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中国情勢(軍事・外交)(その8)(岩田 太郎氏3題:「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然、中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある、仮面を捨てた中国 世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、7月26日に取上げた。今日は、(その8)(岩田 太郎氏3題:「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然、中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある、仮面を捨てた中国 世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配)である。

先ずは、7月27日付けJBPressが掲載した在米ジャーナリストの岩田 太郎氏による「「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61435
・『日本の敗戦をピタリと予測した石原莞爾 「大ばくち もとも子もなく すってんてん」  国力をはるかに超えた無謀な戦争を米英蘭支に仕掛け、明治以来、獲得したすべての海外領土・占領地を失ったばかりか、数百万の国民を死なせ、灰燼(かいじん)に帰した皇土が敵国の欲するままに支配され、自立や独立さえ失う運命となった敗戦国日本。その喜劇的でさえある愚かさを詠んだ、満洲映画協会理事長の甘粕正彦の辞世の句である。 この句が満洲国の首都新京で詠まれた昭和20年(1945年)8月20日を遡ること数年前、大東亜戦争が華々しく幕を開ける以前から、こうした結末を繰り返し、ピタリと言い当てていた陸軍の戦略家がいた。日本の敗戦とともに消滅した満洲国の建国の青写真を描いた石原莞爾その人である。彼は次のように予言してはばからなかった。 「支那亊變をこのままにして、さらに手を壙げて(ひろげて)新たな戰爭を始めたら必ず國を滅ぼす」 「日本はこれから大變なことになります。まるで糸の切れた風船玉のやうに、風の吹くまゝにフワリフワリ動いて居ります。國に確り(しっかり)した方針といふものがありません。今に大きな失敗を仕出かして中國から、台灣から、朝鮮から、世界中から日本人が此の狹い本土に引揚げなければならない樣な運命になります」 「殘念ながらもう日本も駄目だ。朝鮮、樺太、台灣など皆捨てて一日も早く明治維新前の本土にかへり、ここを必死に守つたなら何とかならぬこともあるまいが、今の儘(まま)では絶對に勝利の見込はない」』、「石原莞爾」氏の見方は「日本の敗戦をピタリと予測」したもので、さすがだ。
・『「日本切腹中国介錯論」とは何か  こうした見解は、昭和12年(1937年)7月の盧溝橋事件で日中戦争が起こる数年前の昭和9年(1934年)7月、当時の敵国であった中華民国(当時の一般的表記は支那)の指導者である蔣介石が「廬山軍官訓練団演説」で示した確信と戦略が原型になっている。 すなわち、日本は中国侵略のために米国およびソ連を敵に回して戦い、必ず自滅する。中国は日本をそのような立場に追い込むために、国際社会を味方にして引きずり込む「以夷制夷(いいせいい)」戦略を追求するというものだ。蔣は次のように述べた。 「第二次(世界)大戦はいまや1937年(昭和12年)までに起る可能性あるほど切迫して来た。(中略)その大戦において日本陸軍はソ連を敵とし、日本海軍は米国を敵とするが故に、結局日本は敗戦すべく、その際が満洲・華北の失地を回復し中国の統一を完整する機会である。(中略)もしこれに先だって日本との単独戦争に入ることとなるならば、長期戦に訴えてその間の国際情勢の変化を待つ」 その後の歴史の展開では、列国が実際の支那事変に即座に介入してこなかったことが蔣には大きな誤算となった。しかし、蔣のビジョンは、昭和10年(1935年)に中国の社会思想家である胡適(昭和13年[1938年]に駐米中国大使に任命、米国の対日政策に大きな影響力を行使)が唱えた外交戦略論である「日本切腹中国介錯論」へと昇華されてゆく。 胡は、「中国は数年間の単独の苦戦による絶大な領土・人的犠牲を決心し、日本の切腹(対米ソ敗戦)の介錯人となるべきだ」と論じたのである。 果たして、蔣の廬山軍官訓練団演説の7年後、胡の日本切腹中国介錯論の完成から6年後の昭和16年(1941年)12月8日、日本は米領ハワイの真珠湾攻撃に踏み切った。その翌日に蔣は、「(日本の行動は、中国の対日)抗戦4年半以来の最大の効果であり、また唯一の目的であった(ことが実現した)」と記している。 こうして、蔣の戦略にはまった日本は米国の圧倒的な生産力と火力に立ち向かえず、自壊することとなる。広島と長崎に原子爆弾が投下され、昭和20年(1945年)8月9日からはソ連にも背後の満洲・朝鮮を突かれ、敗戦を迎えて「元も子もなくすってんてん」になったのだ。蔣・胡・石原の予言はここに成就した』、「真珠湾攻撃」の「翌日」に「蔣」が「(日本の行動は、中国の対日)抗戦4年半以来の最大の効果であり、また唯一の目的であった」、と看破したとは、敵ながらアッパレである。
・『ソ連と中共が黒幕だった「日本切腹中国介錯論」  意外なことに、日本切腹の展開の引き金となった日中戦争は、国民党軍の犠牲と疲弊を招く「肉を切らせて骨を断つ」戦略であるゆえに、蔣介石自身が強く望んだことではなかった。 事実、日中戦争を背後から煽ったソ連最高権力者ヨシフ・スターリン指揮下の国際共産主義運動の指導組織コミンテルン、その命令で動いた中国共産党が日本の敗戦後に漁夫の利を得ている。蔣の国民党政権は昭和24年(1949年)に敗北し、土地改革で農民(特に貧農)の支持を得た中国共産党が大陸部に新中国王朝を樹立したからだ。 スターリンは昭和13年(1938年)2月、日中戦争に深入りを始めた日本を評して、「歴史はふざけることが好きだ。ときには歴史の進行を追い立てる鞭(むち)として、間抜けを選ぶ」と述べ、早くもソ連や米国の対日戦勝を予期していた。これよりさらに遡る大正9年(1920年)には、ソ連の初代最高指導者のウラジミール・レーニンが、「世界共産化を進めるため米国を利用して日本に対抗し、日米の対立を煽るべきだ」と主張している。 加えて、米陸軍情報部と英情報機関が解読したソ連と米国内の暗号電文の集大成である「ヴェノナ文書」の公開により、ソ連・コミンテルンが米政権中枢に、フランクリン・ルーズベルト大統領の側近となったアルジャー・ヒスやハリー・デクスター・ホワイト財務省通貨調査局長(在米日本資産凍結の提案者、かつ悪名高い対日最後通告「ハル・ノート」の起草者)などの工作員を送り込み、さらに有力なキリスト教団体やヘレン・ケラーなど社会的信用があるリベラル派知識人を使って米世論を操作することで、日米開戦とソ連の対日参戦の流れを確実な形で作り出していったことも判明している。 また、昭和12年(1937年)7月からの日本との戦いや、昭和21年(1946年)6月に本格化した国共内戦で疲弊した国民党政権を台湾に追い出し、大陸の漢人支配地域である「中華人民共和国」で覇者となった中国共産党の最高指導者である毛沢東は、昭和39年(1964年)7月に以下のように回想している。 「日本の資本家である南郷三郎氏は私に『申し訳ない、日本は中国を侵略した』と話した。私は『いいえ、もし日本帝国主義が大規模な侵略を起こし、中国の大半を占領しなかったら中国人民は団結して帝国主義に反抗することはできなかったし、中国共産党も勝利を得ることができなかった』と答えた。(中略)彼ら(日本)は蔣介石を弱めた。第二に、われわれは共産党が支配する根拠地と軍隊を発展させることができた」』、「スターリン」が「日中戦争に深入りを始めた日本を評して、「歴史はふざけることが好きだ。ときには歴史の進行を追い立てる鞭(むち)として、間抜けを選ぶ」」と評したとはさすが戦略家の面目躍如だ。「毛沢東」が「もし日本帝国主義が大規模な侵略を起こし、中国の大半を占領しなかったら中国人民は団結して帝国主義に反抗することはできなかったし、中国共産党も勝利を得ることができなかった」、のも中国革命を成功させた戦略家らしい見方だ。
