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小売業(一般)(その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解") [産業動向]

小売業(一般)については、昨年5月2日に取上げた。今日は、(その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解")である。

先ずは、昨年12月7日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333023
・『50年以上も連れ添った古女房を叩き出し、新しいカミさんを迎え入れる。しかも新旧両妻は、かねて因縁の間柄──とあっては格好の世間話ネタと言えなくもない。 流通大手、イトーヨーカ堂が「都内屈指」(業界関係者)ともいわれる好立地店から立ち退きを迫られる。後継テナントと目されているのは、最大のライバル、イオンだ。 焦点となっているのは「イトーヨーカドー上板橋店」。東武東上線上板橋駅から徒歩2分という超駅近物件だ』、こんな「好立地店から立ち退きを迫られる」には特別の事情があるのだろう。 
・『■1971年に開業  地上4階建て、食料品のほか衣料品なども扱う総合スーパー(GMS)で、平日昼間でも多くの買い物客で賑わう。ヨーカ堂は土地・建物を所有する地元の不動産会社、小宮恒産と賃貸借契約を結び、1971年に開業した。 しかし、本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という。) このため、小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた。 店舗閉鎖の時期などは今後、両者で協議するが、小宮恒産側は「立ち退き料を支払う意向を示している」(事情通)という。そのうえで小宮では現有物件を解体。建て替えを行ってイオンに賃貸する方向のようだ。イオンでは新たな都市型ショッピングセンターブランド「そよら」での展開も含めて出店形態を検討しているとされる。 ヨーカ堂は3期連続最終赤字に陥っている。このため、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは都内を中心に店舗網を集約。足元124店舗を26年2月末までに93店舗に絞り込む計画を進めている。ただ、上板橋店の“喪失”は「想定外」(幹部)とみられ、グループ内からは「痛い」の声も漏れる』、「本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という」、「本体の業績悪化」を理由として「値下げ」を迫ったようだが、本来はあくまで「上板橋店」が生み出すキャッシュフローが基礎となるべきで、そうすれば値下げの理由はなかっらのかも知れない。「小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた」、「ヨーカ堂側」はよにかく安くすることを優先し、よもやライバルが狙っているとは知らなかったのだろう。交渉担当チームはあとで、こっぴどく叱られた筈だ。

次に、本年2月16日付け東洋経済オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735015
・『イトーヨーカドーが北海道・東北・信越の全17店舗をこの春から順次撤退していくというニュースが報道された。多くの論者が指摘する通り、都心周辺の店舗を残し、都心に特化する戦略だ。 前回(大量閉店「イトーヨーカドー」どこで間違えたのか)はこうした経緯に至る過程を、立地戦略というマクロな視点から概観した。 今回は、よりミクロな視点でヨーカドーについて考えてみよう。都心でヨーカドーは勝ち抜くことができるのか? それを考えるべく、筆者は週末から平日にわたって、東京都23区にあるイトーヨーカドー全15店舗を実際に巡り、現場を徹底的に分析してきた。 この後繰り広げる論考は、あくまで、イチ消費者かつイチ・イトーヨーカドーファンである筆者の個人的な感想に過ぎない。しかし、数日でギュッと見てきたからこその濃さはあるはずだ』、興味深そうだ。
・『見えてきたヨーカドーの“リアルな姿”  というわけで、筆者は数日間で23区の15店舗を巡った(疲れた)。連続でイトーヨーカドーに行き続けることはなかなかないが、それゆえに現場レベルで多くの発見を得ることができた。まずは、回ってみての率直な感想を箇条書きで説明していこう。 ①どの店舗も、食料品売り場と、テナントとして入居しているチェーンストアには人がいる(逆にほとんどの客がそこにしかいない)) このことは、すでに情報として知ってはいたが、実際に行くと、すごい。本当に衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう』、「衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう」、なるほど。
