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日本企業の海外M&Aブーム(その6)(日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む、日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が 日本企業の成長志向の鍵を握るワケ、積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも 「大博打」に潜むリスク) [企業経営]

日本企業の海外M&Aブームについては、2018年5月15日に取上げた。今日は、(その6)(日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む、日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が 日本企業の成長志向の鍵を握るワケ、積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも 「大博打」に潜むリスク)である。

先ずは、昨年12月20日付け東洋経済オンライン「日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/722818
・『「新たな時代におけるグローバルネットワークを構築し、わが国日本の成長力を取り戻す。そのためにチャレンジをいたすことにした」 国内鉄鋼最大手の日本製鉄は12月18日夜、アメリカの老舗、USスチールを約2兆円で買収すると発表した。翌19日の会見で橋本英二社長は、日本製鉄として過去最大となる買収の意義を力を込めて語った』、興味深そうだ。
・『100年以上の歴史と国名を冠する名門同士  USスチールは1901年、銀行家のJPモルガンや鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーがかかわる製鉄会社が合併して誕生した、アメリカ産業史を代表する企業。1960年代までは世界最大の鉄鋼会社でもあった。 その後、日本を初めとするアジアメーカーに抜かれて凋落。2022年の粗鋼生産量は世界27位(世界鉄鋼協会)。アメリカの鉄鋼メーカーではニューコア、クリーブランド・クリフス(以下、クリフス)に次ぐ3位である。 一方、日本製鉄の前身である官営八幡製鐵所が操業を開始したのも1901年。ともに100年以上の伝統を持ち、国の名前を冠する企業同士の統合となる。 もっとも19日の株式市場は「ひとまず下げ」の反応だった。 日本製鉄の株価は前日比4.3%の下落で始まり、終値も同2.8%下げた。これにはいくつかの懸念があるからだ。 第1に高値づかみの懸念。 日本製鉄の買収案はUSスチール1株当たり55ドル。発表前の株価39.33ドルに40%のプレミアムを付けた。アメリカ企業の買収で40%のプレミアムはさほど高くはない。 だがUSスチールは、今年8月に身売りを含めた「戦略的選択肢」を検討していると公表。直後、クリフスによる買収提案が公開されたことで株価は上昇した。8月以前の株価は20~30ドルだったこと、クリフスの提案は1兆円前後だったとされることを考えると、プレミアムはかなりのものだ。 第2が買収に伴う財務への影響。 2兆円の買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇する。 0.9という水準は一般に安全圏とされるが、今後、「経営・財務状況、市場動向などを勘案しながら、必要に応じて、資本構成を評価し最適な資金調達手段を検討する」としており、株式市場が嫌う増資の可能性が残る』、「懸念材料」としては、「高値づかみの懸念」、「買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇」、なるほど。
・『労働組合が非難の声明  第3がUSスチールが抱える問題。 USスチールは名門ながら業績は長く低迷していた。2021年以降は黒字を保つが、その前の10年のうち7年は最終赤字だ。名門ゆえに高コスト体質で労働組合の経営への関与も強い。 実際、全米鉄鋼労働組合(USW)は労働協約を盾にクリフスによるUSスチール買収を後押ししていた。クリフスの買収提案を拒否したのはUSスチール側だったが、USWは日本製鉄による買収を非難する声明を即座に出した。 記者は8月下旬、日本製鉄の森高弘副社長に、USスチールが売りに出ていることについて見解を尋ねている。森副社長は「買わない」と答えた。水面下で進む買収案件についてメディアに正直に語るはずもないだろう。とはいえ、このときに挙げた買わない理由の中には「組合」もあった。 ただ、こうした懸念は百も承知。そのうえで日本製鉄として過去最大となる2兆円の買収に踏み切ったのは必然性がある。 日本製鉄は、長年の課題だった国内の余剰生産能力を削減、国内大口顧客との「ひも付き価格」の是正や高付加価値化に取り組むことで業績は大幅に改善。2019年度、2020年度の最終赤字から足元では評価損益などを除く実力ベースの事業利益率が2桁パーセント目前になった。 一方、国内生産とほぼ同義の単独粗鋼生産は、2014年度の4823万トンから直近見通しで3500万トンへと縮小してしまった。この先も国内の鉄鋼需要は減少していくとみられており、数量の本格的な反転は期待できない。価格もおよそ適正水準となり、高付加価値化を進めるにしても国内の鉄鋼事業で大きな利益成長は見込めない。 こうした背景から近年、日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を将来ビジョンとして掲げ、海外での成長投資を強化してきた。 2019年には欧州アルセロール・ミタルとの合弁でインド5位の鉄鋼大手を7700億円で買収。2社の合弁会社は2022年にインドに約1兆円の追加投資を敢行し、生産能力や港湾設備を増強している。この年にはタイで電炉メーカーを日本製鉄単独で買収した。このほかミタルとのアメリカ合弁会社で電炉建設にも動いている。 これらによって粗鋼生産能力は足元で6600万トンに達し、USスチールの買収が完了すれば8600万トンになる。さらにインドでの増強、追加の計画まで勘案すれば1億トンを完全に射程圏にとらえている。 規模だけを拡大したところで利益につながるとは限らないが、鉄鋼業は「数量×付加価値」のビジネス。規模の経済が働くことも事実だ』、「日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を将来ビジョンとして掲げ、海外での成長投資を強化してきた・・・USスチールの買収が完了すれば8600万トンになる。さらにインドでの増強、追加の計画まで勘案すれば1億トンを完全に射程圏にとらえている・・・鉄鋼業は「数量×付加価値」のビジネス。規模の経済が働くことも事実だ」、なるほど。
・『成長市場を取り込むには生産能力が必要  力を入れる市場は明確だ。インドは中国に次ぐ世界第2位の市場だが、人口当たり鋼材使用量は日本の約5分の1と成長余力が大きい。日系自動車メーカーの牙城であるタイは、自動車用の高級鋼板の需要が伸びる。 アメリカの需要は先進国で最大となる年間約1億トンあるのに対し、同国内の粗鋼生産量は8000万トン台。トランプ前大統領の時代に鋼材輸入に関税をかけたことでタイトな需給が続く。熱延鋼板を巻き取った「ホットコイル」は、中国経済の落ち込みからアジア市場はトン当たり600ドル台と低迷する中、アメリカ市場では1100ドルをつける。 人口増加も続くうえ、EVシフトを受けて日本製鉄が得意とする電磁鋼板など高付加価値鋼材の需要の伸びが期待できる。こうしたアメリカ市場の成長を享受するには生産能力が必要だ。 「外国の民間企業がグリーンフィールド(草が生えた土地から=イチから)で作るのは難しい。そこに今回の案件が出てきて条件に合った」。橋本社長はそう語る。 USスチールはアメリカ国内だけで高炉を8基(うち2基は休止中)、電炉を3基持っており、さらに2基の電炉を建設中。鋼板や鋼管に加工する下工程の設備も保有している。供給基地としては申し分ない。 加えて自社鉱山で鉄鉱石を100%自給できる点も魅力だ。日本製鉄はこの11月にカナダの鋼材会社へ2000億円、20%出資を決めた。良質な資源権益を囲い込むことは収益安定に加え、脱炭素をにらんでも重要だからだ。) USスチールが2019年に買収した電炉メーカー、ビッグリバースチールの存在も大きい。スクラップや鉄鉱石を天然ガスで還元した「還元鉄」から鉄鋼製品を作る電炉はCO2(二酸化炭素)の排出量が高炉に比べて圧倒的に少ないという利点がある。 反面、電炉では自動車用の高級鋼を作るのが難しいとされる。そうした中、ビッグリバーは「無方向性電磁鋼板」のラインを今年10月に稼働させた。EVで使われる高効率モーターに不可欠な無方向性電磁鋼板では世界で先行する日本製鉄でさえ、電炉での生産は昨年から始めたばかり。 実際、8月に森副社長はUSスチールの魅力としてビッグリバーの存在を挙げていた。ビッグリバーと日本製鉄の技術・設備の相互活用はUSスチール買収のわかりやすいシナジーになるはずだ。 買収の狙いについて橋本社長は、「世界の潮流は新しい経済安全保障。その中でどのように地球規模のニーズに応えるか」とも述べている。 経済安保が重視される時代、アメリカ市場に中国から輸入鋼材が野放図になだれ込むことはない。需給バランスの大崩れがなければ、過去のようにUSスチールが赤字にまみれることはなく、プレミアムを払っても十分にペイするという計算がある。 もちろんリスクは残る。わかりやすいのはUSWの存在だ。ただ、「USスチールが労働組合との間で提携している労働協約を含む……あらゆる約束を守り、引き続き信頼関係の構築に努める」と、日本製鉄はコメントしている。管理可能なリスクと見ているのだろう』、「USW」は「日本製鉄」による買収に反対、バイデン大統領やトランプ氏も反対しているので、かなりハードルは高そうだ。
・『リスクもあるが実入りもある世界へ  むしろ最大の課題は日本製鉄自身の経営力のはずだ。 日本製鉄がこれまでに海外で行った大型投資のほとんどはパートナーと組んだものだった。ただ最近のインド合弁は40%出資ながら経営上は対等。さらにタイの買収は単独で行うなど、少しずつ取るリスクを増やしてきた。 「昔は、海外事業はまずリスクをどう減らすかだった。持ち分を減らして利益が少なくなってリスクを減らす。そうではなく、これからはリスクもあるが実入りもある世界に入っていく」。1カ月ほど前の取材で森副社長はこんなことを言っていた。 しかし、USスチールは規模も歴史も異なる。「国の経済、産業を支えてきた。メンタリティも含めて近く、最適なパートナーと感じている」(森副社長)というが、アメリカを背負った伝統とプライドをコントロールできるかはやってみないとわからない。 社名どおり、本質的にはドメスティックで来た日本製鉄がグローバル企業として飛躍できるか。この買収がその分岐点になることは間違いない』、組合や政治家からの反対を如何に乗り切っていくか注目される。

次に、本年1月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が、日本企業の成長志向の鍵を握るワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336599
・『2024年は日本企業による大型買収がトレンドになるのだろうか? 23年末、日本製鉄が米USスチールを2兆円規模で買収するというビッグニュースが舞い込んだ。台頭する中国勢への対抗策として、米国企業と手をつなぐ意義は非常に大きい。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ』、「台頭する中国勢への対抗策として、米国企業と手をつなぐ意義は非常に大きい」、その通りだ。
・『買収の成果が日本の成長志向に影響する  2023年12月18日、粗鋼生産量で世界第4位の日本製鉄は、米国の鉄鋼メーカー、ユナイテッド・ステイツ・スチール・コーポレーション(USスチール、世界第27位)の買収を発表した。買収総額は約2兆円、同社にとって最大級の買収案件だ。 日本製鉄の狙いは、粗鋼生産世界トップの中国宝武鋼鉄集団など圧倒的に世界シェアを握る中国鉄鋼メーカーに対抗し、有力鉄鋼メーカーとして生き残ることだろう。買収が実現すれば、日本製鉄の粗鋼生産能力は世界第3位に浮上する。今回の買収は、日本製鉄が鉄鋼メーカーの日米連合を形成し、高付加価値の鋼材分野で世界トップの地位を目指すためにも重要だ。 米当局の承認を得た上で、日本製鉄は24年第2または第3四半期までの買収成立を目指している。成立すれば、新しい鋼材生産のための研究開発などを強化することになるだろう。併せて、国内の高炉休止など事業運営体制の改革を加速することも想定される。 USスチール買収によって日本製鉄は、生き残りを懸け新しい製造技術の確立にチャレンジする決意を内外の利害関係者に明示したともいえる。その成果がどうなるかは、同社の中長期的な事業運営のみならず、わが国産業全体の成長志向にも影響を与えそうだ』、「日本製鉄の狙いは、粗鋼生産世界トップの中国宝武鋼鉄集団など圧倒的に世界シェアを握る中国鉄鋼メーカーに対抗し、有力鉄鋼メーカーとして生き残ることだろう。買収が実現すれば、日本製鉄の粗鋼生産能力は世界第3位に浮上する。今回の買収は、日本製鉄が鉄鋼メーカーの日米連合を形成し、高付加価値の鋼材分野で世界トップの地位を目指すためにも重要だ」、なるほど。
・『日本製鉄がUSスチールを買収する狙い  近年、日本製鉄を取り巻く事業環境は厳しくなっていた。最たる脅威は、中国鉄鋼メーカーの急速なシェア拡大である。USスチールを買収する狙いとしてまず、世界の鉄鋼市場で圧倒的なシェアを持つ中国勢に対抗することが挙げられる。 世界鉄鋼業界のデータによると22年、世界トップ10の鉄鋼メーカーのうち6社が中国勢だった。同年の中国の粗鋼生産量は10億1300万トン。第2位はインドの1億2470万トン、3位が日本製鉄などわが国で8920万トンだ。中国は世界全体の粗鋼生産量(18億3150万トン)の55%を占める。世界最大の鉄鋼メーカーである中国宝武鋼鉄の生産能力は1億3184万トンもある。 基本的に鉄鋼の需要は、GDP(国内総生産)で見た経済成長率に連動する。中国は2000年代以降、工業化の加速を背景に鉄鋼需要が急増。オーストラリアなどから鉄鉱石を大量に輸入し、国内の粗鋼生産能力を拡張してきた。その多くは、中国本土の道路や鉄道などのインフラ整備、マンション建設などの不動産投資に用いられた。 中国政府は、政府系の鉄鋼メーカーの経営統合を進め、世界での地位を盤石なものにした。具体的には、土地の供与や産業補助金政策を強化し、鉄鋼メーカーの価格競争力向上を支えてきた。リーマンショック後に4兆元(当時の為替レートで約57兆円)の経済対策、不動産バブルもあり、中国の粗鋼生産能力は膨張し、過剰になった。 対照的に、1990年初頭、わが国の資産バブルは崩壊した。景気は長期停滞に陥り、鉄鋼需要は減少した。電機産業のようにグローバル化やIT革命などへの対応が遅れ、世界的な競争力を失った業種も多い。 そうした中で、ハイブリッド自動車の誕生のインパクトは大きかった。モーターなどの製造に不可欠な無方向性電磁鋼板の需要が増加したことは、日本製鉄の収益下振れを食い止めた。しかし、中国勢のシェア拡大や国内経済低迷による需要減少の影響は甚大だった。事業環境の悪化に対応するため、日本製鉄は国内の高炉休止を発表し、コスト削減を余儀なくされた』、「1990年初頭、わが国の資産バブルは崩壊した。景気は長期停滞に陥り、鉄鋼需要は減少した・・・ハイブリッド自動車の誕生のインパクトは大きかった。モーターなどの製造に不可欠な無方向性電磁鋼板の需要が増加したことは、日本製鉄の収益下振れを食い止めた」、なるほど。
・『激化する中国鉄鋼メーカーとの競争  最近、中国勢は低価格攻勢を一段と強めてきた。中国の不動産バブル崩壊の影響は大きい。地方政府の財政悪化によって、インフラ投資も停滞気味だ。行き場を失った中国の鉄鋼製品は海外に流出していて、米国や欧州委員会は、中国が鉄鋼の不当廉売(ダンピング)を仕掛けていると警戒を強めていた。 そして、中国勢は製造技術も向上した。特に、EV(電気自動車)のボディーやパーツの製造に必要な熱延鋼板の輸出は増加している。日本製鉄が強みを発揮してきた高付加価値型の鉄鋼製品分野でも、中国勢が追い上げているのだ。中国政府は今後も政府系鉄鋼メーカーへの支援を強化するだろう。 日本製鉄がそうした事業環境の加速度的な変化に対応するためにも、米国企業と手を組む意義は大きい。米バイデン政権は、経済安全保障体制の強化のために産業政策を修正し、EVやそのパーツに中国産の鉱物や部材を使わないよう企業に強く要請している。 また、主要先進国の中でも米国の潜在成長率は相対的に高く、米FRB(連邦準備制度理事会)の推計ではおよそ1.8%。鉄鋼需要も高水準で推移する可能性は高い。日本製鉄にとって、より多くの高付加価値型の鋼材需要を獲得するためにも米国事業を強化することは理にかなっている。 ただし、その際、米国に自力で製鉄所を建設し、生産能力を強化することが最適とは限らない。それよりも、一定の知名度や技術力を持つ海外企業を買収した方が、収益獲得の可能性は高まる。 USスチールは、「鉄鋼王」で知られたアンドリュー・カーネギーが設立に携わり、米国の鉄鋼産業を象徴する企業である。電炉を用いた製鉄体制に強く、鉄鉱石の鉱山も保有する。高炉メーカーとして成長した日本製鉄が、水素を用いて二酸化炭素の排出力の少ない製鉄技法を確立するためにも、USスチールを取り込む意義は大きい』、「USスチールは、「鉄鋼王」で知られたアンドリュー・カーネギーが設立に携わり、米国の鉄鋼産業を象徴する企業である。電炉を用いた製鉄体制に強く、鉄鉱石の鉱山も保有する。高炉メーカーとして成長した日本製鉄が、水素を用いて二酸化炭素の排出力の少ない製鉄技法を確立するためにも、USスチールを取り込む意義は大きい」、なるほど。
・『高付加価値な鋼材の創出力を強化できるか  今後、日本製鉄は持続的に研究開発を強化し、新しい製品を生み出す力を高めなければならない。EVの航続距離を延ばすための高耐久・軽量の薄型鋼板の需要が増えている。電炉を用いて鉄スクラップから高品位な鉄鋼製品を生み出す技術も、世界中が欲している。 そうした需要をどれだけ獲得できるかが、日本製鉄の長期存続を決定づける。USスチール買収を成功に導ければ、さらに他の海外鉄鋼メーカーなどを買収する可能性もある。 それは、粗鋼の生産量もさることながら、付加価値の点で中国勢との差別化を強化することにもつながる。経営陣はそうした展開を念頭に、今回の買収を決断したはずだ。日本製鉄の事業戦略は、国内でのリストラから、海外市場での成長強化へ、転換点を迎えた。 問題は、実行力に尽きる。率直に見て、不確実性は高い。USスチールの買収を発表した後、日本製鉄の株価は下落した。12月下旬、米国の株価は最高値を更新し、今は世界的に株高の傾向である。こうした状況下、買収リスクは大きいと言わざるを得ない。 日本製鉄が2兆円規模の買収負担に耐え、高付加価値の鉄鋼製品の製造技術を磨くことができるかどうか――主要投資家は慎重に考えざるを得ない。米国では、労働組合や一部の議員が買収に反対している。折しも最近は、全米自動車労働組合がストライキを起こしたように、企業経営に対する労働者の影響力が強くなっていることも懸念材料だ。 仮に米国政府の承認を得られたとしても、組織を1つにまとめることが難しければ、日米の鉄鋼メーカーが中国勢に対抗することは難しくなる。そうなると、日本製鉄の業績への懸念も出てきて、買収が事業運営の足かせとなる恐れも増す。 ただ、そうしたリスクも全て覚悟した上で、日本製鉄は買収に踏み切ったはずだ。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ』、「USスチールの買収を発表した後、日本製鉄の株価は下落した。12月下旬、米国の株価は最高値を更新し、今は世界的に株高の傾向である。こうした状況下、買収リスクは大きいと言わざるを得ない。 日本製鉄が2兆円規模の買収負担に耐え、高付加価値の鉄鋼製品の製造技術を磨くことができるかどうか――主要投資家は慎重に考えざるを得ない・・・企業経営に対する労働者の影響力が強くなっていることも懸念材料だ。 仮に米国政府の承認を得られたとしても、組織を1つにまとめることが難しければ、日米の鉄鋼メーカーが中国勢に対抗することは難しくなる。そうなると、日本製鉄の業績への懸念も出てきて、買収が事業運営の足かせとなる恐れも増す。 ただ、そうしたリスクも全て覚悟した上で、日本製鉄は買収に踏み切ったはずだ。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ」、バイデン政権、トランプの反対を如何にクリアするか、まだまだヤマ場は見えない。

