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東京オリンピック(五輪)(その9)(新国立競技場は“負の遺産”へ一直線 施設維持に年間24億円、お台場の海はなぜ汚いのか 水質を知り尽くす港区議が警鐘、小田嶋氏:努力についての真っ赤なウソ) [社会]

東京オリンピック(五輪)については、8月2日に取上げた。今日は、(その9)(新国立競技場は“負の遺産”へ一直線 施設維持に年間24億円、お台場の海はなぜ汚いのか 水質を知り尽くす港区議が警鐘、小田嶋氏:努力についての真っ赤なウソ)である。なお、タイトルから「予算膨張以外」はカットした。

先ずは、建築エコノミストの森山高至氏が8月20日付け日刊ゲンダイに掲載した「新国立競技場は“負の遺産”へ一直線 施設維持に年間24億円」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/260487
・『東京五輪まで1年を切った。浮かれたお祝いムードが漂っているが、目玉の五輪関連施設を巡り整備費用や維持費などの課題が山積している。建築エコノミストの森山高至氏が五輪会場を「将来性」「デザイン」「アスリート目線」「周辺との融和性」――の4項目(各25点、計100点)から評価する。 過激なデザインは実現可能なのか――。 一時は3000億円とまで予想された巨額の建設工事費だけでなく、建設実現性までが問題視された新国立競技場。計画の見直しと再コンペという前代未聞の事態を経て11月末に完成する予定だが、当時指摘された問題点が解決しているとは言い難い』、「計画の見直しと再コンペ」をしたにも拘らず、「問題点が解決しているとは言い難い」、どうなっているのだろう。
・『●将来性=17点 施設維持費の試算は、旧国立競技場の約7億円の3倍強に当たる年間24億円。コンサート活用だけでは到底、捻出できない金額だ。公共サービスは広く国民全体の福利厚生を目的とするものであり、必ずしも黒字化の必要はないが、このままでの財政負担は大会終了と同時に“負の遺産”確定となってしまうだろう』、早くも将来の赤字化がほぼ確定したことは、由々しい問題だ。
・『●デザイン=18点 1964年の五輪では、新幹線や首都高速の開通とも連動した時代を象徴するような記念碑的建築物が建てられたが、新国立競技場にはそのような時代性は見受けられない。樹木を生かすというテーマが掲げられたものの、数十年で大きく育った神宮の杜の敷地樹木は切られてしまった。しかも、木造そのものではなく、使用された木の素材は、鉄骨やコンクリート部材の表面を飾る薄板に過ぎなかったのだ』、「数十年で大きく育った神宮の杜の敷地樹木は切られ」、「使用された木の素材は、鉄骨やコンクリート部材の表面を飾る薄板に過ぎなかった」、とはおよそ環境に優しくない。
・『●アスリート目線=12点 大会終了後は球技(サッカー)専用に改修し、民間活用に委ねるとしていたが、現在その可能性はなくなっている。引き続き陸上の聖地としてアマチュアスポーツ中心で活用できるのかというと、国際大会基準のサブトラックが併設されていないため難しい』、大会終了後の活用方法が未だに未定というのも無責任だ。
・『●周辺との融和性=14点 旧国立競技場では、旧日本青年館と明治公園にも連なる木陰や広場機能があった。貴重な都市のオアシスとして競技場周辺の道路も含めた都市的活用がなされていたが、現状はそうした他施設との連携機能も失っている。 ■総合評価=61点』、「貴重な都市のオアシス」がなくなってしまうのは、かえすがえすも残念だ。

次に、9月17日付け日刊ゲンダイが掲載した港区議会議員の榎本茂氏へのインタビュー「お台場の海はなぜ汚いのか 水質を知り尽くす港区議が警鐘」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/261745
