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金融業界(その20)(三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」、東和 みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを、地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか) [金融]

金融業界については、昨年9月6日に取上げた。今日は、(その20)(三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」、東和 みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを、地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか)である。

先ずは、昨年12月1日付け東洋経済オンライン「三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/718704
・『「痛恨の極み」「言葉もない」「耐えがたい思い」――。およそ経営トップの交代会見とは思えない、重苦しい言葉が並んだ。 11月30日、三井住友フィナンシャルグループ(FG)は中島達(なかしまとおる)副社長が社長に昇格する人事を発表した。12月1日付という異例の人事の背景にあるのが、太田純前社長の急逝だ。「剛腕」と称されたトップの喪失で、三井住友FGは新たな局面を迎える』、興味深そうだ。
・『「脱銀行」を掲げ矢継ぎ早に改革を推進  「脱銀行」。太田氏は2019年4月に社長就任後、伝統的な銀行業務からの脱却を掲げて、矢継ぎ早に改革を進めた。 「社長製造業」と銘打ち、若手・中堅社員を社内ベンチャー事業の社長に抜擢したほか、2023年3月には銀行や証券、カード、保険など個人向け金融サービスを一元化したアプリ「オリーブ」を投入した。 SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長やCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の増田宗昭会長兼CEO(最高経営責任者)など、個性派の経営者とも交友を深めた。海外では、アメリカ証券大手ジェフリーズや東南アジアの現地金融機関への出資を進めた。) 三井住友FGは2023年3月期決算で過去最高純利益を更新するなど、順風満帆かと思われた。だが、その中で発覚したのが太田氏の膵臓がんだ。 太田氏は4月に経営陣に罹患を打ち明けた後も精力的に活動を続けたが、抗がん剤の副作用からか持ち前のがっしりとした体躯はみるみる痩せていった。 周囲には、がんに苦しむそぶりを見せなかった。今秋、ある会合で同席した別のメガバンク首脳から「体調はいかがですか」と痩身ぶりを案じられた際、太田氏は「ダイエットですよ」と涼しい顔で答えたという』、「太田氏は4月に経営陣に罹患を打ち明けた後も精力的に活動を続けたが、抗がん剤の副作用からか持ち前のがっしりとした体躯はみるみる痩せていった・・・今秋、ある会合で同席した別のメガバンク首脳から「体調はいかがですか」と痩身ぶりを案じられた際、太田氏は「ダイエットですよ」と涼しい顔で答えたという」、職業柄弱音は吐けないとはいえ、大したものだ。
・『水面下で進んでいた後継社長の選定  一方、三井住友FGの指名委員会では、健康問題が顕在化する前の2022年頃から、太田氏の後継者選定が水面下で進んでいた。 FG社長の任期は6年が慣例で、通常なら太田氏の任期は2025年まで。だが、2023年4月に中核子会社の三井住友銀行頭取が交代するのに合わせて、「FGの社長人事も並行して審議した」(三井住友FGの國部毅会長)。そこで浮上したのが、太田氏とともに企画部門で仕事をしていた中島氏だった。 中島氏は1986年に旧住友銀行入行後、支店勤務などを経て企画畑を歩んだ。2001年の住友銀行・さくら銀行の合併に際しては住銀側の事務局を務めたほか、消費者金融大手のプロミス(現SMBCコンシューマーファイナンス)の買収も手がけた。 中島氏が2012年に投資銀行統括部へ異動になった際、直属の上司となったのが太田氏だ。その後も企画部長やグループCFO(最高財務責任者)など、太田氏の下で要職を歴任。