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米中経済戦争(その14)(バイデン政権で極めて微妙な新米中関係 中国メディア「3つの予測」、米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省 SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに、米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に) [世界情勢]

米中経済戦争については、8月24日に取上げた。今日は、(その14)(バイデン政権で極めて微妙な新米中関係 中国メディア「3つの予測」、米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省 SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに、米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に)である。

先ずは、11月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「バイデン政権で極めて微妙な新米中関係、中国メディア「3つの予測」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254089
・『米国の大統領選挙で共和党から民主党への政権交代がほぼ確実となった。すでに中国では、バイデン政権下の米中関係をめぐるさまざまな臆測が飛び交っている。中国メディアの報道を取りまとめると、「好転はするが対中政策の基本路線は変わらない」という、極めて微妙な米中関係が見えてくる』、興味深そうだ。
・『バイデン政権で米中関係はどうなる?  共和党によるトランプ政権の4年間は、全米が反中スローガンに沸いた。2017年にトランプ氏が大統領に就任すると、タカ派の政治戦略家たちがブレーンに起用され、中国は同政権にとっての最大の敵となった。さらに、大統領選を控えた今年は、新型コロナウイルスを「チャイナウイルスだ」と連呼し、「世界は2つに割れるのか」といわれるほど対立がエスカレートした。 2020年11月9日、中国外交部の定例記者会でスポークスマンの汪文斌氏は「対話を強化し、相互に尊重し、協力を拡大し、健全で安定した発展を促進することは常に中国が主張してきたことであり、米国の新政府には同じ目標に向かって歩み寄ることを希望する」と述べ、すべては米国次第だというニュアンスをにじませた。 米中関係が歴史的な冷え込みをたどる中で、中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」も淡々と選挙過程を伝えるにとどまったが、電子メディアを中心に、中国ではバイデン政権下の米中関係についてさまざまな予想が報じられている。  中国の経済紙「21世紀経済報道」は8日、「米国の対中政策は、強硬路線からだいぶ緩まるのではないか」と報じた。その理由の1つが、「中国チームの顔触れ」だ。トランプ政権の発足時、首席戦略官にはスティーブン・バノン氏が、政策アドバイザーにはピーター・ナヴァロ氏が就任し、主要なポストはタカ派で固められた。それに対して、バイデン氏の対中チームはアントニー・ブリンケン氏、カート・キャンベル氏、ジェイク・サリバン氏など「比較的理性的な顔触れになる」と伝えている。 バイデン氏のシニア外交顧問であり、また大統領選挙キャンペーンの外交政策顧問であるアントニー・ブリンケン氏は、9月22日に開催された米国商工会議所のイベントで「中国との完全なデカップリング(切り離し)は非現実的で、結果的には逆効果だ」と述べ、バイデン氏の施策については「不公正な慣行を取り締まり、米国の貿易法を執行しながら、中国との経済的関係と技術的関係をリセットするだろう」と語った。 また、東アジア・太平洋担当国務次官補を経験した外交官のカート・キャンベル氏も「冷戦思想は米国の長期的競争力を失わせ、中国の封じ込めには効果がない」と指摘した』、「アントニー・ブリンケン氏
」は国務長官の候補といわれている。
