高齢化社会(その18)(和田秀樹:酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」、日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ、「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」)) [社会]
高齢化社会については、昨年5月12日に取上げた。今日は、(その18)(和田秀樹:酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」、日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ、「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」)である。
先ずは、昨年6月5日付けデイリー新潮が掲載した精神科医の和田秀樹氏による「酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/06051058/?all=1
・『豊かな老後を過ごすためにすべきことを説き、ベストセラーとなっているのが『80歳の壁』(幻冬舎新書)である。その著者で老年医学の第一人者・和田秀樹氏は、「楽な生き方」の実践こそが「健康長寿」の秘訣と明かす。読めば目からうろこのエッセンスが満載の特別講義をお届けする。 たとえば、高齢になってもタバコをやめない人がいたとします。昨今の風潮から、周りの人たちは「もう年なんだから」と禁煙を勧めますが、それまでタバコを嗜(たしな)んでいた人からすれば、どうしても我慢が生じます。 40~50代くらいまでの人なら健康維持のために効果的かもしれません。しかし、70~80代が禁煙するメリットと、我慢で生じるストレスのデメリットをてんびんにかけて、どちらがより健康に良くないか尋ねられたら、私は医師として後者だと助言します。実際、私の勤務していた老人ホームでの調査結果によれば喫煙者の群と非喫煙者群で生存曲線に大差がありませんでした。おそらく、煙草で体を壊す人は早くに亡くなってしまいますから、喫煙者でも80代まで元気なら、無理してやめる必要はないでしょう。 やりたいことがあるのに見栄を張って我慢をする。当然ここにはストレスが発生し、免疫機能に悪影響を与えます。逆に幸せな気分でいる時は、がん細胞を殺してくれる免疫細胞であるNK細胞の活性が上がるということが指摘されています。 高齢者が健康のためにと我慢して、結局ストレスで体を壊しては意味がありません。それよりも、自分がやりたいことを優先して、ストレスなく「楽に」「楽しんで」生きた方が幸せな人生だったといえるでしょうし、「健康寿命」にもいいのではないか。それが今回、私がお話ししたいテーマです』、「40~50代くらいまでの人なら健康維持のために効果的かもしれません。しかし、70~80代が禁煙するメリットと、我慢で生じるストレスのデメリットをてんびんにかけて、どちらがより健康に良くないか尋ねられたら、私は医師として後者だと助言します」、私の場合は、軽い肺気腫になっていたので、やむなく禁煙した。
・『アリとキリギリス、どちらが幸せ? 日本人の平均寿命(2020年統計)は男性81.64歳、女性87.74歳で世界でもトップクラスを誇りますが、心身共に健康でいられる「健康寿命」(19年統計)は男性72.68歳で女性75.83歳と大きな隔たりがあります。平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年、女性で約12年あるわけですが、それは病気や認知症などで誰かに介助されながら生きる平均期間を表します。充実した70代、80代になれるか否かは、この期間を元気で過ごせるかどうかにかかっている。それを私は拙著『80歳の壁』を通じて述べてきました。 それだけ聞くと、多くの人は“自分はまだ大丈夫”と老いた現実を認めようとせず、いかに健康を保つかを気にし始めます。食事制限で摂生に努めるなどしてストイックな毎日を過ごす方もいますが、日本人はアリとキリギリスの寓話でいえば、前者のような生き方こそ美徳と思いがちです。 目標に向かいコツコツと我慢強く頑張る姿は、傍目からは素晴らしいと映るかもしれません。けれど、見方を変えればアリは禁欲的に生活するあまり、楽しむことを知らずに死んでいく。片やキリギリスは人生の最期まで楽しんで死んでいったと解釈することもできます。共に最後は死にゆく運命なら、どちらが果たして幸せな人生といえるのか。現役世代ならコツコツとアリのように働くのが大事でも、退職後はキリギリスのように楽をしてもバチはあたらないと思います』、「共に最後は死にゆく運命なら、どちらが果たして幸せな人生といえるのか。現役世代ならコツコツとアリのように働くのが大事でも、退職後はキリギリスのように楽をしてもバチはあたらないと思います」、その通りだ。
・『「衰える」と「老いへの敗北」は違う 高齢者専門の精神科医として約35年間、6千人を超える患者を診てきた経験でいえば、身体に生じた衰えを受け入れたくない人たちは、本来必要であっても杖やおむつといった“老人の象徴”を拒絶して無理する傾向にあります。 しかし、「衰える」ことは決して「老いに敗北した」という意味と同義ではありません。筋力や認知機能の低下など、加齢による衰えはあらがってもやってくる。そうした現実を受け入れず、我慢を重ねて亡くなるより、足腰が弱くなったら杖をつき、耳が遠くなれば補聴器をつけ、使えるモノはうまく利用して楽をした方が、活動的で若々しく生きられるはずです。 大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れると思いませんか』、「大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れる」、その通りだ。
