日本の構造問題(その21)(日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか、太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革) [経済政治動向]
日本の構造問題については、6月2日に取上げた。今日は、(その21)(日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか、太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革)である。
先ずは、8月3日付け東洋経済オンラインが掲載した特約記者(在ニューヨーク)のリチャード・カッツ氏による「日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/444645
・『なぜ日本は、北朝鮮のすぐ下位である、196カ国中196位という順位につける結果となってしまったのだろうか――。2019年のGDPに占める対内直接投資(FDI)の割合を示すデータのことだ。東京都の長年にわたる努力は功を奏さなかったわけである。 FDIは、外国企業による日本での新規事業立ち上げや、合弁事業の設立、既存日本企業の実質的、あるいは完全買収の際に発生する。FDI残高とは、何十年にもわたって累積されたFDIの総額だ。政府は今年6月に、2030年までにFDI残高を現在の比率の約3倍である12%まで増大させるという目標を採択した。しかし、過去の方策が失敗した理由を理解せずに、どうやって政府は正しい戦略を選択できるというのだろうか』、「FDI残高」は何故、こんなに少ないのだろう。
・『小泉時代から「成長戦略の一環」とされてきたが FDIの増加は、小泉純一郎氏が首相だった時代から日本の成長戦略の一部とされてきた。これは、非常に理にかなっている。対内直接投資を増やさずして経済改革に成功した主要国はほとんどないからだ。成功談は、アジアの開発途上国から東欧の体制移行国にまで及ぶ。 また、この戦略は成熟経済にも効果を発揮する。日本人が北米に”移植”工場を設置した時の、デトロイトにおける自動車メーカーの発展を考えてほしい。デトロイトは、たとえ工場の組み立てラインの中断が必要となっても、欠陥を後から直すよりも、最初から防ぐほうが、コストがかからないことを学んだのだ。 外国企業が流入する際に経済に与える主な恩恵は、こうした企業がもつ高い効率性だけではない。それよりも、外国企業の新しいアイデアや戦略が、こうした企業にかかわるサプライヤーや顧客の業績を、また、日本の”移植”工場の事例では競合他社の業績までをも向上させる波及効果にあると言える。裕福な19カ国(累積FDI残高が1980年のGDP比6%から2019年のGDP比44%に増加した国)の調査では、FDIのレベルが高いほど、主に労働者一人当たりの生産量が向上し、経済成長が高まることを証明している。 小泉氏が2001年首相に就任した当時、FDI残高は典型的な富裕国ではGDPの28%であるのに対して、日本ではGDPのわずか1.2%だった。小泉氏は2003年に外国直接投資の倍増を約束し、2006年には、2011年までにGDPの5%という目標を設定した。ところが日本は、いまだこの目標を達成していない。 顕著な進展はあった。2008年、FDIは4.0%に増加した。だが、その勢いは停滞。FDIを倍増するという、安倍晋三前首相の2013年の約束にもかかわらず、2019年時点、FDIの対GDP比はわずか4.4%にとどまっている。一方、他の富裕国の中央値は44%に上昇している。 さらに悪いことに、日本政府はIMF、OECD および UNCTAD(国連貿易開発会議)が使用する「directional principle」とは異なる「asset/liability principle」と呼ばれる計上原則を用いることでいかに成功していなかったかを隠している。 2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダードとなる数値の計上では、それにはほど遠い24兆円だった。 財務省の使用する数値は一定の正当な会計目的があるが、例えば、海外関連会社から日本の親会社への貸付金など、実質的な直接投資と関係のない項目も含んでいる。 したがって、OECDの広報担当者が東洋経済の取材に対し、「(グローバルスタンダードである)directional principalのほうがFDIの経済的影響の分析に適している。国と産業ごとの直接投資の統計の推奨的な提示法だ」と言ったのもうなずける。問題を解決する第一歩が、問題があることを認識することならば、日本政府は困難に直面している』、「2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダードとなる数値の計上では、それにはほど遠い24兆円だった」、こんな悪どい粉飾までするとは、「財務省」は懲りない官庁のようだ。
・『他国ではFDIは跳ね上がっている FDIに対して抵抗から歓迎へと転換した他国では、FDIは急上昇している。では、なぜ日本の努力は報われていないのか。たとえば韓国では、外国直接投資のGDP比は、1998~99年のアジア通貨危機以前の2%から、現在、14%へと跳ね上がった。インドでは、1990年はわずか0.5%だったが、現在14%へと上昇し。東欧では共産主義崩壊後、7%からなんと55%へと大幅にアップした。 内閣府の対日直接投資推進会議は、6月の声明に、日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないことかもしれないと記した。したがって、ほぼすべての提言が「魅力的なビジネス環境」の構築を目的としている。しかし、この前提は正確ではない。 多数の調査によると、外国や多国籍企業は投資先のトップとして日本を挙げている。日本には大規模で豊かな市場、教育水準が非常に高い労働力と顧客基盤、高水準の技術、優れたインフラ、安定した政治経済システムがある。実際、アメリカの経営コンサルティング会社A.T. カーニーが世界の上級管理者を対象に実施した2020年の「海外直接投資信頼度指数調査」では、日本は富裕国27カ国中4位に入った。 経済学者である星岳雄氏と清田耕造氏の計算によると、日本が類似した特性を持つ他国と同様の経済活動を行えば、GDPにおけるFDIの比率はすでに39%という驚異的な数値に達していたようだ』、「日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないこと」ではなく、真相は以下にあるようだ。
