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日韓関係(その11)(韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?、輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下 韓国への企業誘致進む、日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ) [外交]

昨日の韓国(文在寅大統領)に続いて、日韓関係(その11)(韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?、輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下 韓国への企業誘致進む、日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ)を取上げよう。なお、前回は7月11日に取上げた。

先ずは、7月15日付けNewsweek日本版が掲載した広告プランナー兼コピーライターの佐々木和義氏による「韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/1-159_1.php
・『<日本政府が韓国向け輸出規制を実施してから1年余り、文在寅大統領は、官民の協力で核心素材を国産化し危機を克服して、「日本とは違う道歩む」と強調した......> 日本政府が韓国向け輸出規制を実施してから1年余りが経過し、2020年7月9日、文在寅大統領は訪問した京畿道利川のSKハイニックスで、日本政府の輸出規制のなか、官民の協力で核心素材を国産化したとし、また、1件の生産支障もなく危機を克服して、「日本とは違う道歩む」と強調した』、「日本政府の輸出規制」は裏目に出ているようだ。
・『半導体関連工場を抱える京畿道は、「脱日本技術独立」を宣言  朝鮮日報は、半導体の重要素材である気体フッ化水素を生産する日本の昭和電工の1年間の営業利益が59%減少した一方、韓国のラムテクノロジーは営業利益が74%増加したなどとして、輸出規制による被害は日本企業の方が大きいと報じた。 同紙はまた韓国の半導体企業が、素材の国産化や調達先の多角化に取り組み、大きな打撃もなく持ちこたえることができたと評価するが、業界は衝撃を最小化できたに過ぎないとみる。 2019年7月1日、日本政府が韓国向け輸出規制を発表すると、韓国の半導体とディスプレイ産業が大きな影響を受けるという見方が広がった。域内に多くの半導体関連工場を抱える京畿道は、「脱日本技術独立」を宣言して道内企業の研究開発支援に着手した。300億ウォン以上の技術開発費を支援し、19年10月からは1500億ウォンの特例保証を行って200社以上の設備や運転資金を支援した。今後5年間でさらに2000億ウォンを投じる予定だ』、「脱日本技術独立」に向け「技術開発費」や「設備や運転資金」を「支援」するとは中期的にも日本へ影響を与えるだろう。
・『日本製フッ化水素は12.5%まで低下  日本政府が最初に輸出を規制したフッ化水素、フォトレジスト(感光液)、フッ化ポリイミドは半導体とディスプレイの核心素材で、日本依存が90%に達していた。また、日本政府が韓国をグループA(旧ホワイト国)から除外して審査が強化された品目のうち、日本の輸出額が100万ドルを超え、かつ韓国の日本依存度が70%以上の品目の56.7%を半導体・ディスプレイ関連が占めている。 半導体メーカーのサムスン電子やSKハイニックス、ディスプレイメーカーのLGディスプレイやサムスンディスプレイが打撃を受けるとみられていたが、1年を振り返ってみて、いずれも大きな支障はなかった。 韓国貿易協会によると、19年1月から4月に輸入されたフッ化水素は日本製が44.7%を占めていたが、20年は12.5%まで低下した。ディスプレイメーカーは、液体フッ化水素を100%韓国製に切り替え、半導体は韓国製や中国から輸入して精製したフッ化水素の使用割合を増やし、日本製は重要な工程のみの使用に切り替えた。また、気体フッ化水素の一部をアメリカ製に替える多角化で対応した。 一方、日本依存が高まった品目も多い。半導体材料のシリコンウエハーは日本製の割合が前年の34.6%から40.7%に上昇した。炭素部品も規制前47.8%だった日本依存が56.7%に上昇するなど、韓国企業が日本から輸入している上位100品目のうち、34品目で日本依存の割合が上昇していた』、「1年を振り返ってみて、いずれも大きな支障はなかった」、「輸出規制」を打ち出した経産省にとっては、拍子抜けだろう。
・『実質的な輸出規制につながらないケースが多かった  経済団体の全国経済人連合会(全経連)は、調査会社に依頼して、金融業を除く売上高上位1000社のうち、日本から素材や部品、装備等を輸入している韓国企業を対象に、輸出規制強化後1年間の変化に関するアンケートを実施した。 23.5%が日本からの輸入で苦労したと答えたが、45.6%が苦労はなかったと回答した。また、68.5%が日本からの輸入を継続し、31.5%は国産など供給元の変更を試みたと回答したが、輸入額ベースでの供給元の変更は3.35%に過ぎなかった。 全経連は日本の措置が実質的な輸出規制につながらないケースが多かったと分析し、韓国貿易協会は輸出規制の実効力が小さいと見る日本政府の追加規制を危惧する。 韓国には日本企業とサムスンやLG等が合弁で設立した工場が多い。半導体素材企業の東京応化工業(TOK)は、サムスン物産と合弁で仁川に設立した工場で、サムスン電子向けフォトレジスト(感光液)を少量生産していたが、7月から本格生産を開始した。サムスン電子が調達先を拡大し、規制前0.4%だったベルギー製の割合が5.8%まで増加した。さらに米デュポン社が韓国工場を建設すると発表したため韓国工場の生産量を増やすことにした。 外国企業の出資割合が50%を超える現地法人の工場は税制優遇を受けられる上、安定供給が容易になる。ま た日本企業は核心技術を渡すことなく、売上げを維持できる。日本企業が韓国に設立した合弁工場は、日本から輸出する原料が規制を受けるが、生産自体は規制を受けないため供給への支障は小さく、数字上は韓国製にカウントされることになる』、「輸入額ベースでの供給元の変更は3.35%に過ぎなかった」、「日本の措置が実質的な輸出規制につながらないケースが多かった」、なるほど。

次に、7月30日付け東洋経済オンライン「輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下、韓国への企業誘致進む」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/365754
・『日本政府が韓国に対し、輸出管理で優遇措置を与えていた「ホワイト国」(グループA)指定から除外し、さらに半導体関連部材を包括輸出許可から個別の許可に切り替えてから1年が経った。これに対し韓国は強く反発し、国民の間では強力な「日本製品不買運動」も起きた。日本政府はこのような措置をとった理由として、1)輸出管理制度を運営するうえで、前提となる日韓間の信頼が喪失したこと、2)韓国の輸出管理で不適切な事案が発生したことを挙げたが、韓国側は元徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決をはじめとする徴用工問題への報復と捉えている。この1年間、日韓の貿易はどう変わったのか。韓国経済に詳しい日本総合研究所調査部の向山英彦・上席主任研究員にその変化の軌跡を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは向山氏の回答)』、専門家の見解とは貴重だ。
・『韓国の「脱日本」の動きがはっきりと  Q:2019年の輸出管理措置の変更で、日韓では経済問題が外交問題となり、また国民の間で感情的な対立も生じてしまいました。その中で、日本では「輸出管理強化は韓国企業にダメージを与える」とする見方が多く、これに対抗して韓国政府は「国産化を進めて脱日本を図る」と主張してきました。 A:日本では韓国企業がダメージを受けるという見方が多くあった。輸出管理強化後の動きを、まずはデータで確認してみたい。日本側が包括許可から個別許可に切り替えた品目のうち、フォトレジストとフッ化水素の韓国の対日輸入額を見てみる。 フォトレジストの中で個別許可の対象になったのは微細化に必要なEUV(極端紫外線)向けだが、統計上は区別されない。19年前半のフォトレジストの輸入額は3000万ドル前後で推移していたが、7月の輸出管理強化の直前に駆け込み需要が発生して5000万ドルまで増加した。その後、いったんは2000万ドル超にまで減少したが、同年8月に最初の輸出許可が下り、12月に日韓の特定企業同士の取引に限り、最長3年間の許可を一括して得られるようになったため、現在では措置前の3000万ドル水準に戻ってきている。 Q:フォトレジストは日本企業が世界市場の約9割を占めている品目ですね。 A:そのとおりだ。フォトレジストに関しては、日本企業への依存が依然として続いていると言えるが、注意したいのは「脱日本」の動きが見られることだ。 1つは、サムスン電子が、日本企業であるJSRとベルギー企業との合弁会社からの調達を増やしたことが挙げられる。もう1つは、アメリカからの輸入先だったデュポンが2020年1月、韓国でEUV向けフォトレジストを生産する計画を発表した点が注目される。 顧客の近くで生産することでシェアを増やす狙いがあると思う。こうした状況下、シェアを奪われないために、東京応化工業が最近、仁川工場でEUV向けフォトレジストの量産を開始した』、「フォトレジスト」は「措置前の3000万ドル水準に戻ってきている」とはいえ、「サムスン電子が、JSRとベルギー企業との合弁会社からの調達を増やした」、「」、など今後は競合も激化しそうだ。
・『戻らないフッ化水素の輸入額、韓国の国産化が進む  Q:フッ化水素も、日本が世界で高シェアを占している品目です。またその品質や純度については、日本側から「韓国は絶対に超高純度品をつくれない」という声も聞かれました。 A:韓国にとってフッ化水素の輸入先は、中国が1位、日本が2位だ。半導体製造には500以上もの工程があり、その中でフッ化水素を使用する工程は10%程度を占める。工程ごとに使用する純度が違っており、超高純度のものの多くは日本から輸入していた。日本ではステラケミファと森田化学工業が主要メーカーだ。 データを見てみたい。韓国の輸入額は、輸出管理強化前は月600万~750万ドル規模で推移していたが、規制が本格化した8月以降は100万ドルを切り、現在でも100万ドル前後で推移している。日本企業には輸出許可が19年末に下りたにもかかわらず、フォトレジストとは対照的に、元の水準には到底及ばないレベルだ。 Q:韓国が言う「国産化」の影響でしょうか。 A:その影響がある。輸出管理強化後、韓国は国産化と輸入先の多角化を急ピッチで進め、昨年秋口あたりから国産品への代替が始まった。ディスプレイでは半導体ほど高純度のものを必要としないため、まずLGディスプレイが国産のフッ化水素に切り替えた。サムスン電子も19年9月、半導体製造工程の一部に国産品を投入し始めたと発表した。日本からの調達が難しくなったため、国内企業と協力して国産化に取り組んだ。 従来、日本から輸入していた高純度の液体フッ化水素を用いてエッチング剤を精製していたソルブレインなどの企業が、中国や台湾から液体フッ化水素を輸入し、生産に乗り出した。確かに、純度は日本製よりは低いと思われるが、半導体の生産に支障が出ていないことを考えれば、かなり高純度のものになっていると言える』、「フッ化水素」の「韓国の輸入額は・・・フォトレジストとは対照的に、元の水準には到底及ばないレベルだ」、もはや「高純度」も切り札ではなくなったようだ。
・『官民一体の取り組みで予想以上の成果  Q:韓国政府は、国産化支援や輸入先多角化、海外企業の誘致などの策を相次いで打ち出しました。その効果はどうでしょうか。 A:日本で予想していた以上の成果を上げていると思う。注目したいのは、半導体産業の強化に向けて、官民一体の取り組み体制ができつつあることだ。 市況の波が激しいとはいえ、半導体が将来の成長産業の1つであることは間違いない。中国の急速なキャッチアップに対抗するため、サムスン電子は近年、微細化水準の高いメモリ開発を進める一方、プロセッサやイメージセンサー、システム半導体などの非メモリ事業に力を入れ始めた。また今年6月には、ソウルから南へ1時間ほどの場所にある平澤(ピョンテク)工場にNAND型フラッシュメモリの生産ラインを建設すると発表した。アメリカの経済制裁で中国企業の生産が思うように進まない間に、圧倒的に優位な立場に立つ狙いがあると考えられる。 韓国政府も「システム半導体ビジョンと戦略」を打ち出し、自動車やバイオ・医療、IoTなどの分野で需要創出を図るほか、ファブレス企業の育成や人材育成、研究開発などを支援する計画だ。半導体産業の強化に向けて官民一体の体制が整備されつつある。 Q:韓国の経済構造は財閥をはじめ大企業中心です。日本のような中小企業への裾野拡大が半導体産業で進むのでしょうか。 A:その可能性はある。大企業主導の経済は韓国経済を確かに成長させたが、その弊害も多く生まれた。韓国の歴代政権は中小企業の育成を公約として掲げてきたが、構造問題を解消できず、大企業主導のままだ。ところが、輸出管理強化を契機に国産化が急務となり、大企業と中小企業が協力して開発を進める動きが始まった。この動きが本格化するかどうかは注視すべきことだが、韓国産業界でこれまであまり見られなかった関係が創出されている。この動きを軽視してはいけないと思う。 半導体産業の一段の成長が見込まれる中で、海外企業の韓国での生産も活発になっている。シリコンウエハでは台湾系企業が韓国で増産し、前述したデュポンの動きもある。日本企業でも、東京応化工業や関東電化工業などが現地生産を進めているほか、東京エレクトロンも技術支援センターを設立している』、「韓国」では「半導体産業の強化に向けて、官民一体の取り組み体制ができつつある」、「大企業と中小企業が協力して開発を進める動きが始まった」、など結果的には「韓国産業界」の競争力強化につながってしまったようだ。
・『日韓経済の分業体制は崩れるのか  Q:慰安婦や徴用工問題などの歴史問題で日韓関係が揺れる中、経済面では日韓は緊密な関係を構築・維持し、国際分業ではウィンウィンの関係にあると評価されてきました。そのような関係が崩れるのでしょうか。 A:日韓の経済関係を見ると、企業活動を通じて緊密なサプライチェーンが築かれ、ウィンウィンの関係が構築されてきていた。それが今回の輸出管理強化で揺らいだ。こうした状況下、日本企業は日本からの輸出に加えて、第三国からの韓国への輸出、韓国での現地生産拡大など、サプライチェーンの再編成を進めているのが現状だと言える。 韓国の半導体産業が発展していくのに伴い、今後、日韓だけでなく台湾や中国企業との協業が進む可能性もある。こうした環境変化の中で、日韓の企業は国家間の対立を乗り越えて、より高いレベルでの分業体制へと進んでいくことが予想される』、日本の経産省は韓国への武器になると思って振り回した輸出規制策が、裏目に出たことを真摯に反省するべきだろう。

第三に、8月6日付けプレジデント Digitalが掲載した政経ジャーナリストの麹町 文子氏による「日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/37657
・『GSOMIA失効も迫る8月  史上最悪の関係に冷え込んだ日本と韓国がいよいよ「8月開戦」を迎える。元徴用工への賠償に絡み、新日鉄住金(現日本製鉄)に資産差し押さえの通知が届いたとみなす公示送達の効力が8月4日に発生し、資産売却(現金化)手続きに入ることが可能になるためだ。 安倍晋三政権は繰り返し「現金化は深刻な状況を招く」と警告しているが、韓国の文在寅大統領はここぞとばかりに歴史問題を持ち出し、日本への一斉攻撃を仕掛けている。昨年は自ら拳を振り上げておきながら直前に日和ったGSOMIA(日韓軍事情報保護協定)の「失効リミット」も8月24日に迫る中、今年の夏は「恥知らずな大統領」とのあまりにもダルすぎる戦いを余儀なくされそうだ。 なぜ、かくも愚かで同じ過ちを繰り返すのか不思議でならない。現金化は、韓国の最高裁にあたる大法院が2018年10月に賠償を命じたことに基づき、韓国の裁判所が差し押さえた資産を強制的に売却・賠償する命令を出すことができるというものだが、少なくとも日本人の多くは1965年の日韓請求権協定で「解決済み」であることを知っている。日本政府が「明確な国際法違反だ」と憤るのは当然だろう。 にもかかわらず、韓国政府は「歴史を歪曲している」と反日カードを巧みに操り、国際世論を誘導することを好むようだ。さらに「ここが勝負時!」と見ているのか、最近の動きは常軌を逸している』、「韓国」の「国際世論を誘導」は誠に巧みで、日本政府は一体、何をやっているのだろうと腹が立つ。
・『軍艦島の世界遺産取り消し問題も勃発  「歴史的事実を歪曲し、犠牲者を再び傷つけている」 7月29日、ソウルで開催された世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に関する討論会で、文政権の朴良雨(パク・ヤンウ)文化体育観光相は長崎市の端島(通称・軍艦島)などの展示について、このように非難した。同観光相は米ブルームバーグ通信が7月24日配信したインタビューでも、展示内容について「全くのウソだ」「歴史の歪曲だ」と強調した。 「明治日本の産業革命遺産」は、2015年7月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録され、幕末の1850年代から明治初期の1910年までの23資産で構成。飛躍的な経済発展や文化交流などをうかがうことのできる集合体だ。だが、韓国は軍艦島での朝鮮人労働者への「差別的待遇」が十分に触れられていないとして反発し、遺産登録取り消しを求めている。韓国の大学教授も海外メディアに関連報道を求める書簡を送るなど、その動きは加速している。歴史問題を「国際舞台」にのせていくのは韓国の常とう手段だが、歴史的事実に照らしても国際法上も明らかにわが国固有の領土である竹島を不法占拠しておきながら、「歴史」を持ち出す姿勢には呆れてしまう』、私は「軍艦島の世界遺産」登録は、安部首相の復古趣味を満たすだけで、寝た子を起こすとして反対だった。
・『遺産は「1850年~1910年代」で構成  韓国側の理屈は、2015年の遺産登録の際に「犠牲者を記憶にとどめるための措置」として日本側が「情報センター」の設置を約束したにもかかわらず、6月から東京で一般公開された展示には朝鮮人労働者への「差別的待遇」を否定する証言と資料が含まれている、というものだ。 同観光相は「日本が国際社会との約束を放棄し、強制労働の真実を隠そうとし続けるなら世界遺産の精神と趣旨を否定、毀損きそんするものだ」と非難している。だが、先に触れたように同遺産は「1850年代~1910年」で構成されており、先の大戦とは直接の関係がないものであるのは明らかだ。せめて、人気テレビドラマ「コンフィデンスマンJP」の主人公「ダー子」のようにきれいな展開を見せてから言ってほしい。 日本政府の毅然きぜんとしない対応にも問題がある。菅義偉官房長官は「日本は世界遺産委員会の決議や勧告を真摯しんしに受け止め、約束した措置を誠実に履行している」と説明しているが、こうした「国際世論戦」を挑んでくる相手には配慮は不要で、反論すべきは強く出ていくべきだろう。なにかあるたびに「遺憾砲」ばかりを発するだけで終わりとするから、韓国のみならず中国や北朝鮮などになめられてしまう』、「遺産は「1850年~1910年代」で構成」との日本側の主張は、形式論に過ぎず、国際的にも通用しないだろう。その後の戦中の問題も踏まえて解説すべきだ。
・『暴走する文在寅と鈍感な安倍  実際、文政権による攻勢はエスカレートしている。日本政府は昨年7月、「安全保障上必要」として韓国への半導体材料など3品目の輸出管理厳格化に踏み切ったが、これに反発した韓国は国際的な貿易ルールに違反しているとして世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会の設置を求めて提訴。WTOは7月29日、小委員会設置を承認した。今後は国際機関での対立が続くことになるが、昨年4月には韓国による福島県などからの水産物輸入禁止措置をWTOが容認する判決が出ている。加えて、対日批判を繰り返してきた韓国高官はWTOの次期事務局長選に出馬しており、韓国を「何をしてくるのか分からない国家」として見た場合、貿易摩擦の先行きも怪しい。 最近では、韓国・江原道平昌にある「韓国自生植物園」に慰安婦像の前でひざまずいて謝罪する安倍総理を模した像が設置され、日本国民の感情を逆なでしている。菅官房長官は7月28日の記者会見で「国際儀礼上許されない。日韓関係に決定的な影響を与える」と反発したが、そんなことを言っている場合ではないだろう。2015年12月に朴槿恵政権との間で「最終的かつ不可逆的な合意」に署名したのは、他ならぬ安倍政権ではないか。もはや「地球儀を俯瞰する外交」と称して、強い外交をうたっていた政権とは思えないレベルにあると感じてしまう。巨額の税金を投入して布マスクを配布したり、新型コロナウイルスの感染再拡大時に観光需要喚起策として「Go Toトラベルキャンペーン」を前倒し実施したり、国民の不安や不満にあまりにも鈍感すぎる』、「輸出管理厳格化・・・に反発した韓国は国際的な貿易ルールに違反しているとして世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会の設置を求めて提訴。WTOは7月29日、小委員会設置を承認」、日本は門前払いを期待していただけに、既に一敗である。「韓国高官はWTOの次期事務局長選に出馬」、というほど影響力が強いのであれば、「小委員会」の結論も楽観できない。「韓国」は国連事務総長を出すほど、外交力は日本より遥かに強いようだ。
・『文在寅「焦り」の原因  ここで頭に入れておかなければいけないことがある。それは文大統領の「焦り」だ。1つは国内世論で、韓国の世論調査会社「リアルメーター」が7月30日発表した調査結果によると、文大統領の支持率は10週ぶりに上昇したとはいえ45.6%にとどまり、不支持率は50.1%に上っている。あれだけ時間と費用をかけて、似合わない「ほほ笑み」を浴びせ続けてきたにもかかわらず、北朝鮮実質ナンバー2の金与正朝鮮労働党第1副部長から完全にフラれてしまい、対北朝鮮政策は座礁に乗り上げている。新型コロナウイルス対策も吹聴しているようには奏功していないのが現実だ。 もう1つは、国際世論にある。米国のドナルド・トランプ大統領は5月、先進7カ国(G7)首脳会議が「時代遅れ」として、G7に韓国やロシア、豪州、インドを招待する意向を表明した。中国との摩擦が激しさを増し、対中共闘で手を組むことをにらんだ動きで、米国のマイク・ポンぺオ国務長官も7月末に「欧州全域のパートナー、インド、日本、韓国、豪州」の名を挙げている。韓国にとって「世界を導くリーダー国の仲間入り」をすることは誇らしいことであり、是が非でも参加したい一大イベントになることは間違いない。その舞台として検討されているのが8月下旬の米国での拡大会合だ』、「G7首脳会議」の議長国は米国だが、日本は欧州と手を組んで「枠組みを維持」に注力すべきだ。
・『“8月戦争”を日本政府はどう乗り切るか  だが、日本政府は「G7そのものの枠組みを維持することは極めて重要だ」(菅官房長官)と韓国の参加には否定的だ。G7の正式メンバーになるためには全参加国の同意が必要で、現状のままなら韓国は「不合格」となる。このため、韓国の青瓦台(大統領府)高官は「隣国に害を与えることになれた日本の一貫して反省しない態度にはもう驚きもしない」「恥知らず」と強く批判したと報じられている。安倍政権と同様に「外交」を売りにしてきた文大統領が対北朝鮮だけでなく、この「一大イベント」で失敗すれば韓国内の失望は計り知れないものになるだろう。 さまざまなことが集中する8月に入り、もはや焦りを隠せない文政権を相手に安倍政権は油断も躊躇も配慮もすることなく、毅然として国際世論戦で勝ち残っていくだけの発信力をつけなければならない。それが国益を守ることであり、「ポスト安倍」の条件にもなることは言うまでもない』、「日本」の「外交」力のなさは本当に情けない。「外交」の世界では「沈黙は負け」である。国際会議の場で、ビジョンを持って、弁舌さわやかに主張できるような人材がいないのも寂しい限りだ。
タグ:“8月戦争”を日本政府はどう乗り切るか 文在寅「焦り」の原因 韓国高官はWTOの次期事務局長選に出馬 世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会の設置を求めて提訴。WTOは7月29日、小委員会設置を承認 暴走する文在寅と鈍感な安倍 「遺産は「1850年~1910年代」で構成」との日本側の主張は、形式論に過ぎず、国際的にも通用しないだろう 遺産は「1850年~1910年代」で構成 私は「軍艦島の世界遺産」登録は、安部首相の復古趣味を満たすだけで、寝た子を起こすとして反対 軍艦島の世界遺産取り消し問題も勃発 「韓国」の「国際世論を誘導」は誠に巧みで、日本政府は一体、何をやっているのだろうと腹が立つ 元徴用工への賠償に絡み、新日鉄住金(現日本製鉄)に資産差し押さえの通知が届いたとみなす公示送達の効力が8月4日に発生し、資産売却(現金化)手続きに入ることが可能になる GSOMIA失効も迫る8月 「日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ」 麹町 文子 プレジデント Digital 日韓経済の分業体制は崩れるのか 結果的には「韓国産業界」の競争力強化につながってしまった 輸出管理強化を契機に国産化が急務となり、大企業と中小企業が協力して開発を進める動きが始まった 半導体産業の強化に向けて、官民一体の取り組み体制ができつつある 日本で予想していた以上の成果を上げていると思う 官民一体の取り組みで予想以上の成果 戻らないフッ化水素の輸入額、韓国の国産化が進む デュポンが」「韓国でEUV向けフォトレジストを生産する計画を発表した サムスン電子が、JSRとベルギー企業との合弁会社からの調達を増やした フォトレジスト 韓国の「脱日本」の動きがはっきりと 日本総合研究所調査部の向山英彦・上席主任研究員 「輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下、韓国への企業誘致進む」 東洋経済オンライン 日本の措置が実質的な輸出規制につながらないケースが多かった 輸入額ベースでの供給元の変更は3.35%に過ぎなかった 実質的な輸出規制につながらないケースが多かった 1年を振り返ってみて、いずれも大きな支障はなかった 日本製フッ化水素は12.5%まで低下 「脱日本技術独立」に向け「技術開発費」や「設備や運転資金」を「支援」 半導体関連工場を抱える京畿道は、「脱日本技術独立」を宣言 文在寅大統領は、官民の協力で核心素材を国産化し危機を克服して、「日本とは違う道歩む」と強調した 「韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?」 佐々木和義 Newsweek日本版 (その11)(韓国は「脱日本」の成功を強調 日本の輸出規制から1年、その実態は?、輸出規制が促した韓国の半導体素材「国産化」 日本企業シェア低下 韓国への企業誘致進む、日韓"8月戦争"開戦で震え上がる文在寅… 次に土下座するのは安倍か文か 徴用工「差押え株式」現金化のツケ) 日韓関係
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日韓関係(その10)(「韓国が大嫌いな日本人」を 世界はどのように見ているのか 一貫して敗北し続ける「歴史戦」、「韓国が大嫌いな日本人」を 世界はどのように見ているのか 一貫して敗北し続ける「歴史戦」、ボルトン回顧録で韓国民の怒りが日本に向かう理由 「南北統一を邪魔して回る日本」 韓国高官が次々と批判の声、韓国・文在寅いよいよ日本と本気で喧嘩へ…8月4日 "全面戦争"に乗り出す構え 「準同盟国」から「準敵国」になるのか) [外交]

