SSブログ

ソフトバンクの経営(その6)(ソフトバンクはどこへ行く?、ソフトバンク孫社長 スプリント統合がまた破談でも強気な訳) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、8月16日に取上げた。今日は、(その6)(ソフトバンクはどこへ行く?、ソフトバンク孫社長 スプリント統合がまた破談でも強気な訳) である。

先ずは、闇株新聞が11月8日付けで掲載した「ソフトバンクはどこへ行く?」を紹介しよう。
・ソフトバンクグループ(以下、「ソフトバンク」)が11月6日に発表した2017年4~9月期連結決算は、営業利益が前年同期比35%増の8748億円と(4~9月期として)過去最高となりましたが、最終純利益は同87%減の1026億円しかありません。
・主なセグメント別利益は、国内通信事業が前年同期比6.9%減の4339億円、海外のスプリント事業が同93.3%増の2021億円、新たに加わったソフトバンク・ビジョン・ファンド事業(以下、SVF事業)が1862億円となっています。
・何と言ってもソフトバンクの大胆な買収戦略を支えてきた「規制に守られた国内通信事業が稼ぎ出す潤沢なキャッシュフロー」が減少に転じていることが気になりますが、その代わりに海外のスプリント事業がやっと収益化して補っているように見えます。
・ところがその全米第4位のスプリントと同3位のTモバイルの経営統合が、まさに決算発表直前の11月4日に「破談」となりました。その理由は孫社長が経営統合する新会社の経営権(50%以上の出資比率や取締役選任)を主張して譲らなかったからとされています。
・しかし直近(11月6日)の時価総額が、スプリントの236億ドルに対してTモバイルが462億ドルと「ちょうど2倍」であるため、そもそも無理な話です。そして孫社長はすぐさまスプリントと米CATV会社のアルティスUSAとの業務提携を発表し、また現在83%であるスプリントの持ち株比率を85%に引き上げるとも発表しています。
・ここは7月4日付け「スプリントが米通信・メディア再編に組み込まれる?」に書いてありますが、スプリントに米CATV最大手のコムキャストと同2位のチャーター・コミュニケーションズが共同で、スプリントの通信設備を借りて業務展開する提携話が持ち込まれていました。 もともと移動通信会社とCATV会社はビジネスの親和性が大きく、経営統合のメリットも大きいとされています。そこでスプリント(ソフトバンク)はTモバイルとの交渉を中断して、大手CATV(チャーター・コムニケーションズの方だったようです)との経営統合を持ち掛けます。要するに二股をかけたわけですが、あえなく両方とも頓挫してしまいました。
・そこで孫社長は「CATVだったらどこでもいいから早く提携しよう」と考え、出てきたのがフランス系のアルティスUSAだったわけですが、最大手2社との差が大きすぎてほとんど意味がありません。またこれでソフトバンクはスプリントを売却できる可能性がほとんど消滅してしまいました。
・ソフトバンクの2017年4~9月期連結決算に話を戻しますが、今回から10兆円のSVFが連結されており、そこに組み込むはずのエヌビディアの評価益として1862億円が計上されています。しかしこれがソフトバンクの利益なのか、(自身も含む)SVF投資家の利益なのかが、依然としてよくわかりません。
・しかし最大の疑問は、アリババ株式に関連するデリバティブ損失として計上されている5084億円です。これで最終純利益が大きく減少してしまいました。 ソフトバンクは2016年6月に将来の買収資金を確保するためにアリババ株式の一部を売却しています。最終的に34億ドル分をアリババ(自社株買い)やシンガポール系の政府ファンドに売却し、66億ドル分をアリババ株式(正確にはADR)の他社転換社債を発行し、合わせて100億ドルを調達しています。
・当時のアリババの株価は77ドル前後で、ソフトバンクのアリババ株の取得コストは総額で105億円だったため、売却金額はほとんど売却益だったはずです。ソフトバンクは2016年4~9月期に2381億円の売却益を計上しており、34億ドル分の売却益とするとだいたい辻褄が合います。つまり66億ドル分の売却益は一切計上されていません。
・この66億ドルの他社転換社債は、利率が5.75%、償還まで3年、投資家は償還時に現金かアリババ株式かその組み合わせで受け取るもので、(細かい計算は省きますが)転換価格は1株=100ドルに設定されているはずです。 当時の発行資料では、償還時にソフトバンクの関連会社が現金か、アリババ株式か、その組み合わせを「決める」とはっきり書かれています。つまり投資家は選べないことになり(だから利率が5.75%と格付けがBBクラスのソフトバンクとしても高い)、当然にソフトバンクは3年後にアリババの株価が100ドルを上回っていれば現金で償還し、下回っていればアリババ株式で償還するはずです。
