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政府の賃上げ要請(その5)(日本人の給料が上がらないのは「企業が渋る」から 「骨太」打ち出した岸田首相が本当はすべきこと、大前研一「岸田首相が的外れな政策をやめない限り 日本人の給料は韓国や台湾よりずっと低くなる」 日本では まじめに働いても給料が上がらない、日本の賃金低迷は「21世紀の重商主義」の表れといえる理由) [経済政策]

政府の賃上げ要請については、2019年2月9日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その5)(日本人の給料が上がらないのは「企業が渋る」から 「骨太」打ち出した岸田首相が本当はすべきこと、大前研一「岸田首相が的外れな政策をやめない限り 日本人の給料は韓国や台湾よりずっと低くなる」 日本では まじめに働いても給料が上がらない、日本の賃金低迷は「21世紀の重商主義」の表れといえる理由)である。

先ずは、昨年6月15日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)のリチャード・カッツ氏による「日本人の給料が上がらないのは「企業が渋る」から 「骨太」打ち出した岸田首相が本当はすべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/596702
・『まさに「大山鳴動して鼠一匹」である。岸田政権は「新しい資本主義」を具体的な政策として打ち出すために、有識者や新興企業関係者などの改革派を交えて6カ月間奔走した。だが、6月7日に閣議決定されたその実行計画は、多くの参加者を大きく失望させる、形だけのものであった。 具体的には、岸田首相が掲げる「健全な成長と平等な所得分配は互いに必要である」という基本理念に対する自民党内や金融市場からの「社会主義を推進している」という非難に簡単に屈する形になった。「成長の果実を再分配しなければ、消費と需要は増えない」という主張は社会主義ではない。これは、標準的なマクロ経済学における、長年の評決なのである』、私も「岸田政権は「新しい資本主義」」には、当初は「お手並み拝見」と期待したが、裏切られた。
・『実質的な方策に欠けた中身  岸田首相の"譲歩"のせいで、政策文書は「成長と分配の好循環」の必要性を訴えるレトリックに終始しているが、それを実現するための実質的な方策は極めて乏しい。 岸田首相の妥協は、就任直後に年収1億円以上の人にキャピタルゲインと配当課税の強化を求めたことで株価が下落し、いわゆる「岸田ショック」を招いたことに端を発する。動揺した岸田氏は、この提案を撤回した。7月の参議院選挙を前にして、経団連を怒らせるわけにはいかないと判断したのだ、とある関係者は語る。 参院選での勝利を確実にするには、安倍晋三氏などの前任者が打ち出した失敗策の焼き直し案しか残されていない。 例えば、賃金について、岸田首相は企業に対して年3%の賃上げを求めるという過去の意味のない要求を繰り返した。また、最低賃金を時給1000円にするという長年の目標も繰り返したが、その達成期限は示さなかった。) 一定の賃上げを行った企業に与えられる一時的な減税の水準を引き上げることを提案したが、企業が一時的な税制優遇の見返りのために永続的な賃上げを行うことはないのは歴史が証明している。また、看護師など特定の職業に就く公務員の賃上げも約束した。 成長戦略の重要な要素――新興企業の数を今後5年間で10倍に増やす――に言及が及ぶと、改革者たちの不満はさらに高まった。科学技術・イノベーション会議が主導する官民合同チームは、日本の起業率を低く抑えている主要な問題点(銀行のような重要な問題は除外されているが)について、第一級の分析を行った。 例えば、初期段階の資金を提供する「エンジェル投資家」に対する税制優遇措置、新興企業が必要とする収入と信用を与える政府調達、資金難の新企業が優秀な人材を引き寄せるためのストックオプションの利用などだ。だが、最終文書では、これらの課題に関する具体的な提案は極力避けられている』、もともと結果が見え見えだった「岸田ショック」はお粗末の極みだった。「企業に対して年3%の賃上げを求める」、「最低賃金を時給1000円にするという長年の目標も繰り返したが、その達成期限は示さなかった」、「新興企業の数を今後5年間で10倍に増やす」ための「「エンジェル投資家」に対する税制優遇措置などは最終的提案には盛り込まれなかった。
・『参院選を見据えた内容になってしまった  「参議院選挙が終わるまで待ってほしい」 不満の声を挙げた参加者の一部は、こう言われたという。官邸としては、具体的な救済策、特に税制や労働問題などに言及して、各省庁や利権団体の対立が表面化し、選挙で自民党が不利になることをおそれたのだろう。 例えば財務省は、新興企業の育成に必要な減税措置に繰り返し反対している。官邸は、年末までに「5カ年計画」を発表し、具体的な内容を盛り込むと約束した。しかし、複数の参加者と話をしたところ、そのプランが本当に充実したものになるのか、期待こそすれ、自信はあまりないといった様子であった。 ある関係者は、岸田首相が限られた政治資金を防衛費の増額に費やし、議論を呼ぶ経済対策のための資金を十分に残せないことを懸念した。また、自民党内の岸田派は比較的小さく、安倍氏や麻生太郎氏が率いる強力で保守的な派閥を疎外するわけにはいかないと強調する者もいた。 岸田首相のリーダーシップのあり方がさらに事態を悪化させている。複数の情報筋による指摘によると、1つには岸田首相自身は以前から賃金問題に関心を持っていたものの、「新しい資本主義の形」を作るために何が必要かを考えたことがなかったという。実際、このコンセプト自体は岸田首相自身のものではなく、重要な側近である元大蔵省官僚の木原誠二官房副長官が考案したと言われている。 さらに岸田首相は、安倍氏が集団安全保障で、菅義偉氏が脱炭素化で行ったように、自民党や官僚にいくつかの重要な優先事項を課しながら、トップダウン方式で指導できるような首相ではなく、「聞き上手」を自称する合意形成者である』、「岸田首相のリーダーシップのあり方がさらに事態を悪化させている」、「「新しい資本主義の形」を作るために何が必要かを考えたことがなかった・・・このコンセプト自体は岸田首相自身のものではなく、重要な側近である元大蔵省官僚の木原誠二官房副長官が考案」、「自民党や官僚にいくつかの重要な優先事項を課しながら、トップダウン方式で指導できるような首相ではなく、「聞き上手」を自称する合意形成者」、これでは成果は期待できない。