日韓関係については、昨年11月30日に取上げた。今日は、(その10)(「韓国が大嫌いな日本人」を 世界はどのように見ているのか 一貫して敗北し続ける「歴史戦」、「韓国が大嫌いな日本人」を 世界はどのように見ているのか 一貫して敗北し続ける「歴史戦」、ボルトン回顧録で韓国民の怒りが日本に向かう理由 「南北統一を邪魔して回る日本」 韓国高官が次々と批判の声、韓国・文在寅いよいよ日本と本気で喧嘩へ…8月4日 "全面戦争"に乗り出す構え 「準同盟国」から「準敵国」になるのか)である。

先ずは、本年4月13日付けPRESIDENT Onlineが掲載した文筆家の古谷 経衡氏による「「韓国が大嫌いな日本人」を、世界はどのように見ているのか 一貫して敗北し続ける「歴史戦」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/34383
・『欧米人に日韓関係の精通者は少ない  欧米人の中で日韓関係に精通している者は残念ながら少ない。 先の大戦で日本が中国大陸を侵略し、その延長線上でパールハーバーをやったことは知っていても、その間、日韓がどのような関係性であったのかを知る者はやはり少ない。ただし戦前・戦後の日韓関係を「フランスとアルジェリアの関係に似ている」と説明すると得心が行く場合がある。 フランスは北アフリカのアルジェリアを伝統的に植民地支配していたが、フランス本国と同じく併合して県を設置し、その扱いを内国と同等とした。日本の朝鮮支配もこれと似ている。朝鮮総督府を最後まで解散することはなかったが、半島全土を1910年に併合したので本国と同じ内国扱いにした。アルジェリアは戦後、独立戦争を経てフランスから独立。 一方朝鮮半島は日本の敗戦によって強制的に独立(実際は連合国軍統治を経る)した。アルジェリアはいくらその扱いが書類上本国と同様だと言っても、植民地支配をされたという被害者の立場から現在でもフランスと精神的しこりがある。朝鮮・韓国もこれと同様である。「戦前・戦後の日韓関係はフランスとアルジェリアの関係と相似的」というのは、欧米人に現下の日韓関係を伝えるのには乱暴ではあるが手っ取り早い』、「戦前・戦後の日韓関係を「フランスとアルジェリアの関係に似ている」」、確かに上手い比喩だ。
・『いわゆる”保守派”のとんだ勘違い  しかし、いわゆる日本の「保守派」は、国際的な認識として、欧米人の中に「韓国嫌い」が存在すると誤解している。とりわけ世界各地で韓国系市民団体が慰安婦像を設置する動きは2010年代から活発になったが、この問題に関して欧米人は日本の主張の味方をしてくれるものだ、と勝手に勘違いしている。日本の「保守派」の中に強固に存在する朝鮮半島の植民地統治への考え方は、「そもそも朝鮮統治は植民地支配ではない」「朝鮮統治は朝鮮人が自ら望んだもの」という1990年代末から出現した歴史修正主義の亜種で、実際には日本の「保守派」以外、この主張を信じている者は誰もいない。 さらに韓国側や韓国系団体が主張する「従軍慰安婦」については、「彼女たちは単なる売春婦で、(日本)軍に勝手についてきただけの追軍売春婦(*注:日本の保守派による造語)なのだから、謝罪や賠償などをする必要はない」というトンデモで、これが国際的に通用すると信じ込んでいる。 一例を挙げよう。2015年、アメリカの韓国系市民団体がサンフランシスコ市で慰安婦像設置を求めた際、同市でこの問題に関する公聴会が開かれた』、「日本の「保守派」」は国際感覚が欠如した「歴史修正主義」者たちのようだ。
・『日本人のヘイトスピーチに「恥を知れ」  日韓双方から発言者が出たが、日本側からはいわゆる草の根「保守」団体の構成員や自称市民が答弁した。曰く「(韓国側の元従軍慰安婦は)単なる売春婦で、嘘うそつきで、証言は捏造ねつぞうである」。まさしく日本の「保守派」が「従軍慰安婦は単なる売春婦で追軍売春婦」というトンデモ主張をそのままトレースして絶叫したのである。 これに対して同市のデビッド・カンポス市議(同委員)は、日本側出席者のヘイトスピーチを「恥を知りなさい」として一喝。日本側出席者はトンデモ論を繰り返すばかりで、かえって欧米人の心証を著しく悪くした。結局、サンフランシスコ市における慰安婦像設置案はそのまま韓国系市民団体の希望のまま通ってしまった。「従軍慰安婦は捏造で実態は売春婦」などという嘘の発言が、欧米人にも通用するものとして勇んで現地入りした日本の「保守派」が、一顧だにされずに逆に説教をされて完全敗北する。これが欧米人にとっての日韓問題に関する常識的な回答なのである』、「日本側出席者はトンデモ論を繰り返すばかりで、かえって欧米人の心証を著しく悪くした」、「日本側出席者のヘイトスピーチを「恥を知りなさい」として一喝」、せっかくの機会を台無しにした「日本側出席者」を選んだ日本側の一方的な手落ちだ。もっと慎重に適任者を選ぶべきだった。
・『朝日の誤報の有無はそんなに関係ない  それでも日本の「保守派」は、従軍慰安婦報道は朝日新聞による捏造で、欧米人はこれに騙だまされているだけ、という手前勝手な主張を展開している。現在も、である。確かに、著述家・吉田清治による済州島における慰安婦強制連行証言は、早い段階から実証史学者の秦郁彦らによって矛盾や捏造が指摘されていた。結局吉田の証言は完全な作話であると朝日新聞も認めるに至るのであるが、欧米人はこの朝日新聞による誤報があろうとあるまいと、日本軍による従軍慰安婦への戦時性暴力を「認定」して、日本が加害者であるという「常識」を崩していない。 国連の戦時性暴力を扱った「クマラスワミ報告書」では、日本軍の従軍慰安婦問題について多くの元慰安婦から膨大な証言を引用しているが、その中で吉田証言の引用はわずかに2カ所だけである。これを以て日本の「保守派」は、「国連が韓国に騙されている」と主張しているが、吉田証言がなくとも同報告書は十分に成立するので、残念ながら欧米人の有識者は日本の「保守派」の主張を「火星の人面岩」と同等にトンデモ扱いしているか、あるいは考慮するに値しないとして無視している』、こんな大失敗をしたのも拘らず、「日本の「保守派」」が主張を変えてないとは驚くばきことだ。
・『日本の保守派の嫌韓に唖然とする台湾の学生  日本の「保守派」が如何に「従軍慰安婦は売春婦で、日本は韓国統治(朝鮮統治)で良いことをしてやった」と叫んでも、欧米人の認識はまったく動かない。そしてこんな理屈が通用するのは、自閉した日本の「保守サロン」だけで、大学の学部レベルですら同じことを論文にしたら「君は馬鹿か」と言われて即時F(不可)をもらうだろう。実際に同じような趣旨をツイッターで叫んで東京大学特任准教授を解雇された例もあるくらいである。 一方アジアに目を向けると、事情は少し違ってくる。落ちぶれたとはいえ日本はアジア第2位の経済大国であり、地域に与える影響はきわめて大きい。当然周辺諸国は日韓の歴史認識の違いや対立については、欧米人よりもはるかに興味をもってその推移を見守っている。しかしここでも日本の「保守派」による「嫌韓」はまったく支持を得ていない。 筆者が台湾の学生(院生含む)と話したとき、彼らは日本による戦前の台湾統治についておおむね肯定的評価で一致していた。ただしそれは「日本による台湾の植民地統治」という前提を是認していることを踏まえている。「日本の一部右翼は、朝鮮半島の統治がそもそも植民地支配ではない、という言説がまかり通っている」というと、皆一様に「信じられない」という反応で、「日本による朝鮮統治が植民地支配ではないのだとしたら何だというのか」と返す』、「台湾の学生」にも理解されない「日本の「保守派」」の主張は、同じ日本人としても恥ずかしい。
・『なぜフィリピンの慰安婦像は撤去されたのか  台湾の青年知識層に対して、日本の「保守派」による身勝手な嫌韓は全くお話にもならないほど低次元のトンデモと受け入れられている。 同じく隣国のフィリピンではどうか。自治領(比コモンウェルス)やマルコス政権時代を含めると約1世紀にわたるアメリカ従属体制を経験した同国では、民族主義的傾向の強い歴史学者が先の大戦での日本軍の戦いを評価する動きもある。しかし、「大日本帝国は朝鮮と台湾を植民地統治していた」という歴史事実は揺るぎがないほど普遍的認識として共有されており、「日本軍による戦時性暴力」についても日本の「保守派」の味方をする気配はない。ただし在比華人団体の支援により2017年にマニラ市に設置した慰安婦像は翌年撤去されている。これは比政府が「従軍慰安婦は単なる売春婦」という日本の「保守派」の身勝手な主張を認めたものではなく、経済的に影響力が強い日本政府の遺憾の意を考慮したものと推察される』、「フィリピンの慰安婦像は撤去された」のは、「日本の「保守派」の身勝手な主張を認めたものではなく、経済的に影響力が強い日本政府の遺憾の意を考慮したもの」、ありそうな話だ。
・『一貫して敗北し続ける「歴史戦」  日本の「保守派」は、2010年代前半から、こういった特に日韓関係における日本側(保守派)の主張を国際社会に受け入れさせることを「歴史戦」という呼称を用いて正当化させようとしている。例えば自民党の杉田水脈代議士は、下野時代この運動の最前線にいたが、ことごとく敗退した。なぜなら日本の「保守派」が唱える「歴史戦」が、あらゆる意味で基礎的歴史事実に基づいていないからである。現在、対日感情が比較的良い隣国である台比両国でも、「朝鮮統治はそもそも植民地支配では無かった」とか「従軍慰安婦は売春婦だった」などのトンデモは論外として全く受け入れられていない。 しかし日本の「保守派」は、日本国内の学部レベルですら論外とみなされる異様な主張を、サンフランシスコやヨーロッパでも壊れた機械のように繰り返し絶叫し、そのたびにファクトを述べる韓国側の主張が皮肉にもあぶり出される格好となり、敗北を続けている。「歴史戦」と自称しているのに、一貫して敗北し続ける戦線も珍しい。欧米人を含めた国際社会に日本の「保守派」による「嫌韓」が共感を持って迎えられる日は恐らく永遠に来ないであろう』、「日本の「保守派」は・・・異様な主張を、サンフランシスコやヨーロッパでも壊れた機械のように繰り返し絶叫し、そのたびにファクトを述べる韓国側の主張が皮肉にもあぶり出される格好となり、敗北を続けている」、反省や自省をせずに「繰り返し絶叫」するとは、とうてい正気とは思えない。自己満足のためとしても、海外で恥を晒すのはいいかげんにしてほしいものだ。

次に、6月15日付け日経ビジネスオンラインが掲載した中部大学特任教授(元・経済産業省貿易管理部長)の細川昌彦氏による「対韓国の輸出管理問題が再燃? 「米中の代理戦争」という誤解」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00036/?P=1
・『韓国に対する輸出管理問題が再燃か?! 韓国は6月2日、日本の韓国に対する輸出管理の厳格化措置について世界貿易機関(WTO)に提訴する手続きを再開すると発表した。この問題になると、なぜか臆測、邪推が飛び交って事実がゆがむ・・・。激化する米中の半導体戦争に影響されて、「米中の代理戦争」だとのコメントもメディアで喧伝(けんでん)される。ストーリーとしては面白いが、事実は異なる』、最適任者の「細川氏」の見解とは興味深そうだ。。
・『真逆の臆測や見立てが飛び交う  簡単に経緯を振り返ってみよう。 2019年7月、日本は韓国に対して半導体関連の3品目の輸出管理を厳格化するとともに韓国を優遇する「ホワイト国」から除外した。韓国はいわゆる元徴用工問題に対する報復だとして同年9月にWTOに提訴。軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄もちらつかせて撤回を求めた。しかし同年11月、米国が韓国に強い圧力をかけてGSOMIA失効を停止させた。韓国はWTO提訴の手続きも中断し、輸出管理の問題は日韓当局間が局長級の政策対話をすることとなった。 当時、ある大御所評論家はテレビでこうコメントした。「米国が日韓双方に圧力をかけて7月以前に戻せということ。すなわち韓国のGSOMIA破棄と日本の輸出管理措置の双方をチャラにさせた」 韓国は国内向けのメンツから、GSOMIAと輸出管理をリンクさせ、米国が日韓双方に調停したように見せようと必死だった。そんな韓国をぬか喜びさせかねないコメントに、私は率直に「邪推だ」と指摘した。その後の日本の輸出管理の動きを見れば、これが邪推であったことは明らかだ。 当時、米国の外交当局が「米中対立のさなかに、日韓があまりいがみ合ってほしくない」との姿勢であったのは間違いない。しかしそこから「日韓双方に圧力をかけた」とするのは飛躍した臆測だ。 そして今度は韓国問題に詳しい論者などから真逆の臆測が飛び出している。 「半導体を巡る米中の激しい争いの中で、米国は韓国から中国への半導体材料の横流しの事実をつかんで、これを抑えるべく、日本に韓国への輸出を止めさせた」というものだ。日韓の輸出管理問題を「米中代理戦争」と断じている。 最近、米国において中国の半導体生産への警戒感が高まっている中で、もっともらしいストーリーとして面白いが、これも事実ではない。当時の輸出管理問題に対する米国の姿勢とは明らかに矛盾する。 「米中央情報局(CIA)などから中国への横流しの事実を伝えられて輸出管理の厳格化に至った」と、まことしやかに語られるが、事実はそうではない。経産省は輸出者への立ち入り検査で輸出者のずさんな管理の実態を把握できる。何でも米国の諜報(ちょうほう)情報に依存していると決めつけるのは間違いだ。 さらに最近の米国による中国ファーウェイ制裁強化の結果、台湾の半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)に代わって、韓国のサムスン電子がファーウェイに半導体を供給するとのコメントもある。これも事はそう単純ではない。そもそも米国の規制の網はサムスン電子にもかかり、サムスン電子は米中の板挟み状態だ。しかもファーウェイはスマホ、携帯でサムスン電子にとってライバル企業でもある。単純に「中国の代理」というわけにはいかないのだ。 さまざま論者たちによってこうした真逆の臆測や見立てが飛び交うのは、輸出管理への理解不足から来ているようだ』、世間の「誤解」を解いてほしいものだ。
・『「半導体3品目」と「ホワイト国」を巡る誤解の数々  これまでも、しばしば誤解を解いてきたが、簡単におさらいしよう。 まず日本の措置は半導体関連の3品目を個別許可にした措置と韓国をホワイト国から外した措置の2つあり、分けて考えなければいけない。これらを混同している論者がいかに多いことか。 結論を言えば、前者は輸出者に着目したもので、元に戻るのは輸出者の改善次第で時間の問題だ。他方、後者は相手国に着目したもので、韓国の輸出管理が信頼できると判断するまで当分の間続くだろう。相手国が信頼できなければその輸出管理が信頼できないのは当然だ。 前者に関して、当時「不適切な事案」が発生していたことを覚えているだろうか。日本から韓国に輸出したものがずさんな管理で、そのうち相当量が行方不明になっていた事案が頻繁に発生していたのだ。これらは輸出者に対して立ち入り検査することによって発覚する。中国であれどこであれ、相当量が行方不明になっていることだけで、国際的に輸出管理上「不適切」となる。 逆に輸出者が改善して管理をきっちりした取引が積み上がってくると、元に戻して簡便な手続きの包括許可を認めるのが筋だ。現に着実にそうなりつつあるので、解決は時間の問題だ・・・。 これに対して後者の「ホワイト国」については、相手国の輸出管理が信頼できるかどうかの問題だ。当局者間の意思疎通といった信頼関係があることが不可欠だ。韓国は輸出管理体制の脆弱や法制度の不備といった日本がこれまで指摘していた点について対策を講じてきたのは事実だ。ただしそれだけでは足りない。形だけでなく、運用が実効的かきちっと見極めて、日本が信頼できると評価するかどうかだ。 そして根本的な点は、いずれも日本が輸出国の責任で判断するもので、相手国と交渉する性格のものではないということだ。「韓国に譲る、譲らない」という性格のものではない』、さすがクリアーな説明だ。。
・『韓国はなぜ勝ち目がないWTO提訴に突き進むのか?   茂木敏充外相は6月2日、「当局間で対話が継続してきたにもかかわらず韓国が一方的に発表したことは遺憾だ」と述べた。確かに日韓の当局者間の対話を通じての理解は進んでいた。 しかしいくら日本のカウンターパートと対話して理解が進んでも、文政権はそんなことお構いなしの決定をするのが今の韓国だ。その背景については諸説ある。 4月の総選挙に大勝して、対日政策もより“無謀”になるとの見立てもある。北朝鮮が南北関係の緊張を高め、国内経済の深刻度が増している状況で、国内政治的に「日本に負けない姿」が欲しいのかもしれない。 あるいは、いわゆる元徴用工訴訟でこの夏以降、差し押さえた資産を現金化する手続きが進む可能性が出てきたこととの関連だ。個別許可のままだと、日本から恣意的運用で報復されかねないので、その前に決着しておきたかったというものだ。 またあるテレビ番組では「世界保健機関(WHO)のように、WTOも中国の影響力が強まっているので、それを韓国は期待しての対応だ」と驚きのコメントをする人もいる。WTOの審査の実態も知らずに、このような稚拙な発言まで垂れ流されている。 いずれにしても明らかに“無理筋の決定”だ。(WTO違反にはならないことは「補足解説3:誤解だらけの『韓国に対する輸出規制発動』」を参照)。 「日本に譲歩を迫る戦術」との報道もあるが、脅しにもならず的外れだ。逆に譲歩と見られかねないので、かえって日本は動きづらくなる。せっかく再開した対話も続けにくい。こうした冷静な判断をできないのが今の韓国だ。いずれにしても日本は国際世論対策には抜かりがあってはならない』、「日本は国際世論対策には抜かりがあってはならない」、その通りだが、頼りない気も残る。
・『「半導体産業に大打撃」だったのか?  昨年7月に日本が輸出管理の厳格化を打ち出したとき、“有識者”やメディアは「韓国の半導体産業に大打撃」「個別許可で恣意的運用も」と騒いでいた。こうした日本の報道を受けて韓国が猛反発した面も否めない。こうした報道は厳しく検証されるべきだろう。 これは輸出管理への無理解からくるもので、私は当時から「空騒ぎだ」と指摘してきた・・・。 現に韓国とのまともな取引に支障は出ていない。その結果、韓国の半導体輸出量を見ても、ほとんど影響を与えていない(以下の図を参照)。「韓国に制裁をすべきだ」との思いの人々にとって不満かもしれないが、それが「輸出管理」であり、「輸出規制」ではないゆえんだ。わざわざ「輸出規制」と呼んでいる報道は意図的に事実をゆがめるものだ。 日本による輸出管理の厳格化を受けて、韓国は脱日本依存を掲げて、半導体生産に不可欠な3品目について国産化を急いだ。例えば、これまで日本企業からは高品質のフッ化水素を安定的に供給されていた。こうした高純度品の国産化は難しいので、多少の歩留まりの低下を覚悟して、低純度品でも何とかしのげる生産工程では一部を国産品に切り替えた。さらに日本企業に対しては可能ならば日本以外の工場から供給するよう要請もしている。その結果、日本企業による韓国向けフッ化水素の輸出は減少している。 これらはサムスン電子など韓国企業が経済合理性を犠牲にしてでも、リスク分散を図った結果だ。ただこれをもって「日本の措置は日本企業にしわ寄せがいっただけだ」と評するのは当たらない。問題の一端は、日本企業自らのずさんな管理にもある。引き金になったのは事実だが、韓国はこれまでも脱日本依存を掲げて政策的に国産化を進めようとしてきた。それを加速したかもしれないが、時間の問題ともいえる。大事なことは技術流出を阻止して、高品質なものは日本企業に依存せざるを得ない状況をいかに維持するかだ。 米中対立を背景に、日本も脱中国依存を掲げてサプライチェーンの国内化を進めている。これまで一体化の方向で進展してきた東アジアのサプライチェーンも既に大きく逆方向に回り始めている。日本企業もこれまで通りのビジネスを前提にできない経営環境なのだ』、確かにグルーバル化への見直し、「技術流出を阻止」、「これまで一体化の方向で進展してきた東アジアのサプライチェーンも既に大きく逆方向に回り始めている」、今後の展開を見守りたい。

