パンデミック(経済社会的視点)(その26)(感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには 日本版「ナイチンゲール病院」実現を、米国 中国で複数の感染症が大流行 日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ インフル RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?) [パンデミック]
パンデミック(経済社会的視点)については、本年5月24日に取上げた。今日は、(その26)(感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには 日本版「ナイチンゲール病院」実現を、米国 中国で複数の感染症が大流行 日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ インフル RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?)である。
先ずは、本年9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには、日本版「ナイチンゲール病院」実現を」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328658
・『「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日に発足した。新型コロナ対策の反省を踏まえて、政府による感染症対策を一元的に担うという。だが筆者はこうした改革を経ても、日本における医療体制の問題が改善されるかは微妙だと考える。では医療再崩壊を防ぐに当たって、日本は今後どうすべきなのか。英国の事例を参考に、大胆な説を提案したい』、興味深そうだ。
・『日本における「専門家」は臨機応変な対応が苦手だった? 日本における今後の感染症対策を担う「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日に発足した。それに伴い、「新型インフルエンザ等対策推進会議」のメンバーも刷新。同会議の議長を務めてきた尾身茂氏は退任した。 さらに、推進会議の下部組織に当たる「新型コロナウイルス感染症対策分科会」「基本的対処方針分科会」は廃止された。SNSなどには「尾身先生、お疲れ様でした」と尾身氏の労をねぎらう投稿も散見される。 だが筆者はどちらかというと、尾身氏に批判的な立場である。 というのも、2020年5月の分科会で、新型コロナ重症者病床増のために1兆円程度の財政資金を投入することが提起された際、尾身氏はその提案を退けてしまったという(※)。この例のように、疑問符が付く意思決定が散見されたためだ(本連載第277回)。 ※木村盛世(2021)『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』(飛鳥新社)を参照。 もちろん、それは尾身氏個人の問題だけではない。日本の審議会・諮問会議の制度そのものに問題があるといえる。 審議会・諮問会議の委員である専門家の役割は、官僚が立案する政策案に「お墨付き」を与えることだ。故に、学会等の推薦で大きな業績を上げた重鎮の学者が起用されてきた。 前述した分科会の前身に当たる審議会・諮問会議の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」は20年2月14日に設置された。当時の委員は全12人で、学会の重鎮が並んだ。 だが当時、新型コロナは正体不明で、その特性が世界中の研究成果から次第に明らかになる状況だった(第243回)。日本の重鎮たちも、最初から「新型コロナの専門家」だったわけではない。 そのため仕方のない面もあるが、「お墨付き」以外にも臨機応変な対応が求められた結果、さまざまな対策が後手に回ることになったのは事実だ。 特に深刻だったのは、ワクチンの開発・接種の遅れだ。当初の日本はワクチン接種の開始がG7で最も遅く、接種率は「世界最低レベル」だった(第271回)』、「「お墨付き」以外にも臨機応変な対応が求められた結果、さまざまな対策が後手に回ることになったのは事実だ。 特に深刻だったのは、ワクチンの開発・接種の遅れだ。当初の日本はワクチン接種の開始がG7で最も遅く、接種率は「世界最低レベル」だった」、その通りだ。
・『英国やイスラエルと比較すると意思決定の遅さが目立つ また、21年8~9月の東京オリンピック・パラリンピックは全試合が無観客となった。国民へのワクチン接種が一巡し、21年6月にサッカー「EURO2020」の決勝戦を有観客で開催した英国と対照的だった(第279回)。 ワクチン接種が遅れた原因としては、「自治体任せ」の接種体制が混乱を招いたことや、国内でのワクチン開発が進まなかったことが指摘されてきた。だが、より深刻な要因は、十分な量のワクチンを製薬会社から素早く調達するための交渉が遅れたことだ。 新型コロナのワクチン開発は20年1月以降、基礎研究の蓄積をベースとする形で、各国の研究機関や製薬会社によって一挙に加速した。 英国では20年4月、ボリス・ジョンソン首相(当時)が「ワクチン開発のためにできることはなんでもする」と決断。そこから約1年間で、英財務省は135億ポンド(約2兆400億円)の巨額資金をワクチン開発につぎ込んだ(ローラ・クンスバーグ『【解説】イギリス政府はパンデミックとどう闘ったか 1年間の舞台裏』BBC NEWS)。 