こうした経緯もあり、次期社長ポストの「最右翼」として指名委員会の合意を得た。 おりしも、三井住友FGは2023年度から「コンティンジェンシープラン」を導入していた。経営トップに不測の事態が発生した際の対応計画で、太田氏が経営の指揮を執れなくなった際には、中島氏が社長業務を代行することが決められた。) 皮肉にも、コンティンジェンシープランは導入後に、早速発動されることとなる。太田氏は11月初旬に体調を崩し都内の病院で治療を行っていたが、容体が急変。同14日に予定されていた決算説明会を急遽欠席した。業務継続が困難と判断した太田氏は同21日、指名委員会に辞意を表明した。 「1週間ほど前、國部会長から『近いうちに社長として推挙される可能性がある』という話をいただいた」(中島氏) 本来であれば、社長交代の時期はもう少し後に予定されていたようで、太田氏は治療を継続しつつ、特別顧問として経営の後ろ盾となるはずだった。だが太田氏は11月25日早朝に65歳で息を引き取り、急転直下のトップ交代となった』、「指名委員会では、健康問題が顕在化する前の2022年頃から、太田氏の後継者選定が水面下で進んでいた・・・2023年度から「コンティンジェンシープラン」を導入していた。経営トップに不測の事態が発生した際の対応計画で、太田氏が経営の指揮を執れなくなった際には、中島氏が社長業務を代行することが決められた」、十分な備えがあったようだ。
・『動揺が続く中での舵取り  動揺が続く中で、舵取りを任された中島氏。「太田社長が推し進められたことをしっかりやる」と意気込むが、目先の課題は2023年度から始まった中期経営計画の見直しだろう。 三井住友FGは11月、2024年3月期決算の純利益見通しを従来の8200億円から9200億円へと上方修正した。株売却益などの特殊要因があるとはいえ、中期経営計画の「2026年3月期に9000億円」という最終目標をあっさり超過してしまった。 身内からも、「最終年度の目標をわずか半年で達成してしまったことは、(中計の目標設定が正しかったのか)きちんと分析しないといけない」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)という声が上がる。 中・長期的には、他メガバンクに見劣りする領域の挽回がカギになりそうだ。三井住友FGは個人や中堅・中小企業取引、デジタル化などで先行する一方、「大企業取引は3メガの中でも十分なものになっていない」(中島氏)。直近では大企業部門の責任者を務めていた中島氏の手腕が、早々に試される。 海外展開でも、アメリカの証券業務はモルガン・スタンレーを抱える三菱UFJフィナンシャル・グループや、現地の投資銀行買収で拡大するみずほフィナンシャルグループに後れを取る。 太田氏は2023年6月に実施した東洋経済のインタビューで、「アメリカの投資銀行部門の強化は長年の目標だ。ボンド(債券)の引き受けではSMBC日興証券もそこそこの競争力があるが、エクイティ(株式)やM&Aの強化は、今からではとても間に合わない」と話していた。 太田氏の置き土産であるジェフリーズとの資本提携の効果を発現できるかが、今後重要になりそうだ。 「2028年度に純利益1兆円が目標。でも、金利環境が変わったら(達成時期も)変わりますよ」。国内金利の上昇機運が高まる中、太田氏は東洋経済のインタビューでこう期待をにじませていた。「1兆円の大台」の遺志を継ぐ中島氏に、重責がのしかかる』、「2024年3月期決算の純利益見通しを従来の8200億円から9200億円へと上方修正した。株売却益などの特殊要因があるとはいえ、中期経営計画の「2026年3月期に9000億円」という最終目標をあっさり超過してしまった・・・(中計の目標設定が正しかったのか)きちんと分析しないといけない」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)という声が上がる・・・「2028年度に純利益1兆円が目標。でも、金利環境が変わったら(達成時期も)変わりますよ」」、今後の実績が目標を上回るかどうか注目したい。

次に、昨年12月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したY’sリサーチ代表の山田能伸氏による「東和銀、みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ、メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335001