・『人生を楽しむ余地 さまざまな公的福祉のお世話になるのを恥ずかしいと思う高齢者もいますが、使えるものは利用するとの観点に立てば、そんなことはありません。これまで立派に保険料や税金を納め続けてきたわけですから、介護保険や生活保護だって利用するのは当然です。権利を行使する資格を持ちながら、お上の世話になるのはどうかと我慢するのはおかしな話です。 デイサービスやヘルパーも同様で、まだまだ自活できると努力するのは大切だし立派なことですが、若い頃のように何も不自由なく暮らせるのは、70代くらいまでなのが実状です。80代を迎えれば避けようのない衰えが待っています。 ならば、無用な意地を張らず他人の力を借りることができれば、その分人生を楽しむ余地が出てきます。デイサービスなどの施設に通って、入所者同士で語り合い合唱したりすれば脳が刺激される。面倒な家事からも解放されて、好きなことに使える時間も増えます。 さらには多くの高齢者が楽に生きられない要因のひとつとして、健康診断の影響は大きい。診断における正常値は、あくまで統計的なはずれ値を除いたものであって、明確な根拠のあるものではありません。当然ながら個人差があり、基準値を超えたから病気になる、基準値内だから自分は大丈夫とはならないのです。80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います』、「80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います」、確かにその通りだ。
・『年齢プラス90の血圧は問題ない たしかに70代ともなれば、大抵の人は血管の壁が厚くなって動脈硬化の状態になります。そのため、ある程度の血圧や血糖値がないと脳などに酸素や栄養が届きにくくなる。それなのに、多少血圧が高いからといって降圧剤で無理に血圧を下げれば、体へ栄養が行き渡らず結果として頭がぼんやりしてだるくなります。 そうした薬を服用する毎日から解放されたら、もっと人生が楽になると思いませんか。もちろん極度の高血圧は問題ですが、今の130以上を高血圧とする基準はあまりに低く設定されていると思います。日本人の死因で一番多かったのは、1980年まで脳血管疾患でした。この原因として高血圧がやり玉に挙げられてきましたが、栄養状態のよくなった今では多少血圧が高くてもそう簡単に脳の血管は破れません。高齢者でも年齢プラス90くらいの血圧値であれば、まず問題ないと考えてください。 血圧と同じくコレステロール値も下げろと言われますよね。動脈硬化の原因ではありますが、他方でコレステロール値が高い人ほどがんになりにくいというデータも存在します。日本では動脈硬化が一因となる心筋梗塞で亡くなる人と比べたら、がんで命を失う人の数の方が12倍も多い。またコレステロールは細胞膜の材料としても用いられるため、コレステロール値の低い人ほど免疫機能が落ちるといわれます。 寝たきりのリスク(加えて男性ホルモンを形成する上で欠かせない物質でもあるので、コレステロールを下げる薬を飲むとEDになりやすく、意欲や活力低下を招く。値を下げようと無理して肉を抜くよりも、食べたいものを口に入れた方がよほど健康的な老後を送れると思います。 食生活では塩分や糖分の摂取も控えるよう言われることが多いですよね。でも、年を重ねると舌の味を感じる機能である「味蕾(みらい)」が減少するため、濃い味付けを好むようになります。 ですから過剰に制限をかけるのはご法度です。高齢になるほど体に塩分を保持する能力が落ちます。これからの季節は発汗でも失われるので、この状態が続くと低ナトリウム血症を引き起こしてけいれんや意識障害に陥る。糖分も血中のブドウ糖濃度が下がれば頭がぼんやりしてくる。降圧剤を服用しているなら尚更で、運転中にこうした事態が起きれば事故を起こしかねません。 無理してダイエットに励んでいる人は再考を勧めます。50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう。 特に肉の摂取量を落とせばタンパク質不足から筋量低下に陥り、転倒して寝たきりのリスクも高まります。高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります』、「50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう・・・高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります」、なるほど。
・『一人飲みに要注意 冒頭でタバコの話をしましたが、最後にお酒との付き合い方を考えてみましょう。ご高齢の方は若い人に比べてアルコールを分解する能力が下がるため酔いやすく、結果的に飲み過ぎにはなりにくいので禁酒にこだわる必要はありません。ただし、お酒はどうしても依存症のリスクが高いので程々が大切。一人飲みだと、飲み過ぎた時にとめてくれる人がいないので、お酒が好きな人は気を付けた方がいいでしょう。おすすめなのは気の合う人と飲むこと。飲食店の制限も緩和された今、友と語らいながら飲むことは刺激になりますし、外に出ることでリフレッシュにもなります。 これを機に人間関係を見直すのも大切です。現役時代なら嫌な人と付き合う意味もあったでしょうが、リタイアしたら無理して関係を続ける必要はありません。限られた余生を自分のために使って誰が文句を言いますか。高齢者にとっては、今こそ悠々自適に過ごすチャンスなのです。 (和田秀樹氏の略歴はリンク先参照)「現役時代なら嫌な人と付き合う意味もあったでしょうが、リタイアしたら無理して関係を続ける必要はありません。限られた余生を自分のために使って誰が文句を言いますか。高齢者にとっては、今こそ悠々自適に過ごすチャンスなのです」、その通りだ。
第二に、本年2月16日付けMerkmalが掲載した日英比較ライターの鳴海汐氏による「日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ」を紹介しよう。
https://merkmal-biz.jp/post/33326
・『近年関心が高まっている問題のひとつに「高齢ドライバーによる交通事故」がある。 東京・池袋で2019年4月に起きた高齢ドライバーによる交通死亡事故などを受けて、2022年5月から、75歳以上で一定の違反歴のある高齢運転者に対する運転技能検査が導入された。「一時停止ができるか」「信号を守れるか」といった運転技能を採点。不合格の場合は何度でも再受験できるものの、第1種運転免許では70点以上でないと合格とならないということで、ある程度の事故抑止効果が見込まれている。 高齢化が進むなかで、高齢者の運転能力の衰えへの対応や、免許返納などの対策が重要になってきているが、これらは非常にデリケートなテーマでもある。海外ではどのように受け止められているか見てみよう』、興味深そうだ。