・『一方、盛況だった食料品売り場  逆に食料品売り場はどの店もかなり混んでいて、活気がある。特に大森店などは非常に賑わいがあり、試食品販売の声なども相まって、楽しい。 食料品売り場は、さまざまな装飾もなされていて、わくわくする空間もある。 また、最近改装した店舗の食料品売り場ではディスプレイなどにも工夫が凝らされている。 たとえば、イトーヨーカドーアリオ西新井店では、商品棚の上にディスプレイを置いており、イトーヨーカドーアリオ北砂店でも、「ご当地レトルトカレーライブラリー」として、カレーが陳列されていた。食料品売り場にはこうした工夫もあった』、「食料品売り場」はどこも「盛況」のようだ。「食品スーパー」に堅調なところが多い訳だ。
・『チェーン系のテナントも混んでいた  また、もう一つ混んでいるのが、入居するチェーン系のテナントだ。 代表的なものに、マクドナルド、100円ショップ、ミスタードーナツ、カルディ、GUなどがある。GMS部分がガラガラでも、こうした店には人が集まっている。つまり、人がいないわけではないのだ。 2024年秋頃の閉店が決定している上板橋店で一番混んでいたのは、マクドナルドだった』、「チェーン系のテナント」は激烈の競争に勝ち残った勝者だ。
・『②改装に伴い、売り場の至る所に空きがある。バックヤードをあけすけに見せてしまっている  ヨーカドーは衣料品部門の不採算化を受けて、大規模な店舗改革に乗り出している。後述するが、不採算部門をテナントに変える方向だ。 現在、どの店でもそのためなのか、改装に伴って、売り場に空きが見られた。本来は店舗を盛り上げるための改装なのだが、逆に売り場が空きだらけで、イメージとして寂しさが増幅している。 もちろん、これは一過性のものなのだろうが、この問題が本質的なのは、例えばポップアップストアの展開前の機材がそのまま置かれていたり、客から見えるところにダンボールが積んであったり、「バックヤード」があからさまに見えてしまっていることだ。 というより、「バックヤード」を隠す意識があまりないようにさえ思える。 たとえば、イトーヨーカドー綾瀬店では、紅白幕で隠しているが、商品やダンボールの類が見えてしまっていた。また、イトーヨーカドー赤羽店では、無造作に置かれたマネキンたちが確認できた。 もちろん店舗運営において、こうしたバックヤードを完全に隠すことはとても難しいだろう。しかし、消費者の立場からすれば、ダンボールが乱雑に置かれていたり、売り場がスカスカなのは、良い印象を抱かないはずだ。 実際、百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた』、「百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた」、なるほど。
・『せっかくの改革案も、消費者目線ではない感が…  ③改装した店舗では、商品構成を大きく変えているが、それが逆にわかりづらい 近年、ヨーカドーは業績悪化を受けて、さまざまな売り場改革をしている。 例えば、「イトーヨーカドー高砂店」では、これまで衣料品や雑貨として売られていたフロアが再編され「新しい生活様式のフロア」となっている。高砂店以外のいくつかのヨーカドーでもこうした売り場は見られた。) この編成によって、商品はその種類ではなく、「家事をする」「毎日をサポートする」「身なりを整える」というように機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ』、「機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ」、一時的にはやむを得ないだろう。
・『DX面でも本末転倒な施策が見られた  例えば、高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された』、「高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された」、これも一時的にはやむを得ないだろう。
・『④セルフレジが機能していない  また、近年ではどこのスーパーでも採用されているが、改装した店舗では、セルフレジの台数も多い。 しかし、特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ。 DXに伴う改革は、小売店であればもちろん対応する必要があるだろう。しかしなぜDXをするのかといえば、それは顧客の利益になるからだ。しかし、現在のヨーカドー店舗の多くでは、本末転倒な事態が起こっている。 労働者不足の昨今では、セルフレジをある程度導入しないと現場が回らない現実もあるかもしれないが、だからといってシニア層の足が遠のく原因になってはいけないはずだ。 ここまで、店舗を巡って感じた率直な意見を書いてきた。正直なところ、都内の店舗でも、駅前の便利なところにあるから行く、ぐらいに思えてしまうのがつらい』、「特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ」、店の特性に合わせた「有人レジの台数」に「すべきだろう。
