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世界同時株安(その4)「株式市場の終わり」説、「原油価格下落の影響」 [世界経済]

昨日に続いて、世界同時株安(その4)「株式市場の終わり」説、「原油価格下落の影響」 を取上げよう。

先ずは、財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡績氏が、1月22日付け東洋経済オンラインに寄稿した「静かな暴落が意味する「株式市場の終わり」 「セリングクライマックス」なき反発の怖さ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は、セリングクライマックス(みなが悲観的になり大量の売り注文が出て、相場がアク抜けする状態)なしの反発は何を意味するのかがテーマだ。それは「恐怖と安堵」の両方であり、だからこそ危険なのだ。
▽ドラギ発言にすがった投資家たち
・1月21日のニューヨークの株式市場は、セリングクライマックスはなかったが反発した。まず欧州がECB(欧州中央銀行)ドラギ総裁の3月の追加緩和示唆で反発し、米国は原油在庫が予想を大きく上回って減少し反発。NY原油は4%とこの3カ月で最大の上昇となった。ただし、水準が下がっているので上昇と言っても29ドル台で30ドルを割ったまま。しかし、さらに大きく下げるかと思われたところでの反発だったので、センチメントに対して大きく安堵させる効果があった。
・ドラギ総裁の記者会見の発言は、いつものリップサービス過ぎない。それをわかっていながら、どんな材料にもすがりたい投資家たちが飛びつき、買い戻しの流れとなった。
・ただし、3月にはまた失望することは目に見えている。今日上がった分は下がるだろう。もともと、今年の3月は危険な月。原油関連、シェールガス関連への銀行融資のロールオーバーが難しくなるのが3月末と言われており鬼門となる。警戒が必要だ。
・一方、日本の株式市場だ。1月21日、セリングクライマックスではなかったが、極端な乱高下が起きた。日経平均は、18日19日と今年初めて2日連続の陽線が出現。20日の朝は300円を超える上昇で1万7000円台回復まであったが、その後一気に下落。終わってみれば632円安で、1日で1000円近い値動きとなった。
・21日は大きく反発して始まり、一瞬の安堵があったのも午前高、午後からは一本調子の急落で日経平均先物は1万6000円ちょうどで取引を終えた。最後の乱高下は16時半以降の夜間相場で、先物は開始と同時のさらなる急落で1万5800円割れ、一転急騰し6200円へ。その後も乱高下し、米国の反発を受けて1万6400円水準に上昇して終えた。乱高下は仕掛けそのものだが、米国を受けての回復はウソでもいいから信じたい、というのが翻弄されている投資家側の心理だろう。
・もう少し長いスパンで見ると、ここで一連の下げが終了し、乱高下をしながら戻っていくという可能性もある。セリングクライマックスのないまま暴落が終了するというのは、何を意味するのだろうか。
・「暴落は2回来る」が私のバブル理論で、このセオリーでいうと、2015年8月と2016年1月が1回目と2回目となるのか、それとも、2回目の下落のこれは前半に過ぎないのか、見極めが難しい。欲張ると逃げるのが難しくなる。2回目の可能性があれば、逃げておくのが安全策だ。
・さて、ポイントを整理しよう。今回の下落はパニック売りを伴わず淡々と直線的に下がってきている。これは、仕掛けても誰も反応しない、仕掛け側の自作自演の割合が高すぎて、売り仕掛けではそれほど儲けられず、盛り上がらない、だから、このままあっさりと仕掛け側が手仕舞う、という解釈がひとつ。
・もうひとつの解釈は、200ドルの下げを400ドルにしているのは仕掛けだが、200ドルの下げは実需の下げで、オイルマネーが売り、ジャンク債で行き詰まったファンドが売り、資源関連通貨、関連株でやられた投資家が売れば、彼らが静かに売ったとしても下がってしまう、というものだ。