・『今回は中共が米露やインドまで敵に回す  ところが、日本切腹中国介錯の最終的な勝者である中国共産党が今、戦前・戦中の日本の「八紘一宇」「大東亜共栄圏」を彷彿(ほうふつ)とさせる「一帯一路」「人類運命共同体」「アジア運命共同体」「中国夢」などの構想を掲げ、域外覇権国の米国をアジアから排除して、西太平洋地域やユーラシア大陸の大半を中国共産党帝国の版図に組み込もうと画策している。 平成25年(2013年)3月に国家主席に就任した習近平氏の影響下にある国営の中国新聞網は同年7月、今後50年間に中国が戦うべき「6つの不可避の戦争」として(1)台湾「統一」戦争(2020-2025年)、(2)南シナ海の様々な諸島の領土「回復」戦争(2025-2030年)、(3)チベット南部の領土「回復」戦争(2035-2040年)、(4)釣魚島(魚釣島を含む尖閣諸島)及び琉球諸島(沖縄)の「回復」戦争(2040-2045年)、(5)外蒙古(モンゴル国)「統一」戦争(2045-2050年)、(6)ロシアに奪取された領土の「回復」戦争(2055-2060年)を挙げた。この構想は、平成29年(2017年)10月の中国共産党大会に合わせて北京で開催された政府系シンクタンク主催のシンポジウムでも再び発表されている。党中央の暗黙のお墨付きということだ。 日本のアジア征服計画とされる「田中上奏文」(昭和4年[1929年]に中国が宣伝を始めた偽書)の中国版であり、その究極の目的は、米国をアジアから追い出して、漢人による西太平洋地域やアジアの完全支配を実現することだ。中国共産党の軍隊である人民解放軍の強硬派の想定であり、実際の戦闘の順番や時期には変更があり得る。一気に数か所をまとめて片付けることも考えられる。 いずれにせよ、仮想敵国として超大国である米国をはじめ、台湾・日本・ベトナム・フィリピン・マレーシア・ブルネイ・インド・モンゴル・ロシアなど、主要近隣国や関係国をほぼすべて含む極めて野心的なものだ。それぞれの想定戦争時期は違うものの、世界を敵に戦(いくさ)を仕掛ける中国の自信と決心が表れている。事実、7月23日に満洲吉林省の空軍航空大学を視察した習主席は、「どんな敵も恐れない気概を持たなければならない」「実戦をイメージして戦争に勝つための訓練や人材育成を行うべきだ」とハッパをかけている。 皮肉なのは、蔣介石や毛沢東の中国が「よそもの」の米国と組み、アジアから米国を駆逐せんとする日本を叩きのめしたのに対し、現代日本は過去に自ら排除を試みた域外国の米国と組んで、アジアから「部外者」の米国を追い出そうと画策する中国共産党に対抗しようとしていることだ。 さらに皮肉なのは、日本を切腹させた介錯人の中国が、今や日本の敗因であった「政治と戦略の乖離(かいり)」「国内矛盾解決のための冒険主義」「国家理念や戦略の欠如」「国際的孤立」など類似要因に突き動かされ、戦前の日本のような自滅の道を歩み始めているように見えることだ。 中国の国土の広さ、資源の豊富さ、国力・戦力の充実など、戦前の日本とは単純に比較できない面も多いが、国際公約である香港の一国二制度の残り27年を待ちきれずに放棄したり、東シナ海や南シナ海で公然と地政学上の現状変更を推進するなど、最近の「国際協調よりも共産党支配護持」「国益より党益」「世界を敵に回す覚悟」などの傾向は、戦前の日本のような自壊的ともいえる政戦略の乖離を示している』、「今後50年間に中国が戦うべき「6つの不可避の戦争」」、を見ると、確かに、現在の中国は戦前の日本の失敗をなぞろうとしているかのようだ。
・『大日本帝国と同じ愚を繰り返す中国共産党  中国の国力が米国を完全に上回るまでは米国に牙を剥かないという、元最高指導者・鄧小平の「韜光養晦(とうこうようかい)」の教えが守り切れなくなるリスクを冒すほどに、習近平国家主席に指導される中国共産党はなりふり構わぬ対外覇権拡張の道を東シナ海や南シナ海、さらにはインド洋においても歩み始めている。 そのため、蔣介石をして日本を自滅させて漁夫の利を得た中国共産党が、自らの内部矛盾に耐えられなくなる形で「中国が戦うべき6つの戦争」により世界に覇を唱え、日本をはじめ西太平洋地域やユーラシア大陸の大半への侵略拡大により、かつての対日戦線で組んだ米国とロシアの警戒を高め、遂には静謐保持(せいひつほじ)の大国インドまでを潜在的に敵に回す愚を犯している。 このままでは、中国が数十年のうちに亡びる可能性も無きにしも非ずだ。なぜなら、中国が台湾や尖閣諸島を侵略すれば、それに対抗する外部勢力の反撃・反攻はさらに強まり、それを撃退するためにより広範な地域を占領・支配下に置く必要性が生まれ、侵略や拡張が止められなくなる自縄自縛に陥るからだ。他国を侵すほどに現地での抵抗は高まり、友好国や中立国、同盟国でさえ「次は自国ではないか」と警戒して敵に変わってゆくのである。 「自存自衛のため」朝鮮半島を支配下においた日本が、「朝鮮を守る」ため満蒙(満洲および内蒙古)の奪取が必要となり、その「満蒙を死守する」ため北支(華北)や中支(華中)にまで手を伸ばし、国際的な孤立を深める中で敵を増やし、さらには仏印(現在のベトナム・ラオス・カンボジア)や蘭印(インドネシア)、昭南(英領シンガポール)やマレー半島、比島(フィリピン)、ビルマ(ミャンマー)、果てにはソロモン諸島やニューギニアなどの南太平洋諸島まで勢力下に収めなければならないという際限のない「自己防衛のための侵略」に進んだ愚かさを、中国共産党がまさに繰り返そうとしているのである』、「「自存自衛のため」朝鮮半島を支配下においた日本が」、戦線を拡大していった「際限のない「自己防衛のための侵略」に進んだ愚かさ」、は改めて勢いで進む戦争の「愚かさ」を示している。
・『中国切腹日本介錯のいつか来た道  よく知られていることだが、中国共産党は日本の戦略上の過ちを徹底的に研究し、教訓をしっかりと学んでいる。また、日本を屈服させた米国の軍事力や金融制裁・経済封鎖の総合的な破壊力も知り尽くしている。だからこそ、戦前の日本のような国際的な孤立を避けるべく米国主導の戦後国際秩序に従うふりを続け、主敵たる米国を国力の上で凌駕できるまでは爪を隠すという「韜光養晦」を実践してきたのだ。 それは大成功を収め、世界は中国への警戒を解き、中国は世界第二位の経済大国に上り詰めることができた。だが、あまりの成功に中国共産党は慢心し、海外資源を手に入れるため途上国向けの借金漬け外交を展開し、米国を圧倒できる力を得る前に、東シナ海や南シナ海、香港などにおける攻撃的な行動に出て、世界から「中国は危険だ」と認識されるようになってしまった。おまけに、中国国内の価値観を外国に押し付ける場面も目立ち、反感を買っている。 一方、香港や東トルキスタン(新疆)、チベットなどの外地における支配不徹底、国内の経済矛盾やそれに連動する中国共産党の正統性問題などが重なり、それらを「解決」するための攻撃的かつ強権的な体質が隠せなくなってきた。