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地方創生政策(その8)(医療と介護の国・地方関係を巡る2つの逆説-分権改革20年の節目の年に、地方の3兆円を狙う「ハイエナコンサルタント」 「せっかくのお金」を絶対に渡してはいけない、「地元志向の若者増加」を手放しで喜べない事情 「心の豊かさ」と「経済的繁栄」どちらを取る?) [国内政治]

地方創生政策については、昨年2月27日に取上げた。今日は、(その8)(医療と介護の国・地方関係を巡る2つの逆説-分権改革20年の節目の年に、地方の3兆円を狙う「ハイエナコンサルタント」 「せっかくのお金」を絶対に渡してはいけない、「地元志向の若者増加」を手放しで喜べない事情 「心の豊かさ」と「経済的繁栄」どちらを取る?)である。

先ずは、本年1月7日付けBROGOSが掲載したニッセイ基礎研究所の 三原 岳氏による「医療と介護の国・地方関係を巡る2つの逆説-分権改革20年の節目の年に」を紹介しよう(付注は紹介省略)。
https://blogos.com/article/428073/?p=1
・『1――はじめに~医療・介護の国・地方関係を巡る2つの逆説を節目の年に考える~  2020年がスタートした。筆者の関心事である医療・介護分野では今年も様々な動きが予想される。例えば、病床再編を目指す「地域医療構想」に関しては、民間医療機関の診療データが3月に開示され、9月頃までに都道府県は公立・公的病院の再編・統合について結論を出すよう求められている。さらに、2019年度中に策定される「医師確保計画」を基に、医師の偏在是正に向けた都道府県の取り組みも本格化する。介護に関しても、市町村が「保険者」(保険制度の運営者)として介護予防を進める必要性が論じられており、いずれも都道府県や市町村の取り組みが期待されている。 一方、今年は国・地方の関係を「上下・主従」の関係から「対等・協力」に変更した地方分権改革から20年に当たる。その視点で近年の動向を見ると、自治体は医療・介護分野の権限拡大を望まなかった経緯があり、「地方が望まない分野で分権が進む」という皮肉な状況が生まれている。さらに自治体に対する国の統制を強める制度改正も相次いでおり、「分権化と同時に、集権化が進む」という逆説的な傾向が見受けられる。 本稿では、地方分権改革から20年の節目の年に当たり、当時の議論を簡単に振り返りつつ、医療・介護で進む分権化の動きを取り上げる。その一方、「地方が望まない分野で分権が進む」「分権化と同時に、集権化が進む」という「2つの逆説」が生まれている理由として、「どうやって自治体の自主性を反映するか」という「自治」と、「国の政策を自治体にどこまで実行させるか」という「統治」の間で相克が見られる点を論じ、今後の方向性を探ることとする』、「「地方が望まない分野で分権が進む」「分権化と同時に、集権化が進む」という「2つの逆説」が生まれている」、どういうことなのだろう。
・『2――地方分権改革の概要  地方公共団体の自主性、自立性が高まることによりまして、地方公共団体が住民の意向を踏まえて行政を進めることができるようになり、住民にとっても大きなメリットがある――。当時の小渕恵三首相は1999年5月の衆院本会議で、このように述べて地方分権のメリットを強調した。 この時の国会に提出されていた地方分権一括法では、国が自治体を出先機関のように扱う「機関委任事務」の廃止などを盛り込んでいた。最終的に法律は2000年4月に施行され、国と地方の関係は「上下、主従」から「対等、協力」に変わり、自治体の事務は「法定受託事務」「自治事務」に区分された。このうち、法定受託事務とはパスポートの発給など国の仕事を自治体に委任する事務、後者の自治事務は法令に違反しない限り、自治体の判断で内容を決められる事務と整理され、本稿の主要テーマである医療行政の多くは自治事務に類型化された。 さらに「地方分権の先駆け」と位置付けられた介護保険制度も市町村を主体とし、同じ時期にスタートした(つまり、介護保険も同じく20年を迎えた。この歴史は機会を改めて詳しく論じる)。当時、政策立案に関わった有識者の書籍では「(筆者注:介護保険制度は)明確な形で分権の流れの中にあります。