・『リーマンショック後に地銀が受け入れた公的資金の完済が相次いでいる。公的資金が優先株式から普通株式に一斉転換する期限が近づいてきたなか、各行は(1)内部留保の蓄積、(2)第三者割当増資による資本調達、(3)再編による資本力増強──の三つの方法で返済原資を確保した。公的資金が残る6地銀は、今後、予想される金利上昇も味方に付けて、地道な内部留保の積み上げで公的資金の完済を目指していくべきだろう』、興味深そうだ。
・『7行が返済原資を確保し普通株転換を前に完済  2021年10月の福邦銀行を皮切りに、地銀による公的資金の返済が相次ぎ、三十三フィナンシャルグループ(旧第三銀行)(FG)など7行が完済を果たしている。これにより、公的資金が残存している地銀は、東和銀行や筑波銀行など6行(持株会社ベースでは5社)となった(図表)。 (図表:地銀の公的資金の異動(2018年以降) はリンク先参照) 現在、6行はいずれも金融機能強化法に基づき公的資金の注入を受けている。各行に対する公的資金の注入は転換型の優先株式で行われているが、上場会社の場合、優先株が普通株に転換すると株価変動によって返済の時期や手法が不安定になる。完済した7行の一斉転換期限は24年から25年に設定されていたことから、期限前の返済が意識された可能性が高い。 過去にメガバンクなど大手行が公的資金を完済した方法は三つある。金融機能強化法に基づく返済でも、この三つの方法がベースになっている。) 一つ目が、内部留保の蓄積だ。フィデアホールディングス(HD)は傘下の北都銀行の公的資金100億円を、21年9月と23年2月の2回に分けて完済した。蓄積してきた内部留保が返済原資となった。公的資金が残る銀行でも、東和銀行が18年5月に350億円のうち200億円を内部留保によって返済している。 二つ目に、第三者割当増資や市場からの資本調達が挙げられる。南日本銀行、宮崎太陽銀行、高知銀行の3行は、優先株を地元財界の有力企業が引き受けるかたちで発行した。もっとも、3行とも優先株の発行額が公的資金注入額を下回っており、実際には内部留保の蓄積分も合わせて返済が行われた。 そして、三つ目が再編による返済で、福井銀行の子会社である福邦銀行や三十三FG、プロクレアHD(みちのく銀行)が該当する。経営統合はいずれも公的資金返済のためではなく、地域経済への貢献を主眼としているが、結果として資本力の増強が完済につながった。 このうち、第一、第二の手法をとった5行では、公的資金完済後の自己資本比率(国内基準)が、市場が大まかなメドとする「8%」をクリアしている。他方、再編による返済では、統合の趣旨に鑑みれば、自己資本比率は公的資金を受け入れた銀行の単体ではなく、グループ連結で見るべきだろう。直近(23年9月期)の連結自己資本比率は三十三FGとプロクレアHDが8%を超えており、福井銀行も7.56%と8%に近い水準を確保している』、「金融機能強化法に基づく返済でも、この三つの方法がベースになっている。) 一つ目が、内部留保の蓄積だ。フィデアホールディングス(HD)は傘下の北都銀行の公的資金100億円を、21年9月と23年2月の2回に分けて完済した。蓄積してきた内部留保が返済原資となった・・・二つ目に、第三者割当増資や市場からの資本調達が挙げられる。南日本銀行、宮崎太陽銀行、高知銀行の3行は、優先株を地元財界の有力企業が引き受けるかたちで発行した。もっとも、3行とも優先株の発行額が公的資金注入額を下回っており、実際には内部留保の蓄積分も合わせて返済が行われた・・・三つ目が再編による返済で、福井銀行の子会社である福邦銀行や三十三FG、プロクレアHD(みちのく銀行)が該当する。経営統合はいずれも公的資金返済のためではなく、地域経済への貢献を主眼としているが、結果として資本力の増強が完済につながった」、なるほど。
