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北朝鮮問題(その4)(在韓邦人は守れるか?北朝鮮の反撃でソウルは火の海、北朝鮮の命運を握る「瀋陽軍区」とは?、北朝鮮のミサイル発射を失敗させた米国7つの手口) [世界情勢]

北朝鮮問題については、4月17日に取上げた。軍創建85年周年はおとなしく過ぎ、その後、撃った弾道ミサイルも50キロ飛行しただけで内陸に墜落したが、まだまだ緊張は高いままである。今日は、(その4)(在韓邦人は守れるか?北朝鮮の反撃でソウルは火の海、北朝鮮の命運を握る「瀋陽軍区」とは?、北朝鮮のミサイル発射を失敗させた米国7つの手口) を取上げよう。

先ずは、戦争平和社会学者の北村 淳氏が4月14日付けJBPressに寄稿した「在韓邦人は守れるか?北朝鮮の反撃でソウルは火の海 シリア攻撃と似ているようで決定的に違う北朝鮮攻撃」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・トランプ政権がシリア軍事施設へのトマホーク巡航ミサイルによる攻撃を実施した。日本のメディアの間では、「次は北朝鮮核兵器関連施設への空爆か?」あるいは「いよいよ斬首作戦(米国軍と韓国軍による金正恩排除作戦の名称)実施か?」といった憶測が飛び交っている。
▽シリア情勢と北朝鮮情勢の類似点
・たしかに「シリアのアサド政権と米国」「北朝鮮の金正恩政権と米国」という2つの対決軸には構造的に類似した点も少なくない。 シリアも北朝鮮も、米国が忌み嫌う「大量破壊兵器(核兵器、生物化学兵器)拡散」の直接当事者である。そして米国に言わせると、シリアも北朝鮮も、アサド政権と金正恩政権という独裁者政権であり国民を抑圧している。
・米国ではかつてオバマ政権が「化学兵器の使用はレッドラインを越えることを意味する」と強い警告を発していた。同様に「北朝鮮によるICBM(米国本土に届く核弾頭搭載大陸間弾道ミサイル)の完成はレッドラインを越える」という警告も発している。 また、アサド政権の背後にはロシアの存在があり、北朝鮮の背後には(表面的には金正恩政権非難を強めているが)中国が存在する。ロシアはウクライナを侵攻し、東ヨーロッパ諸国に対する軍事的脅威を強めつつある。同様に中国も南沙諸島に軍事拠点を建設し、南シナ海そして東シナ海沿岸諸国に対する軍事的脅威を高めつつある。
・だからといって、「シリア+ロシア」ならびに「北朝鮮+中国」をひとくくりにして米国に対する敵勢力とみなすこともできない。米国には、ロシアとも中国とも協調しなければならないというジレンマが存在している。 現在戦闘中の対IS戦争では、アサド政権もロシアも、ISと戦っている。とりわけロシアの攻撃力はISを崩壊させるために極めて重要である。したがって、トランプ政権としても、プーチン政権によるアサド支援やウクライナ情勢などにはある程度目をつぶっても、ロシアとの協調を望んでいた。
・また、中国に対しても、中国が国連決議に従い対北朝鮮経済制裁を実施すると言いつつも、北朝鮮と中国の間を石炭運搬船や貨物船が行き来している状況を米国が把握していないわけではない。北朝鮮軍情報機関が満州内のとある施設で人民解放軍情報機関と同居し活動していることも米軍情報機関は承知している。つまり、中国と北朝鮮がある意味で“仲間”になっていることは暗黙の事実だ。にもかかわらず、金正恩政権の暴走を少しでも制御するには中国共産党の力が必要なことも、トランプ政権としては認めざるを得ない。したがって、北朝鮮を押さえるには、中国による南シナ海や東シナ海での覇権主義的な動きにはあえて触れずに、中国に協力を求めるしかないことになる。
・米国はこのようなジレンマを抱えつつ、「レッドラインを越えた」アサド政権に対して直接的軍事攻撃を仕掛けた。この攻撃を北朝鮮および背後の中国に対する脅しと考えることは可能である。
▽北朝鮮軍事攻撃に立ちはだかるハードル