第三に、本年2月15日付けダイヤモンド・オンライン「積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも、「大博打」に潜むリスク」を紹介しよう。
・『積水ハウスは7000億円もの巨額を投じて、米国のハウスビルダーを買収する大ばくちに打って出た。巨額買収で、ライバルの住友林業、大和ハウス工業を抜いて全米5位に一挙に躍り出た。特集『住宅メーカー最終決戦!戸建てバブル崩壊秒読み』(全6回)の#5では、大ばくちにリスクの芽は潜んでいないのか、徹底検証した』、興味深そうだ。
・『積水ハウス仲井社長「全米5位」を強調 規模拡大を追った巨額買収の成否  「全米5位」「1万5000戸」。積水ハウスが1月18日に開いた、米国のハウスビルダー、M.D.C.ホールディングス(以下、MDC)の買収発表の記者会見。積水ハウスの仲井嘉浩代表取締役社長は、その二つの言葉を繰り返し、買収のメリットを強調した。 国内の一戸建て市場は、人口減少に伴い縮小が避けられない状況だ。それを見据え日本のハウスメーカーは、今後も人口増加が見込まれ一戸建ての需要が堅調な米国市場に相次ぎ進出している。 先行するのは2003年に進出した住友林業だ。大和ハウス工業は1976年に進出したが、84年に撤退。その後17年に再進出を果たしている。そして、積水ハウスも17年に米市場に参入した。米市場において、積水ハウスは国内ハウスメーカー3強の中では3位だったが、MDC買収によって大逆転。一戸建て供給戸数のランキングで、全米5位にまで一気に躍り出たのだった。 (図表:ハウスメーカー3強の米国での一戸建供給数はリンク先参照) 「明らかに住友林業と大和ハウスを逆転することを意識して規模を追った買収だ。それにしても7000億円という金額には驚いた。思い切って勝負に出たんだろう」。大手ハウスメーカー関係者は、そう話す。 積水ハウスにとって過去最大の巨額買収に対し、株式市場は好感した。MDC買収を発表した翌日1月19日の積水ハウスの終値は、前日比2.8%増の3390円に上昇した。 しかし、積水ハウスの巨額買収に疑問符を付けたのが、米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングだ。 S&Pは1月22日、積水ハウスの長期格付けを「A」から格下げ方向で見直す「クレジットウオッチ」に指定したと発表。買収に伴って有利子負債が膨らみ、財務内容が大幅に悪化することをネガティブと判断したのだ。 これを受け、積水ハウスの株価は下落に転じた。2月9日時点の終値は3259円で、MDC買収を発表する前に比べて47円落ち込んだ。 MDC買収で、積水ハウスの有利子負債は、金融機関からの借入金とMDC既存の有利子負債を合わせて8400億円程度にまで膨らむ見込み。買収完了から1年以内に、一部を資本と見なせる「ハイブリッド債」を発行し、財務体質を改善する方針だが、一時的には大幅な財務基盤の悪化は避けられない。 財務基盤を損ねてまで大勝負に出た積水ハウス。果たして、巨額買収は成就するのか。実は、そこには、三つのリスクが潜んでいる。 次ページでは、大ばくちに打って出た積水ハウスがはらむ三つのリスクを解き明かす。海外企業のM&A(企業の合併・買収)に踏み切った数多くの日本企業を苦しめてきた「古くて新しい」難題が、積水ハウスを悩ませるかもしれない』、「S&Pは1月22日、積水ハウスの長期格付けを「A」から格下げ方向で見直す「クレジットウオッチ」に指定したと発表。買収に伴って有利子負債が膨らみ、財務内容が大幅に悪化することをネガティブと判断したのだ。 これを受け、積水ハウスの株価は下落に転じた。2月9日時点の終値は3259円で、MDC買収を発表する前に比べて47円落ち込んだ。 MDC買収で、積水ハウスの有利子負債は、金融機関からの借入金とMDC既存の有利子負債を合わせて8400億円程度にまで膨らむ見込み。買収完了から1年以内に、一部を資本と見なせる「ハイブリッド債」を発行し、財務体質を改善する方針だが、一時的には大幅な財務基盤の悪化は避けられない」、なるほど。
・『積水ハウスより収益性が高いMDCをマネジメントできるのか  リスクの一つ目は、収益性の悪化である。 MDCの純資産は23年12月期時点で、1ドル=145円換算で約4900億円(約33億7788万ドル)。積水ハウスは7000億円超でMDCを買収するため、買収額と純資産額の差である「のれん代」は少なくとも2000億円に上るとみられる。 積水ハウスは日本の会計基準を採用しているため、20年以内で規則的にのれん代を償却することになる見通し。のれん代の償却だけで毎年100億円程度に上るとみられ、収益性の悪化は避けられない。 そして、落とし穴になりかねないのが、収益性を改善するために、さまざまな投資や経費支出を抑制することだ。これは、本業へのブレーキにもなりかねず、現場のモチベーション悪化など負の連鎖を招く恐れがある。 二つ目のリスクは、米国の政策金利の動向だ。 日本の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)は22年3月から、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発したインフレを退治するために急ピッチで利上げを続けてきた。これに伴い、米国の住宅ローン金利も上昇。22年度は需要が冷え込み、米国に進出していた日本のハウスメーカーは、ダメージを被った。 FRBは23年9月から政策金利を据え置き、政策金利も住宅ローン金利も高止まりしている。一時は冷え込んだ一戸建て住宅の需要は回復し、23年12月の米住宅着工許可件数(一戸建て)は前月比1.7%増で、11カ月連続のプラスとなっている。 米国ではインフレが収束しつつあり、FRBが24年後半にも利下げに踏み切るという市場観測が出ている。これは、住宅ローン金利の引き下げにつながり、住宅市場には追い風である。ただし、楽観視はできない。 FRBによる金融引き締めにかかわらず、米国経済は好調を維持している。利下げによって景気が過熱し、インフレが再燃する可能性もある。インフレの再燃は米国経済にブレーキをかける恐れがあり、FRBはまだ利下げについては慎重に検討している。金利が低下したとしても、在庫の増加で、需要が新築住宅から中古住宅に移る可能性もある。 そして、三つ目の最大のリスクは、PMI(買収後の統合)だ。海外企業のM&Aを手掛けてきた日本企業が幾度も苦しんだ「古くて新しい」難題だ。東芝、丸紅、キリンホールディングス、NTTドコモ……。海外企業のM&Aを手掛けた日本企業が返り討ちに遭い、巨額減損に追い込まれた事例は、枚挙にいとまがない。 積水ハウスはMDC買収によって、米国戸建て事業の展開エリアが8州から16州にまで拡大する。ある市場関係者は「1+1=2では、買収の意味が全くない。これほどの巨額買収を経験したことがない積水ハウスが、MDCとのシナジーを早期に実現できるかどうかが最大の焦点」とみる。 (図表:ハウスメーカー3強の米国進出マップはリンク先参照) 仲井社長はMDC買収の記者会見で、これまで買収を手掛けた米国ハウスビルダー3社のPMIの実績を強調し、MDCとのPMIにも自信をのぞかせる。ただし、積水ハウスがこれまで米国で経験を積んだPMIとは規模が異なり、早期にシナジーを発揮できるかどうかは不透明だ。 企業規模でいえば、積水ハウスがMDCよりも格上ではあるものの、企業の収益性指標であるROE(自己資本利益率)、資産価値が割高か割安かを判断する目安のPBR(株価純資産倍率)では、MDCが積水ハウスをいずれも上回るのだ。 (図表:積水ハウスとM.D.C.ホールディングスの比較 はリンク先参照) 仲井社長は米国でのM&A戦略について、「積水ハウステクノロジーの移植」を掲げている。「上から目線」ではなく、丁寧にPMIを進めなければ、巨額の減損リスクを抱えることになる。 国内は安定成長、海外は積極的成長――。二兎を追って大勝負に出た積水ハウスの未知の挑戦が、いよいよ始まろうとしている。 Key Visual:SHIKI DESIGN OFFICE, Kanako Onda, Graphic:Daddy’s Home 【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正します。 2ページ目最初の図版:住友林業 15州→住友林業 16州 (2024年2月16日19:08 ダイヤモンド編集部)』、「これほどの巨額買収を経験したことがない積水ハウスが、MDCとのシナジーを早期に実現できるかどうかが最大の焦点・・・これまで買収を手掛けた米国ハウスビルダー3社のPMIの実績を強調し、MDCとのPMIにも自信をのぞかせる。ただし、積水ハウスがこれまで米国で経験を積んだPMIとは規模が異なり、早期にシナジーを発揮できるかどうかは不透明だ・・・国内は安定成長、海外は積極的成長――。二兎を追って大勝負に出た積水ハウスの未知の挑戦が、いよいよ始まろうとしている」、やや乱暴なディールと言う感じが拭えない。 
タグ:日本企業の海外M&Aブーム 東洋経済オンライン「日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む」 「懸念材料」としては、「高値づかみの懸念」、「買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇」、なるほど。 「日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を将来ビジョンとして掲げ、海外での成長投資を強化してきた・・・USスチールの買収が完了すれば8600万トンになる。さらにインドでの増強、追加の計画まで勘案すれば1億トンを完全に射程圏にとらえている・・・鉄鋼業は「数量×付加価値」のビジネス。規模の経済が働くことも事実だ」、なるほど。 「USW」は「日本製鉄」による買収に反対、バイデン大統領やトランプ氏も反対しているので、かなりハードルは高そうだ。 組合や政治家からの反対を如何に乗り切っていくか注目される。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が、日本企業の成長志向の鍵を握るワケ」 「台頭する中国勢への対抗策として、米国企業と手をつなぐ意義は非常に大きい」、その通りだ。 「日本製鉄の狙いは、粗鋼生産世界トップの中国宝武鋼鉄集団など圧倒的に世界シェアを握る中国鉄鋼メーカーに対抗し、有力鉄鋼メーカーとして生き残ることだろう。買収が実現すれば、日本製鉄の粗鋼生産能力は世界第3位に浮上する。今回の買収は、日本製鉄が鉄鋼メーカーの日米連合を形成し、高付加価値の鋼材分野で世界トップの地位を目指すためにも重要だ」、なるほど。 「1990年初頭、わが国の資産バブルは崩壊した。景気は長期停滞に陥り、鉄鋼需要は減少した・・・ハイブリッド自動車の誕生のインパクトは大きかった。モーターなどの製造に不可欠な無方向性電磁鋼板の需要が増加したことは、日本製鉄の収益下振れを食い止めた」、なるほど。 「USスチールは、「鉄鋼王」で知られたアンドリュー・カーネギーが設立に携わり、米国の鉄鋼産業を象徴する企業である。電炉を用いた製鉄体制に強く、鉄鉱石の鉱山も保有する。高炉メーカーとして成長した日本製鉄が、水素を用いて二酸化炭素の排出力の少ない製鉄技法を確立するためにも、USスチールを取り込む意義は大きい」、なるほど。 「USスチールの買収を発表した後、日本製鉄の株価は下落した。12月下旬、米国の株価は最高値を更新し、今は世界的に株高の傾向である。こうした状況下、買収リスクは大きいと言わざるを得ない。 日本製鉄が2兆円規模の買収負担に耐え、高付加価値の鉄鋼製品の製造技術を磨くことができるかどうか――主要投資家は慎重に考えざるを得ない・・・企業経営に対する労働者の影響力が強くなっていることも懸念材料だ。 仮に米国政府の承認を得られたとしても、組織を1つにまとめることが難しければ、日米の鉄鋼メーカーが中国勢に対抗することは難しくなる。そうなると、日本製鉄の業績への懸念も出てきて、買収が事業運営の足かせとなる恐れも増す。 ただ、そうしたリスクも全て覚悟した上で、日本製鉄は買収に踏み切ったはずだ。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ」、バイデン政権、トランプの反対を如何にクリアするか、まだまだヤマ場は 見えない。 ダイヤモンド・オンライン「積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも、「大博打」に潜むリスク」 「S&Pは1月22日、積水ハウスの長期格付けを「A」から格下げ方向で見直す「クレジットウオッチ」に指定したと発表。買収に伴って有利子負債が膨らみ、財務内容が大幅に悪化することをネガティブと判断したのだ。 これを受け、積水ハウスの株価は下落に転じた。2月9日時点の終値は3259円で、MDC買収を発表する前に比べて47円落ち込んだ。 MDC買収で、積水ハウスの有利子負債は、金融機関からの借入金とMDC既存の有利子負債を合わせて8400億円程度にまで膨らむ見込み。 買収完了から1年以内に、一部を資本と見なせる「ハイブリッド債」を発行し、財務体質を改善する方針だが、一時的には大幅な財務基盤の悪化は避けられない」、なるほど。 「これほどの巨額買収を経験したことがない積水ハウスが、MDCとのシナジーを早期に実現できるかどうかが最大の焦点・・・これまで買収を手掛けた米国ハウスビルダー3社のPMIの実績を強調し、MDCとのPMIにも自信をのぞかせる。ただし、積水ハウスがこれまで米国で経験を積んだPMIとは規模が異なり、早期にシナジーを発揮できるかどうかは不透明だ・・・国内は安定成長、海外は積極的成長――。二兎を追って大勝負に出た積水ハウスの未知の挑戦が、いよいよ始まろうとしている」、やや乱暴なディールと言う感じが拭えない。
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健康(その26)(冬場の「浴室での突然死」を防ぐ超シンプルな方法 大切な家族を守るための「血流改善」習慣とは、「健康診断の数値」を気にする50代が失うもの 一昔前の医学の常識を信じているかもしれない、「夜中にトイレで目が覚める」は早死のサイン…泌尿器の専門医が指摘する"おしっこ"と"寿命"の知られざる関係 夜3回以上トイレに起きる人は死亡率が2倍になる) [生活]

健康については、昨年6月14日に取上げた。今日は、(その26)(冬場の「浴室での突然死」を防ぐ超シンプルな方法 大切な家族を守るための「血流改善」習慣とは、「健康診断の数値」を気にする50代が失うもの 一昔前の医学の常識を信じているかもしれない、「夜中にトイレで目が覚める」は早死のサイン…泌尿器の専門医が指摘する"おしっこ"と"寿命"の知られざる関係 夜3回以上トイレに起きる人は死亡率が2倍になる)である。

先ずは、本年1月14日付け東洋経済オンラインが掲載した 富永ペインクリニック院長・医学博士・日本麻酔科学会認定麻酔科指導医の富永 喜代氏による「冬場の「浴室での突然死」を防ぐ超シンプルな方法 大切な家族を守るための「血流改善」習慣とは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/724389
・『寒い冬は、とくに血流に気をつけることが大切です。のべ2万人の臨床麻酔実績で、全身の血流について詳しい富永喜代医師の著書『血流がすべて血流コントロールの名医が教える わずか1分でできる「すごい血流改善法」』より一部引用・再編集し、全身を元気にし、突然死も防ぐことができる入浴方法をご紹介します』、興味深そうだ。
・『交通事故よりもこわい「冬の浴室」  寒い日は、早く家に帰って温まりたい。そう思いますが、家の中に思わぬ危険があります。それは、浴室。 厚生労働省の統計によると、浴室で亡くなる高齢者の数は、交通事故で亡くなる人の約2倍。特に65歳以上の高齢者の死亡事故が多く、毎年11月から4月にかけて多く発生しているそうです。 ピンピンコロリがいいとはよく言われますが、まだやりたいことがあったのに、伝えたいことがあったのに、本意ではないタイミングで大切な人に会えなくなってしまったら、それはとても切ないことですよね。 防げるものなら、防ぎたい。そう願うあなたに。そして、突然いなくなってほしくない大切な人がいるあなたのために、知っておいてほしいお風呂での血流対策をお伝えします。) まずお話ししたいのは、「お湯の量」についてです。 体をどこまでお湯につけるか。これがとても重要なんです。 子どものころ、両親からこんなふうに言われたことはないでしょうか? 「肩までしっかりつかりなさい!」 「100数えてから上がりなさい!」 もしかすると、今はあなたがお子さんにそう言い聞かせているかもしれません』、「浴室で亡くなる高齢者の数は、交通事故で亡くなる人の約2倍。特に65歳以上の高齢者の死亡事故が多く、毎年11月から4月にかけて多く発生しているそうです」、それは大変だ。
・『心臓に無理をさせないために「お湯の量」が大切  じつはこの入浴方法、血流改善の観点から考えると、とっても危険。 悪い入浴方法の代表例なんですよ。 理由はかんたん。肩までつかると、血管が、水圧によってギューッと押さえつけられてしまうからなんです。 心臓よりも高い位置まで湯につかってしまうと、静脈の圧よりも水圧が高くなります。それによって、手足や内臓の静脈がギュッと圧迫され、血液が心臓に向かって一気に移動。すると、心臓は増えた分の血液をくみ出すために、無理して働くようになります。 肩までつかっている本人は、「いい湯だな」と思っていても、体は心臓に負担がかかるという「緊急事態」への対応に大わらわとなっているわけです。) 仮にこの状態のまま長風呂をしてしまうと、血流が落ちていき、心臓や肺に大きな負担がかかります。 そして、さらに大きな問題が、「お湯から上がるとき」に起こります』、「肩までつかると、血管が、水圧によってギューッと押さえつけられてしまうからなんです。 心臓よりも高い位置まで湯につかってしまうと、静脈の圧よりも水圧が高くなります。それによって、手足や内臓の静脈がギュッと圧迫され、血液が心臓に向かって一気に移動。すると、心臓は増えた分の血液をくみ出すために、無理して働くようになります。 肩までつかっている本人は、「いい湯だな」と思っていても、体は心臓に負担がかかるという「緊急事態」への対応に大わらわとなっているわけです』、「肩までつかる」べきでないとは、寂しい感じだ。
・『浴室での「立ちくらみ」が命をうばう  水圧でぐっと収縮し、心臓へ血液を戻していた手や足の静脈は水圧から解放され、一気に弛緩します。しかも立ち上がりますから、重力によって下半身に向かって血液が勢いよく流れ出していく。 すると、一時的に脳へ送られる血液量が減り、目の前が暗くなります。起立性低血圧症といって、いわゆる立ちくらみが起き、フラフラと倒れてしまうわけです。 これは、大変危険です。 もし、昔ながらの深い湯船だった場合、倒れた拍子に頭を打ち、意識を失い、溺れてしまうといった最悪のケースにおちいる可能性もあります。 最初にお伝えしたように、自宅で亡くなる人が命を落としている場所は、圧倒的に「浴室」です。特に高齢の方は、加齢によって血管のやわらかさが失われているため、リスクが高まるのです。 また、医師から心臓が弱いと指摘を受けている方、高血圧の方は肩までしっかりつかってはいけません。立ちくらみ、脳虚血、失神の原因になります。 おすすめは、みぞおちまでつかる半身浴。これを守るためにも「湯量は腰まで」をルールにしましょう。) あなたは毎日、何℃のお風呂に入っていますか? 血流を整える入浴法で湯量と並んで大切なのが、「お湯の温度」です。 入浴に関する全国調査によると、日本人のお風呂の平均湯温は「41℃」だそうです。 この数字を目にして、「ぬるめだな」と思った人は要注意。きっと、あなたが入っているお風呂は熱すぎます』、「水圧でぐっと収縮し、心臓へ血液を戻していた手や足の静脈は水圧から解放され、一気に弛緩します。しかも立ち上がりますから、重力によって下半身に向かって血液が勢いよく流れ出していく。 すると、一時的に脳へ送られる血液量が減り、目の前が暗くなります。起立性低血圧症といって、いわゆる立ちくらみが起き、フラフラと倒れてしまうわけです。 これは、大変危険です・・・おすすめは、みぞおちまでつかる半身浴。これを守るためにも「湯量は腰まで」をルールにしましょう・・・日本人のお風呂の平均湯温は「41℃」だそうです。 この数字を目にして、「ぬるめだな」と思った人は要注意。きっと、あなたが入っているお風呂は熱すぎます」、「半身浴」、「ぬるめ」では、私はとても「風呂」に入った気がしない。
・『高齢者ほど「熱すぎてキケン」なお湯につかってしまう  とりわけ、高齢者になればなるほど、熱いお風呂を好む傾向があります。これは皮膚の「温熱感受性」の劣化によるもの。 皮膚の表面に温点、冷点と呼ばれる熱い、冷たいを感じとるセンサーがあります。じつはこの温点、冷点の数は、年齢を重ねるごとに減っていきます。 最新の研究によると、温点・冷点は、20代と70代を比べると約半分になってしまうというデータもあります。なかでも湯船に入るとき、最初にお湯に触れる足先の温点・冷点は、20代に比べ、70代では3分の1ほどに。 その結果、熱い、冷たい、の識別が鈍くなり、子どもなら「絶対ムリ!」と飛び出すような湯温でも、おじいちゃんおばあちゃんは「ほぉう」と吐息をもらしながら肩までつかることができるわけです。 しかも、とくに冬場はついつい長風呂になってしまいがち。そのとき湯温が高いと、疲労、脱水、血管虚脱(血管がひろがりすぎて、血流が落ち、脳へ必要な酸素や栄養素が届かなくなる)といった症状を引き起こす可能性があり、かなり危険な状態です。 湯温は自分の肌感覚だけではなく、「数値」で見て把握しておくべきです。 また、高温のお湯につかることは、入浴のメリットであるリラックス効果を妨げてしまいます。お風呂でリラックスするかどうかは「交感神経」と「副交感神経」の働きと深く関連し、湯温がその切り替えスイッチのような働きを果たしています。 副交感神経の働きが高まれば、精神的に落ち着き、末梢血管も拡張し、血圧は下がっていき、血流が向上。心臓の負担も軽くなります。 一方、交感神経の働きが過度に高まると末梢血管が収縮。末梢の血流が落ちるため、心臓はより多くの血液を循環させようと負担を強いられながら、働くようになります。当然、血圧は上昇してしまいます。 お湯がぬるめか、熱めかによって、入浴時に交感神経と副交感神経のどちらの働きが高まるかが決まるわけですね。) 私のおすすめは、断然ぬるめです。 ぬるめの湯温とは、冬なら40℃、夏なら38℃。一方、41℃以上が熱めの湯温です。 体が疲れているときは、ぬるめのお湯に10分ほどゆっくりつかりましょう。 これで副交感神経が働き、末梢血管が拡張。入浴から5分経過すると、白血球、リンパ球、がん細胞を倒すNK細胞など免疫力を支える免疫細胞が増えることがわかっています。 もちろん、血流も整い、体のすみずみまで栄養と酸素が行き届き、疲労物質も回収・排出されるので、疲れが軽くなります』、「湯船に入るとき、最初にお湯に触れる足先の温点・冷点は、20代に比べ、70代では3分の1ほどに。 その結果、熱い、冷たい、の識別が鈍くなり、子どもなら「絶対ムリ!」と飛び出すような湯温でも、おじいちゃんおばあちゃんは「ほぉう」と吐息をもらしながら肩までつかることができるわけです・・・とくに冬場はついつい長風呂になってしまいがち。そのとき湯温が高いと、疲労、脱水、血管虚脱(血管がひろがりすぎて、血流が落ち、脳へ必要な酸素や栄養素が届かなくなる)といった症状を引き起こす可能性があり、かなり危険な状態です・・・高温のお湯につかることは、入浴のメリットであるリラックス効果を妨げてしまいます。お風呂でリラックスするかどうかは「交感神経」と「副交感神経」の働きと深く関連し、湯温がその切り替えスイッチのような働きを果たしています。 副交感神経の働きが高まれば、精神的に落ち着き、末梢血管も拡張し、血圧は下がっていき、血流が向上。心臓の負担も軽くなります。 一方、交感神経の働きが過度に高まると末梢血管が収縮。末梢の血流が落ちるため、心臓はより多くの血液を循環させようと負担を強いられながら、働くようになります。当然、血圧は上昇してしまいます・・・私のおすすめは、断然ぬるめです。 ぬるめの湯温とは、冬なら40℃、夏なら38℃。一方、41℃以上が熱めの湯温です。 体が疲れているときは、ぬるめのお湯に10分ほどゆっくりつかりましょう。 これで副交感神経が働き、末梢血管が拡張。入浴から5分経過すると、白血球、リンパ球、がん細胞を倒すNK細胞など免疫力を支える免疫細胞が増えることがわかっています。 もちろん、血流も整い、体のすみずみまで栄養と酸素が行き届き、疲労物質も回収・排出されるので、疲れが軽くなります」、「ぬるめのお湯に10分ほどゆっくりつか」れば、「入浴から5分経過すると、白血球、リンパ球、がん細胞を倒すNK細胞など免疫力を支える免疫細胞が増えることがわかっています」、素晴らしい効能だ。
・『第二の心臓を動かす「足先クイクイ体操」  みぞおちまでの湯量、ぬるめの湯温と入浴時のポイントをお伝えしてきましたが、最後に、お風呂でできる「血流アップ体操」をご紹介します。 その名も、「足先クイクイ体操」。 湯船につかり、足を伸ばして(伸ばせない浴槽なら、入浴後に行ってもOK)、つま先を上、前、上、前と、クイ、ストン、クイ、ストンと前後に10回ずつ動かします。 そうすると、すぐに「第二の心臓」と言われるふくらはぎの筋肉がググッと動いているのを感じるはず。温まり、血流のアップしている体に対して、さらなる刺激を加え、すっきりと疲労物質を洗い流す効果が期待できます。 ちなみに、この「足先クイクイ体操」には中高年の女性に多い「深部静脈血栓症」を予防する効果があります。深部静脈血栓症は、別名「エコノミークラス症候群」と呼ばれ、亡くなる方も少なくない怖い病気です。 飛行機や自動車などの狭い座席に長時間座り、立ち上がって歩き出したときに呼吸困難に襲われ、倒れてしまう。飛行機の乗客だけでなく、タクシードライバーなど、座りっぱなしの状態が続いた方が多くこの症状に見舞われています。 同じ症状は、手術後に入院する場合があるICU(集中治療室)でも発生しやすく、医療関係者は大いに注意を払っています。特に、しばらく寝たきりで過ごす患者さんの足には、電動でふくらはぎをもみあげていくフットポンプと呼ばれる機器を取りつけることも。 血液がスムーズに流れることは、体にとってそれだけ大切なことなんです』、「足先クイクイ体操」は簡単そうなので、是非、習慣づけたい。

次に、1月14日付け東洋経済オンラインが掲載した 精神科医の和田 秀樹氏による「「健康診断の数値」を気にする50代が失うもの 一昔前の医学の常識を信じているかもしれない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/727220
・『仕事・お金・健康・生きがなど50歳を過ぎると、今後の不安がどうしても頭をよぎります。特に50代ともなれば、急に気になり始めるのが「健康」で、会社などで受ける検診結果にドギマギしているという人もいるのではないでしょうか。 が、高齢者の健康についての著書も多い、精神科医の和田秀樹さんは「検診の数値は気にしなくていい」と断言します。その理由を、和田さんの新著『50歳からの脳老化を防ぐ 脱マンネリ思考』より、一部引用・再編集してご紹介します』、私も40代までは指摘事項が殆どなかったが、「50代」になると急に増え、戸惑った記憶がある。
・『50代の老いの自覚は曖昧なもの  50代の方なら覚えがあると思いますが、「このごろ疲れやすくなった」「熟睡できない」「根気が続かない」「どうもやる気が出ない」といったさまざまなの身体や心の不調、これといった病気もなく、体力だってまだまだ十分なのに、ちょっとしたことで「老い」を自覚することが多くなります。 といっても50代の老いの自覚は曖昧なものです。 以前の自分(20代や30代の自分)と比べてみたり、同世代の友人や仲間の中でも若々しくて元気な人間と比べてみたりして、「やはり齢のせいかな」と思いこもうとします。 齢のせいにすれば「仕方ない」とか「まあぼちぼちやっていこう」と自分を落ち着かせることができます。「何かの病気が隠れているんじゃないか」と思うより安心できるからです。) 逆に言えば、「まさかと思うけど、やっかいな病気にはなりたくない」という気持ちがつねにあります。あとわずかですから、定年までは何とか勤め上げたいと思うからです。ここで重い病気にでもなったら、人生設計を大きく狂わせてしまいます』、私も現役時代を無事に過ごせたのは幸運だった。
・『数値を気にした途端待ち受ける地獄  そこでつい気にしてしまうのが健診の数値です。 主に血圧、血糖値、コレステロール値などですが、50代というのはいろいろな数値に異常が出始める年齢ですから、健診が近づくとお酒を減らしたり甘いものや脂っこいものを控えたりする人が結構います。 もちろん気休めですが、それくらい数値を気にするのです。なぜなら一般的な健診で数値の異常が出ると、要精密検査となります。混雑している大きな病院まで出かけて検査を受けなければいけません。これだけでも憂鬱になります。 そしてたいていの場合は、検査データをもとに医者の診断があり、ほぼ間違いなく薬を処方されます。血圧や血糖値やコレステロール値を下げる薬です。 「あーあ、とうとうわたしも薬を飲む身体になってしまったなあ」とガッカリします。しかもさまざまな注意や指導を医者から受けます。 「塩分は控えなさい」「脂っこいものはダメ」「甘いものもダメ」「お酒はほどほどに」「運動を心がけましょう」……並べて言われるとだんだん気持ちが沈んできます。お酒が好きで肉料理も好き、飲んだ後のラーメンが楽しみという人にとっては、これでは張り合いのない毎日になってしまいます。 そして医者はとどめのひと言を告げます。 「1か月後にまた検査しましょう。正常値に戻っているといいですね」 おまけに血圧手帳を渡されますから、これからの1カ月間、血圧計をにらみながら好きな食べ物を我慢することになります。健診と聞いただけで憂鬱になるのも無理はありません』、私の場合、「コレステロール値」が高目だったが、「血圧」が正常だったこともあり、幸い薬の処方はなかった。
・『なぜ「健診の数値は気にしなくていい」のか  わたしは高齢者向けの本を何冊か書いてきましたが、そのすべてに「健診の数値は気にしなくていい」と書いてきました。ほんとうは「受けなくていい」と断言したいのですが、職場の健診というのはそうもいきません。50代には言いにくいのです。 でもここはあえて言っておきましょう。 たとえ健診を受けて数値の異常があれこれ見つかっても、気にしないことです。実際に体調の悪さやいつもと違う異常を感じているというのでしたら別ですが、気分もいいし食欲もやる気も十分というのでしたら、いまがベストなのですから何も気にすることはありません。 その理由を簡単に説明してみます。 血圧と並んで健診の数値で気になる(引っ掛かりやすい)のが血糖値です。例のヘモグロビンAIc(エーワンシー)で示される数値が6・0を超えると糖尿病の予備軍となります。この時点でウンザリするほどの食事制限を受けるのは言うまでもありません。 つまり一度でも健診の数値が引っ掛かってしまうと、長い期間、食事内容を制限され、薬を飲まされ、定期的に検査を受け続けることになります。数値が異常というだけでいきなり病気が見つかったり入院治療ということはありませんが、ふだんの生活が健診の数値でものすごく不自由になってくるのです。) では何のために医学は数値の異常に介入してくるのでしょうか。言うまでもなく、数値を正常に戻すためです。正常に戻せば、病気のリスクが減ると信じられているからです。 ところが、それを真っ向から否定するデータがあります。 アメリカの国立衛生研究所の下部組織がこんな研究を行なっています。糖尿病患者1万人を2つのグループに分けて1つは標準療法、もう1つのグループには強化療法を試みます。「強化療法群」はヘモグロビンAlcを正常値の6・0%以下に抑え、「標準療法群」は7%~7・9%に抑える緩めの療法です。 いまの日本の医学常識を当てはめれば、結果は明白です。「強化療法群」のほうが健康を維持できるはずです。ところが3年半後の死亡率は「強化療法群」のほうが「標準療法群」より高かったのです。 同じようなデータはほかにもありますが、今度はコレステロール値についてのデータを紹介してみます』、「アメリカの国立衛生研究所の下部組織がこんな研究を行なっています。糖尿病患者1万人を2つのグループに分けて1つは標準療法、もう1つのグループには強化療法を試みます。「強化療法群」はヘモグロビンAlcを正常値の6・0%以下に抑え、「標準療法群」は7%~7・9%に抑える緩めの療法です・・・3年半後の死亡率は「強化療法群」のほうが「標準療法群」より高かったのです」、このような矛盾が出てくるほどまだ医学の世界は発展途上のようだ。
・『医学常識はいまも変わり続けている  フィンランド保健局が1974年から1989年にかけてコレステロール値などが高い40~45歳の男性管理職1222人を対象に調査したデータです。 4カ月ごとの健康診断に基づいて数値が高い人には薬を処方し、塩分制限などの健康管理を行う「介入群」612人と、健康管理に介入しない「放置群」610人に分けて追跡調査をしたところ、がんによる死亡率、心血管系の病気の罹患率や死亡率、挙げ句は自殺者数に至るまですべて「介入群」のほうが「放置群」より高かったのです。) ここでちょっと補足しておきますが、コレステロールは細胞膜の主原料で人間が生きていくためには欠かせないものです。よく「悪玉」「善玉」と呼んで区分することがありますが、どちらも人間にとって重要な働きをしていることに変わりはありません。 けれども循環器の医者から見ればLDLコレステロール、つまり「悪玉」が増えすぎると血管壁に入りこんで動脈硬化の原因になるとされます』、「フィンランド保健局が1974年から1989年にかけてコレステロール値などが高い40~45歳の男性管理職1222人を対象に調査したデータ」も、これまでの日本の常識とは相いれないようだ。
・『コレステロールが高いほどうつになりにくい?  ところが免疫学者に言わせればコレステロールは免疫細胞の材料になるからコレステロール値が高い人のほうが免疫力が高いとなります。あるいはコレステロールは脳にセロトニンを運ぶ働きもあるとされますから、数値が高い人ほどうつになりにくいという報告もあります。 さらには老年医学の立場から見れば、コレステロール値の高い人のほうが男性ホルモンが多いため、齢を取っても活性が高いといった研究もあります。 「コレステロール値が多少高いほうが病気も少なく、長生きできる」と主張する医者だっているのです。つまり「こっちにとっては悪くても、あっちにとってはいいこと」というのはしばしば起こり得るのです。 しかしいくらこういうデータを並べても、循環器の医者が自分の狭い立場にこだわる限り、「そっちには良くてもこっちには悪いこと」となります。健診で数値に異常が見つかればそれを正常に戻すことだけ考えますから、相変わらず薬と食事制限を申し渡すでしょう。 ちなみに2015年には、コレステロールを「悪玉」視していた厚生労働省も摂取制限を撤廃しました。卵や肉などいくら食べても大丈夫ということになりました。10年も発てば医学常識が変わることなど、いくらでもあるのです』、「コレステロール値の高い人のほうが男性ホルモンが多いため、齢を取っても活性が高いといった研究もあります。 「コレステロール値が多少高いほうが病気も少なく、長生きできる」と主張する医者だっているのです。つまり「こっちにとっては悪くても、あっちにとってはいいこと」というのはしばしば起こり得るのです・・・2015年には、コレステロールを「悪玉」視していた厚生労働省も摂取制限を撤廃しました。卵や肉などいくら食べても大丈夫ということになりました。10年も発てば医学常識が変わることなど、いくらでもあるのです」、何事も柔軟に考える必要がありそうだ。

