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日韓関係(通貨スワップ問題(その1)) [外交]

今日は、日韓関係(通貨スワップ問題(その1)) を取上げよう。日本経済新聞社編集委員、元ソウル支局員の鈴置 高史氏が日経ビジネスオンラインにシリーズで投稿したものである。なお、通貨スワップ協定とは、Wikipediaによれば、中央銀行が互いに協定を結び、自国の通貨危機の際、自国通貨の預入や債券の担保等と引き換えに一定のレートで協定相手国の通貨を融通しあうことを定める協定のこと、である。

先ずは、9月8日付け日経ビジネスオンライン「「中国のスワップ」を信じられなくなった韓国 それでも「海洋側」には戻らない」を紹介しよう(▽は小見出し、Q&A形式で――は質問、+は回答内の段落、*は引用)
・突然、韓国が通貨スワップの締結を日本に頼んできた。中国と結んだスワップを頼りにできるのか、疑い始めたのだ。
▽中韓スワップは反故に?
――8月27日、日韓両国が通貨スワップ再開で合意しました。
鈴置:厳密に言えば「再開に向け協議することで合意した」のですけれどね。
――「日本のスワップなど要らない」と韓国は言っていました。態度を急に変えたのは、やはり米利上げ観測が原因ですか。
鈴置:韓国の政府もメディアもそう言います。でも、それは「誤魔化し」です。米国がいずれ利上げに動くことは前から分かっていた。韓国が日本に頭を下げてきた本当の理由は、中国との関係悪化です。 7月8日、韓国は地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の在韓米軍への配備を正式に認めました。中国は自分を狙う兵器として、絶対に認めるなと韓国に圧力をかけていました。
+THAADは習近平主席が直接、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に命じていた案件です。中国のメンツは大いに潰れました。 中国はありとあらゆる手段を動員し「報復するぞ」と韓国を脅し上げました(「習近平の『シカト』に朴槿恵は耐えられるか」参照)。
+「環球時報が中国政府に建議した『5つの対韓制裁』」をご覧下さい。ここには「韓国が通貨危機に陥っても通貨スワップを発動しない」とは書いてありません。  ■環球時報が中国政府に建議した「5つの対韓制裁」(1)THAAD関連企業の製品の輸入禁止 (2)配備に賛成した政治家の入国禁止と、そのファミリービジネスの中国展開の禁止 (3)THAADにミサイルの照準を合わせるなどの軍事的対応  (4)対北朝鮮制裁の再検討  (5)ロシアとの共同の反撃  注)環球時報の英語版「Global Times」では「China can Counter THAAD Deployment」(7月9日)で読める。
+でも、「こんなに露骨に報復を唱えるのなら、スワップの約束も反故にするのではないか」と、市場関係者なら誰もが考えます。それを一番懸念しているのは、韓国の通貨当局と思います。 ただ素直にそう言えば、日本に足元を見られると韓国は警戒しているのでしょう。一方、「米利上げ」を理由にすれば、これは日本にも影響のある話ですから「日韓双方のためのスワップ」と言い張れると考えたと思います。
▽「素っ裸」の韓国
――中韓スワップ協定には「韓国が反中的な行為をしたら発動しない」との条項が入っているのですか?  鈴置:細かな条文は発表されていないので、分かりません。でもそんな条項がなくとも、韓国が中国の怒りを解かない限り、スワップは発動されない可能性もある、と専門家は読むものです。 普通の国なら、他国に常識外れの報復をすれば自らの品位も傷つくと懸念します。でも、品位があると見られていない国は、そんな心配はしません。やりたい放題です。
