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尖閣諸島問題(その3)尖閣国有化時の日本側の外務省・民主党幹部のおそまつな対応 [外交]

昨日に続いて、尖閣諸島問題(その3)尖閣国有化時の日本側の外務省・民主党幹部のおそまつな対応 を取上げよう。

先ずは、2月2日付け日経新聞「12年の尖閣国有化 中国の反応、過小評価 「政治主導」で混乱 クリントン氏メールで判明」のポイントを紹介しよう。
・米国務省が公開したクリントン前国務長官の私用メールで、沖縄県の尖閣諸島を国有化しようとしていた当時の民主党の野田政権が中国の反応を過小評価していたことが浮き彫り。
・国有化した後の中国の猛反発を読み誤った背景には、外務官僚による中国分析の甘さと、民主党政権が外交でも政治主導を掲げたことがある。当時の野田佳彦首相の側近も、外務省関係者の一連の説明で「中国が公に国有化を認めることはないが、黙認する可能性は大いにある」との感触を得たと語る。
・外務省や北京の日本大使館で国有化した場合の中国の出方を分析していたのは、外務省内で中国政策に影響力を持つ中国語研修組「チャイナスクール」だ。当時の政府関係者は、民主党政権が政治主導を掲げていたのを理由に「国有化しようとしていた当時の政権の方針に追随する情報に偏っていたかもしれない」と振り返る。
・メールがクリントン氏に発信された直前、ある政権幹部が政治主導を掲げ、日中関係の膠着状況を打開しようとしたことも日中双方をミスリード。「胡錦濤国家主席が野田首相と会ってくれれば尖閣諸島を国有化しない可能性も出てくる」。8月末に訪中したその政権幹部は独断で中国高官にこう伝えた。ところが同幹部は帰国後、野田首相らには「国有化しても中国は黙認する可能性」と報告。直後の9/9、ロシアのウラジオストク。日本の政権幹部からのメッセージを信じて日本が国有化しないと期待していた胡主席と、中国が国有化を黙認するとみていた野田首相が立ち話。だが、双方の認識はすれ違うばかりで差が埋まるはずがなかった

次に、2月10日付けJBPress「ヒラリーの私用メールが暴いた外務省の赤っ恥 国益の毀損と責任感の欠如がもはや伝統に」を紹介しよう(▽は小見出し)
・2月1日付の全国紙は、ヒラリー・クリントン前国務長官が公務に私用メールを使っていたのがさらに見つかったと報じた。米国では機密漏洩という視点で以前から問題視されてきた。 日本においては公用メールの管理という示唆でもあるが、ここでは同時に公開されたメールで明らかになった外務省高官の尖閣諸島国有化についての認識の甘さを取り上げたい。
・当時のカート・キャンベル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)が尖閣諸島を国有化する前の日本に、中国と事前協議を重ねる要請をしたことに対する佐々江賢一郎外務事務次官(当時)の回答が明らかになった。
▽外務省の中国認識
・米国は中国の激怒を予測し、「佐々江と日本政府に北京と協議」することを奨めるが、新聞報道に見る佐々江次官の発言は「中国が(国有化の)必要性を理解し、いずれ受け入れると信じている」(「日本経済新聞」、他紙も同趣旨報道)というものである。何と楽観主義の次官であったことか。
・国際情勢、中でも中国の歴史や言動に全然学んでいないのではないだろうか。日々が闘いである外交の場で活動する、日本を代表する次官の発言とはにわかに信じられないほど初心である。 今日の日中間の大きな係争に発展する震源になり、国益の棄損につながっていると思うがいかがであろうか。
・かつて園田直外相は外務官僚を「理路整然たるバカ」と呼んでいたそうである(杉原誠四郎『外務省の罪を問う』)。頭の切れはいいが、自分が日本人であり、日本の国益を主張すべき立場にあることを忘れる外務官僚が多いからであろう。
・どうしてこんな人が次官になり、駐米日本大使になるのだろうか。ここで思い出すのが、佐々江氏の数代前の次官であり、同じく駐米大使となった斎藤邦彦氏のことである。
・アイリス・チャンの『ザレイプオブナンキン―第二次世界大戦の忘れられたホロコースト』がベストセラーになり、南京攻略戦に伴う「事件」でしかなかったものが「南京大虐殺」として米国をはじめ国際社会に大々的に流布することになる。日本は何としてもそうした嘘、捏造が広がるのを止めなければならなかった。
・そこで、チャンと斎藤大使によるテレビ討論が1998年2月実施された。しかし、結果的にはチャンの言説を補強することになってしまった。
・外務次官をやり、そして日本国を代表する駐米大使でありながら、南京大虐殺の捏造を暴いて日本の正当性を主張できなかったのである。このテレビ討論については「アイリス・チャンと斎藤邦彦駐米大使の討論」で検索可能。
・日本人はディベートが下手だとよく言われる。大方の日本人はそうかもしれない。 しかし、日本国を代表する、しかも世界への情報発信源ともなっている米国のテレビ討論で、相手の主張を確固たるものにしてしまう結果をもたらしたのでは、何のための何処の国の大使か分からない。売国奴と呼ばれても大きな誤りではないであろう。