・『榎本茂さん(港区議会議員) 「トイレのような臭いがする」――。先月中旬にお台場海浜公園(東京・港区)で行われた、2020東京五輪のオープンウオータースイミングのテスト大会で、競技を終えた選手から飛び出した感想が衝撃的だった。20年以上前からお台場の海をウオッチし、水質問題を調べるNPOを立ち上げ、港区議にもなったのがこの人。お台場の海はなぜ、こんな酷い状況なのか。大会本番まで1年を切ったが、解決策はあるのか。 Q:お台場の海の水質問題に関心を持つようになったきっかけは何だったのでしょう。 A:僕、1999年にサラリーマンをやめて、しばらく釣りで食べていまして。ルアーで魚を釣ってビデオを出したり、僕の名前を冠した竿のシリーズが出たり。フィンランドのラパラという、世界で一番大きなルアーメーカーのプロテスターもやりました。ただ、釣りって水の中が見えないじゃないですか。水中を見ないで能書き言うのがイヤで、実際に水中の生態をもとに釣りのテクニックを語りたいなと。で、水中の撮影を始めたんです。 Q:撮影の現場がお台場周辺を含めた、東京湾内の海だったわけですね。 A:海水の透明度が高い時に撮影していると、突然「白い雲」みたいなものが流れてきて、魚がパーッと全部いなくなってしまうことがあった。この「雲」はいったい何なのか。原因を追いかけてみると、下水道の処理水だったと分かったのです。 Q:その後、自身でNPO法人を立ち上げ、独自調査を行ってきました。 A:我々は、東京湾の汚染原因の“本丸”を下水と捉えてきました。ところが、東京湾の環境改善をテーマにしたシンポジウムや大会では、他のNPOや行政から「下水」の「げ」の字も出てこない。芝浦の下水処理場(東京・港区)からの汚水放流をやめて欲しいと都議や区議にお願いしても、質問はしてくれるのですが、大きなテーマにならない。それで、仲間から「自分で出た方がいい」と言われ、私は「下水」をテーマに2011年、港区議選に出馬したのです。 Q:当選後は何か変わりましたか。 A:独自の水質調査結果なども提示し、都の下水道局に水質浄化対策を要請してきましたが、下水道局の腰は重く、なかなか対応してくれない状況が続きました。状況証拠を集めるべきと考え、17年5月ごろに芝浦の下水処理場から海へ排水が流される様子を撮影。フェイスブックでの公開に踏み切りました。関連動画を計3本投稿したところ、一気に100万アクセスを超え、話題になりました』、本来、「都の下水道局」は情報公開すべきだが、しないのは不都合な事実があるからなのだろう。
・『避妊具や溶け切らないトイレットペーパーのカスが浮遊  Q:実際に現場を見てどう感じましたか。 A:もうびっくりでしたね。異物がブワーッと出てくるんです。トイレに捨ててしまう人がいるのか、避妊具なんかも流れてくる。トイレットペーパーも完全に溶け切らない状態でフワフワ浮いていた。鼻を突く刺激臭も漂っていました。青い海水がすごい勢いで、こげ茶色に染まっていくのです。 Q:動画投稿から2年経った今、「トイレのような臭い」報道が出て再注目されました。確かに見ているこっちも気分が悪くなってきます。原因は何でしょう。 A:都内の山手線内側にある古くからの町は、生活排水と雨水を一緒くたに流す「合流式」を取っています。トイレも風呂も雨水も、いらない水は全部一つにまとめられて処理場に流される仕組みです。一定のキャパシティーに達すると、排水はほとんど未浄化のまま海に排出されます。昨今はゲリラ豪雨が頻発し、キャパシティーを超えやすい状況にあります。また、都市化が進んだことでいわゆる「土の地面」が減り、雨水が吸収されにくくなっている。排水が未浄化のまま海に排出されるケースが増えているのです。 Q:下水の処理方法が問題なのですか。 A:それだけではありません。調べてみて分かったのは、下水管がパンクしてしまわないように、管の最終的な「出口」に至る途中に、排水を外に逃がすための穴が計700カ所に開いています。ホースの途中に穴が700個開いているイメージで、穴から排出された水は浄化されないまま川に流されてしまうのです。東京港を行き交う屋形船や水上バスなどが、船内に設置されたトイレからし尿を外に流している可能性があることも分かっています』、処理能力を超えると「水が未浄化のまま海に排出される」、さらに「管の最終的な「出口」に至る途中に、排水を外に逃がすための穴が計700カ所に開いています・・・穴から排出された水は浄化されないまま川に流されてしまう」、こんなに酷い方式だったとは初めて知った。これでは、「避妊具や溶け切らないトイレットペーパーのカスが浮遊」、というのも当然だろう。