+9月3日、オバマ(Barack Obama)大統領が中国・杭州での20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に参加した時の話です。国家指導者が飛行機から降りる際に使うレッドカーペットの敷かれたタラップが提供されませんでした。 英ガーディアン(The Guardian)は「Barack Obama ‘deliberately snubbed’ by Chinese in chaotic arrival at G20」で、中国と南シナ海などで対立を深める米国への嫌がらせであると報じました。世界は児戯に等しいことをするとあきれました。
――確かに、中国ならスワップの約束も簡単に破りそうですね。
鈴置:実際に約束が破られなくとも「中韓スワップが怪しくなったな」と世間に見られるだけで、韓国にとっては大きなマイナスです。 「韓国の通貨スワップ」を見れば分かる通り、中国とのスワップは2国間スワップの70%弱を占めます。完全に「中国頼み」なのです。 韓国の通貨スワップ(2016年9月7日現在)(表省略)  そして、中国とのスワップもそうですが、残りの30%もドル建てではなく、ローカルカレンシー同士のスワップに過ぎません。いざという時に非ドル建てスワップの効果があるのか、疑問視する向きも多い。 スワップという金融の防壁を失った韓国は今、資本逃避という嵐の前で「素っ裸」になりました。世界のどこかで金融不安が起きたら、韓国からドルが流れ出す可能性がぐんと高まったのです。
▽「瓢箪から駒」のTHAAD容認
――日本が韓国のスワップ要請に応じたのは「韓国が中国を離れ、米国や日本側に戻ってきた」との認識からでしょうか。
鈴置:それは完全に誤解なのですけれどね。韓国は海洋勢力側に戻ってはいません。THAAD配備を容認したのも「瓢箪から駒」の偶発的な出来事でした。 韓国の親中派が突然、「配備拒否」に動いた。焦った「配備派」が急きょ巻き返し、大統領の承認を無理やりに取り付けたのです(「『中国陣営入り』寸前で踏みとどまった韓国」参照)。
+だから配備場所もまだ決められず、韓国の各地で反対運動に見舞われています。朴槿恵大統領自身が後戻りする可能性も出てきました。 9月5日に杭州で習近平主席と会談した際、朴槿恵大統領は以下のように語りました。聯合ニュースの「朴大統領 習主席に『北の核問題解決すればTHAAD不要』」(9月5日、日本語版)から引用します。
*THAADは北の核とミサイルに対応する手段として配備するのであり、第三国の安全保障上の利益を侵害する理由も必要もない。北の核・ミサイル問題が解決すれば(THAADは)必要ない。
▽THAADも元の木阿弥か
――THAADは必要ない、ですか。
鈴置:韓国メディアはこの発言を「条件付き配備論」と呼び始めました。「対北制裁をもっと厳しくする」くらいの口約束を中国から貰えば、それを米国への言い訳にして「配備保留」の姿勢に戻る作戦、と見る人もいます。 「THAAD配備について再び曖昧な姿勢を取ることで、米国から怒られないようにしつつ、中国の報復を逃れる」のが狙いです。もちろんそうなれば、配備派や米国にとって「元の木阿弥」ですが。
+実は、今回の中韓首脳会談の少し前から、THAAD問題も含め米中間では立場をはっきりさせない「曖昧戦術」に韓国政府が復帰するとの観測が高まっていました。 8月に入り、朝鮮日報の金大中(キム・デジュン)顧問や東亜日報のホ・ムンミョン論説委員ら有力記者が相次いで「曖昧戦術」に言及しています(「二股外交の失敗が加速する『韓国の核』」参照)。
▽バイデンは調停委員
――従軍慰安婦問題で、韓国政府は国民の反対を押し切って日本と合意しました。日本側に戻ったとは言えませんか?
