人工知能(AI)(その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も) [イノベーション]
人工知能(AI)については、昨年11月24日に取上げた。今日は、(その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も)である。
先ずは、昨年12月11日付けダイヤモンドが掲載したオウルズコンサルティンググループ代表取締役CEOの羽生田慶介氏による「IBMが「顔認識AI」撤退、アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256747
・『コロナショックを経て、人々が企業を見る目や意識、姿勢が大きく変化し、これまでよりもさらに誠実であることを求めている。また企業が、悪意はなくても勉強不足や想像力の欠如によって人権を侵害し、大炎上するケースも増えている。何に気をつけるべきなのか。本連載では、注目を集める企業の人権違反とその対応策について紹介する。連載4回目で取り上げるのは、テクノロジー企業で開発が進むAIについて。AIの学習に偏ったデータを与えていれば、AIもその思考法を学んで差別的な判断を下しやすくなる。またUNESCO(国際連合教育科学文化機関)は多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることに警鐘を鳴らした。AI開発に必要な企業倫理について探った』、興味深そうだ。
・『アマゾンの人事AIは“女性嫌い”? 「君は不採用だ」と人事AIが下すワケ 米アマゾン・ドット・コムのAI(人工知能)は“女性嫌い”――。そんな報道が、ロイターから発信されたのは2018年10月のことだった。 記事によると、アマゾンはAIを用いた人材採用ツールの開発を進めていたが、当該AIが“女性嫌い”であることが判明し、開発は中止されたという。AIによる履歴書の自動審査システムを構築すべく、アマゾンは過去10年間に同社が受け取った履歴書をAIにインプットして学習させたが、これが誤りだった。 ソフトウエア開発などの技術職では、過去の応募者および採用者の大部分が男性だったため、AIは「女性よりも男性の方が適している」と判断するようになったのだ。その結果、「女性」「女子大」などの言葉が履歴書に含まれていると、自動的に評価を下げるようになってしまったという。 このような「AIによる差別」は今後も容易に起こるだろう。 AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる。統計的に正しいデータさえ用いればいい、というわけではないのだ。 統計データには性差別・人種差別など、社会に現存する差別構造がそのまま反映されていることがほとんど。そのデータをベースに学習したAIも、差別的な判断を下すようになってしまう。 この観点でまさに今、国際的に問題視されているのが「顔認識AI」の技術だ』、「AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる」、その通りだ。
・『IBM、マイクロソフトも顔認識AIを危険視 18年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が米IBMや米マイクロソフトなどの顔認識ソフトウエアの精度を調査した。その結果、「明るい肌の男性」よりも、「暗い肌の女性」の方がはるかに誤認識されやすいことが発覚し、物議を醸した。 米国の警察は顔認識AIを捜査に活用してきたが、黒人女性のようなマイノリティーほど誤認逮捕などによって、不当な扱いを受けるリスクが高まることになる。 これまでも米国の公民権団体や活動家は、顔認識AIの危険性を訴えてきた。そして20年に入って白人警察官による黒人死亡事件に端を発した「Black Lives Matter(黒人の命は大切)運動」が加速すると、顔認識AIの差別的側面にも改めて注目が集まった。 米国内外での批判の高まりを受け、20年6月にはIBMが顔認識AI事業からの撤退を表明。同社のアービンド・クリシュナCEO(最高経営責任者)は、「IBMは他社の顔認識技術も含めたあらゆるテクノロジーが、大衆監視や人種によるプロファイリング、基本的人権や自由の侵害に使われることに強く反対し、容認しない」との声明を発表した。 これに追随するかのように、アマゾンも警察への顔認識AIの提供を1年間停止することを発表。マイクロソフトも「法整備が完了するまで、自社AIを警察には提供しない」と宣言した。AI市場をけん引してきた大手各社も、「差別するAI」への解決策は、いまだに見いだせていないのが現状だ。 多くの企業はAI活用に際して、人間では導き出せない合理的で効率的な「解」の導出を期待する。 しかし、AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い。これからAIに取り組もうとする企業は、自社の用いるデータやアルゴリズムの公正性に、いくら注意を払っても払いすぎることはないだろう』、「IBMが顔認識AI事業からの撤退」、「アマゾン」、「マイクロソフト」も「警察への顔認識AIの提供」を「停止」、「差別するAI」への警戒姿勢を強めているようだ。「AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い」、企業としては大いに注意が必要なようだ。
・『プライバシー侵害で大炎上した「リクナビ問題」 顔認識AIが危険視されているのは、差別の観点からだけではない。個人を特定して行動を追跡・監視できる点で、プライバシーの侵害につながることも、かねて懸念されている。 そもそもAI活用のためには、多くのケースで細かな個人データを大量に収集・分析する必要があり、プライバシーの侵害に容易につながりやすい構造がある。「AIとプライバシー」は、現代の人権を語る上で最重要トピックの一つだ。 そしてプライバシーに関して、近年、国内で最も話題を呼んだのは19年の「リクナビ問題」だろう。 リクルートキャリアが運営する就職情報サイト「リクナビ」が、AIを用いて就活生の「内定辞退率」を予測・算出し、企業向けに販売していたことが問題視された。学生の就職活動の成否を左右しかねないセンシティブなデータを勝手に販売していたことに対して、「学生は商売道具じゃない」と、SNSなどで激しく非難された。 政府の個人情報保護委員会は、学生の個人データを本人の十分な同意を得ることなく勝手に外部に提供していたとして、同社に是正勧告を出すとともに、データを購入していた企業各社に対しても指導を行った。厚生労働省も、同社の行為を職業安定法違反とみなして行政指導に踏み切った。 リクルートキャリアの社長は、謝罪会見において「研究開発的な位置付けのサービスとして、通常とは異なるプロセスで開発した」「複眼的なチェック体制が機能していなかった」と述べている。 AIサービスで人を扱うときには、ユーザーに十分な事前説明と情報公開がなければ、リクナビのような“大炎上”も免れない。革新的なAIサービスに取り組む野心あふれる企業ほど、その倫理観が問われる』、「IBM」、「アマゾン」などの慎重な姿勢に比べ、商売のことしか考えない「リクルートキャリア」の姿勢の違いが鮮明になった。
・『果たしてSiriに性別はいるのか 「ヘイ、Siri!」「OK、グーグル!」――。今では各世帯に少しずつ普及している音声AIアシスタント。この声のかけ方にも、一考の余地があるのかもしれない。 近年、AIアシスタントによるジェンダーバイアス(男女の役割や男らしさ・女らしさに関する固定的な観念)の強化を問題視する声も上がっている。 UNESCOが19年に発表した報告書では、多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることが指摘された。 「女性は世話好きで従順で(中略)『ヘイ』や『OK』とぶっきらぼうに命令するだけで利用できる存在だ、というシグナルを送っている」との問題提起だ。 同報告書は加えて、Siriの例のように、女性の声を持つAIアシスタントがセクハラ発言に従順な反応を示すようにプログラムされがちなことにも言及。「『女性は従属的であり、粗末な扱いを受けることにも寛容である』という一般的なジェンダーバイアスを補強している」と、現状のAIアシスタントのあり方を強く批判している。 日本国内でも、20年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅に設置された「AI駅員」について、同様の議論が巻き起こった。女性のAI駅員キャラクター「さくらさん」が、恋人の有無やスリーサイズといったセクハラ要素の強い質問にも拒否反応を示さず、優しく受け流すことが判明し、非難の声が集まった。 本来、性別を持たないはずのAIに性別を付与する行為には、どうしても開発側の無意識下のバイアスが反映されやすい。そのため、ユーザー側の受け止め方にも必然的にバイアスがかかってしまう。結果として、現実世界におけるジェンダーバイアスを温存、もしくは助長してしまう恐れがあるのだ。 今後、AIアシスタントやチャットボットの自社開発を検討している企業は、「性別の特定できないAI」を志向することも一案だろう。 UNESCOの報告書内では、中国アリババグループの音声アシスタントAliGenieが「男女どちらとも判断できない、漫画のような声で話す」好例として取り上げられている。また、米国に本部を置くクリエイティブエージェンシーのVirtueは、北欧最大規模のLGBTQ(性的少数者)の祭典であるデンマーク・コペンハーゲンのプライドと共同で、男声にも女声にもとれない中性的なデジタル音声「Q」を20年に開発したという』、「女性の声が初期設定」された「AIアシスタント」が「ジェンダーバイアスを補強」、というのは事実だが、「性別の特定できないAI」というのも味気ない。
・『テクノロジー企業に必要な「AI倫理」担当部署の新設 AIサービスの開発最前線のエンジニアに、人権の配慮を学んでもらうことも必要だ。だがテクノロジー競争の最前線でしのぎを削るイノベーターたちに、万全の社会的配慮の責任を押し付けるのは酷な話だろう。 そこで先進企業は相次いで、社内に「AI倫理」を担う部署を設置し始めた。ESG投資の「S(社会)」「G(ガバナンス)」双方の視点で極めて重要な取り組みだ。 米セールスフォース・ドットコムは19年から、「最高倫理・人道責任者(Chief Ethical and Humane Use Officer)」のポストを設けている。同社の技術やサービスが倫理的に許されるか、検討・確認する役割を担う。 富士通も社外専門家で構成された「AI倫理外部委員会」を19年に設置した。富士通は、AIによる保育園と待機児童のマッチングシステムを自治体向けに開発・提供しているが、倫理委員会ではその公正性が検証対象となった。「保護者からの提供データに誤りがあっても対応できるように」と倫理委員会から助言を受け、システムに改良を加えたとされる。 これからさらに加速するAIサービス競争。その勝敗を決めるのは旧来のモノづくりのようなQ(品質)、C(コスト)、D(納期)といった単純な基準ではない。たとえ少しくらい知能が劣ったとしても、人権リスクの低いAIの方が社会に実装される可能性が高い。 「性能」一辺倒のAI開発を進めるテクノロジー企業は、早晩、淘汰されてしまうかもしれない。 手塚治虫が自作で未来世界を描くときに何度も警鐘を鳴らしていたこのテーマ。いよいよ企業が自分事として考えるときがきた』、日本企業はコンプライアンスが苦手な企業が多いだけに、上手くいくか心配だ。