第三に、1月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した順天堂大学大学院 教授の堀江 重郎氏による「「夜中にトイレで目が覚める」は早死のサイン…泌尿器の専門医が指摘する"おしっこ"と"寿命"の知られざる関係 夜3回以上トイレに起きる人は死亡率が2倍になる」を紹介しよう。
・『就寝中に尿意で目が覚める夜間頻尿にはどんなリスクがあるのか。泌尿器科医の堀江重郎さんは「夜3回以上トイレに起きる人は死亡率が2倍になるという調査結果がある。夜間頻尿は、寿命を縮める病気にかかっているサインの恐れがあり、ただの老化と軽視しないほうがいい」という――。 ※本稿は、堀江重郎『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書)の一部を再編集したものです』、私は前立腺肥大なので、「夜間頻尿」は3,4回と酷い。
・『60代以上の8割超が夜中にトイレに起きている  みなさんは、自分が1日に何回、排尿しているか意識していますか? 若いうちはともかく、中高年に差しかかってきたら、気にしたほうがいいでしょう。 一般的に、「正常な排尿は1日に5~7回」です。1日に8回以上、排尿していたら「頻尿」、また就寝後から起床前の就寝中に1回以上、トイレに起きると「夜間頻尿」と見なされます。 いずれも、クオリティー・オブ・ライフにもかかわってくる不快な症状ですが、より深刻にとらえたほうがいいのは夜間頻尿です。 日本人の夜間頻尿の調査によると、40~50歳になると半数以上の人が夜中に1回はトイレに起きるようになります。さらに60代以上になると、約8割以上もの人が、夜間にトイレに起きています。夜間頻尿は、次のように、さまざまな要因が単発で、あるいは連鎖的にかかわっている症状です。 高齢者の集団を6年間にわたり調査したところ、「夜間に3回以上、トイレに起きる人は、2回以下の人の2倍も死亡率が高い」――スウェーデンで行われたある調査で、こんな衝撃的なデータが示されました。 これは、夜間頻尿そのものが寿命を縮めているということではありません。重要なのは、寿命を縮めるような病気になると、1つの症状として夜間頻尿が起こる場合が多いということです。つまり夜間頻尿は、寿命を縮める病気にかかっているサインかもしれないのです』、「「夜間に3回以上、トイレに起きる人は、2回以下の人の2倍も死亡率が高い」――スウェーデンで行われたある調査で、こんな衝撃的なデータが示されました。 これは、夜間頻尿そのものが寿命を縮めているということではありません。重要なのは、寿命を縮めるような病気になると、1つの症状として夜間頻尿が起こる場合が多いということです。つまり夜間頻尿は、寿命を縮める病気にかかっているサインかもしれないのです」、なるほど。
・『糖尿病が多尿を生んでいるケースも  夜間頻尿の原因①【おしっこが多すぎる】 そもそも尿の量が多くなると、起きている日中にたびたびトイレに行くだけでは出し切れず、夜中にトイレに行くことにつながります。多尿になる原因は単純に「水分のとりすぎ」ですが、それとは別に、糖尿病が多尿を生んでいるケースもあります。 糖尿病になると、血糖値(血液中の糖濃度)が高くなるため、血液の浸透圧が高くなります。すると、細胞の水分が血液に引っ張られ、血液の量が増えて、通常より尿量が多くなってしまうのです。 この結果、体内の水分が足りなくなり、のどの渇きを強く感じるようになります。そのため水分をたくさんとることになり(多飲)、トイレの回数が増えるという悪循環が生じるのです。夜中にのどが渇いて起きて水分をとるというのは、重症の糖尿病の可能性があります』、私の場合は該当しない。
・『夜間頻尿の原因②【からだのなかに水分が溜まる】 水分のとりすぎなどにより、水分がからだのなかに溜まってしまうことも夜間頻尿の原因になります。水分を摂取すると、水分は腎臓でろ過されて血液のなかに行きます。そして、その水分は血管から心臓まで戻り、心臓から送り出された血液は、動脈から末梢血管に行って、静脈をとおって、また心臓に戻ってきます』、私の場合は該当しない。
・『水分の摂りすぎの可能性  ところが、全部の量が戻ってこないで、からだの筋肉や脂肪の外の組織に水分が溜まってしまうことがあります。よく夕方になると足がむくむという人もこれが原因です。このような人たちは、就寝時、寝ているとからだが横になるため、からだのなかに溜まっていた水分がもう一度心臓に戻ってきます。そして、そこで尿をつくるので、夜中に尿量が増えます。 これを予防するためには、ストッキングが効果的です。足に弾性のあるストッキングを履いて、余分な水分が溜まらないようにするのです。 また、最近開発された高出力の磁気治療器は、骨盤の筋肉を細かく振動させることによって、水分をからだのなかに戻して、夜間頻尿を改善します』、私の場合はこれも該当しない。
・夜間頻尿の原因③【おしっこが濃くならない】(通常、覚醒時より睡眠時のほうが尿の回数が少ないのは、眠っている間に「バソプレシン」というホルモンが分泌されているからです。尿の90パーセントは水分ですが、バソプレシンには、腎臓での水分の再吸収量を増やすことで、睡眠時に膀胱に溜まる尿の量を、覚醒時より少なくする作用があります。いい換えれば「尿を濃くする」ということです』、私の場合は多少は該当する可能性がある。
・『尿が濃くならず、膀胱がいっぱいになる  つまり、眠っている夜間は、起きている日中ほど尿がつくられなくなるため、膀胱がなかなかいっぱいにならず、トイレに起きなくてよいのです。朝の起き抜けの尿の色が濃いのも、バソプレシンによって尿の成分が濃くなっているためです。 バソプレシンの合成や作用に支障が起こったものが、「尿崩症にょうほうしょう」と呼ばれる症状です。そうなると、日中と同じくらいのペースで膀胱がいっぱいになるため、夜間に尿意で目が覚めるという症状が起こってきます。 このバソプレシンの分泌は、加齢に伴い夜間での分泌量が減っていきます。夜の間に1日のおしっこの3分の1以上がつくられている場合、たとえば、1日1.5リットルであれば、500ミリリットル以上、夜、寝ている間に出る人は、バソプレシンの分泌が減り、夜間多尿になっていると考えられます。こういう方には、バソプレシンに似たお薬、デスモプレシンという薬が有効です。 また、バソプレシンは、お子さんのおねしょにも効果的です。小児のなかにはバソプレシンが十分に分泌されていない人もいます。お子さんのおねしょにお困りの方は検討してみてください』、私の場合は該当しない。
・『膀胱が硬くなる、腎機能の低下… 夜間頻尿の原因④【膀胱の柔軟性が下がる】  膀胱でつくられるガス「一酸化窒素」には、膀胱や膀胱の出口の筋肉に柔軟性を与える作用があります。高血圧や糖尿病、高脂血症、動脈硬化など、いわゆる「生活習慣病」にかかると、この一酸化窒素が十分につくられなくなります。 一酸化窒素が足りず、膀胱の柔軟性が損なわれると、膀胱が硬くなり、尿が溜まる量も減って、通常より早くいっぱいになってしまいます。そして起きている日中のみならず、眠っている夜間にも、たびたび尿意をもよおすことになります。 そのうえ、一酸化窒素の不足によって膀胱の出口も緩みにくくなるため、トイレに行っても「尿が詰まった感じがする」「スムーズに出切らない」、だから余計に「何度もトイレに行きたくなる」という悪循環が生じてしまうのです』、私の場合、【膀胱の柔軟性が下がる】は多少該当する可能性がある。
・『夜間頻尿の原因⑤【腎機能の低下】  腎臓の機能が低下して、尿を濃くすることができなくなると、尿が多くなります。腎不全、慢性腎臓病でも、夜間頻尿が起こります。 ・夜間頻尿の原因⑥【睡眠時無呼吸症候群】(睡眠中に呼吸が一時的に止まってしまう「睡眠時無呼吸症候群」が、最近注目されています。いびきをかく人や、昼間に強い眠気を感じる人に多いのですが、30代、40代で夜中にトイレに起きる人は睡眠時無呼吸症候群のチェックをおすすめします。 睡眠時無呼吸症候群があると、脳の交感神経の高ぶりや一酸化窒素が減って膀胱が硬くなると同時に、睡眠中に心臓から「利尿ホルモン」が出るために尿量が増える傾向があります』、私の場合【腎機能の低下】は該当しない。
・『男性特有の病気も夜間頻尿の原因になる  睡眠時無呼吸症候群の治療であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)は、機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法です。CPAPによって、心臓の利尿ホルモンも減り、トイレに起きることなくぐっすり眠れます。また、心臓病で心臓のポンプの機能が低下すると、この心臓の利尿ホルモンが出て就寝中の尿量が増えます』、私の場合「睡眠時無呼吸症候群」は該当しない。
・『夜間頻尿の原因⑦【前立腺肥大症】  男性だと、前立腺肥大症も夜間頻尿につながります。前立腺が肥大すると、膀胱が交感神経の刺激を受けやすくなって過敏になり、急な尿意が起こりやすくなるためです。さらに深刻になると、前立腺がんが夜間頻尿を引き起こしているケースもあります。 ・夜間頻尿の原因⑧【加齢】(また、年をとると眠りが浅くなる傾向があるために、尿意を感じやすくなり、夜間に何度もトイレに行きたくなるというのも見逃せない要因です』、【前立腺肥大症】と【加齢】の2つは最も該当する。
・『夜間頻尿の原因⑨【精神的な理由】  ストレスなど精神的な理由でも頻尿が起こります。からだの緊張がとれないと、交感神経が働いて、昼も夜もおしっこが近くなるためです。ストレスが解消されたら頻尿が治ることもありますし、なかなか治らない場合、抗不安薬や抗うつ薬が有効です。逆に、うつ病などで抗うつ薬を投与していると、尿が出にくくなることもあります。 ・夜間頻尿の原因⑩【カフェイン、アルコール、喫煙】(コーヒー、紅茶、お酒、タバコには、膀胱を過敏にする作用があります。夜のカフェイン、アルコールの摂取、喫煙が、夜間頻尿に直結しているかもしれないということです。これは生活習慣の見直しによって、比較的すぐに解消できるでしょう』、【精神的な理由】と「夜間頻尿の原因⑩」の2つは該当しない。
・『夜間頻尿は、重大な病気を知らせるサイン  このように、夜間頻尿の要因は多岐たきにわたります。自分の心がけで対処できるものもあれば、医師にかかったほうがいいものもあります。 医師にかかる場合も、行くべき科は泌尿器科とは限りません。高血圧や心臓病が疑われるのなら循環器科ですし、肥満が睡眠時無呼吸症候群につながっているとしたら、肥満外来に行ったほうが適切に対処してもらえるかもしれません。 夜間頻尿が起こると、たびたび睡眠が妨げられるために、日中のパフォーマンスはいやが上にも下がります。夜間に何度もトイレに起きることで睡眠不足になり、日中にボーッとすることが多くなれば、事故などにもつながりかねません。 また、眠い目をこすりながらトイレに向かう途中で転倒し、骨折する危険もあります。骨折は寝たきり、要介護への悪あしき近道ですから、決して侮れません。 夜中にトイレに起きるようになったら、まず数々の要因がありうることを知ったうえで、自分はどれに当てはまるのかと考えてみること。あるいは泌尿器科医に聞いてみること。それが、おしっこのアンチエイジングにつながります。70歳以上で夜中にトイレに起きなければ、年齢よりかなり若いといえます』、私の場合は、PSA値が4以上あったので、初めから「泌尿器科」にかかり、生検も2回したが、異常なしだった。
・『「サビない腎臓」が健康長寿のヒケツ  おしっこのアンチエイジングに欠かせないのが、腎臓のアンチエイジングです。つまりさびない腎臓をつくることです。 腎臓には血液の老廃物をろ過する機能があります。血液は、糸球体という腎臓の器官に入り、そこで物質をこしとり、なおかつ尿細管のなかに尿が流れているうちに、必要な栄養素やミネラルを吸収し、老廃物や食事で摂取した過剰な酸性の物質を排出していきます。結果として尿は、基本的には酸性のものでできていきます。 こういった臓器の仕事というのは、大変なエネルギーを使います。そのため、活性酸素が出やすくなります。この活性酸素からからだを守らないと、細胞が老化し、結果として動脈硬化、そして腎臓の機能の低下につながっていくのです。 ただし、腎臓はもともとからだにとって十分に余裕のある機能としてつくられていますから、血液検査では腎臓の機能の低下はかなり深刻になるまで出てきません。ところが、いったん異常になってくると、そこから5年、10年の間に腎臓の機能が低下していき、最終的には人工透析や腎移植などを必要とする腎不全になっていきます。) サビない腎臓をつくるためには、まずは活性酸素をなるべく減らすものとして、ストレスの解消やカロリー過多を減らす、肥満を避ける、運動をすることが大事です。 また、食事についていえば、お肉のなかにはリン酸や塩酸といった物質が含まれているので、このなかの酸の部分を外に排出しなければいけません。これも腎臓に負担をかける大きな原因となります』、「腎臓はもともとからだにとって十分に余裕のある機能としてつくられていますから、血液検査では腎臓の機能の低下はかなり深刻になるまで出てきません。ところが、いったん異常になってくると、そこから5年、10年の間に腎臓の機能が低下していき、最終的には人工透析や腎移植などを必要とする腎不全になっていきます・・・いったん異常になってくると、そこから5年、10年の間に腎臓の機能が低下していき、最終的には人工透析や腎移植などを必要とする腎不全になっていきます」、やっかいな臓器だ。「サビない腎臓をつくるためには、まずは活性酸素をなるべく減らすものとして、ストレスの解消やカロリー過多を減らす、肥満を避ける、運動をすることが大事です。 また、食事についていえば、お肉のなかにはリン酸や塩酸といった物質が含まれているので、このなかの酸の部分を外に排出しなければいけません。これも腎臓に負担をかける大きな原因となります」、なるほど。
・『肉、インスタント食品、ファストフード、加工品には要注意  最近わかってきたのが、リンという物質の過剰摂取の問題です。リンというのは基本的には、からだを構成するのに必須のミネラル物質で、カルシウムとともに骨をつくっています。食事で摂取したリンの量は、本来非常に厳密に調整されています。 ところがリンを必要以上に摂取すると、血管が硬くなり石灰化が起きて、動脈硬化につながります。リンの濃度が上がると、からだが老化していくということです。ですから、リンの量をきちんと調整することが、からだにとって大事です。 このリンをからだの外に出す重要な物質が、腎臓に多く存在するクロトーと呼ばれる遺伝子です。クロトーは寿命や老化にも関係していることが知られています。このクロトーを守るために、リンの過剰摂取を防ぎ、腎臓の機能を保護する必要があるのです。 わたしたちの現代の食事には、肉、インスタント食品、ファストフード、ハムやウインナーなどの加工品、お菓子やコーラなどの炭酸飲料に、必要以上にリンが含まれています。ですから、リンを過剰摂取しやすく、腎臓が老化しやすくなりました。 腎臓の老化、要するに腎臓がサビるということは、酸化するということです。腎臓がサビると、ろ過装置である糸球体の数が減り、慢性腎臓病になっていきます。これを防ぐためには、4章で紹介するように食生活に注意しなければなりません。 
(堀江 重郎氏の略歴はリンク先参照)』、私の場合、臓器や「血管」に「石灰化」が起きているので、「リンの過剰摂取を防ぎ、腎臓の機能を保護する必要がある」ようだ。「肉、インスタント食品、ファストフード、ハムやウインナーなどの加工品、お菓子やコーラなどの炭酸飲料に、必要以上にリンが含まれています」、今さら遅いかも知れないが、「「リンの過剰摂取」を防いでいきたい。 
タグ:「コレステロール値の高い人のほうが男性ホルモンが多いため、齢を取っても活性が高いといった研究もあります。 「コレステロール値が多少高いほうが病気も少なく、長生きできる」と主張する医者だっているのです。つまり「こっちにとっては悪くても、あっちにとってはいいこと」というのはしばしば起こり得るのです・・・2015年には、コレステロールを「悪玉」視していた厚生労働省も摂取制限を撤廃しました。 私の場合、「コレステロール値」が高目だったが、「血圧」が正常だったこともあり、幸い薬の処方はなかった。 私も現役時代を無事に過ごせたのは幸運だった。 私も40代までは指摘事項が殆どなかったが、「50代」になると急に増え、戸惑った記憶がある。 和田さんの新著『50歳からの脳老化を防ぐ 脱マンネリ思考』 和田 秀樹氏による「「健康診断の数値」を気にする50代が失うもの 一昔前の医学の常識を信じているかもしれない」 「足先クイクイ体操」は簡単そうなので、是非、習慣づけたい。 「ぬるめのお湯に10分ほどゆっくりつか」れば、「入浴から5分経過すると、白血球、リンパ球、がん細胞を倒すNK細胞など免疫力を支える免疫細胞が増えることがわかっています」、素晴らしい効能だ。 昇してしまいます・・・私のおすすめは、断然ぬるめです。 ぬるめの湯温とは、冬なら40℃、夏なら38℃。一方、41℃以上が熱めの湯温です。 体が疲れているときは、ぬるめのお湯に10分ほどゆっくりつかりましょう。 これで副交感神経が働き、末梢血管が拡張。入浴から5分経過すると、白血球、リンパ球、がん細胞を倒すNK細胞など免疫力を支える免疫細胞が増えることがわかっています。 もちろん、血流も整い、体のすみずみまで栄養と酸素が行き届き、疲労物質も回収・排出されるので、疲れが軽くなります」、 高温のお湯につかることは、入浴のメリットであるリラックス効果を妨げてしまいます。お風呂でリラックスするかどうかは「交感神経」と「副交感神経」の働きと深く関連し、湯温がその切り替えスイッチのような働きを果たしています。 副交感神経の働きが高まれば、精神的に落ち着き、末梢血管も拡張し、血圧は下がっていき、血流が向上。心臓の負担も軽くなります。 一方、交感神経の働きが過度に高まると末梢血管が収縮。末梢の血流が落ちるため、心臓はより多くの血液を循環させようと負担を強いられながら、働くようになります。当然、血圧は上 「湯船に入るとき、最初にお湯に触れる足先の温点・冷点は、20代に比べ、70代では3分の1ほどに。 その結果、熱い、冷たい、の識別が鈍くなり、子どもなら「絶対ムリ!」と飛び出すような湯温でも、おじいちゃんおばあちゃんは「ほぉう」と吐息をもらしながら肩までつかることができるわけです・・・とくに冬場はついつい長風呂になってしまいがち。そのとき湯温が高いと、疲労、脱水、血管虚脱(血管がひろがりすぎて、血流が落ち、脳へ必要な酸素や栄養素が届かなくなる)といった症状を引き起こす可能性があり、かなり危険な状態です・・・ 日本人のお風呂の平均湯温は「41℃」だそうです。 この数字を目にして、「ぬるめだな」と思った人は要注意。きっと、あなたが入っているお風呂は熱すぎます」、「半身浴」、「ぬるめ」では、私はとても「風呂」に入った気がしない。 「水圧でぐっと収縮し、心臓へ血液を戻していた手や足の静脈は水圧から解放され、一気に弛緩します。しかも立ち上がりますから、重力によって下半身に向かって血液が勢いよく流れ出していく。 すると、一時的に脳へ送られる血液量が減り、目の前が暗くなります。起立性低血圧症といって、いわゆる立ちくらみが起き、フラフラと倒れてしまうわけです。 これは、大変危険です・・・おすすめは、みぞおちまでつかる半身浴。これを守るためにも「湯量は腰まで」をルールにしましょう・・・ おすすめは、みぞおちまでつかる半身浴。これを守るためにも「湯量は腰まで」をルールにしましょう・・・日本人のお風呂の平均湯温は「41℃」だそうです。 この数字を目にして、「ぬるめだな」と思った人は要注意。きっと、あなたが入っているお風呂は熱すぎます」、「半身浴」、「ぬるめ」では、私はとても「風呂」に入った気がしない。 「水圧でぐっと収縮し、心臓へ血液を戻していた手や足の静脈は水圧から解放され、一気に弛緩します。しかも立ち上がりますから、重力によって下半身に向かって血液が勢いよく流れ出していく。 すると、一時的に脳へ送られる血液量が減り、目の前が暗くなります。起立性低血圧症といって、いわゆる立ちくらみが起き、フラフラと倒れてしまうわけです。 これは、大変危険です・・・ 「肩までつかる」べきでないとは、寂しい感じだ。 「浴室で亡くなる高齢者の数は、交通事故で亡くなる人の約2倍。特に65歳以上の高齢者の死亡事故が多く、毎年11月から4月にかけて多く発生しているそうです」、それは大変だ。 「すごい血流改善法」 富永 喜代氏による「冬場の「浴室での突然死」を防ぐ超シンプルな方法 大切な家族を守るための「血流改善」習慣とは」 東洋経済オンライン 「フィンランド保健局が1974年から1989年にかけてコレステロール値などが高い40~45歳の男性管理職1222人を対象に調査したデータ」も、これまでの日本の常識とは相いれないようだ。 「アメリカの国立衛生研究所の下部組織がこんな研究を行なっています。糖尿病患者1万人を2つのグループに分けて1つは標準療法、もう1つのグループには強化療法を試みます。「強化療法群」はヘモグロビンAlcを正常値の6・0%以下に抑え、「標準療法群」は7%~7・9%に抑える緩めの療法です・・・3年半後の死亡率は「強化療法群」のほうが「標準療法群」より高かったのです」、このような矛盾が出てくるほどまだ医学の世界は発展途上のようだ。 健康 (その26)(冬場の「浴室での突然死」を防ぐ超シンプルな方法 大切な家族を守るための「血流改善」習慣とは、「健康診断の数値」を気にする50代が失うもの 一昔前の医学の常識を信じているかもしれない、「夜中にトイレで目が覚める」は早死のサイン…泌尿器の専門医が指摘する"おしっこ"と"寿命"の知られざる関係 夜3回以上トイレに起きる人は死亡率が2倍になる) 卵や肉などいくら食べても大丈夫ということになりました。10年も発てば医学常識が変わることなど、いくらでもあるのです」、何事も柔軟に考える必要がありそうだ。 PRESIDENT ONLINE 堀江 重郎氏による「「夜中にトイレで目が覚める」は早死のサイン…泌尿器の専門医が指摘する"おしっこ"と"寿命"の知られざる関係 夜3回以上トイレに起きる人は死亡率が2倍になる」 堀江重郎『尿で寿命は決まる 泌尿器の名医が教える腎臓・膀胱 最高の強化法』(SB新書) 私は前立腺肥大なので、「夜間頻尿」は3,4回と酷い。 「「夜間に3回以上、トイレに起きる人は、2回以下の人の2倍も死亡率が高い」――スウェーデンで行われたある調査で、こんな衝撃的なデータが示されました。 これは、夜間頻尿そのものが寿命を縮めているということではありません。重要なのは、寿命を縮めるような病気になると、1つの症状として夜間頻尿が起こる場合が多いということです。つまり夜間頻尿は、寿命を縮める病気にかかっているサインかもしれないのです」、なるほど。 私の場合は該当しない。 私の場合はこれも該当しない。 私の場合は多少は該当する可能性がある。 私の場合、【膀胱の柔軟性が下がる】は多少該当する可能性がある。 私の場合【腎機能の低下】は該当しない。 私の場合「睡眠時無呼吸症候群」は該当しない。 【前立腺肥大症】と【加齢】の2つは最も該当する。 【精神的な理由】と「夜間頻尿の原因⑩」の2つは該当しない。 私の場合は、PSA値が4以上あったので、初めから「泌尿器科」にかかり、生検も2回したが、異常なしだった。 「腎臓はもともとからだにとって十分に余裕のある機能としてつくられていますから、血液検査では腎臓の機能の低下はかなり深刻になるまで出てきません。ところが、いったん異常になってくると、そこから5年、10年の間に腎臓の機能が低下していき、最終的には人工透析や腎移植などを必要とする腎不全になっていきます・・・いったん異常になってくると、そこから5年、10年の間に腎臓の機能が低下していき、最終的には人工透析や腎移植などを必要とする腎不全になっていきます」、やっかいな臓器だ。 「サビない腎臓をつくるためには、まずは活性酸素をなるべく減らすものとして、ストレスの解消やカロリー過多を減らす、肥満を避ける、運動をすることが大事です。 また、食事についていえば、お肉のなかにはリン酸や塩酸といった物質が含まれているので、このなかの酸の部分を外に排出しなければいけません。これも腎臓に負担をかける大きな原因となります」、なるほど。 私の場合、臓器や「血管」に「石灰化」が起きているので、「リンの過剰摂取を防ぎ、腎臓の機能を保護する必要がある」ようだ。「肉、インスタント食品、ファストフード、ハムやウインナーなどの加工品、お菓子やコーラなどの炭酸飲料に、必要以上にリンが含まれています」、今さら遅いかも知れないが、「「リンの過剰摂取」を防いでいきたい。
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今日は操作ソフト上のトラブルのため、更新を休むので、明日にご期待を!