国益よりも、中国共産党の組織を守る選択を続けて、政治と戦略が合致しなくなってきたのである。 恐らく、多くの漢人知識層や中国共産党の政策立案者は、この矛盾に早くから気付き、是正が必要だと感じている。しかし、文化大革命時代の毛沢東の独裁的指導スタイルに回帰しようとする習近平氏を批判することができないため、党中央の「中国切腹」への歩みを止められないでいるのだ。戦前の日本での石原莞爾の軍部暴走批判や、総理大臣直属の機関として設立された「模擬内閣」の総力戦研究所が昭和16年(1941年)8月に導き出した「日本必敗」予測が無視されたように。 現在のところ、習近平氏は従来からの国際協調の発展やグローバル化の推進を口では唱えているが、その手はアジア各地で着々と戦争準備を行っており、領土的な野心は隠せないものとなっている。そして、限定的な局地戦の意図をもって開始した台湾や尖閣諸島に対する侵略は想定外の反撃を招き、やがて日本を含むアジア太平洋地域全体を巻き込む第三次世界大戦に拡大するリスクをはらむ』、「鄧小平の「韜光養晦」を捨て去った「習近平」の愚かさは理解不能だ。「文化大革命時代の毛沢東の独裁的指導スタイルに回帰しようとする習近平氏を批判することができないため、党中央の「中国切腹」への歩みを止められないでいるのだ」。「やがて日本を含むアジア太平洋地域全体を巻き込む第三次世界大戦に拡大するリスクをはらむ」、中国内で「習近平」へのブレーキ役が登場してほしいものだ。
・『自滅する中国を介錯するのは日本か  「中国夢」のコンセプトを発明した中共の石原莞爾こと劉明福・元国防大学教授は、「米中戦争は、中国が西太平洋を支配する『中国夢』を実現できれば回避できる」とするが、現在の米国のアジア関与の低下は、必ずしもアジア撤退を意味しない。ミシェル・フロノイ元米国防次官が6月18日付の米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』電子版で指摘したように、「米国の抑止力低下で、中国が誤算するリスクが高まる」のみなのだ。 習近平氏にとり最悪のシナリオは、アジアや西太平洋地域へは不介入を貫くと思われた内向きの米国が積極的に対中戦や同盟国支援を遂行し、中国にとっての理想である短期即決の電光的決戦が泥沼化・長期化をしてしまうことだ。日本が、「真珠湾を叩けば米国が戦意を喪失する」と誤算したように、中国が「最新兵器で日本や米国を効果的に叩けば戦意がなくなる」とそろばんをはじいても、実際には徹底抗戦を招く恐れがある。 その状況をコントロールしようと中国人民解放軍が地政学的な版図を拡大するほど、ロシアやインド、さらには遠く欧州の警戒を高め、日米露印欧が対中包囲網を築くことを助けてしまう。 その中国切腹を、「中露離間」「中印離間」「中欧離間」の外交や情報戦推進で介錯するのが、日本になる可能性がある。国際社会を味方にして対中戦に引きずり込む「以夷制夷」戦略である。中国の国策が「中国夢」に象徴される領土拡張である限り、それは歴史的な必然となる。 好戦的な日本人が敗戦で内地に戻されたように、世界を敵に回した好戦的な漢人も思わぬ敗戦で「中原」に戻され、チベットも蒙古も満洲も東トルキスタンも失うだろう。 中国共産党の大ばくちは、「中華人民共和国」建国100周年の2049年までに、「元も子もなくすってんてん」になって終わる。「中国切腹日本介錯」は、実現すれば歴史の究極の皮肉となろう。 この先数回にわたり、中国切腹日本介錯において、 「なぜ中国は韜光養晦の完了前に先制攻撃をする可能性が高いのか」 「中国が緒戦で大勝利を収める理由」 「中国はどのような具体的方法で国際秩序を改変しようとするか」 「なぜ中国は海外帝国建設に失敗するか」 「中国切腹日本介錯で生まれる国際新秩序で日本がどのように生まれ変わるか」 を詳細に論じていきたい。(続く)』、続きが楽しみだ。

次に、この続きを、8月3日付けJBPress「中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61522
・『対中楽観論は歴史の教訓を無視している  世界史では、「なぜそのような無謀なことを」「なぜそのようなくだらない理由で」と思わせるような、理性を欠くあまたの戦争が決断されてきた。 特に前世紀には、「すぐに終わる」はずの戦争が広域化・泥沼化した第一次世界大戦、アドルフ・ヒトラーが、「まさかそのようなことはしないだろう」という予想の裏をかく形で仕掛けた対ソ戦、国力をはるかに超える相手の戦意を誤算した日本の真珠湾攻撃、米国の南鮮防衛の意思を見誤った北朝鮮による南侵奇襲など、教訓とすべき例に事欠かない。 指導者たちの思い違いは過去に起こったことであるし、将来にも起こる。なぜなら、彼らのコンプレックスや業績づくりへの渇望、それに基づく誤算、政治体制の機能不全などでリスクやコストの計算が疎かにされ、大戦争などいとも簡単に起こってしまうからだ。さらに、各国の国内問題や矛盾は、容易に潜在敵国に対する強硬論や主戦論へと形を変える。現在のように、世界の覇権や秩序のバランスが崩れる局面ではなおさらだ。 つまり、「中国が現在の国際秩序の破壊者となることは自殺行為であり、自分が最も利益を受けてきた仕組みを壊そうとする者はいない」「習近平は戦争を仕掛けるような愚かなことはすまい」「核兵器による相互確証破壊が存在するから大国同士の戦争は起こらない」という考えは、歴史の教訓に学ばない楽観論に過ぎないのである』、「指導者たちの思い違いは過去に起こったことであるし、将来にも起こる。なぜなら、彼らのコンプレックスや業績づくりへの渇望、それに基づく誤算、政治体制の機能不全などでリスクやコストの計算が疎かにされ、大戦争などいとも簡単に起こってしまうからだ」、「「習近平は戦争を仕掛けるような愚かなことはすまい」・・・歴史の教訓に学ばない楽観論に過ぎない」、確かに判断ミスも織り込んでみるべきだ。
・『戦争をするため主席になった習近平  中国共産党中央軍事委員会の主席であり、任期制限が撤廃された中華人民共和国の「終身国家主席」ともいうべき地位にある習近平氏は、「中国は永遠に覇を唱えず永遠に拡張しない」「中国の台頭は平和的だ」と唱えて敵の眠りを誘う一方で、党専属の軍である人民解放軍をして「一帯一路」「中国夢」「人類運命共同体」など、覇権主義的かつルサンチマン(注)的な目標を実現する戦争を仕掛けるためにリーダーの地位に就いたような男だ。 中国共産党の「核心」たる習主席が党内の権力をすべて自分に集中させ、党と人民の絶対の忠誠を確保し、人民解放軍を完全に掌握し、異論を許さず、人民の監視と統制を強化する目的はただひとつ、「戦争指導」であると捉えることができる。 カリスマ性に欠ける「皇帝見習い」の習主席にとって、自身の正当性を証明できるのは絶対的な権力を行使した戦争の勝利だけであり、「中華民族の偉大な復興」を実現してこそ、仰ぎ見る毛沢東のような本物の「漢(おとこ)」「皇帝」になれるからだ。 それゆえに、中国の最高指導者に選ばれた平成24年(2012年)以来、習主席は「いかに中国を戦争ができる国に改造するか」という点に注力し、国を統率してきた。中国共産党が平成30年(2018年)に習氏を”終身主席”としたのも、彼を任期に邪魔されない、戦争指導に集中できるリーダーにするためだと考えられる。 習主席が就任後に、私利私欲に走り、軍の持つ特権で商売や収賄を行っていた腐敗軍人を徹底的に取り締まったのは、日本メディアの中国政治分析で強調されがちな「習氏個人の権威を高めるため」だけでない。腐敗追放の最も重要な目的は、金儲けに走って平和ボケしていたグダグダの人民解放軍を精鋭化し、習近平氏のビジョンである「中国夢」「中華民族の偉大な復興」に基づく対外戦争を可能にするための準備であったように見える。それは、以下の一連の事象をつなげると、はっきりとする』、粛軍が「金儲けに走って平和ボケしていたグダグダの人民解放軍を精鋭化し、習近平氏のビジョンである「中国夢」「中華民族の偉大な復興」に基づく対外戦争を可能にするための準備であった」、なるほど。