20年6月頃には、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相など、世界の首脳が製薬会社とワクチン確保の直接交渉を開始していた。 だが、日本の専門家会議は「ワクチン開発には数年かかる」と安倍晋三首相(当時)に進言した。20年8月の記者会見で、尾身氏がワクチンについて「分からないことばかりと言ってもいいくらいだ」と発言する場面もあった。資金確保・交渉・情報収集の全てにおいて、日本は世界に後れを取っていたのだ。 そして、安倍氏からバトンタッチした菅義偉首相(当時)は業を煮やし、21年1月下旬にファイザーとの直接交渉に乗り出した。 その後、菅氏のリーダーシップの下で「1日100万回接種」という目標を掲げ、ワクチン接種率では欧米を追い上げて世界トップ水準を実現した(詳細はダイヤモンド・オンライン『菅前首相が明かす、ワクチン接種1日100万回をぶち上げた根拠と縦割り打破』参照)。 この菅氏の施策は英断だったといえる。だが、国産ワクチンはいまだに開発途上だ。先日、第一三共製のワクチンが薬事承認されたものの、中国で初めて新型コロナの存在が確認されてから3年半以上がたち、「5類」に移行した後での承認だ。遅きに失した感は否めない。 尾身氏らがワクチンについて素早く情報を収集し、世界最先端の動向を踏まえた上で政府に進言していたら、こうした事態は防げたのではないだろうか』、「尾身氏らがワクチンについて素早く情報を収集し、世界最先端の動向を踏まえた上で政府に進言していたら、こうした事態は防げたのではないだろうか」、その通りだ。
・『感染症統括庁は新たな感染症に対応できる? 「スタートダッシュの遅れ」はワクチン関連だけではない。感染拡大の最初期は、医療体制(特に重症病床の確保)に関する議論が不十分だった印象だ。 その結果、欧米と比べて病床数自体は多く、患者数は少ないのに、常に医療崩壊の危機に直面するという日本独特の問題に直面した(第264回)。 確かに時間がたつにつれ、分科会でも医療体制の整備や病床確保について議論されるようになった。軽症者は病院ではなく自宅やホテルでの療養を推奨する形に変わった。知事の権限も強化され、22年12月には感染症法のさらなる改正が成立した。 専門家とされる人たちは、自治体や病院の現場の声を聞きながら勉強を重ね、少しずつ医療体制を構築してきたのだと思われる。それ自体は評価できるが、やはり他の先進国と比べた「対応の遅さ」はどうしても気になった。 このような新型コロナ対策の反省を踏まえて設立されたのが、冒頭で述べた統括庁だ。統括庁は今後、政府の感染症対策の政策立案や調整を一元的に担う。トップの「内閣感染症危機管理監」には栗生(くりゅう)俊一官房副長官が就いた。 当初は38人の専従職員でスタートし、有事には100人規模まで増員できるという。有事の際の行動計画づくりや、訓練を担うのが職員たちの役割だ。筆者はこの専従職員のバックグラウンドを一人ずつ詳細に把握しているわけではないが、どのような専門性を持つ人材が採用されているかが重要だ。 ポイントは「縦割り」の打破だ。かつて新型コロナ対策に関わっていたのは、厚労省・健康局結核感染症課の医系技官と、厚生科学審議会・感染症部会に招集される専門家だった(第265回)。官僚組織は、いわゆる「縦割り行政」の縛りが厳しいため、他の疾病を管轄する部署は、新型コロナ対策にはあまり関与していなかったと考えられる。これも当時、医療体制の整備が遅れた一因ではないだろうか。そこで統括庁では、幅広い専門性を持つ人材が採用されて「縦割り」が打破されるかが重要になる。 この点について、統括庁の下の「新型インフルエンザ等対策推進会議」には、新たに15人が委員に任命された。要注目なのが、行政学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が委員に加わったことだ。 筆者はこれまで、新型コロナの有識者会議に政治・行政学者が入らないことを批判してきた。感染症対策の最終的な意思決定は、政治によって下される。だからこそ、その専門家が必要だと考えてきたのだ(第270回)。その意味で、稲継教授が委員に入ったことは一定の評価ができる』、「統括庁の下の「新型インフルエンザ等対策推進会議」には、新たに15人が委員に任命された。要注目なのが、行政学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が委員に加わったことだ。 筆者はこれまで、新型コロナの有識者会議に政治・行政学者が入らないことを批判してきた。感染症対策の最終的な意思決定は、政治によって下される。だからこそ、その専門家が必要だと考えてきたのだ・・・その意味で、稲継教授が委員に入ったことは一定の評価ができる」、なるほど。