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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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インド(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争) [世界情勢]

インドについては、(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争)である。

先ずは、昨年6月7日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677456
・『死者が300人近くに及ぶ今回の事故は、インドで今世紀に入ってから最大の列車事故とされる。これだけの規模の事故が起きれば、誰でもインドの鉄道の安全性に疑問を感じるに違いない。 英国の公共放送BBCは、インドにおける鉄道事故について、過去最悪の例は1981年6月、サイクロンの時に橋を渡っていた列車が川に転落し800人弱が亡くなったものだとしている。その後100人以上の死者を出した事故は3度起きており、直近では2016年11月に「インドール―パトナ・エクスプレス」という優等列車が脱線、150人近くが死亡する悲劇が起きている。 しかし、データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった。安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少。2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった・・・2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている」、なるほど。
・『路線延長世界4位の「国民の足」  国連人口基金(UNFPA)の推計によると、インドの人口は今年14億2860万人となり、中国を抜いて世界一になる見通しだ。人々の重要な足として鉄道のシェアは大きい。 約6万8000kmに及ぶ路線の総延長はアメリカ・中国・ロシアに次いで世界第4位。そのうち、5万9000km余りが交流25kV・50Hzで電化されている。2020年の旅客輸送実績は80億8600万人。長距離列車と近郊列車を加えた旅客列車は1日当たり1万3000本が運行されている。国内の駅数は7325カ所に及ぶ。 歴史的にみると、インドはアジアで最初に鉄道が導入された国だ。イギリスで旅客輸送が始まった1825年から間もない1830年代には、すでに道路やダムの建設に使う資材運搬用の鉄道が敷設されていた歴史もある。 軌間(線路の幅)は長らく複数が混在していたが、現在はほとんどが1676mmの広軌に統一されている。これは新幹線などの標準軌(1435mm)よりもさらに200mm余り広い。当時、インド総督の任にあったダルハウジー卿が「広いほうが望ましい」と言ったことから広軌で敷かれたという。) 経済発展著しいインドでは、人々の往来需要も年々拡大している。そんな中、主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト(Vande Bharat)・エクスプレス」が2019年に登場した。普通車と1等車からなる16両編成で、車内にはUSB電源やWi-Fiも装備している。これまでに18区間に導入されており、テスト中に最高時速180kmまで出した記録もある。 だが、線路の許容速度と運行上の制約から、デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車(エクスプレスまたはメール)の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速いと言っていいだろう。 インドでは現在、高速鉄道のプロジェクトも進んでいる。最も先行しているのは、西部の商業都市ムンバイ(旧ボンベイ)とその北にあるアーメダバードとを結ぶ路線で、日本の新幹線システムが導入される予定だ』、2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト・・・エクスプレス」、「デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車・・・の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速い」、なるほど。
・『保安装置の導入前倒しなるか  そのような発展が進む一方で発生した今回の大惨事を受け、インドでは鉄道の安全対策についての議論が高まっている。 インドの鉄道では、運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)という。大事故を教訓に導入計画が前倒しで進められる可能性も高まっているが、はたしてどうなるだろうか。 安全設備の整備はまだ発展途上にあるようだが、事故件数は減少傾向にあっただけに、1000人を超える死傷者を出す事故が起きてしまったのは残念だ。 ある日本人駐在者は「事故翌日に開催された現地団体の集まりで犠牲者に対して黙祷を捧げた」といい、「事故に関する報道は盛んだが、原因分析に関する報道姿勢は思った以上に慎重。第一報ではコロマンデル・エクスプレスの脱線原因は不明とした上で、考えられる仮説を取り上げており、インドメディアは信頼できるかも、と改めて感じた」と話していた。 モディ首相は事故発生翌日の3日、現場へ急行。直ちに「責任のある者に厳罰を与える」と強く述べた。再発防止のための原因究明は欠かせない。これ以上の悲劇を起こさぬために、最善の対応を望みたいものだ』、「運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)・・・整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる」、安全重視の鉄道整備を期待したい。

次に、昨年8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した著述家/国際公共政策博士の山中俊之氏による「グローバルサウスの盟主インド、モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327182
・『インドで7月末、半導体関連の国際会議が開かれ、モディ首相がインドへの投資を呼びかけた。米企業が約4億ドルの投資を発表するなど、グローバル企業のインドへの関心の高さは目立つ。経済や外交で豪腕を発揮するモディ首相とは、どんな人物か。政治家として“死角”はないのか』、興味深そうだ。
・『下位カーストから上り詰めたモディ首相 朝5時起床の「超ハードワーカー」  今、世界で最も注目を集める政治家といえば、インドのモディ首相だろう。インドは2023年、人口が14億2577万人に達し、中国を抜いて世界一の人口になる見込み。大国の指導者として、欧米の西側諸国とも、中国やロシアとも絶妙な距離感を取っている。その手腕は、世界史上においてもまれなことだと注目されている。 モディ首相とはいったい、どんな人物なのだろうか。1950年生まれで今年73歳になるが、朝5時に起床して働き続ける「超ハードワーカー」だという。 モディ首相は、「ガーンチ」という下位カーストの出身といわれる。ガーンチは植物油の圧搾・販売を生業とするカーストだ。ダリット(不可触民)ではないが、差別の対象となることもある。 インドでは、依然としてカーストによる差別が実態としては存在する(憲法では禁止されている)。婚活アプリには、民族・言語の他にカーストを記入する欄もあるくらいだ。モディ氏もこれまで差別や偏見にさらされた経験は、一度や二度ではないだろう。 そのような逆境にもめげず、6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた。 こうした出自と経歴もあって、貧民層からの支持は厚い。演説にも定評があり、一般大衆の前に出れば、ロックスター並みの大歓声で迎えられることも。また、ツイッター(現X)のフォロワーは7000万人を超える。 インド国内では絶大な人気を誇るモディ首相。それでは、外交の舞台で各国首脳を翻弄する手腕についてはどうだろうか。また、政治家として“死角”はないのか』、「「ガーンチ」という下位カーストの出身・・・6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた」、並外れた実力があったのだろう。
・『世界の舞台で各国首脳を翻弄 「カメレオン外交」の巧妙  貧困層から身を起こし、首相として多様な民族・宗教で構成されるインドを統率してきた豪腕は、外交面でもいかんなく発揮されている。 ロシアのウクライナ侵攻や、米中対立の激化もある中で、モディ首相の国際政治における立ち位置はさらに際立っている。米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢である。 一例として22年9月、ロシアのプーチン大統領と対面で会談したときのこと。インドは、ロシアから大量の武器を購入するなどロシアとの関係は昔から親密だ。ウクライナ侵攻後もロシアから原油を安価で輸入し続けていて、その量は増えるばかり。 しかし、この会談でモディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ。 武器と原油の重要供給国の首脳に対して、こうした言動ができるのも、モディ首相ならではといえるだろう。 別の例として23年1月、インド政府はオンライン会合で「グローバルサウスの声サミット」を主催した。グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指すのが一般的。同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった(一部参加も含む。なお、中国は招待されていないとみられている)。まさにインドはグローバルサウスの盟主としての立場を確立しようとしている。 また、5月に広島で開催されたG7サミットにおいては、インドは招待国として参加した。G7サミットは今や、反ロシア・反中国の牙城と化している。この期間中、ウクライナのゼレンスキー大統領からモディ首相に要請があり、広島で会談した。ロシアとも対話のチャンネルを持つインドに対して、ウクライナ側から会談の要請をしたこと自体が、今日のインドの国際政治上の影響力を物語っている。  続く6月、モディ首相は米国を訪問。米議会の上下両院合同会議で演説した。このことは、英国のチャーチル元首相や南アフリカのマンデラ元大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と並び、数少ない外国首脳の一人となった。演説後、米バイデン大統領夫妻は、モディ首相好みのベジタリアン料理で心づくしの歓待ぶりを見せてもいる。 こうしたモディ首相の外交はまるでカメレオンのようで、西側諸国にも、中国・ロシア側にも、時と場合によって顔を変えることで、譲歩を引き出すことに成功している。現状、「二兎を追う者は一兎をも得ず」が当てはまらず、“二兎を追う者は二兎を得る”状態。世界の首脳が、モディ首相に翻弄(ほんろう)されているといっても過言ではない』、「米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢・・・モディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ・・・グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指す・・・同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった・・・グローバルサウスの盟主としての立場を確立」、外交は見事だ。
・『イスラム教徒や少数派に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も  さて、巧みな外交の陰で、モディ首相の強権ぶりやインドの人権問題も取り沙汰されている。 「モディ首相が世界で注目を集めているのは、世界の人々がインドの実態を知らないからだ」――。筆者の友人であるインド人経営者はこう言い放っていた。どうやら、モディ首相に我慢がならないようだ。 例えばインド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘されている(アムネスティ・インターナショナル)。 また、インド政府は、移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている。 先の筆者の友人はヒンズー教徒であるが、モディ首相のイスラム教徒への仕打ちには目に余るものがあると憤っていた。 こうした状況に対して、米国務省は人権と宗教の自由に関する報告書で、インドにおけるイスラム教徒やダリット、キリスト教徒など少数派の待遇について懸念を表明している。 世界最大の民主主義国と言われるインド。モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ』、「インド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘・・・移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている・・・モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ」、その通りだ。

第三に、本年1月23日付けNewsweek日本版が掲載した米ウッドロー・ウィルソン国際研究センター南アジア研究所長のマイケル・クーゲルマン氏による「ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争」を紹介しよう。
・『<破壊されたモスクの跡地に建てられたヒンドゥー教徒の新たな聖地が対立をあおる> インド北部の古都アヨディヤ。古代の英雄ラーマ王子の生誕の地として知られる一方で、中世にはイスラム王朝の支配下にあったこの地が、いま再びインドにおける宗教対立の火種となろうとしている。 発端は、1月22日にナレンドラ・モディ首相を迎えて盛大な建立式典が行われるヒンドゥー教寺院だ。このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった。 【動画】ラム寺院の建立式典を訪れたナレンドラ・モディ首相) 寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った。 大論争を巻き起こす過激な措置を打ち出しては、反対意見に耳を貸さずに「公約実現」を貫き、与党・インド人民党(BJP)の支持者を満足させる──。これはモディが首相として過去10年間やってきたアプローチそのものだ。 インド最高裁判所は2019年、アヨディヤで破壊されたバブリ・モスクの跡地を事実上政府の管轄とする判決を下して、ラム寺院建設に道を開いた。同時に裁判所は、目立つ場所にモスク再建の手配をするよう行政に促した。 ところが地元当局が提案した再建場所は、バブリ・モスクがあった場所から約25キロも離れた僻地だった。資金的な支援もないため、建設工事は始まってもいない』、「このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった・・・寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った」、何と思い上がった発言だろう。宗教戦争を回避するためにも、宗教指導者の過激な発言を抑制させるような試みが必要だ。「バブリ・モスク」の「再建」に当たっては、国からの何らかの形での財政支援も必要だし、場所も便利なところにするべきだろう。
・『政教分離の慣例はどこへ  アヨディヤがあるウッタルプラデシュ州は、インドで最も人口が多い州で、モディの盟友ヨギ・アディティアナートが州首相を務める。ラム寺院は「文化、精神、社会の一致」の象徴になるとアディティアナートは言うが、実際には不一致を悪化させそうだ。 モディはこれまでにも現代インドの政教分離の慣例を破り、あからさまなヒンドゥー至上主義的な政策を取ってきた。その第一歩が、19年のカシミールの自治権剝奪だった。さらに同年の改正国籍法では、アフガニスタンやバングラデシュなどからの避難民に市民権を付与するが、「イスラム教徒でないこと」を条件とするなど、イスラム教徒排除を明確にしてきた。) そして今、BJPが長年にわたり推し進めてきたラム寺院が建設された。厳密には完成していないのに建立式典が開かれた背景には、4月の総選挙に向けて熱狂的なヒンドゥー教徒にアピールしたいという意欲が見え隠れする。 その一方で、アヨディヤに来たモディは、インフラ整備計画を発表したり、ラーマ王子伝説と結び付けて貧困層救済を語るなど、「穏健なヒンドゥー至上主義」を示して支持基盤の拡大にも精を出した。 BJPは今度の選挙でも圧勝して、モディが首相として3期目を決めるのは確実とみられている。それでもモディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している』、「モディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している」、これは多民族・多宗教国家のインドにとって、極めて危険な賭けである。現在では弱体化した国民会議派は、政治的には宗教に中立を保っていた筈だ。ただ、モディ氏に「成功戦略」を変えさせ、政治的には宗教に中立を保たせるインセンティブが見当たらないのは、致命的だ。残念ながら、上手い処方箋を思いつかない。 
タグ:インド (その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争) 東洋経済オンライン さかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」 「データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった・・・2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている」、なるほど。 「主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト・・・エクスプレス」、「デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車・・・の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速い」、なるほど。 「運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)・・・整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる」、安全重視の鉄道整備を期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 山中俊之氏による「グローバルサウスの盟主インド、モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も」 「「ガーンチ」という下位カーストの出身・・・6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた」、並外れた実力があったのだろう。 「米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢・・・モディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ・・・グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指す・・・ 同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった・・・グローバルサウスの盟主としての立場を確立」、外交は見事だ。 「インド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘・・・移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている・・・モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ」、その通りだ。 Newsweek日本版 マイケル・クーゲルマン氏による「ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争」 「このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった・・・寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った」、何と思い上がった発言だろう。宗教戦争を回避するためにも、宗教指導者の過激な発言を抑制させるような試みが必要だ。 「バブリ・モスク」の「再建」に当たっては、国からの何らかの形での財政支援も必要だし、場所も便利なところにするべきだろう。 「モディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している」、これは多民族・多宗教国家のインドにとって、極めて危険な賭けである。現在では弱体化した国民会議派は、政治的には宗教に中立を保っていた筈だ。 ただ、モディ氏に「成功戦略」を変えさせ、政治的には宗教に中立を保たせるインセンティブが見当たらないのは、致命的だ。残念ながら、上手い処方箋を思いつかない。
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保険(その8)(「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」、「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」、「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】) [金融]

保険については、昨年5月15日に取上げた。今日は、(その8)(「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」、「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」、「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】)である。

先ずは、昨年12月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフロンティア・マネジメント シニアディレクターの藤森涼恵氏による「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336187
・『日本でも発展が期待される企業のための保険最適化  米国発の保険仲介業の動きが活発だ。彼らは日本企業向けにリスク管理に最適な保険契約の提案事業の拡大に乗り出している。 従来、日本の保険代理店は保険会社を含む様々な利害を考慮し、「総合的」な判断を基に保険を売ってきた。一方、米国では保険を購入する企業が抱える様々なリスクに照らし、当該企業に適切な保険商品を過不足なく選び提案する仲介業が活躍している。こうした保険仲介業者が、業務で培われた専門知識によって保険を最適化し、保険のかけ過ぎやかけ漏れを防ぎ、日本企業の利益に資する狙いだ。 ビッグモーターによる保険金不正請求問題では、代理店と損保会社のもたれ合いが保険契約者の不利益となっている可能性が指摘された。この問題が記憶に新しい今、高い専門性を持つプロによる保険最適化のニーズは高いと期待されている。 今回の不正請求問題が表出しなければ、企業は保険見直しの必要性を認知せず、不要な保険料を払い続けたかもしれない。もしくは逆に、企業にとって必要な保険が漏れたままだったかもしれない。そこで「プロの第三者による保険見直しにより最適化を実施しました」とステークホルダーにアピールするのは悪い話ではない。 「自社で保険の見直しを実施し、こうした点が問題と思われ、それを解決する保険商品がA、B、Cと思われたので、これこれの理由でBを選択しました。これにて最適化が実現できたと弊社は考えます」という説明は、前世紀ではさておき、現在では必要十分ではなかろう』、「・・・」という説明は、前世紀ではさておき、現在では必要十分ではなかろう」、「現在では必要十分」な「説明」を知りたいものだ。
・『客観性を担保するために 不可欠な第三者の存在  むしろ、「第三者専門家による見直しを実施し、保険契約の最適化を行いました」と簡潔明瞭に報告する方が、ステークホルダーや社会は好意的に受け入れるかもしれない。第三者の専門家による介入が客観性を担保し、企業の説明責任を果たす。 たとえばNTT東日本は、自社のサステナビリティ情報の客観性を「独立第三者の保証報告書」をウェブサイトに掲載することで担保している。独立の第三者の視点から企業内を監視し、不正や不祥事による信頼失墜の予防を目的の一つとして利害関係のない外部人材を取締役に加える社外取締役制度も、その存在自体に企業運営の質の担保を期待してのものと言える。 存在が客観性を担保してくれるなら、いかに客観性を担保しているかを長々と説明するよりよほど簡潔に済む。説明の準備時間を、社外取締役に適切な知見を持つ外部人材探しにあてれば良い』、「存在が客観性を担保してくれるなら、いかに客観性を担保しているかを長々と説明するよりよほど簡潔に済む。説明の準備時間を、社外取締役に適切な知見を持つ外部人材探しにあてれば良い」、その通りだ。
・『外部の人間にはわかるまいという歪みは「時限爆弾」  筆者はかつて米国で弁護士業に従事していたが、米国の裁判では独立した専門家(独立専門家)による客観性の担保が常識だ。企業と企業との間で行われる民事裁判において、損害賠償額が当事者企業の算定に依存することはまずない。 原告・被告それぞれが経済学者や公認会計士などの独立専門家を手配する。専門家は企業から提供された財務データを精査し、あるべき損害賠償額を客観的に証言する。独立専門家を携えずに裁判に臨めば負け戦だ。陪審員は当事者自前の数値ではなく「独立専門家の意見」という点のみでそちらを優先する 一般化し過ぎるとのご批判を承知で申し上げると、日本企業は独立専門家の戦略的活用が不得手かもしれない。多くが「外部の人間にはわかるまい」と考えがちだ。また、外部の専門家が見てわからない状態に問題がある、という点に不思議と頓着しない。さらに外部の参加を忌避する傾向が強い。歴史・文化的背景の影響かもしれないが、外部に晒されずに長年続く関係が歪みを生じさせる可能性は否めない。)この歪みは「外の人間にはわかるまい」で片付けられてはいけない。この歪みを内包し続けることは、今後さらに加速する企業の説明責任や開示義務を勘案しても時限爆弾になりこそすれ、利益にならない。 この時限爆弾が不祥事として爆発すれば、培われたブランド価値も一瞬で吹き飛ぶ。「自分が現役の間は爆弾が爆発しませんように」と祈るのではなく、次世代が安心して引き継げる組織を残すべく爆弾の解除に努めるべきだ』、「「自分が現役の間は爆弾が爆発しませんように」と祈るのではなく、次世代が安心して引き継げる組織を残すべく爆弾の解除に努めるべきだ」、その通りだ。
・『独立専門家の活用は「企業ドック」になる  独立専門家の意見を積極的に採り入れ、爆弾を解除することは、企業経営において人間ドックならぬ企業ドック的な意味合いもある。 我々外部コンサルティングの活用も客観的意見を取り入れるという点で同じだ。経験上、コンサルティングの使い方が残念な企業では、どんな診断や提案も「やはり外部の人間にはわからない」となり、コンサルタント活用は無駄な費用という苦い経験になる。 一方、コンサルタントの使い方が上手い企業は、外部コンサルタントを社内説得や社内変革の正当化のための道具として用いることで、費用対効果を最大化する。「客観的に評価させた結果、こうする方が良いという結論です」と、クライアントのプロジェクトチームが社内に説明する場面を我々も多数見てきた。 そしてサービスの提供側も、客観性担保の道具として都合よく使ってもらえるよう有資格者を揃えたり、上場して自らを開示義務に晒すなど社会的信用の確立に努めたりする構図になっている。 独立専門家の介入を企業の説明責任の代替として、戦略的に活用する余地は多分にある。自前主義の限界を見極め、手付かずのもたれ合い構造に別れを告げるときが来ているのではなかろうか。積極的に外部を介入させることで客観性を担保し、介入の事実にて説明責任を果たすことは、企業にとって効率の良い生き残り作戦の一つかもしれない』、「自前主義の限界を見極め、手付かずのもたれ合い構造に別れを告げるときが来ているのではなかろうか。積極的に外部を介入させることで客観性を担保し、介入の事実にて説明責任を果たすことは、企業にとって効率の良い生き残り作戦の一つかもしれない」、その通りだ。