(注)ルサンチマン:、弱者が強者に対して抱く「恨み」や「嫉妬心」(weblio辞書)
・『習近平体制下の過剰な軍備増強の狙い  まず、習主席は人民解放軍の近代的な統合作戦能力を強化するため、中央内部や地方に分散していた軍のすべての権力を中央軍事委員会、すなわち習氏自身に集中させる改革を断行した。具体的には、作戦指揮に重大な影響を持っていた総参謀部などの力を取り上げ、平時体制の全国「七大軍区」を廃止して、自らが直接指揮する戦時体制の「五大戦区」を創設した。 さらに、準軍事組織である人民武装警察を中央軍事委員会に指揮下に置き、非軍事組織の中国国家海洋局の下部組織であった中国海警局(日本の海上保安庁に相当)を人民武装警察の下部組織に付け替えた。これらの改革により、すべての武装組織が戦時・有事体制に移行し、海上民兵なども加わって、一元的に作戦行動をとる即応的な戦争遂行マシーンと化したのである。 習近平主席の指導の下、人民解放軍は南シナ海を領海化・要塞化するだけでなく、他国の空域を一方的に中国の防空識別圏に指定、多核弾頭搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)や中短距離ミサイルを大量配備し、極超音速滑空兵器で日米に脅威を与え始めた。また、自主開発の中国版GPSである北斗衛星測位システムを使って、動く標的を直撃する対艦弾道ミサイルの射程や命中精度を向上させた。さらに、ステルス機を開発するなど、サイバー戦や宇宙戦・ドローン戦などの能力で敵を凌駕し、空母を建造する一方、海軍力でも日米を圧倒できる体制を構築するなど、近未来の実戦に向けて着実に準備を重ねている。 習主席が主張するように中国の台頭が真に平和的なものであるならば、平和的自衛の範疇をはるかに超えるこれらの過剰な軍備増強、軍事行動や組織改編、戦時体制は必要がない。中国に戦争を仕掛けようとする国は存在せず、逆に諸国は圧倒的な軍事力を誇示する中国の侵略を恐れているからだ。それゆえに、中国の一連の行動が大規模な侵略と戦争のための備えだとすれば、習氏の言行不一致はきれいに説明がつく。 「中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張しない」と唱える習氏は、「自己防衛のため」「憲法上の権利だ」と称してミリタリー級の武器を次々と購入し、ついには公共の場で乱射大量虐殺事件を起こす米国人たちを想起させなくもない。  いずれにせよ、習主席が打ち出した「中国夢」「中華民族の偉大な復興」などの抽象的な構想に軍事的準備の裏付けが伴うようになったことは特筆すべきことだ。中国共産党の結党100周年である令和3年(2021年)を前にほぼ完成させたこの大成果こそ、習氏に求められていたものだ。彼は次の「本番」の段階である戦争に向けて確実に結果を出している』、「全国「七大軍区」を廃止して、自らが直接指揮する戦時体制の「五大戦区」を創設」、かつての軍閥に近かった「七大軍区」を廃止、自らが直接指揮する戦時体制」に再編成したとは剛腕だ。「習主席が打ち出した「中国夢」「中華民族の偉大な復興」などの抽象的な構想に軍事的準備の裏付けが伴うようになった」、中国の軍事費の増加は他国を圧倒している。
・『すべての民生政策は戦争に通ず  同じように、一見戦争とは関係のない貧困撲滅や社会インフラ整備、減税や内需拡大なども、社会システムを将来の戦争に備えるためだ。中国が世界を技術や標準でリードする商用5G戦略や人工知能(AI)・ロボット開発も、将来の総力戦の基盤整備に他ならない。民生部門における戦力を、軍拡と同時に養っているわけだ。 実際に習主席は、国家安全にかかわる領域を政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核、海外権益、生物安全の13項目に整理した。その上で、中国のデータ管理および中国式アルゴリズムで世界を支配する戦略と、現実的かつシナジー効果の高い産業支援策という戦術を打ち出した。ここにおいて、民生と軍事の境界線は消滅し、両者は融合している。 たとえば、中国の産業計画である「中国製造2025」においては、令和7年(2025年)までに国内の全世帯・事業所の80%に、ワイヤレスの5G機器やサービスの利用に不可欠な光ケーブル通信を普及させる計画を実行し、広大な国土の高速データ化を急ピッチで進めている(参考資料)。コンサルティングの米デロイトによれば、平成27年(2015年)以来の中国の5Gインフラ投資は、米国の投資額を240億ドルも上回り、さらに4000億ドル相当の投資を行うとされる(参考資料)。一方、5G分野の代替の効かない技術特許出願数は中国が34%と、14%の米国を引き離している(参考資料)。 習主席の指導の下、国家による計画・統制と、「中国の特色ある社会主義(社会主義市場経済)」ならではの効率性が所期の相乗効果を生み出しており、「政治・経済・社会のすべてを党の統制下に置く」という習氏の大方針が、いかに中国の戦時への備えを高めているかがわかる。目を見張る経済と産業の成果は軍事と融合し、国そのものが「皇帝習近平」の号令ひとつで総力戦を実行できる体制が構築されている』、確かに「中国」の「総力戦体制」は相当なものだろう。
・『習近平の「戦争夢」を支える人民の愛国心  一方、平成の最期の10年間である2010年代になって、「抗日神劇(エンタメ化したありえない抗日ドラマ)」が花盛りの中、中国で愛国心が高揚し、軍事ファーストの習近平氏が権力の座に就いたのは、「声なき多数派」、つまり中国版サイレントマジョリティーの意向が体現されたものだ。 自由な言論も民主的な選挙も思想の自由も存在しない「中華人民共和国」のような国であっても、君主あるいは天子(共産党中央軍事委員会主席)の権力や意思は、天の声(民の支持)なしには存在も実現しない。中国戦国時代の思想家・孟子の講義録である『盡心章句』(下)の一節で、「民を貴しと為し、社稷(しゃしょく、国家の意)之に次ぎ、君を軽しと為す(民為貴、社稷次之、君為輕)」、つまり「最初に民があり、民があっての国家であり、次いで主君がある」と指摘される通りだ。 習主席の過去8年にわたる権力固めは、彼の対外強硬路線や戦争路線に漢人の支持がある証左である。それは、覇権的な「中国夢」という国家目標の下で、愛国心が高まっていることに見て取れる。中国共産党のエリート青年党員からなる中国共産主義青年団と、その機関紙である『中国青年報』が平成30年(2018年)に実施した世論調査によれば、96.1%の回答者が「自分は中国人であることを誇りに思う」と答えている。また、米リサーチ大手エデルマンの5月の調査でも、中国政府のコロナ対応に対する人民の信頼度は1月の数字から5ポイント上昇して95%にも達している。 この「ほぼ全員が支持」の結果を、単なる党中央宣伝部のプロパガンダだと解釈するのは短絡的だ。急発展する経済・軍事大国としての自信をつけた漢人の愛国心や政府への信頼は本物であり、その愛国心は容易に戦争への支持へと昇華され得るからである。 