▽下落の大きさに比して市場が静かすぎる理由
・静かな暴落継続は恐怖感を伴う。なぜなら、本当の売りだからだ。個人的には、こちらのシナリオだと考えているし、多くの黙っているマーケット筋もこれを恐れているが、意外と、派手で下手な仕掛けの部分も多いと思っている。下落の大きさに比してマーケットは静かすぎるのだ。恐怖に凍り付いた市場を表しているのか、リーマンショック以後、上場株投資などばかばかしくてまともな投資家はやらなくなったからなのか、どちらかなのだが、真実は両方であると考える。
・上場株市場というのは大分前に終わっていたという指摘があり、学問的にも裏付けられている。この15年、とりわけリーマンショック後は、乱高下というリスクはトレーダーにとってはチャンスを意味し、価格変動リスクを狙って、変動の大きい株ほど割高となり、大手の投資家(トレーダー)はそれを好んで買っているという分析がある。
・リーマンショック前と違い、投資家層は薄くなっている。そのため、取引も一方的、トレーダー的な売買の仕掛けに脆弱と言うよりは、その流れに流されるままになっており、むしろ仕掛け側としても儲ける機会が減っていることを意味する。そう考えると、今後、株式市場が反転したとしても、長期的にみて上場株市場は期待できない。私はそう考えている。
http://toyokeizai.net/articles/-/101727

次に、元銀行のマーケットエコノミストで信州大学教授の真壁昭夫氏が、1月26日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「原油価格下落は世界と日本にとって吉か凶か」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽“逆オイルショック”はリスクオフを加速させ 世界経済の足を引っ張る悪循環をもたらす
・ガソリン価格や生産コストの低下は、消費の下支えにつながるはずだが…  原油価格が不安定な展開を続けている。1月15日には、代表的な指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格が、約12年ぶりに1バレル当たり30ドルを下回って取引を終え、20日にはさらに26ドル台となった。
・足元では反発しているものの、2014年前半、100ドル台だったことを振り返ると、原油価格はまさに地すべりのような勢いで下落した。それは“逆オイルショック”と呼ぶべき動きだ。
・この背景には、世界的な原油需給の悪化がある。中国など新興国の景気が減速し需要が低迷しているにもかかわらず、サウジアラビアなど主要産油国は減産を見送ってきた。足元では、イランの原油輸出観測が供給圧力への懸念を追加的に高めている。主要需要国であった中国などの景気減速で、原油だけでなく、鉄鉱石や銅など多くの商品も下落している。まさに“資源バブル”の崩壊という表現が適切な状況だ。
・最近の原油価格の下落と不安定な株価の相関関係を見ると、これは世界経済のリスク要因の一つと考えた方がよい。これまで世界経済を牽引してきた米国でも、原油価格の下落がエネルギー関連企業の業績、財務体力への懸念を高め始めている。
・原油価格の下落は、エネルギー資源を輸入する国にはプラスに作用する。しかし、原油を売る側の産油国にとっては大きなマイナス要因だ。中東の産油国の中には、保有している投資ファンドを現金化する動きも出ている。
・それに伴い、欧米やわが国の株式市場には、中東筋からの売りが出ているようだ。株価の下落は投資家のリスク許容量を減少させ、金融市場を不安定化させる。それは投資家のリスクオフの動きを加速させ、金融市場の下落で世界経済の足を引っ張る悪循環ができる可能性が高い。
▽サウジの思惑とイラン制裁解除で供給過剰 中国と世界の景気減速で需要は低迷
・原油価格の下落の背景には、世界的に原油が過剰気味になっていることがある。供給サイドでは、シェールオイルブームによって米国などで産油量が大きく上昇した。それに加えて、サウジアラビアをはじめとする主要産油国が減産を見送ったことが大きく影響している。