・『15店舗めぐった筆者なりの改善策を考えてみた  では、イトーヨーカドーに勝ち筋はあるのだろうか。 以下、ここまでのフィールドワークを通して、僭越ではあるが、イトーヨーカドーがどうなれば、より楽しい買い物体験ができるのかを考えてみた。 これは、コンサルとか偉そうなものではなく、私がイトーヨーカドーにこうなってほしい、というような、それなりのファン精神を含んだイチ顧客としての願望混じりのものであることをあらかじめ断っておきたい。 ①ショッピングモール化を推し進める(食料品売り場の他に客数が多いのは、入居しているチェーンである。特にミスタードーナツやカルディ、100円ショップ(ダイソー、キャンドゥ、Seria等)に多くの人が集まっている。 これらが人気の理由については、それぞれいくつかの記事も発表されているだろうからここでは詳しく書かないが、とにかく売るものの「コンテンツ」でいえば、ヨーカドーはこれらの店に敵わない。 であれば、GMSという「コンテンツ」は捨て、むしろ、そうしたコンテンツをさまざまに集め配置する「プラットフォーム」に変化することが一つの可能性としてあるだろう。つまり、ショッピングモール化である。) 実は、ヨーカドーはこうしたショッピングモール化に舵を切ろうとしている。 近年の改革では、GMSとして扱う商品のうち、不採算部門である肌着以外の衣料品売り場をなくし、それらを専門店へと変化させようとしている。いわば、GMSという存在自体を否定する改革だ。 では、これで一安心かといえばそうではないと思う。というのも、「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではないからだ。そこで次の②だ』、「「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではない」、「最終的な目的」とは何なのだろう。
・『②顧客ニーズをもっと汲み取り、消費者理解を進める  なぜ、テナントに人が集まるのか。それは入居するチェーンストアが、顧客に選ばれているからだ。なぜ、顧客に選ばれているのかといえば、それは顧客ニーズを満たしているから。 100均は安く、さまざまな商品が手に入るし、意外な商品があったりもして楽しい買い物体験を提供してくれる。ミスタードーナツは、美味しいドーナツを低価格で食べられ、居心地も良く、最近では多くのファンも生み出している。こうした人気の店舗は、常に消費者が何を求めているのかを敏感にキャッチし、それを経営戦略に活かしている。 あまりにも当然だが、消費者理解がすべてにおいて重要なのだ。消費者の動向を考えれば、GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ』、「GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ」、その通りだ。
・『そこに消費者理解の姿勢はあるのか?  では、こうした消費者理解の姿勢が、イトーヨーカドーにあるかといえば、やはり疑問符が付いてしまう。それは、先ほども述べてきたところだ。 実は、ヨーカドーはもともと、消費者理解、消費者に寄り添う経営を大事にしてきた企業であった。その創業者である伊藤雅俊は、ヨーカドーの事業を多角化せず、GMS業態だけを守り続けた。それは、事業を多角化して、本業のGMSの売り場が荒れると顧客からの信用がなくなってしまうという伊藤の危機感にあったといわれている。 また、POSシステムによる単品管理を行ったのも早かったが、これも伊藤が、かつての個人商店のように「顔の見えるお客さん」がそれぞれどのようなニーズで商品を購入しているのかを的確に把握できるようにするためのものであった(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。) そもそも、ヨーカドーの始まりは、浅草にあった洋品店で、そこでは顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか』、「顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか」、今さら原点に立ち返」ろうとしても困難なのではなあろうか。
・『③立地を活かす  創業者の伊藤は、その立地について非常に慎重だったという。出店地域の交通量や家族構成などを綿密に調べあげたうえで最終的に出店にGOサインを出した。そのため、特に都内23区のヨーカドーの立地は非常に優れている。 また、ヨーカドーが多く出店をする、江戸川区、江東区などの東東京エリアは、東京スカイツリーの開業以後、不動産価値も上がり続けている地域だ。 近年では、かつしかけいたのマンガ『東東京区区』でその地域の多様性が描かれるなど、文化的に再注目を集めている。筆者の知り合いも、ヨーカドーがある木場に引っ越すなど、エリアとしての価値は高い。 その点で、こうしたエリアに店舗を持っていることの意義は深いはずだ。ヨーカドーが店舗改革の成功例としている大森店は、大森という下町の代表的な場所に位置していて、食料品売り場の活気も非常にある。試食品販売なども盛んで、かつての商店街を見ているかのような賑わいであった。 試食品の実演コーナーを設けるなどの工夫が、最近の店舗改革では見られるが、そうした改革で、いかに下町の活気をうまく取り込めるかが重要だ』、「大森店」のような「成功例」を如何に増やしていくかが重要だ。