次に、本年1月2日付けダイヤモンドが掲載したスタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星 友啓氏による「【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256815
・『スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。 そのトップが日本人だということをご存じだろうか。オンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が発売たちまち2万部重版と話題になっている。 ベストセラー作家で“日本一のマーケッター”と評された神田昌典氏も「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」と書評した。 このたび、同じスタンフォード大学で教鞭を執るスティーヴン・マーフィ重松教授と星校長が対談。星校長の視点から対談の学びを共有する』、興味深そうだ。
・『つらい、不安な時ほど「自分のこと」を考えてはいけない? 日本で生まれ、アメリカで育つ。ハーバード大学で臨床心理学の博士号取得。東京大学留学生センター・大学院教育学研究科助教授。現在、スタンフォード大学医学部ウエルネスとリーダーシップ教育の心理学者。マインドフルネスの概念をベースに、生きる力やグローバルスキルを高める専門家として、教育・医療などの分野で国際的に活動中。主著に『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』(講談社、2016年)、『From Mindfulness to Heartfulness 』(Berrett-Koehler Publishers、2018年)、『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』(サンマーク出版、2019年)、『スタンフォードの心理学授業 ハートフルネス』(大和書房、2020年)など。 新しいことを始めようとして怖くなる時、 嫌なことから逃げ出したい時、 困難に打ち当たり、進めなくなった時、 そんな時は、つい「自分のこと」で頭がいっぱいになってしまいませんか? 実は、つらい時、不安になった時、逃げ出したくなるような時ほど、考えるべきは「自分以外のこと」なのです。 こう話すのは、スタンフォードでハートフルネス・ラボを創始した心理学者、スティーヴン・マーフィ重松先生。 「ハートフルネス」という言葉は初めて聞いた方がほとんどかと思いますが、先の見えない不安社会を生き抜くための大きなヒント「ハートフルネス」について、スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長として、重松先生と対談しました。 今回は +伝統と、科学、アートを統合した最先端の考え方「ハートフルネス」とは? +マインドフルネスとハートフルネスの違い +逆境に屈せず行動できるようになる方法 +天才児の教育現場で行われる「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」で求められる5つの力 +滅私奉公ではなく、お互いを個性、力を伸ばして活かす社会のつくり方 についてお話ししましょう』、なるほど。
・『変化の激しいAI時代に、しなやかな強さを生むEIと心の健康 科学、テクノロジーが発達し、便利なサービスが次々現れ、かつてより飛躍的に暮らしやすくなった現代。 しかし、それに伴って私たちは幸せになったのかと考えると、そうとは限りません。 たとえば、SNSの発達で人と比べて劣等感を感じたり、コミュニケーション齟齬が起きたり、いつでも誰とでもつながれるからこそ逆に孤独を感じるなど、ストレスが増えた方もいるのではないでしょうか? 今年の春、年に一度の中等教育カンファレンス「全米独立型私立校のカンファレンス」にて、ニューヨーク大学ビジネススクールの心理学者ジョナサン・ハイド教授は、「GenZ」と呼ばれるティーネイジャー層が危険にさらされていると話しました。 精神疾患、身体障害、学習障害やADHDの数、うつ病、自傷、自殺の件数などは、明らかに増加しています。 AIやロボットが今後さらに生活を変えることが予想されますが、テクノロジーの発達の速さや生活変容は、先行きの見えない混乱を人々の心に生みます。 そんな時代だからこそ、重要なのは、いかに「感情的知性(EI)」を高め、「心」の健康をいかに保つかです』、「ティーネイジャー層が危険にさらされている」、日本でも同じだろう。
・『ハートフルネスは、思いやりと感謝で心を育てる、マインドフルネスの進化形 重松先生は、アメリカの心理学専門誌『サイコロジー・トゥデイ』で、「Finding Meaning in Life’s Struggles(人生の困難に、意味を見出す方法)」という人気ブログを連載しています。 「臨床心理学で、私はたくさんの苦しんでいる人と対話してきました。 人が幸せになるのは、決して簡単ではありません。 誰もがヴァルナビリティ(開かれた弱さ)を持ち、悩みながら生きているのです」 人生を充実させ、生きづらさから解放されるためのヒントとして、思考、脳の研究から生み出されたのが、今、起こっていることに集中する「マインドフルネス」です。 その手法の一つ「瞑想」は、Googleなどの世界的大企業で取り入れられていることで有名になりました。 重松先生は、著書で「マインドフルネスをもっともよく表す漢字は「念」であり、これは「今」と「心」のふたつの部分からできている。 しかし、日本語で「心」が気持ち、強い感情、意識や思考、魂など、その人全体を指すのに対し、西洋でマインドフルネスといえば、ハートから切り離された知性や思考といったイメージを持つ人がいる。 それを考えると、ハートフルネスという表現のほうが、「念」の意味に近いだろう」と述べます。 「ハートフルネスの考え方は、自分だけで完結するものではありません。 能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」 重松先生はこう語ります』、「能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」、なるほど。
・『不安、逃げ出したい時の勇気ある行動が、あなたに幸福感をもたらす 私は拙著『スタンフォード式生き抜く力』で、ダライ・ラマの「人間は根本的に社会的な生き物で、それがゆえに、私たち人を思いやる力の『種』を持って生まれてくる。その力を発揮することが私たちの幸福や社会の繁栄に必要不可欠だ」という言葉を引用しましたが、ダライ・ラマは次のような言葉も残しています。 「人間として、私は自分の幸福が人次第だということを知っています。そして人の幸福に関心を持つことは、道徳的な責任だと真剣に思っています。人類の未来が祈りや良心だけで実現するというのは、現実的な考えではありません。行動が必要です。ですから私の一番の責務は、力の限り人類の幸福に貢献することなのです」 「責任」という言葉に抵抗を持つ方もいるかもしれませんが、重松先生は次のように語ります。 「日本では、義理という言葉を、心がこもっていない、仕方なくやるものとネガティブに捉える方もいるかもしれません。 しかし、義理は「美徳」です。私の母は、ゼネラル・エレクトリック(略称GE。トーマス・エジソンが創業した世界的企業)で、初のアジア人女性として成功した、自由でキャリアもある女性でした。 そんな彼女の言葉が『義理と人情を忘れてはいけない』です。Responsibility(責任)とは、Response(応答)、Ability(能力)。つまり、社会から求められているものに、自分の能力を持って応えることといつも話してくれました」 「自分にできることはやる」という行動は、拙著『スタンフォード式生き抜く力』で取り上げた、「五常」の「仁」「義」と同じ。 やるべきことをやる正義感「義」と、思いやりの心がまえ「仁」を持って行動することが重要なのです。 心理学の研究で、健康向上の最良の方法の一つは、積極的に周囲に貢献することとされます。感謝の念を持とうなど心の意識も大事ですが、日常のささやかな親切などの行動こそが、幸福感につながるのです。 また、作家のオードリー・ロードは、恐れを乗り越えるために、ヴィジョン、ミッションが必要と説きますが、重松先生も、真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです』、「真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです」、なるほど。
・『天才児教育のトレンド「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」5つの力とハートフルネス 「他人への共感、自らの恐れをコントロールし行動する力を持つ」ことは、健全な精神、体の健康のサポートで効果的な学びを実現する、スタンフォードの教育現場で行われているソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)で目指す姿でもあります。 以下は、アメリカのSELを90年代から牽引してきたCollaborative for Academic, Social and Emotional Learning(CASEL)が挙げる社会性・感情の5つの能力です。 1.自分を理解する力(self-awareness):自信をもって成長マインドセットで、自分の強みや弱みを理解することができる。 2.自分で自分を統制する力(self-management):ストレスとうまくつき合って、自分の衝動を適切にコントロールし、自分で目標を設定して到達していくために自分を動機づけることができる。 3.他者を理解する力(social awareness):多様な背景や文化を有する人たちの視点を理解して、共感したり思いやったりすることができる。 4.他者とうまくやっていく力(relationship skills):他の人とうまくコミュニケーションができ、協力できる。不健全な場の空気に流されない。対立を建設的に解決する。他人に助けを求めたり、自分から他人を助けることができる。 5.適切な意思決定をする力(responsible decision-making):自分の行動や、他人とのやり取りの中で、倫理的基準や安全性、社会的規範に基づいて、建設的な選択をすることができる。 このように、SELで学習する内容は、ハートフルネスの学びを通して目指す姿でもあるのです』、「SEL」はなかなかよく出来た仕組みのようだ。