次に、1月25日付け東洋経済オンライン「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/728437
・『中古車販売大手ビッグモーターによる保険金不正請求問題をめぐって、金融庁は1月25日、損害保険ジャパンと親会社のSOMPOホールディングスに対して、保険業法に基づく業務改善命令を出す方針だ。 金融庁は当初、保険会社が不正請求の隠蔽に加担するという悪質性などを踏まえ、損保ジャパンに対して一部業務停止の命令を加えることを視野に入れていた。改善命令に業務停止が加われば、行政処分としてはより重くなる。 ところが、4カ月間に及ぶ立ち入り検査を経て出した結論は、比較的軽い処分にとどめるというものだった。 金融庁のOBからは「腰砕け」「怠慢」などと批判的な声が相次いでいる。いったいなぜ金融庁は一部業務停止に踏み切れなかったのか。その舞台裏を探った』、「4カ月間に及ぶ立ち入り検査を経て出した結論は、比較的軽い処分にとどめるというものだった。 金融庁のOBからは「腰砕け」「怠慢」などと批判的な声が相次いでいる」、なるほど。
・『実質1営業日で処分を決定  そもそも今回の行政処分をめぐって、金融庁が処分内容について議論を尽くしたとはお世辞にも言えない。 金融庁が立ち入り検査を実質的に終えたのは1月18日、検査結果と処分内容を通知したのは同22日だ。通常は、検査終了後3週間前後の期間を経て処分を決めるが、今回はそれが実質1営業日。検査終了前から、処分の方向性を早々に固めていたとしか思えない。) 「ビッグモーターの経営がすでに立ち行かなくなっている状況で、新たな不正請求が生じるリスクはもはやない。であれば、不正請求防止のために、損保ジャパンの業務を一部停止するという理屈が立たない。ペナルティや見せしめとして停止するというのも、おかしな話だ」 金融庁のある幹部は、一部業務停止の判断に至らなかった経緯についてそう解説する。一見もっともらしい理由だが、これはあくまで建前とみられる。 別の幹部によると、その本音は「ビッグモーターに限らず、業界の中では不正請求が蔓延している。その多くを黙認しているという構造問題にまで切り込みたくない、先送りしたいという思いがあるからだ」という。 事実、トヨタ自動車系列の販売店(ディーラー)では、事故車の修理に伴う保険金の水増し請求が多発している。そうした不適切行為を未然防止できるように牽制機能を強力に働かせ、是正できる管理体制を構築できるまでは、損保ジャパンの一部業務を停止し、新たな不正請求の発生リスクを最小化すべきだろう。業務停止とする理屈も十分に立つはずだ』、「その本音は「ビッグモーターに限らず、業界の中では不正請求が蔓延している。その多くを黙認しているという構造問題にまで切り込みたくない、先送りしたいという思いがあるからだ」という。 事実、トヨタ自動車系列の販売店(ディーラー)では、事故車の修理に伴う保険金の水増し請求が多発している。そうした不適切行為を未然防止できるように牽制機能を強力に働かせ、是正できる管理体制を構築できるまでは、損保ジャパンの一部業務を停止し、新たな不正請求の発生リスクを最小化すべきだろう」、その通りだ。
・『「スーパーマンでもない限りとても手に負えない」  業務停止を免れた損保ジャパンからは「危なかった。セーフ(笑)」と安堵する声が漏れる(記者撮影) 一方で金融庁は、損保ジャパンをはじめ大手損保による保険料カルテル問題にも直面しており、その調査と対応に足元で忙殺されている。 その状況で、不正請求の黙認という業界に深く根差した構造問題にも切り込めば、「自動車整備などを所管する国土交通省との綿密な調整も必要になる。スーパーマンでもない限りとても手に負えない」(金融庁OB)という現実もある。 そもそも金融庁は当初から、ビッグモーターによる不正請求問題に正面から向き合おうとしてこなかった。 今から1年半前の2022年7月、金融庁はこの問題について損保ジャパンから任意報告を受けた。その報告は、工場長の指示に関する証言シートの改ざんについての事実を隠したものだった。「虚偽報告」だったことから、重大な不正事案と認識できなかったという言い訳が金融庁から聞こえてきそうだが、それは通用しない。) なぜなら、東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険の2社が同じ時期に金融庁へ、損保ジャパンが不正請求を黙認し単独で入庫再開している状況を逐一報告し、対応を働きかけていたからだ。 2社の報告を受けて、金融庁が早期に損保ジャパンに改めてヒアリングし、調査などの対応に乗り出していれば、ここまで問題が長引くことはなかった。ましてや、カルテル問題と同時並行での対応を迫られることもなかったはずだ』、「東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険の2社が同じ時期に金融庁へ、損保ジャパンが不正請求を黙認し単独で入庫再開している状況を逐一報告し、対応を働きかけていた、、なるほど。
・業務停止にしない理屈付けより先にすべきこと  保険会社が虚偽報告をしようが、不正請求の隠蔽に加担しようが、業務停止にはしないという前例をつくってしまった金融庁。上層部からはマスコミ対策として、「業務停止をしない理屈をしっかりと考えておけ」と指示が飛んでいるという。 だが、理屈付けに頭をひねっている暇があるのであれば、手始めに水増し請求をした自動車ディーラーにヒアリング調査し、いかに深く根差した構造問題であるか実態を見てみてはどうだろうか』、「理屈付けに頭をひねっている暇があるのであれば、手始めに水増し請求をした自動車ディーラーにヒアリング調査し、いかに深く根差した構造問題であるか実態を見てみてはどうだろうか」、筋論ではあるがその通りだ。

次に、1月31日付け日刊ゲンダイ「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/335485
・『官界通(以下=官) 中古車販売大手ビッグモーターによる保険金の不正請求問題が波及して大揺れだったSOMPOホールディングスで、なかなか辞任しなかった櫻田謙悟会長兼CEO(67)が、ようやく1月26日に退場を表明したな。 政界通(同=政) でも「引責辞任」とせず、「それは皆さんの判断にお任せしたい」と言った。パーティー券の販売収入を裏金にしていたことに責任を認めようとしない政治家と似ていて潔さが感じられない。 財界通(同=財) SOMPOグループ内でも最後まで「引責」を認めなかったようで、社内はゲンナリしていた。 官 櫻田氏は、そんな人じゃなかったのにね。1990年代末の金融危機後の損保業界再編で「会社をよくしたい」との心意気と説得力で2度にわたる合併を推進し、実現させた。もう10年以上前だが、社員たちの支持を集めて当然、トップになった。どうして、あんなに変わってしまったのかな? 財 2019年に経済同友会の代表幹事に選ばれた後、櫻田さんらしさを失ったと言う関係者が多いね。) 政 「大物財界人」になったという勘違いからか? 財 そんな感じもするが、産業別の業界団体が集まっていて「財界の総本山」と呼ばれる経団連や全国の商工会議所や商工会の頂点に立つ日商と比べれば、同友会は異質。論客は多いが、「財界人」と呼ぶような面々ではない。 官 確かに、同列にするには無理があるね。 財 でも、代表幹事はさまざまな場で経団連会長や日商会頭と並び、発言の機会も同様にあるから「大物財界人」のような気になっていた例がある。 官 そんな状況になると、周囲の言うことなど、もう聞かないな。 政 では、経営責任を指摘した金融庁に追い詰められて、逃げられなくなったということか? 財 それもあるが、SOMPOグループには人物がいて、櫻田氏と刺し違える形で追い詰めた気がする。 政 それが誰だと聞いても言わないだろうが、だとすればSOMPOグループにも希望はあるな』、「SOMPOグループには人物がいて、櫻田氏と刺し違える形で追い詰めた気がする。 政 それが誰だと聞いても言わないだろうが、だとすればSOMPOグループにも希望はあるな』、「櫻田氏と刺し違える形で追い詰めた」のは誰なのだろう。

第三に、 2月13日付けダイヤモンド・オンライン「SOMPOがビッグモーター問題で食らった行政処分、辛辣ワード満載の行政文書を深読み」の無料部分を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338780
・(有料)中古車販売大手のビッグモーターによる保険金不正請求に端を発した一連の問題は、SOMPOホールディングスと損害保険ジャパンに対する行政処分が下されたのに加え、両トップの辞任という幕切れを迎えた。そこで金融庁が公表した行政処分の文書をひも解くことで、改めて問題の所在を浮き彫りにする』、興味深そうだ。
・『厳しい言葉がずらりと並んだ金融庁の業務改善命令の文書(Qは聞き手の質問、Aは関係者の回答)  Q: 中古車販売大手ビッグモーター(BM)による保険金の不正請求をめぐる問題ですが、1月中旬から月末にかけて慌ただしかったですね。 A: そうですね。1月16日には、損害保険ジャパンの親会社SOMPOホールディングス(HD)が社外調査委員会による最終報告書を公表しました。そして、同25日には金融庁がSOMPOHDと損保ジャパンに対して業務改善命令を下し、翌26日には両社が記者会見を開きました。 Q:金融庁による記者への説明会や記者会見も長い時間がかかったそうですね。 A:記者説明会は2時間超、記者会見は3時間超と共に長丁場でした。金融庁による行政処分の中身や、会見ではSOMPOHDの櫻田謙悟グループCEOの経営責任に加え、社外取締役で指名委員会委員長のスコット・トレバー・デイヴィス氏も登壇したこともあり、質問が途切れませんでしたね。 Q:今回、金融庁や調査委員会が指摘した内容とはどのようなものでしょうか。 A:26日の会見でSOMPOHDと損保ジャパンが公表した資料を見ると分かりやすいと思います。 (SOMPOホールディングス(SOMPOホールディングスと損保ジャパンが公表した、金融庁検査で指摘された問題の真因と社外調査委員会による原因分析 はリンク先参照) Q: 「歴代社長を含む経営陣の下で醸成された企業文化」が断罪されたのですね。 A :「顧客の利益より自社の営業成績に価値を置く」や「上司の決定に異議を唱えない上意下達」、「ネガティブな情報が適時適切に報告されない」など、金融庁はかなり厳しい指摘をしています。 Q: 金融庁が公表した行政処分の文書を読みましたが、辛辣な言葉が多かったですね。 A: そうですね、ちなみに、公表された文書は13ページの概要版ですが、両社が提示された完全版は100ページほどあるようです。概要版は処分事由だけをピックアップしたものですが、完全版の方には体制面も含めてかなりシビアに指摘しているようですね。 Q: 100ページですか。相当細かく検査したのでしょうね。 A: そのようです。ヒアリングだけでなく、メールの復元や、役員間の情報共有に使用しているコミュニケーションツールも全てデジタルフォレンジックにて検査を行い、主要人物に関しては過去10年分をチェックしたようです。 Q: そんなに調べたのですね!その結果が100ページの完全版だと。でも、「業務停止処分が出るのでは?」とのうわさもありましたが、結局は業務改善命令にとどまりましたね』、「記者説明会は2時間超、記者会見は3時間超と共に長丁場でした・・・公表された文書は13ページの概要版ですが、両社が提示された完全版は100ページほどあるようです。概要版は処分事由だけをピックアップしたものですが、完全版の方には体制面も含めてかなりシビアに指摘しているようです」、無料部分だけではよく分からないが、それでも相当厳しい内容のようだ。
タグ:保険 (その8)(「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」、「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」、「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】) ダイヤモンド・オンライン 藤森涼恵氏による「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」 「・・・」という説明は、前世紀ではさておき、現在では必要十分ではなかろう」、「現在では必要十分」な「説明」を知りたいものだ。 「存在が客観性を担保してくれるなら、いかに客観性を担保しているかを長々と説明するよりよほど簡潔に済む。説明の準備時間を、社外取締役に適切な知見を持つ外部人材探しにあてれば良い」、その通りだ。 「「自分が現役の間は爆弾が爆発しませんように」と祈るのではなく、次世代が安心して引き継げる組織を残すべく爆弾の解除に努めるべきだ」、その通りだ。 「自前主義の限界を見極め、手付かずのもたれ合い構造に別れを告げるときが来ているのではなかろうか。積極的に外部を介入させることで客観性を担保し、介入の事実にて説明責任を果たすことは、企業にとって効率の良い生き残り作戦の一つかもしれない」、その通りだ。 東洋経済オンライン「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」 「4カ月間に及ぶ立ち入り検査を経て出した結論は、比較的軽い処分にとどめるというものだった。 金融庁のOBからは「腰砕け」「怠慢」などと批判的な声が相次いでいる」、なるほど。 「その本音は「ビッグモーターに限らず、業界の中では不正請求が蔓延している。その多くを黙認しているという構造問題にまで切り込みたくない、先送りしたいという思いがあるからだ」という。 事実、トヨタ自動車系列の販売店(ディーラー)では、事故車の修理に伴う保険金の水増し請求が多発している。そうした不適切行為を未然防止できるように牽制機能を強力に働かせ、是正できる管理体制を構築できるまでは、損保ジャパンの一部業務を停止し、新たな不正請求の発生リスクを最小化すべきだろう」、その通りだ。 「東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険の2社が同じ時期に金融庁へ、損保ジャパンが不正請求を黙認し単独で入庫再開している状況を逐一報告し、対応を働きかけていた、、なるほど。 「理屈付けに頭をひねっている暇があるのであれば、手始めに水増し請求をした自動車ディーラーにヒアリング調査し、いかに深く根差した構造問題であるか実態を見てみてはどうだろうか」、筋論ではあるがその通りだ。 日刊ゲンダイ「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】」 「櫻田氏と刺し違える形で追い詰めた」のは誰なのだろう。 ダイヤモンド・オンライン「SOMPOがビッグモーター問題で食らった行政処分、辛辣ワード満載の行政文書を深読み」 無料部分 「記者説明会は2時間超、記者会見は3時間超と共に長丁場でした・・・公表された文書は13ページの概要版ですが、両社が提示された完全版は100ページほどあるようです。概要版は処分事由だけをピックアップしたものですが、完全版の方には体制面も含めてかなりシビアに指摘しているようです」、無料部分だけではよく分からないが、それでも相当厳しい内容のようだ。
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東京オリンピック(五輪)(その23)(浮かびあがる「電通五輪」の実態…組織委発注2年前から“入札骨抜き画策”資料を社内共有、五輪談合事件 電通グループや組織委元次長ら刑事告発 公取委、馳知事がうっかり暴露した「東京五輪招致の闇」 「官房機密費」でIOC委員に20万円アルバム、《逮捕後初の肉声》「森喜朗さんが勝手なことを言っているだけ 森さん 本当のことを言ってください」五輪汚職事件のキーマン・高橋治之被告が独占告白7時間) [国内政治]

東京オリンピック(五輪)については、2022年2月23日に取上げた。久しぶりの今日は、(その23)(浮かびあがる「電通五輪」の実態…組織委発注2年前から“入札骨抜き画策”資料を社内共有、五輪談合事件 電通グループや組織委元次長ら刑事告発 公取委、馳知事がうっかり暴露した「東京五輪招致の闇」 「官房機密費」でIOC委員に20万円アルバム、《逮捕後初の肉声》「森喜朗さんが勝手なことを言っているだけ 森さん 本当のことを言ってください」五輪汚職事件のキーマン・高橋治之被告が独占告白7時間)である。

先ずは、昨年2月17日付け日刊ゲンダイ「浮かびあがる「電通五輪」の実態…組織委発注2年前から“入札骨抜き画策”資料を社内共有」を紹介しよう。
・『東京五輪・パラリンピックの談合事件をめぐり、「電通五輪」の実態が少しずつ明らかになってきた。談合を主導したとされる広告大手「電通」が、「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと記した資料を社内会議で共有していたことが判明。16日、朝日新聞が朝刊1面で報じた。 記事によれば、問題の資料が共有されたのは、大会組織委員会が五輪関連業務の発注を始める2年前の2016年のこと。電通から組織委に出向していた幹部職員が作成したものだという。電通関係者がため息交じりにこう明かす。 「恐らく、営業部長以上が出席して役員向けに営業情報を説明する会議の資料ではないか。『利益最大化』といった文言は、よく使われるパターン。どうやれば利益を上げられるかを説明する際、『入札を有名無実化』というフレーズを使ったのでしょう。社内用のプレゼン資料とはいえ、表に出てきてしまった以上、言い逃れはできません。違法行為を宣言しているに等しく、企業として相当マズいと思います」 一企業として利益を追求するのが当然とはいえ、不正をいとわない姿勢が許されるわけがない。「入札の有名無実化」について、事実関係を電通に問い合わせたが、「当局による捜査・調査に支障をきたす可能性がありますので、回答は控えさせていただきます」(広報部)とのことだった』、「社内用のプレゼン資料とはいえ、表に出てきてしまった以上、言い逃れはできません。違法行為を宣言しているに等しく、企業として相当マズいと思います」 一企業として利益を追求するのが当然とはいえ、不正をいとわない姿勢が許されるわけがない」、なるほど。
・『社外秘“赤い指南書”の意気込みとは裏腹な現実  そもそも、電通が東京五輪に注ぐ意気込みからして、ハンパじゃなかった。組織委から「マーケティング専任代理店」に選ばれた2014年当時、社内向けに配布したとみられる社外秘の小冊子(写真)には、電通こそが五輪を支配すると言わんばかりの言葉がズラズラ並んでいる。 五輪について、〈日本の成長のための「最高のきっかけ」←電通はそのすべてに関与すべきである〉と説き、〈電通社員全員で行う日本のブランディング、New Japan Presentationに関与しよう〉などと呼びかける。五輪を奇貨として、〈世界中のあらゆる課題解決の依頼はすべて、まず電通に来ることになる〉とまでうたっている。 冊子は手帳のような大きさで、真っ赤なカバーに銀字で〈Business Direction Book〉と書かれている。いわば社員向けの“指南書”だが、「意気込みとは裏腹に、ブランドイメージを大きく損なう事態を招いてしまった」(前出の電通関係者)のが現実である。 「電通による五輪支配」というもくろみが、談合主導へと駆り立てたのか』、「電通が東京五輪に注ぐ意気込みからして、ハンパじゃなかった。組織委から「マーケティング専任代理店」に選ばれた2014年当時、社内向けに配布したとみられる社外秘の小冊子(写真)には、電通こそが五輪を支配すると言わんばかりの言葉がズラズラ並んでいる。 五輪について、〈日本の成長のための「最高のきっかけ」←電通はそのすべてに関与すべきである〉と説き、〈電通社員全員で行う日本のブランディング、New Japan Presentationに関与しよう〉などと呼びかける。五輪を奇貨として、〈世界中のあらゆる課題解決の依頼はすべて、まず電通に来ることになる〉とまでうたっている」、いやはや勇ましい呼びかけだ。「社内向けに配布したとみられる社外秘の小冊子」には、「電通こそが五輪を支配すると言わんばかりの言葉がズラズラ並んでいる」、やはりこうした思い上がり月、不正につながったのだろう。

次に、昨年11月30日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「馳知事がうっかり暴露した「東京五輪招致の闇」 「官房機密費」でIOC委員に20万円アルバム」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/717900
・『馳浩・石川県知事が自らの東京五輪誘致活動で、官房機密費(内閣官房報償費)を使って国際オリンピック委員会(IOC)の委員全員に「20万円のアルバムを渡した」と口を滑らせたことが、政界だけでなくSNS上も含めて大炎上している。 元文科相で、東京五輪誘致での自民党推進本部長だった馳氏が、「政官界でも口外厳禁」(官房長官経験者)とされてきた官房機密費使用の一端を漏らしたことで、さまざまな疑惑がささやかれてきた日本の招致活動の闇が暴露されるきっかけになるとみられている。 しかも、東京五輪招致と、1年遅れの「強行開催」を主導した故安倍晋三元首相、菅義偉前首相、森喜朗元首相の3氏による馳氏への「具体的指示」にも言及していたことが、支持率下落にあえぐ岸田文雄首相の政権運営の新たな火種になりつつある』、「馳」氏は現在では石川県知事として活躍している。
・『馳氏は慌てて「全面撤回」、口つぐむ“関係者”  騒ぎの大きさに慌てた馳氏はすぐさま発言を「全面撤回」し、その後は「一切言及しない」と貝のように口を閉ざし、嵐の過ぎ去るのを待つ構え。しかし、野党はすぐさま「五輪全体が汚職まみれとされたが、誘致も金まみれだった」(立憲民主)として、国会への馳氏の参考人招致を要求するなど、臨時国会終盤での野党の政権攻撃を勢いづかせている。 馳氏の「機密費」発言は、11月17日に都内で行った講演で飛び出した。2013年に開催が決まった東京五輪に関する自らの招致活動として、「105人のIOC委員全員の選手時代の写真をまとめたアルバムを土産用に作った」と自慢げに披露し「官房機密費を使った。1冊20万円する」と踏み込んだ。事実ならIOCの倫理規定違反にも問われかねない内容だ。) しかも馳氏は、当時の安倍首相から「必ず(招致を)勝ち取れ。金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と告げられたことも明かし、「それ(アルバム)を持って、世界中を歩き回った」と語ったという。 さらに、自らの「はせ日記」と称するブログに、安倍首相の“指示”を受けて、当時の機密費を扱う官房長官だった菅氏にも報告し、同氏から「安倍総理も強く望んでいることだから、政府と党が連携して、しっかりと招致を勝ち取れるように、お願いする」とハッパを掛けられたことも明記。それが判明した際、馳氏も事実関係を認めざるをえなかった。 立憲民主党はこのブログも含めて「IOCの倫理規定違反が疑われる行為。官房機密費が使われていたとすれば大変な話だ」と勇み立つ。同党として終盤国会の攻防の中で馳氏だけでなく菅氏の参考人招致も与党に迫る構えだが、自民執行部は徹底拒否する方針。 菅氏の事務所もメディアの取材に対し「ご質問の件は承知していない。馳氏は発言を撤回したと聞いている」と固く口を閉ざしている。 その一方で、馳氏がブログに記した「ともだち作戦」という言葉について、当時の都知事で現在日本維新の会所属の猪瀬直樹参院議員が、都庁ホームページ「知事の部屋」に「重要なのは友達作戦と絆作戦」と記していたことも判明した。今のところ猪瀬氏もメディアの取材に口を閉ざしているが、維新も巻き込んでの騒ぎともなりつつある』、「「105人のIOC委員全員の選手時代の写真をまとめたアルバムを土産用に作った」と自慢げに披露し「官房機密費を使った。1冊20万円する」と踏み込んだ。事実ならIOCの倫理規定違反にも問われかねない内容だ。) しかも馳氏は、当時の安倍首相から「必ず(招致を)勝ち取れ。金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と告げられたことも明かし、「それ(アルバム)を持って、世界中を歩き回った」と語った』、「1冊20万円する」のであれば、「IOCの倫理規定違反にも問われかねない内容だ」、なるほど。
・『菅氏は官房長官在任中「86億円」使う  そこで問題となるのが「いわゆる機密費の存在とその使途」(政界関係者)だ。「内閣官房報償費」が正式名称で、「国政の運営上必要な場合に、内閣官房長官の判断で支出される経費」と規定されている。 この機密費が予算に計上されたのは終戦直後の1947年からで、近年は年間16億円余が予算化されてきたが、その後減額され、現在は総額14億6165万円が毎年計上され、そのうち12億3021万円が内閣官房長官の取り扱い分、とされている。) そもそもこの「機密費」は、内閣官房だけでなく各省庁にそれぞれ一定額が予算計上されている。もちろん官房機密費の額が群を抜くが、外交交渉を担う外務省の「機密費」がさらに巨額。ただ、関係者によると「内閣官房と外務省の機密費は事実上一体運用され、首相による首脳外交には双方の機密費がそれなりの配分で使われてきた」(外務省幹部)とされる。 そうした中、今回の“機密費騒動”で俎上に上げられた菅氏が、7年8カ月余の官房長官在任中に使った機密費総額は「86億円超」という巨額に上ることが、すでに明らかになっている。このため、菅氏は首相だった安倍氏の了解も得て、その中から五輪招致の活動費に支出していたと指摘されたわけだ。 今回の騒動に先立ち、過去には「官房長官が機密費を選挙活動に使った」として大阪市の市民団体が告発したケースもある。麻生太郎内閣の官房長官だった河村建夫氏が、政権交代選挙となった2009年8月の衆院選での自民惨敗を受け、在任中に2億5千万円もの機密費を引き出していたとして「背任罪・詐欺罪」で告発されたものだが、後日不起訴処分になっている』、「菅氏が、7年8カ月余の官房長官在任中に使った機密費総額は「86億円超」という巨額に上る」、確かに巨額だ。
・『「外遊の選別」「国会対策費」などの“証言”も  もともと、官房機密費の使途をめぐってはさまざまな「疑惑」が取り沙汰されてきた。歴代官房長官の中で「外遊する与野党国会議員への餞別に充てた」「国会対策で一部野党に配った」「有力なジャーナリストを懐柔するために使った」などと“証言”する向きも複数存在するのは事実。 ただ、その実態は「闇に包まれたまま一向に解明されず、現在に至っている」(自民長老)のが実態。今回も馳氏をはじめほとんどの関係者は一様に口を閉ざし、取材も受け付けない対応を続けている。) そうした状況に対し、多くの有識者からは「今回の馳氏の発言を聞き、それを裏付けるブログもみれば、誰が見ても機密費の悪用は隠しようがない。余りにも突っ込みどころ満載で、笑い出したくなる」(民放テレビコメンテーター)との辛辣な声が相次ぐ。 その一方で、与野党から「今回の機密費騒動での自民実力者の利害得失」(同)に視点を据える向きもある。 馳氏を「手先」として動かしたとされる首相経験者の安倍、菅、森3氏は、死去した安倍氏は別として、現在は森氏が麻生太郎副総裁と並ぶ岸田首相の“後見役”を自認する一方、菅氏は党内の「反岸田勢力の旗頭」の立場にある。 しかも、安倍氏に関しては「桜を見る会」への機密費支出問題が取り沙汰された経緯もあり、最大派閥の安倍派にも批判の矛先が向きかねない状況でもある。 これも踏まえて与党内では、「岸田首相にとっては、今回の機密費騒ぎを『安倍・菅政権の汚点』として、岸田降ろしのうごめきを抑え込む要因にもできる」(首相経験者)とのうがった見方すら出始めている』、「「岸田首相にとっては、今回の機密費騒ぎを『安倍・菅政権の汚点』として、岸田降ろしのうごめきを抑え込む要因にもできる」(首相経験者)とのうがった見方すら出始めている」、なるほど。
・『支持率回復に向け「身を切る改革」の覚悟は…  もちろん、そうした闇試合をうんぬんする前に、膨大な機密費に対する国民の疑惑が、さらなる政治不信拡大につながらないよう、「行政府の政府だけでなく立法府の国会が連携して、現在の機密費制度の改廃に取り組む」(官房長官経験者)ことが必要なのは論を待たない。 それだけに、政権維持の正念場に立たされている岸田首相が、「機密費の縮減」や「一定期間後の使途公開」など“身を切る改革”にまい進すれば、「支持率回復のきっかけになる」(自民長老)という声も出るが、はたして岸田首相にその覚悟があるのかどうか……』、「岸田首相が、「機密費の縮減」や「一定期間後の使途公開」など“身を切る改革”にまい進すれば、「支持率回復のきっかけになる」という声も出るが、はたして岸田首相にその覚悟があるのかどうか……」、「岸田首相にその覚悟」までは残念ながら期待出来そうにない。