・しかしながら、シリアと北朝鮮では数々の相違点がある。 まず、シリアも北朝鮮もそれぞれ大量破壊兵器を保有しているが、北朝鮮の場合は米国本土に届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を手にする秒読み段階にまで達している。
・また、シリアには米国本土や米国の前進拠点に対する反撃能力はないが、北朝鮮には韓国や日本の米軍諸施設はもとよりグアムの米軍基地にすら反撃を実施する弾道ミサイル戦力が存在する。したがって、北朝鮮が米国にとっての「レッドライン」を超えた場合、米国すらも直接被害を被りかねない。シリアをミサイル攻撃する場合は米軍の損害を考える必要はないが、北朝鮮の場合は韓国や日本に展開する米軍も損害を被ることを織り込まねばならないのだ。
・それだけではない。シリアの軍事攻撃目標は、今回のミサイル攻撃の状況を映し出したロシアのドローンの映像でも明らかなように、地上にむき出しの航空施設や建造物がほとんどである。それに対して、北朝鮮の軍事攻撃目標の多くは地下施設や山腹の洞窟施設である。 それらの地下式施設を、今回のシリア攻撃で用いたトマホーク巡航ミサイルで破壊することは不可能に近い。そうした強固な軍事施設を破壊するには、どうしても大型貫通爆弾(GBU-57 MOP)が必要である。これは巡航ミサイルには装着できず、B-2ステルス爆撃機(一機に2発搭載可能)で攻撃する必要が生ずる。
▽B2ステルス爆撃機に装着されたGBU-57大型貫通爆弾
・さらには、シリア軍の軍事施設や化学兵器関連(と米国がみなす)施設の所在はおおかた判明しているのに反して、北朝鮮の大量破壊兵器や弾道ミサイルに関連した地下施設の大半は位置すら判明していない状態だ。いくらステルス爆撃機で接近可能であっても、また、大量の巡航ミサイルを精確に撃ち込むことが可能であっても、攻撃目標の正確な位置が判明していなければ攻撃できない。
▽韓国への反撃は確実、おそらく日本にも
・そして何よりも決定的な問題点(米国にとっての)は、北朝鮮に対する軍事攻撃は“確実に”韓国(とりわけソウルとその周辺)に対する激烈な報復攻撃と、“おそらくは”日本に対する報復攻撃も引き起こしてしまうことである。 すでに本コラム(2017年3月30日「米国で北朝鮮攻撃が議論の的に、日本は備えを急げ」)で指摘したように、米国による北朝鮮軍事攻撃の直後に、ソウルとその周辺に対しては無数の砲弾とロケット弾が雨あられと降り注ぐことになる。その事態をどのように考えるのかが、米国軍関係者の間では議論の焦点になっている。
・いずれにせよ、トランプ政権が北朝鮮への軍事攻撃を決断するには、広島・長崎に原爆を投下した際と類似した理論を持ち出さざるを得ない。 つまり、「韓国や日本における一般市民の犠牲は、米国本土がICBM攻撃された場合に生ずる損害を防ぐためにはやむを得ない犠牲と考えざるを得ない。また、北朝鮮が核兵器を手にした場合、韓国や日本自身でもさらに多くの人々が犠牲になりかねない。そのような悲惨な事態を抑止するための軍事攻撃であり、そのための犠牲は甘受せざるを得ない」──といった正当化理論である。  米国第一主義を掲げるトランプ大統領にとっても極めてハードルが高い決断にならざるを得ないだろう。
▽極度に困難な立場の日本政府
・今回の米国によるシリア攻撃に対して、日本政府は「化学兵器拡散を抑止するための正しい決断であった」とトランプ大統領の決断を高く評価し、支持を表明した。しかし、米国による北朝鮮攻撃に対して日本政府はこれまで通りに「イエスマン」であり続けるわけにはいかない。 「大量兵器拡散を抑止するための北朝鮮軍事攻撃」がトランプ政権のテーブルの上にあがっている現在、日本政府は「報復攻撃の結果生ずる在韓邦人の犠牲や、日本への弾道ミサイル着弾による惨状」を避けつつ北朝鮮の暴発を抑止しなければならないという、極度に困難な立場に立たされているのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49703 (2頁目以降は有料会員限定)

次に、闇株新聞が4月14日付けで掲載した「北朝鮮の命運を握る「瀋陽軍区」とは?」を紹介しよう。