習氏の唱える「中華民族の偉大な復興」「一帯一路」「中国夢」「人類運命共同体」は、本質的な部分において漢人大衆の強い望みを掬い上げたものであり、その支持があるからこそ推進されているポピュリズム的な政策である。あのヒトラーもドイツ大衆の広範で熱狂的な支持を得たからこそ、大規模な産業振興と戦争準備、それに続く開戦に邁進できた。 同じように、戦前の日本の満洲事変や支那事変、さらに大東亜戦争も、必ずしも軍部のみが暴走して国民を道連れにしたのではなく、国民の生活上の不満や対支那・対米強硬世論が底流に存在したからこそ、国全体が戦争に突き進んだのである。 「爾後(じご)国民政府を対手とせず」。そう宣言して日本の選択肢を決定的に狭めた、運命の近衛声明に至る昭和12年(1937年)の支那事変の対応に関して、当時の河邊虎四郎参謀本部作戦課長が、「国民が一番強気で、次が政府であり、(戦争を指導する)参謀本部が国家全般を憂慮して最も弱気であった」と回想するほどだ。また、さらに遡れば明治38年(1905年)の日露講和で政府の「弱腰」に激高した大衆が引き起こした暴動の日比谷焼き打ち事件があった。 このような大衆が作り出す「空気」や集団意識は、時に権力層をも支配し、動かしてゆく。しかも、それが必ずしも為政者の望み通りの方向、あるいはコントロールできるものであるとは限らないところが奥深い。 中国の例を挙げれば、日本政府の尖閣国有化を受けて起こった平成24年(2012年)の官製反日大暴動は終盤において、共産党中央の人民扇動の思惑を超え、国内の経済格差への不満のはけ口へと変質を始めた。一連の反日で精神が高揚した漢人大衆の憤りが制御困難となり、矛先が危うく日本から中国共産党に向かいかけたわけだ。 近い将来、尖閣諸島や台湾で戦争を始めた習主席が、「作戦の目的は成し遂げたから、ここで一旦止めておこう」と思っても、「中国夢の実現を中途半端なまま終わらせるな」「暴日膺懲」などの強硬論の台頭や、中国共産党の統治への不満に引きずられる形で暴走が始まり、戦いが思わぬタイミングで消耗戦や、習近平氏が意図しない袋小路の方向にエスカレートする可能性を、われわれは念頭に置いておくべきだろう。 戦争は、実際に始まると想定通りには進まないことが多い。日中戦争において日本の「支那は一撃を加えれば屈服する」という一撃論の前提が誤りであったように、台湾や日本とその同盟国も、短期決戦を望む人民解放軍を持久戦に引きずり込むかも知れないのだ』、確かに「大衆」動員につきもののリスクだ。
・『台湾・尖閣諸島に対する先制攻撃の蓋然性  これまで見てきたように、中国人民解放軍の規律を引き締め、軍備を最新かつ最強レベルに増強し、総力戦が遂行できる経済や産業を育てた習近平国家軍事委員長は、覇権的な中華帝国建設を望んだが果たせなかった皇帝の毛沢東や鄧小平の「中国夢」の実現に踏み出さんとしている。民意も味方につけ、準備は万端整った。 だが、いくら習近平氏が終身国家主席の地位を確保したとはいえ、すでに齢67歳であり、いつまでも時間が残されているわけではない。おそらく、あと15年間ほどで「中華民族の偉大な復興」のビジョンの基礎部分を完成させたいはずだ。そこに焦りが生まれる可能性が高い。 そうした中、「中国夢」に対してライバルの米国から横槍が入り、世界における友好的な対中感情は萎み始めた。コロナ禍に襲われた中国経済も厳しい。企業負債の膨張や大量失業など、国内問題のプレッシャーは高まるばかりである。 何よりも、「中国夢」がいつまでも実体のない画餅のままでは、漢人世論が納得しない。こうして、対外戦争の勝利によって「中華民族の偉大な復興」を実現したい習近平氏と、不満のはけ口を求める漢人大衆の利益はますます合致するようになっていく。 分離独立に走りかねない蔡英文総統に率いられた「中国の核心的利益」である台湾や、「日本に不法占拠される中国固有の領土」である尖閣諸島を「解放」する実績を作ることは、習主席が名実ともに「皇帝」の地位を得るために不可欠だと言える。そのための軍事的な準備や民生面でのサポート体制は、ほぼ完成している。一方、米国は口先で中国を非難するものの、習主席のような対米・対日局地戦争の決意に欠ける。ここに、中国による先制攻撃の蓋然性が満ちるのである。 奇襲により、敵国の油断やコロナ対応のどさくさに紛れて相手の主戦力へ一撃を加え、戦意を喪失させ、数週間の短期決戦で事態を片付けることができれば、中国に勝機があるのは明らかだ。米国の戦意が低ければ、同国を国力で完全に凌駕するための忍耐である韜光養晦(とうこうようかい)を必ずしも完了している必要はない。 尖閣諸島においては、わが関東軍が昭和6年(1931年)9月18日の柳条湖事件のでっち上げで満洲奪取の火蓋を切った仕返しをしてくるかも知れない。すなわち、「日本の海上保安庁・海上自衛隊が、中央軍事委員会指揮下の中国海警を先に攻撃した」との嘘、あるいは誇張を口実に陸海空軍およびロケット軍(通常ミサイル精密打撃)が局部的な総攻撃を加え、日本から周辺の制空権と制海権を奪い、短期間で島を要塞化する。そして米軍が介入しないタイミングで間髪を入れずに、台湾を尖閣と大陸側から挟み撃ちにして早期陥落を狙う可能性がある。 また、「まさか習近平はそこまでやるまい」と考える楽観的な厭戦論者が多い日本や米国と比較して、すでに臨戦態勢に突入した人民解放軍の準備周到さ、統合的運用、最新兵器システムにおける先行など、中国側には有利な条件が多い。緒戦で大勝利を収める可能性が高まる。 世界の台湾に対する無関心、日米の厭戦と平和ボケ、コロナによる米国経済の弱体化、在グアムの戦略爆撃機の米本土撤収、在韓米軍撤退と連動した北朝鮮主導の南北統一の動き、ドイツ・シリア・アフガニスタンなど米軍の世界規模の後退、米経済力の落ち込みや米国の相対的な国力低下、西側諸国の団結の低下、米国の指導力の衰退、さらに日米安保条約の適用範囲に関する日米の結束の乱れなどは、習近平主席にとっての天祐なのである。(続く)』、現在の情勢が「習近平主席にとっての天祐」、とは困ったことだ。

第三に、この続きを、8月12日付けJBPress「仮面を捨てた中国、世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61641
・『大日本帝国の失敗を反面教師にするが・・・  「ミイラ取りがミイラになる」という表現がある。ミイラ採取に行った者が倒れてしまい、結局自分がミイラと化してしまうような結末を皮肉ったことわざだ。 これは、大東亜共栄圏構想に見られる日本帝国主義の失敗を反面教師にするはずが、いつの間にか日本のアジア帝国建設のビジョンや手法の一部を内面化し、「中国夢」「中華民族の偉大な復興」「一帯一路」「人類運命共同体」などの構想を持ち出すことで、同様の帝国建設に乗り出した中国共産党にも当てはまる。 中国では、各地の档案館(公文書館)に残る戦前・戦中の日本の一次史料に基づいた研究が盛んだ。2020年に入ってからも、『日本帝国主義中国侵略資料選集』と題された全20巻シリーズが刊行され、「日本がどのように拡張したか」が熱心に学ばれている。 戦前の日本の新国際秩序構想や戦略、具体的な帝国建設手法を研究することは、その模倣や応用をも可能とする。さらに、それらに内包されている構造的な欠陥や失敗まで取り込んでしまう皮肉が生まれる。 「中国夢」「中華民族の偉大な復興」「一帯一路」「人類運命共同体」という構想を見ても、大東亜共栄圏で日本が既存の国際秩序を改変するために用いた戦略が、あるものは日本の失敗に学んで「改良」された形で現れており、あるものはそっくりそのままの形で再現されている。その意味において、まさに「ミイラ取りがミイラになる」である。 それでは、中国はどのような順序と方法で国際秩序を変えていくのだろうか。既に現れ始めたパターンである。(1)既存国際秩序の使い倒し・乗っ取り、(2)欧米発の普遍的価値観の否定、(3)国際法の換骨奪胎や代替地域経済秩序の提唱という道筋を分析し、この先数年の具体的な中華帝国建設の展開を予想する』、「ミイラ取りがミイラになる」とは言い得て妙だ。