・『都心の下水処理施設は1930年代のまま  Q:東京湾の水質が悪くなるのは当然ですね。 A:結局、誰も「トイレの先」を深く考えていないのです。都心部では大規模開発が進んでいる。先日、森ビルが港区内で東京タワー並みの高層ビル建設計画を発表しました。大規模施設を建てれば、トイレも増やさざるを得ない。都心の「トイレ」が“巨大化”する一方、実は、下水の処理能力はほとんど上がっていないのです。芝浦の今の処理施設ができたのは1931年。当時の日本の人口は7000万人程度で、まだ、地方に多くの人が住んでいる状態でした。当時から施設の大きさはほとんど変わっていません。 Q:都心部では商業施設のみならず、タワーマンションや高層オフィスも続々と増えています。 A:芝浦の処理場が請け負っているのは、中央区や港区、千代田区の全域です。国会議事堂でジャーッとトイレを流すと、排水は2時間で処理場に到達します。他にも文京区の東京ドームも含まれますし、豊島区の大半や、大崎、品川などの排水も芝浦にやってくる。都心の排水はほぼ全て芝浦に来る状況なのです』、下水処理施設は、「都心」では芝浦のままだが、東京都全体では、この他に三河島、中川、有明、中野など19か所あり、全体の処理能力は増えている筈だ。
・『五輪組織委は“景観ファースト”で会場を選んだ  Q:東京五輪で、選手は“ドブ”のような海で泳ぐことになるのではないでしょうか。 A:通常、海水の塩分濃度は3.5%といわれていますが、お台場は1%程度で、あまりしょっぱくない。それだけ、淡水である生活排水などに満たされてしまっているということです。生活排水に水質が左右されるわけですから、お台場は「海」というより「海水が混じっている場所」と捉えるべき。組織委は「昨日は大腸菌が多くて無理だったけど、今日は少なくなったのでOK」などと説明していますが、そもそも何が流れてきているのかよく分かっていないのに、おかしな話ですよ。 Q:トライアスロンの会場としてふさわしくないことを、組織委は分かっていたんでしょうか。 A:もちろん、把握した上で選んだのでしょう。理由は「景観」です。レインボーブリッジや豊洲市場周辺など「絶景スポット」をあえてコースに組み入れている。それ自体、いい宣伝になるとは思います。しかし、いくら絶景でも選手が泳ぐ海の水質は最悪です。東京の海の衛生をアピールするためにも水質浄化に取り組むべきなのに、それは一切なされていない。ただ、三重のフェンスを設けるといった予防策のみ。上っ面の対策です。 Q:「合流式」となっている都内の下水処理施設を、雨水や生活排水を別々に処理する「分流式」に切り替えれば、抜本的な解決になると報じられています。しかし、改修には10兆円超の費用と50年以上にわたる工期がかかるといわれます。しかし、大会は来年7月。対策はあるのでしょうか。 A:伊豆諸島に位置する離島「神津島」の砂を大量に運び入れ、お台場の海底に敷き詰めたらいいと思います。現在、お台場の海の底にはヘドロが堆積していて、黒いバケツに水を入れているような状況です。神津島のきれいな白い砂を敷き詰めれば、水はかなりきれいに見えますし、浄化機能も期待できる。神津島は山が徐々に崩れ、港が大量の砂に侵食されつつあります。現地は砂を投棄したいくらいですから、きれいな砂が欲しいお台場の海とは「ウィンウィン」の関係が成り立つ。コストは砂の運搬費くらいでしょう。 Q:それは今からでもやった方がいいですね。 