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事業再生(その3)(旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」 親会社に翻弄された末路、HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり) [企業経営]

事業再生については、昨年3月23日に取上げた。今日は、(その3)(旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」 親会社に翻弄された末路、HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり)である。

先ずは、昨年6月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」、親会社に翻弄された末路」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304792
・『マレリの再建計画が判明も 業績復活は前途多難  自動車部品メーカーの大手の「マレリホールディングス(マレリ)」が、業績悪化によって私的整理の一つである事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)制度を申請してから3カ月が経過した。親会社である米投資ファンドのKKRを支援企業として、6月中の再建計画同意を目指しているが、その道のりは遠い。 マレリは、日産自動車系列のサプライヤーである旧カルソニックカンセイが、2019年に欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の部品部門だったマニエッティ・マレリを買収統合して誕生した。 鳴り物入りのメガサプライヤーとしてスタートを切ったが、コロナ禍や半導体不足による完成車メーカー(OEM)の減産が続く中で、合併によるスケールメリットを生かせず、むしろ売上高1兆円を超える規模が重荷となってのしかかった。) 21年12月期まで4期連続の赤字となり、約1兆1000億円規模の債権額を抱えて3月1日に事業再生ADR制度の利用を申請した。それから3カ月をかけて支援企業の選定に向けた入札を実施。手を挙げた外資もあったが交渉が難航し、結果的に親会社のKKRを支援企業とする再建案が5月末の債権者会議で説明された。 それによると、KKRが6億5000万ドル(約870億円)の第三者割当増資を引き受ける方針を提示。さらに、債権額のカット率を約42%とし、金額にして約4500億円の債権放棄を求めることを金融機関に示したという。 KKRは、マレリのスポンサーになることについて「自動車産業を取り巻く環境は厳しいが、世界的なメガサプライヤーとして躍進できるよう取り組むマレリを引き続き支援する」とコメントしている。 だが、元々リスクを伴うマレリ買収を主導したのはKKR自身だ。それに対して金融機関から不満もくすぶっている。OEMの生産体制の完全復活も見通せない中、再建は一筋縄ではいかないだろう』、「元々リスクを伴うマレリ買収を主導したのはKKR自身」、「それに対して金融機関から不満もくすぶっている」、これはこじれそうな再生案だ。
・『コロナ禍や半導体不足での自動車減産が追い打ち  近年、曙ブレーキ工業やサンデンといった自動車サプライヤーで事業再生ADR申請の事例が相次いでいる。「100年に一度の自動車大変革」といわれる時代にあって、部品企業は非常に厳しい立場に立たされているのだ。) マレリの場合も同様だ。世界の自動車部品業界は、大きな構造改革により、生き残りへ向けた厳しい時代を迎えており、ティア2、ティア3だけでなくメガサプライヤーも含めて、試練の局面に立たされている。 元々、旧カルソニックカンセイは日産の“部品御三家”の一つに数えられた主力サプライヤーであったし、日産のカルロス・ゴーン元会長も一連の“系列切り”の一方で、逆に2005年に日産が出資を41.9%に引き上げて連結子会社としたほどの企業だった。 しかし、日産の業績が陰りを見せ始めていた17年に、同社は旧カルソニックカンセイの持ち分をKKRに売却してしまう。さらにKKR主導でFCAの部品部門を約7200億円で19年に買収・統合して「マレリ」に社名変更した経緯がある。 当時FCAは、仏のルノーのライバルである仏グループPSAとの統合を進める過程で、部品部門の売却意向があった。カルソニックカンセイとの統合は渡りに船だったのだろう。なお、FCAとPSAの方は、21年1月に統合を完了させ「ステランティス」が誕生している。 親会社のKKRは、旧マレリ統合によるスケールメリットを狙ったのだろうが、むしろ買収費用が巨額の債務となって負担になり、そこにコロナ禍や半導体不足などの世界的な自動車減産が追い打ちをかけた。主要取引先である日産が業績不振で、生産台数が減少したことも大きい。 また、旧マレリとの統合後も、ライティング、エレクトロニクス、パワートレインなどの製品群が加わったものの、同社の高コスト体質からの脱却や大規模リストラが遅れているといった問題点が指摘されている』、「買収費用が巨額の債務となって負担になり、そこにコロナ禍や半導体不足などの世界的な自動車減産が追い打ちをかけた」、「親会社のKKR」の甘い経営判断が一因となったようだ。