その最大の特色がどこに表れたかというと、保険者を市町村にしていることです」といった表記が見られる(大森彌編著『高齢者介護と自立支援』)。つまり、市町村が住民の意向を踏まえつつ、主体的に介護保険制度を運営することが期待されていたのである。 その後、国・地方の税財政関係を見直す小泉純一郎政権期の「三位一体改革」や、自治体行政に対する国の統制を緩める「義務付け・枠付け」の見直しなど地方分権改革は間断なく議論されており、近年は本稿のメインテーマである医療・介護行政に関しても分権化の傾向が一層、強まっている。ここでは医療・介護の国・地方関係について20年間の変化を簡単に振り返る』、確かに「地方分権改革」も歴史的な経緯を振り返る意義は大きい。
・『3――医療・介護の国・地方関係における20年間の変化 1|医療行政~「都道府県化」の傾向が顕著に~  医療行政では都道府県化という傾向が顕著に見られる。例えば、提供体制改革に関しては、病床削減などを目指す「地域医療構想」が医療計画の一環として2017年3月までに策定され、病床削減や在宅医療の拡大などを都道府県単位で進めることが期待されている。さらに、医師偏在是正や医療人材の確保を目指すための「医師確保計画」も2019年度中に都道府県単位で策定される予定だ。 保険制度に関しては、2008年度と2018年度の改正を通じて、都道府県単位にする改革が進められてきた。具体的には、2008年度改革では中小企業の従業員を対象とした協会けんぽの保険料が都道府県単位に変更され、75歳以上の高齢者が加入する後期高齢者医療制度の広域連合も都道府県単位に設置された。さらに国民健康保険については、2018年度の制度改正を経て、都道府県は市町村とともに制度を運営する立場となった。このほか、各保険者で構成する「保険者協議会」も都道府県単位に設置され、医療費適正化などを話し合う場として重視されつつある。 このように見ると、20年間における医療分野の制度改正の特徴として「都道府県化」が一つの共通点として浮かび上がる』、受益と負担を国より身近な「都道府県」にすることは、「都道府県」ごとの人口構成の違いによる「受益と負担」の不均衡を固定することにつながりそうだ。
・『2|介護行政~予防を中心に市町村の役割強化の傾向が鮮明に~  先に触れた通り、介護保険では元々、市町村が主体性を発揮することが期待されており、近年は介護予防を中心に、その役割を強化する傾向が鮮明となっている。具体的には、要介護認定率の引き下げに成功したとされる埼玉県和光市の事例を「横展開」するため、介護予防に力を入れる市町村を支援する「保険者機能強化推進交付金」(200億円)が2018年度予算で創設された。 さらに今年の通常国会に関連法案が提出される2021年度制度改正では、高齢者が気軽に運動などを楽しめる「通いの場」の拡充が重視されている。例えば、厚生労働省は2019年3月、『これからの地域づくり戦略』を公表し、市町村が介護予防に取り組む際の注意点や先進事例を紹介するなど、介護予防に関する市町村の取り組みに期待している』、「介護予防に力を入れる市町村を支援する「保険者機能強化推進交付金」(200億円)が2018年度予算で創設」、これは望ましい政策のようだ。
・『3|分権化の背景にある「自治」と「統治」の側面  こうした制度改正の背景としては、地域の独自性に考慮する「自治」と、国全体の動向を俯瞰する「統治」という2つの側面が挙げられる。まず、「自治」の観点とは、人口や高齢化率の地域差が大きいことを踏まえ、地域の自主性に期待する考え方である。例えば、人口的にボリュームが大きい「団塊世代」が75歳以上となる2025年まで見通すと、東京都など大都市部では人口増加が続くが、殆どの道県では人口が減少する。さらに、高齢化率の格差も大きく、国一律による制度改正だけでは対応しにくくなっており、地域単位で政策を進めようという動きに繋がっている。 一方、「統治」の観点とは、医療・介護費用が増加している中、自治体にも給付抑制の責任を持たせるようとする考え方である。例えば、病床数が多いと医療費が増える傾向が見られる(医師需要誘発仮説)ため、国は地域医療構想を通じて都道府県に病床削減を進めさせる一方、国民健康保険改革で費用抑制にも関与させたい意向を持っている。この点については、2017年6月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)が「都道府県の総合的なガバナンスの強化」を通じて、医療・介護行政の効果的・効率的な運営を進めると定めたことに表れている3。 しかし、この結果として「地方が望まない分野で分権が進んでいる」「分権化と同時に、集権化が進む」という2つの逆説が生まれている。以下、2つの点を論じて行くこととしよう』、なるほど。