鈴置:それも誤った認識です。そもそも韓国の要求が無理筋だったのです。日本は何度も謝っておカネも出している。 というのに、また日本を叩いて国民の楽しみに供そうとしたので、さすがに日本も怒りました。日本が韓国の思い通りにならないのは、当たり前なのです。 それに慰安婦合意で韓国は「日本」ではなく「米国に屈した」のです。離米従中の言い訳にまで「慰安婦」を使うので、米国も怒って韓国に圧力をかけました。
+2015年2月には、当時のシャーマン(Wendy Sherman)国務次官が「政治指導者が過去の敵を非難し、安っぽい拍手を受けることは容易なことだ。しかし、そんな挑発は発展ではなく、マヒをもたらす」と演説するに至った(「『米大使襲撃』で進退極まった韓国」参照)。
+もちろん韓国政府は「慰安婦合意は米国の圧力の結果だ」とは絶対に認めない。二股外交で米中を操っていると国民に宣伝してきたのに「米国に屈した」ら、虚構が崩れてしまいます。 でも最近、米国のバイデン(Joe Biden)副大統領が「自分が慰安婦問題で日韓をまとめた」と明かしました。米誌「アトランティック」(The Atlantic)電子版(2016年8月26日号)で以下のように語っています。
*Or, you know, [Korean President] Park [Geun-hye] and [Japanese Prime Minister Shinzo] Abe. I go to see Abe and he says to me, “Will you help me with Park?” And I call her and say, “Will you do this?” And I don’t negotiate the agreement, but the end result was, because I had a personal relationship with both of them and they trusted me, I could be an interlocutor, that was more like a divorce counselor, putting a marriage back together. 「安倍に会ったら『朴との関係を助けて欲しい』と言われた」「そこで朴に『こうするつもりはないか』と電話した」「自分は結婚生活を元に戻す調停委員の役割を果たした」――というわけです。
▽相変わらず告げ口外交
――「結婚生活は元に戻った」のではないですか。
鈴置:バイデン副大統領がそう思っても、朴槿恵大統領はそうは思っていないようです。「米国と、その後ろにいる日本に屈した」のがよほど不快だったのでしょう。 2015年12月28日の「慰安婦合意」で日韓両国はこの問題に関し「最終的かつ不可逆的に決着する」と約束しました。 しかし、朴槿恵大統領はその後も世界に向かって「日本は反省していない」と告げ口外交を展開しているのです。 例えば、ブルームバーグ(Bloomberg)通信の2016年3月30日の書面インタビューで「日本が歴史を直視しないことが日韓の未来志向的な関係の発展を妨害している」と述べています。  「Park says South Korea Must Rid of the World Nukes, Not Develop Them」という記事の最後のくだりが以下です。
*"The issues related to history have continued to be a stumbling block to the development of a future-oriented bilateral relationship,” Park said of Japan, a nation that occupied the peninsula for 35 years until its surrender in 1945. Japan should “squarely face history and make efforts to properly educate future generations without forgetting past wrongdoings."  今後、もし米国からの圧力が弱まって、もっと中国側に傾くことになったら韓国は「慰安婦合意」など、いとも簡単にひっくり返すでしょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/090500065/?P=1