・『あなたのハートフルネスが、世界をやさしく変えていく 「アメリカ人は個人主義で、自己中心的、恐れが強く、憎しみを感じる人が多いです。日本は世界から、エンパシー(注)社会だと思われています。小さい頃から、他者とのつながりの大切さを教える教育がなされ、共感、思いやりを自然と身につけている人が多い。しかし、弊害として、他人に共感する=自分をなくすと思っているなど、思いやりが我慢と同義になっている人もいます。 思いやり、人とつながることは、人が生きるにあたり実は一番大事。でも、その方法を正しく教えられる人が、教育現場含めほとんどいないのが現状です」 人に思いやりを持って接すれば、その人は応えてくれる。もし目の前の人が直接応えてくれなかったとしても、めぐりめぐって、またいつかあなたのもとに返ってくる。この考えを示すのが、日本古来のことわざ「情けは人のためならず」です。 ハートフルネスで恐れを乗り越える。思いやりを持って、相手の人生を自分事として共感し、自分だけのためでなく、もっと大きな社会のために行動することで、私たちは幸福を感じられます。 一人一人の意識が変われば、世界は温かく、あなたにとっても心地よいものになるに少しずつ変わっていくでしょう。 もしこの記事が少しでも役に立ったら、ぜひ、あと一歩を乗り越えよう努力している友人、より良い人生を歩もうと頑張る大切な方、お仕事の仲間などにも教えてあげてください。 一人の小さな勇気が、みんなのためになっていると伝えるのもハートフルネス、思いやりに満ちた行動になります。 ここでの気づきが、互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会づくりのきっかけに少しでもなれば幸いです。(スティーヴン・マーフィ重松氏、星 友啓氏の略歴はリンク先参照)』、「互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会」、は理想形で、それに少しでも近づいてほしいものだ。
(注)エンパシー:共感力)
第三に、4月2日付けダイヤモンドが掲載したライターの奥田由意氏による「価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態、特許や製薬・金融など専門分野に変革も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266872
・『自動翻訳というと、グーグル翻訳やDeepLを思い浮かべる人が多いかもしれないが、実は国産のAI翻訳が、特許、製薬、金融などの専門分野での高精度化をはじめ、すさまじい進歩を遂げている。なぜ精度が急速に上がったのか。どのような産業でどのように役立てられているのか。そして、今後ビジネスではどのように応用される可能性があるのか。一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT) 会長で国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)フェロー隅田英一郎氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『特許、製薬、金融など専門分野や音声翻訳でも高精度を実現 AIを活用した国産の自動翻訳(機械翻訳)が世界的にも高いレベルにあることは、あまり知られていないかもしれない。 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究成果による自動翻訳は、英、中、韓など10言語に関して、旅行、医療、防災等の分野に対応し、日本語と外国語、双方向の翻訳精度は80%以上で、実用レベルである。2019年にはTOEICスコアでも960点以上の実績を上げている。また、音声認識の精度も今や人間を超えている(時間をかけて何回か録音を聞き直すことを許容すれば、文脈を理解する能力がある分だけ人間のほうが正確ではある)。 これらの最先端技術は、現在累計80万台を売り上げている82言語対応の双方向翻訳機ポケトーク、自治体での業務やインバウンド対応のための翻訳機eTalk5みらいPFモデルなどをはじめ、約30の製品がビジネスの現場で使われている(製品・サービス事例)。 こうした製品以外にも、企業他との共同研究で、専門分野の自動翻訳の精度が飛躍的に上がっている。NICTでは、特許庁、製薬会社などとしっかりタッグを組んで、研究開発を進め、それぞれの専門分野に適応した高精度翻訳を実現し、外国出願を効率化したり、新薬の販売承認にかかわる翻訳日数を短縮したりしている。 NICTフェロー隅田英一郎氏は「グーグル翻訳においては精度を上げることが必ずしも最優先事項ではない。グーグル翻訳は広告ビジネスへの貢献がその存在理由であって、汎用の単品として設計されている。汎用品とは包丁で例えれば万能包丁のようなもの。何でも切れるといっても、生魚の身やパンはうまく切れず、結局、刺身包丁やパン切りナイフが必要になる。包丁と同じで、翻訳も専門に特化した自動翻訳でなければ用をなさない」と語る。 NICTでは、研究室に研究を閉じ込めず、専門分野の官・民と協力して、重点分野について、実際にその分野で使われている高品質で大量のデータを機械学習(深層学習)させ、それを協力相手の現場に戻して厳しくチェックしてもらい、調整を重ねることによって高精度を実現している。 「専門の組織や企業と一緒に作ることで、リアルな必要性に基づいたフィードバックが確実に得られ、短期間にシステムに反映して実用に供することができている」(隅田氏) 例えば、外国での特許訴訟における費用の多くを翻訳が占めるので翻訳の低コスト化が必要であり、一定期間に大量に翻訳するので高速化も必要だった。また、特許査定までにやり取りされる「拒絶理由書」は、特許明細書の独特の文章と、普通のスタイルの文章が混在した、とりわけ翻訳困難な文書だ。NICTは2014年から特許庁と協力して自動翻訳の開発を続け、異なる2つの評価尺度であるRIBESとBLEUの組み合わせで世界一の翻訳精度を達成した。) さらに、特許は常に新しい用語やコンセプトが出てくるので、特許庁から提供される対訳データに基づいて翻訳システムを更新し、加えて特許庁からフィードバックを得て改良しており、性能改善は停滞することがない。翻訳システムはいつもup-to-dateだ。 製薬分野でも、英国のアストラゼネカと協力し、「治験実施計画書」の自動翻訳に取り組み、国内で新薬を申請するためにかかる翻訳の期間を4週間から2週間に半減させた。日本国内で発売する新薬の申請は日本語の文書でなければ承認されないため、やはり翻訳の精度と速度が決定的に重要だ。これにより、新薬はより早く患者に届き、新薬の収益化も前倒しできる。 ほかにも、トヨタと中国語の自動車法規の翻訳を手がけたり、SMBC日興証券とアナリストレポートの翻訳を高精度化したり、半導体や契約書などの分野もカバーする。 VoiceBiz等多数あるスマホ・アプリの形態の製品も、観光関係者(例えば、舞妓、芸妓)、美容院、飲食店、小売店、さらには、病院関係者(医師、看護師、窓口)、救急車の救急救命士、自治体窓口などで広く使われている。2020年6月には警察庁が全国47都道府県に配備したスマホに音声翻訳のアプリを搭載した。 「交番、自治体窓口、救急車、診療所などは、日本にいる外国人が困りごとがあったり病気になったりしたときにまず頼る先である。そこで言葉が通じることが日本という国の安心感、信頼感にもつながる」(隅田氏) ちなみに、有名なグーグル翻訳では「トイレが流れません」を“The toilet doesn't flow.”(トイレが(そのものが)流れない)と誤訳するが、NICTの翻訳は、“The toilet doesn't flush.”(トイレの水が流れない)と「正しい」翻訳となる』、この「翻訳」例の比較では、「グーグル翻訳」はやはり「万能包丁」的で、「NICTの翻訳」の方が自然だ。
・『自動翻訳はなぜ飛躍的に向上したか 「AIによる機械学習」で世界は一変 自動翻訳の性能は、数年前から飛躍的な向上を続けている。ここで、簡単に自動翻訳発展の歴史を振り返ってみよう。 1980年代までは、規則翻訳(RBMT、Rule-Based Machine Translation)だった。原文を解析して、単語や語順を変換し、訳文を生成する。解析のための文法規則と、単語や語順の変換規則と、語形変化等の文生成のための規則をつくり、それを利用して翻訳するのだ。しかし、各言語に内在する複雑な特性の変換を説明しきる単純な規則は存在せず、改良のために次々と例外処理を積み重ねていって、制御が困難な水準まで規則(Rule)の数が膨れ上がりRBMTは行き詰まった。 そこで、RBMTで中心に据えられた抽象的な規則を追求するという考えは捨て去る必要があった。1984年に、抽象規則の対極にある具体的なデータを中心に据える用例翻訳(EBMT、Example-based Machine Translation)という手法が提案された。 EBMTは、長年の翻訳活動で蓄えられた質の高い対訳データ(同じ意味の原文と訳文を文レベルで集めたもの)を大規模に集めたものから、入力側が類似した対訳データを検索し、この対訳データの訳文側を自動的に修正して翻訳するという方法である。EBMTは人間が英作文する過程をヒントにしたもので、現在の対訳データから機械学習するAI翻訳につながる基盤を作った。) EBMTは類似対訳がある場合に高精度を達成できる一方、対訳データの質に過敏であるという欠点があった。EBMT と並行して研究されていた統計的機械翻訳(SMT、Statistical Machine Translation)のアルゴリズムを変えたフレーズベースのSMTが2003年に提案され、対訳データの質に対して頑健で精度も向上したことから、一定の普及を実現した。フレーズすなわち単語列に基づいて翻訳するというものだ。日本語から英語の場合、日本語文をフレーズで区切ったあとフレーズ毎に英語に翻訳し、SOV(主語、目的語、動詞)からSVO(主語、動詞、目的語)に語順を並べ変える。SMTの名の通り「確率」が主役である。 次の5つの日本語文と英訳文を見てほしい。
1. 京都駅はどこですか → Could you direct me to Kyoto station?
