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テスラ(その1)(テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある、焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」、コラム:ビットコインで方針一転 テスラの根深いガバナンス問題、テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点) [産業動向]

今日は、テスラ(その1)(テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある、焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」、コラム:ビットコインで方針一転 テスラの根深いガバナンス問題、テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点)を取上げよう。なお、EVでは、5月20日に取上げた。

先ずは、本年4月19日付け東洋経済オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/422534
・『テスラの時価総額はトヨタの3倍  テスラは、自動車のハードとソフトの切り離しに成功し、「購入後にインターネット経由でアップグレードできる」という新しいビジネスモデルを確立した。EV(電気自動車)や自動運転の時代になると、自動車メーカーの付加価値の源泉はハードからソフトに移行せざるをえないが、それを実現する仕組みができたのだ。テスラの時価総額がトヨタを抜いたのは、そのためだ。 アメリカのEV専業の自動車メーカー、テスラの株価は、2020年1月には100ドル程度だったが、2021年1月末には880ドルになった。 その時価総額は、2020年1月末に1000億ドル(約10兆9900億円)を突破し、フォルクスワーゲンを抜いた。そして、7月1日には、トヨタ自動車を抜いて、自動車メーカーとして世界第1位になった。 2021年4月中旬の株価は680ドル程度。時価総額は6498億ドルで、トヨタ自動車の2157億ドルの約3倍だ。 テスラの年間販売台数は、わずか50万台だ。それに対して、トヨタは1000万台を超える。利益も、トヨタが年間2兆円超であるのに対して、テスラはごく最近まで赤字を続けていた。 それなのに、なぜ時価総額が世界一になるのだろうか? これからは、ガソリン車の生産は禁止され、自動車はEVになるからか?しかし、EVを生産しているのはテスラだけではない。 「単なるバブルではないか」、と多くの人が考えるだろう。事実、そのように解説した記事もたくさんある。 しかし、テスラの株価急騰は、バブルだとして切り捨ててしまうことのできない、非常に重要な変化を反映している。 テスラは、これまでなかったまったく新しいビジネスモデルを構築しつつあるのだ。 このことを知るには、テスラ社のウェブサイトにアクセスして、「コネクティビティ」や「アップグレード」というページを見るとよい。) 「コネクティビティ」とは、音楽やメディアのストリーミング、交通情報表示など、データを必要とする機能の利用だ。購入時に「スタンダード」であっても、購入後に月額990円を払えば、機能がより高度の「プレミアムコネクティビティ」を利用できる。 「アップグレード」とは、購入後に、車の機能アップさせることだ。購入者のニーズに合わせてテスラ車をカスタマイズできる。 来店する必要はなく、Wi-Fiに接続して、ボタンを押すだけでよい。 つまり、購入した後で、車を買い替えたりハードウェアを取り替えたりすることなく、機能をアップデートすることができるのだ。 例えば、「Model S」には、低価格モデルの「Model S 60」と高価格モデルの「Model S 75」がある。低価格モデルのバッテリーの容量は、高価格モデルのそれより小さい。 「Model S 60」を購入したユーザーが、使っているうちに、「やはり大容量バッテリーのほうがよかった」と考えたとする。そして、購入したときよりは所得も増えていたとする。 そんなときには、Wi-Fiに接続してアップグレードのボタンを押し、9000ドル払うことに同意すれば、それで完了だ』、「テスラの時価総額はトヨタの3倍」は、私も「単なるバブルではないか」と考えていたが、「自動車のハードとソフトの切り離しに成功し、「購入後にインターネット経由でアップグレードできる」という新しいビジネスモデルを確立した」、とは確かに画期的で、時価総額もそれを反映している可能性がありそうだ。