・『驚くべきイギリスの高齢者の運転免許保有率 海外で高齢の運転者といえば、前イギリス女王夫妻(ともに故人)が思い出される。エリザベス女王は92歳、フィリップ殿下は97歳まで運転していたことに驚く人は少なくないだろう。 イギリスには90 歳以上の運転免許保有者が13万4000人以上いるのだという。持っている人数であって実際に運転していることを示すわけではないが、85歳以上では、2025 年までに100 万人を超えると予測されている(2022年10月24日付、『Express』)。イギリスの約2倍の人口を持つ日本において、2021年の時点で85歳以上の運転免許保有者が71万人であることと比べれば、その多さが分かる。 超高齢のドライバーの人数だけでなく、興味深い数字がもうひとつある。イギリスでは2020年の時点で、70歳以上の運転免許保有者は560万人(この10年で2倍に増えた)なのだが、これはこの年代の 62% が免許証を持ち続けているという計算になる。日本では、2021年の70歳以上の運転免許保有者は1285万人で、この年代の45%に過ぎない。)』、「85歳以上の運転免許保有者が71万人」、日本と比べたら極めて多い。
・『イギリスの高齢者の免許更新制度 イギリスの高齢者の免許保有率の高さは、免許更新が簡単であることも影響していそうだ。日本のように運転免許センターや警察署に出向いて検査や講習を受ける必要はない。 運転免許はいったん70歳の区切りがあるのだが、それ以降も運転する意思がある場合は、DVLA(運転免許庁)にオンラインか郵送で申請する。料金は無料。3年ごとに更新していく。 手続きは非常に簡単であるが、免許更新について事故防止への対策はいくつか講じられている。 高齢者に限ったことではないが、必要に応じてメガネやコンタクト・レンズを着用した状態で、晴れた日に20m離れた車のナンバー・プレートを読み取る視力基準を満たしている必要がある。 運転に影響を与えるような持病があれば、申告する必要がある。これを怠った場合は最大1000ポンドの罰金が科される可能性がある。事故が発生すれば起訴される場合もある。 本人が運転能力に不安を感じた場合はどうしたらいいのか。まずは主治医に相談することが推奨されている。また秘密保持が徹底されているいくつかの団体に、客観的に運転を判断してもらう方法もある。 このようにイギリスでは、高齢者の運転免許について国が取り締まるというよりも、自己の判断に委ねられている、個人の運転する自由が尊重されているといった印象が強い。また日本ほど、「免許を返納しなければいけない」という同調圧力もないようだ。 高齢化が進むなかで、高齢者の運転能力の衰えへの対応や、免許返納などの対策が重要になってきているが、これらは非常にデリケートなテーマでもある。海外ではどのように受け止められているのだろうか』、「イギリスでは、高齢者の運転免許について国が取り締まるというよりも、自己の判断に委ねられている、個人の運転する自由が尊重されているといった印象が強い。また日本ほど、「免許を返納しなければいけない」という同調圧力もないようだ」、自己責任原則が徹底されており、「自己の判断に委ねられている」、その通りだ。
・『イギリスでの高齢者に関する受け止め方 2021年のイギリスにおける車の衝突事故数は、70歳以上が起こしたものは8232件で全体の6%にすぎなかった。最多である30代の2万6195件と比べ、ずっと少ない。 走行距離や運転する機会が少ないことも考えられるので、「高齢者の運転が安全だ」とは言い切れないが、件数が少ないのは確かである。 英国王立事故防止協会(The Royal Society for the Prevention of Accidents) の高齢運転者向けホームページでは、「年を取るほど、ドライバーとしての経験が増えます。これは、年配のドライバーが、より安全で思いやりのあるドライバーになる傾向がある理由のひとつです」といった表現が見られる。 ここでは、免許返納の検討をすぐに勧めるのではなく、運転に関連する能力の衰えについては、再訓練であったり、全周視野を補助する補助ミラーや駐車センサーを付けたりといったことで改善できないかと提案している。夜道やラッシュアワー時など、ストレスがかかる運転を避けるなどして、より長く運転していけるよう提案している。 「運転に安全な年齢に上限はないと考えています」といった表記からは、高齢者を十把ひとからげにしない意識が感じられる。 イギリスでも、「運転について年齢制限を導入すべきではないか」という論争があるのは確かである。しかしタブロイド紙のデーリー・エクスプレスのウェブ版が2023年2月に行った「85歳で免許返納すべきか」というアンケートでは、回答者3462人中91%が「あからさまな差別」として反対した。日本とは世論が大きく違っている。 そして免許返納の問題は、社会的タブーであるとされている。とくに男性については運転が自己と深く結びついているという見方がある(2022年10月26日付、『BBC』)。 日本では2022年5月から、自動ブレーキなどを備えた「安全運転サポート車」だけを運転できる免許制度が始まるなど、技術の進歩によって運転能力の衰えを補う取り組みも始まった。 現在は、世界全体で自動運転が浸透するまでの過渡期にある。免許返納の前にできること、今すぐ手に入れられる技術や環境の改善に目を向けていくことが、今求められているのではないだろうか』、日本でも「事故率」など事実に基づいた議論よりも、池袋の事故の影響で冷静な議論がないままに、免許更新時の認知症試験など規制強化に進んだのは残念だ。
第三に、2月21日付けFlash「「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」」を紹介しよう。
・『「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」 こんな過激な主張の発言者は、経済学者で米イェール大学助教授の成田悠輔氏(38)。 東大時代、きわめて優秀な卒業論文に与えられる大内兵衛賞を受賞し、最近は個性的なメガネをトレードマークにバラエティ番組にも引っ張りだこ。マスコミがもてはやすスター学者が、冒頭のような主張をABEMAの番組やYouTubeで繰り返し述べ、大騒動になっているのだ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」(2月12日付)が一連の発言を「このうえないほど過激」と報じると、イェール大学は公式HPの成田氏のプロフ欄に「大学の見解を代表するものではない」と、わざわざ注釈を入れた。 では、自決や切腹を求められた側はどう受け止めたのか。まずは東京大学名誉教授で『バカの壁』(新潮新書)著者の養老孟司氏(85)に聞いたーー。 「彼の発言にはいろんな背景があると思いますが、ひとつは、社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。 今の若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです。 