・2014年、米国の原油生産量は、サウジアラビアを抜いて世界第1位となった。米国の生産増加は、世界の原油市場をコントロールしてきたサウジアラビアにとって、影響力の低下を危惧させたはずだ。
・かつて、サウジアラビアはOPEC(石油輸出国機構)内の減産合意に基づいて、産油量を減らし市場シェアを落としてしまった。その時の経験もあり、同国などOPEC諸国は減産を見送り、結果として原油の供給圧力が高まった。
・また、1月16日、欧米諸国がイランに対する経済制裁を解除すると発表した。すでに、イランは原油輸出量を一日当たり50万バレル増やす用意があるという。イランの追加的な供給圧力は、原油価格の下押し圧力として働く。
・一方、原油に対する需要は低迷している。基本的に、原油への需要は世界の経済状況に大きく左右される。経済状況が上向きになると、生産活動の活発化等のためにより多くのエネルギーが必要になる。経済状況が悪化すると、原油への需要も弱まりやすい。
・世界経済の下落を招いた最大の要因は中国の景気減速だ。リーマンショック後、中国政府は約4兆円(約57兆円)の景気刺激策を打ち出した。それは、リーマンショック後の景気を一時的に支えた。 しかし、景気対策の賞味期限はほとんどが3年程度だ。中国の景気拡大は続かず、2014年以降、減速は鮮明化した。積極的な景気対策の結果、国内では鉄鋼や石炭などの過剰な生産能力が蓄積された。それが中国での不良債権への懸念を高めてきた。
・こうして中国経済の成長期待は低下し、世界的に原油など資源に対する需要が低迷した。中国経済の減速は、ブラジルなど他の新興国やオーストラリアなどの資源国の景気減速にもつながった。
▽原油下落は米国経済への懸念を高める わが国にとっても大きなリスク
・原油価格は、昨年末から1月中旬までの期間だけを見ても、20%程度下落した。ただ、価格下落が顕著なのは原油だけにとどまらない。鉄鉱石や銅をはじめ、多くの天然資源や農産物の価格が下落している。こうした急落は、“資源バブル”崩壊との表現がふさわしい。
・資源価格が軒並み大きく下落すると、世界経済にも大きな影響が及ぶことは避けられない。
・インドやわが国など、エネルギー資源を輸入に頼っている国では、ガソリン価格の低下や生産コストの低下を通して消費の下支えにつながる。
・しかし、冷静に考えると、逆オイルショックのマイナス面も大きい。原油価格が下落すればエネルギー関連企業の業績、財務内容に対する懸念が高まりやすい。それは株式や社債の価格を下落させる。 すでに米国では、シェールガス開発のブームに乗って発行された非投資適格級の社債(ジャンク債)の価格が大きく下落している。投資家のリスクオフの動きを通して、同国経済に対する懸念を高めるマイナス要因だ。
・米国景気に対する懸念が高まると、それが牽引する世界経済の先行きに黄色信号が灯ることになる。特に、米国には大手エネルギー関連企業も多く、原油価格の下落は米国株式市場の足を引っ張る要因になる。
・そのため、原油価格の下落が、世界の金融市場に急速なリスクオフの動きもたらす可能性は高い。その場合、為替市場ではドル高の巻き戻しによる円高が進むことが想定される。円安がこれまでの企業業績、株価の上昇を支えてきたことを考えると、逆オイルショックは、わが国にとっても大きなリスクになり得ると考えるべきだ。
▽相場の反発はあっても一時的 投機的な売りが出やすい状況
・世界経済を原油価格の動向と併せて考えると、ディスインフレ環境下での金融政策、新興国の景気に与える影響には注意が必要だ。
・原油価格の下落は物価上昇率を抑制し、世界的にディスインフレ圧力を高める。そのため、金利は上がりづらい。利上げに踏み切った米FRB(連邦準備制度理事会)も、今後、慎重な政策スタンスを示すことになるはずだ。
・昨年の年末にかけて米国の製造業の景況感が悪化し、それに加えて、12月の小売売上高がマイナスに落ち込んだ状況を考えると、同国経済の状況にも少しずつ不透明要因が目立ち始めている。今後の米国経済の展開次第では、FRBは利上げの実施に踏み切れない可能性もある。