・『真の成長と分配による好循環を引き起こすには  さまざまな権力者の意見が異なる場合、岸田首相自身が解決策を押しつけるのではなく、権力者が妥協点を見いだせるように仕向ける。このスタイルは、ある状況下では生産的かもしれないが、岸田首相が主張するような大きな経済的「軌道修正」を生み出すことはできない。 では、参院選での勝利によって、岸田首相が年末に予定されている「5カ年計画」において、より積極的な主張をできるとなったらどう変わるか。その場合、真の「成長と分配の好循環」を引き起こすために、どのような手を打つことができるだろうか。 当初、岸田首相は前述のように、富裕層の株式所得に対する税率を引き上げることを提案していた。現在は一律20%である。その結果、主に投資によって年間1億円以上の所得を得ている人は、アッパーミドルクラスよりも全体の税率が低くなっている。 とはいえ、1億円以上の所得を持つ納税者は全体の0.01%程度に過ぎない。そのため、通常の所得税と同様、投資所得にもいくつかの区分を設けない限り、所得の平準化にはあまり効果がない。 いずれにせよ、多くの日本人の所得が低迷している最大の原因は、この国の少数の真の富裕層にあるのではなく、企業所得と家計所得の差である。企業は「内部留保」、つまり賃上げや投資、あるいは税金で経済に還元されない利益をため込んでいるのだ。 さらに悪いことに、過去数十年間、東京都(注)は企業減税のために消費税増税を行い、家計から企業へ繰り返し所得を移転してきた。政府は1998年以降大企業に対する法人税率を大幅に引き下げ、現在は30%になっている。 経団連と経済産業省は、企業は余分な現金を使って賃金や投資を増やし、それによって1人当たりのGDPを押し上げるので、法人税減税によって誰もが恩恵を受けると主張した。事実上、政府は企業と取引をしていたのだ。もし、われわれが法人税を下げれば、企業は賃金を上げてくれるだろうと。しかし、企業がその約束を果たすことはなかった』、「多くの日本人の所得が低迷している最大の原因は、この国の少数の真の富裕層にあるのではなく、企業所得と家計所得の差である。企業は「内部留保」、つまり賃上げや投資、あるいは税金で経済に還元されない利益をため込んでいるのだ」、「事実上、政府は企業と取引をしていたのだ。もし、われわれが法人税を下げれば、企業は賃金を上げてくれるだろうと。しかし、企業がその約束を果たすことはなかった」、その通りだ。
(注)東京都ではなく、政府の間違い。
・『企業の内部留保だけが膨れ上がっている  11月26日の「新しい資本主義実現会議」では、この取引がいかに失敗したかを示す資料が配布された。2000年から2020年にかけて、国内数千の大企業の年間利益はほぼ倍増(18兆円増)したが、労働者への報酬は0.4%減、設備投資は5.3%減となった。 その結果、内部留保は20年間で154兆円も膨れ上がった。これは1年間のGDPの3分の1にも相当する。もし、企業がその余剰資金を賃金に回していたら、今日の生活水準は大幅に向上し、消費者の需要も高まっていただろう。中小企業でも同じパターンがみられており、ため込んだ現金が増える一方で、労働者の報酬は減少した。 このパターンは、岸田首相が「健全な成長も健全な分配も、他方なくしては存在しえない」と正しく指摘した通りである。労働者が作ったものを買うだけの収入がなければ、経済が成長するわけがない。国内で製品を売ることができず、円安にならないと海外で売ることができないのであれば、企業はなぜ拡大投資をするのだろうか。) 経済協力開発機構(OECD)加盟国全体の中で、日本は労働時間当たりのGDPの増加と時間当たり賃金の増加の間に最大のギャップがある。そしてもちろん、消費税増税は消費者需要をさらに抑制する。 それにもかかわらず、閣議の議事録によれば、このデータは議論の場にも上げられなかった。同資料は元大蔵省官僚で、現在は東京政策研究財団にいる森信茂樹氏により作成された。われわれが、閣議メンバーがこの情報を見たと認識している根拠はこれのみである』、「大企業の年間利益はほぼ倍増(18兆円増)したが、労働者への報酬は0.4%減、設備投資は5.3%減となった。 その結果、内部留保は20年間で154兆円も膨れ上がった。これは1年間のGDPの3分の1にも相当」、「もし、企業がその余剰資金を賃金に回していたら、今日の生活水準は大幅に向上し、消費者の需要も高まっていただろう」、「(OECD)加盟国全体の中で、日本は労働時間当たりのGDPの増加と時間当たり賃金の増加の間に最大のギャップがある」、「閣議の議事録によれば、このデータは議論の場にも上げられなかった」、「議論の場」に上げるか否かは官僚のサジ加減如何だ。