第三に、本年2月8日付け文春オンライン「《逮捕後初の肉声》「森喜朗さんが勝手なことを言っているだけ。森さん、本当のことを言ってください」五輪汚職事件のキーマン・高橋治之被告が独占告白7時間」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/68843
・『2022年8月、東京五輪をめぐる受託収賄事件で逮捕された大会組織委員会の元理事、高橋治之被告(79)。高橋氏が受け取った賄賂は約2億円とされる。 その高橋氏が今回、「週刊文春」の取材に応じた。事件が明るみに出てから公式にメディアの取材を受けるのは初めてのことだ。取材は4日間、計7時間にわたった』、興味深そうだ。
・『「森さんが勝手なことを言っているだけ」  昨年12月に始まった高橋氏の裁判で最大の争点となっているのは「職務権限の有無」だ。高橋氏の組織委理事(みなし公務員)としての職務に「スポンサー集め」が含まれなければ、受託収賄罪は成立しない。検察側は高橋氏に「マーケティング担当理事」としての職務権限があったと主張。その根拠の1つが、組織委員会元会長の森喜朗氏(86)の供述調書だ。この中で森氏は「高橋氏にスポンサー集めなどマーケティングを担当してもらった」と語っているのだ。) だが、高橋氏はこう語る。 「森さんから『あなたはマーケティング担当理事です』なんて言われたことは一度もありません。森さんが勝手なことを言っているだけ。森さん、本当のことを言ってください」』、「高橋氏は・・・「森さんから『あなたはマーケティング担当理事です』なんて言われたことは一度もありません。森さんが勝手なことを言っているだけ。森さん、本当のことを言ってください」、「高橋氏」の責任逃れも見苦しい。
・『業者から森氏へ渡す見舞金の金額を聞かれ…  さらに高橋氏は、五輪関連の業者と森氏との関係について、こう明かした。 「業者から『(森さんへの)お見舞いにいくら渡せばいいか』と聞かれました。だから僕は、こう告げたんです――」 2月8日(木)発売の「週刊文春」では、高橋氏自身と業者との関わり、五輪招致の際の票集め、検察との攻防や拘置所生活などを語った高橋氏の7時間に及ぶ肉声の全容を8ページにわたって報じている。さらに2月7日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」では、紙幅の都合で掲載しきれなかった個別業者とのやりとりも含む完全版を公開している』、肝心の証言は「週刊文春」に掲載するようだが、「高橋」氏はきっと適当なワイロの額を提示したのだろう。 
タグ:東京オリンピック(五輪) (その23)(浮かびあがる「電通五輪」の実態…組織委発注2年前から“入札骨抜き画策”資料を社内共有、五輪談合事件 電通グループや組織委元次長ら刑事告発 公取委、馳知事がうっかり暴露した「東京五輪招致の闇」 「官房機密費」でIOC委員に20万円アルバム、《逮捕後初の肉声》「森喜朗さんが勝手なことを言っているだけ 森さん 本当のことを言ってください」五輪汚職事件のキーマン・高橋治之被告が独占告白7時間) 日刊ゲンダイ「浮かびあがる「電通五輪」の実態…組織委発注2年前から“入札骨抜き画策”資料を社内共有」 「社内用のプレゼン資料とはいえ、表に出てきてしまった以上、言い逃れはできません。違法行為を宣言しているに等しく、企業として相当マズいと思います」 一企業として利益を追求するのが当然とはいえ、不正をいとわない姿勢が許されるわけがない」、なるほど。 「電通が東京五輪に注ぐ意気込みからして、ハンパじゃなかった。組織委から「マーケティング専任代理店」に選ばれた2014年当時、社内向けに配布したとみられる社外秘の小冊子(写真)には、電通こそが五輪を支配すると言わんばかりの言葉がズラズラ並んでいる。 五輪について、〈日本の成長のための「最高のきっかけ」←電通はそのすべてに関与すべきである〉と説き、〈電通社員全員で行う日本のブランディング、New Japan Presentationに関与しよう〉などと呼びかける。五輪を奇貨として、〈世界中のあらゆる課題解決の 依頼はすべて、まず電通に来ることになる〉とまでうたっている」、いやはや勇ましい呼びかけだ。「社内向けに配布したとみられる社外秘の小冊子」には、「電通こそが五輪を支配すると言わんばかりの言葉がズラズラ並んでいる」、やはりこうした思い上がり月、不正につながったのだろう。 東洋経済オンライン 泉 宏氏による「馳知事がうっかり暴露した「東京五輪招致の闇」 「官房機密費」でIOC委員に20万円アルバム」 「馳」氏は現在では石川県知事として活躍している。 「「105人のIOC委員全員の選手時代の写真をまとめたアルバムを土産用に作った」と自慢げに披露し「官房機密費を使った。1冊20万円する」と踏み込んだ。事実ならIOCの倫理規定違反にも問われかねない内容だ。) しかも馳氏は、当時の安倍首相から「必ず(招致を)勝ち取れ。金はいくらでも出す。官房機密費もあるから」と告げられたことも明かし、「それ(アルバム)を持って、世界中を歩き回った」と語った』、「1冊20万円する」のであれば、「IOCの倫理規定違反にも問われかねない内容だ」、なるほど。 「菅氏が、7年8カ月余の官房長官在任中に使った機密費総額は「86億円超」という巨額に上る」、確かに巨額だ。 「「岸田首相にとっては、今回の機密費騒ぎを『安倍・菅政権の汚点』として、岸田降ろしのうごめきを抑え込む要因にもできる」(首相経験者)とのうがった見方すら出始めている」、なるほど。 「岸田首相が、「機密費の縮減」や「一定期間後の使途公開」など“身を切る改革”にまい進すれば、「支持率回復のきっかけになる」という声も出るが、はたして岸田首相にその覚悟があるのかどうか……」、「岸田首相にその覚悟」までは残念ながら期待出来そうにない。 文春オンライン「《逮捕後初の肉声》「森喜朗さんが勝手なことを言っているだけ。森さん、本当のことを言ってください」五輪汚職事件のキーマン・高橋治之被告が独占告白7時間」 「高橋氏は・・・「森さんから『あなたはマーケティング担当理事です』なんて言われたことは一度もありません。森さんが勝手なことを言っているだけ。森さん、本当のことを言ってください」、「高橋氏」の責任逃れも見苦しい。 肝心の証言は「週刊文春」に掲載するようだが、「高橋」氏はきっと適当なワイロの額を提示したのだろう。
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子育て(その6)(子どもの「脳育て」で高学歴の親がつまずく罠 見落としがちな脳の発達とは、「子どもが誰かにくっついている」ことが 子どもの発達にここまで重要である「これだけの理由」) [生活]

子育てについては、昨年3月16日に取上げた。今日は、(その6)(子どもの「脳育て」で高学歴の親がつまずく罠 見落としがちな脳の発達とは、「子どもが誰かにくっついている」ことが 子どもの発達にここまで重要である「これだけの理由」)である。

先ずは、昨年5月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した小児科医・医学博士の成田奈緒子氏による「子どもの「脳育て」で高学歴の親がつまずく罠、見落としがちな脳の発達とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321688
・『「塾での成績別席順は常に最前列で、名門中学の模試でA判定。そんな優秀な我が子が、朝はなかなか起きられない、家で暴力的な態度になる」といった悩みを持つ親がいます。子育ては「脳育て」と表現していいくらい、脳は段階的な発達を伴いますが、ここで「高学歴親」は脳育てへの誤った考え方に陥りがちです。寝る、起きる、食べる、からだをうまく動かすことをつかさどる「からだの脳」、言語機能や思考、スポーツの技術的なものを担う「おりこうさんの脳」、人間的な論理的思考や問題解決能力を担う「こころの脳」の発達には、守られるべき順番があることを知っていますか? ※本稿は、成田奈緒子『高学歴親という病』(講談社+α新書)の一部を抜粋・編集したものです』、「子育ては「脳育て」と表現していいくらい、脳は段階的な発達を伴いますが、ここで「高学歴親」は脳育てへの誤った考え方に陥りがちです」、興味深そうだ。
・『脳には育つ順番がある  人間が生きてゆく機能の大部分は、脳が担っています。ですから子育てイコール「脳育て」と表現していいくらいです。首がすわる前に言葉を話す子がいないように、脳の発達には段階があります。したがって、この脳育てにも守られるべき順番があります。 子どもが生まれてから5歳くらいまでに、まず「からだの脳」を育てなくてはなりません。寝る、起きる、食べる、からだをうまく動かすことをつかさどる脳です。これは主に、内臓の働きや自律機能の調節を行う視床下部などの間脳や脳幹部を含む部位を指します。 生まれたときは寝たきりで、昼夜関係なく泣いておっぱいやミルクをねだります。徐々に夜起きずにまとめて眠ってくれます。首がすわり、寝返りを打ち、お座りをしてハイハイができるようになります。そのうち、朝家族とともに目覚め、夜になったら眠り、食事を3回とり、喜怒哀楽を表現し始めます。要するに、人が生まれてから最初に始まるからだと脳の発達です。 (図版:脳の発達は順序が大切 はリンク先参照) このからだの脳が育つ時期を追いかけるように1歳から「おりこうさんの脳」の育ちが始まります。主に、言語機能や思考、スポーツの技術的なもの(微細運動)を担う大脳新皮質のことです。小中学校での学習を中心にぐんと発達しますが、当然ながら個人差があります。おおむね18歳くらいまで時間をかけて育ちます。 最後に10歳から18歳までにかけて育つのが「こころの脳」です。大脳新皮質のなかでも最も高度な働きを持つ前頭葉を用いて、人間的な論理的思考を行う問題解決能力を指します。 このように3段階で脳は育つのですが、多くの親たちが「からだの脳」を育てずに、「おりこうさんの脳」と「こころの脳」の機能を求めています。それが、高学歴親が子育てでつまずく大きな要因です。 子どもは、親の言動を見て育ちます。早寝早起き朝ごはんを大事にしている。それを実現すべく頑張ろうとしている親かどうか、ともに生活するなかで価値観が刷り込まれていきます。 物事のとらえかた、発する言葉の内容、子どもに見せる表情、子どもとの遊びかたひとつとっても、子どもへの影響ははかりしれません』、「子どもが生まれてから5歳くらいまでに、まず「からだの脳」を育てなくてはなりません。寝る、起きる、食べる、からだをうまく動かすことをつかさどる脳です・・・1歳から「おりこうさんの脳」の育ちが始まります。主に、言語機能や思考、スポーツの技術的なもの(微細運動)を担う大脳新皮質のこと・・・10歳から18歳までにかけて育つのが「こころの脳」です。大脳新皮質のなかでも最も高度な働きを持つ前頭葉を用いて、人間的な論理的思考を行う問題解決能力を指します・・・このように3段階で脳は育つのですが、多くの親たちが「からだの脳」を育てずに、「おりこうさんの脳」と「こころの脳」の機能を求めています。それが、高学歴親が子育てでつまずく大きな要因です」、なるほど。
・『「原始人のような子」に育てる  「からだの脳」時代における親の役割は、とにかく「昼行性動物」のリズムを脳に覚えこませることに尽きます。昼行性動物というのは夜行性の反対ですから、「朝太陽が昇ったら活動を開始し、夜太陽が沈んだら眠る」生活をする動物のことです。人間は人間なのですが、まだまだ現代人には程遠い、原始人のイメージです。 端的に言うと、赤ちゃんが生まれてから親が行う「育児」とは、5歳までに立派な原始人を作り上げることと言っても過言ではない。これが「からだの脳」育てです。5歳までに、動物の本能というか、自分が生き延びるために環境に適応する力を身に付けなければならないのです。 たとえば、あちらの藪が動いている。カサカサと音がする。敵がいるかもしれないと察知する視覚と聴覚。何か匂いがするぞと感じる嗅覚。何かの実を拾って食べたときに、味がおかしい、食べちゃダメだとなる味覚。風が湿っぽいから雨が降るぞと察知する触覚。これら五感を使って身を守るのです。 そうやって安全を確認したらリラックスする。そして、きちんと一日3回空腹を感じて食事を自発的に摂る。時々刻々と変わる気温や湿度の環境に適応するよう、自律神経を働かせて体内環境を維持できる。敵が現れれば感情むき出しにして怒り、恐怖し、逃げる、戦う。これが原始人の力です。 本能といってもいいでしょう。この力を作るために、大人が日々の「生活」から脳に刺激を入れ続けることが、「からだの脳育て」というわけです。 また、この時期には「からだの脳」に基地を持つ原始的な3つの神経伝達物質「ドーパミン・セロトニン・ノルアドレナリン」の分泌を促進することも重要です。それをすることで生きるための力の土台を作ります。 この三大神経伝達物質は、生まれてから5歳までにしっかり分泌されることが大事です。脳にしっかりと良い刺激を与えておくと、高度な神経ネットワークが形成され、最終的に「こころの脳」育ての時代になると、ストレスに強く論理的思考や抑制機能が高い脳になるのです。) では、この原始人の脳を作るうえで一番カギになるのは何か。それは現代社会では「年齢相応の十分な睡眠時間」ということになります。講演会などで話をすると、皆さん「え? うちの子ちゃんと寝てますけど……」とおっしゃいます。実は、この「ちゃんと」が曲者なのです。 皆さん「子どもは8時間寝ればいい」と思っていらっしゃる方が多いようです。5歳の幼児も小学校高学年と同じように考えています。大人の睡眠は6時間か7時間くらいだから、子どもは8時間だと言うわけです。しかし、年齢によって必要な睡眠時間、そして推奨される就寝時刻も決まっています。どちらも科学的・医学的な根拠に基づいたものです。 まずは睡眠時間から見直しましょう。5歳児は11時間寝かせることが正しい発達のために必要と、小児科の教科書に書いてあります。加えて重要なのは睡眠の「時間帯」です。午後7時に就寝、午前6時起床が望ましいと考えます。 しかし、現代日本の現状からいうと午後7時就寝はほとんどの家庭で不可能に近いので、私は午後8時就寝、午前6時起床の10時間を目指すようにお願いしています。その理由は、原始人が「太陽が沈んだら寝る」「太陽が昇ったら起きる」からです。ちなみに小学生の場合、教科書的には10時間の睡眠時間を推奨していますが、私は午後9時就寝、午前6時起床の9時間睡眠を目指してもらうようにお話ししています。 「うちの子ちゃんと寝てます」という家庭の状況をよく聞いてみると、寝る時刻が23時以降だったりします。また寝たように見えて寝返りが多いなど浅い眠りだったり、おねしょして夜中に起きることもあり、深く正しく眠っていません。そうなってしまうと、脳は健全に育っていないと考えられます。 日が昇る朝6時前後に起きて活動を開始し、日が沈む午後7時前後に活動を終えて8時には眠りにつく。この睡眠のゴールデンタイムは、昼行性の動物である人間の子ども、原始人にとって不可欠な脳育ての基礎と言えます』、「5歳児は11時間寝かせることが正しい発達のために必要と、小児科の教科書に書いてあります。加えて重要なのは睡眠の「時間帯」です。午後7時に就寝、午前6時起床が望ましいと考えます。 しかし、現代日本の現状からいうと午後7時就寝はほとんどの家庭で不可能に近いので、私は午後8時就寝、午前6時起床の10時間を目指すようにお願いしています・・・日が昇る朝6時前後に起きて活動を開始し、日が沈む午後7時前後に活動を終えて8時には眠りにつく。この睡眠のゴールデンタイムは、昼行性の動物である人間の子ども、原始人にとって不可欠な脳育ての基礎と言えます」、なるほど。
・『脳育てができる親、できない親  「本当にもう、毎朝気を遣いながら声かけするんですけど、ものすごく不機嫌な日はもう怒鳴られっぱなしです。うるさいとか言って、本当に怖いです。夜中になると、部屋からガチャガチャ音が聞こえてきます。オンラインゲームをやってひとりで騒いでいます。どうしたらいいでしょう?」 20歳過ぎて家に引きこもっている子どもたちと同居する母親が、げっそりした顔で私のところにやってきます。
・『「とにかくね、早寝早起きをして生活リズムを整えよう!」  私は病院の外来やアクシスでこう伝え続け、溺れかけた親子を何とか川や海から引き揚げてきました。すんでのところで生き直せた彼らは「とにもかくにも生活リズム」を深く理解しています。  ところが、多くの人たちはすぐに信じてはくれません。効果が見えにくいからです。特に高学歴の親御さんは、目に見える成果を求めやすいと感じます。絵画や楽器など取り組んだものの出来栄え、テストの点数、通知表、模試のランク付け。学力、計算力、文章力といった「認知能力」です。 対する「非認知能力」は、意欲や自己肯定感、自立や協調、共感できる力といったこころの部分を指します。この非認知能力は生活リズムが整うとドンとアップするのですが、測定したり評価する数値がないので親御さんには届きません。 「からだの脳」が育てられていない子どものなかには、不登校、引きこもり、家庭内暴力、リストカットといった事態を引き起こすケースもあります。そこで私のほうから「こういうリスクがあるよ」と警告するのですが、多くの方が「うちはそうはならない」と思っています。 器械体操で全国大会出場を決めた。 水泳の記録会でいつもトップを飾る。  塾での成績別席順は常に最前列で、名門中学の模試でA判定。 そんな子どもたちが、朝はなかなか起きられない、家で暴力的な態度になる。理由がわからない頭痛や腹痛があるといった問題があっても、親子はエリート街道を走り続けます。優秀なわが子が放つ光は、その影を覆い隠すのです。脳育ての価値がわからない人は、先のことを考えるのが苦手なのかもしれません。 目の前の些末なことよりも、大局を見ることができれば変われるのに。それを私はひしひしと感じます』、「多くの人たちはすぐに信じてはくれません。効果が見えにくいからです。特に高学歴の親御さんは、目に見える成果を求めやすいと感じます。絵画や楽器など取り組んだものの出来栄え、テストの点数、通知表、模試のランク付け。学力、計算力、文章力といった「認知能力」です。 対する「非認知能力」は、意欲や自己肯定感、自立や協調、共感できる力といったこころの部分を指します。この非認知能力は生活リズムが整うとドンとアップするのですが、測定したり評価する数値がないので親御さんには届きません。 「からだの脳」が育てられていない子どものなかには、不登校、引きこもり、家庭内暴力、リストカットといった事態を引き起こすケースもあります。そこで私のほうから「こういうリスクがあるよ」と警告するのですが、多くの方が「うちはそうはならない」と思っています・・・優秀なわが子が放つ光は、その影を覆い隠すのです。脳育ての価値がわからない人は、先のことを考えるのが苦手なのかもしれません。 目の前の些末なことよりも、大局を見ることができれば変われるのに。それを私はひしひしと感じます」、なるほど。

次に、 7月11日付け現代ビジネスが掲載した遠藤 利彦氏による「「子どもが誰かにくっついている」ことが、子どもの発達にここまで重要である「これだけの理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112152
・『「アタッチメント」という言葉をご存じでしょうか? 心理学の分野では「愛着」と訳されて使われてきた用語で、不安なとき「特定のだれか」にくっついて安心感を得ようとする欲求や行動を指す言葉です。 いわば「不安解消のシステム」ともいえるアタッチメントは、とりわけ乳幼児期の経験が重要だといわれています。どのようにして形成されていくのかを『アタッチメントがわかる本 「愛着」が心の力を育む』から、一部抜粋してご紹介します』、興味深そうだ。
・『不安なときにくっつきたい――。それが「アタッチメント」  幼い子どもにとって世界は未知のことばかり。まわりに人がいない、暗くなってきた、転んでひざから血が出た、見たことがない人がきた……。ちょっとしたことで不安を感じたり、怖くなったりするものです。そんなネガティブな感情が生じたときに、特定のだれかにくっつきたいと願い、行動し、安心感を得ようとすること――。これが「アタッチメント」です。 多くの生きものの子どもには、くっつくこと自体を目的として行動するシステムが組み込まれています。だれか、あるいはなにかにくっついていれば、未成熟な子どもも危険な状況を生き延びやすくなるからです。 人間の場合も同じです。怖いから、不安だからだれかにくっつこうとする傾向は、もともとだれにでもみられるものです。とくに乳幼児の場合は、くっつこうとする傾向を、親や自分の世話をしてくれる大人に対して向け、「怖かったよね」、「もう大丈夫だよ」となぐさめられることで、安心・安全な感覚を得ます。 くっついて、感覚の調整をしてもらう経験を繰り返すうちに、実際にはくっつかなくても、気持ちを立て直せるようになっていきます。安定したアタッチメントは、子どものすこやかな育ちを支える土壌となるものです』、「多くの生きものの子どもには、くっつくこと自体を目的として行動するシステムが組み込まれています。だれか、あるいはなにかにくっついていれば、未成熟な子どもも危険な状況を生き延びやすくなるからです・・・くっついて、感覚の調整をしてもらう経験を繰り返すうちに、実際にはくっつかなくても、気持ちを立て直せるようになっていきます。安定したアタッチメントは、子どものすこやかな育ちを支える土壌となるものです」、なるほど。
・『アタッチメントの安定化は乳幼児期に決まる  乳幼児期は、「不安だからくっつきたい」という欲求が切実、かつひんぱんに生じます。そのため、その後のアタッチメントが安定的なものになるかが決まる重要な時期といえます。 なぜなら、生後3年ほどの期間は、成長するにつれ感情の種類が多様化し、ネガティブな感情が生じることも増えるからです。アタッチメントは、そうした感情の崩れを整えるのに重要な役割を果たします。 子どもの感情の発達のしかたを具体的にみていきましょう。 【新生児期】—快・不快・興味 新生児の頃から「快」」と「不快」は異なるものとして存在し、さまざまな刺激に対する「興味」も持っています。 【生後半年くらいまで】—喜び・悲しみ・嫌悪・怒り・恐れ・驚き 生後2~3ヵ月頃には、「快」から「喜び」の感情が、「不快」から「悲しみ」「嫌悪」の感情が生まれます。その後、「怒り」「恐れ」「驚き」の感情もみられるようになります。はっきりした対象のない、漠然とした恐れが「不安」です。 【1歳半ごろ】—自己意識に伴う感情 「自分は本来こういうものだ」という自己認識をもちはじめる時期です。他者を意識するようになり、「てれ」や「共感」、「羨望」などの感情が生まれます(自己意識的感情)。 【2歳半ごろ】—自己評価的な感情 いろいろなルールや基準に興味を示す時期。自分がそれにかなった行動ができているかどうかで、「恥ずかしい」「誇らしい」感情や「罪悪感」などを示すようになります(自己評価的感情)』、「生後3年ほどの期間は、成長するにつれ感情の種類が多様化し、ネガティブな感情が生じることも増えるからです。アタッチメントは、そうした感情の崩れを整えるのに重要な役割を果たします」、なるほど。
・『秘訣は「かかわり」を積み重ねること  ここまで、アタッチメントは『子どもの感情の崩れを整えるのに重要な役割を果たす』ことをお伝えしました。それでは、乳幼児期の子どもを支えるアタッチメントは、どのようにして形成されていくのでしょうか。 生まれて間もない赤ちゃんは、「不快」な状態に陥ると大きな声で泣き出します。このとき、まわりの大人がタイミングよくそばに来てくれて、おなかが満たされたり、おむつを替えてくれたりすると「快」が得られます。 初めのうちは、泣いたときに来てくれる人がだれであっても、不快さを取り除いてくれれば赤ちゃんは満足をします。この状態を「ジョイントネス」といい、互いに応答しあい、情緒的につながろうとします。 泣いている赤ちゃんの世話を継続的におこなうのは養育者であり、多くの場合、主な養育者は親です。養育者がかかわり続けること、つまり養育者との十分な「ジョイントネス」の経験により、赤ちゃんは「泣いたときに来てくれる『この人』」を認識するようになります。そして、不快さを含め、ネガティブな感情で心の状態が崩れると、その人にくっつきたくなるのです。 赤ちゃんと養育者との間で、このような関係が成立することを「アタッチメントの形成」といいます。泣いている赤ちゃんを抱き上げてあやす――こうした当たり前ともいえるかかわりを続けることで、養育者がその子にとっての特別な人、くっつきたい特定のだれかになり、アタッチメントは形成されるのです』、「泣いている赤ちゃんを抱き上げてあやす――こうした当たり前ともいえるかかわりを続けることで、養育者がその子にとっての特別な人、くっつきたい特定のだれかになり、アタッチメントは形成されるのです」、なるほど。
・『子どもは「安心感の輪」をめぐるうちに成長する  アタッチメントそのものは、「不安を解消するためにくっつく」というだけのことですが、十分にくっついて安心できたら、子どもは離れて遊び出します。遊びは子どもの発達にかかせない活動です。遊びを通じて、新たな発見を重ねていきます。 くっついては出かけ、またくっつきに戻るという経験は、子どもの「心の力」になります。「安心感の輪」を何度も何度もめぐるうちに、子どものなかに「なにかあったら戻ればいい」という確信が生まれます。そうした確信が得られれば、「だから、もうちょっと先までいってみよう」と、チャレンジできるようにもなっていきます。 ひとりでいられる時間は徐々に増え、子どもの活動範囲は広がっていくでしょう。心身の発達とは、「安心感の輪」が拡大していくことと同義なのです』、「遊びは子どもの発達にかかせない活動です。遊びを通じて、新たな発見を重ねていきます。 くっついては出かけ、またくっつきに戻るという経験は、子どもの「心の力」になります。「安心感の輪」を何度も何度もめぐるうちに、子どものなかに「なにかあったら戻ればいい」という確信が生まれます。そうした確信が得られれば、「だから、もうちょっと先までいってみよう」と、チャレンジできるようにもなっていきます。 ひとりでいられる時間は徐々に増え、子どもの活動範囲は広がっていくでしょう。心身の発達とは、「安心感の輪」が拡大していくことと同義なのです」、なるほど。
・『安定したアタッチメントが心の力を育む  そうしてアタッチメントが安定してくると、「心の力」が自然に育まれていくようになります。「心の力」とは「社会のなかでよりよく生きるために役立つ力」のこと。近年、幼児教育の分野で「非認知能力」として注目されています。 たとえば、自己にかかわる力が育まれると、「自分なんか」「どうせ無理」などとあきらめず、いろいろなことに挑戦しやすくなります。社会性にかかわる力として「自分はこうしたいけど、ほかの子はいやかもしれない」など、他者を思いやる気持ちがあると、人とうまくつきあっていきやすいでしょう。 【自己にかかわる力】 自分を大切にしながら自分をコントロールし、自分を高めようとする力 ●自尊心・自己肯定感 ●自己効力感・自信 ●自立心・自律性 ●自制心・自己防御・粘り強さ ●好奇心・意欲 など 【社会性にかかわる力】 人とうまく協働して生活していくために必要な力 ●心の理解能力 ●協調性・協働性 ●共感する力・思いやり ●社交性・コミュニケーションの力 ●良いか悪いかを判断する道徳性 など アタッチメントが安定すると、下記のような感覚ももたらされます。 【「人は信じられる存在」だという確信】 助けを求めれば応えてくれる、人を信じていいという信頼の感覚が育まれます。人を信じる力は、社会性にかかわる力を育む大前提となります。人を信じられなければ、みんなで協力しようとも、ルールを大切にしようとも思えません。 【「自分には愛される価値がある」という感覚】 「どんな自分でも大切にしてもらえる」「自分には愛される価値がある」という感覚がもたらされます。自分は大切な存在であるという確信が根っことなり、自己にかかわる力が育っていきます。 このように、幼児期に経験した安定的なアタッチメントは、心の力を育み、将来の幸せにつながる土台となっていきます。だからこそ、安定的なアタッチメントを経験できるような対応が大切なのです。 【しがみつく子、うつろな表情のまま動かなくなってしまう子……「アタッチメント」にここまで個人差が生まれる理由】に続きます  『アタッチメントがわかる本 「愛着」が心の力を育む』(監修:遠藤 利彦(東京大学大学院教育学研究科教授)…不安なとき「特定のだれか」にくっついて安心感を得たい。そんな子どもにとって当たり前の欲求や行動であるとされる「アタッチメント」。その形成から生涯にわたる影響まで解説した一冊。) 『アタッチメントがわかる本 「愛着」が心の力を育む』(監修:遠藤 利彦(東京大学大学院教育学研究科教授)…不安なとき「特定のだれか」にくっついて安心感を得たい。そんな子どもにとって当たり前の欲求や行動であるとされる「アタッチメント」。その形成から生涯にわたる影響まで解説した一冊』、「アタッチメントが安定してくると、「心の力」が自然に育まれていくようになります。「心の力」とは「社会のなかでよりよく生きるために役立つ力」のこと。近年、幼児教育の分野で「非認知能力」として注目されています。 たとえば、自己にかかわる力が育まれると、「自分なんか」「どうせ無理」などとあきらめず、いろいろなことに挑戦しやすくなります」、確かにそんなものなのかも知れない。
タグ:子育て (その6)(子どもの「脳育て」で高学歴の親がつまずく罠 見落としがちな脳の発達とは、「子どもが誰かにくっついている」ことが 子どもの発達にここまで重要である「これだけの理由」) ダイヤモンド・オンライン 成田奈緒子氏による「子どもの「脳育て」で高学歴の親がつまずく罠、見落としがちな脳の発達とは」 成田奈緒子『高学歴親という病』(講談社+α新書) 「子育ては「脳育て」と表現していいくらい、脳は段階的な発達を伴いますが、ここで「高学歴親」は脳育てへの誤った考え方に陥りがちです」、興味深そうだ。 「子どもが生まれてから5歳くらいまでに、まず「からだの脳」を育てなくてはなりません。寝る、起きる、食べる、からだをうまく動かすことをつかさどる脳です・・・1歳から「おりこうさんの脳」の育ちが始まります。主に、言語機能や思考、スポーツの技術的なもの(微細運動)を担う大脳新皮質のこと・・・ 10歳から18歳までにかけて育つのが「こころの脳」です。大脳新皮質のなかでも最も高度な働きを持つ前頭葉を用いて、人間的な論理的思考を行う問題解決能力を指します・・・このように3段階で脳は育つのですが、多くの親たちが「からだの脳」を育てずに、「おりこうさんの脳」と「こころの脳」の機能を求めています。それが、高学歴親が子育てでつまずく大きな要因です」、なるほど。 「5歳児は11時間寝かせることが正しい発達のために必要と、小児科の教科書に書いてあります。加えて重要なのは睡眠の「時間帯」です。午後7時に就寝、午前6時起床が望ましいと考えます。 しかし、現代日本の現状からいうと午後7時就寝はほとんどの家庭で不可能に近いので、私は午後8時就寝、午前6時起床の10時間を目指すようにお願いしています・・・日が昇る朝6時前後に起きて活動を開始し、日が沈む午後7時前後に活動を終えて8時には眠りにつく。この睡眠のゴールデンタイムは、昼行性の動物である人間の子ども、原始人にとって不可 欠な脳育ての基礎と言えます」、なるほど。 「多くの人たちはすぐに信じてはくれません。効果が見えにくいからです。特に高学歴の親御さんは、目に見える成果を求めやすいと感じます。絵画や楽器など取り組んだものの出来栄え、テストの点数、通知表、模試のランク付け。学力、計算力、文章力といった「認知能力」です。 対する「非認知能力」は、意欲や自己肯定感、自立や協調、共感できる力といったこころの部分を指します。この非認知能力は生活リズムが整うとドンとアップするのですが、測定したり評価する数値がないので親御さんには届きません。 「からだの脳」が育てられていない子どものなかには、不登校、引きこもり、家庭内暴力、リストカットといった事態を引き起こすケースもあります。そこで私のほうから「こういうリスクがあるよ」と警告するのですが、多くの方が「うちはそうはならない」と思っています・・・優秀なわが子が放つ光は、その影を覆い隠すのです。脳育ての価値がわからない人は、先のことを考えるのが苦手なのかもしれません。 目の前の些末なことよりも、大局を見ることができれば変われるのに。それを私はひしひしと感じます」、なるほど。 遠藤 利彦氏による「「子どもが誰かにくっついている」ことが、子どもの発達にここまで重要である「これだけの理由」」 『アタッチメントがわかる本 「愛着」が心の力を育む』 「多くの生きものの子どもには、くっつくこと自体を目的として行動するシステムが組み込まれています。だれか、あるいはなにかにくっついていれば、未成熟な子どもも危険な状況を生き延びやすくなるからです・・・くっついて、感覚の調整をしてもらう経験を繰り返すうちに、実際にはくっつかなくても、気持ちを立て直せるようになっていきます。安定したアタッチメントは、子どものすこやかな育ちを支える土壌となるものです」、なるほど。 「生後3年ほどの期間は、成長するにつれ感情の種類が多様化し、ネガティブな感情が生じることも増えるからです。アタッチメントは、そうした感情の崩れを整えるのに重要な役割を果たします」、なるほど。 「泣いている赤ちゃんを抱き上げてあやす――こうした当たり前ともいえるかかわりを続けることで、養育者がその子にとっての特別な人、くっつきたい特定のだれかになり、アタッチメントは形成されるのです」、なるほど。 「遊びは子どもの発達にかかせない活動です。遊びを通じて、新たな発見を重ねていきます。 くっついては出かけ、またくっつきに戻るという経験は、子どもの「心の力」になります。「安心感の輪」を何度も何度もめぐるうちに、子どものなかに「なにかあったら戻ればいい」という確信が生まれます。そうした確信が得られれば、「だから、もうちょっと先までいってみよう」と、チャレンジできるようにもなっていきます。 ひとりでいられる時間は徐々に増え、子どもの活動範囲は広がっていくでしょう。心身の発達とは、「安心感の輪」が拡大していくこ と同義なのです」、なるほど。 「アタッチメントが安定してくると、「心の力」が自然に育まれていくようになります。「心の力」とは「社会のなかでよりよく生きるために役立つ力」のこと。近年、幼児教育の分野で「非認知能力」として注目されています。 たとえば、自己にかかわる力が育まれると、「自分なんか」「どうせ無理」などとあきらめず、いろいろなことに挑戦しやすくなります」、確かにそんなものなのかも知れない。
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中国経済(その19)(「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?、中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実、IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」) [世界経済]