・『中国台頭の抑え込みは変わらない  中国は封じ込めるべき最大の競争相手だとみなす一方で、ロシアとの関係緩和を目指すトランプ氏とは対照的に、バイデン氏はロシアこそが米国第一の脅威だと強調している。バイデン政権下では、「米中の直接的な対立は緩和され、これまで取られた強硬政策もソフトなものになるだろう」というのが、中国のメディアに共通する現時点の見解だ。  「だからといって油断はできない」という論調も、中国の各メディアに共通している。「民主党、共和党ともに米国の対中政策の基本は共通しており、これまでトランプ氏が行ってきた対中政策が否定されることは現実的ではない」とシビアに受け止めているのだ。中国のメディア報道をまとめると、バイデン政権下で予測される米中関係は、およそ以下の3点に集約される。 (1)米国は西側先進諸国と連携を強化し、透明性の高い、ルールある市場を形成しようという動きをより強める (2)貿易面では緩和が期待できるが、中国の技術面、産業面での台頭を抑え込むという方向性は変わらず、依然として対中強硬策を取る (3)気候変動、核不拡散、反テロ活動、ウイルス対策などの国際的な共通課題については、中国と協調して動く  中国の地方紙「新京報」は11月8日、「中米関係はトランプ政権時代より緩和されるかもしれないが、多国間の枠組みにおいては、貿易ルールをめぐり西側諸国が連携を強める」と報じた。 バイデン氏は9月の米国商工会議所のイベントで「同盟国との関係再構築やテクノロジーに関する国際標準の設定などを通じ、米国の戦略的影響の拡大に注力していく」と述べているが、ここから読み取れるのは、オバマ政権時代のアジアのリバランス戦略(注)やインド太平洋戦略という2つの主要な戦略を統合して、日本、オーストラリア、インドその他の同盟国の役割を強調し、携帯電話の国際規格も中国には譲らないという可能性だ。 中国の民間シンクタンクのアナリストは、「軍事、地政学、外交、イデオロギーなどの分野において、米国と摩擦が起こる可能性があり、米国は東アジア地域での軍事力配備を強化し、中国と周辺国との関係を激化させる可能性がある」としている。 ちなみに、民主党の外交政策は「民主主義や人権の尊重などを価値として共有する国家と関係強化をしよう」という価値観外交を継承している』、「中国台頭の抑え込みは変わらない」、一安心だ。
(注)アジアのリバランス戦略:アジア重視の戦略(産経新聞2006年1月30日)
・『製造業の米国内回帰も進める  2点目の、中国の技術面、産業面での台頭を抑え込む動きは、中国が最も注目するところだが、これについてはどのような観測があるのだろうか。 自由貿易の思想を持つ民主党の方針のもと、バイデン氏は「政権発足後に対中関税を撤廃させる」と主張している。一方で、バイデン氏は7月に「米国人を雇い、米国の商品を買う」という経済政策スピーチを行っている。 復旦大学米国研究センターの研究者は「トランプ政権が関税で中国経済に圧力をかけたのとは異なり、バイデン政権では多種多様な手段で米中関係を調整するだろう。サプライチェーンのセキュリティを重視するバイデン氏は、中国への依存を減らすための新たな対策を講じるはずだ」としている。 主要国間の先端技術産業の競争激化に伴い、トランプ政権は国家安全保障の名の下に「サプライチェーンのセキュリティ」という名目で、ファーウェイに圧力を加えるなど戦略的管理を強化したが、バイデン政権もやり方は異なれど、そこへの対策は取り続けるという見方だ。 また、前出のアナリストは「バイデン政権発足後、中米関係は転換を迎えるだろうが、バイデン氏にとっても製造業の労働者がその票田であるため、製造業を国内回帰させることを積極的に主張している」という。 その一方で、政策によるサプライチェーンの分断は現実的ではないことが見えてきた。米中は2018~19年にかけて激しい貿易戦争を繰り広げたが、米コンサルティングファームのATカーニーは、「結果として2019年は中国を含むアジア14カ国の低コスト生産国からの対米輸入額は7570億ドル(約80.6兆円)となり、前年の8160億ドル(約86.9兆円)から7.2%、金額にして590億ドル(約6.4兆円)が減少し、中国からの総輸入額は900億ドル(約9.7兆円)が減少した」としている。 しかし、ATカーニーが「米中貿易戦争で、米国企業はアジアやメキシコからの輸入を増やして中国からの輸入を急激に減らしたが、貿易戦争が終われば元に戻るともささやかれていた」とレポートしているように、そこにはかなりの無理があったことがうかがえる。コロナ禍での米中貿易でも、脱中国を激しく主張するトランプ政権の意に反し、医療用品を中心に中国からの輸入を急伸させた。 中国の政治学者である鄭永年氏は、米大統領選が中国に与える危機として、中国メディアのインタビューに以下のように回答している。 「バイデン氏が最終的に米大統領に就任しても、米国の対中強硬の大きな傾向は変化しない。対中関係において、トランプ氏は非合理的な強硬を示し、バイデン氏は理性的な強硬を示すだろう」 米中関係には南シナ海への海洋進出問題や台湾問題のほか、香港問題や中印国境問題など、いくつもの火種が存在する。現時点ではっきり言えるのは、「4年前のトランプ政権以前の米中関係に戻ることは難しい」ということだ』、「トランプ政権が関税で中国経済に圧力をかけたのとは異なり、バイデン政権では多種多様な手段で米中関係を調整するだろう」、「対中関係において、トランプ氏は非合理的な強硬を示し、バイデン氏は理性的な強硬を示すだろう」、さて、「バイデン政権」が現実にどう出てくるのか、要注目だ。