・佐々江氏の場合はディベート以前の国際情勢認識、中でも隣国中国の歴史や言動に対する認識である。その後の中国の行動は佐々江氏の発言と全く違った方向をたどっており、外務省の認識が全く間違っていたということである。
・日本にとって一衣帯水と言われる中国を知り、韓国・北朝鮮を知るのは、他のどの国よりも必要不可欠なことであるが、外務省は一体全体何をしているのだろうか。そして、どんな官庁なのだろうか。
▽外務省に自浄能力なし
・筆者は日米開戦にまつわる問題で外務省がどういう動きをしてきたかに関心があり、『外務省の大罪―幻の宣戦布告』を上梓した。 そうした結果、省庁改編には間に合わなかったが、「害務省」と化している外務省こそが第一に改編されて「国務省」となるべき官庁ではないかと書いた。外務省糾弾の嚆矢であったと自負している。
・当時調べて分かったことは、宣戦布告の遅延は(軍部に責任がなかったとは言わないが、最終的かつ最大の要因は)紛れもなく外務省の失態であった。しかし、外務省は総力を挙げて隠蔽し、揚句に当事者たちが自己擁護する著作を出し続けたのである。
・他方、罪を押しつけられた軍部側の著作はほとんど現れなかった。東条英機など、その衝にあった人が家族らに自己弁護するなと厳しく言いつけたからでもあろう。
・東日本大震災と福島第一原子力発電所にかかわる対処において、関わった民主党の幹部たちが次々に自叙伝などを上梓したことを思い出す。多くは自己弁護のアリバイ作りではなかったかと思う。 往生際の悪い菅直人氏(当時の首相)は、自分の言葉を二転三転させながら、自己正当化だけのために今も裁判で争っている。
・宣戦布告の遅延については状況証拠から多くの人が研究してきた。しかし、何よりも求められたのは外務省自身による調査であった。 実際、3人の外相(東郷茂徳・重光葵・吉田茂)が調査を命じ、「問題の解明」に当った。しかし、外交文書は原則30年で公開するという規定を反故にして50年どころか70年たった今も公開されていない。
・いまにして思えば、北朝鮮の拉致問題と同じく、あえて調査するまでもなく、当事者たちが目の前にいるわけであり、事の推移は明々白々ではなかっただろうか。ただ、外務省の失態にしないための時間稼ぎであったに違いない。だから、永久に公開できないのではなかろうか。
・そうした何よりの証拠は、「罪万死に値する」とも見られた当の奥村勝蔵1等書記官や、上司として監督責任を有した井口貞夫参事官が、吉田外相によって何事もなかったかのように後日事務次官に任命されていることであろう。
・先の次官発言などは記録保管されるべきであろうが、都合悪い文書は破棄される可能性もある。外務省には公文書の保管意識が低いようで、開戦前夜の電文も何本かが見つかっておらず、歴史研究家を困惑させている。
・松岡洋介外相が訪ソして日ソ中立条約を電撃的に結ぶが、この時のモロトフ首相あての英文書簡について加瀬俊一氏は「書翰はわたしが起草した。(中略)これは極めて重要な外交文書である。私はともかく音読して了承を得ると、原案に花押をしてもらった。これはその後記念に保存していたが惜しくも戦災で焼失した」(『戦争と外交(上)』)と述べている。
・外交文書であるから当然「保管」であるが、「記念に保存」となれば、私的に持っていたとしか受け取れないし、それゆえに戦災で焼失したわけで、筆者は茫然自失したことを思い出す。
・筆者が忘れられないもう1つのエピソードは、日米交渉は野村吉三郎大使を中心に進められたが、その下に若杉要公使がいた。体の具合が悪かったようで、交渉たけなわの頃は「寝たきり」であったという人もいるが、当時在米大使館で勤務していた松平康東1等書記官は「(若杉公使は)自分の東京の家を新築したもので、そのための家具を探し回っていて、大使館にいないことも多かった」と語る。 病気はカムフラージュであったことを示唆している。
・野村大使がルーズベルト大統領やハル国務長官と頻繁に交渉していたというのに、公使はこの為体で、外交史にはほとんど顔を出さない。日米が丁々発止の交渉をしているさなかで、重要人物が公務に精励しないばかりか、自利で動いていたのである。
・こうした状況が戦後の外務省でも繰り返されているというのは言いすぎであろうか。しかし、外務本省は無謬性を信じ切っているようで、日米貿易交渉や拉致問題などにおいても反省の声一つ聞こえてこない。
▽拉致問題の本質
・東大を中退して、「目標とプライド」を以って外務省に入り12年間勤務し、最後は拉致問題に担当課長として直接かかわるが失望して外務省を去り、「外務省の在り方にダメ出し」をした人物に原田武夫氏がいる。  「自前の情報機関を使って集めた北朝鮮現地情報を持たない日本政府には、北朝鮮に関する情報が決定的に欠如している。対北朝鮮政策と『国富の増進』という国家としての目標をリンクさせ、中長期的観点から物事を動かしていく発想もない」と知り、「ただただ北朝鮮や米国をはじめとする関係国の言葉に踊らされているままでよいのか」との疑問から外務省を去る(『北朝鮮外交の真実』)。
