SSブログ

株式・為替相場(その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」) [金融]

株式・為替相場については、昨年8月31日に取上げた。今日は、(その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」)である。

先ずは、昨年8月31日付け東洋経済オンラインが掲載した みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/698309
・『早いもので夏が終わろうとしている。 年初に支配的だったドル円相場のシナリオは、「早ければ3月、遅くとも5月にFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利上げは停止。夏を境に利下げ機運が高まり、これに伴って円高・ドル安が進む」といったものだった。 現実はまだ利上げも円安も続いており、円安に至っては加速している。すぐに反転したものの、8月29日夜には年初来高値である1ドル147円を突破した。 なお、「早ければ3月、遅くとも5月にFRBの利上げは停止」という見通しは筆者も同様であったが、同時に「利上げ停止の直後に利下げが議論されるわけではない」といった主張を続け、米金利が円高のトリガーをひくという想定には否定的な立場を示してきた』、確かに円安は止まるところを知らずに進行している。
・『「FRB頼み」で円相場を見通す危うさ  現状の為替市場を見渡すと、いまだに「米金利低下と共に円高になるというシナリオが後ずれしているだけ」という論調は多く、「FRB頼み」の風潮は強い。だが、そのようなシナリオメークはやはり同意しかねる。 確かに円安のピークアウト時期を見極めるにあたって、米金利と円相場の関係性に着目することは有用だと思う。歴史的にもそれは奏功してきた。 しかし、そうした米金利動向に依存した円相場見通しでは「なぜここまで大幅な円安が進んでいるのか」という根本的な問いに答えられないように思う。) 主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない。 アルゼンチンペソは図表が崩れるので掲載を控えた G7に所属する国・地域の通貨(英ポンド、ユーロ、カナダドル)はほぼ対ドルで横ばいか上昇しているので、日本という国の属性(先進国)を考えれば明らかに異質な立ち位置であることがわかる』、「主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない」、これはショッキングな事実だ。
・『1ドル=152円の昨秋より安い  しかも、この構図は2022年から1年半続いている。 日本では円安の理由として「アメリカの利上げが長引いている」という事実が持ち出されやすいが、そもそも2023年はドル高ではないのでその説明は不十分である(詳しくは2023年8月17日配信のコラム『「どうせ円高に戻るはず」という時代遅れの発想』をご参照)。 むしろ、ここまで「円独歩安」のような状況が続いている以上、日本側の要因に関心を向けるのが普通の分析姿勢ではないのか。 ちなみに主要貿易相手国に対する円相場(いわゆる実効相場)の変化率を見ると、名目・実質の双方で年初来はもちろん、1ドル152円に迫った昨年10月と比較しても下落している。 アメリカを含めた主要貿易相手国通貨に対して継続的かつ広範囲に売りが続いているというのが円相場の現実である。アメリカの情勢は言うまでもなく重要だが、日本の情勢を理解する必要性も確実に高まっている。) なお、あくまで杞憂に過ぎないものだが、一応紹介しておきたい論点がある。 年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格である。それは恐らく為替に詳しくない読者でも知っているのではないか』、「年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格、、不名誉この上ないことだ。
・『日本のインフレは米欧に近づいてきた  日本がその仲間に入っているとは思わないが、現時点で消費者物価指数(CPI)の上昇率はアメリカを上回り(ユーロ圏にも肉薄し)、それでもマイナス金利を堅持する方針を示していることが、インフレ抑制という観点から不安を抱かせ、円売りにつながっているという説は一応筋が通っている。 特に日本の事情がよくわからない海外市場参加者からすれば腹落ちしやすいテーマだろう。 ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない。とすれば、「日本はインフレを制御できるのか」が海外市場を中心としてにわかにテーマ視されるような展開には構えておきたい。 もちろん、今はまだ話半分以下でよく、リスクシナリオとしてもマイナーな部類だが、頭の片隅には置いておきたい論点である。)日本側の要因を主体として先行きを分析した場合、行き着くところは日本だけマイナス金利であることや、需給環境において外貨流出が大きくなっているという従前から言われている事実である。 金利と需給。いずれの理由を重く見るかという点は論者により異なるものの、FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというのが筆者の認識である』、「ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない・・・FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというのが筆者の認識である」、なるほど。