・『3%の賃上げを「期待」するのみ  岸田首相もほかの議員も、賃上げを行った企業に対する非効率な税額控除を引き上げる以上の具体的な改善策を提案することはなかった。岸田氏は、新型コロナウイルスによるパンデミック以前の水準まで売上を回復させた企業は3%の賃上げを行うことを「期待する」と述べただけである。「期待」は「行動」ではない。 もし法人税減税が日本の成長と財政赤字を悪化させているなら、なぜ減税を撤回しないのだろうか。その結果得られる収入で消費税を下げたらどうだろうか。そうすれば、企業と家計の間でより公正な所得分配が行われるのではないか。閣議では、誰もこの選択肢について言及しなかった。 企業が賃金を上げるような措置をとったらどうだろうか。例えば、日本の法律ではすでに正規と非正規、男女間の同一労働、同一賃金が義務づけられている。しかし、政府機関には違反を調査し、違反者を罰する義務はない。 一方、フランスでは、労働監督官が違反を調査し、同国政府はすでに女性の賃金が低いとして数社に罰金を科している。今回も、日本の労働監督官を同じように活用しようという議論は起こらなかった。) 最低賃金の引き上げは、驚くほど強力な波及効果をもたらす。最低賃金以下の人たちだけでなく、最低賃金を15〜20%上回る人たちの所得も上昇させるからだだ。 パートタイム労働者の平均賃金はわずか1100円であり、彼らは全従業員のほぼ3分の1を占めているため、生活水準や消費需要への影響は劇的なものとなるであろう。残念ながら、岸田氏は十数年前に打ち出された最低賃金目標、時給1000円を繰り返しただけで、この目標をいつ達成するかは明言していない。現在、最低賃金は930円だ』、「日本の法律ではすでに正規と非正規、男女間の同一労働、同一賃金が義務づけられている。しかし、政府機関には違反を調査し、違反者を罰する義務はない。 一方、フランスでは、労働監督官が違反を調査し、同国政府はすでに女性の賃金が低いとして数社に罰金を科している」、「日本」も「フランス」と同様にするべきだ。
・『最低賃金は1145円程度にする必要がある  岸田首相はまた、1000円を超える引き上げの可能性についても言及しなかった。2020年の最低賃金は全国平均賃金のわずか45%であり、OECD21カ国中、日本は18位となる。典型的な富裕国では52%である(貧困レベルを超えるには、全国平均賃金の半分の所得が必要である)。日本は富裕国の水準を目標にすべきだ。そのためには現状を踏まえて、最低賃金を1145円程度にする必要がある。 起業の数を10倍にするという目標については、先鋭のエキスパートによる専門チームが6カ月の期間中、さまざまな想像力を駆使してアイデアを出した。ところが、岸田内閣では、成長と分配の悪循環を解消するための同様の委員会は設置されなかった。 したがって、6月に承認された案は、11月に議論された案とほとんど変わりはない。こうしたやり方は、岸田首相の屈服が長引かないかどうかという心配を増幅させる。 日本と改革派と同様、私は岸田首相による次の5カ年計画(注)では、この骨組みにもっと肉付けしてくれるのではないかと期待している。しかし期待だけで、確信は今のところない』、「期待」しても裏切られるだけで、無駄だ。
(注)5カ年計画:スタートアップ育成5か年計画は、スタートアップ育成分科会で審議、新しい資本主義実現会議で決定(首相官邸HP、2022/11/24)

次に、6月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏による「大前研一「岸田首相が的外れな政策をやめない限り、日本人の給料は韓国や台湾よりずっと低くなる」 日本では、まじめに働いても給料が上がらない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/58608
・『なぜ日本人の給料は上がらないのか。ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一さんは「岸田文雄首相は賃上げした企業に税制を優遇するというが、まったく的外れな政策だ。このままでは韓国や台湾に1人当たり名目GDPでも抜かれてしまう」という――。 ※本稿は、大前研一『大前研一 世界の潮流2022-23スペシャル』(プレジデント社)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『安倍元首相が残した「アベノミクス」という負の遺産  安倍晋三元首相が残した最大の「負の遺産」は、アベノミクスの失敗だ。 「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」という3本の矢を放ち、名目成長率3%と2年で2%の物価安定目標を掲げ、異次元の金融緩和を続けたものの、7年8カ月という任期をかけても達成することができなかった。 今や日本銀行(日銀)の総資産はGDP(国内総生産)の約1.3倍と、米欧をはるかに上回っている。 高騰する物価を落ち着かせるために、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)は量的緩和の縮小に向けて舵を切り始めているなか、日銀は身動きがとれないでいる。 本来なら、日本も量的緩和縮小に向けた「出口戦略」の準備に入らなければならないはずだ。だが、日銀は国債を民間金融機関から買い取り、自ら貯め込むことで、事実上の財政ファイナンス(国の発行した国債などを中央銀行が直接引き受けること)を続けている。もし日本が量的金融緩和の縮小を始めれば、国債が大暴落して大変なことになる可能性が高いからだ』、「国債が大暴落」すれば、国債を保有している民間金融機関での膨大な評価損の発生、国債費の急増など金融機関経営や財政運営には甚大な影響を及ぼす。