・『自動運転もインターネット経由で可能に  購入後にアップできるのは、以上だけではない。 購入したときにつけなかったナビが必要になったら、簡単に購入できる。 クルマを買ったときには暖房シートをつけなかったが、その後寒い地域に転居して、必要になったとする。この場合も、ソフトウェアをアップデートするだけでよい。 さらに驚くべきことに、同じ手続きで、より高度な自動運転もできるようになるのだ。 自動運転には、レベル1からレベル5までのレベルがある。テスラの最新モデル車は、完全自動運転に必要な半導体をすでに搭載している。 また、「FSD(フルセルフドライビング)」という自動運転ソフトが提供されており、適時更新することで、より高度の自動運転が可能となる。 現在の自動運転機能は高速道路など一定の条件下に限られているが、ソフトウェアの更新によって、複雑な市街地での自動運転技術も可能になるという(ただし、テスラ車が2021年末までにレベル5の完全自動運転機能を実現するのは難しいと見られている)。) 「購入した後で機能をアップグレードできる」と聞くと、最初は魔術のように思える。 だがよく考えてみると、スマートフォンでは、日常的にやっていることだ。新しいアプリをダウンロードすれば、新しい機能が使えるようになる。 また、ゲームアプリなどでは、「アプリ内課金」というものがある。 アプリのダウンロードと基本機能は無料。そして、追加機能を購入するのは有料という仕組みだ。 ソフトウェアであれば、いちいち修理工場に持っていかなくとも、インターネットを通じてアップデートできる。それはスマートフォンであろうが自動車であろうが、同じことだ。 テスラのビジネスモデルは、自動車版の「アプリ内課金」なのである。 テスラは、最初に高性能なモデルを製造し、つぎに機能を制限したモデルを割引料金で販売するのだ。 そして、購入後のアップグレードという方式を可能にすることによって、低価格モデルを簡単に提供し、それによって売り上げを伸ばすことができる』、「最初に高性能なモデルを製造し、つぎに機能を制限したモデルを割引料金で販売するのだ。 そして、購入後のアップグレードという方式を可能にすることによって、低価格モデルを簡単に提供し、それによって売り上げを伸ばすことができる」、確かに上手い方法だ。
・『ハードとソフトの切り離し  ここまできて、「納得がいかない」と首をひねる方が多いのではないだろうか? カーナビのアップグレードをインターネット経由でできるのは、わかる。自動運転も、内容は高度だが、ソフトウェアであることに変わりはないから、インターネット経由でアップグレードできるのもわかる。 しかし、バッテリーや暖房シートは、ハードウェアだ。 それらを、なぜインターネットでアップグレードできるのだろう? この手品の種明かしは、あっけないほど簡単だ。 低価格モデルである「Model S 60」には、高価格モデルである「Model S 75」に搭載されているのと同じバッテリーが、最初から搭載されているのだ。 ただし、ソフトウェアを調整して、その容量を20パーセント落としているのである。 だから、低価格モデルと高価格モデルを生産するために、テスラは、バッテリーパックを2種類作ったり、組み立てラインを2種類用意したりする必要はない。プログラムに数行を付け加えるだけで終わりだ。 ただし、こうしたことができるのは、車のハードウェアとソフトウェアの切り離しを実現できたからだ。 いまの自動車には、ソフトウェアによって制御される部品が多数ある。しかし、システムごとに、ハードとソフトが結びついており、切り離せない。 これでは、上で述べたようなことはできない。 テスラは「モデル3」以降、ハードとソフトの切り離しを実現したのだ。これは、伝統的メーカーよりも6年以上も早かった。そのために、上で述べた「購入後のアップグレード」という新しいビジネスモデルを導入できたのである。) 以上のようなシステムを通じて、テスラは顧客の車両から走行データを収集できる。 これは、自動運転のシステムを開発するための貴重なビッグデータになる。 走行距離でいえば、グーグルの子会社であるウェイモが圧倒的なデータを蓄積している。しかし、テスラは顧客の車両からそれよりさらに多くのデータを収集している可能性がある。 