・本日(4月13日)の日経平均は125円安の18426円と、本年安値を更新しました。ここのところ不穏な北朝鮮情勢に加え、昨日の米国時間にトランプ大統領が唐突に「ドルは強くなりすぎている」と発言したため、本日早朝の東京時間で一時1ドル=108.72円まで円高となった影響もあります。 いわゆる金正恩斬首作戦については、トランプ大統領が後ろ盾とされる習近平・国家主席に情勢の鎮静化を迫りつつ、米艦隊を朝鮮半島周辺に展開させ(中国が動かなければ)単独でも強行すると威嚇しています。
・とりあえず中国が(習近平が)金正恩の核実験やミサイル発射など過激な行動を抑え込めれば、極端な軍事衝突が避けられることになります。この辺まではどの報道でもほぼ同じですが、ここからはほとんど報道されていない習近平と「瀋陽軍区」の関係について解説します。
・「瀋陽軍区」とは中国人民解放軍の7つの軍区では最強で、全軍を統率する中央軍事委員会主席を兼務する習近平が今もほとんどコントロールできておらず、逆に北朝鮮と最も関係が深い軍組織となります。 習近平は2016年1月に7つの軍区を5つの戦区に再編しましたが、その最大の目的はこの「瀋陽軍区」を自らがコントロールする「北京軍区」と統合させることでした。しかし逆に「北京軍区」から内モンゴル自治区を「瀋陽軍区(名前だけは「北部戦区」に変更)」に奪われ、かえって強大化させてしまいました。
・したがって現在は「北部戦区」となっていますが、古くからの「瀋陽軍区」と呼ぶことにします。 もともと旧満州東部やロシア沿海州南西部つまり北朝鮮と国境を接している地方は朝鮮民族が多く居住しており、中華人民共和国政府のコントロールが完全に及ばない「未開の地」でした。 その地を拠点とする「瀋陽軍区」は中国人民解放軍ではあるものの、朝鮮系の馬賊・匪賊の末裔が多く(だから強い)、北朝鮮に武器・エネルギー・食料・生活必需品を密輸し、さらに北朝鮮のレアメタル採掘権なども入手し不正蓄財に励んでいます。これは経済制裁を受けている北朝鮮にとってもメリットがあり、経済制裁の「抜け穴」となっています。
・もともと中国人民解放軍とは軍務だけではなく、武器や食料などを自己調達する「軍産複合体」のようなものですが、とくに「瀋陽軍区」は不正蓄財で潤い、ますます中央政府と対立するようになっていきました。  習近平も手をこまねいていたわけではなく、綱紀粛正の流れで「瀋陽軍区」の事実上トップで中央軍事委員会副主席だった徐才厚の党籍を2014年6月に収賄容疑で剥奪し、その後に身柄を拘束しています。徐は拘束中の2015年3月に病死しました。
・徐才厚も2013年に香港で、20代の女性を使った100億香港ドル(1400億円)ものマネーロンダリングが発覚していますが、この時はもみ消しています。いずれにしても「瀋陽軍区」の桁外れの資金力が伺われます。 また中国共産党政治局常務委員No.3(つまり習近平、李克強の次)の張徳江は、北朝鮮国境に近い延辺大学朝鮮語学部を卒業し金日成総合大学にも「留学」しており、もともとこの地域や朝鮮半島利権の「最高権力者」です。
・失脚した薄熙来に代わって江沢民が政治局常務委員に押し込んだ張徳江は、金正恩のカウンターパーティーであるNo.5の劉雲山とともに江沢民派で、明らかな反習近平です。 つまり習近平は、朝鮮半島だけでなく北朝鮮と国境を接するこの地域を政治的・軍事的に全くコントロールできていないだけでなく、潤沢な資金力と強大な軍事力をもつ「瀋陽軍区」による軍事クーデターにも怯えていることになります。
・さらに中国人民解放軍の核管理は「成都軍区(現・西部戦区)」が担い、さすがに「瀋陽軍区」は保持できていません。そこで核開発を巡り「瀋陽軍区」と北朝鮮が協力する動機がますます強くなります。 この状況を知ってか知らずか、トランプ大統領は習近平に金正恩を抑えるよう要望しているわけですが、ここを知ると「とても無理」となるはずです。かくして北朝鮮情勢は時々刻々と切迫化していくことになります。