・『医療再崩壊」を防ぐ秘策は「自衛隊野戦病院」の設置だ 人選から話がそれるが、25年に設立予定の「国立健康危機管理研究機構」(日本版CDC)にも期待が持てる。この組織は、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの合併によって創設される。 国立感染症研究所は米疾病対策センター(CDC)と、国際医療センターは英オックスフォード大学やウェルカム財団などと、それぞれ国際的なネットワークを持っている(第49回)。そうした強みを持つ両者が統合すれば、世界最先端の情報を得やすくなるだろう。もし今後、新たな感染症が広がったとしても、日本独自のワクチンや治療薬を開発可能になるかもしれない。 だが、一連の改革を経ても医療体制の問題が改善されるかは微妙なところだ。 政府の権限を強化し、平時から病院と協定を結んでいても、新たなパンデミックが発生した際は、相変わらず病床確保に時間がかかるのではないか。日本の医療体制は、英国など諸外国に比べて複雑すぎるのだ(第283回)。 では、日本は今後どうすべきなのか。 その答えの一つとして、かねて本連載では「自衛隊による大規模野戦病院」の設置を提案してきた(第283回)。自衛隊には、医官・看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。パンデミック時には彼・彼女らが出動し、感染症患者を収容する専用病院を臨時で設置するのだ。 この案は、英国軍の支援によって英国内に設置された、新型コロナ対策の野戦病院「ナイチンゲール病院」を参考にしたものだ(第282回)。英国軍は「コロナ支援部隊」を結成し、ナショナルヘルスサービス(NHS:国営の医療サービスを提供するシステム)を支援して、医療崩壊を防いだのだ。 もちろん日本でも、自衛隊中央病院がコロナ患者を受け入れたり、医官と看護官がワクチン接種に協力したりと、自衛隊による支援が行われてきた。こういった施策がさらに進歩すれば、病床が不足する事態を防げるはずだ。 医療崩壊を防ぐに当たって、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある。新たな強毒性の感染症に備える上では、現行の医療体制の「外側」に存在する自衛隊の医療人材・機材に頼れる仕組みを構築するのが合理的ではないか。 昨今は日英の安全保障関係が強化されており、英国の助言も受けられる状況にある。今回、改めて提案しておきたい』、「医療崩壊を防ぐに当たって、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある・・・自衛隊には、医官・看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。パンデミック時には彼・彼女らが出動し、感染症患者を収容する専用病院を臨時で設置するのだ。 この案は、英国軍の支援によって英国内に設置された、新型コロナ対策の野戦病院「ナイチンゲール病院」を参考にしたものだ」、いいアイデアだ。
次に、12月14日付けJBPressが転載した新潮社フォーサイト「米国、中国で複数の感染症が大流行、日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ、インフル、RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?」を紹介しよう。筆者は「医療ガバナンス研究所」理事長の上昌広氏である。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78355
・『昨冬のアメリカでの「トリプルデミック」、現在の中国での呼吸器疾患の増加は、コロナ規制解除後の集団免疫の低下が大きく影響している。高齢化国家・日本も今冬、感染症流行の危険性があるのだが、危機意識は低い。 中国で小児を中心に呼吸器疾患が増加している。国内メディアは11月23日、世界保健機関(WHO)が中国当局に詳細な情報の提供を求めたことを報じた。28日、『東洋経済オンライン』は、「中国で急増の『呼吸器疾患』に広がる大きな懸念 情報提供を要請するも、中国には隠蔽の前歴」という『ニューヨーク・タイムズ』の記事を紹介した。この中で、「中国当局は今回、未知の病原体についての懸念を公に認めておらず、WHOの声明にも公には応じていない」と、中国政府の姿勢を批判し、未知の病原体の蔓延の可能性について言及している。 この件については、私もマスコミから数件の取材を受けたが、未知の病原体にメディア側の関心があるのは明らかだった。読者・視聴者の関心をひくと考えているのだろう。 だが、この論調はピントがずれている。もっとしっかり議論し、準備しなければ、今冬、日本では多くの命が失われかねない。コロナパンデミックの収束にあたり、我々は何に留意すべきか、本稿で論じたい』、震源地となりやすい「中国」には「隠蔽の前歴」があるというのは困ったことだ。
・『RSV感染症は乳幼児と高齢者にリスク 意外かもしれないが、現在、中国で起こっていることは、昨冬の米国でも報告されている。米国各地で、新型コロナ、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症が流行し、病院は重症化した小児や高齢者で占拠されたのだ。このことは「トリプルデミック」と呼ばれ、米国メディアで大きく報じられた。 コロナとインフルを知らない人はいないだろう。RSVについては若干の説明を加えたい。 RSVは、コロナやインフルと同じく、上気道に感染する風邪ウイルスで、例年初冬に流行する。重症度は低く、健康な若年世代なら、感染しても軽い風邪ですむ。問題は乳幼児と高齢者だ。肺炎を起こし亡くなることもある。 乳幼児での感染については、すでに多くの臨床研究が発表されて、その実態が明らかになっている。国立感染症研究所によれば、RSVは乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占める。69%の乳児が生後最初の1年間でRSVに罹患し、そのうちの3分の1が肺炎など下気道疾患を起こす。致死率は1~3%との報告もある。乳幼児にとって、最も怖い感染症の一つと言っていい。) RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという』、「RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという」、なるほど。