だから、自動運転の分野でも、テスラが世界のトップになる可能性がある。 2019年、テスラは、完全自動運転技術を使ってライドシェア市場に参入する構想を発表した。これは、「テスラネットワーク(自動運転タクシーネットワーク)構想」と呼ばれる。 これを用いると、テスラ車の所有者は、自分が乗らない時間には、自分の車を自動運転モードのタクシーとすることによって、収益を得ることができる。 また、テスラは、Uberと同じように、利用のたびに顧客からプラットフォーム料金を徴収できるだろう。 これも、テスラの収益に寄与することになる』、「低価格モデルである「Model S 60」には、高価格モデルである「Model S 75」に搭載されているのと同じバッテリーが、最初から搭載されているのだ。 ただし、ソフトウェアを調整して、その容量を20パーセント落としているのである。 だから、低価格モデルと高価格モデルを生産するために、テスラは、バッテリーパックを2種類作ったり、組み立てラインを2種類用意したりする必要はない。プログラムに数行を付け加えるだけで終わりだ。 ただし、こうしたことができるのは、車のハードウェアとソフトウェアの切り離しを実現できたからだ」、「ハードウェアとソフトウェアの切り離し」とは画期的だ。「「テスラネットワーク・・・構想」・・・を用いると、テスラ車の所有者は、自分が乗らない時間には、自分の車を自動運転モードのタクシーとすることによって、収益を得ることができる」、面白い構想だ。
・『ソフトウェアの価値を利用できるこれまでの自動車産業は、ハードウェアの生産だった。 EVになると部品数が劇的に減少し、組み立ても容易になることから、ビジネスモデルの再構築が必要といわれてきた。 それは、ソフトウェアによって付加価値を生むような仕組みだ。 自動運転になれば、ソフトウェアの比重が増大し、自動車産業は、ハードウェアの生産ではなく、ソフトウェアを付加価値の源泉とせざるをえなくなる。 現在のような系列構造と巨大な生産体系を維持しようとすれば、制御不能なレガシーになってしまう危険がある。 テスラは、以上で述べたビジネスモデルを開発したことにより、ソフトウェアによって収益をあげることに成功したのだ。 ソフトウェアとデータに利益の源泉が移れば、爆発的な成長が可能になる。これこそが、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる企業群が実現したことだ。テスラは、自動車の生産において、そのことを可能にしつつある。 その時価総額が急激に増加している基本的な理由は、ここにある。 日本の自動車産業は、このように大きな変化に対応できるのだろうか?』、「日本の自動車産業」はエンジンというレガシーを抱えているだけに、「対応」は容易ではなさそうだ、

次に、4月24日付けロイター「焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/tesla-china-idJPKBN2CA0KY
・『テスラが販売台数の急増に見合うサービス態勢を整えることに四苦八苦していた中、中国でテスラへの反感がこれまでにじわじわと蓄積されていた以上、起こるべくして起きた事態とも言える。 テスラはメディアによる一斉攻撃を浴び、規制当局の「お叱り」も受けた。これは外国の大手ブランドにとって中国がいかに危険な場所になり得るか、そして国家の厳しい統制を受けたメディアが批判姿勢に転じた場合、たった1つの苦情案件処理の間違いがいかに大変な危機に転じ得るかを物語っている。 またテスラと言えば業界の慣習を顧みないことで知られ、その象徴的存在が創業者のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)だ。めったに誤りを認めない企業文化は米国でこそ、それなりのファンを獲得しているものの、中国では逆効果でしかない。マスク氏の名声ゆえに、中国政府は外国自動車メーカーとして初めてテスラに地元企業と合弁なしの事業展開を認めたのは確かだが、今やテスラはずっと長い歴史を持つライバルメーカーたちが何年も前に得た教訓を学びつつある。 テスラが直面するトラブルは、主に同社の北米事業に関係しているとはいえ、マスク氏や経営幹部らが認識してきた問題の大きさも浮き彫りにしている。ハードウエアに不具合が生じた場合に車両を修理する能力が、猛スピードで伸びる販売台数に圧倒されてしまったのだ。 