僕は、定年前にさっさと大学を辞めてしまいました。大学ってのは、若い人が下に溜まっている場所なんです。「終活」をしている人も、子供に迷惑をかけたくないという思いがあるのでしょう。これも順送りの考え方です。 しかし、今は長い目で世の中を見ることができない人が増えた。今だけ、カネだけ、自分だけしか見えない。 そりゃ、“今”という断面で切ったら、不公平はいっぱいありますよ。しかし、長い目で見ると、結局は順送りになっているんだということが、彼にはなかなか想像がつかないのだろうけど。 彼の発言については、問題にする気も起きません。放っておけばいいと思います。でも、世の中は順送りなんだという、このことだけは強調したいですね」 早稲田大学名誉教授で、社会心理学者として『テレフォン人生相談』(ニッポン放送)のパーソナリティを40年以上務める加藤諦三氏(85)は、成田発言をこう分析する。 「こういう発言をするのは、心理的な成長に失敗した人です。現実の社会には、複雑な要素が絡んでいますが、彼のように、過激で極端な見方をする人は、その“現実”と接していないんですよ。 彼の主張はあまりに極論ですが、もしかすると経済学的には正しいのかもしれない。しかし、そこには『人類が幸せになっていく』という視点が抜け落ちています。経済的な成功が、必ずしも人に幸せをもたらすものではないことは、1960年代にデイヴィッド・リースマンが論じています。 人間は本来、成長するに従って、徐々に視点が増えていくわけです。しかし、彼の視点はひとつしかないのです」 推理小説『たかが殺人じゃないか』(東京創元社)が、2020年の「このミステリーがすごい!」など3つの主要ランキングで1位を獲得した作家の辻真先氏(90)は、成田発言に怒り心頭だ。 「彼はまだ若いから、自分は死ぬはずがないと思っているのでしょうが、心配いりません。誰でも年を取るんですから。どうぞ、ごゆっくり年寄りになってください。それでも主張が変わらなかったら、そのときは自ら、高齢者問題を解決してください。 私は、テレビ草創期のプロデューサーでした。今はYouTubeも観ますが、皆さん気楽にお話しされているようですね。それはいいことだと思うのですが、今回に関しては『自分が高齢者になってから言え!』と思いました」 エッセイスト、農園主、画家として活躍する玉村豊男氏(77)は、成田氏の主張に一定の理解を示す。 「彼が『高齢者はリタイアすべきだ』と言いたいのなら、その意見には大賛成です。『日本は、既得権益に結びついた年寄りばかりいるから変化が進まない』というのは、その通りですよ。年を取ったら次の若い世代に交代しなきゃいけないと、僕も思っています。 ただ、『切腹』なんて言えば、外国人は驚くでしょうね。そのくらい強い言葉を使わないと世間に伝わらないと思ったのかもしれないし、物議を醸すのも彼なりの計算だったのかもしれません。 でも『一斉退場』くらいにしておけばよかった。『80歳を過ぎた政治家は退場』と言えば、もっと賛同する人がいたと思いますね。 元日本赤軍メンバーで、安倍元首相を銃撃した山上徹也被告をモデルにした映画『REVOLUTION+1』を監督して物議を醸した足立正生氏(83)も取材に応じた。 「耳目を集めたくて言ってるだけなんだろうけど、それなら、なぜ若い世代に向けて発言しないのか。年寄りに何かを求めるんじゃなくて、若者に「集団蜂起せよ」って呼びかければいいんだ。 俺の世代が「集団自決」と聞いて思い起こすのは、沖縄戦であり、バンザイクリフだよ。この言葉にはそういう意味がある。この男は日本の歴史を知らないのか。あるいは想像力が欠如しているのか」 本誌は、哲学者で文学者の柄谷行人氏(81)の自宅にも訪れた。成田氏は中高生時代、柄谷氏が主宰する社会運動グループに参加していたことがあるためだ。 「発言は知っていますが、事情がよくわからないんです。正直、興味もない。だから無責任なコメントはしません」 以上の6人に比べれば“ヒヨッコ”同然の成田氏だが、老害化する前に表舞台から消えたりして』、「6人」のうち、私が面白いと思ったのは、以下の2名だ。「養老孟司氏」が 「社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。 今の若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです」、「辻真先氏」は、成田発言に怒り心頭だ。 「彼はまだ若いから、自分は死ぬはずがないと思っているのでしょうが、心配いりません。誰でも年を取るんですから。どうぞ、ごゆっくり年寄りになってください。それでも主張が変わらなかったら、そのときは自ら、高齢者問題を解決してください」、「成田」氏がそのうちの反論してくるとすれば楽しみだ。
先ずは、昨年6月5日付けデイリー新潮が掲載した精神科医の和田秀樹氏による「酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/06051058/?all=1
・『豊かな老後を過ごすためにすべきことを説き、ベストセラーとなっているのが『80歳の壁』(幻冬舎新書)である。その著者で老年医学の第一人者・和田秀樹氏は、「楽な生き方」の実践こそが「健康長寿」の秘訣と明かす。読めば目からうろこのエッセンスが満載の特別講義をお届けする。 たとえば、高齢になってもタバコをやめない人がいたとします。昨今の風潮から、周りの人たちは「もう年なんだから」と禁煙を勧めますが、それまでタバコを嗜(たしな)んでいた人からすれば、どうしても我慢が生じます。 40~50代くらいまでの人なら健康維持のために効果的かもしれません。しかし、70~80代が禁煙するメリットと、我慢で生じるストレスのデメリットをてんびんにかけて、どちらがより健康に良くないか尋ねられたら、私は医師として後者だと助言します。実際、私の勤務していた老人ホームでの調査結果によれば喫煙者の群と非喫煙者群で生存曲線に大差がありませんでした。おそらく、煙草で体を壊す人は早くに亡くなってしまいますから、喫煙者でも80代まで元気なら、無理してやめる必要はないでしょう。 やりたいことがあるのに見栄を張って我慢をする。当然ここにはストレスが発生し、免疫機能に悪影響を与えます。逆に幸せな気分でいる時は、がん細胞を殺してくれる免疫細胞であるNK細胞の活性が上がるということが指摘されています。 高齢者が健康のためにと我慢して、結局ストレスで体を壊しては意味がありません。それよりも、自分がやりたいことを優先して、ストレスなく「楽に」「楽しんで」生きた方が幸せな人生だったといえるでしょうし、「健康寿命」にもいいのではないか。それが今回、私がお話ししたいテーマです』、「40~50代くらいまでの人なら健康維持のために効果的かもしれません。しかし、70~80代が禁煙するメリットと、我慢で生じるストレスのデメリットをてんびんにかけて、どちらがより健康に良くないか尋ねられたら、私は医師として後者だと助言します」、私の場合は、軽い肺気腫になっていたので、やむなく禁煙した。