・『「韜光養晦」の陰で国際秩序を使い倒す中国  今世紀中に国力で米国を凌駕できるまでは爪を隠して牙を剥かない──。中国共産党は、元最高指導者・鄧小平が示した「韜光養晦(とうこうようかい)」という教えを守ってきた。それには、既存国際秩序の尊重や国際協調も含まれる。なぜなら、日本の破滅的な失敗をしっかりと観察していたからだ。 満洲国建国のきっかけを作った昭和6年(1931年)9月の柳条湖事件を皮切りに、日本は国際的孤立を深めた。昭和12年(1937年)7月の盧溝橋事件以降は、「日本と米国を対立させる」というソ連や中国共産党の罠にはまり、国力で圧倒的に差のある米国に戦争を仕掛け、壊滅的な敗戦を迎えている。 そのため、中国は米国が樹立して主導的に運営してきた戦後国際秩序の中で静謐保持(せいひつほじ)と韜光養晦を重ね、国際連合や世界貿易機関(WTO)などの国際機関および多国間主義という国際秩序を使い倒しながら経済力や軍事力を養ってきた。ここが、国際的な孤立を厭わずに広域帝国建設の無謀な戦争に突入した日本との最大の違いであり、戦略上の大成功と言えよう。 また、国力増大のために、党是である社会主義に反する資本主義的な「社会主義市場経済」を採用し、世界第2位の経済大国に上り詰めた。国民総生産(GDP)で日本を抜き去った平成22年(2010年)以降は、既存秩序の枠組みの中、表面上はルールに従いながらも、中国標準を欧米標準に置き換える戦術を採用している。 これは、既存の仕組みのルールに則って合法的に行う「乗っ取り」であり、他国は異議を唱えにくい。だが、中国標準が国際的に採用されれば、中国がグローバルな基幹技術の方向性や運営方法を決定できるようになる。結果的に、日米欧などの外国企業は中国標準に対応するコストが増え、認証のために技術情報を開示させられるなど、多大なリスクを抱える。そして、顧客だったはずの中国は、いつの間にか、敵わないライバルへと変身してしまった』、「静謐保持と韜光養晦を重ね、国際連合や世界貿易機関(WTO)などの国際機関および多国間主義という国際秩序を使い倒しながら経済力や軍事力を養ってきた」、確かにこの頃までは巧みだった。「顧客だったはずの中国は、いつの間にか、敵わないライバルへと変身してしまった」、も言い得て妙だ。
・『国際的制度を合法的に乗っ取る中国  中国が自国標準を、事実上の国際標準にすることが成功したケースは増える一方だ。第5世代移動通信システム(5G)においては、代替の効かない技術特許の数や、価格競争力でライバルの追随を許さない通信機器システム群、他国を額で圧倒するインフラ投資などで主導権を確保した。 また、次世代都市スマートシティー分野においても、中国は感染症防止を目的に、都市を監視する仕組みなどを盛り込んだ規格を国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)の技術委員会に提案しており、採用の可能性が高まる。 この他にも、工業品標準、人工知能(AI)分野など最先端技術のテクノロジー標準、人気動画共有アプリのTikTokなどのサービス標準において中国標準は着実に地歩を固めている(なお、デファクト標準となったTikTokは米国で1億人以上ものユーザーを獲得し、データ安全保障上の懸念から米国化あるいは撤退を求められる事態となった)。加えて、国際標準機関における議長や幹事のポストを狙い、あらゆる方法で中国標準を国際標準にしようとしている。 また、トランプ政権下における米国の孤立主義を利用して、米国が関与に関心を示さなくなった世界保健機関(WHO)などの国際組織で、運営を中国に都合よく改変しようとしている。加えて、米国は安全保障上の理由から、米国式のオープンでグローバルな「共有地」というインターネットの概念を捨て、中国式の分断された「サイバー主権」採用の方向へと舵を切った。中国スタンダードの哲学的な勝利である。 さらに中国は、基軸通貨である米ドルを通して国際決済を完全に抑え、ドル決済を通じて他国の息の根を止めることも可能な米国に対抗するため、「デジタル人民元決済」の開発と国際化を急ぎ、中国中心の金融秩序を少しずつでも拡大しようと努力している。国際金融の覇権奪取と「一帯一路」構想の財政的裏付けを目的とする、アジアインフラ投資銀行(AIIB)も設立した。 だが、こうした「合法的な乗っ取り」は既存の米国式の自由主義秩序を根源から覆すものではなく、過渡的な戦術に過ぎない。既存国際秩序を使い倒し、乗っ取った先には、普遍的な価値観の否定と代替となる地域秩序の強要、武力行使による新しい国際秩序の樹立と普及が控えている。この部分において、中国の帝国建設は戦前の日本のそれを忠実に模倣している』、「既存国際秩序を使い倒し、乗っ取った先には、普遍的な価値観の否定と代替となる地域秩序の強要、武力行使による新しい国際秩序の樹立と普及が控えている」、警戒しておくべきだろう。
・『地政学的な現状変更に必要な都合のいい「物語」  およそ現代の新興覇権国家が既存の覇権国家に軍事的に挑戦する「トゥキディデス(ツキジデス)の罠」の枠組みにおいては、実際の地政学的な現状変更に先立って、世界の意味を語り、その物語を決する権限や権力、すなわち中国語で「話語権」や「話語体系」とも呼ばれるナラティブ制御を巡る争いと危機が起こる。 日中戦争突入直前の昭和12年(1937年)1月に、有力財界人であった村田省蔵・大阪商船社長が、「旧大国と新興国の利害は対立する。世界各地の危機や経済不安は、この新情勢を適当に顧慮(こりょ)せざるによる」と述べ、トゥキディデスの罠の新興国側である日本と、既存の覇権国家である欧米列強との物語(言い分)の争いを看破した通りだ。 大東亜戦争に突入する直前の日本では、昭和16年(1941年)3月に、大政翼賛会へと連なる一国一党主義の「近衛新体制運動」の旗振り役であった元衆議院議員の亀井貫一郎が『大東亜民族の途 共栄圏の目標』という著書を出版している。 その中で、「英米仏中心の自由主義的世界秩序の桎梏(しっこく)を打破せんとする我が国は、国際会議のあらゆる機会に於いて、恰も(あたかも)列強に裁判せらるる被告の如き観を呈した」と、欧米の制度の普遍性を認めてきた従来の日本の防御的な立場への不満を表明。そのような現状を打ち破る解決策として、亀井は「(米英などが)世界を掠奪する一手段であるデモクラシー」に代わる、家父長主義に基づいた大東亜共栄圏や「アジアの解放」「東亜の再建」を、日本の新たな話語権のナラティブを使って挑戦的に打ち出すべきだと述べた。構想に説得力があるかないかが問題ではなく、ビジョンを打ち出し実行に移すことが重要であった。 今の中国はどうか。西洋思想の普遍性と正統性を否定する中国共産党は、「世界の難局において注目される中国の治」というテーマを掲げ、道徳的・社会的・政治的に破綻をきたしたように見える、衰退著しい欧米の制度に代わるものだと主張し始めた。「中国が世界に先駆けてコロナを克服した」「中国が世界を救済した」などという主張がそれに当たる。世界を納得させられるかは重要ではなく、ひたすら中国の統治の優秀さを「話語権」を使って強調しているのが特徴だ。 