次に、12月8日付けJBPressが掲載した技術経営コンサルタントの湯之上 隆氏による「米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省、SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63137
・『とうとう軍事企業に指定されたSMIC  米国防総省は2020年12月3日、中国人民解放軍と関係が深い中国企業として、半導体製造専門のファンドリー(受託生産)である中国SMICを指定すると発表した(ロイター、12月4日)。米投資家の株式購入の禁止対象となるほか、同社と米企業の取引も禁止されることになる。 SMICについては、米商務省がすでに9月25日付の書簡で、同社にApplied Materials(AMAT)、Lam Research(以下、Lam)、KLAなど米国製の製造装置を輸出する場合は、同省に申請することを義務化していた(ブルームバーグ、9月27日)。 そのSMICが、とうとう中国人民解放軍の軍事企業に指定された。SMICは、中国が半導体の自給率を向上するための国家政策「中国製造2025」の中核的な半導体メーカーである。そのSMICが軍事企業に指定されたため、半導体の自給率を2020年に40%(推定20%弱で未達)、2025年に70%に向上させるという目標は、ほぼ不可能になった。 これに対してSMICは、ブラックリスト入りを見越して、米製の製造装置を使わずに、2020年中に40nm、2023年までに28nmの量産を計画していた。これらについては、日本と欧州が協力すれば実現できるかもしれないということを本コラムで解説した(「中国製造業を根底から壊す米国のファーウェイ攻撃」、2020年10月3日)。 しかし、SMICが軍事企業に指定されたため、事態はもっと深刻になる。まず、SMICは半導体工場を拡張したり新設する場合、米製の製造装置を入手できない。それだけでなく、現在稼働している工場においても、既存装置のメンテナンスが受けられなくなる。 本稿では、まず、軍事企業に指定されたSMICが、(前掲拙著記事の復習になるが)半導体工場を拡張したり新設することが不可能になることを説明する。その上で、SMICが、現在稼働中の全ての半導体工場が停止する危機に直面していることを論じる』、「SMIC」が「とうとう軍事企業に指定された」、とは大変なことのようだ。
・『SMICの半導体工場の月産キャパシティ  図1に、SMICの半導体工場の月産キャパシティを示す。2015年5月に国家政策「中国製造2025」が制定された後に、8インチも12インチも、その月産キャパシティが急拡大していることが分かる。恐らく、中国政府からの助成金を得て、工場を拡張したのだろう。そして、2020年第2四半期時点で、8インチが月産23.4枚、12インチが月産24.6枚のキャパシティを持つに至っている。 (図1 SMICの8インチと12インチの月産キャパシティ(~2020年Q2)リンク先参照) 8インチについては、図2に示す通り、主力が上海(Shanghai)メガファブで月産約11.5万枚、加えて、天津(Tianjin)ファブが約7.3万枚、深圳(Shenzhen)ファブが4.6万枚となっている(月産キャパシティは2020年第2四半期時点)。一方、約4万枚のキャパシティがあったイタリアのAvezzanoファブは、2019年第3四半期以降、決算報告書から姿を消している。 (図2 SMICの8インチ工場の月産キャパシティ(~2020年Q2)リンク先参照)) この結果、8インチは、上海、天津、深圳の3つの工場合計で23.4万枚の月産キャパシティがあり、これらのファブで、0.35~0.11μmの半導体を製造している(図3)。 (図3 SMICの微細化別の出荷額の割合(~2020年Q1) リンク先参照)) 一方、12インチでは図4に示す通り、2020年第2四半期時点で、北京(Beijing)メガファブが11.7万枚、北京の子会社(Beijing Majority-Owned)のファブが11.3万枚の2拠点が主力である。