・『買い物の楽しさをヨーカドーは取り戻せるか  というわけで、ずいぶんと好き勝手に書いてしまった。これらは15店舗を全部巡ったからこそ見えてきた視点だったと思う。) 基本的に筆者は、楽しく買い物をしたいし、楽しんで買い物をできる場所が増えてくれればいいな、と感じている。 伊藤雅俊が築いたヨーカドーは、立地の面、そして知名度の面でも、たぶん、うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはあると思う。 ヨーカドーが今後どうなっていくのかは誰にもわからない。 しかし、筆者はまた数年後、23区内のヨーカドーを全部巡ってみようと思う。そのとき、ヨーカドーで楽しい買い物経験ができることを願いながら……。 =敬称略= 筆者が巡った23区内・全店舗はこちら)』、「うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはある」、そのポテンシャルを引き出して、「買い物の楽しさを」「取り戻せるか」がポイントだ。

第三に、2月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解"」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735986
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のイトーヨーカ堂が、北海道・東北・信越地方の17店を閉店すると報じられた。同エリアからの撤退により、ヨーカドー空白地帯が拡大することになる。中四国、九州、沖縄にはすでにヨーカドーはない。 筆者はこれまで2回、このニュースを受けて、ヨーカドーの歴史や、実際の現地のフィールドワークを通して見えてきたそのリアルな姿について書いてきた。今回は、そのシリーズのラストとして、今回のヨーカドー撤退に伴って巻き起こった「ヨーカドーは無責任」という言説について、検討してみたい』、興味深そうだ。
・『商店街を潰したヨーカドーが撤退するのは無責任?  ヨーカドーが撤退するというニュースを受けて、各所から聞こえた声の一つが「無責任」という声だった。いろいろな人の投稿の要点をまとめると、こんな感じだ。 「ヨーカドーは出店する際にさんざん地元商店をぶち壊した。にもかかわらず、利益が上がらなければ撤退するとは無責任だ、けしからん」 このとき言われる「地元商店」とは往々にして「商店街」のことが念頭に置かれている場合が多く、こうした言説は、たしかに私たちの頭にすんなりと入ってくるものである。「スーパーvs商店街」とでもいおうか。) こうした構図は、なぜか私たちの頭の中に小売りをめぐる「型」としてインストールされている。「ありきたりな決まり文句」を「クリシェ」というが、まさにこうした言説は小売りをめぐるクリシェである。 今回、ヨーカドーが撤退するというニュースを受けて、私たちの中にあるそのクリシェが顔を出した、というわけだ。 しかし、この「スーパーが商店街を潰した」という構図、実はかなりイメージ先行のものであることを指摘しなければならない。 まず、最初に断っておかなければならないのは、もちろん、日本全国でみれば、ヨーカドー等のGMSが出店したことによって存続が厳しくなった中小小売店が存在することも確かだ、ということ。それはもちろん認識したうえで、このクリシェに隠された「ウソ」を見ていきたい。 『日本流通史: 小売業の近現代』などの著作を持つ満薗勇によれば、そもそも「商店街」という小売りの形態が本格的に成立したのは1920〜1930年代で、全盛期を迎えたのは1950年〜1970年代。そして、衰退期を迎えるのは1970年代以降。「商店街実態調査報告書」によれば、自身の商店街を「繁栄している」と回答したのは、1970年の39.5%から1990年には8.5%になる。 満薗が指摘するのは、この商店街が最も栄えた1950〜1970年代は同時に、総合スーパーが隆盛を極めた時期でもあったということだ。ダイエーが大きく店舗を伸ばしたのは1960年代だし、ヨーカドーがGMSとして「ヨーカ堂」となったのも1958年のことだ。 私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきたのである』、「私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきた」、なるほど。
・『「大店法廃止」への批判も、実は的外れ  実は、こうした併存の形は、現在でも都内を中心とするヨーカドーではかなり見ることができる姿でもある。 一つ前の記事で、筆者は23区のヨーカドーすべてを実際に見て回ったのだが、例えばヨーカドー大森店の近くには、大森の商店街があって、基本的にはどちらも賑わいがあった。私たちが「スーパーvs商店街」と思うほどには、その両者は鋭くは対立しないのである。 関連記事:イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" また、こうした議論のときによく言われる「大店法廃止」の影響も、実は時期からいうと検討はずれの批判だ。) 「大店法」は1974年から始まった法律で、大規模な小売店舗の出店を規制するものであった。それがスタートした1974年は、すでに商店街の衰退は始まっていて、むしろ衰退していくものを守ろうという応急処置にしかならなかった。 大店法が廃止されたのは2000年で、さきほどの「商店街実態調査報告書」では、すでに、自身の商店街が繁栄している、と思っていたのは2%前後の人しかいなかった。大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ。 以上のようなデータも踏まえると、今回のヨーカドー撤退における批判が、イメージ先行であることがよくわかるだろう』、「大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ」、なるほど。