中国共産党の高級幹部を養成する機関である「中央党校」で政治学と法学の教鞭を執る孫培軍准教授は、従来の中国の「民主や法治の良し悪しを西側の概念で測るのは間違っている」という防御的な姿勢を超越し、「中国共産党が考える民主や法治の概念を新しいスタンダードとして積極的に発信していくべきだ」との挑戦的な主張していると、一橋大学法学研究科の但見亮教授が分析している。 日本貿易振興機構アジア経済研究所の江藤名保子研究員も、中国は「自国の議論や言説に含まれる概念、論理、価値観、イデオロギーによって生み出される影響力(話語権)」を行使し、「西洋の普遍的価値に代わる価値基準を世界に浸透させることが、遠大な最終目標だ」との見解を示した。 そうしたスキームに基づき孫准教授はまず、「西側民主は『話語』覇権を握ったかのようであるが、歴史的・時代的に限定されたものに過ぎない」と斬り捨て、中国国務院の新聞弁公室も、「西側の『普遍的価値』が裏に含む政治的立場はマルクス主義、社会主義と共産党の領導を誹謗するものである」と敵意をむき出しにしている。 前述の亀井が、民族的・政治的・社会的平等を追求する中華民国の政治理念である三民主義が、「(自由と平等と独立を掲げることで)個人主義的世界観の一翼」をなし、「重慶(蔣介石が指導する中華民国の臨時首都)-ニウヨーク(ニューヨーク)―ロンドンの線につながる(民主主義的な価値観に基づく)思想」であると拒絶・排除したように』、「「中国が世界に先駆けてコロナを克服した」「中国が世界を救済した」などという主張がそれに当たる。世界を納得させられるかは重要ではなく、ひたすら中国の統治の優秀さを「話語権」を使って強調しているのが特徴だ」、世界の笑いものになると思っていたが、繰り返すことに意味があるようだ。
・『地政学的な現状変更に必要な都合のいい「物語」  およそ現代の新興覇権国家が既存の覇権国家に軍事的に挑戦する「トゥキディデス(ツキジデス)の罠」の枠組みにおいては、実際の地政学的な現状変更に先立って、世界の意味を語り、その物語を決する権限や権力、すなわち中国語で「話語権」や「話語体系」とも呼ばれるナラティブ制御を巡る争いと危機が起こる。 日中戦争突入直前の昭和12年(1937年)1月に、有力財界人であった村田省蔵・大阪商船社長が、「旧大国と新興国の利害は対立する。世界各地の危機や経済不安は、この新情勢を適当に顧慮(こりょ)せざるによる」と述べ、トゥキディデスの罠の新興国側である日本と、既存の覇権国家である欧米列強との物語(言い分)の争いを看破した通りだ。 大東亜戦争に突入する直前の日本では、昭和16年(1941年)3月に、大政翼賛会へと連なる一国一党主義の「近衛新体制運動」の旗振り役であった元衆議院議員の亀井貫一郎が『大東亜民族の途 共栄圏の目標』という著書を出版している。 その中で、「英米仏中心の自由主義的世界秩序の桎梏(しっこく)を打破せんとする我が国は、国際会議のあらゆる機会に於いて、恰も(あたかも)列強に裁判せらるる被告の如き観を呈した」と、欧米の制度の普遍性を認めてきた従来の日本の防御的な立場への不満を表明。そのような現状を打ち破る解決策として、亀井は「(米英などが)世界を掠奪する一手段であるデモクラシー」に代わる、家父長主義に基づいた大東亜共栄圏や「アジアの解放」「東亜の再建」を、日本の新たな話語権のナラティブを使って挑戦的に打ち出すべきだと述べた。構想に説得力があるかないかが問題ではなく、ビジョンを打ち出し実行に移すことが重要であった。 今の中国はどうか。西洋思想の普遍性と正統性を否定する中国共産党は、「世界の難局において注目される中国の治」というテーマを掲げ、道徳的・社会的・政治的に破綻をきたしたように見える、衰退著しい欧米の制度に代わるものだと主張し始めた。「中国が世界に先駆けてコロナを克服した」「中国が世界を救済した」などという主張がそれに当たる。世界を納得させられるかは重要ではなく、ひたすら中国の統治の優秀さを「話語権」を使って強調しているのが特徴だ。 中国共産党の高級幹部を養成する機関である「中央党校」で政治学と法学の教鞭を執る孫培軍准教授は、従来の中国の「民主や法治の良し悪しを西側の概念で測るのは間違っている」という防御的な姿勢を超越し、「中国共産党が考える民主や法治の概念を新しいスタンダードとして積極的に発信していくべきだ」との挑戦的な主張していると、一橋大学法学研究科の但見亮教授が分析している。 日本貿易振興機構アジア経済研究所の江藤名保子研究員も、中国は「自国の議論や言説に含まれる概念、論理、価値観、イデオロギーによって生み出される影響力(話語権)」を行使し、「西洋の普遍的価値に代わる価値基準を世界に浸透させることが、遠大な最終目標だ」との見解を示した。 そうしたスキームに基づき孫准教授はまず、「西側民主は『話語』覇権を握ったかのようであるが、歴史的・時代的に限定されたものに過ぎない」と斬り捨て、中国国務院の新聞弁公室も、「西側の『普遍的価値』が裏に含む政治的立場はマルクス主義、社会主義と共産党の領導を誹謗するものである」と敵意をむき出しにしている。 前述の亀井が、民族的・政治的・社会的平等を追求する中華民国の政治理念である三民主義が、「(自由と平等と独立を掲げることで)個人主義的世界観の一翼」をなし、「重慶(蔣介石が指導する中華民国の臨時首都)-ニウヨーク(ニューヨーク)―ロンドンの線につながる(民主主義的な価値観に基づく)思想」であると拒絶・排除したように』、「家父長主義に基づいた大東亜共栄圏や「アジアの解放」「東亜の再建」を、日本の新たな話語権のナラティブを使って挑戦的に打ち出すべきだと述べた。構想に説得力があるかないかが問題ではなく、ビジョンを打ち出し実行に移すことが重要であった」、「ナラティブ」とはそういうもののようだ。
・『新しい秩序の物語を他地域に展開する必然  より重要なのは、欧米の思想の普遍性や正統性を否定した新しい秩序の物語が、新興覇権国が排他的に支配する新たな地域圏内に展開されなければならないという必然性が説かれることだ。 戦前の日本では、昭和15~16年(1940~41年)に外務大臣を務めた松岡洋右が在任中に、「米国は(中略)最近の日本の国防は西太平洋支配の方向に向かって進んでいると称して我が国を非難しているが、(中略)我が国が大東亜新秩序建設のために西太平洋を支配せんとする意図があることは隠す必要がない」と述べ、西洋の普遍性を否定する日本がアジアと西太平洋を支配する「歴史的使命」を強調したのであった(亀井、32ページ)。 中国も同じだ。平成19年(2007年)5月当時に米太平洋軍司令官であったティモシー・キーティング海軍大将は訪中時に、人民解放軍国防大学・戦略研究所長も務めた中国海軍の楊毅少将から、「ハワイを基点として太平洋を二分し、米国は東太平洋を、中国が西太平洋を取る」太平洋分割案の提案を受けた。 習近平国家主席のブレーンであり、「中国の新たな歴史的使命」「中国夢」「中華民族の偉大な復興」の提唱者である劉明福・元国防大学教授も同時期から、「米中間の戦争は、中国が西太平洋を支配する『中国夢』を実現できれば回避できる」と論じ続けている。逆に言えば、米国が中国に西太平洋を取ることを許さない場合には、米中戦争の可能性が高まるということだ。 これ以降の中国は、松岡外相の使った「西太平洋の支配意図を隠す必要なし」という露骨すぎる表現は避けるものの、習主席がオバマ前大統領やトランプ現大統領に対して繰り返し、「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」、つまり「西太平洋を中国によこせ」と持ち掛けている。日本の大東亜共栄圏建設に深く学んだ中国共産党と、その軍隊である人民解放軍は、「話語権」奪回(再構築)の新フェーズに入っているのだ。 