・『コロナ規制の解除が感染症の大流行を生む 昨冬の米国のトリプルデミックを考えるにあたって注目すべきは、コロナ流行が始まるとインフルもRSVも流行様式が一変したことだ。RSVの場合、2020年には全く流行せず、2021年には夏場に再流行した。そして、昨冬の大流行となった。 実は、この状況は日本も同じだ。2020年は流行せず、2021年は6~7月、2022年は7~8月、今年は5~6月に流行している。今冬、どうなるかはわからない。 なぜこうなったのかについては、まだ結論が出ていないが、コロナパンデミック下での感染対策の強化や市民生活の抑制が、流行に歯止めをかけたことが考えられる。ただこの間、集団免疫は低下するため、社会活動を再開した段階で、様々な感染症が大流行するのではなかろうか。 本コラムは新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」の提供記事です。フォーサイトの会員登録はこちら 現在、中国ではインフルエンザやマイコプラズマなど、複数の感染症が大流行していると報告されている。いずれも冬季に流行する呼吸器感染症だ。こうした流行の状況は、昨冬の米国に相通じるものがある。世界で最も早くコロナ規制を緩和した米国は、様々な感染症が再流行するのが早く、中国がその後を追っているのも頷ける。 このあたり、英『ネイチャー』誌は冷静だ。11月27日に配信したニュースで、以下のように報じている。 「中国の子供たちの間で肺炎などの呼吸器疾患が急増しているのは、冬によく見られる感染症の結果であり、新たな病原体によるものではない。世界保健機関は、同国で急性呼吸器感染症が典型的な『冬の急増』に見舞われていると報告している。疫学者らは、コロナパンデミックが始まって以来、中国では規制が解除されて初めての冬であることを考慮すると、この急増は予想されると述べている」』、「英『ネイチャー』誌」の「冷静な」分析通りであれば、心配すう必要はないことになる。
・『高齢化国・日本に必要な対策 昨冬の米国、今冬の中国のような事態が世界各地で起こっても不思議ではない。世界各地で対策が進んでいる。 例えば米国は5月、グラクソ・スミスクラインやファイザーが開発した高齢者向けRSVワクチンを承認した。第三相臨床試験では、両者とも肺炎など重症合併症の発症を8割以上予防したという。米国政府は今冬、コロナ、インフルに加え、RSVワクチンの接種を呼び掛けている。 日本はどうだろうか。危機意識が低いと言わざるを得ない。9月、我が国もRSVワクチンを承認したが、今冬に集団接種を始める予定はない。 日本は世界で最も高齢化が進んでいる国だ。高齢化率約30%の国がパンデミックを経験したのは人類史上初だ。 コロナ禍の日本では、これまで世界が経験しなかった様々なことが起こった。その代表が、コロナによる死亡は少なかった一方、その約5倍の高齢者が老衰や誤嚥性肺炎などで死亡したことだ。この結果、日本は、コロナ禍で最も人口減少が進んだ先進国となった。この分析は、高齢化が進んだ国では感染対策だけでなく、高齢者の持病対策や健康増進対策が必要であることを意味する。 日本の超過死亡については、昨年3月、米ワシントン大学の研究チームが、国際比較の一環として英『ランセット』誌に発表した。発表同日に『ネイチャー』誌もニュースとして報じたが、国内のマスコミはどこも報じなかったし、厚労省や周囲の専門家も、この事実に触れなかった。なぜ、最も重要な科学的事実を彼らが無視しているのだろうか。 コロナパンデミックは収束を迎えつつある。どうやら、この間に様々な感染症に対する免疫が失われて、世界が正常化するために、様々な感染症が大流行しそうだ。世界史上、最も高齢化が進んだ日本は、どうすればこの問題を克服できるのだろうか。現在、中国で起こっていることは決して人ごとではない。我々は世界から学ばねばならない』、「日本は」「コロナによる死亡は少なかった一方、その約5倍の高齢者が老衰や誤嚥性肺炎などで死亡したことだ。この結果、日本は、コロナ禍で最も人口減少が進んだ先進国となった。この分析は、高齢化が進んだ国では感染対策だけでなく、高齢者の持病対策や健康増進対策が必要であることを意味する」、同感である。
先ずは、本年9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには、日本版「ナイチンゲール病院」実現を」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328658
・『「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日に発足した。新型コロナ対策の反省を踏まえて、政府による感染症対策を一元的に担うという。だが筆者はこうした改革を経ても、日本における医療体制の問題が改善されるかは微妙だと考える。では医療再崩壊を防ぐに当たって、日本は今後どうすべきなのか。英国の事例を参考に、大胆な説を提案したい』、興味深そうだ。