・この北朝鮮情勢や、同じくらい時々刻々と悪化している東芝を巡る情勢、それを受けた円相場や日経平均の動きなどは、最新ニュースも入れてメルマガ「闇株新聞 プレミアム」で徹底的に掘り下げます。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1983.html

第三に、元空将補の横山 恭三氏が4月27日付けJBPressに寄稿した「北朝鮮のミサイル発射を失敗させた米国7つの手口 クローズ系のネットワークでもサイバー攻撃は難しくない」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・北朝鮮が4月16日朝、東部から弾道ミサイル1発を発射したところ、直後に爆発した。また、先の4月5日に発射された弾道ミサイルは約60キロ飛翔し、北朝鮮の東岸沖に落下した。 これらについては、失敗説から自ら意図して爆破させた説など様々な憶測がなされている。中でも、最近の北朝鮮の弾道ミサイルの発射の連続した失敗は米国のサイバー攻撃が原因であるとの注目すべき報道が行われた。
・1カ月前の3月4日付ニューヨークタイムズ紙は、「3年前(2014年)、バラク・オバマ大統領は、国防総省当局者に対して、北朝鮮のミサイル・プログラムに対するサイバーおよび電子攻撃(cyber and electronic strikes)を強化するよう命令した」と報道している。 米国による北朝鮮へのサイバー攻撃の可能性が初めて報道されたのは、2014年12月に北朝鮮のインターネットに接続障害が発生した時である。この時期は、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントへのサイバー攻撃をめぐり米朝が対立している最中であった。
・これまでに米国が北朝鮮のミサイルに対してサイバー攻撃を行ったかどうかの真偽は不明であるが、筆者はその可能性は大きいと見ている。 かつて、米国はイスラエルと共同してイランの核燃料施設をサイバー攻撃した。その時使用されたのが有名な「スタックスネット」である。 支配力に貪欲な米国が敵対国家にサイバー攻撃を仕掛けないわけがない。今回のミサイル発射の失敗が米国のサイバー攻撃によるものかどうかは分からないが、米国が北朝鮮に対して何らかのサイバー攻撃を仕掛けていることは間違いない。 本稿の目的は、サイバー空間における攻防が現実化している現状を紹介することである。
▽「クローズ系なら安全」は神話
・具体的には、すでに明らかになっている多くのサイバー攻撃の事例や筆者の限られた知見から、北朝鮮の弾道ミサイル発射を妨害・阻止するために米国が行ったと推定されるサイバー攻撃方法を紹介することである。 サイバー攻撃とは簡単に言えば標的とするコンピューターシステムにマルウエア(悪意のあるソフトウエアや悪質なコードの総称)を挿入することである。従って、今回は弾道ミサイルシステムを標的としているが、あらゆるコンピューターシステム(重要インフラ、兵器システム、指揮統制システムなど)が標的になり得るのである。
・一般に、軍隊のシステムあるいは民間の重要インフラの制御系システムは、インターネットなど外部のネットワークに接続していないクローズ系コンピューターネットワークである。 クローズ系はインターネットに接続されていないので安全であると思われがちであるが、2010年9月にイランの核施設で発生した「スタックスネット事件」など多くのサイバー攻撃がクローズ系コンピューターネットワークに対して行われ、かつ壊滅的なダメージを与えている。
・クローズ系コンピューターネットワークが安全であるというのは神話である。 以下、クローズ系コンピューターネットワークに対するサイバー攻撃方法について事例のあるものについては事例を交えながら要約して述べる。
 (1)ICTサプライチェーン攻撃
+ICTサプライチェーン攻撃とは、ライフサイクルのいかなる時点かでコンピューティング・システムのハードウエア、ソフトウエアまたはサービスに不正工作することである。 1980年初頭、CIA(米中央情報局)は、ソ連のパイプラインのポンプとバルブの自動制御装置に論理爆弾を仕掛け、このパイプラインを爆破した、という事例がある。