・『日本ではM&Aのハードルが高い それでは、日本のこの悲惨な結果の原因はどこにあるのか? 主な要因は、固定した労働力、顧客基盤、ブランド名、サプライヤーなどを獲得するために健全な企業を買収するという、FDIの第一段階の実行が非常に困難である点だ。 典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない。これは主にインバウンドM&Aの規模が非常に小さいため、FDIの総額も非常に低くなっているのである。 報道では、外国企業が日産、シャープ、東芝などの経営が破綻した大企業を救済する驚くべきケースが取り上げられる。しかし、そうしたケースは例外的だ。外国人投資家のほとんどが、日本での成長が見込めるだけでなく、親会社のグローバル展開を推し進めるリソースを提供できるような優良企業を買収したいと考えている。大規模な人員削減を要する中小企業への投資は避ける。 残念ながら、最も魅力的なターゲットとなる企業は、「系列企業」という構造を持ったグループ企業に属しているため、ほとんどが手の届かない状況である。日本には2万6000社の親会社と5万6000社の関連会社があり、日本の全労働者の3分の1にあたる1800万人の従業員を雇用している。 これには、系列企業ではない下請け企業や密接な関係にあるメーカー内の魅力的な企業は含まれない。例えば、トヨタグループには1000社の関連会社に加えて、4万社のサプライヤーがあり、その大半が下請け企業である。1996年から2000年の間に外国企業が買収できたグループ企業内のメンバー企業はわずか57社であったのに対し、無関係の企業は約3000社であった。 買収についてのこうした壁は、戦後の数十年間、日本が外国企業からの支配をおそれていたことに由来する。1960年代、日本がOECDに加盟するために外資規制の正式な自由化を迫られた時、政府は「自由化対策」と称して、非公式に国内のM&Aを阻害する要素を設けることに尽力した。 その内容は、巨大企業とその企業の投資家との間の株式の持ち合いの復活、縦横の企業間における系列の強化など多岐にわたっている。形式的な障壁はほとんどなくなったが、こうした時代の遺産は今でもインバウンドM&Aを抑制している』、「典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない」、かつて「非公式に国内のM&Aを阻害する要素を設けることに尽力した」のが、「今でもインバウンドM&Aを抑制している」、身から出たサビだ。
・『大幅な雇用減より外国企業による買収の方が危険? さらに、多くの政策担当者に時代遅れの考え方がまだ残っている。例えば、対日直接投資推進会議が今年6月に発表した戦略文書では、インバウンドM&Aに関する記述が一切削除されている。その1年前に発表された中間報告書では、日本の中小企業の問題となっている後継者不足に対してインバウンドM&Aは大きな助けになると認知されていた。 この報告書では、2025年には60万社の黒字中小企業が、経営者が70歳を超えても後継者不足のため廃業せざるを得なくなる可能性があると指摘しており、これにより最大600万の雇用が失われる可能性がある。 雇用と技術資源の莫大な損失を食い止める努力の一環として報告書は、これらの中小企業が適切な海外のパートナーを見つけるのを支援し、かつ「第三者間の事業移転(M&A、合併と買収)を促進する」ための「何らかのメカニズム」が望まれるとしていた。これは大きな前進となるはずだった。 しかし、今年6月に内閣府が発表した最終文書では、海外からのM&Aの話はすべて消されていた。明らかに、誰かが大幅な雇用減よりもM&Aの話の方が危険だと考えたのだ。 政府当局者たちは、より多くの海外からのM&Aを望んでいるが、外国による買収に対する国民の警戒感も尊重しなければならないと主張することがある。しかし現実には、政府は国民感情の大きな変化に追いつきそこねているのだ。 2000年代半ばに実施された調査では、回答者の47%が、外国企業は日本経済にプラスの影響を与えていると答えており、マイナスの影響を与えていると答えたのはわずか8%だった。 かつてよく言われていた、外国の企業や投資家は日本企業を安く買って売ることで手っ取り早く稼ごうとする「ハゲタカ」だという見方をしていたのはわずか4%にすぎない。外国の企業で働きたいと答えたのは回答者の20%、働きたくないと答えたのも20%で、残りは意見を示さなかった』、「誰かが大幅な雇用減よりもM&Aの話の方が危険だと考えた」というより日本の中小企業は政治問題化し易い微妙なテーマなので、削除したのではなかろうか。
・『後継者問題に悩む企業は断るか? 政策立案者たちが今とは反対の立場を取って、海外からのM&Aを奨励することにしたとしたら、買収をまずどこから実現しようとするだろうか。後継者問題に悩む中小企業への支援は、いいデモンストレーション効果が期待できる。調査によると、中小企業は、同じ業界や同じ都道府県内の別の中小企業が外国企業の買収を受けて成功している例が見られれば、売却により積極的になるという。 日本にはすでに日本M&Aセンターのように、後継者不足による危機に直面している健全な中小企業のためのM&Aを手がける多くの企業が存在している。こうした企業により、M&Aという概念は高齢の企業オーナーたちにもより受け入れやすいものになっている。しかし、これまでのところ海外の買い手が関わっているケースはほとんど見られない。 JETROの「ジャパンインベスト」プログラムは、外国企業が日本において、まったく新しい事業を始めることを積極的に勧めている。しかし、外国企業が日本企業を買収することは、例え生き残りのためにM&Aが必要な中小企業ですら、積極的な取り組みはない。これは、上述の2020年の報告書に従って、JETROの任務に含まれるべきである。 中小企業の70歳の経営者は、自分が引退した時に従業員が失業するのを心配している。政府が買い手を紹介し、その買い手の意図が従業員の解雇ではなく会社の成長を支援することを保証するとしたら、外国企業への売却を頑固に拒絶する人はどれだけいるだろうか。このプロセスが一度始まれば、後継者問題のない企業にも、雪だるま式で効果が出るだろう。 政府が日本の成長に本気であるならば、外国FDIを真剣に考える時である。他の先進国のように日本でも外国M&Aが一般的になることが必要である。さもなければ、2030年が来ても、日本は196位である可能性がある』、「後継者問題」に悩む「中小企業」に、外国企業が魅力を感じるところがどの程度あるのだろう。実際には、それほどないのではなかろうか。