・『アリとキリギリス、どちらが幸せ? 日本人の平均寿命(2020年統計)は男性81.64歳、女性87.74歳で世界でもトップクラスを誇りますが、心身共に健康でいられる「健康寿命」(19年統計)は男性72.68歳で女性75.83歳と大きな隔たりがあります。平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年、女性で約12年あるわけですが、それは病気や認知症などで誰かに介助されながら生きる平均期間を表します。充実した70代、80代になれるか否かは、この期間を元気で過ごせるかどうかにかかっている。それを私は拙著『80歳の壁』を通じて述べてきました。 それだけ聞くと、多くの人は“自分はまだ大丈夫”と老いた現実を認めようとせず、いかに健康を保つかを気にし始めます。食事制限で摂生に努めるなどしてストイックな毎日を過ごす方もいますが、日本人はアリとキリギリスの寓話でいえば、前者のような生き方こそ美徳と思いがちです。 目標に向かいコツコツと我慢強く頑張る姿は、傍目からは素晴らしいと映るかもしれません。けれど、見方を変えればアリは禁欲的に生活するあまり、楽しむことを知らずに死んでいく。片やキリギリスは人生の最期まで楽しんで死んでいったと解釈することもできます。共に最後は死にゆく運命なら、どちらが果たして幸せな人生といえるのか。現役世代ならコツコツとアリのように働くのが大事でも、退職後はキリギリスのように楽をしてもバチはあたらないと思います』、「共に最後は死にゆく運命なら、どちらが果たして幸せな人生といえるのか。現役世代ならコツコツとアリのように働くのが大事でも、退職後はキリギリスのように楽をしてもバチはあたらないと思います」、その通りだ。
・『「衰える」と「老いへの敗北」は違う 高齢者専門の精神科医として約35年間、6千人を超える患者を診てきた経験でいえば、身体に生じた衰えを受け入れたくない人たちは、本来必要であっても杖やおむつといった“老人の象徴”を拒絶して無理する傾向にあります。 しかし、「衰える」ことは決して「老いに敗北した」という意味と同義ではありません。筋力や認知機能の低下など、加齢による衰えはあらがってもやってくる。そうした現実を受け入れず、我慢を重ねて亡くなるより、足腰が弱くなったら杖をつき、耳が遠くなれば補聴器をつけ、使えるモノはうまく利用して楽をした方が、活動的で若々しく生きられるはずです。 大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れると思いませんか』、「大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れる」、その通りだ。
・『人生を楽しむ余地 さまざまな公的福祉のお世話になるのを恥ずかしいと思う高齢者もいますが、使えるものは利用するとの観点に立てば、そんなことはありません。これまで立派に保険料や税金を納め続けてきたわけですから、介護保険や生活保護だって利用するのは当然です。権利を行使する資格を持ちながら、お上の世話になるのはどうかと我慢するのはおかしな話です。 デイサービスやヘルパーも同様で、まだまだ自活できると努力するのは大切だし立派なことですが、若い頃のように何も不自由なく暮らせるのは、70代くらいまでなのが実状です。80代を迎えれば避けようのない衰えが待っています。 ならば、無用な意地を張らず他人の力を借りることができれば、その分人生を楽しむ余地が出てきます。デイサービスなどの施設に通って、入所者同士で語り合い合唱したりすれば脳が刺激される。面倒な家事からも解放されて、好きなことに使える時間も増えます。 さらには多くの高齢者が楽に生きられない要因のひとつとして、健康診断の影響は大きい。診断における正常値は、あくまで統計的なはずれ値を除いたものであって、明確な根拠のあるものではありません。当然ながら個人差があり、基準値を超えたから病気になる、基準値内だから自分は大丈夫とはならないのです。80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います』、「80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います」、確かにその通りだ。
・『年齢プラス90の血圧は問題ない たしかに70代ともなれば、大抵の人は血管の壁が厚くなって動脈硬化の状態になります。そのため、ある程度の血圧や血糖値がないと脳などに酸素や栄養が届きにくくなる。それなのに、多少血圧が高いからといって降圧剤で無理に血圧を下げれば、体へ栄養が行き渡らず結果として頭がぼんやりしてだるくなります。 そうした薬を服用する毎日から解放されたら、もっと人生が楽になると思いませんか。もちろん極度の高血圧は問題ですが、今の130以上を高血圧とする基準はあまりに低く設定されていると思います。日本人の死因で一番多かったのは、1980年まで脳血管疾患でした。この原因として高血圧がやり玉に挙げられてきましたが、栄養状態のよくなった今では多少血圧が高くてもそう簡単に脳の血管は破れません。高齢者でも年齢プラス90くらいの血圧値であれば、まず問題ないと考えてください。 血圧と同じくコレステロール値も下げろと言われますよね。動脈硬化の原因ではありますが、他方でコレステロール値が高い人ほどがんになりにくいというデータも存在します。日本では動脈硬化が一因となる心筋梗塞で亡くなる人と比べたら、がんで命を失う人の数の方が12倍も多い。またコレステロールは細胞膜の材料としても用いられるため、コレステロール値の低い人ほど免疫機能が落ちるといわれます。 寝たきりのリスク(加えて男性ホルモンを形成する上で欠かせない物質でもあるので、コレステロールを下げる薬を飲むとEDになりやすく、意欲や活力低下を招く。値を下げようと無理して肉を抜くよりも、食べたいものを口に入れた方がよほど健康的な老後を送れると思います。 食生活では塩分や糖分の摂取も控えるよう言われることが多いですよね。でも、年を重ねると舌の味を感じる機能である「味蕾(みらい)」が減少するため、濃い味付けを好むようになります。 ですから過剰に制限をかけるのはご法度です。