次に、上記の続きとして、9月9日付け「5年前、韓国は通貨スワップを「食い逃げ」した 日本は「偽装転向者」とどう付き合うのか」を紹介しよう(▽は小見出し、Q&A形式で――は質問、+は回答内の段落、*は引用)。
・日本と韓国が通貨スワップ再開に向け協議を始める。5年前のスワップは結んだ途端、韓国が掌返し。「慰安婦」を蒸し返したうえ大統領が竹島に上陸。さらには天皇陛下に謝罪まで要求したのだが……。
▽日本に実利なし
――前回は中国との関係悪化に悩んだ韓国が、日本にスワップを頼んできたということでした。
鈴置:朴槿恵(パク・クンヘ)政権の二股外交が破綻、韓国は米中双方からにらまれた。そこで突然に態度を変えて、日本にすり寄って来たのです。 ウォンは弱い通貨なので、韓国からはしばしば資本が逃げ出します。韓国はいざという時に外貨を誰かから借りる仕組み~通貨スワップが必要です。 でも、関係の悪化した米国は容易には結んでくれそうにない。中国には通貨スワップを結んでもらっているけれど、発動してくれるか分からなくなった。 そこで日本にスワップ締結を頼んだのです。なお、日本が外貨不足に陥るとは当面、考えにくい。日本にとっては実利のないスワップです。
▽「傾中」の歯止めにならない
――韓国を海洋勢力側に引き付けておくために、日本が通貨スワップを提供する必要がある、と言う人がいます。
鈴置:確かに、そう言う人が日韓双方にいます。韓国の中央日報も「韓日通貨スワップ、話を切り出してすぐに受け入れた日本」(8月29日、日本語版)でそう主張しました。文章を整えて引用します。
*崇実(スンシル)大学のオン・ギウン教授(経済学)は「中国の影響力が過度に大きくなるのを牽制するために、日本も韓国との協力を強化する必要がある」と話した。
+韓国が一方的に頭を下げているのではない。日本にも外交的な利益になる――との主張です。でも、韓国がこう考える以上「韓国を引き付けておく」スワップは、逆効果になる可能性が大きい。 この記事も書いている通り、韓国は「引き付けておく」意図を見透かします。すると「我が国が中国側に行くのを米国や日本は恐れている。それなら海洋勢力に対し、もっとわがままを言っても大丈夫」と強気になるからです。
+THAAD騒動の発端になった、中央日報の金永煕(キム・ヨンヒ)国際問題大記者の記事を思い出して下さい。以下が肝心な部分です(「『南シナ海』が加速させる『韓国の離脱』」参照)。  *正解はTHAAD配備の放棄だ。韓米関係は若干の後退を容認するだけの余地がある。韓中関係にはそのようなマージンがない。
+要は、THAADを拒否しても米国はそれほど怒らない。半面、中国は恐ろしい国だ。何をして来るか分からない。だから、中国の言うことを聞いて、米国の要請を拒否しよう~との主張でした。
▽「10億円」貰えるなら即、竹島へ
――韓国は「より恐ろしい国」の言うことを聞くのですね。
鈴置:その通りです。好意を見せると「弱い国」と見なされます。すると好意が踏みにじられるのです。 ソウルの日本大使館前の慰安婦像に関しても、日本は韓国に誤解を与えています。「慰安婦合意」で「韓国政府は慰安婦像の撤去に努力する」と約束していました。 だから、政府も一部メディアも韓国側は「韓国の約束不履行を理由に、日本が元慰安婦を支援するための10億円の支払いを渋るのではないか」と懸念していました。 ところが、移転するメドが一切、立たない段階で日本が10億円を支払いました。胸をなでおろした韓国側は「日本は押せば引く」と自信を持ったのです。
+「『慰安婦の10億円拠出合意』直後の動き」を見て下さい。日本が10億円支払うと分かった途端、韓国の国会議員団は竹島を訪問すると発表しました。裁判所も、途端に新日鉄住金など日本企業にカネを払えと判決を下しました。
●「慰安婦の10億円拠出合意」直後の動き(2016年8月)
12日 日韓両外相、慰安婦合意に基づく10億円拠出で合意
15日 韓国与野党の国会議員団10人、竹島に上陸
19日 ソウル中央地裁、元徴用工裁判で新日鉄住金に1億ウォンの支払いを命令
25日 ソウル中央地裁、元徴用工裁判で三菱重工業に14人の遺族に1人当たり9000万ウォンの支払いを命令
27日 日韓財務対話で、通貨スワップ再開に向けた協議開始で合意
+慰安婦像に関しても韓国政府は「食い逃げ」コースに入りました。外交部の林聖男・第1次官は9月6日、国会答弁で「政府も国民世論を把握しながら動くため、今の段階では政府が前に出てこの問題を推進する考えはない」と述べています。 もう、何をやっても「韓国のせいで慰安婦合意が壊れた」とは言われない、と考えたのでしょう。いかにも韓国らしい。
▽李明博の食い逃げ
――そう言えば、日本が2008年にスワップを付けた時も、韓国は「遅い」「少ない」と文句を付けてきましたね。