・『「スーパーマーケット=悪」論とファスト風土批判論は似ている  しかし、なぜ、こうした「スーパーvs商店街」という構図がここまで根強いイメージを持ち続けているのだろうか。 この点について、筆者は以前東洋経済オンラインで「地方都市の『ファスト風景化』勝手に憂う人の病理」という記事を書いていて、そこで取り上げた議論が参考にできる。 この記事では、「今の地方はチェーンストアやショッピングモールばかりになってつまらない」という、いわゆる「ファスト風土」を批判する人が多いことに対して、それがいかに「幻想の中の郊外像」にすぎないのかを提示し、なおかつ、そのような人が理想の街の姿として「商店街」を一つの典型パターンとして「人と人との触れ合い」を求める傾向にあると書いた。 今回ヨーカドーの撤退騒動で出てきたクリシェは、まさにこうした感覚と通じるものがあるのではないだろうか。つまり、「スーパー=悪」、「商店街=善」として、単純な善悪の問題でこうした出来事を片付けようという考え方である。 もちろん、これはヨーカドーに限った話ではない。例えばイオンモールなども、「地方の商店街を破壊した存在」として、これまで散々語られてきている。) では、こうした認識はどこから生まれるのか。重要なのは「交通」である。 この記事では、「商店街」を理想の街とする人々の考え方に、「自動車」という交通手段が登場しないことにも触れ、そうした人々の「街」観が「歩行ベース」のものなのではないか、とも書いた。 しかし、現実には、日本国民全体の車の保有台数は歴史上、現在がもっとも高く、多くの商業施設が国道沿いに誕生している。街の形が、線上になっているのだ。 その一方で駅前を中心とする歩行ベースの都市は(シャッター商店街が顕著に表しているように)、衰退している。 実は今回のヨーカドー問題についても、こうした「自動車」と「歩行」の問題は顔をのぞかせている。ヨーカドーが撤退する地域について、「別にヨーカドーがなくても車で少しいけばいくらでも商業施設はある」という意見が見られたからだ。 もちろん、高齢化社会が進み、免許を返納する高齢者が多くなってくることも踏まえる必要はあるし、それはそれで解決しなければいけない問題だが、たしかに』、「駅前からヨーカドーがなくなったとしても、ロードサイド沿いの店舗で買い物をする、という選択肢もある。 実際、駅前から少し離れれば、今回ヨーカドーが撤退した北海道、東北、信越でも、ショッピングモールをはじめとする多くの商業施設が立ち並んでいる。 その意味でも、イメージする「街」観のズレがこうした批判を生ませるのだ」、なるほど。
・『結局、すべてを決めるのは「顧客」  最後に、補足的に重要なことを述べておこう。 近年、商店街が衰退してきたことに対しては、さまざまな理由が指摘されている。その中でも多く語られるのは、結局、商店街自体が顧客にとって魅力あるものでなくなってきた、ということだ。 中小企業診断士の鈴木隆男はこの点について、商店街の「外の敵」、ではなくて「内の敵」がその衰退の要因の一つになっていたという(東京都中小企業診断士協会のサイトより)。 また、中沢孝夫は『変わる商店街』の中で、商店街にある店が「地域独占」で、ある種の「殿様商売」的になっていた可能性を指摘する。 共存していた商店街とGMSは、結果的にGMSだけが生き残っていく状態になったが、それは、顧客の好みを敏感に反映していたのが、GMSだったからではないか。イトーヨーカドーは、かつて「顧客理解」に大きな力を注ぎ、顧客の満足度を高めようとしていた(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。GMSに結果的に客が流れたのは、顧客ニーズを的確にくみ取ったゆえだろう。) こうして考えると、一つの「悪」の組織があって、それが何かを駆逐していくという単純な図式で消費の動向を見ることはできなくて、結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている』、「結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている」、なるほど。