・『「日米金利差」で語る限界  言い方を変えると「アメリカ要因だけでかつての円高を取り戻すのは難しい」という話である。 この点、「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ。 FRBの政策運営の方向感(タカなのかハトなのか)といった論点、いわゆる日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である。 日米金利差はシナリオの方向感を、需給環境は円相場の地力を規定する論点と考え、展望を作っていきたいと思う』、「「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ・・・日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である」、なるほど。

次に、本年1月20日付け東洋経済オンラインが掲載した 慶應義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729097
・『日本株が力強い上昇を続けている。 2024年の大発会(4日)は、大地震、航空機事故と不幸な出来事の連続で、寄り付きから大幅下落で始まった。だが、代表的な株価指標である日経平均株価はすぐさまマイナス幅を急速に縮小して終えた。 この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら 2日目の5日には早くも昨年末を上回り、この日を含めて15日まで6営業日連続で上昇した。しかも1日で500円、600円以上も上昇する日も多く、あっという間に、平成バブル崩壊以来約33年ぶりの高値を連日のように更新し、ついに3万6000円台を付けた。 米国株が下落しようが何だろうが、上がり続けた。これはあまり見ない光景である。足元では一息ついたように見えるが、多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している』、「多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している」、なるほど。
・『株価は世界的に常に上がってきた  なぜ、株価は上がるのだろうか?巷では、「なぜ今株価がこんなに上がっているのか」と、NHKでさえ扱うほどで、素朴な驚きとともに、いろいろな解説ニュースが氾濫している。 「新NISA(少額投資非課税制度)が始まったから」、とか何とかいろいろな解説がなされているが、もちろん、私は、そんなことに興味はない。今回のテーマは、日本株が今年上がるかどうかという話ではなく、「なぜ株はほとんどいつも上がっているのか」「そもそも株というものは、なぜ値上がりするのか?」という話である。 実際、株価は世界的には常に上がってきた。確かに日本にいると、1989年12月29日の3万8915円というバブル期最高値から下がり続け、ようやく最高値をうかがうところまで戻ってきた」ということになる。) だが、アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している』、「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱に・・・ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている・・・1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない」、なるほど。
・『株価はおおむね「9割の時間帯」で上昇している  その理由は何か。 「どうせオバタのことだ。要は『それはバブルだから』ということだろ」と思われるだろうが、今回の小幡は違う。バブルであることもそうなのだが、もう少し細かい構造と投資家心理の話をしよう。 まず、第1に、株価というものは、普通の時は右上がりを続け、ある瞬間、暴落が起きて、一気に調整する。そして、そこから上昇トレンドを再開する。この繰り返しなのだ。 おおむね、9割の期間、小さい上げ下げを繰り返しながら(典型的には3四半期、9カ月上がって、1回四半期で下げて、また3四半期上昇する)、上昇を続け、突然暴落し、1割の期間で調整する。「10年に1度、金融危機が来る」というのはそういうことなのである(ラリー・サマーズ元財務長官は、2008年のリーマンショックの時に『100年に1度の危機は10年に1度来る』という名言を残した)。だから、基本、多くの場合、株価は上がっている。 それで、株式投資が好きな個人は、いつも上がるから、上昇トレンドに乗ろうとする。株式投資をしない人々(だから、普段は株価水準など気にしない)は、暴落のニュースだけをテレビなどで見て「ああ、株って怖いな」と思って、株式投資を避ける。 個人向けのファンドマネージャーも、基本は買い続ける。なぜなら、買いトレンドが起きているときしか、つまり、上がり続けているときしか、個人は投資を増やそうとはしないからだ。 「これから株を始めてみよう」と思って投資信託を買う人は、そういうときしか、重い腰を上げないし、避けていたところに、恐る恐る近寄ってこないものだからだ。そして毎日「日経平均がいくら上がったか」を急に気にするようになる。 そうすると、「あ、今日は日経上がった、自分のファンドも値上がりしているだろう」、と思って、ファンドの基準価格や自分の資産の時価を見ると(ネット口座になって、本当にリアルタイムの自己資産がわかるようになり、こういうことは便利になった)、「あれ、あんまり上がってない。なんだよ!」などと、怒りを証券会社やファンドマネージャーにぶつけたくなる人も多い。) 証券会社からは「リスク分散や、リスク回避のためにディフェンシブな銘柄が多かったり、株式以外の資産も入っていたりするのです」などと説明されるかもしれない。顧客にとってみれば「そんなのよりも、ちゃんと上がる商品を売ってくれよ!」となる。 だから、個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである』、「個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである」、なるほど。
