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世界同時株安(その3)人民元問題を中心に [世界経済]

世界同時株安については、昨年9月9日に取上げたが、今日は (その3)人民元問題を中心に である。

先ずは、闇株新聞が1月16日付けダイヤモンド・オンラインに投稿した「世界経済を混乱に陥れる中国経済の闇!中国株は底打ちするか、日本への影響は! 緊急予測2016年 シリーズ第1回[全3回]」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・混迷極める波乱の経済。震源の中国経済は底打ちするか、アメリカ経済と大統領選の行方、参院選までの日本株はどうなるか!? 「闇株新聞プレミアム」が2016年を大胆予測する全3回の緊急特集。今回は第1回、中国経済&中国株は底打ちするのか?そして日本への影響について、鋭く切り込みます!
▽あまりにも稚拙な中国の為替・株式市場対策 サーキットブレイカー制度は4営業日で撤回
・いまどき中国経済が本当に7%近い成長を続けていると信じる人はいないはずですが、そうは言っても一党独裁の中国共産党が強引にでも取り繕うだろうと考えられていました。ところが中国政府の対策を見ていると、どうもそうではないようです。言うなれば「見ていられないほど稚拙な対応」で市場の混乱をさらに増幅しています。
・例えば1月7日早朝、中国人民銀行は人民元の基準値を1ドル=6.5646人民元に設定しました。中国人民銀行は人民元の基準値を昨年8月10~13日に1ドル=6.1162元から6.4010元まで「急激に」引き下げて上海株式の急落を招いたのですが、今度は昨年12月初めの1ドル=6.4元前後から「連日ゆるやかに」引き下げたのです。
・「急激」だと弊害が大きかったため「ゆるやか」に引き下げているようですが、どちらにしても「人民元は毎日確実に目減りする」と宣言しているようなものです。当然、為替市場では人民元売り・外貨買いが際限なく出ることになります。これでは海外からの投資など増えようはずもありません。
・ご丁寧に中国人民銀行は昨年「人民元の基準値は前日午後遅くの市場取引(基準値の上下2%以内)を参考に決める」としたため、市場では常に先行して人民元売りが出ることになり下落が止まらなくなりました。いかにも稚拙な為替対策です。
・人民元の下落は中国からの資金流出を意味し、上海株式も大きく下落しました。奇しくも本年1月4日から株価指数が7%下落すると取引が打ち切られる「サーキットブレーカー制度」が導入されていましたが、4営業日で2度も発動される事態に早くも撤回が決まりました。
・だいたい7%下落すると取引が打ち切られるなら、相場環境が悪いときは誰もが「我先に」持株を売却しようとするため、ますます株価下落を加速させることになることがわからなかったのでしょうか。いかにも稚拙な株価対策です。
▽8604億ドルの外貨準備はどこへ消えた!? 外貨流入が続かないと拡大できない中国経済
・そして1月7日の夕刻、予定より大幅に遅れて昨年12月末時点の中国外貨準備高が発表されました。数字は昨年11月末比で1079億ドル減の3兆3304億ドルと、単月では過去最大の減少となり、この1年間でも5126億ドルもの減少となっていました。発表が遅れたはずです。
・ところがIMFの推計では2015年の中国経常収支は3478億ドルの黒字で、外貨は中国人民銀行が一元的に買い入れることになっているため、2015年1年間では差引き8604億ドルもの外貨準備が消えてしまったことになります。