+この事例は、米国の元サイバーセキュリティ担当大統領特別補佐官リチャード・クラーク氏の著書『世界サイバー戦争』の中で、世界で初めて論理爆弾が実際に使用された事例として紹介されていることから極めて信憑性が高いと見ている。
+同著書に紹介されている経緯は次のとおりである。 「1980年代初頭、長大なパイプラインの運営に欠かせないポンプとバルブの自動制御技術を、ソ連は持っていなかった。彼らは米国の企業から技術を買おうとして拒絶されると、カナダの企業からの窃盗に照準を合わせた」 「CIAは、カナダ当局と共謀し、カナダ企業のソフトウエアに不正コードを挿入した。KGBはこのソフトウエアを盗み、自国のパイプラインの運営に利用した」 「当初、制御ソフトは正常に機能したものの、しばらくすると不具合が出始めた。そしてある日、パイプの一方の端でバルブが閉じられ、もう一方の端でポンプがフル稼働させられた結果、核爆発を除く史上最大の爆発が引き起こされた」
+今回、米国が北朝鮮の弾道ミサイルシステムにICTサプライチェーン攻撃を仕掛けた可能性は大きい。例えば、米国は北朝鮮のミサイル関連部品の購入先を特定し、北朝鮮向けの電子機器にマルウエアを挿入する、あるいは電子機器を偽物とすり替えることが可能である。
 (2)スパイによる攻撃
+スパイによるサイバー攻撃には、標的であるコンピューターシステムに直接マルウエアを挿入する、標的の施設内の伝送路からマルウエアを挿入する、あるいは伝送路を切断するなどが考えられる。以下、事例を紹介する。 2008年、中東で起きたこの事件は機密扱いとなっていたが、2010年8月に当時のリン国防副長官が雑誌への寄稿で明らかにした。 外国のスパイが米軍の1台のラップトップコンピューターにフラッシュドライブを差し込んだ。このフラッシュドライブの「悪意あるコード」が機密情報伝送ネットワーク(SIPRNET)および非機密情報伝送ネットワーク(NIPRNET)の国防総省システムに検知されないまま拡散し、大量のデータが外国政府の管理下にあるサーバーへ転送された。
+この事例のようなスパイが標的の組織のパソコンにマルウエアを挿入する事例は枚挙にいとまない。 スタックスネット事件も核施設で働く従業員の家にスパイが忍び込みパソコンにマルウエアを挿入したと言われている。今回、標的の組織(ミサイル製造工場や保管施設など)に潜入したスパイによるサイバー攻撃の可能性は小さくない。
 (3)インサイダー攻撃の支援
+インサイダーとは合法的なアクセス権を悪用する部内者である。本稿で想定しているインサイダーは金正恩体制に不満を持っている軍人、研究者である。 インサイダーは、組織を攻撃したいと思っている部外者よりもかなり好都合な立場にある。例えば、建物へのアクセスシステムなどの物理的及び技術的対策を回避することができる。
+さらに、悪用できるネットワークやシステム上の欠点など組織の脆弱点を知っている。今回、米国が脱北者を通じて、金正恩体制に不満を持っている軍人または研究者にマルウエアを提供するなど支援した可能性は否定できない。
 (4)電磁波攻撃
+コンピューターやネットワークの伝送路として使用される通信機器は、高出力電磁波(High Power Electromagnetic:HPEM)を受けると瞬時に焼損・破壊される。 車載電源を使用した装置でも十分な電力があれば、特定の地理的範囲内のすべての防護されていない通信機器などに対して損傷または中断をもたらすことができる。 大規模なものとしては、核爆発による電磁パルス(EMP)攻撃がある。しかしながら今回、米国が、発信源の位置を暴露することになる電磁波攻撃を行った可能性は小さい。
 (5)レーザー攻撃