中国経済については、昨年8月31日に取上げた。今日は、(その19)(「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?、中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実、IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」)である。

先ずは、本年1月16日付け東洋経済オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337271
・『能登半島地震の発生とその報道で日本国内が動揺する一方、中国では史上最大級の破綻劇が起きていた。1月5日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団が破産したのだ。ピーク時の運用資産が20兆円を超えた巨大企業は、不動産バブルの崩壊にのまれ、急激に経営が悪化。これまで“政府保証”を信じてきた国民心理や中国の株式市場は、不安定さを増している』、興味深そうだ。
・『中国国民が信じてきた“政府保証”が崩壊か  1月5日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団(中植)が北京市第一中級人民法院に破産清算を申請し受理された。中国で史上最大級、債務超過は5兆円規模とみられる今回の破産は、経済に大きな負の影響をもたらすと考えられる。8日以降、投資家の中国株売却は増加したとみられ、株価は不安定な展開になっている。 中植の破産をきっかけに、人々が信じていた“暗黙の政府保証”は崩れ始めたとの見方もある。これまで中国では、主要な企業の債務不履行(デフォルト)などが起きても、「政府が救済に動くから投資家に損失は及ばない」との一種の思い込みがあった。2023年8月に中植集団の債務超過が表面化しても大きな混乱にはならなかったのは、そのためだ。 しかし、中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ』、「中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ」、なるほど。
・『シャドーバンク大手・中植はなぜ破産したのか  シャドーバンク大手である中植の破産は、中国の不動産バブル崩壊が、金融部門の一部であるシャドーバンキングセクターに波及していることを示している。 リーマンショック後の中国経済では、マンション建設など不動産投資が大幅に増えた。政府が、不動産投資によって景気を下支えし、経済の成長率を引き上げようと狙ったのだ。地方政府は、碧桂園(カントリーガーデン)など大手デベロッパーに土地を売却し、デベロッパーは、シャドーバンクなどの金融機関から資金を調達し、マンション建設を急速に増やした。国民の投機熱の高まりもあり、マンション価格は上昇し続け、不動産バブルは膨張した。 それと同時に、富裕層から一般の個人投資家に至るまで、中植グループなどが設定する信託商品への需要も急増した。ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた。 20年8月、中国政府が財務指針「3つのレッドライン」を実施すると、デベロッパーの資金繰りは悪化し、不動産バブルは崩壊に向かった。中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした』、「ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた・・・中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした」、なるほど。
・『大手生命保険会社とシャドーバンクの関係  中植の破産によって、信託商品などに“暗黙の政府保証”が付いているという思い込みは低下したはずだ。 中国の金融業界では、4大国有銀行など大手行は、相対的に信用力が高い国有・国営企業への融資を優先する傾向が強い。一方、信用力が低い中小企業、民間企業、地方政府傘下の融資平台などに貸し出しを行ってきたのがシャドーバンクだ。 シャドーバンキングとは一般的に、通常の銀行融資を受けられない相手に、高金利で貸し付けたり、投資したりする手法をいう。資金源は、銀行が販売する金融商品であり、商品の多くが短期間で償還を迎える。 中国ではシャドーバンクの重要性が高まるにつれ、信託商品などの元利金支払いが遅れると、「政府が支払いを保証するはずだ」との希望的観測が増えた。リーマンショック後はさらに、暗黙の政府保証への期待が高まった。 その典型例が、中国の大手生命保険会社だ。18年以前は、信託商品のリスクの高さ、投資先企業の事業内容の不透明さなどを理由に、シャドーバンクに資金を貸し付ける生命保険会社は少なかったといわれる。ところが、18年頃から徐々に大手生保はシャドーバンクへの投資を増やした。信託商品などのデフォルト懸念が高まれば、政府が救済に動くという思い込みがあったのかもしれない。 しかし、中植の破産によって、暗黙の政府保証はあくまでも思い込みにすぎなかったことが明確になった。北京の裁判所は、「中植は“明らかに”返済能力を欠いた」と厳しく指摘している。 23年11月の時点で、中国の不動産やシャドーバンクの専門家の間では、中植の不良債権問題に起因する投資家の損失額がおよそ560億ドル(8兆1200億円)に達するとの見方があった。 一方、中国政府も無策だったわけではない。23年11月、国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている』、「国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている」、なるほど。
・『深刻化する中国の景気低迷への懸念  現在、中国の不動産市況が下げ止まる兆しは見られない。今後、中植の破産によって信託商品の返金を求める投資家は増え、信託会社などは資産売却を急ぐことになるだろう。不動産分野から流出する資金は増え、実体経済の下振れ懸念も高まる。株価の下落リスクは上昇し、海外への資金流出も勢いづくと予想される。 マンション建設の停滞感は中国全土でいっそう深刻化するはずだ。土地の需要は追加的に低下し、地方政府の主要財源である土地譲渡益も減少する。経済成長率の低下によって税収に下押し圧力がかかり、財政破綻リスクが上昇する地方政府も増えるだろう。 中国の景気対策は地方政府が担うことが多い。財政悪化によって、中国がインフラ投資を積み増して景気対策を講じることは難しくなる。基礎資材や建設機械などの需要も減少し、生産活動や設備投資を抑制する企業は増えるだろう。 それに伴い、若年層を中心に雇用・所得環境の悪化も加速すると予想される。消費者心理の悪化も避けられない。中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう。中央銀行による資金供給などを支えに、中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる』、「中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう・・・中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる」、大変厳しい事態だ。

次に、1月18日付け東洋経済オンライン「中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実」を紹介しよう。
・『不動産不況の長期化やデフレ傾向が懸念された2023年の中国経済。その総仕上げとなるGDP(国内総生産)統計が1月17日の午前11時(日本時間)に公表された。最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった。2024年に政府が景気対策にどれだけ踏み込むかの判断材料になるからだ』、「最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった」、結果はどうだったのだろう。
・『発表前日に統計データをポロリ  ところが、発表前日に思わぬ「フライング」があった。スイスのダボス会議で、李強首相が「中国経済は全般的に回復・改善し、2023年の成長率は5.2%前後になる」とあっさり明かしてしまったのだ。 統計数字の事前流出が望ましくないのは中国でも同じだ。2011年には、国家統計局の官僚が発表前の統計データを漏洩した疑いで取り調べを受けたことが報じられている。「目標は達成できる見通し」とほのめかす程度ならともかく、国家指導者が数字そのものを事前に明かすのは異例だ。 それだけ「超過達成」をアピールしたかったのだと思われる。李首相は大規模な景気刺激策に頼ることなく目標を達成したことを強調し、中国経済は「着実な進歩」を遂げているとした。今後の方向性については「高質量(質の高い)」成長を目指すという。「高質量」は習近平国家主席が最近強調している経済政策のキーワードだ。) 李首相は、ダボス会議に集まった世界の経営者に向かって対外開放政策の継続を約束した。そのうえで、「過去5年間、対中直接投資の収益率は約9%だった。これは国際的にも比較的高い水準にある。中国市場を選択することはリスクではなく、チャンスだ」と強調してみせた。 理由としては、中国の市場の潜在力の高さがあるという。李首相は「中国の中所得層は現在4億人であり、今後10年程度でその数は2倍の8億人になる」「中国の都市化率はまだ先進国の平均より10ポイント以上低い。また、3億人近い農民工が市民権を得るプロセスを加速させており、住宅、教育、医療などに大きな需要をもたらす」などと好材料を列挙してみせた。 中所得層の拡大も都市化率の向上も、中国政府の「営業トーク」の定番だ。いま中国は海外からの投資を切実に求めている。中国の対内直接投資は2023年7~9月期に統計開始以来初めてマイナスを記録した。李首相としては、成長率の「目標達成」を手がかりに中国経済への期待値を上げたいという思惑があったのだろう。 2023年12月中旬に行われた中央経済工作会議では、2024年の方針の一つとして「経済宣伝、世論の誘導を強化し、『中国経済光明論(中国経済の先行き楽観論)』を高らかに謳う」ことが打ち出された。習主席の側近中の側近として知られる李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。 そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。 GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる』、「李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。 そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。 GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる」、なるほど。
・『習近平主席が異例の会議を招集  李首相が対外的な広告塔としての役割を果たしていたのとまさに同じ日。習主席の姿は北京の中央党校にあった。共産党の幹部候補を育成するための学校で、習主席も国家副主席時代には校長を兼務していた。 「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催はGDP関連報道の陰で目立たなかった。だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ。) ひな壇には習主席のほか、共産党最高指導部である常務委員会メンバーが外遊中の李首相をのぞいて全員集合した。金融のような専門性の高い分野で、これほどの動員がかかることは珍しい。 その開幕式で習主席は「中国の金融には国情に適した特色があるべきで、西側の金融モデルとは根本的に異なる」「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した。尖った言葉づかいから、習主席の危機感の強さが伝わってくる』、「「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催は・・・だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ・・・「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した」、なるほど。
・『1100兆円の隠れ債務が大問題  中国経済の矛盾は金融に集約されている。地方政府は不動産(土地使用権)の売却収入で財政をやりくりし、景気対策のためのインフラ投資の原資にもあててきた。その結果、地方政府の資金調達機関である「融資平台」の債務は増加の一途だ。 中国では地方政府の「隠れ債務」といわれるが、その規模はIMF(国際通貨基金)の推計では2022年の時点で57兆元(約1100兆円)に及ぶ。不動産の値下がりは、こうした構造を根底から揺るがすことになる。 不動産不況のもとで金融リスクが拡大しているなか、習政権は国務院(内閣)から権限を奪って共産党への一極集中体制を築き、危機管理を強化しようとしている。党側には、金融リスクの管理に当たるべき専門家への不信もあるようだ。2023年には金融当局や国有銀行幹部の汚職摘発が続いた。 2023年10月には習主席の肝いりで中央金融工作会議が開催され、「金融強国」の建設に向けて共産党の指導を強化する方針が示された。12月の中央経済工作会議を経て、1月には中国人民銀行(中央銀行)も党の方針にしたがって金融緩和とリスク削減を進めると表明している。金融分野へのグリップの強化ぶりは「戒厳令」とでも形容すべきものだ。) 方向性は決まったはずなのに、わざわざ全国から幹部を集めたのは、なぜなのか。中国の金融に詳しい大阪経済大学の福本智之教授(元日本銀行国際局長)は、その意義付けについて「中央金融工作会議の延長線上だが、攻めと守りで金融を強くして、システミックリスクを起こさせないのだというメッセージを伝えたかったのではないか」と分析する。 「攻め」と「守り」のうち、より優先度が高いのは「守り」だろう。「攻め」の内容は中央金融工作会議で宣言された金融強国の建設だ。究極的には、基軸通貨であるドルを握るアメリカに経済の首根っこを押さえられている現状を打破するのが目的だとみられる。かなり長い時間軸での取り組みだ。 一方「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ』、「中央金融工作会議」で「「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ」、なるほど。
・『金融リスクの処理は待ったなし  習政権は、金融リスクの処理は待ったなしという意識を強めているとみられる。2024年には地方政府の債務のリストラ、中小金融機関の清算と合併などが一層進む可能性がある。 習主席のリーダーシップのもと、共産党に権限を一元化することで問題処理のスピード感は増しそうだ。ただ、「西側の金融モデルとは根本的に異なる」部分を強調しすぎて市場メカニズムを活かせなくなれば、経済効率の低下を招くだろう。 金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる。中長期での経済政策を定める共産党の重要会議「3中全会」は、2023年中に開かれるとみられていたが、まだ開催のメドがたっていない。 外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ』、「金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる・・・外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ」、さて現実に採用されるのは、どちらなのだろう。

第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123890?imp=0
・『深刻な下振れリスク  昨年(2023年)の5.4%から転げ落ちるように減速して、28年には3.4%に落ち込む見通しだ――。 国際通貨制度を安定させて世界経済の成長を促すことが目的の国際機関・国際通貨基金(IMF)は先週金曜日(2月2日)、IMF協定の4条に基づく中国との年次協議に関する報告書を公表し、その中で、中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである。 IMFが描いた中国経済の転落のシナリオと現状をみておきたい。 冒頭でも記したように、本コラムで取り上げる4条協議は、IMF協定の第4条に規定されているルールだ。 経済や金融不安の火種がないか点検するために、通常は年に1回、IMFが、スタッフを加盟各国に派遣して、当該国の経済と金融の情勢をモニタリングすることになっている。その結果を当該国と協議のうえで、採るべき政策を助言するという手続きなのだ。 ただ、協議結果は、スタッフによって4条協議報告書としてまとめられ、IMF理事会に提出される。この理事会で討議され、理事会の公式見解となったものが、当該国の政府に送られるだけでなく、IMFのホームページでもプレスリリースされる仕組みなのだ』、「IMF」は「4条にもとづく年次協議」で、「中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである」、なるほど。
・『地政学的なリスクも  今回の対中・4条協議報告書はなかなか衝撃的だ。興味のある人は一読してほしい。 今回の要点をまとめておくと、IMFは、去年の中国経済のパフォーマンスについて「新型コロナウイルス感染症危機から脱却して回復軌道を辿り、実質GDPは国家目標の5.4%成長をほぼ達成した」と一定の評価を与えた。その回復の原動力は、「主に内需、特に民間消費であり、金融緩和や法人と家計に対する減税、災害に伴う財政の救済策なども後押しした」と説明している。 半面、今年(2024年)以降の先行きについては、「不確実性が高い。既存の不均衡と関連する脆弱性があり、特に注意が必要だ」と強く警鐘を鳴らした。リスク要因としては、「不動産セクターでの予想以上の収縮が、さらなる民間需要の減少や、地方政府の財政のひっ迫」などを招きかねないと強調した。中国の高齢化のほか、「(米中摩擦に伴う)外需の低迷や、(台湾海峡などの)地政学的な緊張の高まりなども大きな下方リスクをもたらす」とも記したのである。 こうした前提に基づき、不動産セクターの債権処理の加速によって、リスクの現実化を回避したうえで、民間の設備投資などの刺激に繋げていくよう迫っている。 ちなみに、4条協議報告書に記された試算によると、中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている』、「中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている」、なるほど。
・『「失われた30年」を彷彿  今回の対中・4条協議報告は、既視感のあるシナリオだ。1989年末の証券・不動産バブル崩壊に伴って膨れ上がった銀行の不良債権の処理に手間取り、「失われた30年」などと呼ばれた長い経済不振を経験してきた日本の経済史を彷彿させるからだ。 とはいえ、あのIMFが、このタイミングで、中国経済が依然として歴史的な窮地を抜け出していないという危機感を露わにしたことも見逃せない。 ここで、視点を、中国の不動産デベロッパーの現状に移してみよう。外電によると、香港の高等法院(高裁)は先月(1月)29日、経営再建中の不動産デベロッパー大手「中国恒大集団」に対し、実質的な法的整理命令に当たる「清算命令」を発出した。 振り返れば、中国恒大の経営破綻が浮き彫りになったのは2021年9月のことだ。経営が自ら「未曽有の危機にある」と破綻寸前に陥っていることを認めたのを手始めに、同年末には広東省が監視チームを会社に送ったり、同じ時期に米ドル建て債の利息を支払えず、格付け会社が相次いで「部分的債務不履行」(デフォルト)に陥ったと認定したりもした。中国政府が経営への全面的な関与を打ち出して破綻そのものは回避してきたものの、膨大な債務の整理は遅々として進まず、2年4カ月ほどの月日は無駄に流れた。その間に、事態は深刻さ増してきたのだ。 香港高等法院に「清算命令」の発出を求めたのも、債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。 今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある。 しかし、恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある』、「債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。 今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある・・・恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある」、なるほど。
・『「不良債権処理に100兆円」  以前にも本コラムで指摘したが、中国にとって厄介なのは、恒大集団が氷山の一角に過ぎないことだ。 不動産デベロッパー各社の負債額は、文字通り、天文学的なレベルに膨らんでいる。いずれも2022年末の数字だが、最も負債の多い恒大が2兆4374億元(約48兆7480億円)を抱えて、債務超過に喘いでいる。以下、主な大手デベロッパーの負債額は、多い順に、碧桂園が1兆4349元(約28兆6980億円)、万科企業が1兆3521元(約27兆0420億円)、緑地控股が1兆2010元(約24兆0200億円)、保利発展控股集団が1兆1483元(約22兆9660億円)といった具合だ。 バブル崩壊後、日本の銀行は2005年3月期までの12年間に、不良債権処理に実に96兆4199億円を費やした。俗に、「不良債権処理に100兆円」と言われた所以だ。 これに対し、中国の不動産デベロッパーは大手6社だけで150兆円を超す負債を抱えている。全体でどれぐらいの負債が不良債権化しているのかは、信頼に足るデータがなお提供されておらず、見当もつかないのが現状だ。 ただ、6社では、恒大集団に続き、上海市政府系の緑地控股集団が昨年7月、碧桂園が昨年10月にそれぞれ、米ドル建て債で債務不履行を引き起こした。 いずれにせよ、中国の不動産デベロッパー大手が揃って大規模な債務整理を余儀なくされていることは間違いない。 あわせて、決して見逃すことができないのは、不動産デベロッパーに巨額の資金のつなぎ融資をしてきた金融セクター、特にシャドウバンキング(影の銀行)の経営への影響だ。シャドウバンキングが、短期金融商品の体裁で富裕層や法人顧客から集めた資金の利払いや償還が滞り、消費や投資の足を引っ張る信用収縮を招いている。 また、不動産デベロッパーの不振が地方政府の財政を圧迫してきた問題も深刻だ。というのは、お国柄だが、土地の私有を認めていない中国では、地方政府にとって土地使用権の売却収入が税収と並ぶ収入の柱になってきたからだ。この財政ひっ迫は、地方のインフラ投資資金を細らせるほか、行政サービスの低下や地方振興策の停滞に繋がっている。 一連の惨状を見れば、IMFが今回の対中・4条協議報告書で迫った不動産デベロッパーセクターに対する「断固たる政策行動」が今後の中国経済の行方を左右するポイントであることは明らかだ。 中国の習近平体制は当初、拡大した貧富の格差を是正すると主張、銀行による不動産デベロッパー向け融資規制を強化するなど中国版バブル潰しに動いた。 ところが、事態が深刻化すると、一転して不動産デベロッパーに対する政府の管理を強め、延命に走り、結果として抜本的な債務整理の断行を阻んできた。 こうした混乱の背景には、断固たる債務整理が短期的に大きく景気の足を引っ張る懸念があるうえ、居住目的で住宅用不動産を購入した消費者が物件の引き渡しを受けられない事態が頻発すれば、共産党の統治に対する国民の反発が高まりかねないとの判断があるという。 しかし、IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している』、「IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している」、確かに舵取りが難しい「岐路」に「直面」しているようだ。
タグ:東洋経済オンライン (その19)(「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?、中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実、IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」) 中国経済 真壁昭夫氏による「「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?」 「中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。 バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ」、なるほど。 「ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた・・・中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした」、なるほど。 「国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている」、なるほど。 「中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう・・・中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる」、大変厳しい事態だ。 東洋経済オンライン「中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実」 「最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった」、結果はどうだったのだろう。 「李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。 そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。 GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経 済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる」、なるほど。 「「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催は・・・だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ・・・「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した」、なるほど。 「中央金融工作会議」で「「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ」、なるほど。 ・『金融リスクの処理は待ったなし  習政権は、金融リスクの処理は待ったなしという意識を強めているとみられる。2024年には地方政府の債務のリストラ、中小金融機関の清算と合併などが一層進む可能性がある。 習主席のリーダーシップのもと、共産党に権限を一元化することで問題処理のスピード感は増しそうだ。ただ、「西側の金融モデルとは根本的に異なる」部分を強調しすぎて市場メカニズムを活かせなくなれば、経済効率の低下を招くだろう。 金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる。中長期での経済政策を定める共産党の重要会議「3中全会」は、2023年中に開かれるとみられていたが、まだ開催のメドがたっていない。 外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ』、「金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる・・・外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい 未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ」、さて現実に採用されるのは、どちらなのだろう。 現代ビジネス 町田 徹氏による「IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」」 「IMF」は「4条にもとづく年次協議」で、「中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである」、なるほど。 「中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている」、なるほど。 「債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。 今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。 中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある・・・恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある」、なるほど。 「IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している」、確かに舵取りが難しい「岐路」に「直面」しているようだ。
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株式・為替相場(その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」) [金融]