次に、8月5日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/08/post-152_1.php
・『<五輪開幕前、迷走に迷走を重ねた日本。その根本にある「病理」は太平洋戦争を避けられなかった当時から変わっていない> 東京五輪は、国民から100%の支持が得られないという状況下での開催となった。コロナ危機という要因があったとはいえ、ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい。 順調に物事が進んでいるときには大きな問題は発生しないが、非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となったが、一部からは太平洋戦争との類似性を指摘する声が出ている。80年前と今を比較するのはナンセンスという意見もあるが、事態の推移を考えるとこの類似性を否定するのは難しそうだ。 今回の五輪は当初から問題が山積していた。2015年7月、新国立競技場の建設費が当初予定を大幅に上回ることが判明したが、政府がうやむやに処理しようとしたことから批判が殺到。同年9月には公式エンブレムの盗作疑惑が発覚し、当初は盗作はないと強気の対応を見せたものの、選考過程の不透明性が指摘されるなど外堀が埋められ、使用中止が決断された。 18年には日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が仏捜査当局から贈賄容疑で捜査され、19年には記者からの質問を一切受け付けず、何の説明もないまま退任。21年2月には森喜朗大会組織委会長が女性蔑視発言をきっかけに辞任し、後任指名された川淵三郎氏にも密室人事批判が殺到。結局、川淵氏も役職を辞退してしまった』、「ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい」、「非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となった」、その通りだ。
・『佐々木氏、小山田氏、小林氏...... 開会式の演出では能楽師の野村萬斎氏を総合統括とするチームが解散を表明。その後、統括に起用されたクリエーティブディレクターの佐々木宏氏は、女性タレントを蔑視する演出プランがきっかけで辞任し、今度は楽曲担当で参加していた小山田圭吾氏が、障害者への虐待を自慢する発言が問題視され、やはり辞任に追い込まれた。 最後は、過去のホロコースト揶揄発言によって開会式ショーディレクターの小林賢太郎氏が解任されるというありさまである。 次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる。 太平洋戦争の直接的なきっかけは、アメリカのコーデル・ハル国務長官が突き付けた文書(いわゆるハルノート)だが、これは事実上の最後通牒であり、その時点で日本側に選択肢はなかった。 日米開戦の発端となったのは、1931年の満州事変と翌年のリットン調査団への対応だし、さらにさかのぼれば、南満州鉄道の日米共同経営をめぐって1905年に締結された桂・ハリマン協定の破棄が遠因であるとの見方もある。 日々の小さな交渉や対策の積み重ねとして事態は推移するので、単体として判断することには意味がない。日本政府が満州事変という軍部の違憲行為(統帥権干犯)を適切に処理していれば、先の大戦は避けられた可能性が高く、同じように国立競技場の問題が発覚した段階で組織のガバナンスを改革していれば、ここまでの事態には至らなかっただろう。 日本社会が抱える病理は戦後76年たった今でも変わっていない』、「次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる」、鋭い指摘で、同感である。
第三に、9月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281467
・『トヨタが「プリウス」を生み出すも その後が続かなかった 8月末の世界全体の株式時価総額ランキングを見ると、1位から3位がアップル、マイクロソフト、グーグル、5位と6位がアマゾン、フェイスブックだ。上位10社には、台湾積体電路製造(TSMC)や中国のテンセントもランクインする。わが国企業ではトヨタ自動車が40位、キーエンスが90位あたりに入る。 1986年、世界の半導体市場の上位10社のうち6社が日本企業だった。89年の世界トップの時価総額はNTTだった。当時、わが国の半導体、家電製品、通信機器が世界シェアを獲得し、さらなる成長への期待は高かった。 つまり、89年末までわが国経済は世界を席巻したが、その後の凋落が激しい。同年末に日経平均株価は3万8915.87円の史上最高値をつけた後、90年代に入ると資産バブルが崩壊した。株価と地価の下落によって景気は減速・停滞し、経済全体でバランスシート調整が進み、不良債権問題が深刻化した。その状況下、わが国経済全体で雇用の保護を重視する心理が強くなり、既存分野から成長期待の高いITなどへの生産要素の再配分が難航した。 その一方で、世界経済では中国、台湾、韓国などの企業が技術力を蓄積した。また、米国では75年に創業したマイクロソフト、76年のアップルに続き、IT革命が加速する中で94年にアマゾン、98年にグーグル、2004年にフェイスブックが誕生し、GAFAMと呼ばれるIT先端企業の筆頭格に成長している。 1990年代以降、わが国ではトヨタ自動車がハイブリッド自動車の「プリウス」を生み出したが、その後が続かなかった。また、キーエンスは世界経済の変化に合わせてファブレス体制を導入し、さらには実力主義を貫くことによって高い成長を実現した。しかし、わが国の産業全体としては世界各国の主要企業と互角に競争することが難しい状況が続き、時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった』、「時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった」、「89年の時価総額トップ10」は以下のように日本企業が7社もいたのに比べ、隔世の感がある。