2. 駅はどこですか → Where is the station?
3. トイレはどこですか → Where is the restroom?
4. タクシー乗場はどこですか → Where is the taxi stand?
5. ここはどこですか → Where am I?
フレーズ「どこですか」に注目すると、5例のうち3例、つまり60%が「Where is」と翻訳できることがわかる(※)。このように、対訳データから、(1)各フレーズの訳語としてありうる訳とその確率が自動的に得られる。 (※)「どこですか」の場合は「Where is」 60%、「Could you direct me to」 20%、「Where am」 20%といった具合に 同様に、(2)語順変更の確率、(3)英文のフレーズの並びの確率も獲得できる。沢山の訳文の候補を生成して、(1)(2)(3)から得られる全体の確率が最大になる訳文を選択するのだ。SMTは大きく性能を伸ばし、特に、SOVやSVO等の同グループ内の言語間でかなりの高精度となったが、フレーズという単位で部分を組み合わせるという手法の限界から、特に、グループを跨ぐ言語の間(例、SOVである日本語とSVOである英語の間)の翻訳では実用化しうる精度が出せなかった。 しかし、その後、2014年、AIのコア技術である深層学習(ディープラーニング)を使った入力文全体を読み込んでから翻訳する技術(NMT、Neural Machine Translation)に関する技術が登場し、自動翻訳の精度は劇変した。NMTは「対訳データに基盤を置く点はEBMT・SMTと同じだが、そこからの翻訳知識の取り込み方式、翻訳の計算方式が違う」と隅田氏は語る。カギになるのは、ある単語と一緒に使う「共起する単語」である。 「電車」という単語は、たとえば、「電車に乗る」「電車を運転する」というように、「乗る」「運転する」という単語と一緒に使われている。しかし、特殊な比喩でもない限り、「電車が鳴く」とは言わないし「電車」が「食べる」とは一緒に使われることはない。 「自動車」は「乗る」「運転する」など、一緒に使われる単語が「電車」と似ている。一方、「犬」は「鳴く」と一緒に使われるが、「乗る」「運転する」と一緒に使われることはほぼない。 このように、文章中の単語の出現を分析することで、「電車」と「自動車」とは互いに似ており、「電車」と「自動車」は「犬」とは似ていないことを、機械に区別させることができる。) 「ある単語が、他のどの単語と何回一緒に使われているかに注目して、単語を膨大な数値の塊として表現することによって、コンピューターに実装されるニューラルネットで翻訳ができるようになった」(隅田氏) しかし、派生語や固有名詞を含めると単語の数は相当である。ある言語の単語数が仮に100万語あるとしよう。見出し数100万語の辞書に、他のどの単語と何回一緒に使われているかという数値を記載しなければならない(これをコンピューターでは100万次元のデータを持つという)。言い換えると、メガ*メガでテラ(106*106 = 1012 =1,000,000,000,000〈一兆〉)バイトのメモリに数値を入れることになり、あまりに膨大なので、実際には、数学的なテクニックで処理可能な次元を圧縮して計算する。 NMTの翻訳精度が圧倒的に高かったことから、自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった。革新のスピードは、RBMTからEBMT/SMTまでに約40年、SMTの第2世代までに約20年、NMTまでに約10年、その後現在の第3世代NMTまでが約5年と、どんどん短縮されている。 そして2020年、前述したEBMTの手法が復活してNMTの上に追加された。言い換えると、入力した文と類似した文が対訳データにあるかどうかを検索し、類似対訳があれば、それを参考にして自動翻訳し、類似対訳がなければNMTで翻訳する。多くの専門的な分野で、さらに高精度の翻訳ができる技術が確立できた。 世界にはおよそ7000の言語があると言われ、グーグル翻訳はおよそ100の言語に対応しているが、NICTでは、英、中、韓、仏、西、タイ語、インドネシア語など10言語を重点的に研究している。日本語と英語は構造面で非常に遠く、日英双方向の翻訳に取り組んだ知見は、他の言語ペアの研究にも役立つのだ。敷衍すると、世界の言語の5割を占める、日本語と同じSOV(主語、目的語、動詞の語順の)言語と、4割を占める英語のようなSVO(主語、動詞、目的語の語順の)言語の対応はもちろん、SOV同士の日韓双方向翻訳や、SVO同士の英仏双方向翻訳では、より誤りの少ない翻訳を実現できる。 「日本での需要がある言語に絞り、より高性能、高精度の品質を確保し、他を圧倒することができ、また運用のコストパフォーマンスもよくなる。研究基盤があるので、カバーしていない言語は、必要に応じていつでも追加して開発できる」(隅田氏)』、「自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった」、便利な時代になったものだ。
・『自動翻訳が小規模企業や英語嫌いの人々を救う! 日本人は英語の修得が苦手だと言われるが、隅田氏は「米国の報告によれば、米国人が日本語を習得するのに必要な学習時間は2200時間以上と全言語の中で一番長時間のトレーニングが必要だ。逆もしかり。つまり、日本人が英語を修得するのには2200時間以上かかる。日本人の英語の中高での学習時間は900時間ほどしかない。圧倒的に学習時間が足りない。だから、できないのは当たり前。英語力がないと劣等感を抱く必要はない」と断言する。 自動翻訳が高精度になったので、サッカー好きはサッカーに、プログラム好きはプログラムに打ち込めばよいのだ。特に語学に向いているわけでもない場合に、無理に英語の修得に時間を使うのは限られた人生を非効率に浪費することだ。 語学が好きな人はどんどん学べばいい。自動翻訳は、文脈や背景まで含んだ翻訳には対応できず、文学やジョークの翻訳や高度な同時通訳などは苦手。なので、翻訳や同時通訳の専門家はもちろん必要だ。また、翻訳や同時通訳の専門家も機械翻訳をうまく活用することによって、効率を上げることが可能であり、大いに「働き方改革」ができるはずだ。 より根本的な話として、英語に限らず語学を学ぶことには、自国の言語や文化を相対化し、俯瞰的な視座に立脚できることも含め重要な意義があることは言うまでもない。 機械翻訳を使えば、一定量生じる誤訳の対策に利用者が適切な努力をすれば、丸投げで翻訳するより費用を抑えられるため、中小企業などがニッチな技術の販路を世界に広げるのに役立つだろう。国内市場が縮小するなか、語学の壁のせいで世界に発信できていないコンテンツや技術やサービスを海外に広げるチャンスが生まれる。会議や商談やメールのやりとりにも有効だ。海外とのビジネスのスピードも向上する。ビジネス、アカデミック両方の分野で、語学が苦手なために埋もれていた優秀な人材も日の目を見る。個人でも組織でも、海外との交流が活発になる。 現在、隅田氏のチームは、総務省のプロジェクト「グローバルコミュニケーション計画2025」で同時通訳の開発も手がけている。 「一定時間話した内容をまとめて通訳する逐次通訳と違い、ほとんど遅延なく行う同時通訳は、話されている文章を適切な箇所で分割し、適宜情報を取捨選択し、翻訳するという、専門分野の機械翻訳と違った技術も求められる。2025年の大阪万博での実用化を目指しているところだ」(隅田氏) 誰もが高精度の翻訳、遅延の少ない同時通訳を安価に使える「翻訳の民主化」で、自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い。そして、北風と太陽ではないが、強制されなければ、逆に、ポップ・ミュージックや韓流ドラマのファンの行動で証明されているように語学を学びたくなったり他国の言語や文化に自然に興味を抱いたり、外国文学を読みたくなったりする人も増えるかもしれない』、「自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い」、早く「解放され、救われる日」が来てほしいものだ。
先ずは、昨年12月11日付けダイヤモンドが掲載したオウルズコンサルティンググループ代表取締役CEOの羽生田慶介氏による「IBMが「顔認識AI」撤退、アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256747
・『コロナショックを経て、人々が企業を見る目や意識、姿勢が大きく変化し、これまでよりもさらに誠実であることを求めている。また企業が、悪意はなくても勉強不足や想像力の欠如によって人権を侵害し、大炎上するケースも増えている。何に気をつけるべきなのか。本連載では、注目を集める企業の人権違反とその対応策について紹介する。連載4回目で取り上げるのは、テクノロジー企業で開発が進むAIについて。AIの学習に偏ったデータを与えていれば、AIもその思考法を学んで差別的な判断を下しやすくなる。またUNESCO(国際連合教育科学文化機関)は多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることに警鐘を鳴らした。AI開発に必要な企業倫理について探った』、興味深そうだ。
・『アマゾンの人事AIは“女性嫌い”? 「君は不採用だ」と人事AIが下すワケ 米アマゾン・ドット・コムのAI(人工知能)は“女性嫌い”――。そんな報道が、ロイターから発信されたのは2018年10月のことだった。 記事によると、アマゾンはAIを用いた人材採用ツールの開発を進めていたが、当該AIが“女性嫌い”であることが判明し、開発は中止されたという。AIによる履歴書の自動審査システムを構築すべく、アマゾンは過去10年間に同社が受け取った履歴書をAIにインプットして学習させたが、これが誤りだった。 ソフトウエア開発などの技術職では、過去の応募者および採用者の大部分が男性だったため、AIは「女性よりも男性の方が適している」と判断するようになったのだ。その結果、「女性」「女子大」などの言葉が履歴書に含まれていると、自動的に評価を下げるようになってしまったという。 このような「AIによる差別」は今後も容易に起こるだろう。 AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる。統計的に正しいデータさえ用いればいい、というわけではないのだ。 統計データには性差別・人種差別など、社会に現存する差別構造がそのまま反映されていることがほとんど。そのデータをベースに学習したAIも、差別的な判断を下すようになってしまう。 この観点でまさに今、国際的に問題視されているのが「顔認識AI」の技術だ』、「AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる」、その通りだ。