他には、上海工場が最盛期に4.5万枚あったが、2020年第2四半期に3000枚まで月産キャパシティが低下している。また、2017年第4四半期以降、7000枚の月産キャパシティがあった深圳ファブは、2019年第4四半期以降、姿を消した。 (図4 SMICの12インチ工場の月産キャパシテイ(~2020年Q2)リンク先参照)) これに対して、上海の子会社の工場が2019年第4四半期以降、立ち上がってきており、2020年第2四半期には1.4万枚の月産キャパシティとなっている。この上海の子会社を除けば、12インチの主要な拠点は、北京に集中している。そして12インチの合計キャパシティは24.6万枚であり、これらの工場で90~14nmの半導体を量産していると考えられる』、なるほど。
・『SMICが半導体工場を拡張・新設する場合の障害  SMICが8インチ工場を拡張したり新設する場合は、もしかしたら、中国製の製造装置だけで何とかなるかもしれない。というのは、露光装置では、中国のSMEE(Shanghai Micro Electronics Equipment Co. Ltd.)が、既にi線、KrF、ArFドライの露光装置を販売している。また、NAURAが、ドライエッチング装置、成膜のCVD装置やスパッタ装置、熱処理装置、洗浄装置を販売している。加えて、AMATに在籍していた中国人が創業したAMECが、ドライエッチング装置とCVD装置をリリースしている。 SMEEは、恐らくASMLの露光装置をデッドコピーしており、NAURAやAMECは、AMAT、Lam、東京エレクトロン(TEL)などの装置をデッドコピーしていると考えられる。半導体プロセスは、ハードウエアをコピーしただけでは実現できないが、100nmレベルまでの半導体ならば、なんとか製造が可能かもしれない。 しかし、12インチ用の装置で90nm以降の微細性の半導体を製造するのは、ハードウエアをデッドコピーしただけの中国製の装置では困難だと思われる。したがって、12インチ工場を拡張したり新設する場合は、日米欧の装置の導入がどうしても必要である(図5)。 (図5 半導体製造装置の企業別シェア(2019年)/黄色:欧州、緑:米国、青:日本 (図はリンク先参照)) ここで、軍事企業に指定されたSMICに対しては、米製の装置の導入が禁止されるが、日本と欧州が協力すれば、40nmの半導体の製造も、相当苦しい分野はあるが不可能ではない。したがって、SMICが米製の装置を使わずに2023年までに28nmを量産すると計画したのは良い読みと言える。 ところが、米商務省がSMICに対する米製の装置の輸出申請を義務づけた9月末以降、TEL、SCREEN、Nikonなど日本の装置メーカーがSMICへの装置輸出にブレーキをかけ始めた気配がある。これは、米政府が日本政府に対して何らかの圧力をかけたのかもしれないし、または、日本の装置メーカーが米政府に睨まれたくないために忖度しているのかもしれない。 いずれにせよ、軍事企業に指定されたSMICは、米製の装置の輸出が禁止される上に、日本や欧州の装置も出荷停止になる可能性がある。したがって、SMICは、12インチの工場を拡張したり新設することが極めて困難になる』、「軍事企業に指定されたSMICは、米製の装置の輸出が禁止される上に、日本や欧州の装置も出荷停止になる可能性がある。したがって、SMICは、12インチの工場を拡張したり新設することが極めて困難になる」、日欧も「出荷停止になる可能性がある」、とすれば影響は深刻だ。
・『現在稼働中のSMICの半導体工場はどうなる?  ここまで述べたように、SMICは、12インチ工場を拡張したり新設することが難しくなった。しかし、SMICが直面している事態はもっと深刻である。というのは、SMICは、8インチも12インチも、全ての工場が停止する危機に直面することになってしまったからだ。その理由を以下で説明する。 各種の半導体製造装置は、工場に導入した後、定期的にメンテナンスを行う必要がある上、消耗部品を交換しなくてはならない。しかし、軍事企業に指定されたSMICは、米製の装置の消耗部品を交換できなくなる。 まず、ASMLがトップシェアの露光装置では、KrFやArFのエキシマレーザー光源を定期的にメンテナンスしなくてはならない。その光源メーカーには、米サイマーと日本のギガフォトンの2社がある。もし、米サイマー製の光源の場合は、SMICからサイマーに光源を搬送し、そこで必要なメンテナンスを受けることになる。