https://www.m-pro.tv/2020/08/8689.html
・『国際分業を追い風に成長期待高まるアップル IT化の加速などによって世界経済は大きく変化している。最も大きな変化は、国際分業体制の加速だ。それによって、新しい発想をソフトウエアに落とし込み、効率的かつ迅速にデバイスに実装することが可能になった。 アップルはその考えを体現した企業だ。1997年に故スティーブ・ジョブズが経営トップに復帰する直前、アップルはマイクロソフトのウィンドウズOSのシェア拡大に押されて競争力を失い、倒産の危機にひんした。ジョブズは、iMacのヒットによってアップルを再建し、獲得した資金をiPhoneやiPadなどのソフトウエア開発やデザイン強化に再配分した。その上でアップルは機能実現に必要な部品を世界から集め、組み立て生産を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンなどに委託し、スピーディーに新しいモノを生み出す体制を構築した。 ジョブズが手本にしたのは、「ウォークマン」のヒットで世界の音楽機器市場を席巻したソニーだ。そこには、新しい発想の実現が人々に驚きと感動を与え、より高い成長をもたらすというジョブズの信念があった。ジョブズがアップルをソニーのような企業に成長させるために、アジアの新興国企業の成長は「渡りに船」と映っただろう。 それによって、アップルは得意とするソフトウエアの開発に注力して生産設備を持つ負担を軽減し、企業全体の資産の効率性を高め、得られた収益を新しいチップ開発や、動画配信などのサービスの強化、さらにはアップルウォッチなどを用いた健康・医療分野での事業展開につなげている。それが、アップルの高い成長期待を支えている。他の時価総額上位企業に関しても、より高付加価値のモノやサービスの創造のために自己変革に取り組み、獲得した資金をさらに成長期待の高い分野に再配分する姿勢が共通する』、確かに、「アップル」が「倒産の危機」から見事に立ち直ったのはさすがだ。
・『日本企業は自己変革を行い期待成長率を引き上げよ 時価総額トップ10位の顔ぶれは、世界経済の今後の展開を予想するために有用だ。今後、設計・開発と生産の分離は一段と加速するだろう。一つのシナリオとして、米国のIT先端企業はソフトウエア分野での開発力強化に取り組み、より大きな消費者の満足感の実現を目指す。そのために、デジタル家電の受託生産や最先端の半導体生産面で台湾企業の存在が高まる展開が描ける。 わが国企業に必要なことは、新しいモノを作り出す自己変革を行い、期待成長率を引き上げることだ。近年のわが国にはソニーや日立製作所のように、リストラを進めつつ、画像処理センサや社会インフラ関連のソフトウエア開発など、モノづくりの力を生かして成長期待の高い分野での事業運営体制を強化する企業がある。半導体の部材や精密な工作機械の分野でも競争力を発揮する企業は多い。 しかし、わが国産業全体で見ると、アップルのように最終製品の分野で世界的な競争力を発揮できる企業は少ない。どちらかといえば、わが国では過去の発想の延長で事業戦略を策定し、既存組織の維持を重視する企業が多いように思う。少子化、高齢化、人口の減少が進んでいることも重なり、わが国経済の先行きに関する悲観的な見方は多い。 先行きは楽観できないが、人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない。 また、2021年4~6月期のアップルの営業利益は241億2600万ドル(約2.6兆円)だ。付加価値ベースで見ても、GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている。期待成長率の高さは確かだが、主要投資家が低金利と過剰流動性(カネ余り)の環境が続くと楽観している影響も大きい。米国の金融政策の変更などによってGAFAなどの時価総額が是正される可能性は高いとみる』、「GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている」、さすがにそうだろう。しかし、「人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない」。「企業」には頑張ってほしいものだ。
先ずは、8月3日付け東洋経済オンラインが掲載した特約記者(在ニューヨーク)のリチャード・カッツ氏による「日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/444645
・『なぜ日本は、北朝鮮のすぐ下位である、196カ国中196位という順位につける結果となってしまったのだろうか――。2019年のGDPに占める対内直接投資(FDI)の割合を示すデータのことだ。東京都の長年にわたる努力は功を奏さなかったわけである。 FDIは、外国企業による日本での新規事業立ち上げや、合弁事業の設立、既存日本企業の実質的、あるいは完全買収の際に発生する。FDI残高とは、何十年にもわたって累積されたFDIの総額だ。政府は今年6月に、2030年までにFDI残高を現在の比率の約3倍である12%まで増大させるという目標を採択した。しかし、過去の方策が失敗した理由を理解せずに、どうやって政府は正しい戦略を選択できるというのだろうか』、「FDI残高」は何故、こんなに少ないのだろう。