A:お台場のすぐ裏にある有明の下水処理施設では、トイレ排水などに用いる「高度処理水」をつくっています。これを、お台場水域の内側から強い勢いで流し込み、汚染された水を外に追いやる方法もある。高度処理水も生活排水と同じく淡水で、海水より軽い。海面の表層でぶつかり合ってうまく外に押し出せる可能性があります。さまざまな対策を一気に推し進めれば、ひとまず五輪では恥ずかしくない程度の環境にはなるでしょう。根本的な水質改善は、後からじっくりやればいい。今回、注目されたことを契機に、しっかりと考えていくべきだと思いますね』、「トライアスロンの会場」としては、「いくら絶景でも選手が泳ぐ海の水質は最悪です。東京の海の衛生をアピールするためにも水質浄化に取り組むべきなのに、それは一切なされていない。ただ、三重のフェンスを設けるといった予防策のみ。上っ面の対策です」、こんな劣悪な環境で泳がされる選手こそいい迷惑だ。運営体制の無責任ぶりもここに極まれりだ。海外からも批判が出なければいいのだが・・・。

第三に、コラムニストの小田嶋 隆氏が9月20日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「努力についての真っ赤なウソ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00037/?P=1
・『気がつけば、2020オリンピック・パラリンピック東京大会の開幕まで、1年を切っている。 だからなのかどうなのか、ここへきてテレビをはじめとするマスメディアは、五輪に関して 「とにかくネガティブな情報を避けるように」という感じの露骨な翼賛報道にシフトしているかに見える。 あるいは、テレビをそんなふうに見ている私の見方が「ひがめ」であると、そういうことなのかもしれない。その可能性はある。 「おまえさん、どこに目をつけてるんだ?」「は?」「だから、おまえの眉毛の下でピカピカ光っている穴は、なんのためについてるんだと言ってるんだよ」「ひがめのことですか?」という、そのひがめだ。誰も笑っていないようなので話を先にすすめる。 いちばんわかりやすいのは、ニュースショーのMC席に座っているキャスターの表情だ。 どちらかといえば暗めの顔(ま、暗いニュースが多いですから)でカメラを睨んでいることの多い彼らの表情が 「次はオリンピックの選手選考のニュースです」という告知をする瞬間、うそみたいに明るくなる。 もちろん、うそをついているのではない。 暗い災害のニュースだったり、深刻な犯罪関連の情報を伝える重圧から解放されたりして、みんなが待っている明るいスポーツの話題に触れる時には、誰であれ、安堵感なり解放感なりを感じるはずだという、それだけの話なのだろう。とにかくそんなふうにして、五輪の「明るさ」と「希望」は、着々と演出されつつある。 そのキャスターさんたちの明朗な表情は、いずれ、視聴者にも伝染する。 病院の待合室などで、大型テレビを見上げている人々の顔を眺めていて驚くのは、テレビ画面に五輪関連のニュースが映し出されると、人々の顔が何かで拭ったようにパッと明るくなることだ。その、人々の明るい表情を見ていると、いまさら五輪の開催を断念することが不可能であることを思い知らされる。五輪は、どうやら、この国のマジョリティーにとっての替えのきかない希望になっている。 そんな五輪関連の、基本的には明るく前向きでめでたくもうれしい国民的なニュースの中に、時々、一風変わった情報がまぎれこんでくる。 たとえば、この話題などが、それに当たる。 日本経済新聞は、このニュースに 《人工降雪で熱中症防げ 五輪ボート会場で"奇策"実験》という見出しを与えている。なかなかよく考えられたヘッドラインだと思う』、私はこのニュースをなんと馬鹿馬鹿しいことをするのだ、と呆れただけだったが、小田嶋氏はさすがに「ひねり」がありそうだ。