・『「プロ」運用者の手法も、個人と大差なし  プロの運用者である機関投資家のファンドマネージャーも、似たり寄ったりである。彼らもサラリーマンだったり、ランキングで評価されて、投資家に選ばれたりする存在である。 したがって、絶対的なリターンよりも相対評価で生きている。基本は、日経平均やTOPIX(東証株価指数)などのインデックスに対して、どれだけ勝ったかで評価される。 しかし、現実的にもっと強力な比較基準は「ライバルに比べてどのくらいパフォーマンスがいいか」ということになる。なんとしても隣のファンドマネージャーに勝たないといけないのである。 そうでないと、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)などから資金ももらえなくなるかもしれないし、企業年金の資金も入らない。だから、上がるときに上がる運用になってしまう。 実際は、インデックスにちょっと色をつけて個性を出すのだが、その争いになったときに、ライバルよりも「上がるときにより上がるポートフォリオ」を組む。そして、ビリはまずい。資金を引き揚げられてしまい、クビになるからだ。だから、ある程度はインデックスについていく。 つまり、ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする。コカ・コーラやP&Gはその典型例である。 インデックスの側としては、このような企業が成長性の取り込みに失敗して投資家にとっても魅力が下がれば、似た業界だが新しく成長性が高く見える企業をインデックスに取り入れ、指標銘柄を交代させる。 入れ替えは実際にはもっと客観的な基準に基づいて行われてはいるが、結果的に起きているのはそういうことだ。そして、この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる』、「ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする・・・この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。
・『日経平均は2000年に銘柄を入れ替えすぎたことも  少し古くなるが、代表的なケースは2000年4月に起こった、「日経平均30銘柄同時入れ替え事件」である。このときは日経平均が実質2000円以上も下落した崩壊要因となったと、今でも言われている。つまり、当時は、それまでは大々的に意図的な入れ替えを行っていなかった日経平均が「時代に即して」という理屈で、突然30銘柄の入れ替えとなった。 それはそれでいいのだが、日本では、この規模の入れ替えは前代未聞であったから、10日間の猶予が与えられた。つまり、発表が同年の4月14日金曜日の引け後で、実際の入れ替え実施が4月24日月曜日の寄り付きからということにしたので、2回週末の猶予があり、5営業日はまるまる取引のチャンスができた。 その結果、どうなったか。この5日間に外される銘柄は平均で20%以上下がり、新たに組み入れられる銘柄は平均でも20%近くも上がった。「入れ替えバブル」である。つまり、20%の下げの影響はインデックスに反映され、強烈な上げの影響はインデックスに入る前だった。 さらに影響が大きかったのは、組み入れ後、20%上がってから入った銘柄は暴落した。そして、日経平均を計算する際の特殊なウェイト付け方法によって、組み入れ銘柄にいわゆる値ガサ株(1株の価格の数字が大きい銘柄。1株100円の銘柄と1株1万円の銘柄ではウェイト付けに100倍の違いがある。これがファーストリテイリングの取引と日経平均の取引でアルゴリズム的に仕掛けるトレーダーがいる理由である)が多かったから、暴落の影響は大きかった。) だが、アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している』、「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している」、なるほど。
・『株価はおおむね「9割の時間帯」で上昇している  その理由は何か。 「どうせオバタのことだ。要は『それはバブルだから』ということだろ」と思われるだろうが、今回の小幡は違う。バブルであることもそうなのだが、もう少し細かい構造と投資家心理の話をしよう。 まず、第1に、株価というものは、普通の時は右上がりを続け、ある瞬間、暴落が起きて、一気に調整する。そして、そこから上昇トレンドを再開する。この繰り返しなのだ。 おおむね、9割の期間、小さい上げ下げを繰り返しながら(典型的には3四半期、9カ月上がって、1回四半期で下げて、また3四半期上昇する)、上昇を続け、突然暴落し、1割の期間で調整する。「10年に1度、金融危機が来る」というのはそういうことなのである(ラリー・サマーズ元財務長官は、2008年のリーマンショックの時に『100年に1度の危機は10年に1度来る』という名言を残した)。だから、基本、多くの場合、株価は上がっている。 それで、株式投資が好きな個人は、いつも上がるから、上昇トレンドに乗ろうとする。株式投資をしない人々(だから、普段は株価水準など気にしない)は、暴落のニュースだけをテレビなどで見て「ああ、株って怖いな」と思って、株式投資を避ける。 個人向けのファンドマネージャーも、基本は買い続ける。