第三に、6月25日付けJBPressが掲載したジャーナリストの李 正宣氏による「ボルトン回顧録で韓国民の怒りが日本に向かう理由 「南北統一を邪魔して回る日本」、韓国高官が次々と批判の声」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61063
・『米国・国家安全保障問題担当補佐官として至近距離から見守ったトランプ大統領の首脳外交秘話を思いっきり暴露したジョン・ボルトン氏の回顧録『それが起きた部屋』(The Room Where It Happens)に対する韓国社会からの糾弾が絶えない。トランプ大統領とホワイトハウスの政策失敗を批判したのが回顧録の主な内容だが、その中に米朝首脳会談と米韓首脳会談など、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権にとって敏感な内容も多数含まれているためだ。 中央日報によると、本書には文在寅大統領を意味する「MOON」という単語が153回も登場しており、朝鮮半島関連の技術部分ではトランプ大統領に劣らず、韓国の文在寅大統領と鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府安保室長を辛らつに批判しているという』、「ボルトン氏の回顧録」が「韓国」にも波紋を起こしたとは興味深い。
・『ボルトン回顧録で韓国で高まる反日機運  だが韓国で同書が起こした波紋はそれだけではない。回顧録の中身として、米朝首脳会談をめぐる日本の否定的な態度や、米朝間の終戦宣言を安倍晋三首相が引き止めたという内容があると報じられたことで、韓国の与党やメディアは連日、ボルトン氏はもちろん、日本に対する激しい糾弾が続いているのだ。 「ネオコン・ボルトンの手管や日本の妨害によって、70年間の分断を終え、韓半島統一への歴史的転換となる千載一遇の機会が消えたという、実に嘆かわしい真実が残念だ」 「米国のネオコンと日本の主張は一致する。ネオコンや日本と手を組む(韓国内の)土着分断勢力が、韓半島の平和と繁栄を妨害する『三大分断勢力』であることが明らかになった」 朝鮮戦争70周年を翌日に控えた24日、韓国与党の共に民主党の最高委員会議で、金泰年(キム・テニョン)院内代表はボルトン氏と日本をこのように非難した』、ありそうな話だ。
・『「文大統領の半島平和外交を執拗に妨害してきた日本」  さらに国会の外交統一委員長を務める宋永吉(ソン・ヨンギル)議員も21日、自身のフェイスブックで、こう怒りを爆発させた。 「日本は、韓半島の平和よりは政治的・軍事的対立と緊張が、韓国と北朝鮮の統一よりは分断が自分たちの利益と合致し、それのために初志一貫行動していることを、ボルトン元国家安全保障担当補佐官が書いた回顧録で改めて確認した」 「第2次世界大戦の敗戦国である日本が、韓国戦争(朝鮮戦争)で国家再建の基礎を築いたことからも、韓半島の平和が日本の利益と衝突することがわかる」 「ハノイでの北朝鮮と米国の会談の決裂を聞いて欣喜雀躍した日本、やはり韓半島の平和が不満なボルトンらの米国強硬派の画策が、ハノイ会談を破局に導いた」 日本批判の声はまだある。韓国外交通商部(外交部)付属の国策研究機関である「国立外交院」の金俊亨(キム・ジュンヒョン)院長は23日、あるラジオに出演し、「ボルトンもボルトンだが、(回顧録で)日本の実態がそのまま露呈された」と語った。 彼は「これだけではない。私は過去2年間ずっと話を聞いてきた。文在寅大統領が欧州を訪問したらすぐに日本がついてきては『親北朝鮮左派の話に気をつけよ』と言いまわるなど、(韓国に)付きまといながら仲違いしたほどだった」と、日本が文大統領の朝鮮半島平和外交に対して執拗な妨害活動をしてきたと指摘した』、「ハノイでの北朝鮮と米国の会談の決裂を聞いて欣喜雀躍した日本、やはり韓半島の平和が不満なボルトンらの米国強硬派の画策が、ハノイ会談を破局に導いた」、これもありそうな話だ。ただ、「文在寅大統領が欧州を訪問したらすぐに日本がついてきては『親北朝鮮左派の話に気をつけよ』と言いまわるなど、(韓国に)付きまといながら仲違いしたほどだった」、本当だろうか。
・『「日本は南北統一を恐れている」の思いに確信を与えたボルトン回顧録  ニュースエージェンシーの連合ニュース系列のケーブルテレビ局「YTNニュース」は23日、「ソウルの幸福感を破りたかった?・・・日本の組織的妨害」というリポートで、ボルトン氏の回顧録の内容を次のように分析している。 <今日は、ジョン・ボルトン氏の回顧録の中で、日本が韓半島和平体制の構築をどのように妨害したのかという部分を見てみたいと思います> <南北首脳会談、米朝首脳会談の推進で疎外されていた日本としては、北朝鮮と米国の交渉妥結内容に日本の要求をなんとか取り入れたり、交渉が決裂したりするように踏み込もうとしたのです> <ジョン・ボルトンは、韓半島の非核化を大韓民国の仲裁と外交で解きたくありませんでした。北朝鮮のすべての力を奪って、悩みの種を事前に除去し、米国の影響圏に置くのが目標でした> <南北が平和体制に入り、北東アジアで巨大な力を育てることを阻止したかった日本と米国の覇権主義者のボルトンは、そのように意気投合したのです> 多くの韓国人、特に文在寅政権支持勢力は、朝鮮半島の平和に最も邪魔になる存在が日本と考えている。南北が統一を果たし、経済力や国際的地位の面で日本を超えることを日本が恐れ、南北の和解を妨害しているというのが彼らの主張だ。 今回のボルトンの回顧録の内容は、彼らに「自分たちの見解が決して間違っていない」という確信を与えただろう。韓国の保守系マスコミからは、ボルトンの回顧録によって米韓同盟が揺さぶられることを憂慮する見解が多いが、悪化の一途をたどっている日韓関係も、ボルトンの回顧録に少なからぬ影響を受けるものと見られる』、「南北が平和体制に入り、北東アジアで巨大な力を育てることを阻止したかった日本と米国の覇権主義者のボルトンは、そのように意気投合したのです」、地政学的にも納得できる話だが、「日韓関係」をさらに「悪化させる」とすれば、困ったことだ。

第四に、7月10日付けプレジデント Digitalが掲載した政経ジャーナリストの麹町 文子氏による「韓国・文在寅いよいよ日本と本気で喧嘩へ…8月4日、"全面戦争"に乗り出す構え 「準同盟国」から「準敵国」になるのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/36921
・『文在寅「日韓8月開戦」へ動き出す  いまや「KY(空気が読めない)大統領」との呼び声高い韓国の文在寅大統領が、いよいよ本気で日本とケンカするつもりのようだ。国内批判が高まった時は歴史問題を巧みに利用した外交に活路を見いだすのがパターンとなっているが、握りしめている今回のカードもそれにはまる。 2018年10月に韓国の最高裁にあたる大法院が新日鉄住金(現日本製鉄)に元徴用工への賠償を命じ、同社に資産差し押さえの通知が届いたとみなす公示送達の効力が8月4日に発生するのを皮切りに「全面戦争」に乗り出す構えだという。韓国の裁判所は差し押さえた資産を強制的に売却し、賠償する命令を下すことができるため、期限まで残り1カ月を切る中で日韓間の緊張は高まっている。 文大統領は「司法の判断」とうそぶいているようだが、そもそも1965年の日韓請求権協定で解決済みの話であるのは言うまでもない。さて、日韓「8月開戦」の行方はどうなるのだろうか。 「関連する司法手続きは明確な国際法違反だ。差し押さえ資産の現金化は深刻な状況を招くため避けなければならず、韓国側に繰り返し指摘している」 日頃は温厚な菅義偉官房長官は6月4日、文大統領による執拗な挑発行為に対し、さすがに強い口調でこう警告した。日本政府内では、仮に韓国が現金化を実行した場合の報復措置として、輸出規制や韓国製品の関税引き上げ、送金制限などに踏み切ることを検討している』、「公示送達の効力が8月4日に発生するのを皮切りに「全面戦争」に乗り出す構え」、やれやれだ。ただ、日本側の「報復措置」は頼りなさそうだ。
・『文政権で日本にとって「準同盟国」だった韓国は「準敵国」に  これまでの言動に対しては「無視」してきた日本政府だが、文大統領の最近の横暴ぶりを見れば報復を検討するのも無理もない。日本が安全保障上の理由から昨年7月に踏み切った韓国への輸出管理強化をめぐり、韓国は世界貿易機関(WTO)に紛争処理小委員会の設置を求めて提訴。 今月6日からスイスで始まったWTOの会合で、韓国側は「日本の措置には正当な理由がなく、すべて無効だ」と主張し、小委員会での審理を求めている。竹島に慰安婦、元徴用工……。隣国にいさかいは尽きないものかもしれないが、モグラたたきのように解決しては出てきて、また解決しては出てくるというのではキリがない。 残念ながら文大統領を見る日本の外交・防衛当局者の視線は甘くないようで、2010年から約2年間、駐韓大使を務めた武藤正敏氏は著書「日韓両国民を不幸にする文在寅という災厄」で、文政権をこう評している。『日本にとって事実上「準同盟国」だった韓国を、残念ながら「準敵国」と捉えてもおかしくない存在にした』。 外務省きっての韓国通として知られる武藤氏は、文政権の特徴として①現実無視②二枚舌③無謬性と言い訳④国益無視⑤無為無策の5つをあげ、「見たいことしか見ず、見たくないことは無視してしまう」「時と場合において言うことが違う」などと厳しく批判している。 日本による輸出管理の厳格化に伴い韓国の主要産業である半導体の原材料に影響が出て、不振に陥っていると素直にいえば話し合う場も見つかるというものだが、そこで逆ギレしてしまうのは武藤氏が指摘する「見たいことしか見ず、見たくないことは無視してしまう」という性質のあらわれなのだろう』、「駐韓大使を務めた武藤正敏氏」が「文政権で日本にとって「準同盟国」だった韓国は「準敵国」に」と指摘しているとは深刻だ。
・『韓国の大統領はとにかく前政権を否定する  誤解を恐れずに言えば、これが国際社会の抱いている現実ではないか。かつて日本にも米紙から「ルーピー(愚か者)」と評された民主党政権の鳩山由紀夫総理が誕生し、米軍普天間飛行場の移設問題で日米関係を迷走させたことに国内外の批判が高まったことがある。 日米両国間で積み上げてきた沖縄県名護市辺野古への移設ではなく、県外移設にこだわり、総理退任後にはソウルで朝鮮半島統治をめぐり土下座して謝罪するなど、そのパーソナリティには注目が集まった。ただ、その鳩山氏も最終的には「学べば学ぶにつけ、沖縄の米軍が連携して抑止力を維持している」と軌道修正を図り、県外移設を断念している。 「古今東西、政権交代とはそういうもの」と語るのは簡単だが、5年間の任期という「ワンチャン」に縛られる韓国の大統領はとにかく前政権を否定するところから始まるのだから手に負えない。 文大統領は、前任者である朴槿恵氏が憲法裁判所に罷免され、逮捕されたことに伴い誕生したが、その朴政権時代に日本政府と「最終的かつ不可逆的解決」であると確認し、慰安婦問題の決着を図った国家と国家との合意事項もひっくり返す。竹島についても、いつの間にか領土の話から歴史問題へとすり替えてしまう。そうした言動を繰り返していては、国の「信頼度」が毀損し、あらゆる国から「キワモノ国家」として扱われるのは必然である』、「あらゆる国から・・・」は、「麹町氏」の希望的観測的色彩が濃厚だ。
・『北朝鮮にとって文政権は信頼できない相手  「確実に南朝鮮(韓国)と決別する時が来た」 北朝鮮の朝鮮中央通信が金与正朝鮮労働党第1副部長の「断絶談話」を発表した6月13日以降、文大統領の動揺ぶりはまるで恋人にフラれたかのように痛すぎるものだった。韓国・平昌五輪の開会式で握手を交わして笑顔を見せ、ソウルで北朝鮮芸術団の公演を楽しそうに与正氏と観覧したのはわずか2年半前のこと。互いに国の代表とはいえ、その立場も年齢の差も感じさせないほどのムードに包まれたはずだった。 文大統領は「過去の対決時代に戻そうとしてはいけない」「平和と統一の道を一歩ずつ進まなければならない」と再接近を求めているが、与正氏は「嫌悪感を禁じ得ない」と一蹴。特使派遣も拒絶されるなど、大統領就任後3年あまり費やしてきた融和の道はアッという間に閉ざされてしまった。 諦めきれない様子の文大統領は統一相や国家安保室長、国家情報院長などのポストを刷新して北朝鮮との関係をより重視する姿勢を見せ、7月7日から韓国に「ドラえもん」役である米国のスティーブン・ビーガン国務副長官を招くカードを切ったが、それも北朝鮮側から「未熟」と断じられる始末。北朝鮮からすれば、ジョン・ボルトン前米大統領補佐官が著書で暴露したように対北軍事オプションを米国と協議している文大統領は信頼できる相手とはいえないということだろう』、「北朝鮮側」にとっては、トランプとの首脳会談で、事前に「文大統領」から聞いていたトランプの姿勢が実際には、大きく違っていたため、会談が合意に至らなかったという恨みもあるようだ。
・『同盟国・アメリカの評価も辛辣  過激漫画もびっくりの罵詈雑言を韓国に浴びせる与正氏の語彙力にも注目が集まっているが、同盟国である米国も韓国への評価は辛辣だ。それを端的に示している例としては、ボルトン氏による文大統領批判に加え、バラク・オバマ政権で国防長官を務めたロバート・ゲーツ氏の証言があげられる。ゲーツ氏は著書「イラク・アフガン戦争の真実」で、文大統領が流れを汲む廬武鉉元大統領について「少し頭がおかしいと思った。彼には、アジアにおける安全保障の最大の脅威は米国と日本だと言われた」と明かしている。2019年4月の訪米時、トランプ大統領は文大統領との首脳会談をたったの「2分間」で終わらせたのは記憶に新しい。 文大統領はその一方で、アジアの「ジャイアン」役である中国にはペコペコし、米国への牽制にも一役買ってしまう始末だ。新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、さすがに中国人の入国禁止措置を「実効的ではない」と回避した際には「中国の大統領のようだ」などと批判され、大統領弾劾を求める請願に賛同が集まったが、もはやどこを向いて職務を果たしているのか分からなくなる』、「文大統領」が「トランプ大統領」から軽視され、「中国にはペコペコし」、「中国人の入国禁止措置を「実効的ではない」と回避した際には「中国の大統領のようだ」などと批判」、最後の点は初めて知った。
・『文大統領、そろそろ正直者になってみませんか  さて、その文大統領の支持率は下げ止まる気配を見せていないようだ。同国の世論調査会社「リアルメーター」が7月6日発表した調査結果によると、支持率は6週連続で下落し、40%台に落ち込んだ。いまだ4割超の支持があるとはいえ、2017年5月の大統領就任当初は8割を超える高支持率でスタートしており、韓国国民が抱いていた淡い期待は半減した形だ。 南北関係の悪化に伴い開城にある南北共同連絡事務所の爆破や統一相の辞任などが続き、南北融和を進めてきた文大統領への不満が高まっていると見られている。日本からは正論で反撃され、頼みの綱である米国もつれない。だが、その時々で物事をひっくり返す「シーソーゲーム」好きの大統領はなぜ嫌われているのかさえも理解できていないように映る。 文大統領の任期満了まで、あと2年。日本との「開戦」をご希望のようだが、本当にそれを貫く胆力と能力はあるのか。コロナ禍で苦しむ日韓両国の国民のみならず世界中を振り回すパフォーマンスだけは控えた方が良い。大統領の無茶ぶりが韓国に甚大なダメージをもたらすのは自明だろう。「出木杉君」になってほしいとは思わない。せめて、「のび太君」に。文大統領、まずは正直者になるところから出直してみませんか』、同感だが、期待できそうもなさそうだ。
タグ:日韓関係 日本政府内では、仮に韓国が現金化を実行した場合の報復措置として、輸出規制や韓国製品の関税引き上げ、送金制限などに踏み切ることを検討 日本の「保守派」の身勝手な主張を認めたものではなく、経済的に影響力が強い日本政府の遺憾の意を考慮したもの 「半導体産業に大打撃」だったのか? (その10)(「韓国が大嫌いな日本人」を 世界はどのように見ているのか 一貫して敗北し続ける「歴史戦」、「韓国が大嫌いな日本人」を 世界はどのように見ているのか 一貫して敗北し続ける「歴史戦」、ボルトン回顧録で韓国民の怒りが日本に向かう理由 「南北統一を邪魔して回る日本」 韓国高官が次々と批判の声、韓国・文在寅いよいよ日本と本気で喧嘩へ…8月4日 "全面戦争"に乗り出す構え 「準同盟国」から「準敵国」になるのか) なぜフィリピンの慰安婦像は撤去されたのか 「「韓国が大嫌いな日本人」を、世界はどのように見ているのか 一貫して敗北し続ける「歴史戦」」 韓国はなぜ勝ち目がないWTO提訴に突き進むのか? ハノイでの北朝鮮と米国の会談の決裂を聞いて欣喜雀躍した日本、やはり韓半島の平和が不満なボルトンらの米国強硬派の画策が、ハノイ会談を破局に導いた 新日鉄住金(現日本製鉄)に元徴用工への賠償を命じ、同社に資産差し押さえの通知が届いたとみなす公示送達の効力が8月4日に発生 日本の保守派の嫌韓に唖然とする台湾の学生 「半導体3品目」と「ホワイト国」を巡る誤解の数々 朝日の誤報の有無はそんなに関係ない 真逆の臆測や見立てが飛び交う ボルトン回顧録で韓国で高まる反日機運 北朝鮮にとって文政権は信頼できない相手 韓国の大統領はとにかく前政権を否定する 「対韓国の輸出管理問題が再燃? 「米中の代理戦争」という誤解」 駐韓大使を務めた武藤正敏氏 文在寅「日韓8月開戦」へ動き出す せっかくの機会を台無しにした「日本側出席者」を選んだ日本側の一方的な手落ちだ 細川昌彦 慰安婦像設置案はそのまま韓国系市民団体の希望のまま通ってしまった 「韓国・文在寅いよいよ日本と本気で喧嘩へ…8月4日、"全面戦争"に乗り出す構え 「準同盟国」から「準敵国」になるのか」 麹町 文子 文大統領の半島平和外交を執拗に妨害してきた日本 ネオコン・ボルトンの手管や日本の妨害によって、70年間の分断を終え、韓半島統一への歴史的転換となる千載一遇の機会が消えた ジョン・ボルトン氏の回顧録『それが起きた部屋』 「ボルトン回顧録で韓国民の怒りが日本に向かう理由 「南北統一を邪魔して回る日本」、韓国高官が次々と批判の声」 李 正宣 JBPRESS プレジデント Digital 日本人のヘイトスピーチに「恥を知れ」 歴史修正主義 文政権で日本にとって「準同盟国」だった韓国は「準敵国」に 文大統領、そろそろ正直者になってみませんか 同盟国・アメリカの評価も辛辣 日本側出席者はトンデモ論を繰り返すばかりで、かえって欧米人の心証を著しく悪くした 日経ビジネスオンライン 異様な主張を、サンフランシスコやヨーロッパでも壊れた機械のように繰り返し絶叫し、そのたびにファクトを述べる韓国側の主張が皮肉にもあぶり出される格好となり、敗北を続けている 同市のデビッド・カンポス市議(同委員)は、日本側出席者のヘイトスピーチを「恥を知りなさい」として一喝 一貫して敗北し続ける「歴史戦」 日本側からはいわゆる草の根「保守」団体の構成員や自称市民が答弁した。曰く「(韓国側の元従軍慰安婦は)単なる売春婦で、嘘うそつきで、証言は捏造ねつぞうである」。まさしく日本の「保守派」が「従軍慰安婦は単なる売春婦で追軍売春婦」というトンデモ主張をそのままトレースして絶叫 古谷 経衡 「日本は南北統一を恐れている」の思いに確信を与えたボルトン回顧録 文在寅大統領が欧州を訪問したらすぐに日本がついてきては『親北朝鮮左派の話に気をつけよ』と言いまわるなど、(韓国に)付きまといながら仲違いしたほどだった いわゆる”保守派”のとんだ勘違い 戦前・戦後の日韓関係を「フランスとアルジェリアの関係に似ている」と説明すると得心が行く場合がある 欧米人に日韓関係の精通者は少ない これまで一体化の方向で進展してきた東アジアのサプライチェーンも既に大きく逆方向に回り始めている PRESIDENT ONLINE
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日中関係(その4)(習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由 魂胆は「天皇の政治利用」、新型肺炎から垣間見えた 対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか、大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に) [外交]

日中関係については、2018年11月6日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その4)(習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由 魂胆は「天皇の政治利用」、新型肺炎から垣間見えた 対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか、大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に)である。