場合によっては、光源をそっくり取り換えることもある。しかし、SMICが軍事企業に指定されたため、このようなメンテナンスや交換ができなくなる可能性が高い。そこで、サイマー製の光源をギガフォトンに交換する手段が考えられる。これは、不可能ではないが、相当の手間とコストがかかる。その上、米政府が同盟国の日本政府に圧力をかけ、このような代替案を禁止させる可能性が高い。 次に、LamやAMATのドライエッチング装置およびCVD装置については、それぞれ、ウエハが載るステージとして、静電チャックおよびセラミックヒーターが搭載されており、定期的にメンテナンスしたり、交換が必要な重要部品となっている。これらの部品は日本製が多いが、メンテナンスや交換はLamやAMATの技術者が行う。たとえSMICの技術者が行うとしても、その部品はLamおよびAMATがSMICに販売する。ところが、軍事企業に指定されたSMICに対しては、この部品の販売が禁止されることになる』、「SMICが軍事企業に指定されたため、このようなメンテナンスや交換ができなくなる可能性が高い」、深刻だ。
・『SMICの全ての半導体工場が停止する  露光装置、ドライエッチング装置、CVD装置の保守メンテナンスや部品の交換が不可能になることを説明したが、この事情は、AMATのスパッタ装置やCMP装置、KLAの各種検査装置など、他の装置でも同じである。加えて、12インチ用だけでなく、8インチ用の装置でも、事情は変わらない。 つまり、軍事企業に指定されたSMICは、工場の拡張・新設が困難になるだけでなく、現在稼働している月産23.4万枚の8インチ工場および月産24.6万枚の12インチ工場も、全て停止する危機に直面していることになる。。 過去には、2018年10月29日に、中国でDRAMを製造しようとしていたJHICCがELに掲載された。その後、JHICCは6000億円を投じたDRAM工場が2019年3月に停止し、同社は解散(倒産?)した。また、2018年5月16日にELに掲載されたファーウェイが窮地に陥っているのは、ご承知の通りである。 しかし、SMICが軍事企業に指定されたことのインパクトは、JHICCやファーウェイの比ではない。中国のエレクトロニクス産業にとって、そして中国政府にとって、想像を絶する甚大なダメージを与えることになる。 懸念されるのは、中国政府による対抗措置である。したがって、米国がSMICを軍事企業に指定したことは、新たな、そしてより過激化した米中ハイテク戦争の幕開けに他ならない。 (追記) 筆者が以上の原稿を書き終えてから、SMICが米国のブラックリストに掲載された翌日(12月4日)、中国政府系ファンドと共同出資会社を設立し、76億ドル(約7900億円)を投じて、12インチで月産10万枚の半導体工場を北京に建設すると発表した(日経新聞、12月4日)。しかし筆者は、このSMICの新工場は、米製の製造装置を導入することができず、日欧の装置の導入も難しいと思われるため、実質的に製造ラインを構築することができないと考えている』、「軍事企業に指定されたSMICは、工場の拡張・新設が困難になるだけでなく、現在稼働している月産23.4万枚の8インチ工場および月産24.6万枚の12インチ工場も、全て停止する危機に直面している」、影響は致命的だ。アメリカもいいところに目を付けたものだ。

第三に、12月8日付けJBPressが掲載した作家の黒木 亮氏による「米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63167
・『さる12月2日、米下院で「外国企業説明責任法(The Holding Foreign Companies Accountable Act)」が全会一致で可決された。これは、外国政府によってコントロールされるような額の出資を受けているか、役員に中国共産党のメンバーがいるかなどの情報を企業に求めるほか、米当局による会計監査状況の調査を3年連続で拒否した会社を上場廃止にするものだ。 法案には「外国企業」と名がついているが、実質的には「中国企業」を狙い撃ちにしたもの。法律が施行されれば、米国で上場している217社のうち少なくない数の中国企業が上場廃止となり、米国市場から追い出されるとも言われている。 すでに上院は5月に全会一致で可決しており、近々、トランプ大統領がサインして法律となる見通しである。 法案は一見すると、トランプ政権の対中強硬策の一環に思える。しかし、それだけではない根深い長年の問題がある。それゆえ、民主党が過半数を占める下院でも全会一致で可決されたのだ。問題を一言でいうと、中国企業が10年以上にわたって、米国の証券市場で滅茶苦茶をやってきたことである』、「中国企業が10年以上にわたって、米国の証券市場で滅茶苦茶をやってきた」、とはどういうことだろう。