カークホーン最高財務責任者(CFO)は1月、投資家に対して「サービスの拡充がテスラの将来戦略にとって本当に大事になっている」と認めた。 では今週、テスラはどんな事態に見舞われたのか。発端は上海国際モーターショーが始まった19日、ブレーキが効かないという苦情に対するテスラ側の対応に怒った1人の顧客女性がテスラの展示車両の屋根に上り、不満を叫んだことだ。この動画はソーシャルメディアで拡散された。 騒動がさらに拡大したのは、テスラの対外関係担当バイスプレジデント、グレース・タオ氏がこの女性が「やらせ」ではないかと疑問を呈した後だった。 タオ氏は地元メディアのインタビューで「事実は分からないが多分、彼女はかなりのプロで、(誰かが)背後にいるはずだと思う。われわれは妥協するつもりはない。これは新車開発のプロセスにすぎない」と発言。直後にテスラはあわてて火消しに走り、報道の撤回を求めてきた、とこのメディアが20日、メッセージアプリの微信(ウィーチャット)で明かした。 <次第に弱気化> テスラのコメントは次第に「前非を悔いる」姿勢へと転じていく。当初の「妥協せず」から20日は「謝罪と自主的な調査」の表明に変わり、そして21日夜には「規制当局と協力して調査」していると説明した。 国営新華社通信は、テスラの謝罪は「不誠実」だと述べた上で、「問題のある上級幹部」の更迭を要求。共産党機関紙、人民日報系のタブロイド「環球時報」もタオ氏の発言を取り上げてテスラの「大失態」と呼び、中国に進出している外国企業にとって1つの教訓になると解説した。 中国国営中央テレビ(CCTV)の報道番組の元総合司会者で2014年にテスラに入ったタオ氏には連絡が取れず、テスラもさらなるコメント要請には応じていない。 調査会社シノ・オート・インサイツのアナリスト、テュー・リー氏は「中国ではテスラ車の品質とサービスに関する不平不満がソーシャルメディア上にずっと書き込まれている。そのほとんどを同社の地元チームは20日まで無視してきたようだ」と述べた。 中国で販売されるテスラ車は、同社の上海工場で生産されており人気が高い。世界一の大きさを持つ中国EV市場において、テスラの販売シェアは30%を占める』、これは確かに広報対応のお粗末さによる部分も大きいようだ。
・『<マスク氏は沈黙> だがテスラへのプレッシャーは積み重なっていた。 先月には、中国人民解放軍が車載カメラなどから軍事機密が漏れる懸念を理由にテスラ車の利用を禁止した、と複数の関係者がロイターに語った。その翌日、マスク氏はオンラインイベントで「もしテスラが中国であれどこであれ、スパイ活動のために車両を使っていれば、工場は閉鎖されてしまう」と強調し、すぐにスパイ行為を否定した。 テスラは昨年、米国の広報チームをほとんど解体したようだが、中国では引き続き広報担当者を雇用している。 それでも外部との対話に関する限り、テスラが大きく依存しているのはマスク氏のツイッターだ。マスク氏のアカウントは5000万人超のフォロワーを抱えている。ただ22日までの時点で、今回の中国における問題でマスク氏は沈黙したまま。一方、短文投稿サイトの微博(ウェイボ)にはテスラ車オーナーから突然の加速やハンドルの不調といった品質面のクレームが殺到している。 環球時報の胡錫進編集長は22日、テスラを中国から追い出すつもりはないと強調。「われわれの究極のゴールは、外国企業に中国市場へ適応し、中国の法規制をしっかり守るとともに、中国の文化と消費者を尊重して中国経済にとってプラス要素になってもらうことにある。それが教訓であれ支援であれ、全ては同じ目標を示している」と述べた』、「今回の中国における問題でマスク氏は沈黙したまま」、当面、「沈黙」を続ける方がよさそうだ。
「コラム
第三に、5月15日付けロイター「ビットコインで方針一転、テスラの根深いガバナンス問題」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/tesla-bitcoi-breakingviews-idJPKBN2CV0BK