・『政権は「3つの構造的問題」を理解していない  その結果、日本の国債残高は1000兆円を突破し、債務残高の対GDP比は256.9%(2021年)と先進国の中で突出している。少子高齢化で労働人口が減っているというのに、いったい誰がどうやってこの膨大な借金を返していくというのだ。 そうかといって、このまま金融緩和を続けても、経済のシュリンクに歯止めはかからない。国の借金は増え続け、行き着く先はデフォルト(債務不履行)だ。 自民党政権が日銀の金融緩和には効果がないことを理解していないことが、最大の問題かもしれない。 私がこれまでずっと言い続けているとおり、日本経済が低迷している3つの構造的問題は、少子高齢化と人口減少、そして日本が「低欲望社会」だからだ。若者は持ち家にも自家用車にも興味を示さず、将来が不安だと言って、20代のうちから貯金に励んでいる。一方で、高齢者は貯金があっても「いざというときのために」というよくわからない理由で使おうとせず、貯めた3000万円を使わないまま死んでいく。21世紀の日本はそういう国なのだ。 だから、みなが欲望をみなぎらせていた20世紀型の経済政策(低金利とジャブジャブのマネタリーベース)を実行しても、効果がないのは当たり前なのである』、その通りだが、次期日銀総裁候補の植田氏は自分がかって賛成したためか、効果があるとの立場だ。
・『インフレ下でMMT理論はまるで通用しない  日米欧の消費者物価指数を見ると、2021年10月の段階で、アメリカ6.2%、ユーロ圏4.1%と明らかにインフレ基調だ。 しかもアメリカで進行しているのは、コストプッシュではなく、構造的なインフレであり、この先日本にも波及する恐れがある。 黒田東彦・日銀総裁やアベクロ推進のアドバイザーだった浜田宏一教授、そして元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏のようなMMT理論の信奉者は「インフレは恐れるに足らず」というスタンスのようだが、私はMMT理論そのものがまやかしだと思っている。 MMTとは、Modern Monetary Theoryの略で、日本語でいう現代貨幣理論のことだ。政府が自国通貨建ての借金(国債)をいくら増やしても財政は破綻せず、インフレもコントロールできるのだから、借金を増やしてでも積極的に財政出動をすべきというのだが、これはどう考えてもおかしい。 MMTの論文を読むと、「インフレさえ起こらなければ」という但し書きがついているのである。 また、日本の国債の大半は日銀と日本の金融機関が保有しており、外国人の保有比率が低いので、今のところ金利は安定しているものの、借金であることに変わりはなく、いずれは誰かが返さなければならないのだ。 もし、アメリカのインフレが日本にも波及すれば、現在の国の過剰債務がどうなるかはわからない。もしかすると、これまで低欲望とデフレで表面化していなかった危機が顕在化するかもしれないのだ。 だから、これから先は長期金利の動きをはじめとした経済指標に注意し、同時に最悪の事態も想定して対策を立てておく必要がある。間違ってもMMT論者の楽観論を信じてはいけない』、「日本の国債」は海外のヘッジファンドが保有する割合も高くなっており、彼らによる空売りも目立つようになったので、安心が禁物だ。
・『「新しい資本主義」とは何かがよくわからない  2021年11月、総選挙で勝利した自民党総裁の岸田文雄氏が、第二次岸田内閣を発足させた。 岸田首相が所信表明演説でとくに強調したのが「新しい資本主義」と「成長と分配」という言葉である。 ただ、所信表明演説を何度読んでも、新しい資本主義とは何かがよくわからない。そもそも「新しい資本主義」という言葉を打ち出すならば、それまでの古い資本主義は何なのかを定義しなければならないはずだが、それもない。それどころか、どうやら岸田首相は資本主義も経済もきちんと理解していないようなのだ。 たとえば、成長だけでなく分配も大事なのだと言うが、日本は分配ができていないのかというと、そんなことはないのである。 主要国の上位1%の富の保有者の割合をみると、一番大きいのはロシアで58.2%、次がブラジルの49.6%で、インド40.5%、アメリカ35.3%と続く。日本は18.2%で、主要国では最も小さい。つまり、日本は富の集中度が低い、分配の行き届いた国なのである。) 向上させて賃上げをしたとしよう。これは難しいことではない。DXツールやロボットなどを活用して、それまで100人で行っていた仕事を10人で行うようにすればいいだけの話だ。 この場合、問題は余った90人をどうするかだ。ドイツなら会社は躊躇なく外に出す。そして、出された人には国が責任を持って再教育を施し、戦力化するのである。 ところが、日本では正規労働者は解雇規制で守られているため、簡単にリストラすることができないのだ。無理やりやればできないことはないが、そうすると今度は「悪徳経営者」「血も涙もないのか」と叩かれるので、手をつけにくいのである。 だからといってリストラしなければ、DXで生産性を向上させても、効果は大して出ないということになってしまうのだ』、「どうやら岸田首相は資本主義も経済もきちんと理解していないようなのだ」、「日本では正規労働者は解雇規制で守られているため、簡単にリストラすることができないのだ。無理やりやればできないことはないが、そうすると今度は「悪徳経営者」「血も涙もないのか」と叩かれるので、手をつけにくいのである」、「だからといってリストラしなければ、DXで生産性を向上させても、効果は大して出ないということになってしまうのだ」、その通りだ。
・『首相は経済の勉強を一からやり直すべきだ  一方で、生産性はそのままで給料を上げると、人件費が上がって企業は収益が圧迫されて利益が減る。いくら法人税を下げてもらっても、利益が出なければ企業にとってメリットはないのだ。 だから、岸田首相は、企業に賃上げを求めるのであれば、「生産性向上で余った人員をどうするのか」という議論を一緒にしなければならないはずなのである。 岸田首相が今実施すべきことは、20年前にドイツのシュレーダー政権が行った構造改革「アジェンダ2010」型の取り組みだ。解雇規制を緩和すると同時に、職業訓練や職業紹介を充実させ、労働市場を活性化させるのである。「賃上げ税制」というわけのわからないことを行っている場合ではないのである。 それなのに、「給料を上げたら法人税を減らしてやるぞ」と上から目線で言ってはばからないのは、岸田首相が経済の原則をわかっていないからだ。 彼に必要なのはリカレント教育である。経済の勉強を一からやり直すべきだ』、「今実施すべきことは、20年前にドイツのシュレーダー政権が行った構造改革「アジェンダ2010」型の取り組みだ。解雇規制を緩和すると同時に、職業訓練や職業紹介を充実させ、労働市場を活性化させるのである」、その通りだ。