・拉致問題では外務省が正面に立っているが、失敗続きである。中山恭子参院議員は「外務省には、拉致被害者が犠牲になっても致し方ないという方針が従来からあります」(「言論テレビ」2014.10.31)とも述べている。
・一昨年5月、両国政府が発表したストックホルム合意で、北朝鮮の責務は「日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、日本人妻、拉致被害者及び行方不明者を含むすべての日本人に関する全面的調査を行う」とし、しかも「調査はすべての分野を同時並行的に行う」となっている。
・外務省の担当官が完全に北朝鮮の策略に乗せられているのである。日本は拉致被害者と行方不明者が最優先と口を酸っぱくして言ってきたが、日朝で交わした文書では最後に書かれている。 文書に表わされた順序はある意味で、優先順位あるいは比重の起き方を示すものであるから、同時に着手はするが、優先順位では後になることを認めたのも同然であり、拉致問題に手がつかないのは火を見るより明らかであろう。
・しかも、拉致問題の制裁を、「北朝鮮の特別調査委員会による調査開始段階で、人的往来、送金、船の入港などの規制を解除する」とした。これでは、遺骨ビジネスで堂々と金を稼げるようになるし、また、制裁も問題が解決する以前の調査着手で解除されるというのでは、相手にとって旨みばかりの合意であったのである。
・中山議員の言を再び借りると、「北朝鮮は拉致問題の解決を急がないと日本は動かないという相当な緊迫感を持っていると、私は承知していました。ところが、外務省と交渉を始めてみたら、どうも違う。非常に甘い。どうやら拉致問題に手を付けなくても、相当な資金を手にする術があると彼らは感じ始めた」というのだ。これが、外務省の交渉失敗でなくて何であろうか。
・日本は当初の5人を取り戻して以降は、拉致被害者の1人も取り返すことができずに弄ばれているのである。そこで議員は、「日本側の交渉担当者を交替させ、(中略)警察、公安、民間の専門家なども交えて共同で救出に当たらなければならない」と提言する。まともに交渉できない外務省への三行半である。 約束の期日までに調査結果を報告しない北朝鮮に対し、政府・外務省は何も対処できないままである。家族会は「予測の事態」と冷静に受け止め、「(交渉を)打ち切ってもいい」とまで言い出す始末である。 しかし、心中は察して余りあるもので、家族会も外務省を信頼していないのである。
▽おわりに(省略)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46021

日経新聞報道にあるように、外務省内の「チャイナスクール」が「当時の政権の方針に追随する情報に偏って」情報を提供していたというのは、大いにあり得る話だ。さらに罪が重いのは、政権幹部が中国側と日本側に逆のことを言って、胡主席と野田首相の立ち話を仕掛けたことだ。これは日中間の修復不可能な亀裂につながった。
この政権幹部が誰であったかは明らかではないが、昨年6月21日付け日経新聞の「日曜に考える」欄「長島昭久氏「尖閣国有化、決断するしか道はなかった」から類推すると、野田政権下で首相補佐官として調整に携わった長島氏だった可能性がある。
JBPress記事では、チャイナスクールだけでなく、佐々江次官も重大な判断ミスをしながら、何のお咎めもなく駐米日本大使に昇進している。元駐米日本大使の斎藤邦彦氏もアイリス・チャンとのテレビ討論で、何ら有効な反論が出来ず、「相手の主張を確固たるものにしてしまう」結果をもたらしたとは情けない限りだ。外務省の若手時代は、アメリカの大学院に留学してディベートの訓練も受けた筈なので、抗弁の余地なしである。
宣戦布告の遅延問題で「罪万死に値する」とも見られた人物が、事務次官に昇進。拉致問題でのストックホルム合意でも「北朝鮮の策略に乗せられた」等々、外務省はどうしようもない組織のようだ。それを表立って批判できない政治家やマスコミの罪も深い。
なお、長島昭久氏の記事での発言のポイントは以下の通りで、日中間で二枚舌を使ったことについては一切、言及していない。
・「国有化を決断すれば日中関係が相当後退すると予測。ただ、こちらが強調したのは現状を崩すものではないという点だ。石原さんは漁船が退避するための船だまりなどを造ると言っていた。『都が買って好き放題されるよりも、国がしっかり安定的に維持・管理するほうが穏当ではないか』と中国側に説明」
・「我々の認識では、中国から『了解』や『承認』まではいかないが『黙認』くらいはとれるのではないかという感触があった。
・さらに、中国は胡錦濤政権から習近平政権への移行期にあった。政権が変わる前後のどちらがいいのか。ものすごく困難な選択だった」
・「政府内の一部にも直後の国有化はまずいから延期したほうがいいという声はあった。しかし、我々は政権が変わることで関係をリセットする可能性を視野に入れたほうがよいと判断。確かに日中関係は悪くなり、経済的なダメージもあった。しかし、あのタイミングでああいう決断する以外に道はなかった。『他策なかりしを信ぜむと欲す』(陸奥宗光)の思いだ」
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