・じゃあソフトバンクはこの償還に合わせて何かヘッジしておく必要があるかといえば「全くない」はずで、2017年4~9月期に計上している5084億円もの損失が一時的にも出てくるはずがありません。 直近のアリババの株価は187ドル前後で、本年1月下旬に転換価格の100ドルをこえています。ヘッジファンド的に考えれば、アリババの株価が100ドルをこえれば少しずつ売り上がり、その後に100ドルを下回れば買い戻すことを繰り返せば、ほぼリスクなしに利益を積み上げられます。しかしインサイダー情報もある(アリババの馬会長がソフトバンクの社外取締役)ソフトバンクがそうするわけにもいきません。
・まあソフトバンクはこの他社転換社債分を除いてもまだアリババの27%を保有しているため、直近の含み益は14.5兆円になっているはずです。課題であると言われている15兆円の有利子負債とほとんど同額となり、よくわからない5000億円くらいの損失など気にする必要はないのかもしれません。 そんな感じのするソフトバンクの決算発表でした。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-2119.html

次に、11月14日付けダイヤモンド・オンライン「ソフトバンク孫社長、スプリント統合がまた破談でも強気な訳」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ソフトバンクグループ傘下の米通信大手スプリントと、米通信大手TモバイルUSとの経営統合が再び破談になった。孫正義社長が会見で語った交渉停止の経緯とは──。
・「米国は世界最大の市場で、通信インフラを手放すわけにはいかない」 11月6日、東京都内で開催されたソフトバンクグループの決算説明会。普段は笑顔を絶やさず好業績や投資案件の魅力をアピールするはずの孫正義社長の表情はこわばり、声のトーンも沈んでいた。 この日の会見の冒頭、孫社長は約20分にわたって、グループ傘下の米通信大手スプリントと、米通信大手TモバイルUSとの統合交渉中止について説明した。
・スプリントとTモバイル。この組み合わせは、2013年に約2兆円を掛けてスプリントを買収した当初から描いていた構想だった。 米国通信市場は、ベライゾンとAT&Tがシェアの約7割を占める2強の地位を固め、残りをスプリントとTモバイルで分け合う2強2弱体制。下位2社を束ね「強いナンバー3」をつくることができれば2強に対抗できるからだ。
・スプリントの理想的なパートナーといえるTモバイルの買収は、14年夏に合意しかけた。ところが、立ちはだかったのが米連邦通信委員会(FCC)のトム・ウィーラー委員長だった。「4社の競争が消費者にとって望ましい」と統合に否定的な立場を取り続け、結局、14年8月に統合を断念した。
・そこから、赤字体質だったスプリントの自力再建という、ソフトバンクにとって試練の時期が訪れる。一方、この間にTモバイルは勢力を伸ばすことに成功した。 契約の“2年縛り”の撤廃や音楽・ビデオの視聴無料化、データ通信量無制限プランなど、2強に真っ向から挑戦する「アンキャリア(脱通信キャリア)」と掲げたキャンペーンで顧客数を拡大。スプリントはTモバイルに抜かれ、米国4位へと転落してしまった。
・白紙になってしまった統合話が再度動きだしたきっかけは、16年11月のドナルド・トランプ米大統領の誕生だ。FCCの委員長には規制緩和派のアジット・パイ氏が就任し、「合併を前向きに受け止めてもらえるかもしれないという望みを持って、再度交渉に入った」(孫社長)。
▽経営権手放せない 最後の交渉は孫社長の自宅で
・だが、前回の交渉時と状況は一変していた。Tモバイルの時価総額はスプリントの約1.8倍まで増大。Tモバイルの親会社である独通信大手ドイツテレコムにとって、米国3位に浮上し、勢いのあるTモバイルは手放せない存在になっていたのだ。 統合後の会社の経営権をドイツテレコムが握りたいという意向は、早期の段階でソフトバンクに伝えられていた。それでも交渉を続けたのは、「ほぼイコールパートナーという立場なら、選択肢としてあり得る」(孫社長)と考えたからだ。だが、ドイツテレコムは単独経営権という条件を譲らなかった。
・そして10月27日のソフトバンク取締役会。スプリントは単なる投資案件なのか。それともグループにとって戦略的に重要な企業なのか。スプリントの位置付けについて、激論が交わされた。 「スプリントの経営権を手放してまで合併すべきでない。5年後、10年後を考えると、それが正しいものの考え方だ」 取締役会は全会一致で、統合交渉の中止を決断。終了後、孫社長はドイツテレコムのティム・ヘッドゲスCEO(最高経営責任者)に電話をかけた。