先ずは、昨年11月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際関係アナリストの北野幸伯氏による「習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/221300
・『来春に予定されている習近平の「国賓訪日」に、反対の声が上がっている。佐藤正久前外務副大臣は11月11日、「香港問題」「邦人拘束問題」「尖閣問題」「日本食品の輸入規制問題」を挙げ、「4つのトゲを抜かないと国賓というわけにはいかない」と述べた。40人の自民党議員が参加する「日本の尊厳と国益を護る会」(代表幹事・青山繁晴参議院議員)も、同じ理由で反対を表明した。筆者も、習近平の国賓訪日に反対している。なぜなら、中国は天皇を政治利用した過去があるからだ』、当初は桜の咲く頃としていた「国賓訪日」は、新型コロナウィルス感染拡大により、年内は困難になったようだ。
・『米中戦争の最中に中国に接近する日本  筆者が習近平の国賓訪日に反対する理由は4つある。 1番目の理由は、中国への過度の接近が、同盟国である米国との関係を破壊するからだ。日本人はほとんど意識していないが、世界は2018年から「米中覇権戦争の時代」に突入している。トランプは2018年7月、8月、9月と、連続して中国製品への関税を引き上げた。これで、世界は「米中貿易戦争が始まった」と認識した。 そして、同年10月、ペンス大統領がハドソン研究所で行った「反中演説」後、「米中新冷戦」という用語が世界中で使われるようになった。 問題は日本政府の動きだ。安倍首相は2015年4月、米国における議会演説で、以下のように演説した。(太線筆者、以下同) <米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。米国と日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。希望の同盟――。一緒でなら、きっとできます。> 非常に感動的なスピーチで、結果、日米関係は劇的に改善された。しかし、今となっては、「口だけ」と批判されても仕方ない状況になっている。というのも、米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている。 戦争の最中に、同盟国が敵国に接近する行為を一般的に何というだろう?そう、「裏切り」である。日本は中国に急接近することで、同盟国米国を「裏切って」いるのだ。 それで、米国の日本への態度も変わり始めた。トランプは、大統領就任後封印していた「日米同盟破棄論」や「同盟不平等論」を、再び主張し始めている』、「米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている」、「中国」からすれば当然の行動だ。それにいい気になって、トランプを怒らせたのであれば、如何にもまずい。
・『人権侵害国家のトップと天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ  10月22日に行われた天皇陛下の「即位礼正殿の儀」には、世界各国から国王、王妃、大統領、首相などが集結した。しかし、米国が派遣したのは「運輸長官」だった。 もともとペンス副大統領が出席する予定だったが、意図的に「格下」の大臣を送ってきたのだ。日本政府は、米国政府の「シグナル」に気がついて、中国への接近を止めなければならない。 2つ目の理由は、「ウイグル問題」だ。中国は昔から「人権侵害超大国」だった。しかし、米国はこれまで、この国の人権を問題視することはほとんどなかった。「チャイナマネー」が欲しかったからだろう。だが、「米中覇権戦争」が始まったので、中国の人権問題がクローズアップされるようになってきた。 その最たるものが「ウイグル問題」だ。具体的には、中国政府がウイグル人約100万人を強制収容所に拘束していること。これは、米国の対中「情報戦」に利用されているが、「事実」でもある。 <国連、中国政府がウイグル人100万人拘束と批判 BBC NEWS JAPAN 2018年09月11日 中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人を約100万人、テロ取り締まりを「口実」に拘束していると、国連は懸念を強めている。国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。 8月半ばにスイス・ジュネーブで開かれた同委員会の会合では、信頼できる報告をもとに中国政府が「ウイグル自治区を、大規模な収容キャンプのようにしてしまった」と委員たちが批判。> 日本政府は、21世紀の現在、中国でナチスドイツやスターリン時代のソ連のような人権侵害が行われていることを問題視すべきだ。 習近平が訪日する頃、この問題は、もっと盛り上がっているだろう。そして、天皇陛下が、100万人を拘束する国の独裁者と談笑する映像が、世界に配信される。「日本国の天皇は、独裁者と歓談している」と非難されることは容易に想像できる。そうなった時、天皇陛下にはもちろん何の非もない。非難されるべきは、会談を設定した日本政府だ』、「人権侵害国家のトップと天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ」、その通りだ。
・『中国政府は昔から天皇を政治利用してきた  しかし、国際社会は、そのようには受け取らず、「天皇が自らの意思で独裁者と談笑している」と理解するだろう。なぜなら、外国人は普通、「天皇に政治的決定権は一切ない」という知識を持ち合わせていないからだ。 第3の理由は「香港問題」だ。習近平は11月4日、上海で、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と会談した。彼は、「中国中央政府は林鄭氏に高度の信頼を寄せている。この暴動を止めること、そして秩序を回復することが、依然として香港で最も重要な任務だ」と述べ、彼女を激励した。 林鄭月娥は、国家主席から直々に「暴動を止めろ」「秩序を回復しろ」と言われ、「どんな手段を使ってもデモを鎮圧する」と決意したことだろう。 この会談後、香港警察はデモ隊鎮圧に実弾を使用するようになり、この原稿を書いている時点で2人の死者が出たと報じられている。習近平が訪日する頃、香港情勢はさらに悪化しているだろう。そして、力を使ってデモを弾圧する中国への風当たりは、さらに強くなっているはずだ。 そんな時期に、天皇陛下は「民主化デモを武力で弾圧する国のトップ」と会談させられる。日本政府は、国際社会がこれをどう受け取るか、熟考するべきだろう。 第4の理由は、中国政府が天皇陛下を政治利用するからだ。これは、にわかには信じがたい話かもしれないから、少し過去を振り返ってみる必要がある。 米中関係は、1970年代にニクソンと毛沢東が和解した後、ずっと良好だった。毛の後を継いだ鄧小平は、日本、米国から資金と技術を思う存分受け取り、中国経済を奇跡的成長に導いた。日米は、中国に「金と技術を無尽蔵に恵んでくれる存在」なので当然、日中、米中関係も良好だった。 しかし、1980年代末から1990年代初めにかけて、2つの理由で米中関係は悪化する。 1つ目の理由は1989年6月4日に起きた「天安門事件」。人民解放軍はこの日、デモを武力で鎮圧した。中国共産党は、犠牲者の数を319人としているが、英国政府は1万人以上としている。これで、中国は国際的に孤立した。 2つ目の理由は、1991年12月の「ソ連崩壊」。そもそも米国が中国と組んだのは、ソ連に対抗するためだった。しかし、その敵は、崩壊した。それで当然、「なぜ我々は、中国のような一党独裁国家と仲良くし続ける必要があるのか」という疑問が、米国内から出てきた』、今日の夕刊によれば、全人代常務委員会は「香港国家安全維持法案」を異例のスピードで可決。香港政府は毎年民主化を求めてデモが起きる香港返還記念日の7月1日にも施行する方針のようだ。
・『天皇訪中に助けられた後 日本を裏切った中国  さて、中国は、この苦境をどう克服したのか? ナイーブな日本政府に接近したのだ。江沢民は1992年4月に訪日し、天皇皇后両陛下(現上皇上皇后両陛下)を中国に招待した。そして1992年10月、天皇皇后両陛下が訪中された。 これを見た欧米諸国は、「日本は、中国市場を独占するつもりではないか」と焦りを感じるようになる。 中国の賃金水準は当時、日米欧の数十分の一であり、将来世界一の市場になることも確実視されていた。だから、欧米は、「金もうけと人権」の間で揺れていたのだ。 中国は、天皇陛下を政治利用することで、日米欧を分断させ、日本だけでなく欧米の態度を和らげることに成功した。 これは、筆者の想像ではない。1988年から10年間外交部長(外務大臣)を務めた銭其シンは、その回顧録の中で、天皇訪中が西側諸国による対中制裁の突破口であったことを明かしている。 話がここで終われば、「中国に一本取られた」程度だった。しかし、問題はここからだ。日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した。どういうことか? 中国政府は1994年、「愛国主義教育実施要綱」を制定。1995年から、徹底した「反日教育」を行うようになった。そして、中国は、世界における「反日プロパガンダ」を強化していく。アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』が大ベストセラーになり、「南京大虐殺」が世界中で知られるようになったのは1997年のことだ。同年、江沢民は真珠湾を訪問し、日本の中国侵略と、真珠湾攻撃を非難した。 この動きは一体何だろうか?なぜ、日本に救われた江沢民は、「反日教育」「反日プロパガンダ」を強力に推進したのか?日本を「悪魔化」するためだろう。日本を悪魔化すると、米中関係はよくなる』、「中国は、天皇陛下を政治利用することで、日米欧を分断させ、日本だけでなく欧米の態度を和らげることに成功した」、しかし「日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した」、もう忘れかけていたが、今一度、思い返すべきだ。
・『クリントン政権の本音は「米中で日本を共同支配」  2度の世界大戦の前と戦中、米中関係(当時は中華民国だった)は、日本という「共通の敵」がいて良好だった。そして、1970年代から1980年代末までは、ソ連という「共通の敵」がいて、やはり良好だった。しかし、天安門事件とソ連崩壊後、中国が米国の主敵になる可能性が出てきた。 そこで中国は、「日本を米中共通の敵にしよう」と決意したのだ。 そして、中国の工作は成功した。クリントン時代の過酷な日本バッシングを覚えている人も多いだろう。この件に関連して、米国在住国際政治アナリスト伊藤貫氏の『中国の「核」が世界を制す』(PHP研究所)に驚きの話が紹介されている。 伊藤氏は1994年、当時米国防総省の日本部長だったポール・ジアラ氏と会った。ジアラ氏いわく、<「クリントン政権の対日政策の基礎は、日本封じ込め政策だ。> <クリントン政権のアジア政策は米中関係を最重要視するものであり、日米同盟は、日本に独立した外交、国防政策を行う能力を与えないことを主要な任務として運用されている。>(200ページ) 伊藤氏は、米国の政策について、以下のように結論づけている。 <米中両国は東アジア地域において、日本にだけは核を持たせず、日本が自主防衛できないように抑えつけておき、米中両国の利益になるように日本を共同支配すればよい」と考えている。>(113ページ) ここまでをまとめてみよう。 ・1989年、中国は天安門事件で国際的に孤立した。 ・中国は、ナイーブな日本政府に接近する。 ・1992年、天皇皇后両陛下(当時)が訪中された。 ・日本が中国市場を独占することを恐れた欧米は態度を軟化。中国の「天皇利用作戦」は成功した。 ・天皇陛下を利用して包囲網を突破した中国は、「日本悪魔化工作」を開始。 ・日本は、米中「共通の敵」にされてしまい、日米関係は悪化。 ・逆に米中関係は、大いに改善された』、「日本」は「米中」にいいようにやられたようだ。
・『ナイーブな政府が日本を滅ぼす  平成は、1989年1月8日に始まった。同年6月4日に「天安門事件」が起き、中国は世界的に孤立した。 令和は、30年後の2019年5月1日に始まった。中国は今、ウイグル問題、香港問題で孤立している。香港問題を語る際、しばしば「第二の天安門は起こるか?」といった表現が使われている。 30年前、中国は日本政府を操り、天皇陛下を政治利用することで危機を乗り越えた。そして30年後、中国は再び日本に接近し、天皇陛下を政治利用することで、危機を乗り越えようとしている。習近平が来春「国賓訪日」すれば、天皇陛下に「近い将来の訪中」を要請する可能性は極めて高い。天皇陛下は立場上、これを拒否できないだろう。 習近平の国賓訪日に続く天皇陛下の訪中で、日米の亀裂は、さらに深まる。日米同盟を破壊することで、中国は現在の危機を乗り越えるだけでなく、覇権に向かって大きく前進することになるだろう。 日本政府はどうすればいいのか?これは簡単で、平成の間違いを繰り返さないことだ。つまり、習近平の国賓訪日を断り、天皇陛下の訪中、つまり政治利用の可能性を事前に根絶する。口実は、何とでもなる。「邦人拘束問題、尖閣問題、ウイグル問題、香港問題などで、保守派議員の反発が激しい」と言えばいいだろう。 人も国家も間違いを犯す。しかし、優れた指導者は過去の間違いから学び、同じ過ちを2度と繰り返さない。日本政府は今、無意識のうちに30年前の過ちを繰り返そうとしている。安倍内閣が、過去の教訓から学び、賢明な判断を下すことを心から望む』、「国賓訪日」が、新型コロナウィルス感染拡大により、年内は困難になったのは、一安心だ。新型コロナウィルス感染拡大が思わぬ贈り物をもたらしたようだ。

次に、本年2月12日付け日経ビジネスオンラインが掲載した中部大学特任教授(元・経済産業省貿易管理部長)の細川昌彦氏による「新型肺炎から垣間見えた、対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00029/?P=1
・『中国の新型肺炎の感染が拡大して、経済への深刻な影響が懸念されている。とりわけ発生源である中国・武漢市は自動車産業の一大集積地で、自動車業界のサプライチェーン(部品供給網)への大きな影響にメディアの関心も注がれている。中国での自動車生産への部品供給や中国からの自動車部品の輸入など、世界の自動車生産体制への広範な影響が懸念されるのは当然のことだ。 しかし、もう一つ忘れてはならないのが半導体産業だ。 半導体産業は「中国製造2025」の最重点産業で、2025年までに自給率7割を目標としている。武漢はその中核拠点と位置付けられ、海外技術を基に巨大工場の建設を進めている。台湾から大量の技術者を引き抜くなどして、中国半導体大手の紫光集団は中国メーカーとしては初めて3次元NAND型フラッシュメモリーの量産に乗り出した。 「中国製造2025」は単なる産業政策ではない。目的に「軍民融合」を掲げて、産業競争力のみならず軍事力の高度化も目指している。米国が強い懸念を有するゆえんだ。中国も海外からの警戒感を避けるために、最近は爪を隠して、この言葉に言及しない方針である。しかし実態は何ら変わっていない。 先日、武漢からチャーター便で日本人数百人が帰国した。そのうち約半数は自動車関連の従事者であったが、残りの大半は半導体関連の従事者だった。日本の半導体製造装置メーカーの技術者がそうした工場の建設とメンテナンスに関わっているのだ。もちろん中国市場を開拓するビジネスとして取り組むのは当然である。現時点でこのこと自体が問題になるものではない。 ただし、今後も同じだと考えていては危険だ。一層の注意を要する。現在、半導体産業がいわゆる“米中テクノ冷戦の主戦場”となっているからだ』、確かに「“米中テクノ冷戦」で流れ弾に当たらないよう細心の注意が必要だ。
・『米中テクノ冷戦の主戦場・半導体  先月、米中貿易交渉の第1段階の合意が署名されたが、こうしたトランプ大統領による関税合戦での取引は表層的なものだ。米議会を中心とする深層部分でのテクノ冷戦(技術覇権争い)はますます激しくなり、中国資本による米国企業への投資規制の強化に続いて、対中輸出管理も抜本的に強化しようとしている。その重要なターゲットの一つが半導体分野である。 半導体は軍事産業の生産基盤となる技術である「基盤技術」の代表格とみなされている。米国の国防権限法においても安全保障上中核的な産業分野として半導体産業が特記されたことは要注意だ。 一方、中国はそうした半導体産業を猛然と育成しようとしている。 2018年4月、中国通信機器大手のZTEが米国の制裁発動によって、米国のインテルとクアルコムなどから半導体の供給を受けられなくなって、主力事業の停止に追い込まれ悲鳴を上げた苦い経験から、中国は半導体の内製化に一層アクセルを踏んだ。 さらに同年10月、中国の国策半導体メーカー福建省晋華集成電路(JHICC)が米国の制裁発動によって半導体製造装置の輸出規制を受けて大打撃となったことに懲りたようだ。 2014年からの第1期には2兆円の基金で半導体チップに投資し、2019年10月に発表した第2期計画では3.2兆円の基金で半導体製造装置に投資する。こうした資金力を武器に技術と人材の取り込みを加速している。高度な半導体人材を抱える台湾からは3000人を超える技術者が流出して歯止めがかからないという。 今後も中長期で米中対立が続くことを前提に、中国は米国依存を脱却するために自前生産に躍起となっているのだ。 これに対して、米国が半導体製造に関する技術流出に警戒するのも当然だ。そしてその製造装置は日欧企業が主たるプレーヤーであることから、その協力が不可欠としている。 最近、半導体の性能を高める次世代装置(EUV露光装置)を独占的に供給しているオランダの装置メーカーASMLが中国政府系半導体メーカーSMICへの供給をストップしたのも米国の圧力があったからだといわれている。 また台湾の半導体大手TSMCに対して、米中それぞれが圧力をかけて米国生産、中国生産をさせようと綱引きが過熱しているのもその象徴的出来事だ。TSMCに部材供給している日本企業もその余波を受けるだろう』、「TSMC」は米国の圧力に屈して、「米国生産」を選択したようだ。
・『米国が志向する「部分的な分離」戦略  今、ワシントンでは「部分的な分離(Partial Disengagement)」がキーワードになっている。 米中対立の激化で、世界が米国圏と中国圏に「分断(デカップリング)」されるのではないかとの懸念が広がっている。しかし経済全般の「分断」はもはや不可能で非現実的だ。グローバルな相互依存の経済構造が既に出来上がっているからだ。他方で、安全保障上の対中懸念の現実を考えれば、むしろ安全保障の視点で機微な分野を特定して、部分的に中国を分離していく。それが米国の志向する「部分的な分離」戦略だ。 メディアは制裁関税の影響によるサプライチェーンの揺らぎにばかり注目しているようだ。しかし問題の本質はそこではない。 制裁関税の発動によるコスト増が中国から他のアジア諸国に生産拠点を移管する動きを招き、サプライチェーン再編の波が押し寄せているのは事実だ。こうした現状でどう経営判断するかはもちろん極めて重要である。しかしトランプ大統領による制裁関税は自然災害同様、予測不可能だ。新型肺炎によるサプライチェーンの分断もそうだ。自動車産業を中心に世界経済に深刻な影響を与えているが、これも予測困難だ。そうしたリスクに対して企業はコスト増でもリスク分散して柔軟に対応できるように手を打つしかない。 むしろ安全保障の観点での機微な分野での「部分的な分離」は着実に進展しつつある。しかも中長期的な視点でだ。 日本企業も安全保障のアンテナを高くして、社内の事業分野ごとに仕分けをする作業が必要だ。そして、こうした特定分野における技術の観点で、サプライチェーンの分断を経営リスクと捉える必要があるだろう』、同感だが、こうした感度が鈍い「日本企業」には、よほどの努力が必要だろう。
・『日本企業も要注意、米国主導の“新型の対中ココム”  米国は中国への技術流出を阻止すべく輸出管理の抜本的な強化をしようとしている。輸出管理改革法(ECRA)に基づき、中国を念頭に置いて規制対象範囲を拡大しようとしている。いわば“新型の対中ココム”ともいえるものだ(政府は対外的にこうした呼称を用いることを当然否定するだろうが)。そのうちの1つが、上述の「基盤技術」といわれるもので、半導体製造技術がその焦点になっている。 それと同時に、米国だけが独自に規制しても効果が限定されるため、同盟国との国際連携が必要とされている。日本にも同調が求められるのは明らかだ。そうなると日本企業の企業活動も多大の影響を受けることになる。 また、事実上の禁輸措置につながるエンティティ―・リストへの掲載が相次いでいる。この1年半の間だけでも有名なファーウェイ以外に監視カメラ、スーパーコンピューター、原発関連企業など200社近くがリストに追加されている。こうした企業にも米国は半導体を含む部材供給をストップする。 「買わない」、「使わない」から「売らない」、「造らせない」までに及んでいるのだ』、「「買わない」、「使わない」から「売らない」、「造らせない」までに及んでいる」、ずいぶん徹底しているようだ。
・『日本企業も“利敵行為”は許されない  ここで注意しなければならないのは、日本企業であってもこのエンティティー・リストへの掲載は決して無縁ではないということだ。日本から中国へ輸出する場合であっても米国からの部材などを25%以上組み込んだ場合に、米国の再輸出規制がかかることは大方の日本企業は理解しているが、問題はそれだけではない。 仮に「米中対立はビジネスチャンスだ」として「漁夫の利」を得ようとすれば、違法行為でなくても、米国からは利敵行為とみなされて制裁対象にもなり得るのだ。 日本企業は最低限、法律的なチェックはしているだろうが、それだけでは十分ではない。エンティティー・リスト掲載企業との取引は慎重にすべきであることを経営層は理解しておく必要がある。 米中両国とビジネスで付き合う日本企業にとって、機微な分野の見極めが重要になってくる。AI(人工知能)、量子技術、5G、ドローン、監視カメラのような特定分野については、米国の動きを踏まえた慎重な対応が必要だ。虎の尾を踏むわけにはいかないのは、1987年の東芝機械ココム違反事件を思い出せば明らかである。 日本企業もこうした安全保障の動きへのアンテナを高くしておかなければ、経営の根幹を揺るがしかねない。半導体関連はそうした機微な分野として特に要注意であることを、新型肺炎を巡る動きで思い起こさせられた』、「日本企業もこうした安全保障の動きへのアンテナを高くしておかなければ、経営の根幹を揺るがしかねない。半導体関連はそうした機微な分野として特に要注意」、説得力溢れた主張で、同感である。

第三に、6月20日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/357296
・『日本の外交にとって、中国を相手にすることほど複雑でやっかいなものはないだろう。 アメリカとの間には日米安保条約という強固な基盤があり、時に「対米追随外交」と批判されながら、アメリカに歩調を合わせることで安定した関係を維持してきた。 イギリスやフランス、ドイツなどヨーロッパ主要国との間にはそもそも国家関係を揺るがすような深刻な問題がない。一方で韓国や北朝鮮、ロシアのように、歴史問題や領土問題などをめぐって真正面から主張が対立している場合は、外交交渉そのものが成り立ちにくいため、自国の主張を繰り返していればいい』、「「大国化した中国に日本はどう向き合うべきか」、確かに悩ましい課題だ。
・『新たな対中外交戦略の時代に  しかし、日中関係はそれほど単純ではない。1972年の国交正常化以降、歴史問題をはじめ何らかの問題を抱えながらも、それなりに良好な関係を維持していかなければならない宿命にあった。 ところが今回、中国が打ち出した香港の国家安全法制定は、これまで両国が維持してきた日中関係を大きく変えてしまいそうな根本的な問題をはらんでいる。中国が大国化したことで日本が個別に中国に向き合って問題を解決できる時代は終わった。国際社会と連携した、新たな外交戦略が必要になったようだ。 国交正常化からの約半世紀を振り返ると、日中関係は劇的に変化してきた。正常化後は日本国内に日中友好ムードが高まり、日中関係は一気に改善した。1980年代には日本が歴史教科書問題や中曽根康弘首相の靖国神社公式参拝などの問題を引き起こし、中国でも1989年に天安門事件が起きた。 このころの日本のGDPは中国の約5倍、国民1人当たりの所得は約30倍で、経済力では中国を圧倒していた。安全保障の面でも自衛隊と在日米軍やアメリカ第7艦隊を合わせた軍事力は、中国の人民解放軍の力が及びもつかないものだった。 こうした状況もあって、日中間の問題に対して日本政府は寛大さを見せる余裕を持っていた。教科書問題では中国の要求を受け入れ、教科書の検定基準を見直した。中曽根首相の靖国神社参拝は中国への配慮から1年で終わった。天安門事件で中国が欧米諸国の批判を浴びて国際的に孤立すると、日本はいち早く円借款の凍結解除を打ち出すなど、関係改善に積極的に取り組んだ。 中国の姿勢も今とはまったく異なっていた。当時の最高指導者である鄧小平が打ち出したのは改革開放路線であり、西側の市場経済システムを積極的に取り入れて中国の経済発展を推し進めた。それを象徴するのが「韜光養晦」という言葉だった。 「才能を隠して、内に力を蓄える」というような意味であり、イデオロギーなどにこだわらず低姿勢で西側諸国に接し、その技術などを導入するという徹底したプラグマティズムだった。実際、1978年の訪日時、鄧小平は「これからは日本を見習わなくてはならない」という言葉を残している。現在の習近平体制の振る舞いとは対極にあった』、確かに「現在の習近平体制の振る舞い」には目に余るものがある。
・『「寛容の外交」から「原則重視の外交」へ  1990年代後半以降になると、経済力を増してきた中国の振舞いは徐々に変化してきた。日本の排他的経済水域(EEZ)内で中国の調査船による違法な海洋調査が頻繁に行われるようになった。海底資源探査や潜水艦の航路開拓などが目的とされており、日本政府はその都度、中国側に抗議を繰り返していた。 日本周辺での中国海軍の活動が活発化し始めたのも同じころだった。さらに、1995年と1996年には核実験を繰り返した。日中関係は次第にぎくしゃくし始め、日本政府の対応は「余裕と寛容」から「原理原則の重視」に転換していった。 2001年春、台湾の総統を退任した李登輝氏が病気治療を理由に訪日ビザを申請してきた。李登輝氏を台湾独立派とみなしていた中国政府は、李氏訪日を政治活動だとして日本政府にビザを発給しないよう強く求めてきた。 外務省は局長以上を集めた会議で対応を協議したが、驚くことに1人の局長を除き、すべての幹部がビザを発給すべきという意見だった。中国の主張には理がないというのである。森喜朗首相の退陣直前というタイミングだったが、首相官邸は外務省の判断も踏まえて最終的にビザ発給にゴーサインを出した。 森政権ではこのほかに歴史教科書問題が再び起きたが、中国の修正要求を日本政府は「内政問題である」として突っぱねた。1980年代とは様変わりの対応だった。 2010年、日本のGDPはついに中国に追い抜かれ、2019年は3倍にまで差が開いた。中国の軍事費も増え続け、今やアメリカに次いで世界第2位の軍事大国だ。その額は日本の5倍を超えている。習近平国家主席の登場で、鄧小平氏の「韜光養晦」は消え去り、代わりに打ち出されたのは「一帯一路」であり、「中華民族の偉大なる復興」である』、「「寛容の外交」から「原則重視の外交」へ」、力関係の変化を踏まえれば当然の選択だ。
・『多国間枠組みを生かした対中抑え込み  こうしたなか、日本では一時、対中強硬論がもてはやされたが、問題の解決に資することはなかった。日本政府が打ち出したのは、さまざまな国際機関やASEANをはじめとした地域の多国間の枠組みなどを動かし、中国を抑え込むとともに問題を解決していく戦略だった。 日本が前面に出て中国と向き合ったところで交渉進展は期待できない。そこで多くの国を関与させる手法にかじを切ったのだ。 中国が南シナ海の岩礁を埋め立てて領有権を主張するとともに軍事基地化していった問題では、中国に批判的な国に働きかけてこの問題をASEAN首脳会議などで取り上げさせた。中国に批判的なフィリピンが常設仲裁裁判所に仲裁を要請し、2011年に「中国の主張は国際法に反する」という判断が出された。この動きに日本政府も深く関与した。 さらに日米、インド、オーストラリアの4カ国が連携して、他のアジア諸国を巻き込んで地域的な連携の枠組みを作る「インド太平洋戦略」構想も日本がアメリカに働きかけたものだった。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)締結で積極的役割を果たしたことも含め、いずれも中国を強く意識した戦略だった。 ぎらつかない手法での対中政策は、必ずしも十分な成果を上げたとは言い切れないが、中国問題はもはや日本一国で抱えきれる問題ではなくなった以上、やむをえない対応であろう。 そこで今回問題となるのは、香港の国家安全法だ。中国にとって香港の民主化運動は香港独立を目指すテロ行為でしかなく、封じ込めなければ台湾やウイグルなどへ飛び火しかねない。しかし、日本を含む欧米諸国からすれば、自由と民主主義という大原則が崩れてしまう本質的な問題である。 ここで日本政府はどう立ち回ろうとしているのだろうか。 6月18日未明、「香港に関するG7外相声明」が公表されたが、その内容は中国に対してかなり厳しい表現となっている。国家安全法について,「一国二制度の原則や香港の高度の自治を深刻に損なうおそれがある」と批判。さらに、「開かれた討議、利害関係者との協議、そして香港において保護される権利や自由の尊重が不可欠である」と強調したうえで、「中国政府がこの決定を再考するよう強く求める」と要求している』、「多国間枠組みを生かした対中抑え込み」、しか手はないようだ。
・『香港・国家安全法が問う根本問題  外相レベルとはいえ、G7各国が歩調を合わせ、中国の対応を明確に批判した意味は大きい。関係者によると、今回の声明の発表に関して日本政府は水面下でかなり積極的に動いたという。 香港問題は、単純化すれば「自由・民主主義体制」か「権威主義体制」かの選択の問題であり、国家の根本問題でもある。2020年秋に予定されている立法院選挙に向けて香港情勢は緊迫し、昨年同様の混乱は避けられないだろう。また11月の大統領選を控え、トランプ大統領の中国批判がエスカレートし、米中関係も緊張を高めそうだ。 そこで日本がどういう対応をするかは、これまでの領有権問題などとは比較にならない重みを持っている。そこであいまいな態度をとれば、国際社会での日本の存在感はなくなり、当の中国からも軽く見られるであろう。かといって単独で突出した中国批判を展開しても、反発を買うだけで成果を得ることは難しい。 外交には原理原則とともに、いかに問題を解決し、国益を実現するかというプラグマティズムも不可欠であり、両者のバランスをうまくとっていくプロの技が重要だ。 日本に今できることは、TPP構想やインド太平洋戦略構想を提起した時と同様、多くの国を巻き込んだ戦略的取り組みを実現させることであろう。例えば、外相レベルの共同声明に続き、次は香港問題にテーマを絞ったG7首脳によるテレビ会談を呼びかけ、中国にメッセージを発信するという手もある。 中国の姿勢はかたくなで、動きは早い。残された時間はあまりないようだ』、しかし、「中国」は「国家安全法」を前述のように異例のスピードで成立させてしまった。「残された」手はまだあるのだろうか。
タグ:香港・国家安全法が問う根本問題 香港の国家安全法 「インド太平洋戦略」構想 多国間枠組みを生かした対中抑え込み 「寛容の外交」から「原則重視の外交」へ 現在の習近平体制の振る舞いとは対極に 「才能を隠して、内に力を蓄える」 「韜光養晦」 鄧小平が打ち出したのは改革開放路線 新たな対中外交戦略の時代に 大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 「大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に」 薬師寺 克行 東洋経済オンライン 日本企業もこうした安全保障の動きへのアンテナを高くしておかなければ、経営の根幹を揺るがしかねない。半導体関連はそうした機微な分野として特に要注意 日本企業も“利敵行為”は許されない 「買わない」、「使わない」から「売らない」、「造らせない」までに及んでいる 日本企業も要注意、米国主導の“新型の対中ココム 安全保障の視点で機微な分野を特定して、部分的に中国を分離していく。それが米国の志向する「部分的な分離」戦略 米中対立の激化で、世界が米国圏と中国圏に「分断(デカップリング)」されるのではないかとの懸念 米国が志向する「部分的な分離」戦略 米中テクノ冷戦の主戦場・半導体 半導体産業がいわゆる“米中テクノ冷戦の主戦場”となっている 「新型肺炎から垣間見えた、対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか」 細川昌彦 日経ビジネスオンライン 新型コロナウィルス感染拡大が思わぬ贈り物 ナイーブな政府が日本を滅ぼす クリントン政権の本音は「米中で日本を共同支配」 日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した 「反日プロパガンダ」を強化 1994年、「愛国主義教育実施要綱」を制定。1995年から、徹底した「反日教育」を行うように 天皇訪中に助けられた後 日本を裏切った中国 香港政府は毎年民主化を求めてデモが起きる香港返還記念日の7月1日にも施行する方針 全人代常務委員会は「香港国家安全維持法案」を異例のスピードで可決 中国政府は昔から天皇を政治利用してきた 人権侵害国家のトップと天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ 米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている 米中戦争の最中に中国に接近する日本 「国賓訪日」は、新型コロナウィルス感染拡大により、年内は困難になったようだ 「習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」」 北野幸伯 ダイヤモンド・オンライン (その4)(習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由 魂胆は「天皇の政治利用」、新型肺炎から垣間見えた 対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか、大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に) 日中関係
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日韓慰安婦問題(その5)(韓国の慰安婦支援団体が窮地 疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説、元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露、《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」) [外交]