・『韓国、台湾に比べて労働生産性が著しく低い  日本の1人当たりGDPは、2020年時点では3万9890ドル(約452万円)と、韓国を25%、台湾を42%上回っていた。しかし、その後の数値を試算すると、2025年までに韓国は年6%増、台湾は年8.4%増であるのに対し、日本は年2%と伸びが鈍化している。 このままいけば、日本の1人当たりGDPは、2027年に韓国、2028年には台湾に抜かれるのは間違いない。 なぜ日本の1人当たりGDPは韓国や台湾ほど伸びないのか。1人当たり名目GDPは、国民全体の1年間の付加価値を総人口で割った数値のことで、労働生産性、平均労働時間、就業率で説明できる。つまり、日本は先の2国に比べ、労働生産性が著しく低いのだ。 たとえば、行政面では、韓国や台湾が行政手続きの電子化を進めているのに対し、日本はいまだに押印やサインを必要とするなどアナログ中心だ。 新型コロナウイルス対策でも、台湾ではデジタル担当大臣のオードリー・タン氏が「マスクマップ」や「ワクチン接種の予約システム」を開発するなどして迅速に対応しているのに、日本はマスクや給付金を配るのにも手間取っている。 では企業はどうかというと、韓国も台湾も新型コロナウイルスのパンデミックが起こる以前から多くの企業がテレワークを取り入れ、仕事の効率化を図っていた。一方、日本はコロナ禍でテレワークが普及したものの、緊急事態宣言が解除されると、また元に戻りつつある』、「このままいけば、日本の1人当たりGDPは、2027年に韓国、2028年には台湾に抜かれるのは間違いない。 なぜ日本の1人当たりGDPは韓国や台湾ほど伸びないのか」、「日本は先の2国に比べ、労働生産性が著しく低いのだ。 たとえば、行政面では、韓国や台湾が行政手続きの電子化を進めているのに対し、日本はいまだに押印やサインを必要とするなどアナログ中心だ」、「企業はどうかというと、韓国も台湾も新型コロナウイルスのパンデミックが起こる以前から多くの企業がテレワークを取り入れ、仕事の効率化を図っていた。一方、日本はコロナ禍でテレワークが普及したものの、緊急事態宣言が解除されると、また元に戻りつつある」、これでは、「日本」の「労働生産性」の低さは当然だ。
・『日本人の給料が上がらない理由①「労働生産性が低い」  日本の1人当たり労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)37カ国中26位(2019年)と、G7のなかで50年以上も最下位を続けている。 日本人の給料が上がらない理由は、大きく2つある。 1つは「労働生産性の低さ」だ。とくに間接業務でDXの導入が遅れているのが、致命的だと言っていい。 しかし、すでに述べたように、仮にDXを導入して必要な人員を10分の1に減らして間接業務の生産性を高めたとしても、現行の制度ではそれによって仕事を失った10分の9の社員をリストラすることができない。ここをなんとかしないとこの先も、DXは遅々として進まないことになる。 日本の労働市場が未成熟というのも、労働生産性が上がらない要因のひとつになっている。社員を解雇する際のハードルが高い解雇規制が諸悪の根源であることはもちろんだが、それに加え、日本にはリストラされた人たちが学び直すためのリカレントやリスキリングといった学び直しの機会や場所が用意されていないのも問題だ』、「リストラされた人たちが学び直すためのリカレントやリスキリングといった学び直しの機会や場所」を確保すべきだ。
・『公共職業訓練がアップデートされていない  職業安定所(ハローワーク)は、雇用保険に入っている人を対象としているため、失業保険を受給していないアルバイトやパートの人は、公共職業訓練を受けることができない。 また、職業訓練校のプログラムを見ると、左官工や溶接工といった19~20世紀の工業化社会を想定した科目がいまだに主流で、デジタル主導の21世紀型の教育がなされていない。これではスキルを身につけても、再就職に苦労するのは目に見えている。 それから、DXを進めようにも、日本企業にはそれを進められるIT人材が足りない。一般企業では年功序列でしか給料が上がらないため、優秀なIT人材はどうしてもIT業界に集中してしまうのだ。 日本人の給料が上がらない理由②「終身雇用の弊害」(日本人の給料が上がらないもうひとつの理由として「転職をせず、最初に入った会社で定年まで勤めあげる」というスタイルが長らく働き方のスタンダードになっていたことが挙げられる。 アメリカでは、高い給料を求めて労働者が移動するのは当たり前のことである。別の業種のほうがいい給料を払ってくれるとわかれば、学び直して必要なスキルを獲得し、これまでとは違う仕事に就くのも珍しくはない。高給を求めて海外に移住するケースもある。 そうすると企業も、優秀な人材が欲しければそれに見合う給料を支払わなければならなくなる。高い給料を払うには生産性を上げなければならないから、DXもどんどん導入するわけだ』、「職業訓練校のプログラムを見ると、左官工や溶接工といった19~20世紀の工業化社会を想定した科目がいまだに主流で、デジタル主導の21世紀型の教育がなされていない」、これは由々しい問題だ。公共職業訓練を産業構造に見合った形でアップデートしてゆくべきだ。