・『小泉時代から「成長戦略の一環」とされてきたが FDIの増加は、小泉純一郎氏が首相だった時代から日本の成長戦略の一部とされてきた。これは、非常に理にかなっている。対内直接投資を増やさずして経済改革に成功した主要国はほとんどないからだ。成功談は、アジアの開発途上国から東欧の体制移行国にまで及ぶ。 また、この戦略は成熟経済にも効果を発揮する。日本人が北米に”移植”工場を設置した時の、デトロイトにおける自動車メーカーの発展を考えてほしい。デトロイトは、たとえ工場の組み立てラインの中断が必要となっても、欠陥を後から直すよりも、最初から防ぐほうが、コストがかからないことを学んだのだ。 外国企業が流入する際に経済に与える主な恩恵は、こうした企業がもつ高い効率性だけではない。それよりも、外国企業の新しいアイデアや戦略が、こうした企業にかかわるサプライヤーや顧客の業績を、また、日本の”移植”工場の事例では競合他社の業績までをも向上させる波及効果にあると言える。裕福な19カ国(累積FDI残高が1980年のGDP比6%から2019年のGDP比44%に増加した国)の調査では、FDIのレベルが高いほど、主に労働者一人当たりの生産量が向上し、経済成長が高まることを証明している。 小泉氏が2001年首相に就任した当時、FDI残高は典型的な富裕国ではGDPの28%であるのに対して、日本ではGDPのわずか1.2%だった。小泉氏は2003年に外国直接投資の倍増を約束し、2006年には、2011年までにGDPの5%という目標を設定した。ところが日本は、いまだこの目標を達成していない。 顕著な進展はあった。2008年、FDIは4.0%に増加した。だが、その勢いは停滞。FDIを倍増するという、安倍晋三前首相の2013年の約束にもかかわらず、2019年時点、FDIの対GDP比はわずか4.4%にとどまっている。一方、他の富裕国の中央値は44%に上昇している。 さらに悪いことに、日本政府はIMF、OECD および UNCTAD(国連貿易開発会議)が使用する「directional principle」とは異なる「asset/liability principle」と呼ばれる計上原則を用いることでいかに成功していなかったかを隠している。 2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダードとなる数値の計上では、それにはほど遠い24兆円だった。 財務省の使用する数値は一定の正当な会計目的があるが、例えば、海外関連会社から日本の親会社への貸付金など、実質的な直接投資と関係のない項目も含んでいる。 したがって、OECDの広報担当者が東洋経済の取材に対し、「(グローバルスタンダードである)directional principalのほうがFDIの経済的影響の分析に適している。国と産業ごとの直接投資の統計の推奨的な提示法だ」と言ったのもうなずける。問題を解決する第一歩が、問題があることを認識することならば、日本政府は困難に直面している』、「2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダードとなる数値の計上では、それにはほど遠い24兆円だった」、こんな悪どい粉飾までするとは、「財務省」は懲りない官庁のようだ。
・『他国ではFDIは跳ね上がっている FDIに対して抵抗から歓迎へと転換した他国では、FDIは急上昇している。では、なぜ日本の努力は報われていないのか。たとえば韓国では、外国直接投資のGDP比は、1998~99年のアジア通貨危機以前の2%から、現在、14%へと跳ね上がった。インドでは、1990年はわずか0.5%だったが、現在14%へと上昇し。東欧では共産主義崩壊後、7%からなんと55%へと大幅にアップした。 内閣府の対日直接投資推進会議は、6月の声明に、日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないことかもしれないと記した。したがって、ほぼすべての提言が「魅力的なビジネス環境」の構築を目的としている。しかし、この前提は正確ではない。 多数の調査によると、外国や多国籍企業は投資先のトップとして日本を挙げている。日本には大規模で豊かな市場、教育水準が非常に高い労働力と顧客基盤、高水準の技術、優れたインフラ、安定した政治経済システムがある。実際、アメリカの経営コンサルティング会社A.T. カーニーが世界の上級管理者を対象に実施した2020年の「海外直接投資信頼度指数調査」では、日本は富裕国27カ国中4位に入った。 経済学者である星岳雄氏と清田耕造氏の計算によると、日本が類似した特性を持つ他国と同様の経済活動を行えば、GDPにおけるFDIの比率はすでに39%という驚異的な数値に達していたようだ』、「日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないこと」ではなく、真相は以下にあるようだ。
・『日本ではM&Aのハードルが高い それでは、日本のこの悲惨な結果の原因はどこにあるのか? 主な要因は、固定した労働力、顧客基盤、ブランド名、サプライヤーなどを獲得するために健全な企業を買収するという、FDIの第一段階の実行が非常に困難である点だ。 典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない。これは主にインバウンドM&Aの規模が非常に小さいため、FDIの総額も非常に低くなっているのである。 報道では、外国企業が日産、シャープ、東芝などの経営が破綻した大企業を救済する驚くべきケースが取り上げられる。しかし、そうしたケースは例外的だ。外国人投資家のほとんどが、日本での成長が見込めるだけでなく、親会社のグローバル展開を推し進めるリソースを提供できるような優良企業を買収したいと考えている。大規模な人員削減を要する中小企業への投資は避ける。 残念ながら、最も魅力的なターゲットとなる企業は、「系列企業」という構造を持ったグループ企業に属しているため、ほとんどが手の届かない状況である。日本には2万6000社の親会社と5万6000社の関連会社があり、日本の全労働者の3分の1にあたる1800万人の従業員を雇用している。 これには、系列企業ではない下請け企業や密接な関係にあるメーカー内の魅力的な企業は含まれない。例えば、トヨタグループには1000社の関連会社に加えて、4万社のサプライヤーがあり、その大半が下請け企業である。1996年から2000年の間に外国企業が買収できたグループ企業内のメンバー企業はわずか57社であったのに対し、無関係の企業は約3000社であった。 買収についてのこうした壁は、戦後の数十年間、日本が外国企業からの支配をおそれていたことに由来する。1960年代、日本がOECDに加盟するために外資規制の正式な自由化を迫られた時、政府は「自由化対策」と称して、非公式に国内のM&Aを阻害する要素を設けることに尽力した。 その内容は、巨大企業とその企業の投資家との間の株式の持ち合いの復活、縦横の企業間における系列の強化など多岐にわたっている。形式的な障壁はほとんどなくなったが、こうした時代の遺産は今でもインバウンドM&Aを抑制している』、「典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない」、かつて「非公式に国内のM&Aを阻害する要素を設けることに尽力した」のが、「今でもインバウンドM&Aを抑制している」、身から出たサビだ。