・『暗号資産(仮想通貨)ビットコインは、最も名高い応援団メンバーを失った。米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が12日、ビットコインによるEV購入の受け付け停止をツイッターで表明したのだ。その理由として「採掘(マイニング)と決済のための化石燃料、特に石炭の使用が急増していること」を挙げた。マスク氏の言い分は正しい。だがそうした決定は、ビットコイン自体よりもテスラが抱える問題を、より浮き彫りにしている。 マスク氏は業界の事情を薄々知っている誰かから、ビットコイン採掘のための発電に「ダーティー」なエネルギーが膨大に必要だと教わったのかもしれない。実際、ケンブリッジ大学オルタナティブ金融センターによる調査の最新データを見ると、ビットコイン採掘者が現在使用している電力は年間ベースで147テラワット時と、英国の年間電力消費のほぼ半分に達することが分かる。採掘者が使う電力のうち、大部分が水力である再生可能エネルギー発電の比率は39%にすぎない。 マスク氏は、温室効果ガス排出量ゼロのエネルギー導入を加速する企業の「テクノキング」を自称する人物だ。3カ月前にビットコインを支払い手段として受け入れると決めた時、その彼が電力使用の実態を知らなかったか、あえて軽視していたことになる。 「マスター・オブ・コイン」の肩書を持つカークホーン最高財務責任者(CFO)もこの計画に同意した。カークホーン氏は第1・四半期決算発表後の電話会議で、テスラが手軽でリスクの低いリターンを得る手段として現金15億ドル(約1650億円)をビットコインに換えたと説明した。日々2桁台の変動率を示すビットコインについて、恐るべき油断ぶりを露呈する発言だ。 ビットコインの受け付け停止という「手のひら返し」は、テスラのCEOにして筆頭株主であるマスク氏への監視が相変わらず緩い実態を強く示唆している。米金融規制当局が改善を働きかけてきたが、その甲斐もなかった。 マスク氏は以前、EV生産で何度も「大風呂敷」を広げた挙げ句、納車目標を達成することができなかった。マスク氏が2016年に手掛けた太陽光発電企業の買収は、いとこが設立した同社の救済目的だったのではないかとの疑念もくすぶっている。その2年後にマスク氏は、テスラの非公開化を検討しているとツイッターに投稿し、証券法に違反。2000万ドルの罰金を支払った上に、会長職を退任せざるを得なくなった。 マスク氏のこうした振る舞いを許したのは、同氏の友人や家族で固められた取締役会の怠惰だ。取締役の構成はその時からある程度変化し、年金積立金管理運用独立法人(GPIF)の最高投資責任者だった水野弘道氏など、適格な人物が社外取締役に加わっている。とはいえこの「新体制」でさえマスク氏の行動をそれほど制御できていないのは、何とも心配すべき兆候だ。 ●背景となるニュース *暗号資産(仮想通貨)ビットコインは12日、価格が一時13%急落した。テスラのマスク最高経営責任者(CEO)が、ビットコインでの電気自動車(EV)購入受け付けを停止するとツイッターに投稿したことが原因。マスク氏は「ビットコインの採掘(マイニング)と決済で化石燃料、特に石炭の使用が急増していることをわれわれは懸念している」とつぶやいた。 *テスラは、採掘作業がより持続可能なエネルギーに移行すればすぐにこの受け付け停止措置を解除する方針。マスク氏は、エネルギー消費の少ない他の暗号資産にも目を向けていると述べた。 *テスラは2月8日、それまでに15億ドル相当のビットコインを購入したことを明らかにするとともに、決済でビットコインを受け入れる意向を示した。同社はその後、保有分の約1割を売却した。マスク氏は今回、テスラは残りのビットコインを売るつもりはないと明言した。(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)』、「ビットコイン採掘者が現在使用している電力は・・・英国の年間電力消費のほぼ半分に達する」、とは確かに壮大な無駄だ。しかし、「マスク氏」がそんなことも知らずにいたとも思えない。いずれにしろ、同氏の発言のブレにより「ビットコイン」価格が乱高下させたのは、好ましいことではない。

第四に、7月12日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点」を紹介しよう。
・『2019年8月のある日。ベンジャミン・マルドナドさんは10代の息子を乗せてカリフォルニア州の高速道路を運転していた。サッカー大会の帰りだった。前を走っていたトラックが速度を落としたため、方向指示器を点滅させて右に車線変更した数秒後、マルドナドさんの運転するフォード「エクスプローラー」は、運転支援システム「オートパイロット」を使って時速約100キロメートルで走行していたテスラ「モデル3」とぶつかった』、なるほど。