・『五輪組織委の取り組みを、あからさまに嘲笑するのは、今後の取材先との関係から考えてはばかられる。かといって大真面目に紹介すれば、報道機関としての見識を疑われかねない。 なので、軽く「失笑」しつつ、あくまでも一歩引いた立ち位置からご紹介するにとどめる、といったあたりが「落としどころ」になる。で、その「落としどころ」が、具体的には、ダブルコーテーションで囲った”奇策”というフレーズだったわけだ。 実際、このニュースには、五輪組織委の正気を疑うにふさわしい、匂い立つような愚かしさが横溢している 300キロの氷塊だろうが3万トンの氷河だろうが、そんなものでオープンエアの五輪会場の気温を下げることが可能だと考えた人間は、高校の物理の授業をきちんと受けていたのだろうか。 仮に人工降雪が何かの演出として有効なのだとして、このアイデアの発案者は、屋根のない観客席への事実上の降水が、観客にとって迷惑以外の何かである可能性について、ほんの少しでも考慮したのだろうか。 バカなプランを思いついてしまったところまでは仕方がないのだとして、そのバカなプランについて実験が必要だという旨を議決してしまった会議は、そもそもいったい誰のために何を話し合う機関なのだろうか。 バカなプランについてのバカな合意を議論の段階でツブすだけの見識を持った委員が一人もいなかったのだとすると、そもそも組織委なるものに存在意義はあったのだろうか。……と、考えれば考えるほど、疑問点はいくらでも出てくるのだが、記事は、そこのところをさらりと流しつつ《―略― 実験時は曇りで風も吹いて流されやすかったこともあり、降雪前後で周辺の気温に変化はみられなかったという。 組織委の担当者は「空気全体を冷やすというほどのものではない」としつつ、「暑い日ならば観客にとっては楽しいイベントになる」と話した。 今後、コストも含めて人工降雪の効果を詳細に検証し、本番時の導入を検討する。》 と、あくまでも冷ややかな現在形の語尾で文末を締めくくっている。 見事な手腕というのか、まあ、記者も苦労したわけなのだな。 このほか、この夏、五輪組織委が打ち出してきたプランには以下のようなものがある。 (1)《五輪テストイベントで暑さ対策検証 朝顔の鉢植えで「視覚的にも涼しく」》 (2)《五輪マラソン暑さ対策、MGCで検証 かち割り氷など配布》 ほかにも、リンクはもう消えてしまっているのだが、個人的にクリップしておいたNHKニュースの中に、以下のような一節が含まれている』、「五輪組織委」の人間はよくぞこんな下らないことに熱を上げるものだ。これに付き合わされる記者も大人の対応をしているようだ。
・『(3)《―略― 2年後の東京オリンピックで課題になる猛暑への対策につなげようと、陸上のマラソンコースとなる東京 日本橋で、冷房の効いた店舗を開放する「クールシェア」についての意識調査が行われました。 大会の組織委員会は、観客への猛暑対策が特に必要な競技の1つに陸上のマラソンを挙げており、スタート時刻を午前7時にするとともに、コース沿いの店舗やビルで冷房の効いた1階部分などを開放してもらう「クールシェア」の取り組みを活用する方針です。―略―》 いちいちツッコむのも面倒なのだが、こういうネタを見つけたら、面倒がらずにいちいちツッコんでおかないといけない。なんとなれば、ベタなツッコミどころに義理堅くツッコんでおくことこそが、コラムニストの義務であり、ひいては、コモンセンスをコモンセンスたらしめるための生命線でもあるからだ。 まず(1)の朝顔の鉢植えだが、「視覚的に涼しい」とかいった類のおためごかしの御託は、できれば身内の中だけの話にしておいてほしかった。そんな提供側の独善やら思い込みは、間違っても報道を含めた外部の人間に語り聞かせて良い話ではない。言語道断である。 ついでに言えばだが、この「おためごかし」の態度は、もてなす側の人間が「お・も・て・な・し」などという自家中毒じみた自分語りを誇示して恥じない、今回の五輪招致イベント以来の五輪組織委の根本姿勢に通底しているもので、サービス提供側が自分たちの美意識に酔って勘違いをしている意味で、あるタイプの懐石料理屋のひとりよがり演出と区別がつかない。