なぜなら、買いトレンドが起きているときしか、つまり、上がり続けているときしか、個人は投資を増やそうとはしないからだ。 「これから株を始めてみよう」と思って投資信託を買う人は、そういうときしか、重い腰を上げないし、避けていたところに、恐る恐る近寄ってこないものだからだ。そして毎日「日経平均がいくら上がったか」を急に気にするようになる。 そうすると、「あ、今日は日経上がった、自分のファンドも値上がりしているだろう」、と思って、ファンドの基準価格や自分の資産の時価を見ると(ネット口座になって、本当にリアルタイムの自己資産がわかるようになり、こういうことは便利になった)、「あれ、あんまり上がってない。なんだよ!」などと、怒りを証券会社やファンドマネージャーにぶつけたくなる人も多い。)  第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする。コカ・コーラやP&Gはその典型例である。 インデックスの側としては、このような企業が成長性の取り込みに失敗して投資家にとっても魅力が下がれば、似た業界だが新しく成長性が高く見える企業をインデックスに取り入れ、指標銘柄を交代させる。 入れ替えは実際にはもっと客観的な基準に基づいて行われてはいるが、結果的に起きているのはそういうことだ。そして、この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる』、「入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。
・『日経平均は2000年に銘柄を入れ替えすぎたことも  少し古くなるが、代表的なケースは2000年4月に起こった、「日経平均30銘柄同時入れ替え事件」である。このときは日経平均が実質2000円以上も下落した崩壊要因となったと、今でも言われている。つまり、当時は、それまでは大々的に意図的な入れ替えを行っていなかった日経平均が「時代に即して」という理屈で、突然30銘柄の入れ替えとなった。 それはそれでいいのだが、日本では、この規模の入れ替えは前代未聞であったから、10日間の猶予が与えられた。つまり、発表が同年の4月14日金曜日の引け後で、実際の入れ替え実施が4月24日月曜日の寄り付きからということにしたので、2回週末の猶予があり、5営業日はまるまる取引のチャンスができた。 その結果、どうなったか。この5日間に外される銘柄は平均で20%以上下がり、新たに組み入れられる銘柄は平均でも20%近くも上がった。「入れ替えバブル」である。つまり、20%の下げの影響はインデックスに反映され、強烈な上げの影響はインデックスに入る前だった。 さらに影響が大きかったのは、組み入れ後、20%上がってから入った銘柄は暴落した。そして、日経平均を計算する際の特殊なウェイト付け方法によって、組み入れ銘柄にいわゆる値ガサ株(1株の価格の数字が大きい銘柄。1株100円の銘柄と1株1万円の銘柄ではウェイト付けに100倍の違いがある。これがファーストリテイリングの取引と日経平均の取引でアルゴリズム的に仕掛けるトレーダーがいる理由である)が多かったから、暴落の影響は大きかった。) 同時に、抜けた銘柄はウェイトが小さい銘柄が多かったことで、入れ替えがなかった残りの195銘柄は、入れ替え前と入れ替え後でウェイトが大幅に低下することとなった。実際、それに連動して、入れ替え準備の5日間で、これら195銘柄も平均で8%程度下落した。この入れ替え事件によって、日経平均は全体で見ても10%前後、損したのである。 一方、入れ替えをサプライズでうまくやれば、上昇トレンドを強化することができる。あるいは自然に上昇が起こる。だから、銘柄を入れ替えるインデックスの方が上がりやすい。だから面白い。これも日経平均からTOPIXへの先物トレードの移行が起きない1つの理由である。前者の方が値動きが大きく派手なのだ。 さて、株価というものは上がるものだ、という現象には、さらに細かい理由がいくつかある。まず、インフレである。モノがインフレであれば、資産もインフレにならなければ辻褄が合わない。企業の売り上げも、利益も、インフレ分膨らむから、名目の株価は上がるものである。 次に、金利がある。普通の債券(アメリカの国債など)に金利が付く、ということは、株式投資をすると、その金利プラスリスクプレミアム分は、株価が上がらないと、株式投資をすることに辻褄が合わない。だから、金利がプラスで付く以上、平均的には、株価は上がらないといけないし、リスクプレミアム分、金利よりも上昇率は高くないといけない。だから、上昇トレンドは必須である。 さらに、1980年以降、先進国はおおむね金利は低下傾向にあった。インフレが収まったからであるが、予期せず金利が低下するということは、ご存じのように、株価は上昇することになる。 一方、いったん金利が下がり切ってしまうと、後は金利は上がるしかないから、株価は下がることになるし、同時に、前述の、債券を持っていると得られる利子に見合った上昇、あるいは配当がないと株式投資をしないから、株価の上昇率は金利と見合いだ、ということになると、金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている』、「金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている」、なるほど。
・『株はそもそも上がることが構造的に決まっている  このように見てくると、株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースなどに予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか』、「個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか」、「10年に1度の暴落」は困るが、さてどうなるのだろう。