・中国は外貨準備の通貨別内訳を発表していませんが、全てがドルということはなく3割程度がユーロなど多通貨のはずで、2015年はドルがすべての通貨に対して値上がりしていたためドル建てに換算すると中国の外貨準備は2000億ドルほど目減りしたはずです。
・それでも2015年には6500億ドルほどの外貨が消えていることになり、その内訳は外国人の投資引揚げ(減っていますが実際はまだ投資超過のはずです)、中国政府による公式の対外投資、為替管理を潜り抜けた中国人による不正な海外送金でしかなく、圧倒的に最後の不正送金が大きいはずです。
・中国経済は貿易黒字と外国からの投資で流入する外貨を中国人民銀行が一元的に買い入れて中国国内の信用創造の準備資産としている実質的には「ドル本位制経済」です。つまりどういう形でも外貨(主にドル)が流入し続けなければ(外貨準備が増加していなければ)経済は拡大できず、外貨準備を増加させるためには人民元が外貨に対して上昇を続けていなければなりません。
・人民元が1ドル=6.04元で上昇を止めたのが2014年1月、外貨準備が3兆9932億ドルのピークをつけたのが2014年6月、外貨準備の減少が加速したのが人民元を急落させた2015年8月から、そして中国経済の減速が大きな問題となったのもその頃からと、きっちり符号しています。
・確かに人民元安で中国の貿易黒字は増大していますが、これは中国経済の低迷と原油価格の低迷で輸入が前年比で20%も減少しているからで、人民元安の効果ではありません。はっきり言っておきましょう。人民元安は中国経済に壊滅的な弊害をもたらすはずです。そして、現在の中国政府はまさにその人民元安を強行しています。
▽中国経済の抱える闇の根っこは政治体制にある 日本は政府も企業も「脱中国」を急げ!
・繰り返しですが中国経済は外貨が流入していなければ拡大しない構造になっています。ここ2年間(とくにここ半年)は外貨が逆に流出しており、昨年12月から本年初めにかけて人民元をさらに下落させているため、ますます外貨流出が加速していることになります。その大半が国内資金の不正な対外流出であると考えます。
・つまり中国経済は少なくとも人民元を下落させているここ半年間はマイナス成長の可能性があります。中国の抱える経済の闇は、経済構造の問題というよりもむしろ稚拙すぎる経済政策の問題、ひいては共産党一党独裁体制が招いている政治問題に他なりません。
・そして、この政治体制が劇的に変化しない限り、中国経済の闇が明けることはありません。本来的には景気は季節のように循環するもので、相場格言に「夜明け前がいちばん暗い」というように最悪の状況を耐え抜けばいずれは改善に向かいます。しかし、こと中国経済の闇は耐えていれば何とかなるものではありません。
・すでに企業の中には「脱中国」を図り、拠点を周辺国に移したり国内に回帰しているところもありますが、耐えていればなんとかなると思っているのか何ら手を打たずにいたり、逆に中国依存を高めてしまっているところも少なからずあります。投資家としてはそのような企業は将来深刻な事態に陥ることをはっきり認識しておくべきでしょう。
・それでは中国の経済規模は本当はどれくらいなのか、また中国の外貨準備に隠れているはずの巨額含み損はいかほどなのか、中国のバランスシートから見る中国経済の「本当の姿」はどういったものなのか、そして何よりも共産党独裁体制の中国が仮に経済危機に陥ってしまった場合、資本主義ルールに従った対応を取ることができるのか……etc. 