・『日産系列最大のサプライヤー かつての栄光むなしく  旧カルソニックカンセイの歴史をたどると、1938年創業の日本ラジエーター製造(日ラジ。その後、カルソニックに社名変更)と、56年創業の関東精器(その後カンセイに社名変更)が2000年に対等合併して誕生した。カルソニックはラジエーターから空調システムや熱交換器、コンプレッサーなどを、カンセイは計器メーターなどの部品を手掛ける企業であり、共に日産の有力部品サプライヤーとして成長してきた。 筆者は、かつて自動車部品を担当していた頃に日ラジを取材したことがある。当時の日産宝会(日産と取引の部品企業群)のリーダー役が、日産の専務から日ラジに転じた太田寿吉社長(当時)だった。太田氏は、石原俊日産元社長と日産の同期入社でもある。 宝会の加盟部品各社が日産の購買担当を「東銀座様(当時の日産の本社所在地)」とあがめる中で、日ラジは他社に先駆けて米国進出も果たし、米ゼネラル・モーターズとの取引を広げて同社と合弁工場を展開するほどだった。 その後、業績破綻により日産が仏ルノーの傘下に入る中、2000年にはカルソニックとカンセイの合併統合が行われた。日産がゴーン体制に移行し“系列解体”が進められたが、カルソニックカンセイは重要なサプライヤーとして解体の対象外となり、05年にはむしろ日産が出資比率を引き上げて連結子会社としたことは、先述した通りだ。 3月1日のADR申請から3カ月、元の親会社の日産からの支援を期待する声もあったが、日産自体が経営再建の過程にあってそれどころではない。KKRはインド財閥で傘下に自動車部品を抱えるサンバルダナ・マザーソン・グループと共同で支援企業とする意向が報じられていたが、マザーソンは条件が合わずに撤退してしまった。結果的に支援企業がKKRだけとなってしまったのだ。) 5月末の債権者会議でのKKR主導の再建案には、みずほ銀行などの金融機関から不満も漏れており、OEMの減産も続いているため先行きは不透明だ。 マレリのケースは、過去日産系で最有力だったサプライヤーが独立系サプライヤーの道を歩まざるを得なかった流れに翻弄(ほんろう)された悲哀を象徴しているが、一方でサプライヤーの生き残り方に一石を投じるものでもある。 世界を見ると、ボッシュやコンチネンタルなど独メガサプライヤーが強さを見せており、日本でもデンソーなどメガサプライヤーとして世界で勝負できる部品企業があるが、マレリは対照的な結果となってしまった。 さらに、ティア1に対し、ティア2~ティア3の部品企業群は日本国内でも9割、6000社を数える。「100年に一度の自動車大変革時代」におけるCASE新技術対応は、部品企業の生き残りへ大きなテーマを与えてきている。 昨今のコロナ禍、半導体不足、アジア部品供給不足による世界的な自動車減産が続き、サプライチェーンの重要性が増す。マレリを奇貨として部品企業の生きざまが問われている』、「5月末の債権者会議でのKKR主導の再建案には、みずほ銀行などの金融機関から不満も漏れており」、もう一度、冷静に「マレリ」、「金融機関」で話し合う必要がありそうだ。なお、11月4日付け日経新聞によれば、「マレリ」のデビッド・スランプ社長兼CEOは、インタビューで、「マレリ、成長投資2600億円 工場閉鎖で黒字化目指す」としている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC274BH0X21C22A0000000/

次に、本年2月4日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/318241
・『カリスマ起業家として一世を風靡したエイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄会長兼グループCEO(最高経営責任者)が、2月1日付で代表権のない取締役最高顧問に退いた。コロナ禍で打撃を受けた海外旅行事業が復調の兆しが見えたことを受け、退任を決意したとされるが、背後には資本性資金を供与した日本政策投資銀行など取引銀行団の圧力があったとされる。 澤田氏がエイチ・アイ・エスを立ち上げたのは1990年のことだ。当時、ソフトバンクの孫正義氏、パソナの南部靖之氏とともに「ベンチャー三銃士」ともてはやされた。 その原点は、大阪市立生野工業高校を卒業し、旧西ドイツのマインツ大学に留学していた時、アルバイトで稼いだ金で世界を回り、その経験を生かして80年に東京・新宿西口に旅行会社「インターナショナルツアーズ」を設立したことにある。格安航空券を販売し、ホテルとセットにした個人旅行は大当たりし、95年には株式上場にこぎつけた。 その後、ホテル事業にも進出し、新規参入航空会社「スカイマークエアラインズ」(現スカイマーク)の設立や、協立証券(現HSホールディングス)の買収を手掛けた。そして2010年に18年連続赤字だったテーマパーク「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)の社長に就任、半年で黒字化させる離れ業を演じた。 