客は刺し身のツマを食いにきているわけではない。飾り包丁の技巧の冴えなんぞで刺し身が腐っている事実を隠蔽することはできない。 次に(2)のかち割り氷だが、これについては、くだくだしい議論は不要だ。「論外」という二文字をぶつけておけばそれで足りる。記事を読んでいて気になるのは、たとえば《給水所に新たに置いた氷を選手たちが使う姿がみられるなど、組織委は一定の手応えを実感。》 という一文だ。「実感」の主体が「組織委」だというのは、やはり奇妙だ。 「記者の取材に対して、組織委員会の委員の一人は、かち割り氷の効果について一定の手応えを実感した旨を語った」 ということなのかもしれないが、それにしても、雑な体言止めだ。で、最後は 《小池百合子知事は、芝公園で暑さ対策を視察。冷却グッズを試すなどして効果を確かめ、「いかにして太陽の日差しを遮るかが大きなポイント。五輪まであと1年を切っている。数値を分析して、ベストな暑さ対策を進めていく」と強調した。 レース後、組織委の担当者は「選手の意見などを踏まえて、継続して暑さ対策について議論していく」と力を込めた。》 と、「と力を込めた」という工夫のない常套句で締めくくっている。 こういう記事を見ていると、われわれが心配せねばならないのは、しょせんは一回性のイベントに過ぎない五輪の成否などではなくて、むしろ大量の五輪報道を通じて記事の質の劣化を気にしなくなっているマスメディアの機能不全の方なのかもしれない』、「この「おためごかし」の態度は、もてなす側の人間が「お・も・て・な・し」などという自家中毒じみた自分語りを誇示して恥じない、今回の五輪招致イベント以来の五輪組織委の根本姿勢に通底しているもので、サービス提供側が自分たちの美意識に酔って勘違いをしている意味で、あるタイプの懐石料理屋のひとりよがり演出と区別がつかない」、との皮肉は切れ味がいい。「われわれが心配せねばならないのは・・・大量の五輪報道を通じて記事の質の劣化を気にしなくなっているマスメディアの機能不全の方なのかもしれない」、その通りなのだろう。
・『(3)もひどい。なにがひどいといって、「意識調査」と言いつつ、一般の商業施設や沿道のビルに、冷房の無料提供を求めている姿勢がどうにも凶悪すぎる。戦前の「供出」(金属類回収令)から一歩たりとも進歩していない。 念の為に申せばだが、そもそもエアコンの冷気は、閉じられた空間にだからこそ成立している一時的かつ暫定的な「寒暖差」にすぎない。エアコンというあのマシンは、特定の閉鎖空間の気温を冷やすために、別の空間に向けて暖気を排出せねばならない。つまり、空間Aと空間Bの間に一定の「温度差」を作ることがエアコンの機能なのであって、より大きな空間である街路全体や地球そのものを冷やすことは、彼の任務ではない。そんな無茶な仕事はマックスウェルの悪魔にだってできやしない。というよりも、熱力学の第二法則がこの世にある限り、マラソンコースの沿道をまるごと冷やすことは不可能なのだ。 ……と、いくら私が口を酸っぱくして五輪組織委の暑さ対策の愚かさを指摘しても、一部の人たちの耳には永遠に届かないことは、はじめからわかっている。その理由もよくわかっている。 つまり、私が「無駄だ」と言っても、彼らが耳を傾けないのは、彼らが注目しているポイントが 「有効であるかどうか」ではないからなのだ。というのも、あるタイプの日本人(あるいは「多くの日本人」と言った方が良いのかもしれない)は、アイデアや計画の「有効性」や「実効性」を重視しないからだ。彼らがなによりも大切にしているのは、 「みんなが心をひとつにすること」や、「とにかく全力を尽くすこと」だったりする。 今回の暑さ対策においても、その実施に向けて頭を絞り、カラダを使い、みんなで話し合っている人たちがなにより意識しているのは、 「いかにして気温を下げるのか」でもなければ、「どうやってアスリートや観客が快適に過ごせる環境を確保するのか」でもなくて、どちらかといえば、「自分たちはどんなふうに貢献することができるのか」ということであり、最終的には「大会が終わったときに、どれほどの達成感を得ることができるのか」ということだったりする。 