・『4――地方が望まない分野で分権が進む逆説  過去の経緯を見ると、都道府県が医療行政の権限強化を望んだ形跡は見受けられず、脆弱な財政基盤を強いられている国民健康保険の財政負担について、全国知事会は一貫して反対してきた。例えば、小泉政権期の三位一体改革で、厚生労働省は「財政安定に運営の広域化が必要であり、積年の悲願である都道府県の本格的な運営参加が不可欠」と考えていた(『国民健康保険七十年史』)ため、新たな財政負担が導入されたが、都道府県サイドは最後まで難色を示した。さらに、2018年度の都道府県化に際しても、全国知事会は受け入れの条件として国の財政支援の充実を要請し、最終的に3,400億円規模の追加支援が実施された。2008年度改革で医療行政を都道府県単位にする方向性が示された時も、44道府県は医療費抑制に関して役割を担うことに反対していた(『朝日新聞』2005年11月20日)。 介護保険に関しても、「赤字補填に悩まされている国民健康保険の二の舞になる」という不安が市町村に根強く、「町村会は心の底からこれに賛意を表したことは一回もなかった」「市町村が介護保険を担当するのはやはり不適当」と考えていた(『全国町村会八十年史』)市町村との調整が最も難航した。 つまり、自治体が望まない分野で分権が進んでいる逆説的な状況が生まれている。これは自治体レベルでの費用抑制を図るという「統治」の観点で制度改正を進めている国と、費用が増える医療・介護分野の役割拡大を嫌う自治体の「自治」(ワガママ?)の相克と言える』、「自治体レベルでの費用抑制を図るという「統治」の観点で制度改正を進めている国と、費用が増える医療・介護分野の役割拡大を嫌う自治体の「自治」(ワガママ?)の相克と言える」、なかなか難しい問題だが、「自治体の」「ワガママ?」とは言い過ぎな気もする。
・『5――分権化と同時に、集権化が進む逆  もう1つが「分権化と同時に、集権化する逆説」である4。医療行政の都道府県化や市町村の保険者機能強化を促しつつ、国による統制を強める制度改正も相次いでいる。 例えば、国民健康保険については、都道府県化が進む傍らで、自治体による医療費適正化に向けた取り組みを評価、採点し、補助金の分配額を左右させる「保険者努力支援制度」(約1,000億円)が2018年度に創設された。介護保険でも同様の仕組みとして、「保険者機能強化推進交付金」(200億円)が2018年度に創設されている。これらは全て自治体の事情とは無関係に、国の配分基準に沿って自治体を動かすことを想定しており、集権化の側面を持っている。 こうした分権と集権が同時に進む理由も、やはり「統治」「自治」の相克に求めることができる。つまり、国は「統治」の視点で費用抑制の責任を自治体に持たせる反面、補助金の分配を通じて影響力を行使することで、自治体の行動を費用抑制に誘導しようとしている。 例えば、2020年度予算案では地域医療構想に関連し、病床削減で収入が減る医療機関を財政支援する予算として84億円を計上。さらに国民健康保険の保険者努力支援制度を500億円積み増したほか、介護保険に関しても自治体による予防・健康づくりを後押しする別の交付金(介護版の保険者努力支援制度)として200億円を盛り込んだ。こうした状況の下、20年前の地方分権改革で重視された「自治」が失われつつあると言える』、「国は「統治」の視点で費用抑制の責任を自治体に持たせる反面、補助金の分配を通じて影響力を行使することで、自治体の行動を費用抑制に誘導しようとしている」、やむを得ないように思える。 