日韓慰安婦問題については、昨年8月7日に取上げた。今日は、(その5)(韓国の慰安婦支援団体が窮地 疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説、元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露、《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」)である。

先ずは、5月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国の慰安婦支援団体が窮地、疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238086
・『与党はユン前理事長を切り 政権と正義連を守るのか  元慰安婦の支援団体である正義記憶連帯(以下“正義連”、韓国挺身隊問題対策協議会〈以下“挺対協”〉の後継団体)前理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)氏をめぐる不正疑惑は、検察当局が正義連のソウルの事務所に家宅捜索に入るなど、新たな展開が見えてきた。 これまでユン前理事長をかばってきた政府与党も、不正疑惑が深刻化するにつれてユン前理事長に対して厳しい発言をし始めている。 政府与党はこれまで同様、政権内の不正疑惑は断固としてもみ消す姿勢であった。だが、今回は不正を告発したのが元慰安婦の中心的活動家、李容洙(イ・ヨンス)氏であるだけに、勝手が違うようだ。当初、ユン前理事長や正義連に批判的だったのは、保守系の野党とメディアであったが、最近では文在寅政権に近いハンギョレ新聞などもこの疑惑に関して積極的に取り上げるようになっていることも、もみ消しを難しくしている要因だろう。 これを受け、与党内の雰囲気も徐々に変わってきている。事態の推移を見極める必要があるが、正義連を守るためにはユン前理事長を犠牲にせざるを得ないのではないかという見方も出始めている』、「慰安婦支援団体」に超ド級の疑惑が発生とは面白くなってきた。
・『正義連とユン前理事長の態度の変化 イ・ヨンス氏の記者会見に注目  元慰安婦のイ・ヨンス氏の告発に対する正義連の反応はひどいものだった。 最初は「イ・ヨンスさんの記憶が歪曲(わいきょく)された」という人格を否定するようなもので、その後はさらに「大金のために態度を変えた」(ユン氏の夫)と侮辱。最終的には「保守勢力の謀略だ」と開き直った。 しかし、各種会計不正と公金流用疑惑が次々と明らかになると、正義連の反応に耳を貸す国民も少なくなっていった。中でも、最も疑惑が深まった契機が、安城(アンソン)の不動産購入疑惑である。この不動産は元慰安婦の憩いの場という位置付けでありながら、元慰安婦のためにほとんど利用されてこなかった。) そればかりか、挺対協とユン前理事長はこの物件を7億5000万ウォンで買い、1億ウオンの改装費をかけながら、イ・ヨンス氏の告発の翌日、購入価格を大幅に下回る4億2000万ウォンで売却した。 この不可解な不動産売買について、背後に何か隠さなければならないことがあるための隠蔽工作だとの見方が広がった。通常価格を大幅に上回る価格で購入し、売買を仲介した安城新聞代表だった李圭閔(イ・ギュミン)氏との間で裏取引が行われたのではないかとの疑惑へと発展している。 この不動産売買疑惑が発覚して以降、韓国世論の正義連、ユン前理事長に対する見方が大きく変わった。 世論の雰囲気を察知したのか、ユン前理事長の態度も変わってきた。 20日付のハンギョレ新聞では、元慰安婦のイ・ヨンス氏が同日、「(ユン前理事長が私のところに)来て膝をついて許しを乞うているが、いったい何の許しを乞うているのか私には分からなった」と述べたと報じている。 さらに、一部のメディアでは19日、ユン前理事長がイ・ヨンス氏と韓国大邱市(テグ)で面会し、「イ・ヨンスさんが涙を流してユン前理事長を許した」と報じた。だが、イ・ヨンス氏は「(ユン前理事長が)一度抱きしめてほしいというので、一度やってあげた」「そうしたら、年寄りで気持ちが弱くなっているせいか、涙が出てきた。ただそれだけだ」と述べ、ユン前理事長側の「イ・ヨンスさんがユン前理事長を許した」との説明を否定した。 イ・ヨンス氏は25日、記者会見の開催を予定しており、新たに正義連やユン前理事長についての疑惑が出てくるか注目されている』、「元慰安婦のイ・ヨンス氏」を「侮辱」しておきながら、偽の和解場面まで演出して利用するとは、悪どいやり方だ。
・『ユン前理事長に対し韓国政府も関与を始める  そもそも、正義連はイ・ヨンス氏が高齢のせいで記憶が歪曲されていると、イ・ヨンス氏の人格を否定した。そして、ユン前理事長は自分が曺国(チョ・グク)前法務部長官に対するバッシングのような仕打ちを受けていると、被害者のような態度をして開き直っていた。 しかし、ユン前理事長はマスコミの追及が厳しくなり、不正疑惑が広がってくるとイ・ヨンス氏を訪ねて許しを乞うている。 何も悪いことをしていないと開き直るのであれば、なぜ膝をついて許しを乞わなければならないのか。イ・ヨンス氏が「許した」とマスコミに公表しなければ、自分を守ることができないと考えたからではないのだろうか。 陳永(チン・ヨン)行政安全部長官は19日、国会行政安全員会に出席して、「正義連に22日までに証明資料を提出するよう要求した」「違法や不当な場合があれば妥当な措置を取りたい」と述べた。 韓国の法曹界では、告発内容が事実と確認されれば、寄付金・交付金の使用や会計不正に絡む横領容疑と、ソウル郊外の京畿道安城市にある建物の購入に絡む業務上背任行為の2つについて、法的に追及できるとみているようだ』、「京畿道安城市にある建物の購入」、は高値で購入・安値で売却というからには、裏に別の不正行為がある可能性もあろう。
・『ユン前理事長を守るべきなのか 見解が分かれる与党「共に民主党」  疑惑の深まりにもかかわらず、与党「共に民主党」の公式な立場は、依然として成り行きを見守り静観するというものだ。 20日時点でも、同党の姜勲植(カン・フンシク)首席報道官は会見で、「外部による会計監査と行政安全部などによる監査の結果を見て、総合的に判断した上で立場を明らかにする」と述べた。さらに記者団に対して、「(ユン前理事長)本人は、さまざまな方法で説明すべきことを説明すると承知している。事実関係が最も重要であり、それを中心に問題を処理する方針だ」と重ねて静観の姿勢を強調した。 党内では、疑惑について「論争や異論が多いわけではない」としながらも、「事案を重く、厳しく見ている」と述べた。 しかし、党内では危機感が芽生えている。 李洛淵(イ・ナギョン)前首相は「さまざまな問題意識を、責任ある党役員と意見交換した。具体的措置は議論されておらず、党で検討した後、決定するものとみられる」と述べた。 また、ある民主党議員は「先週末を前後して、憩いの場ペンション収益金論争、アパート購入資金論争などが新たに出てきたが、この2種類の疑惑だけはユン氏本人が必ずクリアしない限り、このままやり過ごすことは難しい」と述べた。それだけではなく、別の議員からは「党は、正義連はさておきユン氏個人の不正までカバーするつもりはない」と見放す発言も漏れてきている。 こうした事態を受け、党の最高委員の一人はハンギョレ新聞に対し、「非公開の最高委員会会議で今までの状況報告と最高委員の意見交換があるだろう」と述べ、この問題の収拾に本格的に乗り出す可能性を示唆した。 ただ、すぐに党員権を剥奪するつもりはないようだ。ユン前理事長の処遇決定のカギは、共に民主党の李海チャン代表が握っているというのが多くの関係者の見方である』、「ユン前理事長の処遇決定のカギは、共に民主党の李海チャン代表が握っている」、大統領ではなく、「党代表」に権限があるようだ。ただ、司法当局も「カギ」を「握っている」のではなかろうか。
・『野党は市民団体の構造問題と指摘 与党は市民運動否定を危惧  一方で、この疑惑は「個人の逸脱か、構造的問題か」という論争にも発展している。 共に民主党からは「一人運営体制から出てきた問題」(金鍾民〈キム・ジョンミン〉議員)という主張が出ているが、野党の未来統合党では「聖域化された市民団体の問題」との認識が強い。 実際に、共に民主党の盧雄来(ノ・ウンレ)議員はラジオインタビューで、「正義連の会計不正疑惑が、健全にしっかりとやっている市民社会活動まで根こそぎ否定されたり、蔑まれたりするような状況になってはいけない」と主張し、野党の主張を牽制。他方、野党の未来統合党などは「個人の逸脱やミスとしてだけ見るには難しい」「政府補助金や国民の寄付で維持されている他の市民団体に対しても、大きなビルを購入して資産が大きくなり、大企業でもないのに職員が非常に多い大規模な組織になったものがある」と指摘している。 元慰安婦については、多くの元慰安婦が共同で生活する「ナヌムの家」でも、巨額の後援金を元慰安婦に対して使わず、不動産や現金資産として保有し、今後は曹渓宗のホテル式老人療養院に使おうとしているとの内部告発がなされている。 噴出する告発を耳にすると、正義連関係の不祥事の原因がユン前理事長だけにあると片付けるのは無理があると言わざるを得ないだろう』、「元慰安婦が共同で生活する「ナヌムの家」でも、巨額の後援金を元慰安婦に対して使わず、不動産や現金資産として保有し、今後は曹渓宗のホテル式老人療養院に使おうとしている」、事実とすれば酷い話だ。「不祥事の原因がユン前理事長だけにあると片付けるのは無理がある」のは確かだ
・『文大統領の「被害者中心主義」は欺瞞? 相変わらず責任回避  では、文在寅大統領をはじめとした青瓦台は、この疑惑をどう捉えているのだろうか。 青瓦台は「今後の国政には関係がない」「ユン氏は共に民主党所属なので、立場を表明すべき事案ではない」として関与を避けている。別の青瓦台関係者は「この問題に(大統領と青瓦台を)引き込もうとしないでもらいたい」と、露骨に距離を置く姿勢を明確にしている。 韓国の歴代政権は元慰安婦の問題について迷走を繰り返してきた。それは慰安婦の問題を協議する相手がユン前理事長に一本化されていたため、ユン前理事長の意向を汲んで、しばしば立場を変更してきたからである。日本と非公式に了解した事項でも平気で無効化した。その最たるものが「(2015年の)日韓合意」である。 文大統領は「(2015年の)韓日合意で慰安婦問題は解決しない」として、合意の事実上の無効化を宣言し、「被害者中心主義」を強調した。18年1月に今回の告発をしたイ・ヨンス氏、ユン前理事長を青瓦台に招き、「過去の政権による合意は誤りだった。早期に後続措置を取りまとめてもらいたい」と発言した。 しかし、今に至るまで後続措置については未完のままである。そして今回イ・ヨンス氏が告発した正義連の不正疑惑の解決には、無関心で、解決に乗り出そうとしない。 今年初め、大韓弁護士協会は声明を出し、「政府は日本軍慰安婦問題の解決に積極的に取り組むべきだ」と主張していた。しかし、日本側が慰安婦問題について話し合いなどに応じる見込みは全くなく、元慰安婦に関する後続措置を一方的に述べた文政権に、新たな解決策などあるはずがない。日本との後続措置の交渉は糸口さえ見つけられないはずだ。 正義連をめぐる疑惑は、韓国の国内問題である。これまで歴代韓国政権が行ってきた、元慰安婦について何か問題が起こると矛先を日本に向けて補償や譲歩を引き出すという手法は通用しない。 文大統領が述べた「被害者主義」を貫くのであれば、正義連の疑惑に真摯に取り組み、元慰安婦が得るべき利益を回復するのが筋である。 イ・ヨンス氏は青瓦台の姿勢について何も述べていない。だが、これまでの青瓦台の無関心は責任回避のための行動だと責められて然るべきだ。イ・ヨンス氏含め元慰安婦たちが、これまで文政権の政治的宣伝に利用されたと批判されても不思議ではない。 イ・ヨンス氏が述べた、「だまされるだけだまされた、利用されるだけ利用された」というのは、ユン前理事長に対してだけでなく、文大統領にも当てはまるのではないか』、「だまされるだけだまされた、利用されるだけ利用された」、酷い話だ。「これまでの青瓦台の無関心は責任回避のための行動だと責められて然るべきだ」、その通りだろう。
・『正義連の問題は静観して終わるものではない  文政権に近いハンギョレ新聞は20日付の社説で、次のように戒めている。 「ユン当選者は今の事態が慰安婦の人権運動に対する韓国社会の信頼に直結する問題だという認識を持たねばならない。保守勢力とマスコミが悪意的に問題を歪曲し、政治的に利用していると反駁(はんばく)するだけで解決する問題ではない。(略)慰安婦の人権運動が満身創痍になっている事態を収拾できない。検察の捜査が始まった状況で、これ以上矢面に立つことを恐れてはならない」 正義連とユン前理事長に対する不正疑惑は、これまで元慰安婦の問題に真剣に取り組んできた多くの人々を落胆させている。本来であれば、文大統領自身が立ち上がって不正に取り組むべきだが、文大統領は拙著「文在寅の災厄」で述べたように、都合の悪い問題は避けて通るのが常であり、避け続けようとするだろう。 その場合、与党が対応しなければならないが、それは正義連そのものへの対応ではなくユン前理事長の党籍剥奪、国会議員の辞職という中途半端な処分で幕引きをするのではないだろうか。ユン前理事長を処分することで、正義連への問題波及を防ぎ、野党の未来統合党の構造的問題だという指摘をかわそうとするだろう。 元慰安婦問題は日韓間で解決された問題である。それを正義連、特にユン前理事長は解決されないように妨害してきた。正義連は、戦後の日本政府が行ってきた補償や取り組みについて元慰安婦や韓国世論に正しく伝えず、歪曲してきた。慰安婦問題がここまでこじれ、長期化した背景には、慰安婦問題の市民団体の窓口を挺対協ユン前理事長に一元化してきたことで、元慰安婦の本当の声が届かなくなっていたことが大きな要因である。 ユン前理事長が慰安婦問題の解決よりも、自身の利益を優先させてきたことが明白となった今、韓国国民は元慰安婦がこれまで伝えようとしてきた声に耳を傾け、そのために日韓の歴代政権がいかなる努力を払ってきたか、改めて考え直してほしい』、「慰安婦問題がここまでこじれ、長期化した背景には、慰安婦問題の市民団体の窓口を挺対協ユン前理事長に一元化してきたことで、元慰安婦の本当の声が届かなくなっていたことが大きな要因である」、これを機に「慰安婦問題」が解決に向かってほしいものだが、そうは問屋が卸さないだろう。

次に、6月5日付けプレジデント Digital「元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/35946
・『元従軍慰安婦たちを長年支援し、日本のメディアとも共闘してきた韓国の団体が、当の元慰安婦によって不正を告発され、検察の捜査が入る事態に』、面白い展開になってきた。
・『「正体不明の中国人女性を、慰安婦役として“輸入”」  長年、日本軍の韓国人元従軍慰安婦への支援を行う中核となっていた団体を、当の元慰安婦の代表格と目されている李容沫(イ・ヨンス)氏(92歳)が告発、ソウル市内の団体事務所に韓国検察が家宅捜索に入る事態に発展している。 この団体は、「日本軍性奴隷問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、旧挺対協)。「従軍慰安婦に対する日本政府の謝罪と賠償金」を求めて、ソウルの日本大使館前をはじめ世界各地で慰安婦像を建てるといった数々のキャンペーンの中心となってきた。 だが、5月7日、故郷の大邱で会見を開いた李氏は、約30年もの間ともに行ってきた正義連とその代表の尹美香(ユン・ミミャン)氏を、「騙されるだけ騙された」と痛烈に批判。韓国国内で大きな波紋を呼んでいる。 韓国の各媒体で報じられている李氏の告発の内容は、まさに「何でもあり」である。活動資金である学生たちの寄付について、「使途がわからない」「正義連前理事長の個人口座が、募金に使われていた」などと私的流用を伺わせたり、「正体不明の中国人女性を“輸入”して集会を維持している」「アメリカ人が怖がるように“性奴隷=sex slaveという言葉を使った」というデタラメ行為まで明らかにしてしまった。2015年に日本政府が10億円を拠出することで合意した日韓協定の際も、「10億円が入ることは尹代表しか知らなかった」としている』、「正義連前理事長の個人口座が、募金に使われていた」、「正体不明の中国人女性を“輸入”して集会を維持」、「アメリカ人が怖がるように“性奴隷=sex slaveという言葉を使った」、これまの活動がここまで「デタラメ」だったとは、驚かされた。
・『団体代表が住宅5戸をキャッシュで購入した  「反日」が国是ともいわれる韓国国内で、その批判がずっとタブー視されてきた正義連。尹氏は4月15日の韓国総選挙で与党「共に民主党」から出馬、初当選を果たしたばかりだ。得意の絶頂と思われた次の瞬間、皮肉にも「疑惑の総合商社」と化した状態だ。 聯合ニュース(5月21日付)によれば2012年に現代重工業から受領した10億ウォンを原資に保養施設を相場の3倍の7億5000万ウォンで購入し、近年、半額程度で売却。売買した尹氏の知人と尹氏本人らの背任容疑が捜査の対象だという。1995年から2017年にかけて、尹氏のファミリーがマンションなど住宅5戸をすべてキャッシュで購入した際の資金源も、野党議員に追及されている。 告発した李氏は、1993年に自らの体験を書籍にして出版、韓国国内でも著名な存在であり、2017年に訪韓したトランプ米大統領をハグした光景が報じられたことで、日本でも知られている。李氏の告発が本当なら、正義連は慰安婦という存在をダシにして長年金儲けを続けていたということになる。正義連にしてみれば、日韓関係がこじれて長引くほど“儲かる”わけだから、そもそも活動の動機に疑念を抱かれても仕方あるまい。 それどころか、前身の挺対協について、「日韓分断のために組織された」「日韓・韓米関係を破綻させ、大韓民国を『金氏朝鮮』(北朝鮮)と中国の手に委ねようとした」と断じ、そうなるに至る経緯の詳しい報道も出始めている(Japan‐in Deaph5月26日付『韓国激震、支援団体真の目的』)』、「正義連は慰安婦という存在をダシにして長年金儲けを続けていたということになる。正義連にしてみれば、日韓関係がこじれて長引くほど“儲かる”わけだから、そもそも活動の動機に疑念を抱かれても仕方あるまい」、同感だ。
・『「私は慰安婦ではなかった」  李氏の告発を受けて、正義連は税務申告のミスは認めたものの、「横領はいっさいない」と釈明。「李氏は年を取って記憶が変わった」などと主張した。尹氏本人も、フェイスブックに「李氏は1992年に、電話で蚊の鳴くような声で『私は慰安婦ではなかった。あれは友達の証言です』と証言したときのことを昨日のことのように覚えている」と書き込んだ(朝鮮日報5月8日付)。「李氏はニセモノ」とばかりに反撃するつもりで書きこんだのかもしれないが、オウンゴールに等しい行為に失笑する向きも少なくないようだ。 そもそも、なぜこの時期にこんな騒動が起きたのだろうか。日本国内では、2014年に朝日新聞が慰安婦問題についての一連の報道について誤報を認め、記事を取り消す謝罪会見を開いたが、2017年に発足した文在寅政権は慰安婦像の違法設置を進め、さらに日本側の怒りに油を注ぐかのように「徴用工」問題を蒸し返した。 4月の総選挙にも圧勝した後は、現政権はいわゆる「親日賛美禁止法」まで議会に通そうという勢い。日本からすれば、もう関わりたくないという「韓国疲れ」や、仮に関わっても、日韓間の通貨スワップも含めて、デメリットしか感じられないというのが一般通念のようだ』、「韓国疲れ」とは言い得て妙だ。
・『韓国国内で昨年から続出している「反日」とは逆の動き  ところがその一方、韓国の市井からその流れを引っ張り戻すような動きが昨年からいくつも持ち上がっている。昨年6月5日にはソウル市中心部で、「今日の集会は反日民族主義に公然と反対する史上初めての集会」として、慰安婦の少女の像の設置や韓国の差別主義的な反日活動に反対する集会が開かれた。 また同7月に韓国人教授が、韓国を「嘘つきの国」と断じ、日本統治下で虐げられたという韓国左派の通念とは正反対の事柄を列記した『反日種族主義 日韓危機の根源』を上梓し論議を呼んだ。日本でも翻訳されて(文藝春秋刊)、ベストセラーとなるなど、日韓双方で大きな話題となった。 同10月には文在寅大統領の退陣を求めて、ソウルで20万人! が夜を徹してのデモを行っているし、12月には韓国で製作された徴用工像のモデルが実は日本人であったとして、当の像の作者が名誉棄損の裁判を起こしている。こうした出来事が、日韓関係をよい方に向かわせる力となるのかはわからないが、その行方は日韓2国の関係だけでは見えてこない』、「昨年から続出している「反日」とは逆の動き」、初めて知ったが、勢いを増してほしいものだ。
・『日本・韓国は米中どちら側につくのか?  年初来の新型コロナウイルスの感染拡大と、それに乗じた香港に対する中国の強権発動を機に、米国と中国の対立がいっそう先鋭化している。これは貿易のカネ勘定の争いではなく、2つの超大国の覇権争いであり、民主主義国家とそうでない国との価値観の争いでもある。一時「外交の天才」と称されたという韓国・文在寅政権も、当然「どちら側」につくかの選択を余儀なくされよう。 世界各地で強権的な「コロナ外交」を展開する中国との「断絶宣言」を行ったトランプ米大統領は台湾にエールを送り、英国・イタリア・ドイツ・インド・オーストラリアなど8カ国が計100兆ドル(約1京1000兆円)超の損害賠償を求めるなど、対中包囲網が敷かれている。もっとも日本は、安倍首相がコロナ発生地として中国を名指しにはしたものの、今のところこの輪には加わらず、習近平を国賓として招く予定も消えていない。 韓国はどうだろう。そもそも2015年には中国・北京に赴いた朴槿恵大統領(当時)が習近平・中国国家主席、プーチン露大統領らと並んで「抗日戦争勝利・世界ファシズム戦争勝利70周年記念式典」の貴賓席に並んでいたが、文大統領も昨年のGSOMIAの一件でとうとう米国にも愛想をつかされ、日本に対しても、中国に近づきすぎることへの恐怖感と、日韓通貨スワップ協定の締結という本音は抱きつつも、昨年来の輸出規制措置や徴用工訴訟の件を蒸し返し、関係改善のそぶりを表立っては見せていない。 このままなら、韓国は日米との数十年来の縁を解消し、中国の勢力圏入りする可能性は大きい。日韓の関係はお互いの国民感情以前に、すでに米中関係に規定されているようだ。ここまでの流れは必然で、慰安婦問題をはじめとする日韓間の数々の衝突はそれを強力に後押しした格好だ。今回の告発騒動も、その動きに際してのハレーションに過ぎない可能性もある。 正義連と連動して日本政府批判を延々繰り返してきた日本国内の慰安婦支援団体や朝日新聞ほか主要メディアは、この一連の出来事をどうとらえているのだろうか。仮に「日本と韓国の離反」「韓国を北朝鮮・中国に差し出す」という正義連の目的が本当なら、長年にわたる宿願が達成され、「思惑通り」とほくそ笑んでいるのだろうか』、米中の対立が激化するなかで、「韓国」が「中国の勢力圏入りする」とすれば、韓国の半導体産業や自動車産業には大打撃だろう。日本としては、韓国財界と手を組んで、「中国の勢力圏入り」を阻止すべきだろう。