・『転職が少ない日本でユニコーン企業が生まれるはずもない  ところが、日本の労働者は給料が低くても転職をしようとしない。日本にも、32歳の平均年収が2000万円というキーエンスのような会社も存在するのだ。海外であれば入社希望者が殺到するだろう。だが、日本ではそんな話は寡聞にして存じ上げない。それでいて、同じ会社の中なら同期よりボーナスが10万円低いだけで、夜も寝られないほど悔しがるというのだから、日本人というのは実に不思議なメンタリティの持ち主と言うほかない。 大学を出たばかりのIT技術者でも、優秀なら1年目から1000万円以上の年収が支払われるというのが、世界の常識なのである。日本では新卒IT技術者の初任給は一律24万円で、それでも人が採用できるというのは、こちらのほうが異常だと言わざるを得ない。 転職をしないというのは、自らリスクをとって起業もしないということだ。これでは、ユニコーン企業が日本に生まれないのも仕方がない』、比較の対象は、「キーエンス」ではなく、仕事内容が分かる「同じ会社の中なら同期」となるのだろう。日本型の雇用では、評価の軸は長期的であるのに対し、英米型では短期的であるといった違いもあるのだろう。

第三に、本年2月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した同志社大学大学院ビジネス研究科教授・エコノミストの浜 矩子氏による「日本の賃金低迷は「21世紀の重商主義」の表れといえる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317477
・『グローバル化の進展とともに、「21世紀の資本」は凄まじい規模と速度で国境を越え、暴利をむさぼっています。一部富裕層への「富の偏在」が著しくなる一方で、先進国でも貧困が問題となるなど、格差は拡大し続けています。我々労働者は、このような時代に「働くこと」とどう向き合うべきなのでしょう――。エコノミスト浜矩子さんの著書『人が働くのはお金のためか』(青春出版社)より抜粋して紹介します』、ズバリと本質を突く「浜矩子」氏の見方とは興味深そうだ。
・『ブームを引き起こした『21世紀の資本』  皆さんはフランスの経済学者トマ・ピケティの著作、『21世紀の資本』(みすず書房、2014年)をご記憶だろうか。 ピケティは、富裕層の不労所得の増大と集中が経済格差の拡大をもたらすメカニズムを解明した。そして、グローバル化の進展とともに、富の偏在が一段と進んでいると指摘した。この分配上の歪(ゆが)みを是正するための方策として、ピケティは国際的な資本課税の導入を提唱した。今日このテーマは、国々の国際課税論議の中で大きな位置を占めている。 『21世紀の資本』は決して読みやすい本ではない。にもかかわらず、世界で、日本で、人々がこの著作に群がった。 その有様(ありさま)は、さながらアダム・スミスの『国富論』刊行時のごとしだった。アダム・スミス大先生が1776年に『国富論』を刊行したことによって、経済学という学問ジャンルが確立した。) 『国富論』もまた超大作だった。世の中、何かがおかしい。どうも納得がいかない。そう人々が感じていたところに、「労働価値説」と「見えざる手」という画期的な論理を引っ下げて、経済社会の斬新な分析フレームが躍り出てきた。だから人々は、待ってましたとばかりに『国富論』に飛びついたのだろう。 『21世紀の資本』についても、同様だったと思う。格差と貧困。富の偏在。巨大資本のあまりにも圧倒的な巨大さ。これらのことに人々が不可思議さを覚え、恐れを感じ、憤懣(ふんまん)を募らせている。この時代状況に、『21世紀の資本』の主張と提言が大いに響いた。そうそう。我々はこういうことを言ってくれる本を待っていたのだと』、それにしても『21世紀の資本』とは大きく出たものだ。
・『“主義なき資本”の時代に突入している  ところで、ピケティ本について筆者が最も評価しているのが、『21世紀の資本』というタイトルである。なぜなら筆者は、今は“主義なき資本”の時代だと考えているからだ。 20世紀最後の10年から始まったグローバル化の中で、ヒトもモノもカネも従来にはなかったスケールで国境を越えるようになった。中でも、凄(すさ)まじい規模と速度で国境を越えるようになったのが「カネ」、すなわち「資本」である。 資本主義経済というもののカラクリをカール・マルクスが『資本論』で見抜いた頃、資本はまだ、今日のような動き方はしてはいなかった。資本主義的生産体制というものは、国民国家、あるいは国民経済の仕組みが基本的に堅固な中で成り立っていた。 新型コロナウイルスによるパンデミックやロシアのウクライナ侵攻によって、グローバル化の流れが逆流し始めたかのように見られる面はある。とはいえ、『資本論』が書かれた時代の枠組みがそのまま戻ってくるとは考え難い。 だからこそ、資本主義の危機が叫ばれたり、従来とは異なる資本主義の有り方を模索したりする論議が、あちこちで盛行するようになっている。 グローバル化がいまだかつてなく活発化する中で、今日の資本は、資本主義の枠組みと袂を分かってしまった。つまり、資本の“主義なき資本化”である』、「グローバル化がいまだかつてなく活発化する中で、今日の資本は、資本主義の枠組みと袂を分かってしまった。つまり、資本の“主義なき資本化”である」、「資本の“主義なき資本化”」とは言い得て妙だ。