・『6――おわりに~国の統制は今後も強まる?~  20年前の議論と照らすと、分権化と同時に集権化が進む現状について、自治体から疑問の声が上がっていないのは奇異に映る。ただ、これは止むを得ない面もある。自治体は財政難と人手不足に直面する一方、分権改革に伴って仕事が増えており、「分権疲れ」の雰囲気を見て取れる。このため、地方分権改革の趣旨に基づく原則論よりも、「背に腹は代えられない」という自治体の苦況が反映しているのかもしれない。 しかし、医療・介護費用の増加が続く中、「統治」の視点に立った国の締め付けは今後、一層強まるだろう。実際、地域医療構想に関して、厚生労働省は2019年9月、「再編・統合が必要な公立・公的病院」の個別名を開示したほか、病床削減が遅れている地域に対し、国の職員を派遣する案も取り沙汰されている。 こうした「統治」の論理が先行する中、住民の関心が高い医療・介護に関して、自治体が「自治」の論理をどこまで貫徹できるか。分権改革から20年の節目を迎えた今年の一つの焦点となりそうだ』、「病床削減が遅れている地域に対し、国の職員を派遣する案も取り沙汰されている」、「自治」の原則をかなぐり捨てて、直截な手段まで考えているようだ。「地方分権改革」も一筋縄ではいかない難しい問題のようだ。

次に、6月15日付け東洋経済オンラインが掲載したまちビジネス事業家の木下 斉氏による「地方の3兆円を狙う「ハイエナコンサルタント」 「せっかくのお金」を絶対に渡してはいけない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/355761
・『新型コロナショックから立ち直り、どこまで経済を回復させることができるのか。まさにこれが喫緊の課題ですが、地方においては今後注意しなくてはならないことがあります。それは国から地方に配られる「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の活用方法です』、「「新型コロナウイルス感染症対応」と銘打てば、潤沢な予算がつく悪例の1つだ。
・『地方は8割外注、うち半分を「東京のコンサル」が受注  まず4月22日に閣議決定された1兆円の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」(1次補正予算)は4月末に成立しました。 その後さらに2兆円の増額要請が全国知事会などからも出され、6月12日に第2次補正予算が成立しました。つまり、なんと合計3兆円の交付金が、地方のために使われることになります。 実はこの巨額のお金の活用を巡って、全国各地の自治体関係者には「ぜひ提案したいことがあるから時間をくれ」といった連絡が、東京のコンサルティング会社などから相次いでいます。 こうした東京のコンサルからの「営業攻勢」に応じていたらどうなるでしょうか。地方経済活性化において、せっかく地方に分配している予算を、東京に還流することは全くもって趣旨に沿いません。そればかりか、そもそも、過去の実績を見ると、そのようなコンサルティング会社が大きな成果をあげた試しもありません。 もともと第2次安倍政権の地方創生政策においては「これからは地方自治体がそれぞれの特色に沿って独自の戦略を策定すべきだ」という考えに立ち、配られた予算がありました。公益財団法人の地方自治総合研究所が、その行方を2017年に調査しています。 同調査によると、1342自治体のうち約8割が総合戦略の策定をコンサルタント等へ外注していたことがわかっています。さらにその受注額、受注件数をみると、ともに東京都に本社を置く組織が、外注全体の5割以上のシェアを占めていたことも分かっています。つまり、せっかく地方に振り向けられたはずのお金の4割以上(=0.8×0.5)が東京へ還流していたわけです。今回もまた同じことになるのでしょうか。 そもそも、「それぞれの地方が独自性を発揮して予算活用ができるように」と、地方が独自に策定する計画に対して、国が国庫からお金を出していたわけです。しかし、結果的には「東京のコンサルが受託して計画をつくって地方自治体に納品していた」という笑えない実態があったのです。 当時は「地方創生総合戦略バブル」などと呼ばれ、それこそ金太郎飴のように自治体の人口予測、産業構造、今後の予測みたいな同じような分析が載った、戦略などとは全く呼べないような「名ばかり総合戦略」が自治体に納品されていました』、「1342自治体のうち約8割が総合戦略の策定をコンサルタント等へ外注していた」、「東京都に本社を置く組織が、外注全体の5割以上のシェアを占めていた」、「「名ばかり総合戦略」が自治体に納品」、こんな無駄なことはもう止めてもらいたい。