第三に、6月14日付け文春オンライン「《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/38411
・『「私が死ぬところを撮影しようと待っているのか!」 6月8日午後、韓国ソウル市の汝矣島にある国会議員会館530号室でこんな怒声が響いた。 声の主は、今年4月の総選挙で初当選した韓国与党・共に民主党の尹美香(ユン・ミヒャン)議員(55)。慰安婦支援団体・正義記憶連帯(正義連)の前理事長だった彼女は、慰安婦問題とカネを巡る数々の疑惑で韓国メディアを騒がしている渦中の人物だ。 その前々日、6月6日の夜10時50分頃には、ソウル市麻浦区にある慰安婦休養施設のソン・ヨンミ所長(60)が自宅で死んでいるのが発見された。死因は縊死と見られている。 尹氏とソン氏は、長く行動をともにしてきた間柄だ。尹氏は、ソン氏の死の翌日、休養施設を訪れた後、検察の捜査とメディアの取材がソン氏を死に追いやったかのように非難する文を自身のフェイスブックに投稿。そして8日に登院すると、議員会館の事務室前に集まった取材記者たちに声を荒げたわけだ』、「慰安婦休養施設のソン・ヨンミ所長」が死んだのは初めて知ったが、責任感が強かったのだろう。
・『せせこましいスキャンダル  一連のスキャンダルが噴出したのは、今年5月7日から。元慰安婦女性・李容洙(イ・ヨンス)氏(91)が記者会見やインタビューを通じ、元慰安婦女性の処遇や不透明なカネの流れなどについて尹氏を公然と批判したのが発端だ。これにともなって正義連と尹氏のカネにまつわる疑惑がいくつも浮上し、尹議員は初登院の前から検察の調査を受けることになった。 正義連の前身・韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が発足したのは1990年。やがて閣僚経験者や国会議員が名を連ねる有力な圧力団体に成長し、一民間組織でありながら日韓の慰安婦問題で絶大な影響力を振るうようになった。 2015年の慰安婦問題の日韓合意でも、韓国外交部(外務省に相当)が事前に協議内容を挺対協に漏らしていた疑惑がある。だがそうした大きな存在感の割に、疑惑の多くは尹氏の身内が絡んだせせこましい内容ばかりだった』、「せせこましいスキャンダル」とは言い得て妙だ。
・『取り沙汰される「カネをめぐる5大疑惑」  今回浮上した主な疑惑は5つ。1つめは、元慰安婦女性の憩いの場としてソウル郊外の安城市に用意された施設の転売問題だ。 挺対協はこの建物を2013年に相場の倍近い7億5000万ウォン(約6700万円)で買い入れた後、今年4月に4億2000万ウォン(約3750万円)で売却したという。韓国では不動産の転売で差益を稼ぐのが財テクの常道であり、団体に大損をさせた不自然な取引の真意が詮索されているわけだ。またこの施設の管理費名目で尹氏の父親に7580万ウォン(約680万円)支給していたことも、人々を呆れさせた。 2つめの疑惑は、正義連=挺対協に対する後援金などの振込先が尹氏個人の銀行口座だった問題だ。尹氏は「金額さえ合っていれば問題ないと思ったが、安易な行動だった」と謝罪。だが当然ながら私的流用の疑いは拭い切れていない』、高値購入、安値売却の裏には別の取引が隠されている可能性もありそうだ。
・『正義連のニュースレターを夫の会社に発注  残りの疑惑は、どれも尹氏の個人的な金銭問題だ。3つめは、尹氏夫妻が1995年から2013年まで、自宅や賃貸用と思われるセカンドハウスを現金で計7回も売買していた問題。尹氏は購入資金について辻褄の合わない説明をしてすぐ言葉を翻すなどしており、その出所に疑惑の目が向けられている。 今月5日にはまた、尹氏の義妹名義になっていた住宅も実質的な所有者が尹氏夫妻ではないかとの疑惑が提起された。  4つめは、尹氏の夫、キム・サムソク氏が絡んだ疑惑だ。キム氏は1994年に北のスパイ容疑=国家保安法違反で懲役4年の判決を受けた経歴の持ち主。後の再審請求を経て2018年に一部無罪が認められたが、「反国家団体と接触して工作資金を受け取った」点については有罪とされた。 キム氏はこの間の2005年にソウル近郊の水原市でローカル紙「水原市民新聞」を刊行、ウェブ版とともに運営を続けている。この「水原市民新聞」に対し、正義連はニュースレターの編集とデザインを発注し続けてきた。正義連は入札を経ていると主張するが、同団体への寄付金や政府の補助金が「水原市民新聞」を通して尹氏の身内に還流している構図は否めない。 いっぽうでキム氏の新聞は、身内の宣伝にも余念がないようだ。疑惑発覚後の今年5月12日にはウェブ版に「安倍が最も憎む国会議員、尹美香」と題した外部からの寄稿を掲載し、尹氏を「日本の軍国主義復活のための平和憲法改正に最も邪魔になる人物」と紹介して、妻の立場を擁護。また2016年2月には、ピアノをたしなむ娘のリサイタルの告知に紙幅を割いている。 2015年9月には挺対協の欧州キャンペーンを伝える記事で、読者に募金を呼びかけた。掲載された振込先は、上述の通り尹氏の個人口座だ。この問題については今年5月25日、韓国の市民団体が、尹氏の個人口座を振込先にして寄付金の私的流用に加担したのは問題だとして、ソウル西部地検に告発。同時にキム氏は実在しない「幽霊記者」の名義で作成した記事をポータルサイトに提供、その業務を妨害したなどの容疑でも告発を受けている』、「安倍が最も憎む国会議員、尹美香」には苦笑せざるを得ない。いずれにせよ、これらは「せせこましいスキャンダル」だ。
・『変転する娘のUCLA留学費用の説  最後は、娘の留学に関する疑惑だ。ピアノを学んでいる娘は2016年から米イリノイ大、2018年から米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)音大の2年課程に在学している。 韓国紙「毎日経済」によるとイリノイ大の学費は年間4万ドル(約430万円)、またUCLAでは2018年9月から今年3月までに8万5000ドル(約910万円)の学費を要したとされる。これに対して尹氏の夫キム氏の年収は、本人の申告を元に野党議員が算出したところによると約2500万ウォン(約223万円)だ。 生活費なども加えた高額な留学費用について、尹氏は当初「全額を奨学金で賄える大学を探した」と説明していた。 だがUCLAが留学生に全額奨学金を支給しないことが分かると、夫が再審で一部無罪を勝ち取った際の2億4000万ウォン(約2140万円)の賠償金を充てたと言葉を翻した。しかし前述の通りキム氏の再審の結果が出たのは2018年であり、2016年からそれまでの留学費用をどうしたかは説明されていない。 当の娘は、疑惑が浮上した後にSNS上での活動を中断。だが母親の尹氏が正式に国会議員の身分となるのを待っていたかのように、6月上旬に卒業記念写真を投稿して韓国メディアの注目を集めていた』、釈明のお粗末さには呆れ果てた。
・『ソン氏の死を巡っても渦巻く疑惑  死亡したソン氏について尹氏自身が綴ったところによると、2人が知り合ったのは2004年。慰安婦休養施設の担当者を探していた尹氏は月給80万ウォン(約7万1000円)しか提示しなかったが、ソン氏は誘いに応じた。2004年当時、韓国の大卒初任給は178万7000ウォン(約15万9000円)だ。ソン氏はそれから3カ月の間に3回も辞表を書いたが、尹氏は泣きながら引き止めたそうだ。 そのソン氏を巡っても今月12日、元慰安婦女性の口座を使ってマネーロンダリングしていたという疑いが報じられている。現地大手紙「朝鮮日報」によると疑惑を提起したのは、ソウル市麻浦区の慰安婦休養施設で暮らしていた元慰安婦女性の孫娘だ。孫娘がソン氏に電話して、祖母の口座から多額の現金を引き出したことを問いただしてほどなく、その死が知らされたという。同じく「国民日報」はまた、孫娘が問題の「背後にいるのは尹氏だろう」とコメントしたとも伝えている。 「朝鮮日報」は同じ日、ソン氏が最後に電話で話した相手が尹氏だと確認されたとも報じた。尹氏の秘書が「ソン氏がいる自宅に人の気配がない」と消防に通報したのは、最後の通話から約12時間後の夜10時33分のことだ。 ソン氏の死についても野党は追及の勢いを強めているが、真相が明らかになる日は来るのだろうか』、「消防に通報したのは、最後の通話から約12時間後」、極めて不自然だ。検察がこれらの疑惑を明らかにしてほしいものだが、「文」政権から横ヤリが入る可能性もありそうだ。いずれにしても、韓国が「慰安婦問題」を切り出し難くなったとすれば、結構なことだ。
タグ:「慰安婦休養施設のソン・ヨンミ所長」が自殺 「保守勢力の謀略だ」と開き直った 文大統領の「被害者中心主義」は欺瞞? 相変わらず責任回避 ユン前理事長を守るべきなのか 見解が分かれる与党「共に民主党」 2つめの疑惑は、正義連=挺対協に対する後援金などの振込先が尹氏個人の銀行口座だった問題 「大金のために態度を変えた」 安城市に用意された施設の転売問題 正義連 これまでの青瓦台の無関心は責任回避のための行動だと責められて然るべきだ (その5)(韓国の慰安婦支援団体が窮地 疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説、元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露、《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」) 人格を否定するようなもの 元慰安婦の支援団体 中国の勢力圏入りする」とすれば、韓国の半導体産業や自動車産業には大打撃 与党はユン前理事長を切り 政権と正義連を守るのか 前理事長の尹美香 慰安婦問題がここまでこじれ、長期化した背景には、慰安婦問題の市民団体の窓口を挺対協ユン前理事長に一元化してきたことで、元慰安婦の本当の声が届かなくなっていたことが大きな要因である 「韓国の慰安婦支援団体が窮地、疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説」 ユン前理事長に対し韓国政府も関与を始める 偽の和解場面まで演出して利用 日本・韓国は米中どちら側につくのか? 武藤正敏 韓国国内で昨年から続出している「反日」とは逆の動き 韓国疲れ 背後に何か隠さなければならないことがあるための隠蔽工作 「私は慰安婦ではなかった」 正義連は慰安婦という存在をダシにして長年金儲けを続けていたということになる。正義連にしてみれば、日韓関係がこじれて長引くほど“儲かる”わけだから、そもそも活動の動機に疑念を抱かれても仕方あるまい 取り沙汰される「カネをめぐる5大疑惑」 変転する娘のUCLA留学費用の説 日韓慰安婦問題 「《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」」 正義連の問題は静観して終わるものではない 団体代表が住宅5戸をキャッシュで購入した イ・ヨンスさんの記憶が歪曲 元慰安婦のイ・ヨンス氏の告発 アメリカ人が怖がるように“性奴隷=sex slaveという言葉を使った 安倍が最も憎む国会議員、尹美香 消防に通報したのは、最後の通話から約12時間後 正義連前理事長の個人口座が、募金に使われていた 7億5000万ウォンで買い、1億ウオンの改装費をかけながら だまされるだけだまされた、利用されるだけ利用された 文春オンライン せせこましいスキャンダル 不祥事の原因がユン前理事長だけにあると片付けるのは無理がある ソン氏の死を巡っても渦巻く疑惑 正義連とユン前理事長の態度の変化 イ・ヨンス氏の記者会見に注目 ダイヤモンド・オンライン 元慰安婦が共同で生活する「ナヌムの家」でも、巨額の後援金を元慰安婦に対して使わず、不動産や現金資産として保有し、今後は曹渓宗のホテル式老人療養院に使おうとしている 野党は市民団体の構造問題と指摘 与党は市民運動否定を危惧 ユン前理事長の処遇決定のカギは、共に民主党の李海チャン代表が握っている 購入価格を大幅に下回る4億2000万ウォンで売却 「元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露」 「正体不明の中国人女性を、慰安婦役として“輸入”」 つめは、尹氏の夫、キム・サムソク氏が絡んだ疑惑 3つめは、尹氏夫妻が1995年から2013年まで、自宅や賃貸用と思われるセカンドハウスを現金で計7回も売買していた問題 不動産購入疑惑 プレジデント Digital 不正疑惑は、検察当局が正義連のソウルの事務所に家宅捜索に入るなど、新たな展開 正義連のニュースレターを夫の会社に発注
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日韓関係(その9)(韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く、GSOMIAで方針転換 動揺する文在寅の支持層、GSOMIA破棄延期 日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を) [外交]

日韓関係については、9月20日に取上げた。韓国がギリギリになってGSOMIA破棄を延期したことを踏まえた今日は、(その9)(韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く、GSOMIAで方針転換 動揺する文在寅の支持層、GSOMIA破棄延期 日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を)である。

先ずは、中部大学特任教授(元・経済産業省貿易管理部長)の細川昌彦氏が11月25日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く 国内向けのメンツに腐心する韓国」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00023/?P=1
・『今回の日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を巡る騒動は韓国の“独り相撲”だった。自ら墓穴を掘っただけで、「日本の完勝」と喜ぶのも適当とは言えないほどだ。 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権はここまでの米国の本気の圧力を想定しておらず、そして日本はそのうち折れてくるだろうと、日本の姿勢も読み違えた。当初、韓国は日本の輸出管理厳格化の措置への対抗措置としてGSOMIA破棄のカードを出してきた。そうすれば、米国はGSOMIA破棄を回避するために韓国だけでなく日本に対しても働きかけ、日本が輸出管理厳格化の措置を撤回するように追い込めると期待していたようだ。そのためには、GSOMIAと輸出管理厳格化という2つの問題を何としてでもリンクさせることが必要だった。 日本側もそこがポイントであることは百も承知で、両問題が別次元で全く無関係であることを徹底的に説明し続けた。結局、米国は韓国が期待する「喧嘩(けんか)両成敗」で調停する動きをせず、韓国のもくろみは外れた。 それどころか、米国はGSOMIAの失効が米国の安全保障を直接的に脅かすものだと受け止めて、米国の韓国への圧力は失効期限が迫るにつれて日に日に激しさを増していった。背景にあったのは対北朝鮮というよりは、対中国である。米議会の対中脅威論も拍車がかかり、GSOMIA継続について米議会上院が全会一致で可決する事態にまで発展した。さらにそこに、米国は在韓米軍の駐留経費の韓国負担を約5倍に増額するという圧力もかけた。 文政権は追い込まれ、GSOMIAを続けざるを得なくなった。あとは国内からの「無能な外交」との批判を避けるために、国内向けにどうメンツを保つかに腐心した。ポイントは韓国がGSOMIAの失効を回避するという方針転換と同時に、日本にも輸出管理で譲歩させたと国内向けに強弁できる状況をつくることだ。 そこで韓国はGSOMIAの方針転換決定の直前のタイミングになって、輸出管理に関して「世界貿易機関(WTO)提訴の手続きを中断する」と外交ルートを通じて日本側に伝えてきた。これをきっかけに局長級の会合の開催を日本側と合意できれば、局長級の会合開催を“日本から引き出した”ということにして、それを大義名分にできる。そして、しかもタイミングをGSOMIAと合わせることによって、両問題がリンクしているかのように見せられるとの思惑だ』、韓国側はメンツ確保に必死だったようだ。
・『「対話」を「協議」にすり替えて強弁する  さらに国内向けのメンツのために、輸出管理での局長級の会合を「協議」と位置付けて説明し、日本が譲歩したように見せかけた。 しかし、これは「協議」ではなく「対話」である。 一般には分かりにくいが、国同士の「協議」と「対話」は、その意味が大きく異なる。きちっと使い分けるのが国際的にも常識になっている。つまり「協議」とは国同士の交渉の場であるのに対して、「対話」は交渉の場ではなく、単に意見交換して理解を深め合うものだ。 韓国は日本の輸出管理厳格化の措置の撤回に向けて交渉する場だと国内的に言えるように、故意に「協議」と言い換えているのだ。 ところが事実は、正確には「輸出管理政策対話」と言われるもので、お互いの輸出管理についての理解を深め合うものだ。しかもこれは、以前から日韓政府間の意見交換の場として局長級で行われてきたもので、特に新しい動きではない。ところが文政権になって以降の過去2年半、韓国が会合の開催に応じてこなかった。これを従前通りに再開したものだ。つまり、日本の措置の撤回に向けた協議ではない』、「「対話」を「協議」にすり替えて強弁する」、苦しい対応だが、韓国マスコミはどう伝えたのだろう。
・『「WTO提訴の中断」のカードで「政策対話の再開」を買った  日本側は何もこれまでの方針を変えていないし、何も譲歩していない。「対話」は輸出管理厳格化についての決定の見直しに何らコミットしていない。これまでも日本政府は「一定の条件が整えば対話を再開する」と言ってきた。その「一定の条件」が満たされたと判断したのだ。それが「WTO手続きの中断」という通報だ。 7月に課長級の「事務的説明会」が開催された。あの冷え冷えとした雰囲気の中で行われた会合の後、韓国側のゆがんだコメント発表に日本政府はあぜんとした。“言った言わない”で相当ギクシャクして、実に後味の悪いものだった。 その後、非公式に役人同士でコミュニケーションを繰り返し、WTOでは長時間の二国間協議も経て、次第に事務レベルでは韓国側の理解も進んだのは間違いない。韓国側が自分たちの輸出管理の問題点も認識し、この間、輸出管理当局同士の意思疎通がある程度進んだのも事実だ。 それでもWTO提訴というけんかを売られているうちは、真摯な「対話」などできるはずがない。今回のWTOプロセスの中断通知があったからこそ、日本側も「韓国が問題点改善の意欲を示した」と認めて、「対話」再開を決めたのだ』、なるほど。
・『ところが韓国は国内へのメンツから、こうした事実を認めたくない。GSOMIAの失効回避と輸出管理厳格化の対話の再開を意図的にリンクさせることで何とかメンツを保とうとしている。それは韓国の報道を見ても明らかだ。 韓国側はGSOMIAと関連付けるために、そう見えるようにタイミングを見計らって「WTO提訴プロセスの中断」というカードを切ってきた。日本はそのカードに対して輸出管理当局として上記のような当然の判断をしただけで、何らGSOMIAとは無関係だ。タイミングも含めて必死に関連付けようとしているのはあくまでも韓国なのだ』、私も初めのうちは「GSOMIA」と「輸出管理」をセットで考えていたが、それが別物というのを改めて理解できた。
・『韓国のメンツ作戦に乗せられた日本の報道  「GSOMIAはいつでも失効可能との前提付き」「条件付きのGSOMIA延長」「日本の輸出管理厳格化の措置の撤回に向けた協議の開始」 韓国側の発表は、国内的にメンツを保つための強弁の文言のオンパレードだ。 韓国は国際的な交渉事の後、自分に都合のいいように事実を歪曲(わいきょく)して発表する常習犯である。どこの国も多少はそういう要素はあるが、韓国の場合、臆面もなく大胆で、米韓自由貿易協定(FTA)交渉時に交渉相手の米国もあぜんとしたのは有名な話だ。日本は7月に行われた「事務的説明会」の後でも韓国側発表で苦い経験をしている。 今回もそうした韓国側の意図的発表を予想して、日本政府も記者会見で明確に2つのポイントを説明している。1つは、GSOMIAの失効回避と輸出管理についての政策対話の再開は無関係であること。そしてもう1つは、あくまでも「対話」であり「協議」ではないことだ。 すると、韓国は「日本政府の発表は合意内容を意図的に歪曲した」と外交ルートで抗議する念の入れようだ。国内向けにメンツを保てなくなることへの焦りだろう。 それにもかかわらず、日本の一部のメディアは意図的にGSOMIAの失効と結びつけ、しかも「協議」と報道しているのだ。まるで日本政府の記者会見よりも韓国政府の記者会見を信じているかのようだ。これでは韓国の思うつぼだ。我々は厳しい目で報道を見極める必要がある。 今後、輸出管理についての対話はどうなるのか。日本の輸出管理厳格化の措置は見直し、撤回されるのだろうか。 韓国側は案の定、「日本の措置の撤回に向けた協議」と国内向けに宣伝している。そして日本のメディアの一部もそういう印象を与える報道をしている。もちろんこの場で措置撤回の要請をするのは韓国の勝手だ。しかしあくまでボールは韓国にあることを忘れてはならない。 韓国の輸出管理を審査する人数が極端に少なく審査体制が脆弱であることは申請をする民間企業の間でも衆目の一致するところだとささやかれている。法制度についても他国と比べて不備も指摘されている。輸出管理をきちっと審査する体制を整え、法制度も不備を直すことを確認して、大丈夫だと日本政府が判断できなければ何も事態は動かない。 そうしたことを見極め、確認する場が「対話」だ。あくまで交渉するわけではない。 それらを判断材料にして日本が自国の輸出管理の運用の意思決定をする。その結果、韓国の扱いが変わる可能性ももちろんないわけではないのは、他国に対してと同様だ。 こうした当たり前のことを日本政府も記者会見で繰り返し説明している。メディアもきちっと報道して欲しいものだ』、韓国寄りの報道をした「日本の一部のメディア」があったようだが、この問題の広報では、GSOMIAと輸出管理をタイミングを合わせることでセットだと巧みに思わせた韓国側に軍配が上がりそうだ。
・『かつての“空騒ぎ”も反省を  半導体製造関連の3品目の個別許可については、これまで通り淡々と継続する方針だ。この点でも日本は何も譲歩していない。 7月に日本の韓国への輸出管理の厳格化措置が発表されると、「韓国の半導体産業に大打撃」「世界の半導体関連の供給網に懸念」と報じられた。そういう不安をあおる論者のコメントをメディアもしきりに取り上げた。 韓国は日本のそうした報道を真に受けて、むしろ利用して日本への反発を強め、韓国産業界も対応に奔走した。 しかし私は当初からそれが「空騒ぎ」で、半導体生産に支障が生じることは杞憂(きゆう)だと指摘してきた(拙稿「なぜ韓国の『ホワイト国除外』で“空騒ぎ”するのか」 )。 ふたを開けてみると、やはり影響はほとんどなく、先日、韓国政府自身も影響は限定的であることを認める発表をしている。今後も問題ない通常の取り引きについては個別許可が積み上がっていくだろう。このため、韓国はWTO提訴という拳を振り上げたことも正直、調子が悪くなったのだ。 「WTO提訴のプロセスの中断」で、メンツを保ちながら拳を下ろしたのも当然の結果だ。当時不安をあおった日本の論者、メディアには検証と反省が必要ではないだろうか。 いずれにしても今回のGSOMIA騒動は、いったんは収まったが、いわゆる元徴用工を巡る本質的な問題に韓国側は依然として向き合っていない。来年早々、訴訟の原告が日本企業の資産売却に動く恐れがある中で、日本には今回のような「軸がぶれない対応」が必要だ』、「徴用工問題」ででは米国の後押しが期待できないだけに、日本政府には頑張って欲しいところだ。