鈴置:それだけではありません。韓国は「食い逃げ」しました。2011年秋、欧州金融危機の再燃でウォンが急落。韓国は通貨危機に怯えました。 この時も日本に泣きつきました。30億ドルだったスワップ枠を2011年10月、一気に700億ドルに引き上げてもらいました。これは抗生物質のように劇的に効きました。ウォンも株も戻しました。
+すると、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領は直ちに掌返ししました。同年12月の日韓首脳会談で突然、「慰安婦に補償しろ」と言い出したのです。 翌2012年8月10日には竹島に上陸。さらに同月14日には「日王(天皇)が韓国に来たければ、独立運動家に謝罪せよ」とも発言しました(「韓国の主な『卑日』」参照)。 韓国の主な「卑日」(表省略) 日本から獲れるモノを獲ったら、態度をがらりと変えるのが韓国という国です。スワップを再開したら関係が良くなるとは限りません。むしろ悪化すると考えた方がいい。朴槿恵大統領の竹島訪問を後押しするかもしれません。
▽5年ごとの王朝交代
――でも、そんなことをしていたら韓国は信用を失います。
鈴置:韓国社会は「信用を積む」という観念に乏しいのです。企業同士の取引でも契約は平気で無視される。びっくりした日本企業が文句を言っても「状況が変わった」と言い返されるだけ。
――目先はともかくも、長期的な韓国の国益を毀損しませんか。
鈴置:損してもいいのです、政権にとっては。自分の時だけうまくやればいい。次の政権がうまくやれない方がむしろいいのです。 2018年に江原道・平昌(ピョンチャン)で冬季五輪が開かれます。問題が噴出し、韓国では日本との共催案~要は、面倒は日本に押し付けようとのアイデアまで浮かびました。でも、現政権は問題解決に本腰を入れません。
+開会式は朴槿恵大統領の任期中に開かれます。しかし、2018年2月25日の閉会式は次期大統領が仕切ります。成功しても現政権の手柄にはならないのです。 神戸大学大学院の木村幹教授は「韓国の政権交代とは小さな王朝交代である」と喝破しておられます。韓国では5年ごとに王朝が替わるのです。至言と思います。
▽まかり通る半可通
――通貨スワップによって日本も得する、との意見を聞いたことがあります。
鈴置:半可通の意見です。「韓国に通貨スワップを付ければ、ウォン安に歯止めをかけることができる。輸出市場で製品が競合する日本はウォン安を防いだ方が得だ」という説です。 ウォンはマーケットから攻撃されやすい通貨です。経済規模に比べ、韓国には大量のホットマネーが入り込んでいる。そのうえ、外貨準備の流動性が低い。いったん外貨が流れ出だすと歯止めがかからないという弱点があります。 韓国の金融当局が通貨安に誘導している最中に、世界的な金融危機が発生すると、ウォンのパニック売りが起こりやすい。実際、この現象は2008年に発生しました。
+つまり、世界経済の雲行きが怪しくなった時、韓国は通貨安に誘導したくても、おいそれとはしにくいのです。 反対に、日本とスワップを結んでもらえれば、安心して通貨安に持っていけます。これが2009年以降の状況です。スワップがあればこそ、ウォン安にできるのです。
▽「反日」したらスワップ破棄
――でも、1997年の通貨危機の際にはウォンが暴落しました。
鈴置:本格的な通貨危機になれば、確かにそうなります。でもその時は金融システムそのものが破壊されます。 通貨がいくら安かろうと、輸出ドライブをかけるはずの企業がバタバタと倒産してしまうのです。1998年にこの現象が起きました。
――「日本の輸出を維持するために韓国とスワップを結ぶ」という理屈はかなり怪しいのですね。
鈴置:この理屈はマーケットを知らない役人や政治家がよく唱えます。誰かに吹き込まれたか、聞きかじりでしょう。
――では、日本はどうすればいいのでしょうか。
鈴置:どうしても韓国にスワップを付けたければ「反日的な動きをしたら、スワップは破棄する」との条項を入れたうえ、公開しておく手があります。 告げ口外交など「卑日」に韓国が動いたら、マーケットは「日韓スワップは消滅する」と読みます。世界経済の状況が悪ければ、韓国から資本逃避が起きます。これへの恐怖から、韓国は「食い逃げ」しにくくなります。 あるいは、スワップの期間を半年とか3カ月に短縮する方法があります。韓国が「反日」「卑日」をしたら更新しないわけです。 1年以上に設定するから「自分の任期中はカバーされる」などと考え「食い逃げ」する大統領が出るのです。
――スワップ協定に「卑日条項」を入れるなんて、先例はあるのですか?