・『日本における「専門家」は臨機応変な対応が苦手だった? 日本における今後の感染症対策を担う「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日に発足した。それに伴い、「新型インフルエンザ等対策推進会議」のメンバーも刷新。同会議の議長を務めてきた尾身茂氏は退任した。 さらに、推進会議の下部組織に当たる「新型コロナウイルス感染症対策分科会」「基本的対処方針分科会」は廃止された。SNSなどには「尾身先生、お疲れ様でした」と尾身氏の労をねぎらう投稿も散見される。 だが筆者はどちらかというと、尾身氏に批判的な立場である。 というのも、2020年5月の分科会で、新型コロナ重症者病床増のために1兆円程度の財政資金を投入することが提起された際、尾身氏はその提案を退けてしまったという(※)。この例のように、疑問符が付く意思決定が散見されたためだ(本連載第277回)。 ※木村盛世(2021)『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』(飛鳥新社)を参照。 もちろん、それは尾身氏個人の問題だけではない。日本の審議会・諮問会議の制度そのものに問題があるといえる。 審議会・諮問会議の委員である専門家の役割は、官僚が立案する政策案に「お墨付き」を与えることだ。故に、学会等の推薦で大きな業績を上げた重鎮の学者が起用されてきた。 前述した分科会の前身に当たる審議会・諮問会議の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」は20年2月14日に設置された。当時の委員は全12人で、学会の重鎮が並んだ。 だが当時、新型コロナは正体不明で、その特性が世界中の研究成果から次第に明らかになる状況だった(第243回)。日本の重鎮たちも、最初から「新型コロナの専門家」だったわけではない。 そのため仕方のない面もあるが、「お墨付き」以外にも臨機応変な対応が求められた結果、さまざまな対策が後手に回ることになったのは事実だ。 特に深刻だったのは、ワクチンの開発・接種の遅れだ。当初の日本はワクチン接種の開始がG7で最も遅く、接種率は「世界最低レベル」だった(第271回)』、「「お墨付き」以外にも臨機応変な対応が求められた結果、さまざまな対策が後手に回ることになったのは事実だ。 特に深刻だったのは、ワクチンの開発・接種の遅れだ。当初の日本はワクチン接種の開始がG7で最も遅く、接種率は「世界最低レベル」だった」、その通りだ。
・『英国やイスラエルと比較すると意思決定の遅さが目立つ また、21年8~9月の東京オリンピック・パラリンピックは全試合が無観客となった。国民へのワクチン接種が一巡し、21年6月にサッカー「EURO2020」の決勝戦を有観客で開催した英国と対照的だった(第279回)。 ワクチン接種が遅れた原因としては、「自治体任せ」の接種体制が混乱を招いたことや、国内でのワクチン開発が進まなかったことが指摘されてきた。だが、より深刻な要因は、十分な量のワクチンを製薬会社から素早く調達するための交渉が遅れたことだ。 新型コロナのワクチン開発は20年1月以降、基礎研究の蓄積をベースとする形で、各国の研究機関や製薬会社によって一挙に加速した。 英国では20年4月、ボリス・ジョンソン首相(当時)が「ワクチン開発のためにできることはなんでもする」と決断。そこから約1年間で、英財務省は135億ポンド(約2兆400億円)の巨額資金をワクチン開発につぎ込んだ(ローラ・クンスバーグ『【解説】イギリス政府はパンデミックとどう闘ったか 1年間の舞台裏』BBC NEWS)。 20年6月頃には、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相など、世界の首脳が製薬会社とワクチン確保の直接交渉を開始していた。 だが、日本の専門家会議は「ワクチン開発には数年かかる」と安倍晋三首相(当時)に進言した。20年8月の記者会見で、尾身氏がワクチンについて「分からないことばかりと言ってもいいくらいだ」と発言する場面もあった。資金確保・交渉・情報収集の全てにおいて、日本は世界に後れを取っていたのだ。 そして、安倍氏からバトンタッチした菅義偉首相(当時)は業を煮やし、21年1月下旬にファイザーとの直接交渉に乗り出した。 その後、菅氏のリーダーシップの下で「1日100万回接種」という目標を掲げ、ワクチン接種率では欧米を追い上げて世界トップ水準を実現した(詳細はダイヤモンド・オンライン『菅前首相が明かす、ワクチン接種1日100万回をぶち上げた根拠と縦割り打破』参照)。 この菅氏の施策は英断だったといえる。だが、国産ワクチンはいまだに開発途上だ。先日、第一三共製のワクチンが薬事承認されたものの、中国で初めて新型コロナの存在が確認されてから3年半以上がたち、「5類」に移行した後での承認だ。遅きに失した感は否めない。 尾身氏らがワクチンについて素早く情報を収集し、世界最先端の動向を踏まえた上で政府に進言していたら、こうした事態は防げたのではないだろうか』、「尾身氏らがワクチンについて素早く情報を収集し、世界最先端の動向を踏まえた上で政府に進言していたら、こうした事態は防げたのではないだろうか」、その通りだ。