・『23区15店舗を歩いてわかったヨーカドーの問題点  前回の記事では、筆者は現在のイトーヨーカドーについて、主に以下の4つを問題にあげている。 ①どの店舗も、食料品売り場と、テナントとして入居しているチェーンストアには人がいる(逆にほとんどの客がそこにしかいない) ②改装に伴い、売り場の至る所に空きがある。バックヤードをあけすけに見せてしまっている ③改装した店舗では、商品構成を大きく変えているが、それが逆にわかりづらい ④セルフレジが機能していない この記事には少なくない反応が寄せられているが、生の声は筆者が思う以上にリアルだった。例えば、以下のような声が一例だ。 「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」 拡大時は「街の商店街を破壊する」と批判され、撤退時にも「さんざん地元の商店街をぶち壊したのに、利益が上がらなければ撤退するとは無責任だ」と言われたヨーカドー。 本稿ではその見方そのものの誤解を説明してきたわけだが、重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどうか、なのかもしれない』、「「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」、「重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどうか、なのかもしれない」、その通りだ。
タグ:小売業(一般) (その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解") 日刊ゲンダイ 重道武司氏による「「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに」 こんな「好立地店から立ち退きを迫られる」には特別の事情があるのだろう。 「本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という」、「本体の業績悪化」を理由として「値下げ」を迫ったようだが、本来はあくまで「上板橋店」が生み出すキャッシュフローが基礎となるべきで、そうすれば値下げの理由はなかっらのかも知れない。 「小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた」、「ヨーカ堂側」はよにかく安くすることを優先し、よもやライバルが狙っているとは知らなかったのだろう。交渉担当チームはあとで、こっぴどく叱られた筈だ。 東洋経済オンライン 谷頭 和希氏による「イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…」 興味深そうだ。 「衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう」、なるほど。 「食料品売り場」はどこも「盛況」のようだ。「食品スーパー」に堅調なところが多い訳だ。 「チェーン系のテナント」は激烈の競争に勝ち残った勝者だ。 「百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた」、なるほど。 「機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ」、一時的にはやむを得ないだろう。 「高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された」、これも一時的にはやむを得ないだろう。 「特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ」、店の特性に合わせた「有人レジの台数」に「すべきだろう。 「「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではない」、「最終的な目的」とは何なのだろう。 「GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ」、その通りだ。 「顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか」、今さら原点に立ち返」ろうとしても困難なのではなあろうか。 「大森店」のような「成功例」を如何に増やしていくかが重要だ。 「うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはある」、そのポテンシャルを引き出して、「買い物の楽しさを」「取り戻せるか」がポイントだ。 ダイヤモンド・オンライン 谷頭 和希氏による「ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解"」 「私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきた」、なるほど。 「大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ」、なるほど。 「駅前からヨーカドーがなくなったとしても、ロードサイド沿いの店舗で買い物をする、という選択肢もある。 実際、駅前から少し離れれば、今回ヨーカドーが撤退した北海道、東北、信越でも、ショッピングモールをはじめとする多くの商業施設が立ち並んでいる。 その意味でも、イメージする「街」観のズレがこうした批判を生ませるのだ」、なるほど。 「結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている」、なるほど。 「「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」、「重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどう
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