・その場合、わが国やユーロ圏などでは追加的な金融緩和が期待されることになるだろう。政策効果への期待が、一時的に原油価格や株価を反発させるかもしれない。ただ、世界経済が抱える不透明要因を考えると、そうした状況が長く続くとは考えにくい。
・投資家にとって、一時的な相場の反発は株式などのリスク資産を売却するいいタイミングかもしれない。  資源価格の下落の引き金となった中国では、これからゾンビ企業の淘汰など構造改革を進めようとしている。大胆な改革は失業者の増加など、社会の不満を高めやすい。政府は社会の混乱を避けたいはずで、改革は進まず今後も中国の景気はずるずると低迷する恐れがある。
・現在、中国政府は市場安定のために、株式の売却制限や為替相場への介入を実施している。今のところ市場は小康状態を取り戻しつつあるように見える。しかし、ひとたび投資家が大挙して中国の本土株や人民元を売り始めれば、政府の力で売り圧力を食い止めることには限界があるだろう。
・すでに、アジアの新興国通貨の中には、1997年の通貨危機以来の安値まで落ち込んだ通貨もある。産油国等でのドルペッグの維持など通貨制度に対する懸念も強くなっている。そうした市場の綻びを狙って、投機的な売りが出やすい状況になっている。
・下落のペースが速かっただけに、一時的に原油価格が反発することはあるかもしれない。しかし、世界的な資源に対する需給の悪化という問題は、短期間での解決が難しい。原油をはじめとする資源価格の不安定な展開は、これからも世界経済や金融市場を動揺させることになるはずだ。
http://diamond.jp/articles/-/85176

小幡績氏は、「株式市場が反転したとしても、長期的にみて上場株市場は期待できない」と、市場力学的観点から悲観的な見方を述べている。特に「今年の3月は危険な月。原油関連、シェールガス関連への銀行融資のロールオーバーが難しくなるのが3月末と言われており鬼門となる。警戒が必要」とのことだ。
真壁昭夫氏も、日本のような原油輸入国にとって一見、「恩恵」に思える原油価格下落が、金融市場に急速なリスクオフの動きもたらすことを通じて、大きなリスクになり得ると警告する。
明日、金曜日は更新を休むので、土曜日にご期待を!
タグ:世界同時株安 (その4)「株式市場の終わり」説、「原油価格下落の影響」 小幡績 東洋経済オンライン 静かな暴落が意味する「株式市場の終わり」 「セリングクライマックス」なき反発の怖さ ドラギ発言にすがった投資家たち 3月にはまた失望することは目に見えている 今年の3月は危険な月。原油関連、シェールガス関連への銀行融資のロールオーバーが難しくなるのが3月末と言われており鬼門となる。警戒が必要だ 日本の株式市場 極端な乱高下 「暴落は2回来る」が私のバブル理論 下落の大きさに比して市場が静かすぎる理由 上場株市場というのは大分前に終わっていたという指摘 今後、株式市場が反転したとしても、長期的にみて上場株市場は期待できない 真壁昭夫 ダイヤモンド・オンライン 原油価格下落は世界と日本にとって吉か凶か 逆オイルショック リスクオフを加速 世界経済の足を引っ張る悪循環をもたらす イランの原油輸出観測 “資源バブル”の崩壊 エネルギー資源を輸入する国にはプラスに作用 原油価格の下落 産油国にとっては大きなマイナス要因 投資ファンドを現金化 欧米やわが国の株式市場には、中東筋からの売りが出ているようだ 投資家のリスク許容量を減少させ 融市場を不安定化 投資家のリスクオフの動きを加速 世界経済の足を引っ張る悪循環 サウジの思惑とイラン制裁解除で供給過剰 中国と世界の景気減速で需要は低迷 原油下落は米国経済への懸念を高める わが国にとっても大きなリスク 相場の反発はあっても一時的 投機的な売りが出やすい状況
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