・『感染症統括庁は新たな感染症に対応できる? 「スタートダッシュの遅れ」はワクチン関連だけではない。感染拡大の最初期は、医療体制(特に重症病床の確保)に関する議論が不十分だった印象だ。 その結果、欧米と比べて病床数自体は多く、患者数は少ないのに、常に医療崩壊の危機に直面するという日本独特の問題に直面した(第264回)。 確かに時間がたつにつれ、分科会でも医療体制の整備や病床確保について議論されるようになった。軽症者は病院ではなく自宅やホテルでの療養を推奨する形に変わった。知事の権限も強化され、22年12月には感染症法のさらなる改正が成立した。 専門家とされる人たちは、自治体や病院の現場の声を聞きながら勉強を重ね、少しずつ医療体制を構築してきたのだと思われる。それ自体は評価できるが、やはり他の先進国と比べた「対応の遅さ」はどうしても気になった。 このような新型コロナ対策の反省を踏まえて設立されたのが、冒頭で述べた統括庁だ。統括庁は今後、政府の感染症対策の政策立案や調整を一元的に担う。トップの「内閣感染症危機管理監」には栗生(くりゅう)俊一官房副長官が就いた。 当初は38人の専従職員でスタートし、有事には100人規模まで増員できるという。有事の際の行動計画づくりや、訓練を担うのが職員たちの役割だ。筆者はこの専従職員のバックグラウンドを一人ずつ詳細に把握しているわけではないが、どのような専門性を持つ人材が採用されているかが重要だ。 ポイントは「縦割り」の打破だ。かつて新型コロナ対策に関わっていたのは、厚労省・健康局結核感染症課の医系技官と、厚生科学審議会・感染症部会に招集される専門家だった(第265回)。官僚組織は、いわゆる「縦割り行政」の縛りが厳しいため、他の疾病を管轄する部署は、新型コロナ対策にはあまり関与していなかったと考えられる。これも当時、医療体制の整備が遅れた一因ではないだろうか。そこで統括庁では、幅広い専門性を持つ人材が採用されて「縦割り」が打破されるかが重要になる。 この点について、統括庁の下の「新型インフルエンザ等対策推進会議」には、新たに15人が委員に任命された。要注目なのが、行政学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が委員に加わったことだ。 筆者はこれまで、新型コロナの有識者会議に政治・行政学者が入らないことを批判してきた。感染症対策の最終的な意思決定は、政治によって下される。だからこそ、その専門家が必要だと考えてきたのだ(第270回)。その意味で、稲継教授が委員に入ったことは一定の評価ができる』、「統括庁の下の「新型インフルエンザ等対策推進会議」には、新たに15人が委員に任命された。要注目なのが、行政学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が委員に加わったことだ。 筆者はこれまで、新型コロナの有識者会議に政治・行政学者が入らないことを批判してきた。感染症対策の最終的な意思決定は、政治によって下される。だからこそ、その専門家が必要だと考えてきたのだ・・・その意味で、稲継教授が委員に入ったことは一定の評価ができる」、なるほど。
・『医療再崩壊」を防ぐ秘策は「自衛隊野戦病院」の設置だ 人選から話がそれるが、25年に設立予定の「国立健康危機管理研究機構」(日本版CDC)にも期待が持てる。この組織は、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの合併によって創設される。 国立感染症研究所は米疾病対策センター(CDC)と、国際医療センターは英オックスフォード大学やウェルカム財団などと、それぞれ国際的なネットワークを持っている(第49回)。そうした強みを持つ両者が統合すれば、世界最先端の情報を得やすくなるだろう。もし今後、新たな感染症が広がったとしても、日本独自のワクチンや治療薬を開発可能になるかもしれない。 だが、一連の改革を経ても医療体制の問題が改善されるかは微妙なところだ。 政府の権限を強化し、平時から病院と協定を結んでいても、新たなパンデミックが発生した際は、相変わらず病床確保に時間がかかるのではないか。日本の医療体制は、英国など諸外国に比べて複雑すぎるのだ(第283回)。 では、日本は今後どうすべきなのか。 その答えの一つとして、かねて本連載では「自衛隊による大規模野戦病院」の設置を提案してきた(第283回)。自衛隊には、医官・看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。パンデミック時には彼・彼女らが出動し、感染症患者を収容する専用病院を臨時で設置するのだ。 この案は、英国軍の支援によって英国内に設置された、新型コロナ対策の野戦病院「ナイチンゲール病院」を参考にしたものだ(第282回)。英国軍は「コロナ支援部隊」を結成し、ナショナルヘルスサービス(NHS:国営の医療サービスを提供するシステム)を支援して、医療崩壊を防いだのだ。 もちろん日本でも、自衛隊中央病院がコロナ患者を受け入れたり、医官と看護官がワクチン接種に協力したりと、自衛隊による支援が行われてきた。こういった施策がさらに進歩すれば、病床が不足する事態を防げるはずだ。 医療崩壊を防ぐに当たって、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある。新たな強毒性の感染症に備える上では、現行の医療体制の「外側」に存在する自衛隊の医療人材・機材に頼れる仕組みを構築するのが合理的ではないか。 昨今は日英の安全保障関係が強化されており、英国の助言も受けられる状況にある。今回、改めて提案しておきたい』、「医療崩壊を防ぐに当たって、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある・・・自衛隊には、医官・看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。パンデミック時には彼・彼女らが出動し、感染症患者を収容する専用病院を臨時で設置するのだ。 この案は、英国軍の支援によって英国内に設置された、新型コロナ対策の野戦病院「ナイチンゲール病院」を参考にしたものだ」、いいアイデアだ。