・『IBM、マイクロソフトも顔認識AIを危険視 18年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が米IBMや米マイクロソフトなどの顔認識ソフトウエアの精度を調査した。その結果、「明るい肌の男性」よりも、「暗い肌の女性」の方がはるかに誤認識されやすいことが発覚し、物議を醸した。 米国の警察は顔認識AIを捜査に活用してきたが、黒人女性のようなマイノリティーほど誤認逮捕などによって、不当な扱いを受けるリスクが高まることになる。 これまでも米国の公民権団体や活動家は、顔認識AIの危険性を訴えてきた。そして20年に入って白人警察官による黒人死亡事件に端を発した「Black Lives Matter(黒人の命は大切)運動」が加速すると、顔認識AIの差別的側面にも改めて注目が集まった。 米国内外での批判の高まりを受け、20年6月にはIBMが顔認識AI事業からの撤退を表明。同社のアービンド・クリシュナCEO(最高経営責任者)は、「IBMは他社の顔認識技術も含めたあらゆるテクノロジーが、大衆監視や人種によるプロファイリング、基本的人権や自由の侵害に使われることに強く反対し、容認しない」との声明を発表した。 これに追随するかのように、アマゾンも警察への顔認識AIの提供を1年間停止することを発表。マイクロソフトも「法整備が完了するまで、自社AIを警察には提供しない」と宣言した。AI市場をけん引してきた大手各社も、「差別するAI」への解決策は、いまだに見いだせていないのが現状だ。 多くの企業はAI活用に際して、人間では導き出せない合理的で効率的な「解」の導出を期待する。 しかし、AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い。これからAIに取り組もうとする企業は、自社の用いるデータやアルゴリズムの公正性に、いくら注意を払っても払いすぎることはないだろう』、「IBMが顔認識AI事業からの撤退」、「アマゾン」、「マイクロソフト」も「警察への顔認識AIの提供」を「停止」、「差別するAI」への警戒姿勢を強めているようだ。「AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い」、企業としては大いに注意が必要なようだ。
・『プライバシー侵害で大炎上した「リクナビ問題」 顔認識AIが危険視されているのは、差別の観点からだけではない。個人を特定して行動を追跡・監視できる点で、プライバシーの侵害につながることも、かねて懸念されている。 そもそもAI活用のためには、多くのケースで細かな個人データを大量に収集・分析する必要があり、プライバシーの侵害に容易につながりやすい構造がある。「AIとプライバシー」は、現代の人権を語る上で最重要トピックの一つだ。 そしてプライバシーに関して、近年、国内で最も話題を呼んだのは19年の「リクナビ問題」だろう。 リクルートキャリアが運営する就職情報サイト「リクナビ」が、AIを用いて就活生の「内定辞退率」を予測・算出し、企業向けに販売していたことが問題視された。学生の就職活動の成否を左右しかねないセンシティブなデータを勝手に販売していたことに対して、「学生は商売道具じゃない」と、SNSなどで激しく非難された。 政府の個人情報保護委員会は、学生の個人データを本人の十分な同意を得ることなく勝手に外部に提供していたとして、同社に是正勧告を出すとともに、データを購入していた企業各社に対しても指導を行った。厚生労働省も、同社の行為を職業安定法違反とみなして行政指導に踏み切った。 リクルートキャリアの社長は、謝罪会見において「研究開発的な位置付けのサービスとして、通常とは異なるプロセスで開発した」「複眼的なチェック体制が機能していなかった」と述べている。 AIサービスで人を扱うときには、ユーザーに十分な事前説明と情報公開がなければ、リクナビのような“大炎上”も免れない。革新的なAIサービスに取り組む野心あふれる企業ほど、その倫理観が問われる』、「IBM」、「アマゾン」などの慎重な姿勢に比べ、商売のことしか考えない「リクルートキャリア」の姿勢の違いが鮮明になった。
・『果たしてSiriに性別はいるのか 「ヘイ、Siri!」「OK、グーグル!」――。今では各世帯に少しずつ普及している音声AIアシスタント。この声のかけ方にも、一考の余地があるのかもしれない。 近年、AIアシスタントによるジェンダーバイアス(男女の役割や男らしさ・女らしさに関する固定的な観念)の強化を問題視する声も上がっている。 UNESCOが19年に発表した報告書では、多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることが指摘された。 「女性は世話好きで従順で(中略)『ヘイ』や『OK』とぶっきらぼうに命令するだけで利用できる存在だ、というシグナルを送っている」との問題提起だ。 同報告書は加えて、Siriの例のように、女性の声を持つAIアシスタントがセクハラ発言に従順な反応を示すようにプログラムされがちなことにも言及。「『女性は従属的であり、粗末な扱いを受けることにも寛容である』という一般的なジェンダーバイアスを補強している」と、現状のAIアシスタントのあり方を強く批判している。 日本国内でも、20年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅に設置された「AI駅員」について、同様の議論が巻き起こった。女性のAI駅員キャラクター「さくらさん」が、恋人の有無やスリーサイズといったセクハラ要素の強い質問にも拒否反応を示さず、優しく受け流すことが判明し、非難の声が集まった。 本来、性別を持たないはずのAIに性別を付与する行為には、どうしても開発側の無意識下のバイアスが反映されやすい。そのため、ユーザー側の受け止め方にも必然的にバイアスがかかってしまう。結果として、現実世界におけるジェンダーバイアスを温存、もしくは助長してしまう恐れがあるのだ。 今後、AIアシスタントやチャットボットの自社開発を検討している企業は、「性別の特定できないAI」を志向することも一案だろう。 UNESCOの報告書内では、中国アリババグループの音声アシスタントAliGenieが「男女どちらとも判断できない、漫画のような声で話す」好例として取り上げられている。また、米国に本部を置くクリエイティブエージェンシーのVirtueは、北欧最大規模のLGBTQ(性的少数者)の祭典であるデンマーク・コペンハーゲンのプライドと共同で、男声にも女声にもとれない中性的なデジタル音声「Q」を20年に開発したという』、「女性の声が初期設定」された「AIアシスタント」が「ジェンダーバイアスを補強」、というのは事実だが、「性別の特定できないAI」というのも味気ない。
・『テクノロジー企業に必要な「AI倫理」担当部署の新設 AIサービスの開発最前線のエンジニアに、人権の配慮を学んでもらうことも必要だ。だがテクノロジー競争の最前線でしのぎを削るイノベーターたちに、万全の社会的配慮の責任を押し付けるのは酷な話だろう。 そこで先進企業は相次いで、社内に「AI倫理」を担う部署を設置し始めた。ESG投資の「S(社会)」「G(ガバナンス)」双方の視点で極めて重要な取り組みだ。 米セールスフォース・ドットコムは19年から、「最高倫理・人道責任者(Chief Ethical and Humane Use Officer)」のポストを設けている。同社の技術やサービスが倫理的に許されるか、検討・確認する役割を担う。 富士通も社外専門家で構成された「AI倫理外部委員会」を19年に設置した。富士通は、AIによる保育園と待機児童のマッチングシステムを自治体向けに開発・提供しているが、倫理委員会ではその公正性が検証対象となった。「保護者からの提供データに誤りがあっても対応できるように」と倫理委員会から助言を受け、システムに改良を加えたとされる。 これからさらに加速するAIサービス競争。その勝敗を決めるのは旧来のモノづくりのようなQ(品質)、C(コスト)、D(納期)といった単純な基準ではない。たとえ少しくらい知能が劣ったとしても、人権リスクの低いAIの方が社会に実装される可能性が高い。 「性能」一辺倒のAI開発を進めるテクノロジー企業は、早晩、淘汰されてしまうかもしれない。 手塚治虫が自作で未来世界を描くときに何度も警鐘を鳴らしていたこのテーマ。いよいよ企業が自分事として考えるときがきた』、日本企業はコンプライアンスが苦手な企業が多いだけに、上手くいくか心配だ。
次に、本年1月2日付けダイヤモンドが掲載したスタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星 友啓氏による「【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256815
・『スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。 そのトップが日本人だということをご存じだろうか。オンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が発売たちまち2万部重版と話題になっている。 ベストセラー作家で“日本一のマーケッター”と評された神田昌典氏も「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」と書評した。 このたび、同じスタンフォード大学で教鞭を執るスティーヴン・マーフィ重松教授と星校長が対談。星校長の視点から対談の学びを共有する』、興味深そうだ。