・『衝突の一瞬前までテスラ車を減速せず  このテスラ車が撮影した6秒間の動画および同車に記録されたデータからは、オートパイロットも運転手も、衝突のほんの一瞬前まで車を減速させていなかったことがわかる。 オートパイロットとは、車両が自らステアリング、ブレーキ、アクセルを操るというテスラご自慢のシステムだ。警察の報告書によると、助手席に乗っていたジョバニ・マルドナドさん(15)はシートベルトを着用しておらず、車外に投げ出されて死亡した。 テスラの主力工場から7キロと離れていない場所で起きたこの事故は、テスラを相手取った訴訟に発展している。オートパイロット絡みの事故は本件も含め全体として増えており、技術的な欠陥を指摘する声が強まっている。ライバルメーカーが採用する同様のシステムの開発にも疑問符がつく可能性がある。 2003年に設立されたテスラとそのCEOイーロン・マスク氏は、自動車業界に派手な挑戦を挑み、熱狂的なファンや顧客を巻き込んで、既存の自動車メーカーも一目を置かざるをえない電気自動車の新たなスタンダードをつくり出している。テスラの時価総額は現在、大手自動車メーカー数社分を足し合わせた額よりも大きくなっている。) だが、オートパイロットに関連した事故は、そうしたテスラの地位を脅かす要因ともなりかねない。規制当局が行動に乗り出す可能性が浮上しているためだ。アメリカ運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は現在、オートパイロットが関連した事故約20件について調査を進めている。 2016年以降、オートパイロットが障害物の検知に失敗して発生した事故で、テスラ車を運転していた人の少なくとも3人が死亡している。うち2件は、高速道路を横切るトレーラーに対してオートパイロットがブレーキをかけなかったケース。もう1件は、コンクリート壁を認識できずに激突したケースだ。 NHTSAは6月、2016年以降にオートパイロットが関与した8件の事故で少なくとも10人が死亡したことを示すリストを公開した。ここにはジョバニ・マルドナドさんの死亡事故は含まれていない』、「2016年以降にオートパイロットが関与した8件の事故で少なくとも10人が死亡」、「事故」が予想以上に多いことに驚かされた。
・『事故を未然に防ぐシステムのはずが…  テスラの信用は揺らぎ、自動運転の専門家からは「マスク氏とテスラが唱えてきたほかの主張も疑問視せざるをえない」といった声があがるようになっている。例えばマスク氏はこれまでに何度も、テスラは完全自動運転の完成に近づいていると公言してきた。完全自動運転とは、ほとんどの状況下で車両の自律運転が可能となる技術を指す。テスラ以外の自動車メーカーやテクノロジー企業が「実現は何年も先になる」としている技術だ。 マスク氏とテスラは、数回にわたるコメントの求めに応じなかった。 オートパイロットは「自動運転システム」ではない。車線変更などの運転操作を代行し、事故を未然に防ぐ「運転支援」を目的としたソフトウェア、カメラ、センサーによって構成されるシステムだからだ。テスラの幹部は、操作をコンピューターに委ねれば、ミスを犯したり、注意散漫になったりしがちな人間の運転よりも安全になると主張している。 テスラで人工知能部門の責任者を務めるアンドレイ・カーパシー氏は6月、自動運転に関するオンラインワークショップで次のように語った。「コンピューターは(運転中に)インスタグラムをチェックしたりしない」。 オートパイロットが作動している間、運転手が緊張を緩めるのはいいが、完全に気をそらすことは想定されていない。ステアリングをきちんと保持し、視線を道路から外さず、いざシステムが混乱したり、障害物や危険な交通状況を認識できなかったりした場合には、いつでも運転を代われるようにしておくことが大前提になっているわけだ。) ところがオートパイロットの作動中、前方を見ている以外にほとんどやることのなくなった運転手には、誘惑に負けて注意がおろそかになってしまう人もいる。ツイッターなどではこれまでも、テスラ車の運転席に座りながら読書したり眠ったりする運転手の動画が投稿されてきた。 問題が浮上すると、テスラはたいてい運転手を責めてきた。オートパイロットの使用中にステアリングから手を離したり、安全確認を怠ったりする運転手が悪い、という理屈だ。 だが、オートパイロットに関連した事故を調査した国家運輸安全委員会(NTSB)は、同システムには不適切な使用を防ぐ仕組みや運転手に対する効果的な監視が欠けていると結論づけている』、「オートパイロットは「自動運転システム」ではない。車線変更などの運転操作を代行し、事故を未然に防ぐ「運転支援」を目的としたソフトウェア、カメラ、センサーによって構成されるシステムだからだ」、誤解され易いところだ。「テスラの幹部は、操作をコンピューターに委ねれば、ミスを犯したり、注意散漫になったりしがちな人間の運転よりも安全になると主張」、しかし、「オートパイロットの作動中、前方を見ている以外にほとんどやることのなくなった運転手には、誘惑に負けて注意がおろそかになってしまう人もいる」、こうした建前と現実のギャップを無視する訳にはいかない。