・『結局、さらに「東京集中」が進んだ  そのような戦略をもとに、地方創生先行型交付金、地方創生加速化交付金という交付金が国の100%負担で配られ、さまざまな事業が提案されて、実行に移されました。今でも記録が残っているので、見てみると頭を抱えてしまうような事業などが乱立しています。 例えば、とある自治体では地方創生にかかわる相談を「年間100件受け付ける」というのが目標の事業(受け付けるだけ!)で2900万円。また別の自治体では、年間1750万円の売り上げ目標の事業になぜかそれ以上の3100万円をつけました。さらには、「産業革命遺産」の「スマホアプリ」に9500万円、林業の新たな従事者3名確保と商品を1つ開発するのに5000万円、と言った具合に、一読してわかるような、なかなか「悩ましい事業」に、大胆にも国の予算が気前よく配られていました。 これら一件一件が「高い」「安い」という話を言うつもりは今さらありません。しかし、地方創生政策が本格的に始動しこれらの予算が投入されて行われてきた結果、いいことはあったのでしょうか。2015年以降、「」東京圏への転入超過数」は年間約12万人から約14万人となり、減るどころか、むしろ増加していきました。もともと政府の目標には、2020年には東京圏の転出入を均衡させる高い目標があったのですが、今は語られなくなりました。 もちろん、安易に東京のコンサルや代理店などに投げてしまう地方自治体も大いに問題です。そろそろ、こうしたやり方では何も解決しないことに気づかなくてはなりません。東京のコンサルが相次いで今また莫大な国庫交付金を狙って営業を始めているようですが、そんな曲がりモノの営業に、地方自治体は飛びついてはいけないのです。 この5年間で費やした膨大な地方創生関連予算は、都市と地方の関係をよりよいものにすることはなく、むしろ東京集中を加速させるものだったのです。何よりも予算が東京から国にいき、国から地方に流れていったのに、その予算さえ東京に還流してきているわけですから、それでは全く話にならないのです。) 今回の地方創生臨時交付金の4割程度は、例えば外食など、新型コロナで苦しんでいる地元の事業者への支援給付のために活用される、とされています。ということは、残りの6割はやはり地元の独自性が試されることになります。全体の予算が約3兆円なら約1.8兆円。これだけの貴重なお金を、東京のコンサルに食われてしまっては、地方にもう未来はありません』、今回も「6割」が「東京のコンサルに食われてしま」う可能性があるとはやれやれだ。
・『地方が独自に稼ぎ、リターンを地元に投資し続る仕組み  本来、このような予算はどう使うべきでしょうか。大切なのは、地方が投資し、毎年稼ぎを作り利回りを生むこと。そして、そうしたリターンを地元のために投資しづつけるということです。 例えば、「アフターコロナ」では、自然環境の豊かな観光コンテンツの人気がすでに高まっています。私の周りでも、熊本県上天草など、一見立地不便であっても、熊本都市圏から十分アクセスできるエリアには、緊急事態宣言解除後に多くの人がすでに戻ってきています。 今回の交付金は、こうした今後の自然を活かした観光などのために使われるべきです。港湾や河川、公園のような既存の公共資産を活用して、宿泊、飲食、アクティビティが行えるように整備することに投資するのです。 そして、そこでは熱心に事業に取り組む民間事業者から、自治体がリーゾナブルな占用料をとるようなことを模索すべきなのです。こうした一連の流れをつくれば、「交付金を配って、それを一過性のイベントで使って終わり」ではなく、お金は継続的に地域の稼ぎとなり、自治体にも歳入をもたらします。地方はその歳入を活用して、地元の観光関係者へのサービス品質改善の教育訓練などにさらに投資し、単価を引き上げていくのです。逆に言えば、安いだけを売り物にするたくさんの構造を打破しよう、といったような緻密な戦略が必要なのです。 それには東京、あるいは首都圏の「ハイエナのように電話して営業してくるようなコンサル」は全く必要ないのです。そもそも、電話してくるようなコンサルは暇で3流もいいところです。実績があり、実力のある人たちは常に仕事が多いものなのです。暇な人員を抱えているようなコンサルに、ろくなところはありません。 そんなところに絶対に騙されてはいけません。まずはわからないなりにでも地元の行政、民間だけで、今からでも取り組めることをやればよいのです。 