次に、12月14日付けJBPressが転載した新潮社フォーサイト「米国、中国で複数の感染症が大流行、日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ、インフル、RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?」を紹介しよう。筆者は「医療ガバナンス研究所」理事長の上昌広氏である。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78355
・『昨冬のアメリカでの「トリプルデミック」、現在の中国での呼吸器疾患の増加は、コロナ規制解除後の集団免疫の低下が大きく影響している。高齢化国家・日本も今冬、感染症流行の危険性があるのだが、危機意識は低い。 中国で小児を中心に呼吸器疾患が増加している。国内メディアは11月23日、世界保健機関(WHO)が中国当局に詳細な情報の提供を求めたことを報じた。28日、『東洋経済オンライン』は、「中国で急増の『呼吸器疾患』に広がる大きな懸念 情報提供を要請するも、中国には隠蔽の前歴」という『ニューヨーク・タイムズ』の記事を紹介した。この中で、「中国当局は今回、未知の病原体についての懸念を公に認めておらず、WHOの声明にも公には応じていない」と、中国政府の姿勢を批判し、未知の病原体の蔓延の可能性について言及している。 この件については、私もマスコミから数件の取材を受けたが、未知の病原体にメディア側の関心があるのは明らかだった。読者・視聴者の関心をひくと考えているのだろう。 だが、この論調はピントがずれている。もっとしっかり議論し、準備しなければ、今冬、日本では多くの命が失われかねない。コロナパンデミックの収束にあたり、我々は何に留意すべきか、本稿で論じたい』、震源地となりやすい「中国」には「隠蔽の前歴」があるというのは困ったことだ。
・『RSV感染症は乳幼児と高齢者にリスク 意外かもしれないが、現在、中国で起こっていることは、昨冬の米国でも報告されている。米国各地で、新型コロナ、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症が流行し、病院は重症化した小児や高齢者で占拠されたのだ。このことは「トリプルデミック」と呼ばれ、米国メディアで大きく報じられた。 コロナとインフルを知らない人はいないだろう。RSVについては若干の説明を加えたい。 RSVは、コロナやインフルと同じく、上気道に感染する風邪ウイルスで、例年初冬に流行する。重症度は低く、健康な若年世代なら、感染しても軽い風邪ですむ。問題は乳幼児と高齢者だ。肺炎を起こし亡くなることもある。 乳幼児での感染については、すでに多くの臨床研究が発表されて、その実態が明らかになっている。国立感染症研究所によれば、RSVは乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占める。69%の乳児が生後最初の1年間でRSVに罹患し、そのうちの3分の1が肺炎など下気道疾患を起こす。致死率は1~3%との報告もある。乳幼児にとって、最も怖い感染症の一つと言っていい。) RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという』、「RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという」、なるほど。
・『コロナ規制の解除が感染症の大流行を生む 昨冬の米国のトリプルデミックを考えるにあたって注目すべきは、コロナ流行が始まるとインフルもRSVも流行様式が一変したことだ。RSVの場合、2020年には全く流行せず、2021年には夏場に再流行した。そして、昨冬の大流行となった。 実は、この状況は日本も同じだ。2020年は流行せず、2021年は6~7月、2022年は7~8月、今年は5~6月に流行している。今冬、どうなるかはわからない。 なぜこうなったのかについては、まだ結論が出ていないが、コロナパンデミック下での感染対策の強化や市民生活の抑制が、流行に歯止めをかけたことが考えられる。ただこの間、集団免疫は低下するため、社会活動を再開した段階で、様々な感染症が大流行するのではなかろうか。 本コラムは新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」の提供記事です。フォーサイトの会員登録はこちら 現在、中国ではインフルエンザやマイコプラズマなど、複数の感染症が大流行していると報告されている。いずれも冬季に流行する呼吸器感染症だ。こうした流行の状況は、昨冬の米国に相通じるものがある。世界で最も早くコロナ規制を緩和した米国は、様々な感染症が再流行するのが早く、中国がその後を追っているのも頷ける。 このあたり、英『ネイチャー』誌は冷静だ。11月27日に配信したニュースで、以下のように報じている。 「中国の子供たちの間で肺炎などの呼吸器疾患が急増しているのは、冬によく見られる感染症の結果であり、新たな病原体によるものではない。世界保健機関は、同国で急性呼吸器感染症が典型的な『冬の急増』に見舞われていると報告している。疫学者らは、コロナパンデミックが始まって以来、中国では規制が解除されて初めての冬であることを考慮すると、この急増は予想されると述べている」』、「英『ネイチャー』誌」の「冷静な」分析通りであれば、心配すう必要はないことになる。