・『他社に劣るゆるい監視システム  ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなどが提供している類似のシステムは、運転手の視線をカメラで追跡し、運転手がよそ見をすると警告が出る仕組みになっている。GMの運転支援システム「スーパークルーズ」では、警告が数回続くと機能がオフになり、運転手が自ら運転しなければならなくなる。 これに対しオートパイロットは運転手の視線を追跡せず、ステアリングに手を置いているかどうかだけを監視する。運転手がステアリングに手を置いている時間が1回あたり数秒だったとしても、作動し続ける場合もある。 カーネギーメロン大学で自動運転を研究するラジ・ラジクマール教授によれば、「簡単にだませるうえ、あまり一貫した監視がなされていないため、本質的に脆弱な監視システム」ということになる。 NHTSAは現時点で、オートパイロットの変更や無効化をテスラに強制しているわけではないが、6月には、この種のシステムに関する事故の報告をすべての自動車メーカーに義務づけると発表した。) テスラに対しては、今年に入ってからだけでもいくつもの訴訟が起こされている。フロリダ州キー・ラーゴで2019年に発生した事故に関連して今年4月に同州裁判所に提訴された事案も、その1つだ。 オートパイロットを作動させたテスラ「モデルS」がT字型交差点で停止できず、路肩に駐車していたシボレー「タホ」に衝突し、ナイベル・レオンさん(22)が死亡した。カリフォルニア州では、バンで走行中にオートパイロットを作動させていたテスラ車に後方から追突され、脊椎に重傷を負ったダレル・カイルさん(55)が5月に訴えを起こしている』、「テスラ」の「監視システム」が「オートパイロットは運転手の視線を追跡せず、ステアリングに手を置いているかどうかだけを監視する」というのは深刻な問題だ。私でも居眠り防止のため、視線の「監視システム」をつけている。
・『オートパイロットには欠陥があると提訴  ジョバニ・マルドナドさんが死亡した事故は、テスラ車に記録された動画とデータが入手可能になった珍しい事案だ。マルドナドさんの弁護士を務めるベンジャミン・スワンソン氏はテスラから動画とデータを入手し、ニューヨーク・タイムズと共有した。 ベンジャミン・マルドナドさんと妻のアドリアナ・ガルシアさんはテスラを相手取ってカリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所に提訴。訴状では、オートパイロットには欠陥があり、交通状況に対応できなかったとしている。運転手も被告とされた。 オートパイロットが誤作動、もしくは欠陥を抱えていたとの申し立てに対し、テスラはまだ裁判資料の中で反応を示していない。ただ、テスラの弁護士を務めるライアン・マッカーシー氏がスワンソン氏の事務所に送った電子メールは法廷に証拠として提出されており、その中でマッカーシー氏は次のように述べていた。責任はテスラでなく、運転手にある――。 事故を起こしたテスラ車に保存された動画には、同車が中央の車線を飛ばしながら左右の車を追い抜いていく様子が映っている。マルドナドさんがウィンカーを出したのは衝突の4秒前。エクスプローラーは左側の車線にとどまったまま方向指示器を4回点滅。5回目の点滅で中央のレーンへと車線を変えた。裁判資料によると、マルドナドさんはバックミラーでテスラ車が急接近してくるのに気づき、元の車線に戻ろうとしたという。 テスラ車はこの動画のほぼ最初から最後まで時速約111キロを維持していたが、衝突の直前には一時的に時速112キロを超過、速度を落としたのは最後の1秒だったことが車両のデータから明らかになっている。(執筆:Neal E. Boudette記者)』、「カリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所」での裁判の行方が大いに注目される。