・『金利上昇は追い風も不毛な消耗戦は避けよ  では、公的資金が残る6行についてはどうか。 まず前述のとおり、東和銀行はすでに1回目の返済を終えている。同行は一斉転換期限を迎える24年12月までに、内部留保による完済を行う方針だ。 次に、筑波銀行、東北銀行、豊和銀行に注入された優先株の一斉転換期限は29年から37年に設定されている。各行は中長期的な目線で内部留保の積み上げを目指すと思われる。 また、じもとHDでは23年9月、傘下のきらやか銀行に180億円の公的資金が新たに注入され、同行が受け入れている公的資金の残高は480億円になった。同じく傘下の仙台銀行(300億円)を合わせて計780億円になる。きらやか銀行は、24年10月に一斉転換期限が設定されている200億円の優先株の返済を計画しており、新たな公的資金の受け入れは「実質的な借り換え」とみられる。 これらの公的資金が残る地銀では、返済手法として内部留保の蓄積をメインルートとして考えるべきだろう。幸いなことに、今はこれまで低位にとどまっていた金利が上向きつつある。これに伴う預貸ビジネスという本業での収益増は、各行にとって間違いなく追い風になる。) 注意すべき点もある。すべての預金取扱金融機関において、過去20年以上にわたる継続的な預貸金利ザヤの低下は、貸出金利の引き下げ競争の影響が大きかったと考える。こうした不毛な消耗戦が金融機関の体力を弱めた側面は否めない。 筆者は、金利上昇の過程で、同様のことが預金金利でも生じることを危惧している。金利が高く設定された預金には資金が集まるが、それに対抗するために金利の引き上げ競争が起きれば収益は改善しない。内部留保を蓄積していくに当たっては、不毛な消耗戦を繰り返すのが本当に正しいのかを胸に手を当てて考えるべきだ』、「金利上昇の過程で、同様のことが預金金利でも生じることを危惧している。金利が高く設定された預金には資金が集まるが、それに対抗するために金利の引き上げ競争が起きれば収益は改善しない。内部留保を蓄積していくに当たっては、不毛な消耗戦を繰り返すのが本当に正しいのかを胸に手を当てて考えるべきだ」、その通りだ。
・『所期の成果が上がった公的資金の予防注入  最後に公的資金が果たしてきた役割と、それに対する評価をまとめたい。 公的資金注入には、金融システムの安定を図る「金融危機対応」と、資本増強を通じて金融仲介機能を高める「予防注入」の2類型がある。根拠法でいえば、金融機能安定化法(1998年施行、旧安定化法)と早期健全化法(98年施行)、預金保険法(2000年の法改正で金融危機対応措置を導入)は前者、組織再編法(03年施行)と金融機能強化法(04年施行)は後者に相当する。 金融危機対応では、「多くの企業が破綻しているのになぜ銀行だけ救済するのか」という社会的批判が巻き起こったことから、当時、公的資金の注入を受けたメガバンクグループは店舗や人員削減、業務の効率化を急いだ。また、経営健全化計画の目標が未達の場合は、当局から経営責任を追及された。 結果として、3メガバンクグループは07年3月期までに公的資金を完済し、3社合計で預金保険機構に1兆円を超える利益をもたらした。また、これにより大手行に「市場規律」が根付き、CEO(最高経営責任者)による国内外の機関投資家との率直な対話や、SDGsなどの観点を含めた幅広い情報開示につながってきたと考える。 一方、予防注入では社会的批判の対象にはなりづらく、法人や個人取引先に対する堅実な貢献が重視されてきた。そのため、公的資金注入行における“モラルハザード”に関する批判も聞かれる。 もっとも、どの地域でもクレジットクランチ(信用収縮)は起きておらず、貸出は順調に増加している。こうしたことから、予防注入は所期の成果が上がったとみていいだろう』、「予防注入では社会的批判の対象にはなりづらく、法人や個人取引先に対する堅実な貢献が重視されてきた。そのため、公的資金注入行における“モラルハザード”に関する批判も聞かれる。 もっとも、どの地域でもクレジットクランチ(信用収縮)は起きておらず、貸出は順調に増加している。こうしたことから、予防注入は所期の成果が上がったとみていいだろう」、その通りだ。

第三に、昨年12月28日付け東洋経済オンライン「地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/724343
・『地方銀行としては5年ぶりとなる公募増資が、波紋を呼んでいる。 香川銀行と徳島大正銀行を傘下に持つ地銀グループ「トモニホールディングス(HD)」は12月5日、公募および第三者割当増資を行うと発表した。 払込期日については、公募増資は12月20日、第三者割当増資は12月29日とする。発行済み株式数の2割にあたる3220万株を発行し、約112億円を調達。得た資金は、中小企業向け貸し出しに充当する。 地銀セクターによる久方ぶりの公募増資について、その反応はさまざまだ。「国内金利の上昇を控え、成長戦略を描きやすくなった」(大手証券会社)と歓迎の声が挙がる一方、「株主を軽視している」(機関投資家)という不満もくすぶる。賛否が割れる背景には、何があるのか』、興味深そうだ。
