、支持を落とす。フィデスは、憲法を改正、神に言及する条項やホームレスへの刑罰などを入れた。同党は経済危機のなかで、愛国心をかきたて、多国籍企業やEUを批判。オルバン首相は2回目。初回はEU支持だったが、2回目はEUを支持せず多国籍企業を追い出す。プーチン流の強いリーダシップが必要として、繁栄をもたらさなかった民主主義に不満を抱く国民を取り込む。司法やメディアをコントロール、表現の自由を制限、選挙での野党のPRも制限。選挙システムも与党有利。愛国心を切り札に、ポピュリズムの真の顔が表れつつある。

次に、本年1月13日付けJBPress「右傾化が危険水域に突入しつつある欧州 各国で極右政党が躍進、移民排斥の動きに拍車か」を紹介したい(▽は小見出し)。
・欧米において近年、一般市民の政治不信が高まっている。それに伴い、これまでの既存政党に対する支持率は低下傾向となり、比較的新しい極右政党、極左政党等への支持率が上昇している。
・特に、欧州においては極右政党への支持率が昨今急激に上昇しており、欧州の複数の国で政権与党となっている。極右政党の躍進は、これらの国の政治・経済・社会の全ての側面に多大な影響を与えることが懸念されている。
▽欧米で政治不信が拡大
・2015年12月7日、米国大統領選挙に共和党から出馬することを表明している実業家のドナルド・トランプ氏が「イスラム教徒の米国入国を禁止するべき」と発言し、米国内で物議を醸し出した。これまでも同氏は、メキシコからの不法移民について、強硬な発言をするなど、大衆迎合的な発言を繰り返しているが、今回の発言は宗教的差別という意味で、大きな論議を呼んでいる。
・しかしながら2015年12月13日にABCとワシントンポストが発表した共和党候補の支持率では、トランプ氏38%、テッド・クルーズ氏15%、ベン・カーソン氏とマルコ・ルビオ氏の両氏が12%となっており、その発言後も共和党候補の中で高い支持率を維持している。
・以上の候補たちを見て特徴的なのは、実業家のトランプ氏、医師のベン・カーソン氏の両氏は全く政治家経験のない候補であり、2位につけているテッド・クルーズ氏も上院議員の経験が2年にも満たない候補であるという点だ。つまり、政治家色のない候補が高い支持率を集めているというわけである。
・この背景には、米国をはじめとする欧米全体で政治不信が高まっていることが挙げられる。現在、世界的に政治・経済・社会が流動化し、その変化のスピードはかつてない程に早まっている。しかし各国政府の政策決定・実行は、変化のスピードに十分に対応しているとは言い難い。
・また、インターネットの劇的な進展により、政治家個人または政府に関する情報が数多く流通し、スキャンダルなどが即座に露見することも増えている。政治家のパフォーマンスを評価することが困難である反面、ポジティブな情報よりネガティブな情報が多く取り上げられることも政治不信を生み出していると言える。
・さらに、SNS等により一般市民の情報発信能力は劇的に高まっており、近年における価値観の多様化とも相まって、多くの世論が瞬く間に形成されるようになった。同時に、より大きな変化を求める意見に注目が集まりやすくなっていることも一因として挙げられよう。
・政治不信を測る指標としては、投票率の低下が挙げられる。例えば、米国大統領選挙における投票率(有権者数÷投票者数)は、1960年代までは60%以上を維持していたが、それ以降は40%後半から50%台で推移している。一方、欧州議会選挙においても、1979年においては62%であったが、2014年には43%にまで低下している。
・この投票率の低下は、政治不信を背景としたものだとも言える。だが、一方で極右政党、極左政党などは固定票は多く、これらの政党への投票率が相対的に高まるという側面も持っている。
▽拍車がかかっている移民排斥の動き
・欧州では、アフリカ諸国の独立などを背景に、1960年代から80年代にかけて外国人の移民を積極的に受け入れる政策が採られた。そのため、現在のEU28カ国の圏内居住者の圏外出生者数は約3300万人(そのうちイスラム教徒は約2000万人)と言われており、総人口(5億人強)の約7%を占めるに至っている。
・しかしながら、1980年代後半以降、フランス、英国、イタリアなどの主要国の失業率が10%台を超える水準となった頃から、その原因として外国人労働者の問題が取りざたされるようになった。