・『つらい、不安な時ほど「自分のこと」を考えてはいけない? 日本で生まれ、アメリカで育つ。ハーバード大学で臨床心理学の博士号取得。東京大学留学生センター・大学院教育学研究科助教授。現在、スタンフォード大学医学部ウエルネスとリーダーシップ教育の心理学者。マインドフルネスの概念をベースに、生きる力やグローバルスキルを高める専門家として、教育・医療などの分野で国際的に活動中。主著に『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』(講談社、2016年)、『From Mindfulness to Heartfulness 』(Berrett-Koehler Publishers、2018年)、『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』(サンマーク出版、2019年)、『スタンフォードの心理学授業 ハートフルネス』(大和書房、2020年)など。 新しいことを始めようとして怖くなる時、 嫌なことから逃げ出したい時、 困難に打ち当たり、進めなくなった時、 そんな時は、つい「自分のこと」で頭がいっぱいになってしまいませんか? 実は、つらい時、不安になった時、逃げ出したくなるような時ほど、考えるべきは「自分以外のこと」なのです。 こう話すのは、スタンフォードでハートフルネス・ラボを創始した心理学者、スティーヴン・マーフィ重松先生。 「ハートフルネス」という言葉は初めて聞いた方がほとんどかと思いますが、先の見えない不安社会を生き抜くための大きなヒント「ハートフルネス」について、スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長として、重松先生と対談しました。 今回は +伝統と、科学、アートを統合した最先端の考え方「ハートフルネス」とは? +マインドフルネスとハートフルネスの違い +逆境に屈せず行動できるようになる方法 +天才児の教育現場で行われる「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」で求められる5つの力 +滅私奉公ではなく、お互いを個性、力を伸ばして活かす社会のつくり方 についてお話ししましょう』、なるほど。
・『変化の激しいAI時代に、しなやかな強さを生むEIと心の健康 科学、テクノロジーが発達し、便利なサービスが次々現れ、かつてより飛躍的に暮らしやすくなった現代。 しかし、それに伴って私たちは幸せになったのかと考えると、そうとは限りません。 たとえば、SNSの発達で人と比べて劣等感を感じたり、コミュニケーション齟齬が起きたり、いつでも誰とでもつながれるからこそ逆に孤独を感じるなど、ストレスが増えた方もいるのではないでしょうか? 今年の春、年に一度の中等教育カンファレンス「全米独立型私立校のカンファレンス」にて、ニューヨーク大学ビジネススクールの心理学者ジョナサン・ハイド教授は、「GenZ」と呼ばれるティーネイジャー層が危険にさらされていると話しました。 精神疾患、身体障害、学習障害やADHDの数、うつ病、自傷、自殺の件数などは、明らかに増加しています。 AIやロボットが今後さらに生活を変えることが予想されますが、テクノロジーの発達の速さや生活変容は、先行きの見えない混乱を人々の心に生みます。 そんな時代だからこそ、重要なのは、いかに「感情的知性(EI)」を高め、「心」の健康をいかに保つかです』、「ティーネイジャー層が危険にさらされている」、日本でも同じだろう。
・『ハートフルネスは、思いやりと感謝で心を育てる、マインドフルネスの進化形 重松先生は、アメリカの心理学専門誌『サイコロジー・トゥデイ』で、「Finding Meaning in Life’s Struggles(人生の困難に、意味を見出す方法)」という人気ブログを連載しています。 「臨床心理学で、私はたくさんの苦しんでいる人と対話してきました。 人が幸せになるのは、決して簡単ではありません。 誰もがヴァルナビリティ(開かれた弱さ)を持ち、悩みながら生きているのです」 人生を充実させ、生きづらさから解放されるためのヒントとして、思考、脳の研究から生み出されたのが、今、起こっていることに集中する「マインドフルネス」です。 その手法の一つ「瞑想」は、Googleなどの世界的大企業で取り入れられていることで有名になりました。 重松先生は、著書で「マインドフルネスをもっともよく表す漢字は「念」であり、これは「今」と「心」のふたつの部分からできている。 しかし、日本語で「心」が気持ち、強い感情、意識や思考、魂など、その人全体を指すのに対し、西洋でマインドフルネスといえば、ハートから切り離された知性や思考といったイメージを持つ人がいる。 それを考えると、ハートフルネスという表現のほうが、「念」の意味に近いだろう」と述べます。 「ハートフルネスの考え方は、自分だけで完結するものではありません。 能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」 重松先生はこう語ります』、「能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」、なるほど。
・『不安、逃げ出したい時の勇気ある行動が、あなたに幸福感をもたらす 私は拙著『スタンフォード式生き抜く力』で、ダライ・ラマの「人間は根本的に社会的な生き物で、それがゆえに、私たち人を思いやる力の『種』を持って生まれてくる。その力を発揮することが私たちの幸福や社会の繁栄に必要不可欠だ」という言葉を引用しましたが、ダライ・ラマは次のような言葉も残しています。 「人間として、私は自分の幸福が人次第だということを知っています。そして人の幸福に関心を持つことは、道徳的な責任だと真剣に思っています。人類の未来が祈りや良心だけで実現するというのは、現実的な考えではありません。行動が必要です。ですから私の一番の責務は、力の限り人類の幸福に貢献することなのです」 「責任」という言葉に抵抗を持つ方もいるかもしれませんが、重松先生は次のように語ります。 「日本では、義理という言葉を、心がこもっていない、仕方なくやるものとネガティブに捉える方もいるかもしれません。 しかし、義理は「美徳」です。私の母は、ゼネラル・エレクトリック(略称GE。トーマス・エジソンが創業した世界的企業)で、初のアジア人女性として成功した、自由でキャリアもある女性でした。 そんな彼女の言葉が『義理と人情を忘れてはいけない』です。Responsibility(責任)とは、Response(応答)、Ability(能力)。つまり、社会から求められているものに、自分の能力を持って応えることといつも話してくれました」 「自分にできることはやる」という行動は、拙著『スタンフォード式生き抜く力』で取り上げた、「五常」の「仁」「義」と同じ。 やるべきことをやる正義感「義」と、思いやりの心がまえ「仁」を持って行動することが重要なのです。 心理学の研究で、健康向上の最良の方法の一つは、積極的に周囲に貢献することとされます。感謝の念を持とうなど心の意識も大事ですが、日常のささやかな親切などの行動こそが、幸福感につながるのです。 また、作家のオードリー・ロードは、恐れを乗り越えるために、ヴィジョン、ミッションが必要と説きますが、重松先生も、真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです』、「真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです」、なるほど。
・『天才児教育のトレンド「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」5つの力とハートフルネス 「他人への共感、自らの恐れをコントロールし行動する力を持つ」ことは、健全な精神、体の健康のサポートで効果的な学びを実現する、スタンフォードの教育現場で行われているソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)で目指す姿でもあります。 以下は、アメリカのSELを90年代から牽引してきたCollaborative for Academic, Social and Emotional Learning(CASEL)が挙げる社会性・感情の5つの能力です。 1.自分を理解する力(self-awareness):自信をもって成長マインドセットで、自分の強みや弱みを理解することができる。 2.自分で自分を統制する力(self-management):ストレスとうまくつき合って、自分の衝動を適切にコントロールし、自分で目標を設定して到達していくために自分を動機づけることができる。 3.他者を理解する力(social awareness):多様な背景や文化を有する人たちの視点を理解して、共感したり思いやったりすることができる。 4.他者とうまくやっていく力(relationship skills):他の人とうまくコミュニケーションができ、協力できる。不健全な場の空気に流されない。対立を建設的に解決する。他人に助けを求めたり、自分から他人を助けることができる。 5.適切な意思決定をする力(responsible decision-making):自分の行動や、他人とのやり取りの中で、倫理的基準や安全性、社会的規範に基づいて、建設的な選択をすることができる。 このように、SELで学習する内容は、ハートフルネスの学びを通して目指す姿でもあるのです』、「SEL」はなかなかよく出来た仕組みのようだ。