・『リスクアセットの膨張を懸念  「当社の自己資本比率は、地銀の中では後ろから数えたほうが早い(水準が低い)。今の水準でも問題はないが、もう少し資本を厚くしたいと思っていた」。トモニHDの幹部は、公募増資の意義をこう話す。 銀行の自己資本比率には、厳格な規制が敷かれている。海外に営業拠点を持たない銀行は4%が必須とされるが、資本が毀損された場合に備えて各行は8%以上を意識する。 2023年9月末時点におけるトモニHD傘下行の単体自己資本比率は香川銀が9.5%、徳島大正銀が8.1%。後者は2020年1月、6%前後だった大正銀を徳島銀が吸収合併したことで数値が押し下げられたものの、両行とも危険水域ではない。 それでもトモニHDが増資を急いだ背景にあるのは、「リスクアセット」の膨張だ。 銀行の自己資本比率の分母には、総資産ではなく貸出金や有価証券ごとのリスクを数値化したリスクアセットが用いられる。高格付けの大企業向け貸し出しなら残高の一部しかリスクアセットとして計上されない一方、信用力の低い中小企業向けは残高のほぼ全額がリスクアセットとみなされる。 総資産や自己資本の額が変わらずとも、貸し倒れリスクが高い先への貸し出しが増えるほどリスクアセットが膨らみ、自己資本比率は低下する。) 中でも、トモニHDが得意とする中小企業や事業用不動産向け貸し出しはリスクが高く計測され、一般にはリスクウェイト100%、つまり貸出残高が全額リスクアセットとしてみなされる。 同社のディスクロージャー誌によれば、2023年3月末時点でリスクウェイト100%に分類される資産は、約1.9兆円にのぼる。 同社は近年貸し出しを積極化しており、リスクアセットは直近3年間で10%以上増えた。今後も中小企業の資金需要に応えていると、リスクアセットの膨張を通じて自己資本比率が低下しかねない。 そこで「(公募増資によって)財務基盤を一層強化し、貸出金増強に伴うリスクアセット拡大に備えることが必要と判断した」(トモニHDの開示資料)とする。 「増資はかねて検討していた」(前出の幹部)というが、8月中旬に300円台後半だった株価が、9月以降400円台後半に乗せたことが背中を押したようだ。 「この株価水準での増資はあり得ない」「中小企業支援のための資金調達」とのもっともらしい理由を掲げるトモニHDだが、株主は今回の公募増資に疑問を抱いている。 「この株価水準での増資はあり得ない」。ある機関投資家は語気を強める。やり玉に挙げるのはトモニHDのPBR(株価純資産倍率)だ。公募増資発表日の12月5日時点でPBRは0.31倍。実際には発表直後に株価が急落し、発行価格はPBR0.23倍の水準で決まった。 低PBRでの増資には2つの問題点がある。1つは発行体が調達する資金の減少だ。トモニHDは公募増資などで約112億円を調達する見込みだが、仮に株価がより高値で推移し、発行・売り出し価格をPBR換算で1倍の水準に設定できていれば、同じ発行株数でも調達額は4倍に増えていた。) 株主がより看過できないのは、BPS(1株当たり純資産)希薄化の問題だろう。 9月末時点におけるトモニHDのBPSは1535円。一方、今回の公募増資では、前述の通り3220万株を発行して約112億円を調達する。1株当たりの調達額は、わずか約347円だ。株数の増加に純資産の増加が追いつかず、BPSは強烈に希薄化する。 希薄化を覚悟で強行した公募増資には、同業も首をかしげる。「トモニHDの自己資本比率は、決して低すぎる水準ではない。貸し出しを伸ばしたいとはいえ、資本増強を急ぐ必要性があったのだろうか」(四国地方の地銀幹部)』、「株主がより看過できないのは、BPS(1株当たり純資産)希薄化の問題だろう。 9月末時点におけるトモニHDのBPSは1535円。一方、今回の公募増資では、前述の通り3220万株を発行して約112億円を調達する。1株当たりの調達額は、わずか約347円だ。株数の増加に純資産の増加が追いつかず、BPSは強烈に希薄化する」、その通りだ。