タグ:「ビットコインで方針一転、テスラの根深いガバナンス問題」 野口 悠紀雄 東洋経済オンライン 「低価格モデルである「Model S 60」には、高価格モデルである「Model S 75」に搭載されているのと同じバッテリーが、最初から搭載されているのだ。 ただし、ソフトウェアを調整して、その容量を20パーセント落としているのである。 だから、低価格モデルと高価格モデルを生産するために、テスラは、バッテリーパックを2種類作ったり、組み立てラインを2種類用意したりする必要はない。プログラムに数行を付け加えるだけで終わりだ。 ただし、こうしたことができるのは、車のハードウェアとソフトウェアの切り離しを実現 「テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある」 「最初に高性能なモデルを製造し、つぎに機能を制限したモデルを割引料金で販売するのだ。 そして、購入後のアップグレードという方式を可能にすることによって、低価格モデルを簡単に提供し、それによって売り上げを伸ばすことができる」、確かに上手い方法だ。 「ハードウェアとソフトウェアの切り離し」とは画期的だ。「「テスラネットワーク・・・構想」・・・を用いると、テスラ車の所有者は、自分が乗らない時間には、自分の車を自動運転モードのタクシーとすることによって、収益を得ることができる」、面白い構想だ。 「テスラの時価総額はトヨタの3倍」は、私も「単なるバブルではないか」と考えていたが、「自動車のハードとソフトの切り離しに成功し、「購入後にインターネット経由でアップグレードできる」という新しいビジネスモデルを確立した」、とは確かに画期的で、時価総額もそれを反映している可能性がありそうだ。 テスラ (その1)(テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある、焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」、コラム:ビットコインで方針一転 テスラの根深いガバナンス問題、テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点) 「今回の中国における問題でマスク氏は沈黙したまま」、当面、「沈黙」を続ける方がよさそうだ。 これは確かに広報対応のお粗末さによる部分も大きいようだ。 「焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」 ロイター 「日本の自動車産業」はエンジンというレガシーを抱えているだけに、「対応」は容易ではなさそうだ、 「2016年以降にオートパイロットが関与した8件の事故で少なくとも10人が死亡」、「事故」が予想以上に多いことに驚かされた。 「テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点」 The New York Times 「ビットコイン採掘者が現在使用している電力は・・・英国の年間電力消費のほぼ半分に達する」、とは確かに壮大な無駄だ。しかし、「マスク氏」がそんなことも知らずにいたとも思えない。いずれにしろ、同氏の発言のブレにより「ビットコイン」価格が乱高下させたのは、好ましいことではない。 「オートパイロットは「自動運転システム」ではない。車線変更などの運転操作を代行し、事故を未然に防ぐ「運転支援」を目的としたソフトウェア、カメラ、センサーによって構成されるシステムだからだ」、誤解され易いところだ。 「テスラの幹部は、操作をコンピューターに委ねれば、ミスを犯したり、注意散漫になったりしがちな人間の運転よりも安全になると主張」、しかし、「オートパイロットの作動中、前方を見ている以外にほとんどやることのなくなった運転手には、誘惑に負けて注意がおろそかになってしまう人もいる」、こうした建前と現実のギャップを無視する訳にはいかない。 「テスラ」の「監視システム」が「オートパイロットは運転手の視線を追跡せず、ステアリングに手を置いているかどうかだけを監視する」というのは深刻な問題だ。私でも居眠り防止のため、視線の「監視システム」をつけている 「カリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所」での裁判の行方が大いに注目される。
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