・『リバース・テークオーバーと裏口上場  話は2005年前後にさかのぼる。この頃から中国企業は、体力の弱った米国の上場企業をリバース・テークオーバー(逆買収)して、米国での上場ステータスを手に入れる「裏口上場(back door listing)」を盛んにやった。中国企業であれば、上海や深圳の証券取引所に上場するのが普通だが、中国の上場審査が厳しく、かつ手続きも遅く、最長で2年半を要していた。これに対し、裏口上場なら手続きは半年程度で済み、米国での上場審査もバイパスできる。こうして2012年頃までに300を超える中国企業が米国の上場企業になった。 米国のほうでも中国企業を歓迎した。買収を仲介する投資銀行には巨額のアドバイザー手数料が入るし、米国市場で株式を発行した際には引受手数料も入る。やればやるほど儲かるので、資金調達をしたい中国企業や金持ちになりたい中国企業の経営者にアプローチし、「裏口上場という手があるよ」と囁いた。案件に関わる法律事務所や会計事務所も儲かった。米国の投資家も、急成長する中国の企業に投資したい一心で、こぞって株を買った。 米国の証券取引所も中国企業の上場に積極的に手を貸した。米国では、上場企業数が1996年のピーク時の8090社から半分程度に減ったので、取引所は手数料収入の減少に頭を悩ませていた。上場企業減少の原因は、上場しなくてもベンチャーキャピタルから容易に資金を調達できるようになったことや、エンロン事件を契機に制定されたサーベンス・オクスリー法が上場企業に厳格な財務内容の開示や内部統制を求めたため、企業が嫌がったことが挙げられる』、「裏口上場」は、当該の「中国企業」、「米国」の「投資銀行」などの関係者や「証券取引所」にはメリットがあったが、投資家はババを掴まされたことになる。規制は遅きに失したきらいがある。
・『米国市場で不正のオンパレード  こうして米国の上場企業となった中国企業は何をしたか? 売り上げや利益を水増しし、米国の投資家を騙して資金調達をした。そうやって私腹を肥やした経営者は、事件が発覚すると中国で雲隠れした。 たとえば、大連市に本社を置く、廃水・排煙処理設備の製造・サービス提供会社である「リノ・インターナショナル」(ナスダック上場)は、米国のカラ売り専業ファンド「マディ・ウォーターズ」から、架空の取引先を捏造して売り上げを膨らませていることや、中国当局に対して売り上げは1100万ドルと報告する一方、米国の有価証券報告書では約18倍の1億9260万ドルと報告していること、会社が1億ドルの資金調達をした日に、会社幹部がその金で350万ドル(約3億6000万円)の家を購入したことなど、様々な不正を指摘された。同社は2010年12月に上場廃止となった。 北京に本社を置く、水や廃水処理装置メーカー「デュオヤン・グローバル・ウォーター」(多元環球水務、ニューヨーク証券取引所上場)は、同じくマディ・ウォーターズから、売り上げは1億5400万ドルではなく約200分の1の80万ドルで、2009年の監査報告書は偽造されたものであると指摘された。また同ファンドは5回にわたって工場を観察し、製品の搬出も材料の搬入もまったくないことや、デュオヤン社が同社の会長が所有している北京の印刷会社に不正な支払いを行っていることなども指摘した。同社の株式は2011年10月に上場廃止になった。 その他、売り上げや現預金の額を水増ししていた、ソフトウェア開発会社「ロングトップ・フィナンシャル・テクノロジーズ」(2011年、上場廃止)、売り上げを水増ししていた肥料製造会社「チャイナ・グリーン・アグリカルチャー」(株価が200ドル台から2ドル台まで下落)、売り上げや現預金の額を水増しし、会計士に賄賂を渡してそれを隠ぺいしようとした広告会社「チャイナ・メディア・エクスプレス」(2011年、上場廃止)、売り上げを水増しした目論見書で資金調達をしていた旅行会社「ユニバーサル・トラベル・グループ」(2012年、廃業)、二重帳簿を作成し、豚の販売頭数や売り上げを膨らませていた家畜用飼料と豚の生産会社「アグフィード・インダストリーズ」(2012年、上場廃止)など、不正は枚挙にいとまがない。 かくして、2012年までに実に52の中国企業がカラ売り専業ファンドから不正を指摘され、そのうち32社が上場廃止になり、6社がSEC(米証券取引委員会)の登録抹消(株主数や取引量が極端に少なくなった時の扱いで、上場廃止に近い)となった。 