+レーザー攻撃は、ミサイルなどの目標に対してレーザー(指向性のエネルギー)を直接照射し、目標を破壊あるいは機能を停止させるものである。 米国は弾道ミサイル対処として航空機搭載レーザー(Airborne Laser:ABL)の開発を目指していた。ABLは、ブースト段階のミサイルを捕捉・追尾し、ミサイルをロックオンした後、航空機に設置された砲塔からレーザーを3~5秒間照射して、ミサイルを発射地域で破壊する。
+迎撃実験も行われ、2010年には上昇段階の弾道ミサイルを捉え、破壊することに成功した。しかし、国防総省は2011年、予算上の問題から開発を中止した。ただし、技術開発そのものは継続されるとされた。  近年、レーザー兵器の軽量化、小型化、耐久化が進んでいる。ミサイルに近距離からレーザーを照射できればミサイルを破壊することができる。このことを考慮すれば、今回、米国が無人機に搭載したレーザー兵器を使用した可能性は否定できない。
 (6)GPSを通じた攻撃
+北朝鮮の弾道ミサイルは慣性誘導方式を取っており、GPS衛星の電波信号は利用していないと言われるので、本項は該当しない可能性がある。参考として事例を紹介する。 2011年12月4日、イラン空軍は、イラン東部の領空を侵犯した米国の「RQ‐170ステルス無人偵察機」をサイバーハイジャックし、着陸させることに成功した。この事例について米国は米国側の技術的問題が原因としている。 しかし、イランの主張するようにGPSを通じた攻撃によりステルス無人機が乗っ取られた可能性はある。
+GPSには軍事用と民生用の2つのサービスが提供されている。当然軍事用サービスでは暗号化されたコードが使用されているので乗っ取ることは難しい。そこでイランは、電波妨害装置で、RQ-170が軍事信号から一般のGPS信号を受信するように仕向けた。 そして民生用GPS信号を乗っ取ったイランは、本来RQ-170が着陸するべき基地の座標を、イラン側に数十キロずらすことで自国内領土に着陸させたと言われている。
 (7)水飲み場攻撃
+水飲み場攻撃は、水飲み場に集まる動物を狙う猛獣の攻撃になぞらえ、標的の組織のユーザーが普段アクセスするウエブサイト(水飲み場)にマルウエアを埋め込み、サイトを閲覧しただけでマルウエアに感染するような罠を仕掛ける攻撃方法である。
+北朝鮮にも唯一のインターネットサービスプロバイダが存在する。  北朝鮮では、政治家かその家族、大学のエリート及び軍関係者など限られた者しかインターネットにアクセスすることができないという。核ミサイル施設で働いている軍人や研究者はインターネットにアクセスできるかもしれない。 そのような軍人や研究者がインターネットにアクセスした時にマルウエアに感染したUSBをうっかりクローズ系に差し込んでしまうかもしれない。米国が、このわずかな好機を狙って、「水飲み場攻撃」を仕掛けた可能性は否定できない。
・上記のとおり、様々なサイバー攻撃方法が存在する。今回、米国が北朝鮮に対してサイバー攻撃を実施したとすれば、いずれかの攻撃方法を採用したと推定できる。 最後に、ここで紹介したサイバー攻撃方法は、我が国に対しても何時でも、どこでも仕掛けられる可能性がある。既に攻撃されているのに、攻撃されていることに気づいていないだけかもしれない。
・我が国は、受け身のサイバーセキュリティだけでなく、これからはサイバー空間の攻防を前提としたサイバー能力の整備に取り組むべきである。さもなければ、将来手痛い打撃を被るであろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49836

北村氏の記事にある 『大型貫通爆弾(GBU-57 MOP)』、はその後アフガニスタンでイスラム国(IS)に対し使用され、北朝鮮指導部への脅しとなった。 『北朝鮮に対する軍事攻撃は“確実に”韓国(とりわけソウルとその周辺)に対する激烈な報復攻撃と、“おそらくは”日本に対する報復攻撃も引き起こしてしまうことである』、 『米国による北朝鮮攻撃に対して日本政府はこれまで通りに「イエスマン」であり続けるわけにはいかない』、との指摘はその通りだが、日本政府が「待った」をかけた気配は見られない。もっとも、安部首相が、ロシアや英国などに外遊しているところを見ると、米国は中国の出方待ちで、緊急性が薄らいだのかも知れない。さらに、安部首相は北朝鮮危機を森友問題から国民の目を逸らす材料として歓迎しているとの見方まであるようだ。なお、記事とは離れるが、ソウルから在留邦人を避難させる場合、韓国は日本の自衛隊機の受け入れを拒否するので、民間機でやる他ないというのも、困った話だ。