次に、前駐韓大使の武藤 正敏氏が11月27日付けJBPressに掲載した「GSOMIAで方針転換、動揺する文在寅の支持層 革新系支持層へのアピールのため「徴用工問題」を持ち出す可能性も」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58376
・『文在寅氏の支持率は概ね40%台を維持している。政権3年目としては表面上好調な数字ではあるが、革新と保守の対立は激化し、文在寅大統領に反発する人々の抗議活動は勢いづいている。これまで文在寅政権は、自分たちが推進したい政策のために支持者層を煽って、反対派潰しを図ってきたが、文政権の政策失敗は直ちに世論全体が反文在寅に向かう危険性をはらんでいる。 来年4月には国会議員選挙が実施される。これに敗北すれば反対派の勢いは増し、レームダック化が加速する。それを防ぐため、文在寅大統領は現在、ますます革新系の支持を意識した政治を行っているが、そうした政治は最近ことごとく失敗している。GSOMIA破棄から急転直下、破棄撤回に至ったのは失敗の典型例だろう。 今回の破棄撤回は韓国メディアも予測していなかったようであるが、世論調査ではおよそ70%が、延期はよかったと回答している。ただ、文在寅政権の支持層には失望感が漂っている。韓国政府は失敗を隠そうと躍起となっているが、今後行われる輸出管理に関する対話は最初から日韓で認識が異なっており、韓国政府の期待通りには進まないだろう。その場合、韓国政府はそれを反省するばかりか、日本に対して新たな強硬策に出てくる可能性がある。 その時、文在寅政権は何をするのか。それが元朝鮮半島出身労働者(以下「元徴用工」)に関するものとなることが懸念される』、「元徴用工」問題で「強硬策に出てくる可能性」、とは穏やかではない。
・『文在寅政権の政策は国内革新系の支持獲得が目当て  文在寅大統領は、当初から保守層には受け入れがたい政策を打ち出していた。 文在寅大統領は就任時の演説で、「わたくしを選ばなかった人も含め、すべての人のための大統領になる」と述べたが、実際にやったことは「積弊の清算」を旗印とする「保守政権の業績否定」と「親日の清算」だった。 最大の「積弊の清算」は「漢江の奇跡」を教科書から抹殺したことである。「漢江の奇跡」は当時の朴正熙大統領が日本との国交正常化資金を活用し、60年代前半には100ドル未満だった1人あたりGDPを、現在の3万ドル水準まで引き上げた成長の原点である。しかし、これを成し遂げたのが、朴槿恵前大統領の父であり、軍出身の朴正熙氏であったため認めたくなかったのだろう。文在寅氏は「歴史の真実を曲げた」のである。 保守の業績の否定は、国内の分断につながる。さらに国内政策の失敗で、中間層の離脱も始まった。そこで、文在寅政権は、国民全体の支持を集めることは諦め、支持基盤である革新層の支持獲得に集中しているわけだ。 文在寅大統領が重視してきた国内政策は、所得主導成長政策、検察改革と曺国氏の法相任命、GSOMIA破棄であり、いずれも革新系支持層の主張に寄り添ったものだった。しかし、革新系が重視する分野での文在寅政権の政策はことごとく失敗している。というのも、それらが国益を無視し、強引に自己の主張を通そうとする政策だからである』、「「漢江の奇跡」を教科書から抹殺」、とは驚いた。「漢江の奇跡」を可能にした日韓基本条約締結と請求権資金・援助金の存在を無視したいのだろう。「歴史認識」の問題は日本にも増して酷いようだ。
・『所得主導政策で韓国経済は崩壊の危機に  このような文在寅大統領の経済政策は、故朴正熙元大統領時代から築き上げてきた韓国経済を崩壊させつつある。 文大統領の経済政策の柱は、所得主導成長政策であり、そのため最低賃金を2020年までに1万ウォンに引き上げることを目指している。ところが韓国経済の命綱である輸出が、文在寅政権がその関係を過剰に重視してきた中国で経済が減速しはじめたことで、苦境に陥り、企業経営に深刻な影を落としているのだ。 韓国経済が過度に財閥に依存している影響で、経済格差がますます拡大している。そこで文在寅大統領はその解消を目指している。その考え方は悪くない。 しかし、文在寅政権が進める所得主導成長政策は、経済学の主流から外れ、経済合理性にも疑問符がつけられている。生産性引き上げ、経済の効率化など最低賃金引き上げ成功の条件を整えないままでの強引な引き上げである。しかも、最初の2年間で実に29%もの引き上げを実施したのだが、企業経営にその弊害が如実に現れ、2020年は2.9%の引き上げに留まることが決定され、政策の非を認めない文在寅氏が初めて謝罪する場面もあった。 生活が苦しくなったと指摘されているのだ。 全体経済を見れば、雇用の悪化に加え、経済成長率は急激に鈍化、投資意欲の減退、生産者、消費者物価の下落となっており、デフレに向かいつつある兆候が表れている。加えて、韓国のGDPの40%を占める輸出が11カ月連続で減少している。) こうした状況から、来年の国会議員選挙の最大の争点は経済になろう。文在寅政権に対しては、すでに20代の人々の支持が離れていると言われる。これらの人々は、現在の生活状況に不満を抱く人々である。若者は保守政権と財閥との密着に不満を抱いていたが、今はむしろ革新系に不満の矛先を向け始めているのだ。 逆に現在、文政権を支持しているのは、30代、40代であるが、この世代の人々も正規職として働く人が減り、非正規職が増えているという。さらに退職した人が自営業で収入の補てんをしようとしているが、次々に倒産している。 こうした経済状態を考えれば、文在寅政権が進める経済政策には期待できない。生活苦は保守、中間層ばかりでなく、革新層にまで広がっている。彼らの政権選択はどうなるのだろうか』、経済悪化にも拘らず、「文在寅氏の支持率は概ね40%台を維持」、とは不思議だ。
・『検察改革の方向性は支持しても、曺国法務部長官には反対  韓国では、警察も検察の指揮下に入っており、検察の権力は絶大である。検察の強い権力と強引な捜査手法に対する批判は国民の間でも共有されており、検察改革に対する支持は幅広い。しかし、これを遂行する司令塔にスキャンダルだらけの「たまねぎ男」曺国氏を任命する非常識。曺国法務部長官は9月9日に任命されてから、35日後の10月14日辞任した。 曺国氏の進めようとした検察改革の内容は詳述しないが、同氏任命が引き起こした国民の葛藤は、文在寅降ろしの出発点となるかも知れない。もちろん朴槿恵前大統領のような弾劾はないと思うが、文在寅氏降ろしの動きは次期大統領選挙で革新系に不利となろう。 文在寅大統領は、腹心とする曺国氏に何としても自身の看板政策である検察改革をやらせたかった。できれば、その功績で曺国氏を次期大統領候補に押し上げたかったのだろう。そのため、曺国氏に対するスキャンダルが深まっていたにも関わらず、任命を強行した。曺氏に検察改革を進めさせることで、曺氏に対する捜査の動きを封じ込めさせようとしたのかも知れない。 しかし、その結果、曺氏に対する検察の捜査はいっそう速度を増し、その動きに呼応するように曺氏辞任、文政権に対する反対の街頭デモが激しさを増した。9月28日に曺氏を守ろうとする検察庁前のデモは、地下鉄乗降客の増減、マスコミによる画像を使った推計では、せいぜい10万くらいのようである。これに対し、曺国氏辞任、文在寅氏の責任を問うデモは同様の推計で30~50万といわれている。この数字は朴槿恵氏弾劾を求めるデモに匹敵するか、あるいはそれを上回るほどの人数であり、文政権には多大なショックを与えた。 文在寅氏の支持層は、「曺国氏に対する検察の捜査は政治的であり、やりすぎだ」として、検察改革の必要性を説いている。しかし、曺氏辞任の声が強まったのは、子弟に対する不正入学や私的ファンドなどで中間層が離反した結果であろう。ただ、この問題は保革対立を反映したものとの見方が強く、核心的な支持層が離反したとまでは言えない。ただ、文在寅氏の支持母体が急激に縮小していることは否定できない。また、曺国氏を辞任させ、かばいきれなかった文在寅氏に対しては、革新層から失望の声が上がろう。 今後の捜査で曺国氏が逮捕されることになれば、文在寅氏に対する批判は高まって来ようし、中間に近い革新の支持は離れていくかもしれない』、「今後の捜査で曺国氏が逮捕されることになれば」、確かに「文在寅氏」にとっては致命傷かも知れない。
・『革新層の期待を裏切るGSOMIA破棄撤回  韓国では、日本との間でGSOMIAを締結することへの抵抗は大きかった。GSOMIAは国会の承認を必要としない行政取り決めではあるが、革新系国会議員の議論を尽くさない合意は認めないとの反対で、1時間前に署名が延期された。文大統領はそもそもGSOMIAには反対だっただろう。 19日にMBCの番組で「国民との対話」に臨んだ文在寅大統領は、何故破棄が必要なのか力説していた。しかし、22日急転直下、破棄が撤回された。それには米国の行政府ばかりでなく、議会を巻き込んだ圧力があったからである。 文氏以前の韓国であれば、米国が反対すれば主張を曲げていたであろう。しかし、文在寅政権は最後まで破棄に固執した。それは、日米韓の連携よりも、国民の「破棄すべきだ」との声を尊重したからである。直前の世論調査でも破棄賛成51%、反対29%であった。 文大統領にとって国民、特に革新系支持層の声を無視したくなかったのであろう。反面、「国民との対話」で「日米韓連携の見地から慎重に検討している」と言えば、これだけの世論調査結果の差は開かなかったのではないか。結果として、国民に寄り添ったつもりが、自身の立場を苦しめる結果となってしまった。 突然撤回を言われれば国民はいっそう反発する。破棄したくない気持ちがあっても、破棄撤回する可能性も考慮するのが政治ではないか。あらかじめ破棄撤回の可能性を指摘しておけば、破棄撤回しなくても支持は減らない。しかし、破棄を強行する姿勢を示したことで最悪の事態を招いたと言えよう。こうした、状況が撤回会見後の発表をめぐる混乱を招いた。 22日、日韓両政府が時刻を合わせて記者会見し、破棄撤回を発表した。その際、発表ぶりについても合意があったと韓国側は主張する。しかし、その内容は日韓の間で局長級の対話をするという簡潔な内容であったのだろう。韓国側は簡潔に説明し、会見を終了している。しかし、日本側は対話は行うが輸出管理の見直しの協議に合意したのではなく、あくまでも韓国側から説明を聞くという点を説明した。これは韓国側からすれば、余計なことを言ってくれたということなのであろうし、韓国側の立場を苦しくしてくれたということであろう』、「日韓両政府が時刻を合わせて記者会見」、通常であれば、互いの発表を擦り合わせるが、今回はそれぞれが言いたい放題となった異例の形だ。
・『大統領府の鄭義溶国家安保室長は24日、記者会見し、GSOMIA破棄撤廃をめぐる合意内容に関し、日本が意図的に歪曲して発表したのは遺憾である、と表明した。鄭氏は、経済産業省が22日、韓国が輸出管理の問題点を改善する意欲を示したとしたのは「完全に事実と異なる」と述べ、日本側が謝罪したと主張した。さらに、日本の輸出規制強化の撤回を協議するというのが合意内容だったと説明した。日本側は韓国の主張の内容にいちいちコメントしないかったものの、謝罪したという事実は否定した。これで十分事態は説明できると言えよう。 破棄撤回を巡って、日本側は泰然自若としていたが、韓国側は右往左往していた。それだけ、韓国側に困難があったということであり、日本側に理解して欲しいという甘えがあったのであろう。しかしこれまでの韓国の対応に鑑み、日本側には韓国に配慮する気持ちはなく、事実を事実として伝えただけである。 発表の当初、韓国の「共に民主党」は「文大統領が展開した原則ある外交の勝利」と礼賛し、外交当局も「強制徴用問題が解決できなければ輸出規制も解除できないという日本の連携戦略を我々は輸出規制とGSOMIAを連携させる戦略で対抗し闘い破った」と成果を持ち上げた。 しかし、韓国のマスコミは違った。中央日報は23日の社説で、文政権の「強硬一辺倒の未熟な対応策が示した限界だ」と指摘し、朝鮮日報も「無能外交が恥ずかしい」と批判している。保守系新聞ばかりか、これまで文在寅政権を擁護してきた革新系のハンギョレも23日の社説で、「政府の発表内容が、日本の輸出規制撤廃を要求してきた私たち国民の目の高さには達し得ないとの指摘は避けがたい」と述べ、革新系もこの合意を支持しないことを明らかにした。 対話の内容に認識の差があれば対話の過程で必ず露見する。韓国側が国内的にどのように説明しようとも、事実は明らかになる。日本側には韓国の輸出管理の強化を変える気持ちはないということである。 韓国側としては、日本からの譲歩がない場合どう出てくるか。今回の流れの中での教訓は、「日本は原則的な問題では降りない」ということである。しかし、韓国政府として全く何も取れずに妥協したとなれば、反日姿勢を有する革新系支持層は納得しないであろう。他方、再度GSOMIA破棄の愚に出ることは米国との関係で難しい。そうなった場合、韓国はどう出るか。元徴用工問題で日本に対抗しようとするかもしれない。韓国の動きには目を離せない』、「韓国のマスコミ」が「革新系もこの合意を支持しないことを明らかにした」、文在寅政権にとっては大打撃だろう。「来年4月には国会議員選挙」はどうなるのだろう。

第三に、東洋大学教授の薬師寺 克行氏が11月27日付け東洋経済オンラインに掲載した「GSOMIA破棄延期、日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/316472
・『協定失効のわずか6時間前に韓国政府が「破棄通告の効力を停止する」と発表して事なきを得たかに見えた「GSOMIA(軍事情報包括保護協定)騒動」だが、日韓の間では早くも、日本側の説明に韓国政府が抗議し、「謝罪した」「謝罪していない」というレベルでもめている。 安倍晋三首相が「日本は一切、譲歩していない」と発言したなどという報道に、韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安全保障室長が予定外の記者会見で「良心の呵責を感じずに言える発言なのか」と批判したのだ。輸出管理問題で局長級の協議が始まり、日韓の関係悪化が一息つくのではと期待されたが、内実はそんな生易しいものではなさそうだ』、「内実」を知りたいところだ。
・『撤回求め、アメリカが韓国に強い圧力  日韓の政府関係者に聞いてみると、今回はアメリカの韓国に対する圧力がそうとう強烈だったようだ。しかも、ホワイトハウスと国務省、国防省、議会が珍しく足並みをそろえ、次々と韓国に撤回を求めてきた。ここぞというときは腕力を振りかざし、有無を言わせず相手を従わせるアメリカらしい手法だ。これでは韓国はひとたまりもなかっただろう。 エスパー国防長官をはじめ、国務、国防両省の幹部が相次いで訪韓し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領はじめ韓国政府要人に激しい言葉で撤回を求めた。表には出ていないが、日本批判の急先鋒で今回のGSOMIA破棄の旗振り役だった金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長に対しては、ホワイトハウスのポッティンジャー大統領副補佐官らが繰り返し撤回を要求したという。 国防省は同時に、在韓米軍経費の韓国の負担を一気に5倍の50億ドルに増やせと要求した。韓国が硬い姿勢を見せると、3回目の協議で開始わずか80分で席を立つというパフォーマンスも見せた。 また、軍人出身のハリス駐韓米大使は韓国議会幹部とのお茶の席で「5billion」という言葉を20回以上も繰り返し、韓国側を「こんな無礼な大使は初めてだ」とあきれさせた。11月21日にはアメリカ議会上院が「域内の安全保障協力を阻害しかねない」と、韓国を一方的に批判する決議を採択した。 普段はトランプ大統領の暴走への反発から足並みのそろわないアメリカ政府や議会だが、今回は珍しく歩調を合わせて韓国に対応した。大統領選を控え、対中貿易摩擦や米朝協議などで成果を上げたいトランプ大統領は、中国や北朝鮮を利するような韓国の行動を受け入れられなかった。 一方、国務省や国防省は、安全保障政策の観点から中国やロシア、北朝鮮を勢いづけ、アメリカ軍の負担が増えるような韓国の対応を容認できなかった。つまり主要プレーヤーの利害が一致したということだ』、「アメリカ議会上院が・・・韓国を一方的に批判する決議を採択」、韓国系のロビイストは慰安婦問題などで強力といわれるが、今回ばかりは神通力は及ばなかったようだ。「在韓米軍経費の韓国の負担を一気に5倍の50億ドルに増やせと要求」、日本に対しても同様の要求をしているが、トランプ政権としては、同盟関係よりもアメリカ・ファーストなのだろう。
・『行き詰まる韓国の外交  一方の韓国だが、外交面ではこのところ、やることなすことすべてがうまくいかず、完全に行き詰まっている。文在寅政権は「起承転北」と揶揄されるほど北朝鮮との関係改善を最優先し、さまざまなアプローチを続けているが、まったく相手にされていない。 日韓がGSOMIAでもめている最中の10月下旬には、金正恩委員長が金剛山観光地区を視察し、韓国側が建設し、南北協力の象徴的存在でもある観光施設の撤去を命じた。文在寅大統領の母親の葬儀の日には、ミサイル発射実験をぶつけてきた。 そして、GSOMIA撤回期限ギリギリの11月21日には、文大統領が金委員長に呼びかけていた釜山で開催される予定の「韓国ーASEAN特別徴用首脳会談」への招待に対し、金委員長は「釜山に行くしかるべき理由を見つけられなかった」と拒否してきた。 韓国に対する嫌がらせの連続だが、金委員長にしてみれば、トランプ大統領との交渉を最重視しているときに、韓国にあれこれ余計なことをされたくないということなのだろう。 中国との間もTHAADミサイル配備以後、関係は悪化したままだ。7月には中国とロシアの戦闘機などが韓国の防空識別圏(KADIZ)に無断侵入する軍事演習を行い、韓国政府関係者を驚かせた。 日本は、韓国が自由や民主主義を共有する仲間であり、経済のみならず安全保障の分野でも日米韓3カ国が緊密な連携を取るのは当たり前だと考えている。しかし、韓国の外交的立ち位置は複雑だ』、「行き詰まる韓国の外交」、は確かに明らかだ。
・『韓国の置かれた特殊な外交環境  アメリカ、中国、ロシア、そして日本という大国に囲まれた韓国は、どこか1つの国とだけ緊密な関係を構築する外交路線を選びにくい。アメリカは韓国に対し、GSOMIA継続以外にも、ファーウェイ製品の使用禁止やホルムズ海峡への軍隊の派遣、さらに中国を意識したインド太平洋戦略への参加や中距離ミサイル配備などを公式、非公式に求めている。しかし、文在寅政権はいずれの要求に対しても躊躇している。 もし韓国が日本と同じようにアメリカとの同盟関係に完全に依拠する政策を打ち出せば、中国との関係は決定的に悪化する。中国が最大の貿易相手国でもある韓国にとって韓中関係の悪化は、軍事的緊張が高まるだけでなく、経済的に深刻なダメージを被ることになる。それとは逆に中国依存度を高めれば、さらに大変なことになるだろう。 文在寅政権は米中いずれか一方に偏った対外政策は、結果的に韓国の国益を害すると考えているのだ。それだけに今回、アメリカの圧力に屈するような形でGSOMIA撤回を延期することは、文政権にとっては屈辱的なことであろう。 日本政府の中には「今回は韓国の自作自演に終わった」「日本政府は完全に筋を通しており、何も譲歩していない」と、まるで交渉に勝ったような声が出ている。しかし、事はそれほど単純ではない。そもそもGSOMIA破棄を当面、回避したからと言って、日韓両国間に横たわる深刻な問題の解決の糸口が見いだせたわけではない。 最大の問題である大法院の徴用工判決と日韓合意に基づく「和解・癒し財団」の一方的解散などの問題について、安倍政権は韓国の対応を見守るだけで日本からは動かないというのが基本姿勢だ。12月の日中韓首脳会談の機会を捉え、日韓首脳会談も検討されているが、あくまでもボールは韓国側にあるとして静観の構えだ。 今回はアメリカが積極的に動いたことで最悪の事態は免れた。しかし、すでに紹介したようにアメリカは日韓両国のために動いたわけではなく、あくまでも自国の利益のためであり、それがたまたま日本の要求と合致しただけのことだ』、確かにアメリカにとっては、「徴用工」問題はどうでもいいことで、日韓いずれかに肩入れする理由はないだろう。
・『展望の見えない日韓関係  過去にもアメリカは、日韓関係が悪くなると調整役を果たしている。1965年の日韓国交正常化もアメリカの働きかけが背後にあった。アメリカが動いたのは、冷戦を背景にソ連に対峙するために日韓両国との連携を重視するという国益追求が理由だった。 安倍首相とトランプ大統領が緊密な関係にあるから、アメリカはいつでも日本の求めに応じて動いてくれると考えるのは間違いである。とくに徴用工や慰安婦問題などの歴史問題について、アメリカが積極的に関与することはないだろう。むしろ安倍首相が靖国神社参拝をしたとき、アメリカの国務省が「失望した」という厳しいコメントを出すなど、日本に対して批判的だったことを忘れてはならない。 日韓間の懸案がこのまま何の進展もなければ、2020年に入ると徴用工判決に基づいて差し押さえられた日本企業の資産の現金化が現実のものになる。そうなると日韓対立はさらに激しくなるだろう。直後の4月に韓国の総選挙が予定されていることから、文大統領はこのタイミングで妥協することはできまい。そうなると、いよいよ展望の描けない深刻な状況に陥ってしまう。 今、韓国内では文喜相(ムン・ヒサン)国会議長が中心になって、「韓日両国企業と国民の自発的な寄付で作った基金を通した賠償案」が検討されている。また日本企業側もいつまでもこの問題を抱えていたくないと、早期決着を望んでいるとも聞く。お互いに疑心暗鬼の中で合意を形成することは困難極まりないことであろうが、そろそろ両国関係者が知恵を絞って、包括的に慰安婦や徴用工問題を決着させる方策を見出すべき時に来ている。 日韓両国間の局長級協議や首脳会談は、そうした道を描くための生産的なものにするべきであろう』、「包括的に慰安婦や徴用工問題を決着させる方策を見出すべき時に来ている」、正論だが、当面、韓国国会議員選挙の結果や、文在寅政権の出方を見極めるのが先決だろう。
タグ:かつての“空騒ぎ”も反省を 検察改革の方向性は支持しても、曺国法務部長官には反対 韓国の半導体産業に大打撃」「世界の半導体関連の供給網に懸念」と報じられた。そういう不安をあおる論者のコメントをメディアもしきりに取り上げた そろそろ両国関係者が知恵を絞って、包括的に慰安婦や徴用工問題を決着させる方策を見出すべき時に来ている 展望の見えない日韓関係 韓国の置かれた特殊な外交環境 行き詰まる韓国の外交 撤回求め、アメリカが韓国に強い圧力 「WTO提訴の中断」のカードで「政策対話の再開」を買った 「対話」を「協議」にすり替えて強弁する 「GSOMIA破棄延期、日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を」 (GSOMIA)破棄を巡る騒動は韓国の“独り相撲”だった 「韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く 国内向けのメンツに腐心する韓国」 東洋経済オンライン 「GSOMIAで方針転換、動揺する文在寅の支持層 革新系支持層へのアピールのため「徴用工問題」を持ち出す可能性も」 薬師寺 克行 JBPRESS 韓国のメンツ作戦に乗せられた日本の報道 所得主導政策で韓国経済は崩壊の危機に 文在寅政権の政策は国内革新系の支持獲得が目当て (その9)(韓国の“独り相撲”のGSOMIA狂騒を読み解く、GSOMIAで方針転換 動揺する文在寅の支持層、GSOMIA破棄延期 日本は「外交」で勝利したのか 展望描けぬ日韓関係悪化にそろそろ終止符を) 日韓関係 日経ビジネスオンライン 細川昌彦 武藤 正敏 革新層の期待を裏切るGSOMIA破棄撤回
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中国での日本人拘束問題 スパイ(?)(その3)(犠牲になるのは民間人…政府の“お忍び”スパイ派遣の事情、「中国最強商社」伊藤忠を襲った身柄拘束、伊藤忠社員はなぜ中国で拘束されたのか、中国 北大教授「拘束」の狙いとは? 識者「米中の情報戦に…日本が圧力受けた可能性」) [外交]

中国での日本人拘束問題 スパイ(?)については、2016年8月9日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(犠牲になるのは民間人…政府の“お忍び”スパイ派遣の事情、「中国最強商社」伊藤忠を襲った身柄拘束、伊藤忠社員はなぜ中国で拘束されたのか、中国 北大教授「拘束」の狙いとは? 識者「米中の情報戦に…日本が圧力受けた可能性」)である。