・中国の国家体制と経済の巨大な闇についての話は、来週から「闇株新聞プレミアム」で引き続き徹底的に掘り下げてまいります。本連載「週刊 闇株新聞」がお伝えできるのは、深くて大きな闇の“ほんの入り口”までに過ぎません。
http://diamond.jp/articles/-/84731

次に、元銀行員で経済学博士・エコノミストの宿輪純一氏が、1月20日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「中国上海株大暴落は人民元が基軸通貨になるための“洗礼”」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・中国の金融市場、特に上海株が大きく荒れています。上海株は今年に入り2割弱も下落し、大暴落といった様相を呈しています。中国はこうした金融の混乱に慣れていないため、金融当局もサーキットブレーカー(市場に冷静さを取戻させるために一時的に取引を停止する制度)の運用を停止するなど混乱しています。残念ながら、市場が安定する気配は感じられません。
・実は、中国金融市場大暴落のカギとなっているのが、国際通貨、そして基軸通貨への道を歩み始めた「人民元」です。今回の混乱は、世界の投機筋にまたとない好機を与えているのです。
・現在、中国は“100年”と“30年”の2つの大きな長期的経済計画を進めています。1つは国家創設100年の2059年に「世界一の経済大国」になるという“100年計画”です。中国は、経済規模(GDP)ではすでに日本を抜いて世界第2位になっています。そして、もう1つは「人民元を基軸通貨」にする“30年計画”です。実体経済のみならず、金融経済においても世界一になろうということです。しかし、この人民元の基軸通貨化が、今回の中国の金融混乱を拡大させている可能性が高いのです。
▽人民元安になると上海株は下落する
・人民元と上海株の関係の特徴は、日本円と日本株の関係とは違います。日本円と違い、人民元安になっても上海株は上がりません。それどころかさらに下がります。資本が流出しているということで、さらに上海株が下落するという相乗作用が起こるのです。それに加えて、中国の大企業には外貨建て借金(債権)が多く、人民元安になると負担が増え経営が悪化します。
・そのため、当局は上海株市場よりも、まずは人民元の為替市場の対応に注力していますが、今回は以前のように大量の介入等はできなくなっています。それは、人民元を基軸通貨にしようとしているからです。
・中国は人民元を基軸通貨にする中間目標として、IMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)のバスケット通貨SDR(Special Drawing Right:特別引出権)の構成通貨になることを実現しました。構成通貨になる条件は、通貨が使われている規模と、自由な国際通貨であることです。規模の面は問題なかったのですが、国際通貨の条件を満たしているかどうかということが問題になりました。
・その国際通貨の条件とは、具体的には、金融市場の自由化、資本移動の自由化、市場実態への合致化等であり、いわゆる「自由化」です。
・まず、金融市場を自由化させるということは、金利の自由化も入るわけで、これによって銀行収益は落ちていきます。しかも、上海株の時価は十数行の銀行株の株価で約半分を占めています。この連載の第14回で書いたように、金利が自由化すれば、銀行の収益は落ちて、必然的に上海株が下がることは分かっていたことなのです。
・さらに、自由な資本移動を認めると投機筋の動きが激しくなります。激しくなっても以前のようには規制できません。市場実勢に合わせるために、以前のような十分な為替介入もできなくなる。為替介入については、IMFから注意も受けてしまっているだけに、なおさらです。
・つまり、中国は固定的な通貨制度(管理変動相場制)の中で、昨年来、中国経済が減速し、固定的な為替レベルと経済の実態レベルにギャップがあるという「アジア通貨危機」と同様の状況になっているのです。しかも、基軸通貨(国際通貨)になる目標のために、資本移動を自由化し、介入もできないという、いうなれば”抵抗力”が低下している状況です。投機筋とすれば、まさに狙い目の状況なのです。
・昨年8月の人民元の引下げ「チャイナショック」の時と比べると、さらに一段と抵抗力は低下しています。チャイナショック以降に、人民元がIMFのSDRの構成通貨に内定したからです。
▽投機筋が仕掛ける中国金融市場へのゆさぶり
・投機筋とは、ホットマネーとも言われ、中国では熱銭ともいわれています。自由に動き回る資金(資本)のことです。最近の欧州通貨危機やアジア通貨危機でもその主人公になりました。しかも、世界の先進国の量的金融緩和によって倍増しています。
・中国経済は、製造業と不動産・建築業の過剰の調整=ミニバブル崩壊の途中です。そもそも急激な少子高齢化が進んでいることから、経済成長率も落ちてくるなど、通貨のファンダメンタルズが崩れています。管理している為替レベルと経済の実態レベルとのギャップが拡大しています。つまり、固定的な為替制度を維持するのが困難になってきています。変動相場制であれば、大幅に下落している状況ですが、無理して高値で支えてきたのです。
・常に様々に動いている経済、それも国際金融の世界では「固定」ということは「リスクがある」ということと同義語です。投機筋は、無理して“高値”で抑えている為替レートを崩しにかかるのです。実は、投機筋にとってみると、固定的な通貨制度との戦いは、リスクが少なく楽なのです。
・その仕組みはこうです。固定的な通貨制度を採用していて、通貨のファンダメンタルズが弱くなっている通貨があるとします。その通貨を売り浴びせるわけですが、そのまま通貨を切り上げればそれで投機筋は収益が出ます。その通貨が介入などで為替のレベルを守り切った時には、固定的な為替レートのままで残ります。しかし、その時でも投機筋には損は出ない。つまり、固定的な通貨制度と投機筋との抗争は、投機筋に取ってみれば「勝ちか、引き分けの楽な勝負」ということです。
▽中国は国際金融のトリレンマ問題に対応できるか?