・『大幅な雇用減より外国企業による買収の方が危険? さらに、多くの政策担当者に時代遅れの考え方がまだ残っている。例えば、対日直接投資推進会議が今年6月に発表した戦略文書では、インバウンドM&Aに関する記述が一切削除されている。その1年前に発表された中間報告書では、日本の中小企業の問題となっている後継者不足に対してインバウンドM&Aは大きな助けになると認知されていた。 この報告書では、2025年には60万社の黒字中小企業が、経営者が70歳を超えても後継者不足のため廃業せざるを得なくなる可能性があると指摘しており、これにより最大600万の雇用が失われる可能性がある。 雇用と技術資源の莫大な損失を食い止める努力の一環として報告書は、これらの中小企業が適切な海外のパートナーを見つけるのを支援し、かつ「第三者間の事業移転(M&A、合併と買収)を促進する」ための「何らかのメカニズム」が望まれるとしていた。これは大きな前進となるはずだった。 しかし、今年6月に内閣府が発表した最終文書では、海外からのM&Aの話はすべて消されていた。明らかに、誰かが大幅な雇用減よりもM&Aの話の方が危険だと考えたのだ。 政府当局者たちは、より多くの海外からのM&Aを望んでいるが、外国による買収に対する国民の警戒感も尊重しなければならないと主張することがある。しかし現実には、政府は国民感情の大きな変化に追いつきそこねているのだ。 2000年代半ばに実施された調査では、回答者の47%が、外国企業は日本経済にプラスの影響を与えていると答えており、マイナスの影響を与えていると答えたのはわずか8%だった。 かつてよく言われていた、外国の企業や投資家は日本企業を安く買って売ることで手っ取り早く稼ごうとする「ハゲタカ」だという見方をしていたのはわずか4%にすぎない。外国の企業で働きたいと答えたのは回答者の20%、働きたくないと答えたのも20%で、残りは意見を示さなかった』、「誰かが大幅な雇用減よりもM&Aの話の方が危険だと考えた」というより日本の中小企業は政治問題化し易い微妙なテーマなので、削除したのではなかろうか。
・『後継者問題に悩む企業は断るか? 政策立案者たちが今とは反対の立場を取って、海外からのM&Aを奨励することにしたとしたら、買収をまずどこから実現しようとするだろうか。後継者問題に悩む中小企業への支援は、いいデモンストレーション効果が期待できる。調査によると、中小企業は、同じ業界や同じ都道府県内の別の中小企業が外国企業の買収を受けて成功している例が見られれば、売却により積極的になるという。 日本にはすでに日本M&Aセンターのように、後継者不足による危機に直面している健全な中小企業のためのM&Aを手がける多くの企業が存在している。こうした企業により、M&Aという概念は高齢の企業オーナーたちにもより受け入れやすいものになっている。しかし、これまでのところ海外の買い手が関わっているケースはほとんど見られない。 JETROの「ジャパンインベスト」プログラムは、外国企業が日本において、まったく新しい事業を始めることを積極的に勧めている。しかし、外国企業が日本企業を買収することは、例え生き残りのためにM&Aが必要な中小企業ですら、積極的な取り組みはない。これは、上述の2020年の報告書に従って、JETROの任務に含まれるべきである。 中小企業の70歳の経営者は、自分が引退した時に従業員が失業するのを心配している。政府が買い手を紹介し、その買い手の意図が従業員の解雇ではなく会社の成長を支援することを保証するとしたら、外国企業への売却を頑固に拒絶する人はどれだけいるだろうか。このプロセスが一度始まれば、後継者問題のない企業にも、雪だるま式で効果が出るだろう。 政府が日本の成長に本気であるならば、外国FDIを真剣に考える時である。他の先進国のように日本でも外国M&Aが一般的になることが必要である。さもなければ、2030年が来ても、日本は196位である可能性がある』、「後継者問題」に悩む「中小企業」に、外国企業が魅力を感じるところがどの程度あるのだろう。実際には、それほどないのではなかろうか。
次に、8月5日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2021/08/post-152_1.php
・『<五輪開幕前、迷走に迷走を重ねた日本。その根本にある「病理」は太平洋戦争を避けられなかった当時から変わっていない> 東京五輪は、国民から100%の支持が得られないという状況下での開催となった。コロナ危機という要因があったとはいえ、ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい。 順調に物事が進んでいるときには大きな問題は発生しないが、非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となったが、一部からは太平洋戦争との類似性を指摘する声が出ている。80年前と今を比較するのはナンセンスという意見もあるが、事態の推移を考えるとこの類似性を否定するのは難しそうだ。 今回の五輪は当初から問題が山積していた。2015年7月、新国立競技場の建設費が当初予定を大幅に上回ることが判明したが、政府がうやむやに処理しようとしたことから批判が殺到。同年9月には公式エンブレムの盗作疑惑が発覚し、当初は盗作はないと強気の対応を見せたものの、選考過程の不透明性が指摘されるなど外堀が埋められ、使用中止が決断された。 18年には日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が仏捜査当局から贈賄容疑で捜査され、19年には記者からの質問を一切受け付けず、何の説明もないまま退任。21年2月には森喜朗大会組織委会長が女性蔑視発言をきっかけに辞任し、後任指名された川淵三郎氏にも密室人事批判が殺到。結局、川淵氏も役職を辞退してしまった』、「ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい」、「非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となった」、その通りだ。