・『調達資金は地元に還元されるのか  増資で調達した資金が、地元に還元されるかも未知数だ。近年のトモニHDの貸出残高を見ると、中核市場に据える香川・徳島両県が微増にとどまるのに対して、成長領域に位置付ける大阪や東京の伸びが著しい。 折しも、傘下の香川銀は10月に、都内で4カ店目となる品川支店を開設した。「地元のために存在する地銀が、地元ではなく大都市向け取引強化のために増資を行うように見える。それには違和感がある」(中国地方の地銀幹部)。 トモニHDの増資を引き受けたある証券会社の幹部は、「教科書的に言えば、(PBRが1倍割れの現状では)増資よりも自己株取得をすべきなのは確かだ」と認める。 一方、同幹部は「地銀の株主は地元の住民や企業が多い。増資を通じて一層成長し、より地域に貢献するという観点で理解を得たい」とも付け加えた。新たに発行される株式の多くは、トモニHDのおひざ元である四国地方の支店に配分されるもようだ。 調達資金が大都市の企業向け貸し出しに充当されるのでは、という指摘に対して、トモニHD幹部は「(東京や大阪は)マーケットが大きいことは事実。貸出金も大都市を中心に伸びるだろう。ただ、地元を軽視するつもりはない」と反論する。 四国地方でもビジネスマッチングなどを展開し、大都市圏で稼いだ収益を地元に還元することを描く。) トモニHDの公募増資実施を受けて、「うちは考えていないが、増資を検討する銀行が出てきてもおかしくない」と、別の地銀幹部は指摘する。 引き受け側の証券会社は、「金利がある世界の到来で(金融緩和の解除を控え)銀行の収益が回復する、という成長シナリオを描きやすくなった」(大手証券幹部)と、増資対応に向けて早くも鼻息が荒い』、「引き受け側の証券会社は、「金利がある世界の到来で(金融緩和の解除を控え)銀行の収益が回復する、という成長シナリオを描きやすくなった」(大手証券幹部)と、増資対応に向けて早くも鼻息が荒い」、なるほど。
・『2017年から2018年に地銀の公募増資ラッシュ  地銀における公募増資ラッシュは、直近では2017年から2018年にかけて訪れた。トモニHDと同様に、いずれも中小企業向け貸し出しの拡大に伴うリスクアセットの増加が理由だった。そして、増資発表時のPBRも軒並み1倍を割っていた。 公募増資後、各行の株価はどう推移したか。低金利政策やコロナ禍といった外部環境はあるにせよ、いずれも増資発表前の水準を回復できていない。充実したのは銀行の自己資本だけだ。 この点、既存株主への影響を緩和するため、普通株ではなく優先株で資金調達を図った例もある。2022年末に優先株で60億円を調達した、島根銀行が好例だ。 6%台だった自己資本比率の増強が目的だったが、「議決権の希薄化を防ぐため」(島根銀行幹部)普通株ではなく優先株を選択。さらに優先株の半分は島根県内を中心とする中小企業に割り当てることで、地元から資金を調達し、地元に還元する道を選んだ。 優先株は2032年に普通株へと転換されるが、期限までに収益力を強化し、買い戻すことを目指す(2022年12月2日配信「島根銀行が2度目の増資、『SBI頼み』を避けた意図」)。 中小企業支援という大義名分があるにせよ、希薄化という犠牲を伴ってまで公募増資を断行する意義とは何か。資本コストやPBRに注目が集まる昨今、トモニHDはこれまで以上に株主の厳しい目にさらされることになる』、「中小企業支援という大義名分があるにせよ、希薄化という犠牲を伴ってまで公募増資を断行する意義とは何か。資本コストやPBRに注目が集まる昨今、トモニHDはこれまで以上に株主の厳しい目にさらされることになる・・・普通株ではなく優先株を選択。さらに優先株の半分は島根県内を中心とする中小企業に割り当てることで、地元から資金を調達し、地元に還元する道を選んだ。 優先株は2032年に普通株へと転換されるが、期限までに収益力を強化し、買い戻すことを目指す」、さて現実にはどうするのか、お手並み拝見だ。
タグ:(その20)(三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」、東和 みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを、地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか) 金融業界 東洋経済オンライン「三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」」 「太田氏は4月に経営陣に罹患を打ち明けた後も精力的に活動を続けたが、抗がん剤の副作用からか持ち前のがっしりとした体躯はみるみる痩せていった・・・今秋、ある会合で同席した別のメガバンク首脳から「体調はいかがですか」と痩身ぶりを案じられた際、太田氏は「ダイエットですよ」と涼しい顔で答えたという」、職業柄弱音は吐けないとはいえ、大したものだ。 