・中国の100年計画である世界一の経済大国になるという点で言えば、まず、GDPを上げなければなりません。国内政策でもGDP至上主義で運営していました。しかも、GDPはドル建てで世界に示されるのが通例です。日本を抜き、米国に迫るという目的の時には、人民元レートは高いほうが良かったのです。
・そのような背景もあって、習近平政権では、3年半で約2割人民元レートを上昇させました。そして、国内経済が悪化してきた昨年8月に耐えられなくなり2%の切り下げを行ったのです。これが、習近平は「人民元高好き」と揶揄された所以です。
・人民元高の修正が入り、投機筋が売り浴びせる中、全面的な為替介入はできない。なぜならば国際通貨では人為的に相場を誘導してはいけないのです。逆に、ここで全面的な介入をするならば、国際通貨ではない、とSDRの内定が取り消されるかもしれないのです。そのため、十分な介入ができず、ましてや以前の様に固定相場制に戻せません。
・通貨危機の時でもそうでしたが、固定的な為替レベルと経済の実態レベルとのギャップがあるときには、本当の解決策は、実態レベルに合わせるしかない。これが国際通貨の宿命なのです。まさに、自由な金融政策、資本移動の自由化、固定的な通貨制度は成り立たないという「国際金融のトリレンマ」問題なのです。
・さらに言うと中国の金融市場や通貨制度は「混乱」に慣れていません。過去、変動幅を広げて自由化しようとすると、偶然にも、アジア通貨危機やリーマンショックなどの金融危機が発生し、そのたびに固定相場制に戻してきました。今回、それは絶対にできません。
・そのため、今回のような混乱に慣れていないのです。十分な介入もできないなど動きを封じられたままで、国際通貨になるための「洗礼」を受けているようなものです。
http://diamond.jp/articles/-/84861

闇株新聞の指摘「「見ていられないほど稚拙な対応」で市場の混乱をさらに増幅」、とは主要国市場まで混乱の渦に巻き込んでいるだけに、本当に困ったことだ。「中国経済の闇は耐えていれば何とかなるものではありません」、「日本は政府も企業も「脱中国」を急げ!」との指摘を重く受け止める必要があろう。
宿輪純一氏はより理論的角度から出口のない中国政府の状況を、「国際金融のトリレンマ」として、「国際通貨になるための「洗礼」を受けているようなもの」と指摘している。ただ、本来であれば、「洗礼」を受けた後は、新たな人生が待っている筈だが、今回の場合は「洗礼」が終わらずにいつまでも続いてしまう懸念もある。
唯一の「出口」は、IMFや国際社会に謝罪した上で、人民元の基軸通貨化をあきらめ、SDRから外し、固定相場制に戻すことなのではなかろうか。それにしても、中国には国際金融のことを十分に理解している人材も豊富な筈だが、合理的判断よりも政治的判断が優先した結果が、今回の混乱の背景にあるのかも知れない。
明日は、世界同時株安をより一般的な角度から取上げる予定である。
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