もし、そのような挑戦が駄目になったとしても、結果としては、なんだかんだで地元でお金は回るわけなので、本来の地方に配る目的でつくられた交付金の役目を果たすわけですから、それはそれで良いのです。また、自分たちで考えて失敗した反省は、次の事業につながります。 この5年間で、いいように食われ尽くした、地方のために配られたはずの交付金。本来は、今回の新型コロナショックで落ち込む地方のために配られる交付金を、ハイエナのように寄ってくるコンサルに食われないよう、くれぐれも注意をしていただきたいのです』、「既存の公共資産を活用して、宿泊、飲食、アクティビティが行えるように整備することに投資するのです。 そして、そこでは熱心に事業に取り組む民間事業者から、自治体がリーゾナブルな占用料をとるようなことを模索すべきなのです。こうした一連の流れをつくれば、「交付金を配って、それを一過性のイベントで使って終わり」ではなく、お金は継続的に地域の稼ぎとなり、自治体にも歳入をもたらします」、なかなかいいアイデアだ。ただ、失敗を恐れて、無難に「コンサル」発注となってしまう自治体が多いのだろう。

第三に、7月21日付け東洋経済オンラインが掲載した経営コンサルタントの日沖 健氏による「「地元志向の若者増加」を手放しで喜べない事情 「心の豊かさ」と「経済的繁栄」どちらを取る?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/361935
・『日本では近年、生まれ育った地元で暮らし働こうという「地元志向」が強まっています。新型コロナウイルスに伴うテレワークや新しい生活様式の普及などから、この地元志向のトレンドがさらに強まりそうです。今回は、コロナが加速させる「地元志向の状況」と「3つの問題点」について解説していきます』、「地元志向」が強まれば、東京一極集中が止まり、望ましい変化ように思える。
・『コロナで強まる「地元志向」  コロナ感染拡大を受けて、3月以降、日本人の暮らしが大きく変わりました。以前は電車に揺られて通勤していたのが、テレワークで自宅や近所のカフェで仕事をします。買い物は都心のデパートに出かけず、近所の商店街で済ませます。銀座や新宿で呑むのははばかられるので、自宅でZoom呑み。土日も旅行など遠出を控えて、近所をウォーキング。ここ数ヵ月で、日本人の行動半径はめっきり狭くなりました。 仕事や日常生活だけではありません。人生の重要な選択においても、地元志向が急速に高まっています。今回、東京の4つの大学の関係者に取材したところ、全員が口を揃えて「来年の入試では地方からの志願者が減り、入学者に占める首都圏出身者の割合はさらに上昇しそう」と懸念していました。 就職・転職も変わります。東京本社のあるエンジニアリング会社は、昨年まで全国・世界から幅広く人材を募っていましたが、コロナで採用方針の転換を迫られています。採用担当者は、今後の採用について次のようにコメントしました。 「中途のグローバル採用は、当面ストップです。新卒は、技術系は大学の研究室つながりで採用しているのでこれまでとそんなに変わりませんが、事務系については激変することが確実です。地方からの志望者が大幅に減っており、結果的に首都圏出身者の割合がかなり高くなりそうです。コロナが終息してもどうなるのか、ちょっと読めません」 緊急事態宣言が解除され、6月から徐々にコロナ前の生活に戻りつつあります。ただ、新しい生活様式が定着しつつありますし、第2波・第3波への懸念もあり、地元志向のトレンドは今後も続くと予想されます。 「地元が好きで、地元に住み、地元で働くって、別にコロナとかに関係なく当然のことでしょ」と思いがちですが、そうでもありません。 歴史的に見れば、親の後を継いで地元に住まざるをえなかった封建制の時代はともかく、選択の自由が保障される現代社会では、より良い生活を求めて地元以外に移り住む国民が増えます。 世界を見渡すと、約5000万人の中国人が華僑としてさまざまな国で活躍しています。フィリピン人もインド人も地元を飛び出し、世界各地でたくましく生きています。 中国・フィリピン・インドは貧しいから、職を求めてやむなく地元を離れているのでしょうか。そうではありません。先進国でもアメリカの若者の多くは、高校を卒業したら地元から離れた大学に進んで寮生活をし、社会人なってからも頻繁に転職し、点々と住居を変えます。 