その後も毎年のように複数の中国企業が不正会計で上場廃止となっており、累計すると100社を超えるまでになっている。今年に入ってからも、スターバックスの向こうを張って急成長し、中国全土に6912の店舗網を張り巡らし、一時は127億ドル(約1兆3208億円)の時価総額を誇った「ラッキン・コーヒー」(瑞幸珈琲)が、売り上げ水増しの発覚で、ナスダックに上場してから1年1カ月で上場廃止となっている。 当然のことながら、これらの会社や経営者は、検察、SEC、投資家などから刑事、民事で訴えられた。しかし、上場廃止になるような会社には資産らしい資産は残っていないので、民事ではほとんど何も取れないし、そもそも会社が中国にあるので、強制執行も容易ではない。経営者のほうも最初から中国にいる中国人で、米中間には犯罪人引渡条約がないので、米国に引き渡されることはない。レバノンに逃亡したカルロス・ゴーンのようなものだ』、確かに信じられないような「米国市場で不正のオンパレード」だ。
・『誰も監督しない“無法地帯”  株が上場廃止になって無価値になり、多大な損害をこうむった米国の投資家からは、「SECは何をやっているんだ」という怒りの声が上がった。 しかし、それら中国企業は、米国に上場してはいるが、会社も経営者も最初から最後まで中国にいるし、米国のSECが中国に乗り込んで行って監督するなどということは不可能である。また中国は企業の経営や財務に関する情報を国家機密に近いものとみなし、関係書類を国外に持ち出すことを禁じているので、中国企業は、中国の法律を盾にして書類の提出を拒否する。 一方で、中国当局はといえば、中国企業から税金くらいは徴収するが、上場は米国なので、米国の投資家保護など知ったことではなく、中国の上場企業に対して行うような監督をするつもりはさらさらない。 かくしてこれら中国企業は、米国のSECからも中国当局からも監督されない“無法地帯”にいるのをよいことに、やりたい放題をやったのである』、「これら中国企業は、米国のSECからも中国当局からも監督されない“無法地帯”にいるのをよいことに、やりたい放題をやったのである」、外国企業の「証券取引所」「上場」には投資家にとって想像以上のリスクがあるようだ。
・『板挟みになる監査法人  先に述べたロングトップ・フィナンシャル・テクノロジーズのケースでは、SECは同社の監査を行ったデロイト・トウシュ・トーマツの上海法人「デロイト・トウシュ・トーマツCPA Ltd.」(略称・D&T上海)に、「監査関係の書類を提出しないのは、サーベンス・オクスリー法と証券取引法違反である」として、米連邦裁判所に訴えた。 しかし、D&T上海は、「文書を提出すると中国の国家機密法違反になるので、両国政府で話し合ってほしい」と裁判で主張。裁判は2年近く続き、最終的にSECは、D&T上海から満足のいく書類が提出されたとして、2014年に訴えを取り下げた。 またSECは、別の複数の中国企業のケースに関し、D&T上海を含む世界4大会計事務所の各中国法人を連邦裁判所で訴え、2015年に裁判所の支持を得て、それぞれに50万ドルの罰金を科し、監査関係書類を提出させた。 このように連邦裁判所に訴えれば、監査書類は何とか出てくることは出てくるが、毎回監査法人に中国の法律を盾に抵抗され、しかも2年くらいの時間がかかって手遅れになることもある。こんな状態ではかなわんということで、今般の法案提出がなされたわけだ』、「D&T上海は、「文書を提出すると中国の国家機密法違反になるので、両国政府で話し合ってほしい」と裁判で主張」、「中国企業」にとっては、「中国の国家機密法」がガードしてくれていることになるようだ。
・『法案は中国を利するだけ?  今回の法案によって、米国での上場を取りやめる中国企業が少なからず出てくる可能性がある。特に、国有企業で株式の一部を米国に上場している、チャイナ・モバイル(中国移動通信)、ペトロチャイナ(中国石油天然気)、シノペック(中国石油化工)など、国家の中枢に関与している企業は、財務の詳細や政府との関係の実態を知られるのを嫌うはずだ。 すでに米中対立や今回の法案の影響を見越し、アリババ集団、ネットイース(網易)、JD.com(京東商城)などの大手企業が、香港市場に重複上場を済ませている。昨年11月以来、米国に上場している中国企業で新たに香港に重複上場した会社は10社に上る。 今後、上海、深圳を含め、中国市場に重複上場ないしは、米国を撤退して中国市場だけに上場する中国企業が増えることも予想される。 これまで中国企業に騙されてきた米国の投資家にとって朗報かもしれないが、米国の株式市場からみれば、巨額の時価総額が消失する可能性も意味する。 それとは逆に、自国の証券市場を強化していきたい中国政府はそうした動きを歓迎している。今般の法案で、米国の投資家保護が高まるのは間違いないが、皮肉なことに、中国を利することになるのかもしれない』、しかし、「中国企業」にとっては、資金調達の場が狭まるといったデメリットもありそうだ。