鈴置:ないと思います。でも「慰安婦合意」には「韓国は蒸し返せない」との条項を入れました。これも異例のことです。 韓国相手には、普通のやり方ではうまくいかないのです。約束や契約が尊重される国ではない~法治国家ではないのです。中国と同じです。
▽日韓スワップは中国への裏切り
――韓国は本心から海洋勢力側に戻ってはいない。偽装転向、ということですね。
鈴置:ざっくり言えば、そういうことです。今は中国とのスワップが信じられなくなって、日本にすり寄っている。でも韓国は少なくとも金融面では完全に中国ブロックに属しています。 通貨スワップも中国頼み。米国が入るなと言ったAIIB(アジアインフラ投資銀行)にも積極的に参加した。今回の日韓スワップを報じる韓国メディアに、彼らの本音が見え隠れしています。
+中央日報の「韓日財務相会談…韓中関係の亀裂で韓日通貨スワップ再開か」(日本語版)をご覧下さい。関連する部分を文章を整えて引用します。 *「通貨同盟」たるスワップを巡る韓日中の力学関係を勘案すると、韓国としては日本とのスワップ再開が中国との関係に及ぼす影響も考慮するほかない。
+「日本とスワップを結ぶと『裏切った』と中国からにらまれるのではないか」と韓国人は恐れているのです。  聯合ニュースの「米利上げ可能性が高まり…韓日通貨スワップ電撃再開」(8月27日、韓国語版)も、その懸念を吐露しています。 *ソン・テヨン延世大教授は、韓日通貨スワップ再開により韓中関係が影響を受けるとの一部の憂慮に対し「スワップは中国の経済的な側面に危害を与えるものではない」と述べた。
▽気分はもう「中国圏の一員」
+韓国には「中国圏の一員」との意識がしっかりと根付いています。そこで日本とスワップを結べば「裏切り」と中国に叱責されると恐れた。それに対し、ソン・テヨン延世大教授は「実害がないから中国は怒らない。大丈夫だ」と説明しているわけです。 日本に揉み手をしながら近づいてきても韓国はもう、すっかり中国側の国なのです。中国との関係が改善すれば、またスワップを発動してもらえると安心して、日本には後ろ足で砂をかけるでしょう。
+韓国に好意を示せばいい関係が生まれると期待してはいけません。次にスワップを食い逃げされたら「またも騙された」と日本人が不快になるのは確実です。それが嫌なら韓国とは間合いをとって付き合う方がいいのです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226331/090700066/?P=1

初めに断っておくが、私はいわゆる嫌韓派ではない。隣国である以上、仲良くしていくべきとは思う。しかし、韓国のやり方には腹を立てざるを得ない。日本の新聞も政府に遠慮して、日韓関係の本音の部分を書かないので、このシリーズは大変参考になった。「米利上げ観測」を通貨スワップ協議再開の口実にするとは、隣国とはいえ何とも嫌な国だ。『「THAAD配備について再び曖昧な姿勢を取ることで、米国から怒られないようにしつつ、中国の報復を逃れる」のが狙いです』、『離米従中の言い訳にまで「慰安婦」を使うので、米国も怒って韓国に圧力をかけました』、というのでは、もて余している米国も大変だろう。慰安婦合意後も、『相変わらず告げ口外交』とは驚いた。慰安婦撤去前に、日本側が支払ったので、『韓国側は「日本は押せば引く」と自信を持った』、さらに、『「慰安婦の10億円拠出合意」直後の動き』を見ると、日本はいいようにやられる一方だ。どうみても、日本外交の完全な失敗だ。しかも、2011年秋の通貨危機時にはスワップ枠を一気に700億ドルに引き上げてもらうことで、危機をかろうじて乗り切ったのに、李明博大統領は直ちに掌返したこともあった。『日本から獲れるモノを獲ったら、態度をがらりと変えるのが韓国という国です。スワップを再開したら関係が良くなるとは限りません。むしろ悪化すると考えた方がいい』、との指摘には説得力がある。やはり、「反日的な動きをしたら、スワップは破棄する」との条項を入れたうえ、公開しておく』、といった方法は、韓国は嫌がるだろうが、やはり「食い逃げ」をさせないベストの方法と思われる。日本の財務省や外務省の奮起を促したい。