日本でも、つい一昔前まで、地元志向は希薄でした。坂本龍馬が地元・土佐の閉鎖的な風土を嫌い、長崎に出て一旗揚げたように、幕末以降、地元を離れるのが当たり前になりました。1970年代前半までブラジル・ハワイなどへの海外移民や、東北・九州から東京・大阪への集団就職が数百万人規模で行われました。 このトレンドが一転し、地元志向が鮮明になったのは、バブル崩壊以降のことです。所得減少で地方在住者が子供を首都圏の大学に通わせるのが難しくなったことや少子化で親が一人っ子を自分のそばにキープしておきたいと考えるようになったことが要因とされます。 東京都内の大学で学生全体に地方出身者が占める割合は、1990年の39%から2019年には30.7%まで低下。東大・早稲田・慶応といった全国的に知名度の高い大学も、もはや「首都圏の地方大学」になっているのです』、「東大・早稲田・慶応といった全国的に知名度の高い大学も、もはや「首都圏の地方大学」になっている」、「地元志向」もここまできたかと、改めて驚かされた。
・『地元志向の3つの弊害  最近の日本社会の特徴と言える地元志向。何がいけないのでしょうか。経済面では、3つの弊害があります。 第1に、人的資源の最適配分が実現しません。たとえば、先端農業に必要なバイオテクノロジーの知識を持つAさんが都会に住み、ビル建築設計のスキルを持つBさんが農村に住んでいるとします。ここでAさんが農村に、Bさんが都会に移り住むことで、人的資源が社会的に最適化されます(経済学で言うパレート最適)。しかし、Aさん・Bさんがそれぞれ地元にとどまると、最適化されません。 第2に、イノベーション(革新)が生まれません。経済学者シュムペーターがイノベーションの本質を「新結合の遂行」と喝破した通り、イノベーションは異質な知識・情報が融合することによって生まれます。幼い頃から勝手知ったる仲間と過ごす日本の地方と世界中から多種多様な人材が集まるシリコンバレーで、どちらがイノベーションが生まれやすいか、改めて言うまでもないでしょう。 第3に、地方の衰退に拍車をかけます。地方の企業は、地元で暮らす消費者の消費需要、地元で働く労働者の労働供給を見込めるので、あまり経営努力しなくても商品が売れ、労働者を確保することができます。 そのため、短期的には企業経営が安定しますが、競争して腕を磨くことがないので、競争力が高まりません。競争に敗れて淘汰されることも少ないので、地方では競争力のないゾンビ企業ばかりが残り、長期的には経済が衰退してしまうのです。 コロナの影響で地元志向が強まるのは、致し方ありません。ただ、経済への悪影響を考えると、これを一時的な現象にとどめて、活発に人材が交流する社会を取り戻したいところです。 政府には、進学や就職・転職において、地域間の移動を容易にするような政策や支援が期待されます。今回取材した首都圏の大学の関係者は、地方出身者への奨学金や家賃補助の拡充を訴えていました。 企業も、全国・全世界から多様な人材を集めて、イノベーションを推進したいところです。さいわい、多くのライバル企業が採用に消極的になっている現在は、優秀な人材を獲得するチャンスです』、「人的資源の最適配分」、はともかく、「イノベーション(革新)が生まれません」、「「地方では競争力のないゾンビ企業ばかりが残り、長期的には経済が衰退してしまう」、には違和感がある。地方に優秀な人間が残ることで、地方で「イノベーションが生まれ」、活性化する効果もある筈だ。
・『地元の「居心地の良さ」が危ない  ここで問題になるのが、働く人の意識です。最近の各種アンケートによると、ビジネスパーソンの半数以上がテレワークの継続を希望しています。私の取材でも、地元中心の新しい生活を肯定的に捉える声をたくさん耳にしました。 「通勤がなく、朝ゆっくり散歩したら、景色・町並みなどいろんな発見があった。幼馴染とも30年ぶりに再会することができた。地域とのつながりもできて、改めて地元のことが好きになった」(40代、建設) 「今回、地元中心の生活になって、会社と家を往復するだけの以前の生活が馬鹿馬鹿しく思えてきた。コロナのおかげと言うと不謹慎だが、人間らしい心の豊かさを実感することできて満足している」(30代、IT) サケ・マスの回帰本能ではありませんが、地元愛は人間という動物にとって自然な感情です。