・その後、2000年代に入り、欧州の失業率は低下する傾向を見せたことから、外国人(移民)排斥の動きは一時鎮静化の兆しを見せる。
・しかし2008年のリーマンショックを契機に、ギリシャの深刻な財政赤字・信用不安が表面化すると、2010年にはポルトガル、イタリア、スペイン、アイルランドに飛び火し、欧州債務危機が到来した。これを契機に欧州経済が低迷し失業率が大幅に上昇したことから、外国人(移民)排斥の動きが欧州全体で高まりを見せることとなった。さらに、極左勢力も外国人(移民)排斥を標榜するなど、その傾向は顕著となった。
・この外国人(移民)排斥の動きに拍車をかけたのは、欧州における以下のようなテロの頻発であった。
+2004年3月11日:スペイン・マドリード列車爆破テロ事件
+2005年7月7日:英国・ロンドン同時多発テロ事件
+2010年12月11日:スウェーデン・ストックホルム自爆テロ事件
+2011年3月2日:ドイツ・フランクフルト空港銃乱射事件
+2012年7月18日:ブルガリア・ブルガス自爆テロ事件
+2014年5月24日:ベルギー・ブラッセル・ユダヤ博物館襲撃事件
+2015年1月7日:フランス・パリのシャルリ・エブド襲撃事件
+2015年2月14日:デンマーク・コペンハーゲン連続襲撃事件
+2015年11月13日:フランス・パリ同時テロ事件など
・特に昨今は、欧米を中心に、現地で生まれ育った青年層(Homegrown Terrorist)によるテロ、明確な指示等がなくてもイスラム原理主義系ウェブサイトで感化、傾倒し、自分の意思でテロを行う者(Lone Wolf Terrorist)などが増加している。
・なお、移民排斥を標榜する政党の多くは、近年設立された政党が多く、欧州に多い2大政党制が大きく揺らぐ要因ともなっている。欧州において外国人(移民)排斥・民族主義的な極右政党が政権与党となっている国は、ポーランド、スイス、ベルギー、フィンランド、ラトビア、ノルウェー、エストニア、リトアニアの8カ国に達している。
▽欧州で躍進している極右政党
・下記は欧州の昨今の動向をまとめたものである。これまで、移民などに比較的寛容だった国でも極右勢力が台頭しており、今後、欧州全体の右傾化につながる可能性が高いことが懸念されている。
【欧州議会】2014年5月に実施された欧州議会選挙(751議席:加盟国別に議席数配分)で、反移民などを標榜する極右政党が大幅に躍進した。
+フランス:国民戦線(FN)23議席(74議席中:得票率24.95%)(第1党)
+オランダ:自由党(PVV)4議席(第3党)
+デンマーク:国民党(DF)4議席(第1党)
+ギリシャ:黄金の夜明け(Golden Dawn)6議席(第1党)
+オーストリア:自由党(FPO)4議席(第2党)
+フィンランド:真のフィンランド人(PS)2議席(第3党)
+ハンガリー:ヨッビク(Jobbik)3議席(第2党))
【ポーランド】 2015年10月25日に実施された上下両院の選挙で、反移民などを標榜する「法と秩序」(PiS)が37.6%の得票率で、上下両院共に単独過半数の議席を獲得し、政権交代が確実視されている。
【スイス】 2015年10月19日に実施された連邦議会選挙で、反移民などを標榜する「スイス国民党」(SVP)が29.4%の得票率で65議席を獲得し、第1党に躍進した。
【デンマーク】 2015年6月18日に実施された総選挙で、反移民などを標榜する「デンマーク国民党」(DPP)が得票率21.1%で37議席を獲得し、第2党に躍進した。
【オーストリア】 2013年9月28日に実施された総選挙で、反移民などを標榜する「オーストリア自由党」(FPO)が得票率20.5%で40議席を獲得し、第3党に躍進した。また、2015年10月11日に実施されたウィーン市議会議員選挙においてもFPOが得票率32.2%と大躍進した。
【ハンガリー】 2014年4月6日に実施された総選挙で、反移民・反ユダヤなどを標榜する「ヨッビク」(Jobbik)が得票率20.2%で23議席を獲得し、第3党に躍進した。
【フランス】 2015年12月6日に実施された地方議会選挙第1回投票において、欧州における極右政党の草分け的存在である「国民戦線」(FN)は得票率27.7%で政党別で最大の得票率を獲得した。12月13日に実施された第2回投票においては、3番目の得票率となったが、いずれにしても、地方議会選挙では過去最大の得票を得た。
▽民族的・宗教的対立が激しくなる懸念