・『佐々木氏、小山田氏、小林氏...... 開会式の演出では能楽師の野村萬斎氏を総合統括とするチームが解散を表明。その後、統括に起用されたクリエーティブディレクターの佐々木宏氏は、女性タレントを蔑視する演出プランがきっかけで辞任し、今度は楽曲担当で参加していた小山田圭吾氏が、障害者への虐待を自慢する発言が問題視され、やはり辞任に追い込まれた。 最後は、過去のホロコースト揶揄発言によって開会式ショーディレクターの小林賢太郎氏が解任されるというありさまである。 次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる。 太平洋戦争の直接的なきっかけは、アメリカのコーデル・ハル国務長官が突き付けた文書(いわゆるハルノート)だが、これは事実上の最後通牒であり、その時点で日本側に選択肢はなかった。 日米開戦の発端となったのは、1931年の満州事変と翌年のリットン調査団への対応だし、さらにさかのぼれば、南満州鉄道の日米共同経営をめぐって1905年に締結された桂・ハリマン協定の破棄が遠因であるとの見方もある。 日々の小さな交渉や対策の積み重ねとして事態は推移するので、単体として判断することには意味がない。日本政府が満州事変という軍部の違憲行為(統帥権干犯)を適切に処理していれば、先の大戦は避けられた可能性が高く、同じように国立競技場の問題が発覚した段階で組織のガバナンスを改革していれば、ここまでの事態には至らなかっただろう。 日本社会が抱える病理は戦後76年たった今でも変わっていない』、「次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる」、鋭い指摘で、同感である。
第三に、9月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281467
・『トヨタが「プリウス」を生み出すも その後が続かなかった 8月末の世界全体の株式時価総額ランキングを見ると、1位から3位がアップル、マイクロソフト、グーグル、5位と6位がアマゾン、フェイスブックだ。上位10社には、台湾積体電路製造(TSMC)や中国のテンセントもランクインする。わが国企業ではトヨタ自動車が40位、キーエンスが90位あたりに入る。 1986年、世界の半導体市場の上位10社のうち6社が日本企業だった。89年の世界トップの時価総額はNTTだった。当時、わが国の半導体、家電製品、通信機器が世界シェアを獲得し、さらなる成長への期待は高かった。 つまり、89年末までわが国経済は世界を席巻したが、その後の凋落が激しい。同年末に日経平均株価は3万8915.87円の史上最高値をつけた後、90年代に入ると資産バブルが崩壊した。株価と地価の下落によって景気は減速・停滞し、経済全体でバランスシート調整が進み、不良債権問題が深刻化した。その状況下、わが国経済全体で雇用の保護を重視する心理が強くなり、既存分野から成長期待の高いITなどへの生産要素の再配分が難航した。 その一方で、世界経済では中国、台湾、韓国などの企業が技術力を蓄積した。また、米国では75年に創業したマイクロソフト、76年のアップルに続き、IT革命が加速する中で94年にアマゾン、98年にグーグル、2004年にフェイスブックが誕生し、GAFAMと呼ばれるIT先端企業の筆頭格に成長している。 1990年代以降、わが国ではトヨタ自動車がハイブリッド自動車の「プリウス」を生み出したが、その後が続かなかった。また、キーエンスは世界経済の変化に合わせてファブレス体制を導入し、さらには実力主義を貫くことによって高い成長を実現した。しかし、わが国の産業全体としては世界各国の主要企業と互角に競争することが難しい状況が続き、時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった』、「時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった」、「89年の時価総額トップ10」は以下のように日本企業が7社もいたのに比べ、隔世の感がある。
https://www.m-pro.tv/2020/08/8689.html
・『国際分業を追い風に成長期待高まるアップル IT化の加速などによって世界経済は大きく変化している。最も大きな変化は、国際分業体制の加速だ。それによって、新しい発想をソフトウエアに落とし込み、効率的かつ迅速にデバイスに実装することが可能になった。 アップルはその考えを体現した企業だ。1997年に故スティーブ・ジョブズが経営トップに復帰する直前、アップルはマイクロソフトのウィンドウズOSのシェア拡大に押されて競争力を失い、倒産の危機にひんした。ジョブズは、iMacのヒットによってアップルを再建し、獲得した資金をiPhoneやiPadなどのソフトウエア開発やデザイン強化に再配分した。その上でアップルは機能実現に必要な部品を世界から集め、組み立て生産を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下のフォックスコンなどに委託し、スピーディーに新しいモノを生み出す体制を構築した。 ジョブズが手本にしたのは、「ウォークマン」のヒットで世界の音楽機器市場を席巻したソニーだ。そこには、新しい発想の実現が人々に驚きと感動を与え、より高い成長をもたらすというジョブズの信念があった。ジョブズがアップルをソニーのような企業に成長させるために、アジアの新興国企業の成長は「渡りに船」と映っただろう。 それによって、アップルは得意とするソフトウエアの開発に注力して生産設備を持つ負担を軽減し、企業全体の資産の効率性を高め、得られた収益を新しいチップ開発や、動画配信などのサービスの強化、さらにはアップルウォッチなどを用いた健康・医療分野での事業展開につなげている。それが、アップルの高い成長期待を支えている。他の時価総額上位企業に関しても、より高付加価値のモノやサービスの創造のために自己変革に取り組み、獲得した資金をさらに成長期待の高い分野に再配分する姿勢が共通する』、確かに、「アップル」が「倒産の危機」から見事に立ち直ったのはさすがだ。