どこに住んでどういう生活をするかは、個人の自由です。したがって、人々の地元で暮らすという選択を否定することはできません。 しかし、地元志向は、長期的には経済の衰退を招き、ただでさえ厳しさが増している日本人の生活をますます困難なものにします。 短期的な心の豊かさと長期的な物質的豊かさのトレードオフ(二律背反)にどう折り合いをつけるべきでしょうか。コロナという未曽有の危機に直面し、いま政治・企業・国民には重大な課題が突き付けられているのです』、「地元の「居心地の良さ」が危ない」のは事実だが、前述の通り「地元愛」が地元産業のイノベーション、活性化を生み出す可能性もある筈だ。今後の展開を注目したい。
タグ:「地元愛」が地元産業のイノベーション、活性化を生み出す可能性もある筈 地元の「居心地の良さ」が危ない 地方に優秀な人間が残ることで、地方で「イノベーションが生まれ」、活性化する効果もある筈だ 地方では競争力のないゾンビ企業ばかりが残り、長期的には経済が衰退してしまう 第3に、地方の衰退に拍車をかけます 第2に、イノベーション(革新)が生まれません 第1に、人的資源の最適配分が実現しません 地元志向の3つの弊害 東大・早稲田・慶応といった全国的に知名度の高い大学も、もはや「首都圏の地方大学」になっている コロナで強まる「地元志向」 「地元志向」が強まっています 「「地元志向の若者増加」を手放しで喜べない事情 「心の豊かさ」と「経済的繁栄」どちらを取る?」 日沖 健 既存の公共資産を活用して、宿泊、飲食、アクティビティが行えるように整備することに投資するのです。 そして、そこでは熱心に事業に取り組む民間事業者から、自治体がリーゾナブルな占用料をとるようなことを模索すべきなのです。こうした一連の流れをつくれば、「交付金を配って、それを一過性のイベントで使って終わり」ではなく、お金は継続的に地域の稼ぎとなり、自治体にも歳入をもたらします 地方が独自に稼ぎ、リターンを地元に投資し続る仕組み 結局、さらに「東京集中」が進んだ 「名ばかり総合戦略」が自治体に納品 地方は8割外注、うち半分を「東京のコンサル」が受注 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金 「地方の3兆円を狙う「ハイエナコンサルタント」 「せっかくのお金」を絶対に渡してはいけない」 木下 斉 東洋経済オンライン 自治」の原則をかなぐり捨てて、直截な手段まで考えているようだ 病床削減が遅れている地域に対し、国の職員を派遣する案も取り沙汰されている 6――おわりに~国の統制は今後も強まる?~ 国は「統治」の視点で費用抑制の責任を自治体に持たせる反面、補助金の分配を通じて影響力を行使することで、自治体の行動を費用抑制に誘導しようとしている 5――分権化と同時に、集権化が進む逆 自治体レベルでの費用抑制を図るという「統治」の観点で制度改正を進めている国と、費用が増える医療・介護分野の役割拡大を嫌う自治体の「自治」(ワガママ?)の相克と言える 4――地方が望まない分野で分権が進む逆説 3|分権化の背景にある「自治」と「統治」の側面 「保険者機能強化推進交付金」(200億円)が2018年度予算で創設 2|介護行政~予防を中心に市町村の役割強化の傾向が鮮明に~ 受益と負担を国より身近な「都道府県」にすることは、「都道府県」ごとの人口構成の違いによる「受益と負担」の不均衡を固定する 1|医療行政~「都道府県化」の傾向が顕著に~ 3――医療・介護の国・地方関係における20年間の変化 2――地方分権改革の概要 「分権化と同時に、集権化が進む」という逆説的な傾向 1――はじめに~医療・介護の国・地方関係を巡る2つの逆説を節目の年に考える~ 「医療と介護の国・地方関係を巡る2つの逆説-分権改革20年の節目の年に」 三原 岳 BROGOS (その8)(医療と介護の国・地方関係を巡る2つの逆説-分権改革20年の節目の年に、地方の3兆円を狙う「ハイエナコンサルタント」 「せっかくのお金」を絶対に渡してはいけない、「地元志向の若者増加」を手放しで喜べない事情 「心の豊かさ」と「経済的繁栄」どちらを取る?) 地方創生政策
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