・『マルクス『資本論』の枠組みは通用するか  こうなると、何が起こるか。それは資本の「野生化」だ。筆者はそう考えている。 自由奔放に、勝手気ままに国境を越えて動く資本に対して、資本主義の枠組みは制御力を失った。野生化した資本の狂暴性を抑え込めるものがなくなっているのである。 今日の資本は、『資本論』が執筆された時のようには動いていない。ただし、労働に対する搾取(さくしゅ)の基本原理が崩れたわけではない。『資本論』の中でマルクス先生が、当時の工場現場の実態を描出し、そこで行われている「剰余価値創出」のカラクリを解明してくれる時、そこで語られていることは、まるで今日の労働現場に関するルポルタージュのようである。 だが、野生化した今日の資本は、当時の工場現場とは比べるべくもなく多様で広範な職場で、当時とは比べるべくもないあの手この手で、人々から余剰価値を吸い取っている。 こうなってくると、資本と対峙する関係にある労働についても、その21世紀的有り方を追求する研究や分析が展開される必要があるのではないか。つまり、「21世紀の資本」、その生態に焦点を当てた画期的著作が書かれている以上、それと対をなす姉妹編として、「21世紀の労働」が書かれるべきだと考えられるのである』、「「21世紀の資本」、その生態に焦点を当てた画期的著作が書かれている以上、それと対をなす姉妹編として、「21世紀の労働」が書かれるべきだと考えられる」、確かにアナロジーとしては理解できる。
・『アダム・スミスは労働をどうとらえていたか  ここで経済学の生みの親、アダム・スミス先生の労働観を見てみよう。この人の労働観はなかなか厄介だ。なぜなら、そこには大いなる二面性があるからだ。スミス先生における労働観の二面性は、一方で「労働犠牲説」の観点を打ち出しながら、その一方で、「労働こそ、全ての商品の真の価値の尺度だ」と言っているところにある。 『国富論』の中でスミス先生が労働を語るに当たって、“toil and trouble”(労苦と手間)という表現を使っていることは、よく知られている。この言い方からすれば、労働を願わくは避けるべき苦役だと見なしていたように思われる。しかも先生は、労働者が一定量の労働に携わることは、それに見合って、自分の自由と安楽と幸福を犠牲にすることを意味しているとも言っている。これが労働犠牲説の労働犠牲説と言われるゆえんだ。 ところが、一方で先生は、「労働価値説」の創始者だ。この論理の下に、当時の重商主義者たちの金銀財宝至上主義を厳しく糾弾したのである。 先生は、労働は苦役だと主張して労働を毛嫌いしているようでありながら、それに携わる者たちには高い賃金が払われるべきだと主張した。 それが、スミス先生の「高賃金論」である』、「先生は、労働は苦役だと主張して労働を毛嫌いしているようでありながら、それに携わる者たちには高い賃金が払われるべきだと主張」、「労働犠牲」をしている以上、「携わる者たちには高い賃金が払われるべき」というのは当然だ。
・『我々は「労苦」にふさわしい報酬を得ているか?  働く人々がその「労苦と手間」にふさわしい報酬、すなわち高賃金を得ることは、大いに正当性があると思われる。ところが、『国富論』刊行当時においてはそうではなかったのである。 高賃金論にことのほか強く異を唱えたのが、重商主義者たちだった。 彼らは、本質的に怠け者である労働者たちをしっかり働かせるためには、賃金は低くなければダメだと考えていた。また、労働者の所得が増えれば、彼らは贅沢品にカネを無駄使いする。すると贅沢品の輸入が増えて、貿易収支が悪化する。高賃金は生産コストを高めて、輸出品の国際競争力を低下させる。これまた貿易収支悪化原因だ。貿易による金銀財宝の確保を至上命題とした重商主義者たちにとって、高賃金は、あらゆる意味で天敵だったのである。 こんな状況だったからこそ、スミス先生は高賃金論を主張したのである。高賃金にすれば労働者は高賃金を喜び、一段の高賃金化を目指してさらに懸命に働く。すると労働生産性は上がり、国際競争力は低下するどころか、強化されますよ。スミス先生はそう主張した。労働観を前近代から近代へと導くことが、スミス流高賃金論に込められた先生の思いだったと言えるだろう。 少なくとも日本に関する限り、現状は、スミス先生の高賃金論に適っていない。かれこれ30年間にわたって賃金低迷状態が続いている。この状態は、スミス先生が敵対した重商主義者たちをさぞや喜ばせることだろう。日本の賃金低迷は、21世紀の資本による、21世紀の重商主義の表れだと言えるかもしれない』、「少なくとも日本に関する限り、現状は、スミス先生の高賃金論に適っていない。かれこれ30年間にわたって賃金低迷状態が続いている」、「日本の賃金低迷は、21世紀の資本による、21世紀の重商主義の表れだと言えるかもしれない」、何故、「日本」でだけそうした状況に陥ったのかは、依然として謎だ。
タグ:(その5)(日本人の給料が上がらないのは「企業が渋る」から 「骨太」打ち出した岸田首相が本当はすべきこと、大前研一「岸田首相が的外れな政策をやめない限り 日本人の給料は韓国や台湾よりずっと低くなる」 日本では まじめに働いても給料が上がらない、日本の賃金低迷は「21世紀の重商主義」の表れといえる理由) 政府の賃上げ要請 東洋経済オンライン リチャード・カッツ氏による「日本人の給料が上がらないのは「企業が渋る」から 「骨太」打ち出した岸田首相が本当はすべきこと」 私も「岸田政権は「新しい資本主義」」には、当初は「お手並み拝見」と期待したが、裏切られた。 もともと結果が見え見えだった「岸田ショック」はお粗末の極みだった。「企業に対して年3%の賃上げを求める」、「最低賃金を時給1000円にするという長年の目標も繰り返したが、その達成期限は示さなかった」、「新興企業の数を今後5年間で10倍に増やす」ための「「エンジェル投資家」に対する税制優遇措置などは最終的提案には盛り込まれなかった。 「岸田首相のリーダーシップのあり方がさらに事態を悪化させている」、「「新しい資本主義の形」を作るために何が必要かを考えたことがなかった・・・このコンセプト自体は岸田首相自身のものではなく、重要な側近である元大蔵省官僚の木原誠二官房副長官が考案」、「自民党や官僚にいくつかの重要な優先事項を課しながら、トップダウン方式で指導できるような首相ではなく、「聞き上手」を自称する合意形成者」、これでは成果は期待できない。 「多くの日本人の所得が低迷している最大の原因は、この国の少数の真の富裕層にあるのではなく、企業所得と家計所得の差である。