これは、「おもてなし精神」が標榜するものが「顧客満足度」ではなくて「接客業者の自己実現」だったりしているのと同じ構造の話だ。また、70年前に惨敗したうちの国の軍隊を動かしていた駆動原理が「いかにして敵に勝利するのか」ではなくて「軍隊内の同僚や銃後の国民の目から見てどれほど必死に戦っているように見えるのか」であったことと良く似た話でもある』、「これは、「おもてなし精神」が標榜するものが・・・」、もよく考え抜かれた秀逸なコメントだ。
・『多くの勤勉な日本人は、無駄な努力であっても何もしないよりはマシだと考えている。 また、われわれはそう考えるべく育てられてきている。 今回のあまりにも無駄な暑さ対策の発案と実験とその報道の連鎖は、そこのところからしか説明できない。 おそらく組織委の中の人たちは、「ただ手をこまねいているよりは、たとえ役に立たなくても何かにチャレンジすべきだし、そうやって自分たちの身を捧げるのが主催者としての覚悟の見せどころだ」てな調子でものを考えている。 なんと愚かな態度だろうか。 仮に、結果として、その努力が何の成果をもたらさなくても、彼らは、自分たちが努力をしたというそのこと自体が、自分たちを高め、結束させ、より高い次元の人間に成長させてくれるはずだと信じている。 でも、それはウソだ。 残念だが、真っ赤なウソだ。 以下に述べることは、私個人の考えに過ぎないと言ってしまえばそれまでの話なのだが、ここまで書き進めてきた以上、強く断言するのが行きがかり上の必然だと思うので、以下、断言しておく。 私は、無駄な努力は人間を浅薄にすると思っている。 無駄な努力は有害だとも考えている。 賛成できない人は賛成してくれなくてもかまわない。 どっちにしても、私は自分の考えを改めるつもりはない。 われわれの国を悲惨な敗戦に導いた愚かな軍隊を主導した人たちは、「松根油」という愚かな油を精製するべく必死の知恵を絞ってみたり、国民の鍋釜を供出させることで戦闘機を生産しようとしたり、ほかならぬ兵隊の生命身体そのものを武器弾薬とする寓話的なまでに愚劣な作戦行動に「神風特攻」という滑稽なタイトルを付けたりなどしつつ、最終的には負けるべき戦いを負けるべくして負けたわけなのだが、今回もまたわたしたちの愚かな組織委員会は、主要な人的資源をボランティアに頼りながら、ぶっかき氷と人工降雪機と朝顔による暑熱対策で8月の猛暑を乗り切り、3000万首都圏民による生活排水と糞便が随時流れ込む港湾内でのオープンエアスイミング競技の開催をなんとか無事に取り回し切るつもりでいる。 われわれは、またしても愚かな失敗を繰り返そうとしている。 「無駄な努力であっても、何もしないよりはマシだ」というわれら勤勉な日本人の多くが囚われているこの妄念を捨てない限り、来たる2020東京五輪は無駄な努力の品評会に終わるはずだ。 そして、われら多数派の日本人ならびにいろいろなことをあきらめた日本人は、それらの無駄な努力の上に打ち立てられた無残な失敗の金字塔を、美しい思い出として振り返るわけなのだな。 ああいやだ』、「「無駄な努力であっても、何もしないよりはマシだ」というわれら勤勉な日本人の多くが囚われているこの妄念を捨てない限り、来たる2020東京五輪は無駄な努力の品評会に終わるはずだ」、JOCだけでなく、日本型組織が持つ嫌な側面を、見事なまでに描き切った近来、稀にみる秀逸なコラムだ。