・『あなたのハートフルネスが、世界をやさしく変えていく 「アメリカ人は個人主義で、自己中心的、恐れが強く、憎しみを感じる人が多いです。日本は世界から、エンパシー(注)社会だと思われています。小さい頃から、他者とのつながりの大切さを教える教育がなされ、共感、思いやりを自然と身につけている人が多い。しかし、弊害として、他人に共感する=自分をなくすと思っているなど、思いやりが我慢と同義になっている人もいます。 思いやり、人とつながることは、人が生きるにあたり実は一番大事。でも、その方法を正しく教えられる人が、教育現場含めほとんどいないのが現状です」 人に思いやりを持って接すれば、その人は応えてくれる。もし目の前の人が直接応えてくれなかったとしても、めぐりめぐって、またいつかあなたのもとに返ってくる。この考えを示すのが、日本古来のことわざ「情けは人のためならず」です。 ハートフルネスで恐れを乗り越える。思いやりを持って、相手の人生を自分事として共感し、自分だけのためでなく、もっと大きな社会のために行動することで、私たちは幸福を感じられます。 一人一人の意識が変われば、世界は温かく、あなたにとっても心地よいものになるに少しずつ変わっていくでしょう。 もしこの記事が少しでも役に立ったら、ぜひ、あと一歩を乗り越えよう努力している友人、より良い人生を歩もうと頑張る大切な方、お仕事の仲間などにも教えてあげてください。 一人の小さな勇気が、みんなのためになっていると伝えるのもハートフルネス、思いやりに満ちた行動になります。 ここでの気づきが、互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会づくりのきっかけに少しでもなれば幸いです。(スティーヴン・マーフィ重松氏、星 友啓氏の略歴はリンク先参照)』、「互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会」、は理想形で、それに少しでも近づいてほしいものだ。
(注)エンパシー:共感力)
第三に、4月2日付けダイヤモンドが掲載したライターの奥田由意氏による「価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態、特許や製薬・金融など専門分野に変革も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266872
・『自動翻訳というと、グーグル翻訳やDeepLを思い浮かべる人が多いかもしれないが、実は国産のAI翻訳が、特許、製薬、金融などの専門分野での高精度化をはじめ、すさまじい進歩を遂げている。なぜ精度が急速に上がったのか。どのような産業でどのように役立てられているのか。そして、今後ビジネスではどのように応用される可能性があるのか。一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT) 会長で国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)フェロー隅田英一郎氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『特許、製薬、金融など専門分野や音声翻訳でも高精度を実現 AIを活用した国産の自動翻訳(機械翻訳)が世界的にも高いレベルにあることは、あまり知られていないかもしれない。 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究成果による自動翻訳は、英、中、韓など10言語に関して、旅行、医療、防災等の分野に対応し、日本語と外国語、双方向の翻訳精度は80%以上で、実用レベルである。2019年にはTOEICスコアでも960点以上の実績を上げている。また、音声認識の精度も今や人間を超えている(時間をかけて何回か録音を聞き直すことを許容すれば、文脈を理解する能力がある分だけ人間のほうが正確ではある)。 これらの最先端技術は、現在累計80万台を売り上げている82言語対応の双方向翻訳機ポケトーク、自治体での業務やインバウンド対応のための翻訳機eTalk5みらいPFモデルなどをはじめ、約30の製品がビジネスの現場で使われている(製品・サービス事例)。 こうした製品以外にも、企業他との共同研究で、専門分野の自動翻訳の精度が飛躍的に上がっている。NICTでは、特許庁、製薬会社などとしっかりタッグを組んで、研究開発を進め、それぞれの専門分野に適応した高精度翻訳を実現し、外国出願を効率化したり、新薬の販売承認にかかわる翻訳日数を短縮したりしている。 NICTフェロー隅田英一郎氏は「グーグル翻訳においては精度を上げることが必ずしも最優先事項ではない。グーグル翻訳は広告ビジネスへの貢献がその存在理由であって、汎用の単品として設計されている。汎用品とは包丁で例えれば万能包丁のようなもの。何でも切れるといっても、生魚の身やパンはうまく切れず、結局、刺身包丁やパン切りナイフが必要になる。包丁と同じで、翻訳も専門に特化した自動翻訳でなければ用をなさない」と語る。 NICTでは、研究室に研究を閉じ込めず、専門分野の官・民と協力して、重点分野について、実際にその分野で使われている高品質で大量のデータを機械学習(深層学習)させ、それを協力相手の現場に戻して厳しくチェックしてもらい、調整を重ねることによって高精度を実現している。 「専門の組織や企業と一緒に作ることで、リアルな必要性に基づいたフィードバックが確実に得られ、短期間にシステムに反映して実用に供することができている」(隅田氏) 例えば、外国での特許訴訟における費用の多くを翻訳が占めるので翻訳の低コスト化が必要であり、一定期間に大量に翻訳するので高速化も必要だった。また、特許査定までにやり取りされる「拒絶理由書」は、特許明細書の独特の文章と、普通のスタイルの文章が混在した、とりわけ翻訳困難な文書だ。NICTは2014年から特許庁と協力して自動翻訳の開発を続け、異なる2つの評価尺度であるRIBESとBLEUの組み合わせで世界一の翻訳精度を達成した。) さらに、特許は常に新しい用語やコンセプトが出てくるので、特許庁から提供される対訳データに基づいて翻訳システムを更新し、加えて特許庁からフィードバックを得て改良しており、性能改善は停滞することがない。翻訳システムはいつもup-to-dateだ。 製薬分野でも、英国のアストラゼネカと協力し、「治験実施計画書」の自動翻訳に取り組み、国内で新薬を申請するためにかかる翻訳の期間を4週間から2週間に半減させた。日本国内で発売する新薬の申請は日本語の文書でなければ承認されないため、やはり翻訳の精度と速度が決定的に重要だ。これにより、新薬はより早く患者に届き、新薬の収益化も前倒しできる。 ほかにも、トヨタと中国語の自動車法規の翻訳を手がけたり、SMBC日興証券とアナリストレポートの翻訳を高精度化したり、半導体や契約書などの分野もカバーする。 VoiceBiz等多数あるスマホ・アプリの形態の製品も、観光関係者(例えば、舞妓、芸妓)、美容院、飲食店、小売店、さらには、病院関係者(医師、看護師、窓口)、救急車の救急救命士、自治体窓口などで広く使われている。2020年6月には警察庁が全国47都道府県に配備したスマホに音声翻訳のアプリを搭載した。 「交番、自治体窓口、救急車、診療所などは、日本にいる外国人が困りごとがあったり病気になったりしたときにまず頼る先である。そこで言葉が通じることが日本という国の安心感、信頼感にもつながる」(隅田氏) ちなみに、有名なグーグル翻訳では「トイレが流れません」を“The toilet doesn't flow.”(トイレが(そのものが)流れない)と誤訳するが、NICTの翻訳は、“The toilet doesn't flush.”(トイレの水が流れない)と「正しい」翻訳となる』、この「翻訳」例の比較では、「グーグル翻訳」はやはり「万能包丁」的で、「NICTの翻訳」の方が自然だ。
・『自動翻訳はなぜ飛躍的に向上したか 「AIによる機械学習」で世界は一変 自動翻訳の性能は、数年前から飛躍的な向上を続けている。ここで、簡単に自動翻訳発展の歴史を振り返ってみよう。 1980年代までは、規則翻訳(RBMT、Rule-Based Machine Translation)だった。原文を解析して、単語や語順を変換し、訳文を生成する。解析のための文法規則と、単語や語順の変換規則と、語形変化等の文生成のための規則をつくり、それを利用して翻訳するのだ。しかし、各言語に内在する複雑な特性の変換を説明しきる単純な規則は存在せず、改良のために次々と例外処理を積み重ねていって、制御が困難な水準まで規則(Rule)の数が膨れ上がりRBMTは行き詰まった。 そこで、RBMTで中心に据えられた抽象的な規則を追求するという考えは捨て去る必要があった。1984年に、抽象規則の対極にある具体的なデータを中心に据える用例翻訳(EBMT、Example-based Machine Translation)という手法が提案された。 EBMTは、長年の翻訳活動で蓄えられた質の高い対訳データ(同じ意味の原文と訳文を文レベルで集めたもの)を大規模に集めたものから、入力側が類似した対訳データを検索し、この対訳データの訳文側を自動的に修正して翻訳するという方法である。EBMTは人間が英作文する過程をヒントにしたもので、現在の対訳データから機械学習するAI翻訳につながる基盤を作った。) EBMTは類似対訳がある場合に高精度を達成できる一方、対訳データの質に過敏であるという欠点があった。EBMT と並行して研究されていた統計的機械翻訳(SMT、Statistical Machine Translation)のアルゴリズムを変えたフレーズベースのSMTが2003年に提案され、対訳データの質に対して頑健で精度も向上したことから、一定の普及を実現した。フレーズすなわち単語列に基づいて翻訳するというものだ。日本語から英語の場合、日本語文をフレーズで区切ったあとフレーズ毎に英語に翻訳し、SOV(主語、目的語、動詞)からSVO(主語、動詞、目的語)に語順を並べ変える。SMTの名の通り「確率」が主役である。 次の5つの日本語文と英訳文を見てほしい。
1. 京都駅はどこですか → Could you direct me to Kyoto station?
2. 駅はどこですか → Where is the station?
3. トイレはどこですか → Where is the restroom?
4. タクシー乗場はどこですか → Where is the taxi stand?
5. ここはどこですか → Where am I?