第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリスト・千葉商科大学教授の磯山 友幸氏による「岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123896
・『「金建て」では内閣発足以来2割下落:実は株価は下落している  「30年ぶりの水準となった賃上げ、設備投資、株価。日本経済が新たなステージに移行する明るい兆しが随所に出てきています」 岸田文雄首相は1月30日に国会で行った施政方針演説で、こう日本経済の状況を語った。確かに日経平均株価はバブル後の最高値を更新して3万6000円を突破。年初は3万3000円だったので1月で1割近くも上がっている。岸田内閣で唯一評価できるのが株高だ、といったこ声も出ている。 だが、それは「幻想」に過ぎず、実際の株価は岸田内閣発足時より安いと言ったら、読者各位は訝しく思われるに違いない。 30年ぶりだと岸田首相が胸を張る「賃上げ」にしても、表面上の賃金は上がっているが、物価上昇には追いつかず、「実質賃金」はマイナスが続いている。それと同様、見た目の株価は大きく上昇しているが、見方によっては実態価値は上がっていない、ということが起きている。これは物価との関係ではなく、株価を示している「円」という通貨の価値の問題だ。今の株価の急激な上昇は、円の価値が劣化しているために他ならない。 筆者が以前から使っている指標に、日経平均株価を「円建て」ではなく、貴金属である「金(ゴールド)」の小売価格で割った、いわば「金建て」の指数がある。証券界ではしばしば「ドル建て」の日経平均株価などが指標として使われるが、ドルという貨幣自体の価値も変動する。そこで人類の歴史と共に価値保存に使われてきた「金」をベースに日経平均株価を見ているのだ。 例えば2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ。2021年10月4日の日経平均株価は2万8444円。金の国内小売価格は1グラム6981円だった。この1月末で日経平均は3万6286円になったが、金は1グラム1万674円まで上昇している。ドル建ての金価格は落ち着いているものの、円建てでは高値水準にある。つまり「円」が劣化しているのだ』、「2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ」、面白い指摘だが、投資家の多くは「金建て」ではなく、あくまで「円建て」で判断しているので、「金建て」はあくまで参考指標に過ぎないような気もするが・・・。
・『要するに円の劣化  確かに円安は進んでいるが、2022年秋のように1ドル=150円を超えていた頃に比べれば円高ではないか、という指摘もあるだろう。もうひとつの指標を見れば、その謎が解ける。「実質実効為替レート」だ。「円の実力」とも言われるもので、2020年を100とした指数が、毎月、日本銀行によって公表されている。 この実質実効為替レートは、実際の円ドル相場が150円を超える円安を付けた2022年10月の指数が73.70だった。ところが、2023年11月にはこれを下回って71.39と、過去最低を更新しているのだ。「見た目」の為替相場に比べて円の劣化は進んでいるということができる。 ちなみにこの指数の計算が始まった1970年1月は2020年を100として75.02なので、すでに円の実力は1970年を下回っているということになる。当時の「見た目」の為替レートは1ドル=360円の固定相場時代だ。その後、最も円の「実力」が強くなったのは1995年4月。2020年を100とした指数で193.97を付けた。円ドル為替レートが1ドル=79.75円を付けた時だ。猛烈に円が強くなり、海外旅行ブームが起きていた。その時の指数に比べて現在は3分の1近い。円の実質的な強さも3分の1になったということだ。 今、アジアに海外旅行をしても物価水準は日本と変わらないか、高い。米国でラーメンと餃子、ビールでチップを入れると1万円近くかかった、という話も聞くようになった。円の弱さを痛感している日本人は多い。 米国は経済成長しているので1995年の1ドルの価値は今と比べ物にならないくらい高かった。一方で、日本国内での円の購買力はさほど変わらない。なので、1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ』、「1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ」、その通りだ。
・『今の3万8915円は同じ価値ではない  それが、猛烈に進行しているのが岸田内閣ということになる。円安を放置し、物価上昇を起こさせる政策を取れば、当然、円の実態価値は下がる。長年、デフレに親しんだ日本国民からすれば、円建ての価格が上がって、価値が上がっていると思っているが、これは「見た目」の賃金が上がっても「実質賃金」が下がっているのと同じことだ。 これは明らかに過去のバブル時代とは違う。都心のマンション発売価格が1億円を超えたとしてニュースになっているが、これも「円」の劣化による「円建て」価格の上昇と見ることも可能だ。中国人富裕層など外国人が東京のマンションを買うようになって、日本の不動産市場は「円」の相場が実態を示さなくなったのではないか。バブル当時は賃金も大幅に上がり、資産を持っている人たちも「バブル」に浮かれて高級品消費に走った。今、そうしたムードは少なくとも庶民の間にはない。 2008年にベトナムに取材に行った際、通貨ドンの価値が日々劣化するのに対応して庶民が「金」に変える姿を見た。