闇株新聞は、北朝鮮の後ろ盾になっている「瀋陽軍区」の特徴を詳しく解説してくれた。 『7つの軍区では最強で、全軍を統率する中央軍事委員会主席を兼務する習近平が今もほとんどコントロールできておらず』、と独立王国に近い存在のようだ。これでは、いくらトランプ大統領が習近平に対し、北朝鮮にもっと圧力を強めよと促したところで、実効性は余り期待できないようだ。
これまで、弾道ミサイルへのサイバー攻撃というのが理解できなかったが、横山氏は軍事のプロだけあって、 『クローズ系コンピューターネットワークが安全であるというのは神話である』、ことを分かり易く解説してくれた。無論、弾道ミサイル打ち上げがこのところ連続して失敗しているのは、必ずしもサイバー攻撃によるものか、米国への刺激を減らすべく北朝鮮軍自身が打ち上げの成功を確認後、爆発させたものかは不明である。
いずれにしても、前述のように安部首相が外遊しているなかで、「下々」があれこれ心配する必要はないということなのかも知れない。
タグ:北朝鮮問題 (その4)(在韓邦人は守れるか?北朝鮮の反撃でソウルは火の海、北朝鮮の命運を握る「瀋陽軍区」とは?、北朝鮮のミサイル発射を失敗させた米国7つの手口) 北村 淳 JBPRESS 在韓邦人は守れるか?北朝鮮の反撃でソウルは火の海 シリア攻撃と似ているようで決定的に違う北朝鮮攻撃 シリア情勢と北朝鮮情勢の類似点 シリアと北朝鮮では数々の相違点がある。 まず、シリアも北朝鮮もそれぞれ大量破壊兵器を保有しているが、北朝鮮の場合は米国本土に届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を手にする秒読み段階にまで達している 北朝鮮には韓国や日本の米軍諸施設はもとよりグアムの米軍基地にすら反撃を実施する弾道ミサイル戦力が存在 B2ステルス爆撃機に装着されたGBU-57大型貫通爆弾 韓国への反撃は確実、おそらく日本にも 極度に困難な立場の日本政府 米国による北朝鮮攻撃に対して日本政府はこれまで通りに「イエスマン」であり続けるわけにはいかない 闇株新聞 北朝鮮の命運を握る「瀋陽軍区」とは? 7つの軍区では最強 習近平が今もほとんどコントロールできておらず、逆に北朝鮮と最も関係が深い軍組織 北部戦区 北朝鮮に武器・エネルギー・食料・生活必需品を密輸し、さらに北朝鮮のレアメタル採掘権なども入手し不正蓄財に励んでいます 江沢民が政治局常務委員に押し込んだ張徳江は、金正恩のカウンターパーティーであるNo.5の劉雲山とともに江沢民派で、明らかな反習近平 習近平は、朝鮮半島だけでなく北朝鮮と国境を接するこの地域を政治的・軍事的に全くコントロールできていないだけでなく、潤沢な資金力と強大な軍事力をもつ「瀋陽軍区」による軍事クーデターにも怯えていることになります トランプ大統領は習近平に金正恩を抑えるよう要望しているわけですが、ここを知ると「とても無理」となるはずです 横山 恭三 北朝鮮のミサイル発射を失敗させた米国7つの手口 クローズ系のネットワークでもサイバー攻撃は難しくない 最近の北朝鮮の弾道ミサイルの発射の連続した失敗は米国のサイバー攻撃が原因であるとの注目すべき報道 これまでに米国が北朝鮮のミサイルに対してサイバー攻撃を行ったかどうかの真偽は不明であるが、筆者はその可能性は大きいと見ている 「クローズ系なら安全」は神話 ICTサプライチェーン攻撃 スパイによる攻撃 インサイダー攻撃の支援 電磁波攻撃 レーザー攻撃 GPSを通じた攻撃 水飲み場攻撃
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