タグ:「好転はするが対中政策の基本路線は変わらない」 「中国企業」にとっては、資金調達の場が狭まるといったデメリットもありそうだ 法案は中国を利するだけ? 「中国企業」にとっては、「中国の国家機密法」がガードしてくれていることに D&T上海は、「文書を提出すると中国の国家機密法違反になるので、両国政府で話し合ってほしい」と裁判で主張 「バイデン政権で極めて微妙な新米中関係、中国メディア「3つの予測」」 姫田小夏 ダイヤモンド・オンライン (その14)(バイデン政権で極めて微妙な新米中関係 中国メディア「3つの予測」、米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省 SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに、米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に) 米中経済戦争 板挟みになる監査法人 外国企業の「証券取引所」「上場」には投資家にとって想像以上のリスクがあるようだ これら中国企業は、米国のSECからも中国当局からも監督されない“無法地帯”にいるのをよいことに、やりたい放題をやったのである 誰も監督しない“無法地帯” 米国市場で不正のオンパレード 裏口上場」は、当該の「中国企業」、「米国」の「投資銀行」などの関係者や「証券取引所」にはメリットがあったが、投資家はババを掴まされたことになる。規制は遅きに失したきらいがある 米国の証券取引所も中国企業の上場に積極的に手を貸した 引受手数料も入る。やればやるほど儲かる 買収を仲介する投資銀行には巨額のアドバイザー手数料が入る 中国企業は、体力の弱った米国の上場企業をリバース・テークオーバー(逆買収)して、米国での上場ステータスを手に入れる「裏口上場(back door listing)」を盛んにやった リバース・テークオーバーと裏口上場 中国企業が10年以上にわたって、米国の証券市場で滅茶苦茶をやってきた 外国政府によってコントロールされるような額の出資を受けているか、役員に中国共産党のメンバーがいるかなどの情報を企業に求めるほか、米当局による会計監査状況の調査を3年連続で拒否した会社を上場廃止にするもの 外国企業説明責任法 「米国で投資家を騙しまくった中国企業「排除法」可決 従わなければ中国企業の大半が米国で「上場廃止」に」 黒木 亮 軍事企業に指定されたSMICは、工場の拡張・新設が困難になるだけでなく、現在稼働している月産23.4万枚の8インチ工場および月産24.6万枚の12インチ工場も、全て停止する危機に直面している」、影響は致命的だ SMICの全ての半導体工場が停止する SMICが軍事企業に指定されたため、このようなメンテナンスや交換ができなくなる可能性が高い」、深刻だ 現在稼働中のSMICの半導体工場はどうなる? 日欧も「出荷停止になる可能性がある 軍事企業に指定されたSMICは、米製の装置の輸出が禁止される上に、日本や欧州の装置も出荷停止になる可能性がある。したがって、SMICは、12インチの工場を拡張したり新設することが極めて困難になる SMICが半導体工場を拡張・新設する場合の障害 「中国製造2025」 SMICの半導体工場の月産キャパシティ 中国台頭の抑え込みは変わらない 製造業の米国内回帰も進める 対中関係において、トランプ氏は非合理的な強硬を示し、バイデン氏は理性的な強硬を示すだろう トランプ政権が関税で中国経済に圧力をかけたのとは異なり、バイデン政権では多種多様な手段で米中関係を調整するだろう アントニー・ブリンケン氏 」は国務長官の候補といわれている 湯之上 隆 JBPRESS 「バイデン政権」が現実にどう出てくるのか、要注目だ とうとう軍事企業に指定されたSMIC バイデン政権で米中関係はどうなる? 「米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機 米国防総省、SMICを人民解放軍支援企業としてブラックリストに」
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