・『日本企業は自己変革を行い期待成長率を引き上げよ 時価総額トップ10位の顔ぶれは、世界経済の今後の展開を予想するために有用だ。今後、設計・開発と生産の分離は一段と加速するだろう。一つのシナリオとして、米国のIT先端企業はソフトウエア分野での開発力強化に取り組み、より大きな消費者の満足感の実現を目指す。そのために、デジタル家電の受託生産や最先端の半導体生産面で台湾企業の存在が高まる展開が描ける。 わが国企業に必要なことは、新しいモノを作り出す自己変革を行い、期待成長率を引き上げることだ。近年のわが国にはソニーや日立製作所のように、リストラを進めつつ、画像処理センサや社会インフラ関連のソフトウエア開発など、モノづくりの力を生かして成長期待の高い分野での事業運営体制を強化する企業がある。半導体の部材や精密な工作機械の分野でも競争力を発揮する企業は多い。 しかし、わが国産業全体で見ると、アップルのように最終製品の分野で世界的な競争力を発揮できる企業は少ない。どちらかといえば、わが国では過去の発想の延長で事業戦略を策定し、既存組織の維持を重視する企業が多いように思う。少子化、高齢化、人口の減少が進んでいることも重なり、わが国経済の先行きに関する悲観的な見方は多い。 先行きは楽観できないが、人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない。 また、2021年4~6月期のアップルの営業利益は241億2600万ドル(約2.6兆円)だ。付加価値ベースで見ても、GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている。期待成長率の高さは確かだが、主要投資家が低金利と過剰流動性(カネ余り)の環境が続くと楽観している影響も大きい。米国の金融政策の変更などによってGAFAなどの時価総額が是正される可能性は高いとみる』、「GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている」、さすがにそうだろう。しかし、「人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない」。「企業」には頑張ってほしいものだ。
タグ:日本の構造問題 (その21)(日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか、太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」、GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革) 東洋経済オンライン リチャード・カッツ 「日本は「北朝鮮より下の196位」というヤバい実態 日本の対内直接投資はなぜこんなに低いのか」 「FDI残高」は何故、こんなに少ないのだろう。 「2013年から2020年、OECDによるとFDIのストックは6兆円しか増えていないが、財務省は3倍の20兆円の増加と報告。これにより日本政府は、安倍氏が設定したFDIの倍増を達成し、2020年に約40兆円となったと喧伝することができた。グローバルスタンダー「エレキ事業」は「本社」から独立させ、「音楽やゲームなどほかの事業と同等の位置づけにし」た。「「すべての事業がフラットにつながる新しいアーキテクチャーにより、グループとして連携強化の体制が整った」、果たして狙い通り「連携強化」につながるかを注目したい。 「日本の最大の問題は外国企業に魅力をアピールできていないこと」ではなく、真相は以下にあるようだ。 「典型的な富裕国では、FDIの80%が企業の買収・合併(インバウンドM&A)に割かれているが、日本ではわずか14%に過ぎない」、かつて「非公式に国内のM&Aを阻害する要素を設けることに尽力した」のが、「今でもインバウンドM&Aを抑制している」、身から出たサビだ。 「誰かが大幅な雇用減よりもM&Aの話の方が危険だと考えた」というより日本の中小企業は政治問題化し易い微妙なテーマなので、削除したのではなかろうか。 「後継者問題」に悩む「中小企業」に、外国企業が魅力を感じるところがどの程度あるのだろう。実際には、それほどないのではなかろうか。 Newsweek日本版 加谷珪一 「太平洋戦争の開戦に突き進んだ当時と変わらない日本「失敗の本質」」 「ほとんどの国民が支持するはずのイベントがここまでネガティブになってしまったのは、政府の意思決定が迷走に迷走を重ねたことが大きい」、「非常時になると全く機能しなくなるという日本社会の特質を改めて露呈する形となった」、その通りだ。 「次から次へと目を覆いたくなる事態が発生したわけだが、これは個別問題へのずさんな対応の積み重ねが大きく影響している。最初に発生した問題に対して責任の所在をはっきりさせ、適切に処理していれば、次の問題処理の難易度は下がる。だが、最初の問題をうやむやにすれば次の問題処理はさらに難しくなる」、鋭い指摘で、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「GAFA時価総額が日本株全体を上回った!日本に足りない自己変革」 「時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった」、「89年の時価総額トップ10」は以下のように日本企業が7社もいたのに比べ、隔世の感がある。 https://www.m-pro.tv/2020/08/8689.html 確かに、「アップル」が「倒産の危機」から見事に立ち直ったのはさすがだ。 「GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている」、さすがにそうだろう。しかし、「人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない」。「企業」には頑張ってほしいものだ。
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