しかし、すべてはコロナ禍で暗転した。コロナ禍で海外旅行客は途絶え、ハウステンボスの入場者数も激減、エイチ・アイ・エスは赤字に転落したのだ。資金繰りに窮した澤田氏は政府に泣きつき、日本政策投資銀行からファンドを活用した優先株を受ける。しかし、これがつまずきの始まりとなった。 「政投銀が優先株を供与したことで、エイチ・アイ・エスは国が潰さない銘柄となったことを受け、民間金融機関も協調融資を行った。しかし、これには2期連続赤字となれば融資を一括返済しなければならない財務制限条項が付いていました」(メガバンク幹部)というのだ』、「コロナ禍で海外旅行客は途絶え、ハウステンボスの入場者数も激減、エイチ・アイ・エスは赤字に転落したのだ。資金繰りに窮した澤田氏は政府に泣きつき、日本政策投資銀行からファンドを活用した優先株を受ける。しかし、これがつまずきの始まりとなった。 「政投銀が優先株を供与したことで、エイチ・アイ・エスは国が潰さない銘柄となったことを受け、民間金融機関も協調融資を行った。しかし、これには2期連続赤字となれば融資を一括返済しなければならない財務制限条項が付いていました」、「財務制限条項」に抵触はよくあることだ。
・『銀行団主導で“虎の子”ハウステンボスも売却  コロナ禍は想定を超えて長引き、行動制限は長期化し、赤字は続いた。さらに子会社によるGoToトラベルの給付金不正受給も重なる。財務制限条項に抵触しないためには22年10月期の黒字化が必達だった。 そのデッドラインを前に、エイチ・アイ・エスは虎の子のハウステンボスを香港ファンドに666億円で売却するとともに、247億円の資本を1億円に減資する道に踏み込んだ。ハウステンボス売却で得た特別利益と減資で累損を一掃する荒療治だ。陰で主導したのは政投銀をはじめとする銀行団だった。澤田氏は最後までハウステンボスの売却に反対したというが……。落日の感が強い』、「虎の子のハウステンボスを香港ファンドに666億円で売却するとともに、247億円の資本を1億円に減資する道に踏み込んだ。ハウステンボス売却で得た特別利益と減資で累損を一掃する荒療治だ。陰で主導したのは政投銀をはじめとする銀行団だった。澤田氏は最後までハウステンボスの売却に反対したというが……。落日の感が強い」、これから「澤田氏」の大きな顔をしばらく見られないと思うと、一抹の寂しさもあるが、冷徹な企業再生の論理の前にはやむを得ないようだ。 
タグ:(その3)(旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」 親会社に翻弄された末路、HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり) 事業再生 ダイヤモンド・オンライン 佃 義夫氏による「旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」、親会社に翻弄された末路」 「元々リスクを伴うマレリ買収を主導したのはKKR自身」、「それに対して金融機関から不満もくすぶっている」、これはこじれそうな再生案だ。 「買収費用が巨額の債務となって負担になり、そこにコロナ禍や半導体不足などの世界的な自動車減産が追い打ちをかけた」、「親会社のKKR」の甘い経営判断が一因となったようだ。 「5月末の債権者会議でのKKR主導の再建案には、みずほ銀行などの金融機関から不満も漏れており」、もう一度、冷静に「マレリ」、「金融機関」で話し合う必要がありそうだ。なお、11月4日付け日経新聞によれば、「マレリ」のデビッド・スランプ社長兼CEOは、インタビューで、「マレリ、成長投資2600億円 工場閉鎖で黒字化目指す」としている。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC274BH0X21C22A0000000/ 日刊ゲンダイ 小林佳樹氏による「HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり」 「コロナ禍で海外旅行客は途絶え、ハウステンボスの入場者数も激減、エイチ・アイ・エスは赤字に転落したのだ。資金繰りに窮した澤田氏は政府に泣きつき、日本政策投資銀行からファンドを活用した優先株を受ける。しかし、これがつまずきの始まりとなった。 「政投銀が優先株を供与したことで、エイチ・アイ・エスは国が潰さない銘柄となったことを受け、民間金融機関も協調融資を行った。しかし、これには2期連続赤字となれば融資を一括返済しなければならない財務制限条項が付いていました」、「財務制限条項」に抵触はよくあることだ。 「虎の子のハウステンボスを香港ファンドに666億円で売却するとともに、247億円の資本を1億円に減資する道に踏み込んだ。ハウステンボス売却で得た特別利益と減資で累損を一掃する荒療治だ。陰で主導したのは政投銀をはじめとする銀行団だった。澤田氏は最後までハウステンボスの売却に反対したというが……。落日の感が強い」、これから「澤田氏」の大きな顔をしばらく見られないと思うと、一抹の寂しさもあるが、冷徹な企業再生の論理の前にはやむを得ないようだ。
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