・『高齢化国・日本に必要な対策 昨冬の米国、今冬の中国のような事態が世界各地で起こっても不思議ではない。世界各地で対策が進んでいる。 例えば米国は5月、グラクソ・スミスクラインやファイザーが開発した高齢者向けRSVワクチンを承認した。第三相臨床試験では、両者とも肺炎など重症合併症の発症を8割以上予防したという。米国政府は今冬、コロナ、インフルに加え、RSVワクチンの接種を呼び掛けている。 日本はどうだろうか。危機意識が低いと言わざるを得ない。9月、我が国もRSVワクチンを承認したが、今冬に集団接種を始める予定はない。 日本は世界で最も高齢化が進んでいる国だ。高齢化率約30%の国がパンデミックを経験したのは人類史上初だ。 コロナ禍の日本では、これまで世界が経験しなかった様々なことが起こった。その代表が、コロナによる死亡は少なかった一方、その約5倍の高齢者が老衰や誤嚥性肺炎などで死亡したことだ。この結果、日本は、コロナ禍で最も人口減少が進んだ先進国となった。この分析は、高齢化が進んだ国では感染対策だけでなく、高齢者の持病対策や健康増進対策が必要であることを意味する。 日本の超過死亡については、昨年3月、米ワシントン大学の研究チームが、国際比較の一環として英『ランセット』誌に発表した。発表同日に『ネイチャー』誌もニュースとして報じたが、国内のマスコミはどこも報じなかったし、厚労省や周囲の専門家も、この事実に触れなかった。なぜ、最も重要な科学的事実を彼らが無視しているのだろうか。 コロナパンデミックは収束を迎えつつある。どうやら、この間に様々な感染症に対する免疫が失われて、世界が正常化するために、様々な感染症が大流行しそうだ。世界史上、最も高齢化が進んだ日本は、どうすればこの問題を克服できるのだろうか。現在、中国で起こっていることは決して人ごとではない。我々は世界から学ばねばならない』、「日本は」「コロナによる死亡は少なかった一方、その約5倍の高齢者が老衰や誤嚥性肺炎などで死亡したことだ。この結果、日本は、コロナ禍で最も人口減少が進んだ先進国となった。この分析は、高齢化が進んだ国では感染対策だけでなく、高齢者の持病対策や健康増進対策が必要であることを意味する」、同感である。
タグ:上久保誠人氏による「感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには、日本版「ナイチンゲール病院」実現を」 ダイヤモンド・オンライン (その26)(感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには 日本版「ナイチンゲール病院」実現を、米国 中国で複数の感染症が大流行 日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ インフル RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?) パンデミック(経済社会的視点) 「尾身氏らがワクチンについて素早く情報を収集し、世界最先端の動向を踏まえた上で政府に進言していたら、こうした事態は防げたのではないだろうか」、その通りだ。 「統括庁の下の「新型インフルエンザ等対策推進会議」には、新たに15人が委員に任命された。要注目なのが、行政学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が委員に加わったことだ。 筆者はこれまで、新型コロナの有識者会議に政治・行政学者が入らないことを批判してきた。感染症対策の最終的な意思決定は、政治によって下される。だからこそ、その専門家が必要だと考えてきたのだ ・・・その意味で、稲継教授が委員に入ったことは一定の評価ができる」、なるほど。 「医療崩壊を防ぐに当たって、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある・・・自衛隊には、医官・看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。パンデミック時には彼・彼女らが出動し、感染症患者を収容する専用病院を臨時で設置するのだ。 この案は、英国軍の支援によって英国内に設置された、新型コロナ対策の野戦病院「ナイチンゲール病院」を参考にしたものだ」、いいアイデアだ。 JBPRESS 新潮社フォーサイト「米国、中国で複数の感染症が大流行、日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ、インフル、RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?」 上昌広氏 震源地となりやすい「中国」には「隠蔽の前歴」があるというのは困ったことだ。 「RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。 この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという」、なるほど。 「英『ネイチャー』誌」の「冷静な」分析通りであれば、心配すう必要はないことになる。 「日本は」「コロナによる死亡は少なかった一方、その約5倍の高齢者が老衰や誤嚥性肺炎などで死亡したことだ。この結果、日本は、コロナ禍で最も人口減少が進んだ先進国となった。この分析は、高齢化が進んだ国では感染対策だけでなく、高齢者の持病対策や健康増進対策が必要であることを意味する」、同感である。
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