当時のマンションなど不動産価格はドンではなく金建ての「カイ」という単位で価格表示されていた。通貨が劣化して信用を失うと究極はそういう事態に陥る。 いやいや、日本株が上昇しているのは、企業収益が大きく改善しているからだ、という反論もあるだろう。確かに、売り上げも利益も大きく増えている。だが、注意しなければいけないのは、これらの数字も「円建て」であることだ。かつての輸出中心の時代とは異なり、連結決算の海外利益は、円に転換されてキャッシュが国内に戻ってくるわけではない。海外の利益を円に換算した際の「見た目」が実態以上に良くなっているという側面もある。 だが、今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ』、「今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ」、その通りだ。
タグ:株式・為替相場 (その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」) 東洋経済オンライン 唐鎌 大輔氏による「「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン」 、確かに円安は止まるところを知らずに進行している。 「主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない」、これはショッキングな事実だ。 「年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格、、不名誉この上ないことだ。 「ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない・・・FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというの が筆者の認識である」、なるほど。 「「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ・・・日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背 景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である」、なるほど。 小幡 績氏による「なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない」 「多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している」、なるほど。 「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱に・・・ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている・・・1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない」、なるほど。 「個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである」、なるほど。 「ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こ うしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする・・・この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。 「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している」、なるほど。 「入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。 「金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。 実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている」、なるほど。 「株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことな なのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか』、「個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか」、さてどうなるのだろう。 現代ビジネス 磯山 友幸氏による「岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」」 「2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は 83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ」、面白い指摘だが、投資家の多くは「金建て」ではなく、あくまで「円建て」で判断しているので、「金建て」はあくまで参考指標に過ぎないような気もするが・・・。 「1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ」、その通りだ。 「今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ」、その通りだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。