・欧州における、外国人(移民)排斥等の政策を標榜する政党への支持率拡大は、民族的・宗教的対立が激しくなる可能性が極めて高いことを意味している。
・欧州ではこれまでも、2005年9月にデンマークの日刊紙にイスラム教の創始者ムハンマドの風刺漫画が掲載され、イスラム社会を中心に全世界的な抗議活動に拡大したという問題が起きている。 また、言論の自由は民主主義の最も基本的な権利であるとして、2006年2月にはフランスのシャルリ・エブド誌(2015年1月に襲撃された)が、2007年8月18日にはスウェーデンの地方紙が、同様の風刺画を掲載し、イスラム社会からの反発が強まっている。 こうした民族的・宗教的対立を背景に下記のような事件も発生している。
+2005年10~11月:フランス・パリ郊外での移民等による暴動
+2006年9月:ベルギー・ブラッセルでの移民等による暴動
+2010年6月:スウェーデン・リンクビーでの移民等による暴動
+2009年7月:フランス・パリ郊外での移民等による暴動
+2011年7月22日:ノルウェー連続テロ事件(移民反対等の極右思想を持つノルウェー人青年による爆破・襲撃テロ事件:77人が死亡・100人以上が負傷)
+2013年5月:スウェーデン・ストックホルム郊外で発生した移民等による暴動
+2013年7月:フランス・パリ郊外で発生したイスラム教の女性信者に対する警察官の誰何が基で発生したイスラム教徒による暴動
・今後も右傾化が進んだ場合、社会的な不安定を助長する可能性は極めて高いと言える。 さらに2011年4月からフランスでは、政教分離の原則を基に、学校や一般道路などの公共の場でのブルカ(イスラム教徒の女性が着用するベール)着用を全面的に禁止する法律が施行されている。ベルギーでも同様の法律が2011年7月から施行された他、オランダでも同様の法律が制定されており、イスラム社会からの大きな反発を呼んでいる。
▽大衆迎合的な政策に走ることの弊害
・一方、以上のような右傾化は、各国政府の中長期的な政策の推進を困難にする面がある。つまり、大衆迎合的な政策に走るあまり、国民に一時的な負担を強いる政策をとることを躊躇するようになるのだ。このことが、政治状況の不安定化を助長する可能性もある。
・当然のことながら、右傾化の最大の懸念事項としては、欧州におけるテロ脅威が高まり、テロが頻発することが挙げられる。
・一方で、このような極右的な政策の推進に対して、当然ながらイスラム社会から反発が巻き上がるのは必定である。また、場合によっては国際社会からも糾弾される可能性もある。
・これまで欧州諸国は、過去のユダヤ人、ロマ人に対する排斥運動への反省を戦後の人権問題の根幹においた政策を進めてきた。今、まさにこれが試されているとも言える。
(本文中の意見に関する事項については筆者の私見であり、筆者の属する法人等の公式な見解ではありません)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45739

ポピュリズムと二番目の記事での極右は必ずしも同じではないが、排外的、民族主義的、大衆迎合的な主張では一致している。このブログの7月25日に取上げたギリシャでは、チプラス氏が率いる急進左派連合(SYRIZA)は、極左だがポピュリズム的主張で、既成の大政党を抑えて、政権を握っている。
また、ハンガリーの政権与党フィデスは、ヨッビクのような極右ではないが、ポピュリズム政党である。
そこで、今日のタイトルは、より幅広い「ポピュリズムの台頭」とした。
極右が政権与党になっている国として、ポーランド、バルト三国といった旧東欧諸国以外にも、西欧諸国のなかでも、スイス、ベルギー、フィンランド、ノルウェーまで広がっていたのには驚いた。
ポピュリズム政党は、政権を握ると、次第にボロが出て、国民の信任を失う筈だと思うが、ハンガリーでは、「司法やメディアをコントロール、表現の自由を制限、選挙での野党のPRも制限。選挙システムも与党有利」となり、長期政権を実現しつつあるだけに、注目される。
イスラム社会からの反発が強まり、テロ脅威が高まることも要注意だろう。
さらに、安部政権の民族主義的、大衆迎合的政策もポピュリズム的であり、メディアのコントロール、長期政権を実現しつつあるなどハンガリーに似ている面があることも、付言しておきたい。、
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