高齢になるほど体に塩分を保持する能力が落ちます。これからの季節は発汗でも失われるので、この状態が続くと低ナトリウム血症を引き起こしてけいれんや意識障害に陥る。糖分も血中のブドウ糖濃度が下がれば頭がぼんやりしてくる。降圧剤を服用しているなら尚更で、運転中にこうした事態が起きれば事故を起こしかねません。 無理してダイエットに励んでいる人は再考を勧めます。50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう。 特に肉の摂取量を落とせばタンパク質不足から筋量低下に陥り、転倒して寝たきりのリスクも高まります。高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります』、「50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう・・・高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります」、なるほど。
・『一人飲みに要注意 冒頭でタバコの話をしましたが、最後にお酒との付き合い方を考えてみましょう。ご高齢の方は若い人に比べてアルコールを分解する能力が下がるため酔いやすく、結果的に飲み過ぎにはなりにくいので禁酒にこだわる必要はありません。ただし、お酒はどうしても依存症のリスクが高いので程々が大切。一人飲みだと、飲み過ぎた時にとめてくれる人がいないので、お酒が好きな人は気を付けた方がいいでしょう。おすすめなのは気の合う人と飲むこと。飲食店の制限も緩和された今、友と語らいながら飲むことは刺激になりますし、外に出ることでリフレッシュにもなります。 これを機に人間関係を見直すのも大切です。現役時代なら嫌な人と付き合う意味もあったでしょうが、リタイアしたら無理して関係を続ける必要はありません。限られた余生を自分のために使って誰が文句を言いますか。高齢者にとっては、今こそ悠々自適に過ごすチャンスなのです。 (和田秀樹氏の略歴はリンク先参照)「現役時代なら嫌な人と付き合う意味もあったでしょうが、リタイアしたら無理して関係を続ける必要はありません。限られた余生を自分のために使って誰が文句を言いますか。高齢者にとっては、今こそ悠々自適に過ごすチャンスなのです」、その通りだ。
第二に、本年2月16日付けMerkmalが掲載した日英比較ライターの鳴海汐氏による「日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ」を紹介しよう。
https://merkmal-biz.jp/post/33326
・『近年関心が高まっている問題のひとつに「高齢ドライバーによる交通事故」がある。 東京・池袋で2019年4月に起きた高齢ドライバーによる交通死亡事故などを受けて、2022年5月から、75歳以上で一定の違反歴のある高齢運転者に対する運転技能検査が導入された。「一時停止ができるか」「信号を守れるか」といった運転技能を採点。不合格の場合は何度でも再受験できるものの、第1種運転免許では70点以上でないと合格とならないということで、ある程度の事故抑止効果が見込まれている。 高齢化が進むなかで、高齢者の運転能力の衰えへの対応や、免許返納などの対策が重要になってきているが、これらは非常にデリケートなテーマでもある。海外ではどのように受け止められているか見てみよう』、興味深そうだ。
・『驚くべきイギリスの高齢者の運転免許保有率 海外で高齢の運転者といえば、前イギリス女王夫妻(ともに故人)が思い出される。エリザベス女王は92歳、フィリップ殿下は97歳まで運転していたことに驚く人は少なくないだろう。 イギリスには90 歳以上の運転免許保有者が13万4000人以上いるのだという。持っている人数であって実際に運転していることを示すわけではないが、85歳以上では、2025 年までに100 万人を超えると予測されている(2022年10月24日付、『Express』)。イギリスの約2倍の人口を持つ日本において、2021年の時点で85歳以上の運転免許保有者が71万人であることと比べれば、その多さが分かる。 超高齢のドライバーの人数だけでなく、興味深い数字がもうひとつある。イギリスでは2020年の時点で、70歳以上の運転免許保有者は560万人(この10年で2倍に増えた)なのだが、これはこの年代の 62% が免許証を持ち続けているという計算になる。日本では、2021年の70歳以上の運転免許保有者は1285万人で、この年代の45%に過ぎない。)』、「85歳以上の運転免許保有者が71万人」、日本と比べたら極めて多い。
・『イギリスの高齢者の免許更新制度 イギリスの高齢者の免許保有率の高さは、免許更新が簡単であることも影響していそうだ。日本のように運転免許センターや警察署に出向いて検査や講習を受ける必要はない。 運転免許はいったん70歳の区切りがあるのだが、それ以降も運転する意思がある場合は、DVLA(運転免許庁)にオンラインか郵送で申請する。料金は無料。3年ごとに更新していく。 手続きは非常に簡単であるが、免許更新について事故防止への対策はいくつか講じられている。 高齢者に限ったことではないが、必要に応じてメガネやコンタクト・レンズを着用した状態で、晴れた日に20m離れた車のナンバー・プレートを読み取る視力基準を満たしている必要がある。 運転に影響を与えるような持病があれば、申告する必要がある。これを怠った場合は最大1000ポンドの罰金が科される可能性がある。事故が発生すれば起訴される場合もある。 本人が運転能力に不安を感じた場合はどうしたらいいのか。まずは主治医に相談することが推奨されている。また秘密保持が徹底されているいくつかの団体に、客観的に運転を判断してもらう方法もある。 このようにイギリスでは、高齢者の運転免許について国が取り締まるというよりも、自己の判断に委ねられている、個人の運転する自由が尊重されているといった印象が強い。また日本ほど、「免許を返納しなければいけない」という同調圧力もないようだ。 高齢化が進むなかで、高齢者の運転能力の衰えへの対応や、免許返納などの対策が重要になってきているが、これらは非常にデリケートなテーマでもある。海外ではどのように受け止められているのだろうか』、「イギリスでは、高齢者の運転免許について国が取り締まるというよりも、自己の判断に委ねられている、個人の運転する自由が尊重されているといった印象が強い。また日本ほど、「免許を返納しなければいけない」という同調圧力もないようだ」、自己責任原則が徹底されており、「自己の判断に委ねられている」、その通りだ。