明日は、鈴置氏と東京銀行出身で愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授の真田 幸光氏との対談を取上げる予定である。
タグ:日韓関係 日経ビジネスオンライン (通貨スワップ問題(その1)) 通貨スワップ 鈴置 高史 「再開に向け協議することで合意 「中国のスワップ」を信じられなくなった韓国 それでも「海洋側」には戻らない 米利上げ観測 韓国が日本に頭を下げてきた本当の理由は、中国との関係悪化 THAAD 在韓米軍への配備を正式に認めました 環球時報が中国政府に建議した「5つの対韓制裁」 、「こんなに露骨に報復を唱えるのなら、スワップの約束も反故にするのではないか」と、市場関係者なら誰もが考えます。それを一番懸念しているのは、韓国の通貨当局 「中韓スワップが怪しくなったな」と世間に見られるだけで、韓国にとっては大きなマイナス ローカルカレンシー同士のスワップに過ぎません。いざという時に非ドル建てスワップの効果があるのか、疑問視する向きも多い 資本逃避という嵐の前で「素っ裸」になりました 「瓢箪から駒」のTHAAD容認 「THAAD配備について再び曖昧な姿勢を取ることで、米国から怒られないようにしつつ、中国の報復を逃れる」のが狙いです 慰安婦合意で韓国は「日本」ではなく「米国に屈した」のです 離米従中の言い訳にまで「慰安婦」を使うので、米国も怒って韓国に圧力をかけました 朴槿恵大統領はその後も世界に向かって「日本は反省していない」と告げ口外交を展開 5年前、韓国は通貨スワップを「食い逃げ」した 日本は「偽装転向者」とどう付き合うのか 日本に実利なし 「傾中」の歯止めにならない 移転するメドが一切、立たない段階で日本が10億円を支払いました。胸をなでおろした韓国側は「日本は押せば引く」と自信を持ったのです 「慰安婦の10億円拠出合意」直後の動き 韓国の国会議員団は竹島を訪問 。裁判所も、途端に新日鉄住金など日本企業にカネを払えと判決 韓国政府は「食い逃げ」コースに入りました 李明博の食い逃げ 韓国は通貨危機 スワップ枠を2011年10月、一気に700億ドルに引き上げてもらいました 李明博(イ・ミョンバク)大統領は直ちに掌返ししました 慰安婦に補償しろ 日本から獲れるモノを獲ったら、態度をがらりと変えるのが韓国という国です 韓国社会は「信用を積む」という観念に乏しいのです ウォンはマーケットから攻撃されやすい通貨です。経済規模に比べ、韓国には大量のホットマネーが入り込んでいる。そのうえ、外貨準備の流動性が低い。いったん外貨が流れ出だすと歯止めがかからないという弱点 世界経済の雲行きが怪しくなった時、韓国は通貨安に誘導したくても、おいそれとはしにくいのです。 反対に、日本とスワップを結んでもらえれば、安心して通貨安に持っていけます どうしても韓国にスワップを付けたければ「反日的な動きをしたら、スワップは破棄する」との条項を入れたうえ、公開しておく手があります 気分はもう「中国圏の一員」
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