・「(金額などの)小さな条件ではなく、経営権という根本的な問題だ。もう合併の話はなしにしよう」  ただ、統合を望むヘッドゲスCEOは、対面交渉に最後の望みを託した。11月4日、福岡ソフトバンクホークスが劇的なサヨナラ勝ちで日本一を決めた試合の観戦を孫社長はキャンセル。そして、東京都内の孫社長の自宅にヘッドゲスCEOやTモバイルのジョン・レジャーCEO、スプリントのマルセロ・クラウレCEOら経営陣8人が集まった。だが、お互いに主張を譲らず、物別れに終わった。
・「3年前なら焦って違う判断をした。ソフトバンクが強い立場になり、ゆとりある意思決定ができた」 4年越しの統合構想が再度白紙に戻っても、孫社長は強気の姿勢を崩さない。今後、スプリントは4位から単独での巻き返しとなるが、グループ傘下に英半導体大手アームと米衛星通信大手ワンウェブを抱えていることを挙げ、「IoT(モノのインターネット)の時代を考えると、がぜん有利な立場にある」と主張する。
・その一方で、ケーブルテレビ大手など他業種との再編については「何でもありだ」と繰り返し、Tモバイルとの再交渉についても、「われわれが経営権を持てる、もしくはそれに近い形ならば門戸は常に開かれている」とも言及した。米国通信業界での地位を高められる、Tモバイル以上のパートナーは果たして現れるか。
http://diamond.jp/articles/-/149308

第一の記事で、 『スプリント(ソフトバンク)はTモバイルとの交渉を中断して、大手CATVとの経営統合を持ち掛けます。要するに二股をかけたわけですが、あえなく両方とも頓挫してしまいました。
そこで孫社長は「CATVだったらどこでもいいから早く提携しよう」と考え、出てきたのがフランス系のアルティスUSAだったわけですが、最大手2社との差が大きすぎてほとんど意味がありません』、つまりアルティスUSAとの提携は、苦しまぎれの産物らしい。 『アリババ株式に関連するデリバティブ損失として計上されている5084億円』、についてはよく分らないが、気にするほどの問題ではないとのことらしい。なお、本日付けの日経新聞は「楽天、第4の携帯会社に 回線に最大6000億円 電波取得申請へ 3社寡占に風穴、値下げも」を伝えた。楽天がどれほど力を発揮するかは不明だが、ソフトバンクにとっては、既に国内通信事業の利益が細りつつあるなかで、競合が激化するというのは、悩ましい材料が増えたようだ。
第二の記事で、孫社長がトランプ米大統領とせっかく仲良くなり、『FCCの委員長には規制緩和派のアジット・パイ氏が就任』した折角のチャンスが結果的に水泡に帰してしまったとは、タイミングが如何に重要かを示唆している。今回の件では、孫社長も運に見放されたようだ。それでも、『孫社長は強気の姿勢を崩さない』、とはさすがだ。
タグ:「楽天、第4の携帯会社に 回線に最大6000億円 電波取得申請へ 3社寡占に風穴、値下げも」 日経新聞 4年越しの統合構想が再度白紙に戻っても、孫社長は強気の姿勢を崩さない スプリントの経営権を手放してまで合併すべきでない ドイツテレコムにとって、米国3位に浮上し、勢いのあるTモバイルは手放せない存在になっていたのだ 前回の交渉時と状況は一変 「合併を前向きに受け止めてもらえるかもしれないという望みを持って、再度交渉に入った」 FCCの委員長には規制緩和派のアジット・パイ氏が就任 トランプ米大統領の誕生 赤字体質だったスプリントの自力再建 立ちはだかったのが米連邦通信委員会(FCC)のトム・ウィーラー委員長 スプリントの理想的なパートナーといえるTモバイルの買収は、14年夏に合意しかけた 米国は世界最大の市場で、通信インフラを手放すわけにはいかない 「ソフトバンク孫社長、スプリント統合がまた破談でも強気な訳」 ダイヤモンド・オンライン 15兆円の有利子負債とほとんど同額となり、よくわからない5000億円くらいの損失など気にする必要はないのかもしれません 直近の含み益は14.5兆円 他社転換社債 アリババ株式に関連するデリバティブ損失として計上されている5084億円 出てきたのがフランス系のアルティスUSAだったわけですが、最大手2社との差が大きすぎてほとんど意味がありません CATVだったらどこでもいいから早く提携しよう スプリント(ソフトバンク)はTモバイルとの交渉を中断して、大手CATV(チャーター・コムニケーションズの方だったようです)との経営統合を持ち掛けます。要するに二股をかけたわけですが、あえなく両方とも頓挫 スプリントと米CATV会社のアルティスUSAとの業務提携を発表 「破談」 Tモバイルの経営統合 新たに加わったソフトバンク・ビジョン・ファンド事業(以下、SVF事業)が1862億円 海外のスプリント事業が同93.3%増の2021億円 国内通信事業が前年同期比6.9%減の4339億円 2017年4~9月期連結決算 ソフトバンク 「ソフトバンクはどこへ行く?」 闇株新聞 (その6)(ソフトバンクはどこへ行く?、ソフトバンク孫社長 スプリント統合がまた破談でも強気な訳) ソフトバンクの経営
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。