「指名委員会では、健康問題が顕在化する前の2022年頃から、太田氏の後継者選定が水面下で進んでいた・・・2023年度から「コンティンジェンシープラン」を導入していた。経営トップに不測の事態が発生した際の対応計画で、太田氏が経営の指揮を執れなくなった際には、中島氏が社長業務を代行することが決められた」、十分な備えがあったようだ。 「2024年3月期決算の純利益見通しを従来の8200億円から9200億円へと上方修正した。株売却益などの特殊要因があるとはいえ、中期経営計画の「2026年3月期に9000億円」という最終目標をあっさり超過してしまった・・・(中計の目標設定が正しかったのか)きちんと分析しないといけない」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)という声が上がる・・・「2028年度に純利益1兆円が目標。でも、金利環境が変わったら(達成時期も)変わりますよ」」、今後の実績が目標を上回るかどうか注目したい。 ダイヤモンド・オンライン 山田能伸氏による「東和銀、みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ、メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを」 「金融機能強化法に基づく返済でも、この三つの方法がベースになっている。) 一つ目が、内部留保の蓄積だ。フィデアホールディングス(HD)は傘下の北都銀行の公的資金100億円を、21年9月と23年2月の2回に分けて完済した。蓄積してきた内部留保が返済原資となった・・・二つ目に、第三者割当増資や市場からの資本調達が挙げられる。南日本銀行、宮崎太陽銀行、高知銀行の3行は、優先株を地元財界の有力企業が引き受けるかたちで発行した。もっとも、3行とも優先株の発行額が公的資金注入額を下回っており、実際には内部留保の蓄積分 も合わせて返済が行われた・・・三つ目が再編による返済で、福井銀行の子会社である福邦銀行や三十三FG、プロクレアHD(みちのく銀行)が該当する。経営統合はいずれも公的資金返済のためではなく、地域経済への貢献を主眼としているが、結果として資本力の増強が完済につながった」、なるほど。 「金利上昇の過程で、同様のことが預金金利でも生じることを危惧している。金利が高く設定された預金には資金が集まるが、それに対抗するために金利の引き上げ競争が起きれば収益は改善しない。内部留保を蓄積していくに当たっては、不毛な消耗戦を繰り返すのが本当に正しいのかを胸に手を当てて考えるべきだ」、その通りだ。 「予防注入では社会的批判の対象にはなりづらく、法人や個人取引先に対する堅実な貢献が重視されてきた。そのため、公的資金注入行における“モラルハザード”に関する批判も聞かれる。 もっとも、どの地域でもクレジットクランチ(信用収縮)は起きておらず、貸出は順調に増加している。こうしたことから、予防注入は所期の成果が上がったとみていいだろう」、その通りだ。 東洋経済オンライン「地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか」 「株主がより看過できないのは、BPS(1株当たり純資産)希薄化の問題だろう。 9月末時点におけるトモニHDのBPSは1535円。一方、今回の公募増資では、前述の通り3220万株を発行して約112億円を調達する。1株当たりの調達額は、わずか約347円だ。株数の増加に純資産の増加が追いつかず、BPSは強烈に希薄化する」、その通りだ。 「引き受け側の証券会社は、「金利がある世界の到来で(金融緩和の解除を控え)銀行の収益が回復する、という成長シナリオを描きやすくなった」(大手証券幹部)と、増資対応に向けて早くも鼻息が荒い」、なるほど。 「中小企業支援という大義名分があるにせよ、希薄化という犠牲を伴ってまで公募増資を断行する意義とは何か。資本コストやPBRに注目が集まる昨今、トモニHDはこれまで以上に株主の厳しい目にさらされることになる・・・普通株ではなく優先株を選択。さらに優先株の半分は島根県内を中心とする中小企業に割り当てることで、地元から資金を調達し、地元に還元する道を選んだ。 優先株は2032年に普通株へと転換されるが、期限までに収益力を強化し、買い戻すことを目指す」、さて現実にはどうするのか、お手並み拝見だ。
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