フレーズ「どこですか」に注目すると、5例のうち3例、つまり60%が「Where is」と翻訳できることがわかる(※)。このように、対訳データから、(1)各フレーズの訳語としてありうる訳とその確率が自動的に得られる。 (※)「どこですか」の場合は「Where is」 60%、「Could you direct me to」 20%、「Where am」 20%といった具合に 同様に、(2)語順変更の確率、(3)英文のフレーズの並びの確率も獲得できる。沢山の訳文の候補を生成して、(1)(2)(3)から得られる全体の確率が最大になる訳文を選択するのだ。SMTは大きく性能を伸ばし、特に、SOVやSVO等の同グループ内の言語間でかなりの高精度となったが、フレーズという単位で部分を組み合わせるという手法の限界から、特に、グループを跨ぐ言語の間(例、SOVである日本語とSVOである英語の間)の翻訳では実用化しうる精度が出せなかった。 しかし、その後、2014年、AIのコア技術である深層学習(ディープラーニング)を使った入力文全体を読み込んでから翻訳する技術(NMT、Neural Machine Translation)に関する技術が登場し、自動翻訳の精度は劇変した。NMTは「対訳データに基盤を置く点はEBMT・SMTと同じだが、そこからの翻訳知識の取り込み方式、翻訳の計算方式が違う」と隅田氏は語る。カギになるのは、ある単語と一緒に使う「共起する単語」である。 「電車」という単語は、たとえば、「電車に乗る」「電車を運転する」というように、「乗る」「運転する」という単語と一緒に使われている。しかし、特殊な比喩でもない限り、「電車が鳴く」とは言わないし「電車」が「食べる」とは一緒に使われることはない。 「自動車」は「乗る」「運転する」など、一緒に使われる単語が「電車」と似ている。一方、「犬」は「鳴く」と一緒に使われるが、「乗る」「運転する」と一緒に使われることはほぼない。 このように、文章中の単語の出現を分析することで、「電車」と「自動車」とは互いに似ており、「電車」と「自動車」は「犬」とは似ていないことを、機械に区別させることができる。) 「ある単語が、他のどの単語と何回一緒に使われているかに注目して、単語を膨大な数値の塊として表現することによって、コンピューターに実装されるニューラルネットで翻訳ができるようになった」(隅田氏) しかし、派生語や固有名詞を含めると単語の数は相当である。ある言語の単語数が仮に100万語あるとしよう。見出し数100万語の辞書に、他のどの単語と何回一緒に使われているかという数値を記載しなければならない(これをコンピューターでは100万次元のデータを持つという)。言い換えると、メガ*メガでテラ(106*106 = 1012 =1,000,000,000,000〈一兆〉)バイトのメモリに数値を入れることになり、あまりに膨大なので、実際には、数学的なテクニックで処理可能な次元を圧縮して計算する。 NMTの翻訳精度が圧倒的に高かったことから、自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった。革新のスピードは、RBMTからEBMT/SMTまでに約40年、SMTの第2世代までに約20年、NMTまでに約10年、その後現在の第3世代NMTまでが約5年と、どんどん短縮されている。 そして2020年、前述したEBMTの手法が復活してNMTの上に追加された。言い換えると、入力した文と類似した文が対訳データにあるかどうかを検索し、類似対訳があれば、それを参考にして自動翻訳し、類似対訳がなければNMTで翻訳する。多くの専門的な分野で、さらに高精度の翻訳ができる技術が確立できた。 世界にはおよそ7000の言語があると言われ、グーグル翻訳はおよそ100の言語に対応しているが、NICTでは、英、中、韓、仏、西、タイ語、インドネシア語など10言語を重点的に研究している。日本語と英語は構造面で非常に遠く、日英双方向の翻訳に取り組んだ知見は、他の言語ペアの研究にも役立つのだ。敷衍すると、世界の言語の5割を占める、日本語と同じSOV(主語、目的語、動詞の語順の)言語と、4割を占める英語のようなSVO(主語、動詞、目的語の語順の)言語の対応はもちろん、SOV同士の日韓双方向翻訳や、SVO同士の英仏双方向翻訳では、より誤りの少ない翻訳を実現できる。 「日本での需要がある言語に絞り、より高性能、高精度の品質を確保し、他を圧倒することができ、また運用のコストパフォーマンスもよくなる。研究基盤があるので、カバーしていない言語は、必要に応じていつでも追加して開発できる」(隅田氏)』、「自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった」、便利な時代になったものだ。
・『自動翻訳が小規模企業や英語嫌いの人々を救う! 日本人は英語の修得が苦手だと言われるが、隅田氏は「米国の報告によれば、米国人が日本語を習得するのに必要な学習時間は2200時間以上と全言語の中で一番長時間のトレーニングが必要だ。逆もしかり。つまり、日本人が英語を修得するのには2200時間以上かかる。日本人の英語の中高での学習時間は900時間ほどしかない。圧倒的に学習時間が足りない。だから、できないのは当たり前。英語力がないと劣等感を抱く必要はない」と断言する。 自動翻訳が高精度になったので、サッカー好きはサッカーに、プログラム好きはプログラムに打ち込めばよいのだ。特に語学に向いているわけでもない場合に、無理に英語の修得に時間を使うのは限られた人生を非効率に浪費することだ。 語学が好きな人はどんどん学べばいい。自動翻訳は、文脈や背景まで含んだ翻訳には対応できず、文学やジョークの翻訳や高度な同時通訳などは苦手。なので、翻訳や同時通訳の専門家はもちろん必要だ。また、翻訳や同時通訳の専門家も機械翻訳をうまく活用することによって、効率を上げることが可能であり、大いに「働き方改革」ができるはずだ。 より根本的な話として、英語に限らず語学を学ぶことには、自国の言語や文化を相対化し、俯瞰的な視座に立脚できることも含め重要な意義があることは言うまでもない。 機械翻訳を使えば、一定量生じる誤訳の対策に利用者が適切な努力をすれば、丸投げで翻訳するより費用を抑えられるため、中小企業などがニッチな技術の販路を世界に広げるのに役立つだろう。国内市場が縮小するなか、語学の壁のせいで世界に発信できていないコンテンツや技術やサービスを海外に広げるチャンスが生まれる。会議や商談やメールのやりとりにも有効だ。海外とのビジネスのスピードも向上する。ビジネス、アカデミック両方の分野で、語学が苦手なために埋もれていた優秀な人材も日の目を見る。個人でも組織でも、海外との交流が活発になる。 現在、隅田氏のチームは、総務省のプロジェクト「グローバルコミュニケーション計画2025」で同時通訳の開発も手がけている。 「一定時間話した内容をまとめて通訳する逐次通訳と違い、ほとんど遅延なく行う同時通訳は、話されている文章を適切な箇所で分割し、適宜情報を取捨選択し、翻訳するという、専門分野の機械翻訳と違った技術も求められる。2025年の大阪万博での実用化を目指しているところだ」(隅田氏) 誰もが高精度の翻訳、遅延の少ない同時通訳を安価に使える「翻訳の民主化」で、自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い。そして、北風と太陽ではないが、強制されなければ、逆に、ポップ・ミュージックや韓流ドラマのファンの行動で証明されているように語学を学びたくなったり他国の言語や文化に自然に興味を抱いたり、外国文学を読みたくなったりする人も増えるかもしれない』、「自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い」、早く「解放され、救われる日」が来てほしいものだ。
タグ:人工知能 (AI) (その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も) ダイヤモンド 羽生田慶介 「IBMが「顔認識AI」撤退、アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性」 アマゾンの人事AIは“女性嫌い”? 「君は不採用だ」と人事AIが下すワケ 「AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる」、その通りだ 「IBMが顔認識AI事業からの撤退」、「アマゾン」、「マイクロソフト」も「警察への顔認識AIの提供」を「停止」、「差別するAI」への警戒姿勢を強めているようだ。 「AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い」、企業としては大いに注意が必要なようだ 「IBM」、「アマゾン」などの慎重な姿勢に比べ、商売のことしか考えない「リクルートキャリア」の姿勢の違いが鮮明になった。 「女性の声が初期設定」された「AIアシスタント」が「ジェンダーバイアスを補強」、というのは事実だが、「性別の特定できないAI」というのも味気ない 日本企業はコンプライアンスが苦手な企業が多いだけに、上手くいくか心配だ。 星 友啓 「【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法」 つらい、不安な時ほど「自分のこと」を考えてはいけない? 変化の激しいAI時代に、しなやかな強さを生むEIと心の健康 「ティーネイジャー層が危険にさらされている」、日本でも同じだろう。 「能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」、なるほど 「真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです」、なるほど 「SEL」はなかなかよく出来た仕組みのようだ 「互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会」、は理想形で、それに少しでも近づいてほしいものだ。 奥田由意 「価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態、特許や製薬・金融など専門分野に変革も」 この「翻訳」例の比較では、「グーグル翻訳」はやはり「万能包丁」的で、「NICTの翻訳」の方が自然だ 「自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった」、便利な時代になったものだ 「自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い」、早く「解放され、救われる日」が来てほしいものだ。