・『イギリスでの高齢者に関する受け止め方 2021年のイギリスにおける車の衝突事故数は、70歳以上が起こしたものは8232件で全体の6%にすぎなかった。最多である30代の2万6195件と比べ、ずっと少ない。 走行距離や運転する機会が少ないことも考えられるので、「高齢者の運転が安全だ」とは言い切れないが、件数が少ないのは確かである。 英国王立事故防止協会(The Royal Society for the Prevention of Accidents) の高齢運転者向けホームページでは、「年を取るほど、ドライバーとしての経験が増えます。これは、年配のドライバーが、より安全で思いやりのあるドライバーになる傾向がある理由のひとつです」といった表現が見られる。 ここでは、免許返納の検討をすぐに勧めるのではなく、運転に関連する能力の衰えについては、再訓練であったり、全周視野を補助する補助ミラーや駐車センサーを付けたりといったことで改善できないかと提案している。夜道やラッシュアワー時など、ストレスがかかる運転を避けるなどして、より長く運転していけるよう提案している。 「運転に安全な年齢に上限はないと考えています」といった表記からは、高齢者を十把ひとからげにしない意識が感じられる。 イギリスでも、「運転について年齢制限を導入すべきではないか」という論争があるのは確かである。しかしタブロイド紙のデーリー・エクスプレスのウェブ版が2023年2月に行った「85歳で免許返納すべきか」というアンケートでは、回答者3462人中91%が「あからさまな差別」として反対した。日本とは世論が大きく違っている。 そして免許返納の問題は、社会的タブーであるとされている。とくに男性については運転が自己と深く結びついているという見方がある(2022年10月26日付、『BBC』)。 日本では2022年5月から、自動ブレーキなどを備えた「安全運転サポート車」だけを運転できる免許制度が始まるなど、技術の進歩によって運転能力の衰えを補う取り組みも始まった。 現在は、世界全体で自動運転が浸透するまでの過渡期にある。免許返納の前にできること、今すぐ手に入れられる技術や環境の改善に目を向けていくことが、今求められているのではないだろうか』、日本でも「事故率」など事実に基づいた議論よりも、池袋の事故の影響で冷静な議論がないままに、免許更新時の認知症試験など規制強化に進んだのは残念だ。
第三に、2月21日付けFlash「「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」」を紹介しよう。
・『「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」 こんな過激な主張の発言者は、経済学者で米イェール大学助教授の成田悠輔氏(38)。 東大時代、きわめて優秀な卒業論文に与えられる大内兵衛賞を受賞し、最近は個性的なメガネをトレードマークにバラエティ番組にも引っ張りだこ。マスコミがもてはやすスター学者が、冒頭のような主張をABEMAの番組やYouTubeで繰り返し述べ、大騒動になっているのだ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」(2月12日付)が一連の発言を「このうえないほど過激」と報じると、イェール大学は公式HPの成田氏のプロフ欄に「大学の見解を代表するものではない」と、わざわざ注釈を入れた。 では、自決や切腹を求められた側はどう受け止めたのか。まずは東京大学名誉教授で『バカの壁』(新潮新書)著者の養老孟司氏(85)に聞いたーー。 「彼の発言にはいろんな背景があると思いますが、ひとつは、社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。 今の若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです。 僕は、定年前にさっさと大学を辞めてしまいました。大学ってのは、若い人が下に溜まっている場所なんです。「終活」をしている人も、子供に迷惑をかけたくないという思いがあるのでしょう。これも順送りの考え方です。 しかし、今は長い目で世の中を見ることができない人が増えた。今だけ、カネだけ、自分だけしか見えない。 そりゃ、“今”という断面で切ったら、不公平はいっぱいありますよ。しかし、長い目で見ると、結局は順送りになっているんだということが、彼にはなかなか想像がつかないのだろうけど。 彼の発言については、問題にする気も起きません。放っておけばいいと思います。でも、世の中は順送りなんだという、このことだけは強調したいですね」 早稲田大学名誉教授で、社会心理学者として『テレフォン人生相談』(ニッポン放送)のパーソナリティを40年以上務める加藤諦三氏(85)は、成田発言をこう分析する。 「こういう発言をするのは、心理的な成長に失敗した人です。現実の社会には、複雑な要素が絡んでいますが、彼のように、過激で極端な見方をする人は、その“現実”と接していないんですよ。 彼の主張はあまりに極論ですが、もしかすると経済学的には正しいのかもしれない。しかし、そこには『人類が幸せになっていく』という視点が抜け落ちています。経済的な成功が、必ずしも人に幸せをもたらすものではないことは、1960年代にデイヴィッド・リースマンが論じています。 人間は本来、成長するに従って、徐々に視点が増えていくわけです。しかし、彼の視点はひとつしかないのです」 推理小説『たかが殺人じゃないか』(東京創元社)が、2020年の「このミステリーがすごい!」など3つの主要ランキングで1位を獲得した作家の辻真先氏(90)は、成田発言に怒り心頭だ。 「彼はまだ若いから、自分は死ぬはずがないと思っているのでしょうが、心配いりません。誰でも年を取るんですから。どうぞ、ごゆっくり年寄りになってください。それでも主張が変わらなかったら、そのときは自ら、高齢者問題を解決してください。 私は、テレビ草創期のプロデューサーでした。今はYouTubeも観ますが、皆さん気楽にお話しされているようですね。それはいいことだと思うのですが、今回に関しては『自分が高齢者になってから言え!』と思いました」 エッセイスト、農園主、画家として活躍する玉村豊男氏(77)は、成田氏の主張に一定の理解を示す。 「彼が『高齢者はリタイアすべきだ』と言いたいのなら、その意見には大賛成です。『日本は、既得権益に結びついた年寄りばかりいるから変化が進まない』というのは、その通りですよ。年を取ったら次の若い世代に交代しなきゃいけないと、僕も思っています。 ただ、『切腹』なんて言えば、外国人は驚くでしょうね。