企業は「内部留保」、つまり賃上げや投資、あるいは税金で経済に還元されない利益をため込んでいるのだ」、「事実上、政府は企業と取引をしていたのだ。もし、われわれが法人税を下げれば、企業は賃金を上げてくれるだろうと。しかし、企業がその約束を果たすことはなかった」、その通りだ。 (注)東京都ではなく、政府の間違い。 「大企業の年間利益はほぼ倍増(18兆円増)したが、労働者への報酬は0.4%減、設備投資は5.3%減となった。 その結果、内部留保は20年間で154兆円も膨れ上がった。これは1年間のGDPの3分の1にも相当」、「もし、企業がその余剰資金を賃金に回していたら、今日の生活水準は大幅に向上し、消費者の需要も高まっていただろう」、「(OECD)加盟国全体の中で、日本は労働時間当たりのGDPの増加と時間当たり賃金の増加の間に最大のギャップがある」、「閣議の議事録によれば、このデータは議論の場にも上げられなかった」、「 「議論の場」に上げるか否かは官僚のサジ加減如何だ。 「日本の法律ではすでに正規と非正規、男女間の同一労働、同一賃金が義務づけられている。しかし、政府機関には違反を調査し、違反者を罰する義務はない。 一方、フランスでは、労働監督官が違反を調査し、同国政府はすでに女性の賃金が低いとして数社に罰金を科している」、「日本」も「フランス」と同様にするべきだ。 「期待」しても裏切られるだけで、無駄だ。 (注)5カ年計画:スタートアップ育成5か年計画は、スタートアップ育成分科会で審議、新しい資本主義実現会議で決定(首相官邸HP、2022/11/24) PRESIDENT ONLINE 「大前研一「岸田首相が的外れな政策をやめない限り、日本人の給料は韓国や台湾よりずっと低くなる」 日本では、まじめに働いても給料が上がらない」 『大前研一 世界の潮流2022-23スペシャル』(プレジデント社) 「国債が大暴落」すれば、国債を保有している民間金融機関での膨大な評価損の発生、国債費の急増など金融機関経営や財政運営には甚大な影響を及ぼす。 その通りだが、次期日銀総裁候補の植田氏は効果があるとの立場だ。 その通りだが、次期日銀総裁候補の植田氏は自分がかって賛成したためか、効果があるとの立場だ。 「日本の国債」は海外のヘッジファンドが保有する割合も高くなっており、彼らによる空売りも目立つようになったので、安心が禁物だ。 「どうやら岸田首相は資本主義も経済もきちんと理解していないようなのだ」、「日本では正規労働者は解雇規制で守られているため、簡単にリストラすることができないのだ。無理やりやればできないことはないが、そうすると今度は「悪徳経営者」「血も涙もないのか」と叩かれるので、手をつけにくいのである」、「だからといってリストラしなければ、DXで生産性を向上させても、効果は大して出ないということになってしまうのだ」、その通りだ。 「今実施すべきことは、20年前にドイツのシュレーダー政権が行った構造改革「アジェンダ2010」型の取り組みだ。解雇規制を緩和すると同時に、職業訓練や職業紹介を充実させ、労働市場を活性化させるのである」、その通りだ。 「このままいけば、日本の1人当たりGDPは、2027年に韓国、2028年には台湾に抜かれるのは間違いない。 なぜ日本の1人当たりGDPは韓国や台湾ほど伸びないのか」、「日本は先の2国に比べ、労働生産性が著しく低いのだ。 たとえば、行政面では、韓国や台湾が行政手続きの電子化を進めているのに対し、日本はいまだに押印やサインを必要とするなどアナログ中心だ」、「企業はどうかというと、韓国も台湾も新型コロナウイルスのパンデミックが起こる以前から多くの企業がテレワークを取り入れ、仕事の効率化を図っていた。一方、日本は 「リストラされた人たちが学び直すためのリカレントやリスキリングといった学び直しの機会や場所」を確保すべきだ。 「職業訓練校のプログラムを見ると、左官工や溶接工といった19~20世紀の工業化社会を想定した科目がいまだに主流で、デジタル主導の21世紀型の教育がなされていない」、これは由々しい問題だ。公共職業訓練を産業構造に見合った形でアップデートしてゆくべきだ。 比較の対象は、「キーエンス」ではなく、仕事内容が分かる「同じ会社の中なら同期」となるのだろう。日本型の雇用では、評価の軸は長期的であるのに対し、英米型では短期的であるといった違いもあるのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 浜 矩子氏による「日本の賃金低迷は「21世紀の重商主義」の表れといえる理由」 ズバリと本質を突く「浜矩子」氏の見方とは興味深そうだ。 それにしても『21世紀の資本』とは大きく出たものだ。 「グローバル化がいまだかつてなく活発化する中で、今日の資本は、資本主義の枠組みと袂を分かってしまった。つまり、資本の“主義なき資本化”である」、「資本の“主義なき資本化”」とは言い得て妙だ。 「「21世紀の資本」、その生態に焦点を当てた画期的著作が書かれている以上、それと対をなす姉妹編として、「21世紀の労働」が書かれるべきだと考えられる」、確かにアナロジーとしては理解できる。 「先生は、労働は苦役だと主張して労働を毛嫌いしているようでありながら、それに携わる者たちには高い賃金が払われるべきだと主張」、「労働犠牲」をしている以上、「携わる者たちには高い賃金が払われるべき」というのは当然だ。 「少なくとも日本に関する限り、現状は、スミス先生の高賃金論に適っていない。かれこれ30年間にわたって賃金低迷状態が続いている」、「日本の賃金低迷は、21世紀の資本による、21世紀の重商主義の表れだと言えるかもしれない」、何故、「日本」でだけそうした状況に陥ったのかは、依然として謎だ。
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