タグ:使用された木の素材は、鉄骨やコンクリート部材の表面を飾る薄板に過ぎなかったのだ 水質問題を調べるNPOを立ち上げ、港区議にもなった 数十年で大きく育った神宮の杜の敷地樹木は切られてしまった 施設維持費の試算は、旧国立競技場の約7億円の3倍強に当たる年間24億円。コンサート活用だけでは到底、捻出できない金額 問題点が解決しているとは言い難い 「お台場の海はなぜ汚いのか 水質を知り尽くす港区議が警鐘」 実際、このニュースには、五輪組織委の正気を疑うにふさわしい、匂い立つような愚かしさが横溢している 東京オリンピック 日本経済新聞 榎本茂 《五輪マラソン暑さ対策、MGCで検証 かち割り氷など配布》 コース沿いの店舗やビルで冷房の効いた1階部分などを開放してもらう「クールシェア」の取り組みを活用する方針 無駄な努力は有害だとも考えている 70年前に惨敗したうちの国の軍隊を動かしていた駆動原理が「いかにして敵に勝利するのか」ではなくて「軍隊内の同僚や銃後の国民の目から見てどれほど必死に戦っているように見えるのか」であったことと良く似た話でもある われわれが心配せねばならないのは、しょせんは一回性のイベントに過ぎない五輪の成否などではなくて、むしろ大量の五輪報道を通じて記事の質の劣化を気にしなくなっているマスメディアの機能不全の方なのかもしれない 「おもてなし精神」が標榜するものが「顧客満足度」ではなくて「接客業者の自己実現」だったりしているのと同じ構造の話 彼らが注目しているポイントが 「有効であるかどうか」ではないからなのだ。というのも、あるタイプの日本人(あるいは「多くの日本人」と言った方が良いのかもしれない)は、アイデアや計画の「有効性」や「実効性」を重視しないからだ。彼らがなによりも大切にしているのは、 「みんなが心をひとつにすること」や、「とにかく全力を尽くすこと」だったりする。 「自分たちはどんなふうに貢献することができるのか」ということであり、最終的には「大会が終わったときに、どれほどの達成感を得ることができるのか」ということだったりする 「新国立競技場は“負の遺産”へ一直線 施設維持に年間24億円」 アマチュアスポーツ中心で活用できるのかというと、国際大会基準のサブトラックが併設されていないため難しい (五輪) (その9)(新国立競技場は“負の遺産”へ一直線 施設維持に年間24億円、お台場の海はなぜ汚いのか 水質を知り尽くす港区議が警鐘、小田嶋氏:努力についての真っ赤なウソ) 日経ビジネスオンライン 2020オリンピック・パラリンピック東京大会 「努力についての真っ赤なウソ」 森山高至 無駄な努力であっても、何もしないよりはマシだ」というわれら勤勉な日本人の多くが囚われているこの妄念を捨てない限り、来たる2020東京五輪は無駄な努力の品評会に終わるはずだ。 《五輪テストイベントで暑さ対策検証 朝顔の鉢植えで「視覚的にも涼しく」》 われら多数派の日本人ならびにいろいろなことをあきらめた日本人は、それらの無駄な努力の上に打ち立てられた無残な失敗の金字塔を、美しい思い出として振り返るわけなのだな 《人工降雪で熱中症防げ 五輪ボート会場で"奇策"実験》 日刊ゲンダイ 貴重な都市のオアシス 小田嶋 隆 トライアスロンの会場 いくら絶景でも選手が泳ぐ海の水質は最悪です。東京の海の衛生をアピールするためにも水質浄化に取り組むべきなのに、それは一切なされていない。ただ、三重のフェンスを設けるといった予防策のみ 五輪組織委は“景観ファースト”で会場を選んだ 管の最終的な「出口」に至る途中に、排水を外に逃がすための穴が計700カ所に開いています。ホースの途中に穴が700個開いているイメージで、穴から排出された水は浄化されないまま川に流されてしまうのです 一定のキャパシティーに達すると、排水はほとんど未浄化のまま海に排出されます 避妊具や溶け切らないトイレットペーパーのカスが浮遊 都の下水道局に水質浄化対策を要請してきましたが、下水道局の腰は重く、なかなか対応してくれない状況が続きました 東京湾の汚染原因の“本丸”を下水と捉えてきました 海水の透明度が高い時に撮影していると、突然「白い雲」みたいなものが流れてきて、魚がパーッと全部いなくなってしまうことがあった。この「雲」はいったい何なのか。原因を追いかけてみると、下水道の処理水だった 榎本茂さん(港区議会議員)
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