そのくらい強い言葉を使わないと世間に伝わらないと思ったのかもしれないし、物議を醸すのも彼なりの計算だったのかもしれません。 でも『一斉退場』くらいにしておけばよかった。『80歳を過ぎた政治家は退場』と言えば、もっと賛同する人がいたと思いますね。 元日本赤軍メンバーで、安倍元首相を銃撃した山上徹也被告をモデルにした映画『REVOLUTION+1』を監督して物議を醸した足立正生氏(83)も取材に応じた。 「耳目を集めたくて言ってるだけなんだろうけど、それなら、なぜ若い世代に向けて発言しないのか。年寄りに何かを求めるんじゃなくて、若者に「集団蜂起せよ」って呼びかければいいんだ。 俺の世代が「集団自決」と聞いて思い起こすのは、沖縄戦であり、バンザイクリフだよ。この言葉にはそういう意味がある。この男は日本の歴史を知らないのか。あるいは想像力が欠如しているのか」 本誌は、哲学者で文学者の柄谷行人氏(81)の自宅にも訪れた。成田氏は中高生時代、柄谷氏が主宰する社会運動グループに参加していたことがあるためだ。 「発言は知っていますが、事情がよくわからないんです。正直、興味もない。だから無責任なコメントはしません」 以上の6人に比べれば“ヒヨッコ”同然の成田氏だが、老害化する前に表舞台から消えたりして』、「6人」のうち、私が面白いと思ったのは、以下の2名だ。「養老孟司氏」が 「社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。 今の若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです」、「辻真先氏」は、成田発言に怒り心頭だ。 「彼はまだ若いから、自分は死ぬはずがないと思っているのでしょうが、心配いりません。誰でも年を取るんですから。どうぞ、ごゆっくり年寄りになってください。それでも主張が変わらなかったら、そのときは自ら、高齢者問題を解決してください」、「成田」氏がそのうちの反論してくるとすれば楽しみだ。
タグ:高齢化社会 (その18)(和田秀樹:酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」、日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ、「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」) デイリー新潮 和田秀樹氏による「酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」」 『80歳の壁』(幻冬舎新書) 「40~50代くらいまでの人なら健康維持のために効果的かもしれません。しかし、70~80代が禁煙するメリットと、我慢で生じるストレスのデメリットをてんびんにかけて、どちらがより健康に良くないか尋ねられたら、私は医師として後者だと助言します」 私の場合は、軽い肺気腫になっていたので、やむなく禁煙した。 「共に最後は死にゆく運命なら、どちらが果たして幸せな人生といえるのか。現役世代ならコツコツとアリのように働くのが大事でも、退職後はキリギリスのように楽をしてもバチはあたらないと思います」、その通りだ。 「大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れる」、その通りだ。 「80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います」、確かにその通りだ。 「50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう・・・高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります」、なるほど。 「現役時代なら嫌な人と付き合う意味もあったでしょうが、リタイアしたら無理して関係を続ける必要はありません。限られた余生を自分のために使って誰が文句を言いますか。高齢者にとっては、今こそ悠々自適に過ごすチャンスなのです」、その通りだ。 Merkmal 鳴海汐氏による「日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ」 高齢ドライバーによる交通事故 イギリスには90 歳以上の運転免許保有者が13万4000人以上いる 85歳以上では、2025 年までに100 万人を超えると予測されている 70歳以上の運転免許保有者は560万人(この10年で2倍に増えた)なのだが、これはこの年代の 62% が免許証を持ち続けているという計算になる。日本では、2021年の70歳以上の運転免許保有者は1285万人で、この年代の45%に過ぎない 「85歳以上の運転免許保有者が71万人」、日本と比べたら極めて多い。 免許更新が簡単 「イギリスでは、高齢者の運転免許について国が取り締まるというよりも、自己の判断に委ねられている、個人の運転する自由が尊重されているといった印象が強い。また日本ほど、「免許を返納しなければいけない」という同調圧力もないようだ」、自己責任原則が徹底されており、「自己の判断に委ねられている」、その通りだ。 「85歳で免許返納すべきか」というアンケートでは、回答者3462人中91%が「あからさまな差別」として反対 日本でも「事故率」など事実に基づいた議論よりも、池袋の事故の影響で冷静な議論がないままに、免許更新時の認知症試験など規制強化に進んだのは残念だ。 Flash「「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」」 「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」 「6人」のうち、私が面白いと思ったのは、以下の2名だ。「養老孟司氏」が 「社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。 今の若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです」、 「辻真先氏」は、成田発言に怒り心頭だ。 「彼はまだ若いから、自分は死ぬはずがないと思っているのでしょうが、心配いりません。誰でも年を取るんですから。どうぞ、ごゆっくり年寄りになってください。それでも主張が変わらなかったら、そのときは自ら、高齢者問題を解決してください」、 「成田」氏がそのうちの反論してくるとすれば楽しみだ。
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