中国にとり、その新たなストーリーを積極的に対外発信することは、西太平洋の排他的な支配の進展と切り離せない。令和元年(2019年)11月に、中国で最大の外国語出版組織である中国外国語出版局の指導の下、中国翻訳協会が主催したフォーラムにおいては、「対外話語体系建設を強化し、国際的な広報力の質とレベルを高めよ」との党の方針が繰り返し確認された。 最近の「いかなる国や人物も、中華民族が偉大な復興を実現する歴史的な歩みを阻むことはできない」という中国の主張の強硬性は、国際秩序の変更意図を世界に周知し、たとえ国際社会を敵に回しても、現状からの離脱を推進する決意を物語っている。 松岡外相が、「アングロサクソン中心の世界文明の崩壊」を揶揄(やゆ)し、「我が国の方針は八紘一宇の輩国精神を以て新東亜建設の基礎とする点に些(いささか)の変化もない」「日本は日本の信ずるところに向かって邁進するの外ない」との不退転の決意を対外的に披露した如くである(亀井、31ページ)』、「最近の「いかなる国や人物も、中華民族が偉大な復興を実現する歴史的な歩みを阻むことはできない」という中国の主張の強硬性は、国際秩序の変更意図を世界に周知し、たとえ国際社会を敵に回しても、現状からの離脱を推進する決意を物語っている」、恐ろしいような独善性だ。
・『「話語権」が地政学的・経済的な現実に  中国の新しい「話語権」による支配は、徐々に地政学的な現実にも反映され始めている。それは、(1)国際法の否定、(2)軍事的な既成事実の積み重ねによる既成秩序の突き崩し、(3)中国を中心とする経済システムの構築、(4)圧力と工作で外国の意見を繰ろうとする「シャープパワー」の行使、などで実行される。 たとえば、中国近海においてグローバルなルールや国際法は適用されないとの「例外主義」の主張に基づいて改変した「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」の概念や、中国が自国に都合よくルールを決めた「防空識別圏は領空と同じ」という主張が好例だ。そうした勝手な設定を、既成事実を積み重ねるサラミ戦術で少しずつ現実化しているのである。 特に中国が「南シナ海」に代わる「南中国海」という新しい日本語表記で呼ぶ海域において、特殊な区画線を持ち出し、その国連海洋法条約上の根拠を示さないままに、「中国の『管轄権及び主権的権利』が及ぶ海域」と主張し、島嶼(とうしょ)を占領して他国の漁船や艦船を寄せ付けない状態だ。 同様に、令和元年(2019年)9月に習近平国家主席がフィリピンのドゥテルテ大統領と会談した際には、南シナ海での中国の排他的な「歴史的権利」を退けたハーグ常設仲裁裁判所の判断をフィリピン側が無視することを条件に、同海域でのガス共同開発の権益の過半数をフィリピンに譲渡するとの提案を行った。 自国が国際法に意図的に違反するだけではなく、他のステークホルダーにも違反をさせることで、国際法(普遍性の象徴)を無効化させる狙いがある。戦前・戦中の日本が大東亜共栄圏内における普遍的な国際法の適用を否定し、新たな地域法である「共栄圏国際法」を提唱する一方、国家対等の原則に基づくアジア各国の主権を無力化する「国境を超越した統一法」が必要だと主張したことが想起される。またわが国は、「アジア内に外交なし」と唱え、国際法に縛りを受けない国家間の関係の必要性を強調した。 さらに、中国は国際法だけでなく、友好国の法制を「中国標準」に改変する試みを続けている。たとえば、インターネット規制や標準設定において、中国式の監視モデルがウガンダ、タンザニア、タイ、エジプト、トルコ、ロシア、カザフスタンなど一帯一路参加国やその他の国で採用されている。こうした「仲間」が増えれば、現行のオープンな米国式モデルが少数派となっていこう。 さらに、一帯一路共栄圏ではカネ(金融)と資源と中央集権的な権力が中国に集中する「ハブアンドスポーク方式」が採用されている。結果として、参加国が中国の築いたシステムに依存するほどに、参加国同士の二国間関係が持ちにくくなり、すべての取引が中国を介さなければ成立しなくなっていく。 そして、参加国が中国の分断統治により弱体化する中で、近代国際法の基礎となる対等な国同士の関係という建前さえも、「ハブアンドスポーク方式」による一帯一路共栄圏を通して瓦解していくだろう。中国の地政学的拡張の露払いである』、「インターネット規制や標準設定において、中国式の監視モデルが・・・一帯一路参加国やその他の国で採用されている。こうした「仲間」が増えれば、現行のオープンな米国式モデルが少数派となっていこう」、参加国が多くなるほど、デファクト化していくだけに、困ったことだ。
・『「中華民族の偉大な復興」に内包される構造的欠陥  こうした現状変更を、中国のシャープパワーが後押しする。たとえば、企業のウェブサイトなどで台湾を国扱いしようものなら、中国でビジネスができなくなるようにする脅しが好例だ。萎縮する日米欧の有力企業が次々と北京の軍門に下っている。香港国家安全法の制定では反中国の発言を中国域外で行った外国人でさえ罪に問われる恐れから、世界中の人々が中国のやり方に異論を唱えなくなる。 このようにして、中国の新しい「話語権」による支配は、最終段階である戦争の準備段階として機能する。だが実際に軍事力をもって「中華民族の偉大な復興」に乗り出す時、中国共産党は日本の轍を踏み、海外帝国建設に失敗する可能性が高い。「中国夢」や「中華民族の偉大な復興」には、大東亜共栄圏に見られたような構造的なイデオロギーの欠陥が内包されているからだ。次回は、その理由を分析する』、「構造的なイデオロギーの欠陥」とは面白そうだ。次回が楽しみだ。
タグ:国際的制度を合法的に乗っ取る中国 ソ連と中共が黒幕だった「日本切腹中国介錯論」 「話語権」が地政学的・経済的な現実に (軍事・外交) 大日本帝国の失敗を反面教師にするが・・・ 岩田 太郎 「中華民族の偉大な復興」に内包される構造的欠陥 新しい秩序の物語を他地域に展開する必然 中国切腹日本介錯のいつか来た道 自滅する中国を介錯するのは日本か 今回は中共が米露やインドまで敵に回す 中国情勢 地政学的な現状変更に必要な都合のいい「物語」 「韜光養晦」の陰で国際秩序を使い倒す中国 「仮面を捨てた中国、世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配」 台湾・尖閣諸島に対する先制攻撃の蓋然性 習近平の「戦争夢」を支える人民の愛国心 すべての民生政策は戦争に通ず 習近平体制下の過剰な軍備増強の狙い 戦争をするため主席になった習近平 対中楽観論は歴史の教訓を無視している 「中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある」 大日本帝国と同じ愚を繰り返す中国共産党 「日本切腹中国介錯論」とは何か 日本の敗戦をピタリと予測した石原莞爾 「大ばくち もとも子もなく すってんてん」 「「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然」 JBPRESS (その8)(岩田 太郎氏3題:「大日本帝国」と同じ轍を踏む習近平と中国共産党 「中国切腹日本介錯論」、中国の自滅を日本が介錯する歴史的必然、中国が先制攻撃を仕掛ける可能性が高いワケ 「終身国家主席」を確保した習近平の狙いは「戦争指導」にある、仮面を捨てた中国 世界を自分色に染めるそのやり方 国際秩序の「乗っ取り」の次ぎに来る「話語権」による支配)
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