株式・為替相場については、昨年8月31日に取上げた。今日は、(その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」)である。

先ずは、昨年8月31日付け東洋経済オンラインが掲載した みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/698309
・『早いもので夏が終わろうとしている。 年初に支配的だったドル円相場のシナリオは、「早ければ3月、遅くとも5月にFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利上げは停止。夏を境に利下げ機運が高まり、これに伴って円高・ドル安が進む」といったものだった。 現実はまだ利上げも円安も続いており、円安に至っては加速している。すぐに反転したものの、8月29日夜には年初来高値である1ドル147円を突破した。 なお、「早ければ3月、遅くとも5月にFRBの利上げは停止」という見通しは筆者も同様であったが、同時に「利上げ停止の直後に利下げが議論されるわけではない」といった主張を続け、米金利が円高のトリガーをひくという想定には否定的な立場を示してきた』、確かに円安は止まるところを知らずに進行している。
・『「FRB頼み」で円相場を見通す危うさ  現状の為替市場を見渡すと、いまだに「米金利低下と共に円高になるというシナリオが後ずれしているだけ」という論調は多く、「FRB頼み」の風潮は強い。だが、そのようなシナリオメークはやはり同意しかねる。 確かに円安のピークアウト時期を見極めるにあたって、米金利と円相場の関係性に着目することは有用だと思う。歴史的にもそれは奏功してきた。 しかし、そうした米金利動向に依存した円相場見通しでは「なぜここまで大幅な円安が進んでいるのか」という根本的な問いに答えられないように思う。) 主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない。 アルゼンチンペソは図表が崩れるので掲載を控えた G7に所属する国・地域の通貨(英ポンド、ユーロ、カナダドル)はほぼ対ドルで横ばいか上昇しているので、日本という国の属性(先進国)を考えれば明らかに異質な立ち位置であることがわかる』、「主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない」、これはショッキングな事実だ。
・『1ドル=152円の昨秋より安い  しかも、この構図は2022年から1年半続いている。 日本では円安の理由として「アメリカの利上げが長引いている」という事実が持ち出されやすいが、そもそも2023年はドル高ではないのでその説明は不十分である(詳しくは2023年8月17日配信のコラム『「どうせ円高に戻るはず」という時代遅れの発想』をご参照)。 むしろ、ここまで「円独歩安」のような状況が続いている以上、日本側の要因に関心を向けるのが普通の分析姿勢ではないのか。 ちなみに主要貿易相手国に対する円相場(いわゆる実効相場)の変化率を見ると、名目・実質の双方で年初来はもちろん、1ドル152円に迫った昨年10月と比較しても下落している。 アメリカを含めた主要貿易相手国通貨に対して継続的かつ広範囲に売りが続いているというのが円相場の現実である。アメリカの情勢は言うまでもなく重要だが、日本の情勢を理解する必要性も確実に高まっている。) なお、あくまで杞憂に過ぎないものだが、一応紹介しておきたい論点がある。 年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格である。それは恐らく為替に詳しくない読者でも知っているのではないか』、「年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格、、不名誉この上ないことだ。
・『日本のインフレは米欧に近づいてきた  日本がその仲間に入っているとは思わないが、現時点で消費者物価指数(CPI)の上昇率はアメリカを上回り(ユーロ圏にも肉薄し)、それでもマイナス金利を堅持する方針を示していることが、インフレ抑制という観点から不安を抱かせ、円売りにつながっているという説は一応筋が通っている。 特に日本の事情がよくわからない海外市場参加者からすれば腹落ちしやすいテーマだろう。 ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない。とすれば、「日本はインフレを制御できるのか」が海外市場を中心としてにわかにテーマ視されるような展開には構えておきたい。 もちろん、今はまだ話半分以下でよく、リスクシナリオとしてもマイナーな部類だが、頭の片隅には置いておきたい論点である。)日本側の要因を主体として先行きを分析した場合、行き着くところは日本だけマイナス金利であることや、需給環境において外貨流出が大きくなっているという従前から言われている事実である。 金利と需給。いずれの理由を重く見るかという点は論者により異なるものの、FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというのが筆者の認識である』、「ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない・・・FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというのが筆者の認識である」、なるほど。
・『「日米金利差」で語る限界  言い方を変えると「アメリカ要因だけでかつての円高を取り戻すのは難しい」という話である。 この点、「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ。 FRBの政策運営の方向感(タカなのかハトなのか)といった論点、いわゆる日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である。 日米金利差はシナリオの方向感を、需給環境は円相場の地力を規定する論点と考え、展望を作っていきたいと思う』、「「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ・・・日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である」、なるほど。

次に、本年1月20日付け東洋経済オンラインが掲載した 慶應義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729097
・『日本株が力強い上昇を続けている。 2024年の大発会(4日)は、大地震、航空機事故と不幸な出来事の連続で、寄り付きから大幅下落で始まった。だが、代表的な株価指標である日経平均株価はすぐさまマイナス幅を急速に縮小して終えた。 この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら 2日目の5日には早くも昨年末を上回り、この日を含めて15日まで6営業日連続で上昇した。しかも1日で500円、600円以上も上昇する日も多く、あっという間に、平成バブル崩壊以来約33年ぶりの高値を連日のように更新し、ついに3万6000円台を付けた。 米国株が下落しようが何だろうが、上がり続けた。これはあまり見ない光景である。足元では一息ついたように見えるが、多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している』、「多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している」、なるほど。
・『株価は世界的に常に上がってきた  なぜ、株価は上がるのだろうか?巷では、「なぜ今株価がこんなに上がっているのか」と、NHKでさえ扱うほどで、素朴な驚きとともに、いろいろな解説ニュースが氾濫している。 「新NISA(少額投資非課税制度)が始まったから」、とか何とかいろいろな解説がなされているが、もちろん、私は、そんなことに興味はない。今回のテーマは、日本株が今年上がるかどうかという話ではなく、「なぜ株はほとんどいつも上がっているのか」「そもそも株というものは、なぜ値上がりするのか?」という話である。 実際、株価は世界的には常に上がってきた。確かに日本にいると、1989年12月29日の3万8915円というバブル期最高値から下がり続け、ようやく最高値をうかがうところまで戻ってきた」ということになる。) だが、アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している』、「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱に・・・ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている・・・1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない」、なるほど。
・『株価はおおむね「9割の時間帯」で上昇している  その理由は何か。 「どうせオバタのことだ。要は『それはバブルだから』ということだろ」と思われるだろうが、今回の小幡は違う。バブルであることもそうなのだが、もう少し細かい構造と投資家心理の話をしよう。 まず、第1に、株価というものは、普通の時は右上がりを続け、ある瞬間、暴落が起きて、一気に調整する。そして、そこから上昇トレンドを再開する。この繰り返しなのだ。 おおむね、9割の期間、小さい上げ下げを繰り返しながら(典型的には3四半期、9カ月上がって、1回四半期で下げて、また3四半期上昇する)、上昇を続け、突然暴落し、1割の期間で調整する。「10年に1度、金融危機が来る」というのはそういうことなのである(ラリー・サマーズ元財務長官は、2008年のリーマンショックの時に『100年に1度の危機は10年に1度来る』という名言を残した)。だから、基本、多くの場合、株価は上がっている。 それで、株式投資が好きな個人は、いつも上がるから、上昇トレンドに乗ろうとする。株式投資をしない人々(だから、普段は株価水準など気にしない)は、暴落のニュースだけをテレビなどで見て「ああ、株って怖いな」と思って、株式投資を避ける。 個人向けのファンドマネージャーも、基本は買い続ける。なぜなら、買いトレンドが起きているときしか、つまり、上がり続けているときしか、個人は投資を増やそうとはしないからだ。 「これから株を始めてみよう」と思って投資信託を買う人は、そういうときしか、重い腰を上げないし、避けていたところに、恐る恐る近寄ってこないものだからだ。そして毎日「日経平均がいくら上がったか」を急に気にするようになる。 そうすると、「あ、今日は日経上がった、自分のファンドも値上がりしているだろう」、と思って、ファンドの基準価格や自分の資産の時価を見ると(ネット口座になって、本当にリアルタイムの自己資産がわかるようになり、こういうことは便利になった)、「あれ、あんまり上がってない。なんだよ!」などと、怒りを証券会社やファンドマネージャーにぶつけたくなる人も多い。) 証券会社からは「リスク分散や、リスク回避のためにディフェンシブな銘柄が多かったり、株式以外の資産も入っていたりするのです」などと説明されるかもしれない。顧客にとってみれば「そんなのよりも、ちゃんと上がる商品を売ってくれよ!」となる。 だから、個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである』、「個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである」、なるほど。
・『「プロ」運用者の手法も、個人と大差なし  プロの運用者である機関投資家のファンドマネージャーも、似たり寄ったりである。彼らもサラリーマンだったり、ランキングで評価されて、投資家に選ばれたりする存在である。 したがって、絶対的なリターンよりも相対評価で生きている。基本は、日経平均やTOPIX(東証株価指数)などのインデックスに対して、どれだけ勝ったかで評価される。 しかし、現実的にもっと強力な比較基準は「ライバルに比べてどのくらいパフォーマンスがいいか」ということになる。なんとしても隣のファンドマネージャーに勝たないといけないのである。 そうでないと、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)などから資金ももらえなくなるかもしれないし、企業年金の資金も入らない。だから、上がるときに上がる運用になってしまう。 実際は、インデックスにちょっと色をつけて個性を出すのだが、その争いになったときに、ライバルよりも「上がるときにより上がるポートフォリオ」を組む。そして、ビリはまずい。資金を引き揚げられてしまい、クビになるからだ。だから、ある程度はインデックスについていく。 つまり、ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする。コカ・コーラやP&Gはその典型例である。 インデックスの側としては、このような企業が成長性の取り込みに失敗して投資家にとっても魅力が下がれば、似た業界だが新しく成長性が高く見える企業をインデックスに取り入れ、指標銘柄を交代させる。 入れ替えは実際にはもっと客観的な基準に基づいて行われてはいるが、結果的に起きているのはそういうことだ。そして、この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる』、「ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする・・・この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。
・『日経平均は2000年に銘柄を入れ替えすぎたことも  少し古くなるが、代表的なケースは2000年4月に起こった、「日経平均30銘柄同時入れ替え事件」である。このときは日経平均が実質2000円以上も下落した崩壊要因となったと、今でも言われている。つまり、当時は、それまでは大々的に意図的な入れ替えを行っていなかった日経平均が「時代に即して」という理屈で、突然30銘柄の入れ替えとなった。 それはそれでいいのだが、日本では、この規模の入れ替えは前代未聞であったから、10日間の猶予が与えられた。つまり、発表が同年の4月14日金曜日の引け後で、実際の入れ替え実施が4月24日月曜日の寄り付きからということにしたので、2回週末の猶予があり、5営業日はまるまる取引のチャンスができた。 その結果、どうなったか。この5日間に外される銘柄は平均で20%以上下がり、新たに組み入れられる銘柄は平均でも20%近くも上がった。「入れ替えバブル」である。つまり、20%の下げの影響はインデックスに反映され、強烈な上げの影響はインデックスに入る前だった。 さらに影響が大きかったのは、組み入れ後、20%上がってから入った銘柄は暴落した。そして、日経平均を計算する際の特殊なウェイト付け方法によって、組み入れ銘柄にいわゆる値ガサ株(1株の価格の数字が大きい銘柄。1株100円の銘柄と1株1万円の銘柄ではウェイト付けに100倍の違いがある。これがファーストリテイリングの取引と日経平均の取引でアルゴリズム的に仕掛けるトレーダーがいる理由である)が多かったから、暴落の影響は大きかった。) だが、アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している』、「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している」、なるほど。
・『株価はおおむね「9割の時間帯」で上昇している  その理由は何か。 「どうせオバタのことだ。要は『それはバブルだから』ということだろ」と思われるだろうが、今回の小幡は違う。バブルであることもそうなのだが、もう少し細かい構造と投資家心理の話をしよう。 まず、第1に、株価というものは、普通の時は右上がりを続け、ある瞬間、暴落が起きて、一気に調整する。そして、そこから上昇トレンドを再開する。この繰り返しなのだ。 おおむね、9割の期間、小さい上げ下げを繰り返しながら(典型的には3四半期、9カ月上がって、1回四半期で下げて、また3四半期上昇する)、上昇を続け、突然暴落し、1割の期間で調整する。「10年に1度、金融危機が来る」というのはそういうことなのである(ラリー・サマーズ元財務長官は、2008年のリーマンショックの時に『100年に1度の危機は10年に1度来る』という名言を残した)。だから、基本、多くの場合、株価は上がっている。 それで、株式投資が好きな個人は、いつも上がるから、上昇トレンドに乗ろうとする。株式投資をしない人々(だから、普段は株価水準など気にしない)は、暴落のニュースだけをテレビなどで見て「ああ、株って怖いな」と思って、株式投資を避ける。 個人向けのファンドマネージャーも、基本は買い続ける。なぜなら、買いトレンドが起きているときしか、つまり、上がり続けているときしか、個人は投資を増やそうとはしないからだ。 「これから株を始めてみよう」と思って投資信託を買う人は、そういうときしか、重い腰を上げないし、避けていたところに、恐る恐る近寄ってこないものだからだ。そして毎日「日経平均がいくら上がったか」を急に気にするようになる。 そうすると、「あ、今日は日経上がった、自分のファンドも値上がりしているだろう」、と思って、ファンドの基準価格や自分の資産の時価を見ると(ネット口座になって、本当にリアルタイムの自己資産がわかるようになり、こういうことは便利になった)、「あれ、あんまり上がってない。なんだよ!」などと、怒りを証券会社やファンドマネージャーにぶつけたくなる人も多い。)  第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする。コカ・コーラやP&Gはその典型例である。 インデックスの側としては、このような企業が成長性の取り込みに失敗して投資家にとっても魅力が下がれば、似た業界だが新しく成長性が高く見える企業をインデックスに取り入れ、指標銘柄を交代させる。 入れ替えは実際にはもっと客観的な基準に基づいて行われてはいるが、結果的に起きているのはそういうことだ。そして、この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる』、「入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。
・『日経平均は2000年に銘柄を入れ替えすぎたことも  少し古くなるが、代表的なケースは2000年4月に起こった、「日経平均30銘柄同時入れ替え事件」である。このときは日経平均が実質2000円以上も下落した崩壊要因となったと、今でも言われている。つまり、当時は、それまでは大々的に意図的な入れ替えを行っていなかった日経平均が「時代に即して」という理屈で、突然30銘柄の入れ替えとなった。 それはそれでいいのだが、日本では、この規模の入れ替えは前代未聞であったから、10日間の猶予が与えられた。つまり、発表が同年の4月14日金曜日の引け後で、実際の入れ替え実施が4月24日月曜日の寄り付きからということにしたので、2回週末の猶予があり、5営業日はまるまる取引のチャンスができた。 その結果、どうなったか。この5日間に外される銘柄は平均で20%以上下がり、新たに組み入れられる銘柄は平均でも20%近くも上がった。「入れ替えバブル」である。つまり、20%の下げの影響はインデックスに反映され、強烈な上げの影響はインデックスに入る前だった。 さらに影響が大きかったのは、組み入れ後、20%上がってから入った銘柄は暴落した。そして、日経平均を計算する際の特殊なウェイト付け方法によって、組み入れ銘柄にいわゆる値ガサ株(1株の価格の数字が大きい銘柄。1株100円の銘柄と1株1万円の銘柄ではウェイト付けに100倍の違いがある。これがファーストリテイリングの取引と日経平均の取引でアルゴリズム的に仕掛けるトレーダーがいる理由である)が多かったから、暴落の影響は大きかった。) 同時に、抜けた銘柄はウェイトが小さい銘柄が多かったことで、入れ替えがなかった残りの195銘柄は、入れ替え前と入れ替え後でウェイトが大幅に低下することとなった。実際、それに連動して、入れ替え準備の5日間で、これら195銘柄も平均で8%程度下落した。この入れ替え事件によって、日経平均は全体で見ても10%前後、損したのである。 一方、入れ替えをサプライズでうまくやれば、上昇トレンドを強化することができる。あるいは自然に上昇が起こる。だから、銘柄を入れ替えるインデックスの方が上がりやすい。だから面白い。これも日経平均からTOPIXへの先物トレードの移行が起きない1つの理由である。前者の方が値動きが大きく派手なのだ。 さて、株価というものは上がるものだ、という現象には、さらに細かい理由がいくつかある。まず、インフレである。モノがインフレであれば、資産もインフレにならなければ辻褄が合わない。企業の売り上げも、利益も、インフレ分膨らむから、名目の株価は上がるものである。 次に、金利がある。普通の債券(アメリカの国債など)に金利が付く、ということは、株式投資をすると、その金利プラスリスクプレミアム分は、株価が上がらないと、株式投資をすることに辻褄が合わない。だから、金利がプラスで付く以上、平均的には、株価は上がらないといけないし、リスクプレミアム分、金利よりも上昇率は高くないといけない。だから、上昇トレンドは必須である。 さらに、1980年以降、先進国はおおむね金利は低下傾向にあった。インフレが収まったからであるが、予期せず金利が低下するということは、ご存じのように、株価は上昇することになる。 一方、いったん金利が下がり切ってしまうと、後は金利は上がるしかないから、株価は下がることになるし、同時に、前述の、債券を持っていると得られる利子に見合った上昇、あるいは配当がないと株式投資をしないから、株価の上昇率は金利と見合いだ、ということになると、金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている』、「金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている」、なるほど。
・『株はそもそも上がることが構造的に決まっている  このように見てくると、株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースなどに予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか』、「個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか」、「10年に1度の暴落」は困るが、さてどうなるのだろう。

第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリスト・千葉商科大学教授の磯山 友幸氏による「岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123896
・『「金建て」では内閣発足以来2割下落:実は株価は下落している  「30年ぶりの水準となった賃上げ、設備投資、株価。日本経済が新たなステージに移行する明るい兆しが随所に出てきています」 岸田文雄首相は1月30日に国会で行った施政方針演説で、こう日本経済の状況を語った。確かに日経平均株価はバブル後の最高値を更新して3万6000円を突破。年初は3万3000円だったので1月で1割近くも上がっている。岸田内閣で唯一評価できるのが株高だ、といったこ声も出ている。 だが、それは「幻想」に過ぎず、実際の株価は岸田内閣発足時より安いと言ったら、読者各位は訝しく思われるに違いない。 30年ぶりだと岸田首相が胸を張る「賃上げ」にしても、表面上の賃金は上がっているが、物価上昇には追いつかず、「実質賃金」はマイナスが続いている。それと同様、見た目の株価は大きく上昇しているが、見方によっては実態価値は上がっていない、ということが起きている。これは物価との関係ではなく、株価を示している「円」という通貨の価値の問題だ。今の株価の急激な上昇は、円の価値が劣化しているために他ならない。 筆者が以前から使っている指標に、日経平均株価を「円建て」ではなく、貴金属である「金(ゴールド)」の小売価格で割った、いわば「金建て」の指数がある。証券界ではしばしば「ドル建て」の日経平均株価などが指標として使われるが、ドルという貨幣自体の価値も変動する。そこで人類の歴史と共に価値保存に使われてきた「金」をベースに日経平均株価を見ているのだ。 例えば2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ。2021年10月4日の日経平均株価は2万8444円。金の国内小売価格は1グラム6981円だった。この1月末で日経平均は3万6286円になったが、金は1グラム1万674円まで上昇している。ドル建ての金価格は落ち着いているものの、円建てでは高値水準にある。つまり「円」が劣化しているのだ』、「2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ」、面白い指摘だが、投資家の多くは「金建て」ではなく、あくまで「円建て」で判断しているので、「金建て」はあくまで参考指標に過ぎないような気もするが・・・。
・『要するに円の劣化  確かに円安は進んでいるが、2022年秋のように1ドル=150円を超えていた頃に比べれば円高ではないか、という指摘もあるだろう。もうひとつの指標を見れば、その謎が解ける。「実質実効為替レート」だ。「円の実力」とも言われるもので、2020年を100とした指数が、毎月、日本銀行によって公表されている。 この実質実効為替レートは、実際の円ドル相場が150円を超える円安を付けた2022年10月の指数が73.70だった。ところが、2023年11月にはこれを下回って71.39と、過去最低を更新しているのだ。「見た目」の為替相場に比べて円の劣化は進んでいるということができる。 ちなみにこの指数の計算が始まった1970年1月は2020年を100として75.02なので、すでに円の実力は1970年を下回っているということになる。当時の「見た目」の為替レートは1ドル=360円の固定相場時代だ。その後、最も円の「実力」が強くなったのは1995年4月。2020年を100とした指数で193.97を付けた。円ドル為替レートが1ドル=79.75円を付けた時だ。猛烈に円が強くなり、海外旅行ブームが起きていた。その時の指数に比べて現在は3分の1近い。円の実質的な強さも3分の1になったということだ。 今、アジアに海外旅行をしても物価水準は日本と変わらないか、高い。米国でラーメンと餃子、ビールでチップを入れると1万円近くかかった、という話も聞くようになった。円の弱さを痛感している日本人は多い。 米国は経済成長しているので1995年の1ドルの価値は今と比べ物にならないくらい高かった。一方で、日本国内での円の購買力はさほど変わらない。なので、1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ』、「1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ」、その通りだ。
・『今の3万8915円は同じ価値ではない  それが、猛烈に進行しているのが岸田内閣ということになる。円安を放置し、物価上昇を起こさせる政策を取れば、当然、円の実態価値は下がる。長年、デフレに親しんだ日本国民からすれば、円建ての価格が上がって、価値が上がっていると思っているが、これは「見た目」の賃金が上がっても「実質賃金」が下がっているのと同じことだ。 これは明らかに過去のバブル時代とは違う。都心のマンション発売価格が1億円を超えたとしてニュースになっているが、これも「円」の劣化による「円建て」価格の上昇と見ることも可能だ。中国人富裕層など外国人が東京のマンションを買うようになって、日本の不動産市場は「円」の相場が実態を示さなくなったのではないか。バブル当時は賃金も大幅に上がり、資産を持っている人たちも「バブル」に浮かれて高級品消費に走った。今、そうしたムードは少なくとも庶民の間にはない。 2008年にベトナムに取材に行った際、通貨ドンの価値が日々劣化するのに対応して庶民が「金」に変える姿を見た。当時のマンションなど不動産価格はドンではなく金建ての「カイ」という単位で価格表示されていた。通貨が劣化して信用を失うと究極はそういう事態に陥る。 いやいや、日本株が上昇しているのは、企業収益が大きく改善しているからだ、という反論もあるだろう。確かに、売り上げも利益も大きく増えている。だが、注意しなければいけないのは、これらの数字も「円建て」であることだ。かつての輸出中心の時代とは異なり、連結決算の海外利益は、円に転換されてキャッシュが国内に戻ってくるわけではない。海外の利益を円に換算した際の「見た目」が実態以上に良くなっているという側面もある。 だが、今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ』、「今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ」、その通りだ。
タグ:株式・為替相場 (その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」) 東洋経済オンライン 唐鎌 大輔氏による「「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン」 、確かに円安は止まるところを知らずに進行している。 「主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない」、これはショッキングな事実だ。 「年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格、、不名誉この上ないことだ。 「ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない・・・FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというの が筆者の認識である」、なるほど。 「「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ・・・日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背 景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である」、なるほど。 小幡 績氏による「なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない」 「多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している」、なるほど。 「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱に・・・ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている・・・1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない」、なるほど。 「個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである」、なるほど。 「ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こ うしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする・・・この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。 「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している」、なるほど。 「入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。 「金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。 実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている」、なるほど。 「株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことな なのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか』、「個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか」、さてどうなるのだろう。 現代ビジネス 磯山 友幸氏による「岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」」 「2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は 83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ」、面白い指摘だが、投資家の多くは「金建て」ではなく、あくまで「円建て」で判断しているので、「金建て」はあくまで参考指標に過ぎないような気もするが・・・。 「1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ」、その通りだ。 「今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ」、その通りだ。
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