先ずは、昨年7月13日付け日刊ゲンダイ「犠牲になるのは民間人…政府の“お忍び”スパイ派遣の事情」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/233188
・『中国でスパイ容疑で拘束されていた愛知県の男性(54)が、懲役12年の実刑判決を受けた。2015年以降、中国各地でスパイ行為などを疑われた日本人が相次いで拘束され、8人が起訴されている。判決が出たのは初めてだ。 菅官房長官は10日の定例会見で、日本政府が中国にスパイを送り込んだ事実は「一切ない」と日本政府の関与を否定したが、怪しいものだ。 ある政府関係者は、『公安調査庁が男性らに写真撮影や情報収集を依頼した』と言っています。中国当局は、日本からのスパイ目的での訪中者リストを入手しており、一網打尽の検挙ができた。今回の手続きも自信満々です」(外務省担当記者) 今回、判決が下った男性はコンサルト業務で日中を往来しており、起訴された8人のうち最も早い15年5月に、浙江省温州市沖の南麂列島沖で市当局に拘束され、翌年6月に非公開で初公判が開かれた。同列島は軍用ヘリポートや埠頭建設など軍事施設の整備が進み、男性は施設周辺で写真を撮影したとの情報もある』、「ある政府関係者は、『公安調査庁が男性らに写真撮影や情報収集を依頼した』と言っています」、ありそうなことだ。「軍事施設の整備が進み、男性は施設周辺で写真を撮影したとの情報もある」、事実とすれば言い逃れできそうもなさそうだ。
・『日本の地裁にあたる中級人民法院は、刑法のスパイ罪などで、男性に懲役12年のほか、約850万円の個人財産没収を言い渡したが、中国の外国人スパイ事件では重い方だという。今後、残る7人にも判決が出るものとみられる。 「表沙汰にはできないですが、政府が民間の訪中者に軍事施設などの情報収集を依頼することは、これまでも行われています。菅官房長官は認めるわけにはいかないので、『関与なし』と答えざるを得ないのでしょう。しかし、今回、政府からのミッションを引き受けた民間人が拘束されて、12年もの長期の懲役を受けたわけです。ある種の国家の犠牲者ですよ。日本政府が、国内での中国民間人によるスパイ活動をしっかり取り締まっていれば、“交換交渉”もできるのですが、全くの無防備。これではやられっ放しです」(国際ジャーナリスト・春名幹男氏) 菅長官は「日本人保護の立場から、政府としてできる限り支援していく」と語ったが、交渉材料は持ち合わせているのか。あまりにも頼りなさ過ぎる』、「約850万円の個人財産没収を言い渡した」、旅行者ではなく、現地で生活していたのだろうか。「表沙汰にはできないですが、政府が民間の訪中者に軍事施設などの情報収集を依頼することは、これまでも行われています・・・日本政府が、国内での中国民間人によるスパイ活動をしっかり取り締まっていれば、“交換交渉”もできるのですが、全くの無防備。これではやられっ放しです」、海外でのスパイ合戦では、“交換交渉”が当たり前だ。日本も対抗するため、対スパイの防諜活動に力を入れるべきだろう。

次に、本年2月15日付け日経ビジネスオンライン「「中国最強商社」伊藤忠を襲った身柄拘束」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00002/021500092/?P=1
・『伊藤忠商事の日本人男性社員がおよそ1年間にわたり中国当局に拘束されていることがわかった。昨年2月に中国の国家安全を害した疑いでスパイ行為などを取り締まる広東省広州市の国家安全局で拘束され、同6月に国家機密情報窃盗罪で起訴されたという。伊藤忠は拘束されている事実を認めている。 伊藤忠は国有企業の中国中信集団(CITIC)と資本業務提携を結び、丹羽宇一郎元社長が2010~12年に民間出身として初めて駐中国大使を務めたこともある。広州では中国企業と共同でリニア地下鉄車両を受注するといった実績がある。「中国最強商社」を自認し、関係強化に力を注いできた同社を襲った突然の出来事に、衝撃が広がっている。現地の伊藤忠社員は「拘束の事実はまったく知らなかった」と動揺した様子で語った。 中国では2014年に「反スパイ法」が施行され、国内での外国人の取り締まりが強化された。国外の組織などのために違法な手段で国家の機密や情報を取得する行為には国家機密情報窃盗罪が適用され、最高刑は死刑という重罪だ。今回の事例を含めて合計で少なくとも9人の邦人が拘束された。他の8人もすでに起訴されており、そのうち4人には懲役5〜12年などの実刑判決が下されている』、「伊藤忠商事の日本人男性社員がおよそ1年間にわたり中国当局に拘束」、という事件は、私にも目を疑うような衝撃だった。
・『どのような行動をすると、中国の国内法に触れる可能性があるのか。過去の事例で問題となった点を見ると、軍事拠点として整備されていた島の周辺で写真を撮影していたり、温泉開発の調査をする中で機密に当たる地形を調べていたりと様々だ。 今回、同社員は中国入国時に捕まったとの報道もあり、以前の中国国内での行動で当局に目をつけられていた可能性がある。中国では日本人には一見わからないような場所が軍の管理地域になっていることがあるほか、地図情報なども国家機密に当たることに注意が必要だ。 中国外務省の華春瑩副報道局長は14日の記者会見で「状況を把握していない。主管部門に聞いてほしい」と述べるにとどめており、詳細は明らかになっていない。拘束されたのは日中関係が改善に向かっている時期のことで、政治的な思惑があるとは考えにくい。中国政府は拘束や起訴に至る明確な基準を対外的に示していない。友好的な位置付けにあるとみられる企業の社員をその対象としたことは、中国での日系企業の活動を萎縮させる可能性もある』、この記事では、実態はさっぱり分からないが、これまではスパイと疑われてもやむを得ない場合が多かったが、今回はどうなのだろうか。それにある程度言及したのが、次の記事である。

第三に、外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演した2月15日付けニッポン放送 grape「伊藤忠社員はなぜ中国で拘束されたのか」を紹介しよう。
・『ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月15日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。中国で伊藤忠商事社員が拘束され、起訴された情報について解説した』、宮家氏は、在中国公使も務めた元外交官だけに、突っ込んだ話が期待できそうだ。
・『中国が伊藤忠の社員を去年2月に拘束  中国広東省広州市の国家安全局が去年2月、スパイ行為の疑いで大手商社 伊藤忠商事の40代の男性社員を拘束していたことが分かった。この男性は中国広州市で中国企業と合同で行っているリニア地下鉄の事業に携わっていたということです。 飯田)去年2月に起こって発覚から1年です。この社員は、拘束当時は東京本社の所属で直前までリニアの仕事をしていて、中国には旅行で滞在していたということです。 宮家)中国にとって、外国人は基本的にみんなスパイだと思われています。 飯田)そうなのですか? 宮家)なぜかというと、中国のシステムでは外国に行っている中国人は誰でもスパイになり得ると思っているからです。まして通信社なんて絶対スパイだと思っています。日本の通信社の人には可哀想だけど、彼らは日本のスパイだと思われているわけです。これがまず違う。でも、日本にでは対外スパイ組織、諜報機関は無いです。ですから定義上は日本にはスパイはいないわけで、まずここで日中はぶつかります』、どうも「リニア地下鉄」に関する出張で広州市を訪ねていたようだ。「中国にとって、外国人は基本的にみんなスパイだと思われています」、恐ろしい話だ。「日本にでは対外スパイ組織、諜報機関は無いです。ですから定義上は日本にはスパイはいない」、内閣情報室や自衛隊にも情報組織はあるので、元官僚らしい強弁に過ぎない。
・『中国では経済の情報も国家機密  宮家)次に、中国の場合は内政の延長としてこの問題が取り上げられるケースが多いのですが、結局は2015年あたりから、習近平政権が(注:正しくは「に」)変わって、新しい政権の下で締め付けが中国国内でも厳しくなっています。それに連座しているやつとか変なやつがみんな、外国の人も外国にいる中国人も、嫌疑を受けるわけです。そういう流れがあって、さらに最近ではファーウェイのケースのようにがあって、スパイ罪でカナダ人を10数人捕まえています。そういう形で外国への報復にも使えると言う意味で、は彼らにとっては当たり前の行為なのことです。でも日本の企業が中国に対してそんなことをするとは思えない。商社の人たちが政治的な機微の話をしても、何の儲けにもならないわけだから、やる必要はあまり無い。普通のビジネスの仕事をしていたのだと思いますが、中国にとっては経済の情報も国家機密だから、当然スパイになるわけです。どう考えても可哀想だと思います。 飯田)日本人の感覚だとまったく問題無いことが、向こうでは問題になってしまう可能性があるということですか? 宮家)だと思います。ときと場合、TPO間違えたらそうなります。同情するし、日本政府もおそらく過去1年間早い段階で知っていたかもしれません。だけどそれはプライバシーの問題もあるし、いろいろな問題があるから静かに水面下で働き掛けをやっていたのだと思います。 ただこういう形で出るということは、彼らも中国側も何かの次のステップを取るための動きものなのかもしれません。それは考えたくないですけれどね。 彼らは平気でこういうことをやるような国だということは理解していかなくてはいけません。どんなことがあっても、どんなときにどういう形で捕まってもおかしくないと思っていただいた方が良いと思います。 飯田)既に何の容疑か分からりませんが、初公判が行われている。ただ判決がまだ出てない。そうすると次のステップ、判決の部分が近付いている…。 宮家)そういうことですよね、嫌ですよね。 飯田)しかし、公安部の下部組織が動いているようなことですよね。そうすると外交部、外務省からすると手出しできないということですよね? 宮家)外交部は力ありませんから。 飯田)力が無い。ここが日本と違うところですね。 宮家)日本の外務省が全面的に力があるとは思わないけれども。それなりの政策の立案と実施を両方やっているのが日本でありアメリカの外交当局です。中国の外交部は政策の立案権限が無いと思います。それはおそらく党が全部握っている。ですからその意味でこのような問題、特に自分の所掌訴訟の問題でも無いことについて外交部に期待してもあまり・・・という感じですね』、「中国の外交部は政策の立案権限が無い」、というのは大いにありそうだが、とすると選択肢は限られそうだ。
・『中国では外国人は全員スパイだと思われているという現実  飯田)そうすると日中雪解けみたいなことを殊更に報道する新聞もありますけれども、ただその文脈とは別のトラックで走っている。 宮家)違うロジックで違う人たちが違う目的のために動いていると思います。だからと言って中国の外務省がダメだと言っているわけではありません。立派な人もたくさんいます。だけど如何せん、所詮は日本以下だということです。 飯田)そうすると、向こうでビジネスをするというのは、かつてないほどリスクが高まっているのではないですか? 宮家)と思います。だけどそれは日本だけの問題ではありません。 飯田)外国人みんな。 宮家)みんなそうです。基本的に彼らにとって、外国人は全員スパイだと思っていますから。 日本だけが目の敵にされているわけではない。 飯田)それを思って向こうで行動しなくてはいけないということですね。 宮家)残念ながら。一部の国にでは、そういうことがあり得るということです。これは昔からそうです。 飯田)港で不用意にスマホを出してカシャッて・・・。 宮家)やめて下さい、お願いだから』、「2014年に「反スパイ法」が施行」されて以降は、かなりビジネスのリスクが高まってしまったようだが、どれだけの日本企業がこれを理解しているのだろうか。

第四に、10月20日付けZAKZAK「中国、北大教授「拘束」の狙いとは? 識者「米中の情報戦に…日本が圧力受けた可能性」」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/191020/for1910200002-n1.html
・『またも邦人への人権侵害か-。9月に中国を訪問していた北海道大学の40代男性教授を拘束していたことが19日までに日中関係筋の話で分かった。男性は防衛省防衛研究所や外務省に勤務した経験があり、準公務員である国立大学の教員の拘束が認められたのは初めて。中国による不明瞭な拘束には、隠れた狙いがありそうだ。 容疑はスパイ活動など「国家安全危害罪」に関連するとみられ、中国当局は拘束理由について「国内法に違反した」と説明している。9月に訪中した際、北京国際空港で拘束されたとの情報もある。男性教授は中国政治が専門で、これまでに日中戦争の論文などを数多く発表している。 習近平指導部は社会統制を図るため「反スパイ法」や「国家安全法」を制定し、外国人の締め付けを強めている。17日には、中国外務省が米国人2人の拘束を説明したと米ブルームバーグが伝えたばかりだった。 中国では不透明なままに拘束され、人権侵害が続いている。中国事情に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏は「情報が少なく、推察するしかない」としつつ、2つの可能性を指摘した。 「この教授が現地で公安の仕事をしていたために拘束した可能性と、現在米中で行われている情報戦において米国の同盟国である日本が圧力を受けた可能性だ。香港を舞台にして米中は工作員を導入した“戦争”を行っており、日本も動き出しているとして、見せしめのために拘束されたと考えることもできる」 2015年以降、邦人の拘束は男女合わせて13人確認されており、いずれも民間人。昨年3月に伊藤忠商事の社員が拘束された際には、李克強首相が日本に公式訪問を3カ月後に控えていた。来春には習主席が国賓として来日する予定で、今月は「即位礼正殿の儀」に王岐山国家副主席が出席予定だ。 日中の関係改善に向けた動きが進んでいるという声もある中、今後の関係に影を落としそうだ』、第三の記事にあったように、外交部には発言力がないのであれば外交日程は配慮されない筈だ。なお、10月22日の日経新聞は菅官房長官が「邦人保護の観点から領事面会や家族との連絡などできる限りの支援と語った」ことを伝えた。ただ、表立って抗議した様子はない。「外交の安倍政権」がとんだ「弱腰」を見せているようだ。
タグ:中国では外国人は全員スパイだと思われているという現実 ニッポン放送 grape 「飯田浩司のOK! Cozy up!」 「「中国最強商社」伊藤忠を襲った身柄拘束」 中国が伊藤忠の社員を去年2月に拘束 宮家邦彦 中国の外交部は政策の立案権限が無いと思います。それはおそらく党が全部握っている 中国では経済の情報も国家機密 「犠牲になるのは民間人…政府の“お忍び”スパイ派遣の事情」 日刊ゲンダイ 中国での日本人拘束問題 スパイ(?)(その3)(犠牲になるのは民間人…政府の“お忍び”スパイ派遣の事情、「中国最強商社」伊藤忠を襲った身柄拘束、伊藤忠社員はなぜ中国で拘束されたのか、中国 北大教授「拘束」の狙いとは? 識者「米中の情報戦に…日本が圧力受けた可能性」) スパイ容疑で拘束されていた愛知県の男性(54)が、懲役12年の実刑判決 ある政府関係者は、『公安調査庁が男性らに写真撮影や情報収集を依頼した』と言っています 表沙汰にはできないですが、政府が民間の訪中者に軍事施設などの情報収集を依頼することは、これまでも行われています 軍事施設の整備が進み、男性は施設周辺で写真を撮影したとの情報も 日経ビジネスオンライン 2014年に「反スパイ法」が施行さ 拘束当時は東京本社の所属で直前までリニアの仕事をしていて、中国には旅行で滞在 「中国、北大教授「拘束」の狙いとは? 識者「米中の情報戦に…日本が圧力受けた可能性」」 ZAKZAK 防衛省防衛研究所や外務省に勤務した経験 北海道大学の40代男性教授を拘束 中国政治が専門で、これまでに日中戦争の論文などを数多く発表 リニア地下鉄の事業に携わっていた 中国にとって、外国人は基本的にみんなスパイだと思われています 日本政府が、国内での中国民間人によるスパイ活動をしっかり取り締まっていれば、“交換交渉”もできるのですが、全くの無防備。これではやられっ放しです
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トランプと日米関係(その5)(日米貿易協定 「WTO違反」までして譲歩するのか?!日本側は“守り一辺倒”になってしまった、日米貿易協定で日本がWTOルールの‟抜け穴”つくる?、安倍首相はトランプに「使われて」いないか 日米貿易協定は「ウィンウィン」という幻想) [外交]

トランプと日米関係については、6月5日に取上げた。今日は、(その5)(日米貿易協定 「WTO違反」までして譲歩するのか?!日本側は“守り一辺倒”になってしまった、日米貿易協定で日本がWTOルールの‟抜け穴”つくる?、安倍首相はトランプに「使われて」いないか 日米貿易協定は「ウィンウィン」という幻想)である。

先ずは、元・経済産業省貿易管理部長で中部大学特任教授の細川昌彦氏が9月3日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「日米貿易協定、「WTO違反」までして譲歩するのか?!日本側は“守り一辺倒”になってしまった」を紹介しよう。なお、文中の関連記事は省略した。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00019/?P=1
・『日米交渉はまたもや“守り一辺倒”になってしまったようだ。しかも、世界貿易機関(WTO)のルールに違反する協定を締結させられる可能性が高い。 日米は貿易交渉で基本合意に達し、9月中の署名を目指すことになった。交渉責任者の茂木敏充経済再生担当大臣は「国益を守り、バランスの取れたとりまとめができた」と胸を張る。はたしてそうだろうか。 内容はまだ公表されていないので報道をベースに論じざるを得ない。その報道の目は2点にばかり注がれている。1点目は米国から輸入する農産品に対する関税引き下げを環太平洋経済連携協定(TPP)の範囲内に収められるかどうか。2点目が米国による日本の自動車に対する追加関税を回避できるかどうかだ。 これは日本側がこの2点に交渉の勝敗ラインを設定したからである。しかしこうした2点を交渉の目標設定にしたこと自体、妥当なのだろうか。 まず結論を言おう。 その結果、いずれも米国の思惑通りの交渉を許してしまった。これは日本が交渉戦略よりも国内への見え方、見せ方を優先した結果だとも言える。 そしてさらに深刻な問題がある。それは大本営発表によってこの2点以外に報道の目が向かず、協定の内容がWTO違反になるかもしれないという大問題を報じていないことだ。むしろ、不都合には目を向けさせないようにしているのではないか、とさえ勘ぐってしまう。 これまでの日米通商交渉の歴史を振り返ると、今回の交渉ほど日本にとって地合いのいい、有利な交渉はなかっただろう。それにもかかわらず、なぜ、こうした結論になったのか。 以下ではそれを説きほぐしていこう』、細川昌彦氏は日本の韓国向け輸出規制では、安倍政権を支持したが、自らの専門領域である日米通商問題では、味方は極めて厳しいようだ。
・『先にカードを切ってしまった農産物  米国のTPP離脱によって、米国の農家は相対的に競争相手国と比べて日本市場で不利になっている。米大統領選を前にして、この不満を早急に解消するための成果を得たい米国にとって、競争相手と対等の水準にさえなれば不満はない。交渉前にあえて米農務長官がTPPの水準以上の要求発言をしたのも、単なる交渉戦術だ。 しかし日本はそれをまともに受け取ってしまった。国内の農業関係者の懸念を払拭するために「TPPの水準以上の譲歩はできない」と、交渉のスタート時点である2018年9月の日米首脳会談での共同声明に書き込むことに懸命になった。いわゆる「交渉でこれ以上米国に押し込まれないためのピン止め」だ。そして国内にはそれを成果として誇示した。 しかしこれは逆に、米国に対して「TPPの水準までは譲歩する」と最初からカードを切ったことになる。米国は何の代償も支払わずして、このカードを手に入れることに成功したのだ。 関税交渉は本来ギブ・アンド・テークが原則で、一方的な譲歩はあり得ない。かつてTPP交渉でも関税引き下げについては、日米間では日本の農産物関税の引き下げと米国の自動車関税の引き下げがパッケージで合意されたことを忘れてはならない。これは当時、甘利明担当大臣(当時)が米国との難交渉の結果、妥結した成果である。従って日本の農産物関税の引き下げだけという米国の“いいとこ取り”はあり得ないのだ』、農産物では、「米国に対して「TPPの水準までは譲歩する」と最初からカードを切ったことになる。米国は何の代償も支払わずして、このカードを手に入れることに成功した」、という安倍政権の今回の交渉は、信じられないようなお粗末さだ。
・『自動車の「継続協議」は“気休め”か?  本来、米国も日本に対して相応の対価を差し出さなければならない。ところが今回の合意では一部の自動車部品の関税撤廃のみで、完成車の関税撤廃には応じていない。これでは「相応の対価」とは言えないのは明らかだ。 もともと、米国がTPPから離脱するという自ら招いた不利な状況を早急に解消したいことから交渉ポジションは日本が圧倒的に有利であった。にもかかわらず、交渉は最初から日本がカードを切ったせいで、立場が逆転してしまったのだ。 今回の基本合意においては、米農産物に対する関税をTPP水準の範囲内で引き下げることだけが合意されて、本来パッケージで合意すべき日本の完成車に対する米国の自動車関税の撤廃については「継続協議」になったという。前述した昨年9月の交渉当初における日本の対応から、私が懸念していた通りの結果になってしまったようだ・・・今後継続協議といっても、農産物でカードを切ってしまって交渉のレバレッジを失った後では、残念ながら“気休め”にすぎない。自動車部品の関税撤廃を米国にある程度認めさせることはできても、本丸の完成車は譲らないだろう。これは米国の思惑通りの展開だ』、「農産物でカードを切ってしまって交渉のレバレッジを失った」、これでは交渉とは名ばかりで、米国側に美味しいお土産を献上しただけだ。
・『WTO違反の追加関税は“空脅し”だ  自動車の追加関税の回避についてもそうだ。 米国は通商拡大法232条を活用して自国の安全保障を脅かすとの理由で輸入車に追加関税を課すことを検討しているが、日本側はこれを日本に対して発動しないとの確約を取り付けることを目標にしている。しかし米国は自動車の追加関税を交渉戦術として使っているのだ。追加関税を脅しに、対米輸出の数量規制に追い込むことはメキシコ、カナダとの交渉で味をしめたライトハイザー通商代表の手法だ。 前述の日米首脳会談での共同声明でも日本の農産物に関する“ピン止め”と引き換えに、米国の関心として、「自動車の生産、雇用の拡大」を明記させてきっちり自動車関税への布石を打っている。 しかし忘れてはならないのは、この通商拡大法232条による追加関税のWTO違反の措置である。既に米国は鉄鋼・アルミニウムについて発動しているが、欧州連合(EU)など各国からWTO違反として提訴されている。日本も本来共同歩調を取るべきであるにもかかわらず、トランプ大統領との蜜月を崩すことを恐れてか、提訴はしていない。 鉄鋼問題で実害は限定的だからといって、そうしたけん制球をきっちり投げないでいると、本丸の自動車への追加関税で駆け引きを弱めることになることは、かつて拙稿で指摘した通りである・・・しかもこの脅しは“空脅し”だということも忘れてはならない・・・「日本の中には、トランプ大統領による25%の自動車関税の引き上げを回避することが最重要課題であるので、早期に妥結した方がよいと主張する向きもある。これはとんでもない見当違いだ。自動車関税の引き上げの脅しは『抜けない刀』で“空脅し”だからだ」「仮に自動車関税を引き上げれば、経済への打撃が大きく、株価暴落の引き金を引きかねない。(略)大統領再選に向けてトランプ大統領が重視するのが株価である限り、採れない選択だ」 問題はこうしたWTO違反の空脅しを回避するためにどれだけの代償を支払うのかだ。これは相手の犯罪行為から逃れるためにお金を支払うようなものだ。同様の脅しを受けているEUは日本が毅然とした対応をするのかどうか当然注視している。 日本の自動車業界に聞けば、商売としては当然直面している追加関税のリスク回避を優先したいと言うだろう。そして自動車の追加関税を回避することを交渉の優先目標にした結果、米国の自動車関税の撤廃という日本の本来の要求の優先度が下がって、継続協議になったのだ。 これも米国の思惑通りの展開だろう。 こうして見てくると、日本にとってどうバランスが取れているのか、率直に言って私には理解できない。設定した2点の交渉目標のうち、前者で農業関係者が納得し、後者で自動車業界が納得すればよしとしているようだ。しかし関係業界さえ納得させられれば、日本国民全体にとってバランスの取れたものだと思っているのだろうか』、「通商拡大法232条による追加関税のWTO違反の措置である。既に米国は鉄鋼・アルミニウムについて発動しているが、欧州連合(EU)など各国からWTO違反として提訴されている。 日本も本来共同歩調を取るべきであるにもかかわらず、トランプ大統領との蜜月を崩すことを恐れてか、提訴はしていない」、弱腰外交の極みだ。
・『完成車が含まれない限りWTO違反になる?!  もっと深刻な問題が、食い」「いいとこ取り」ができないことはかねて指摘してきた通りだ・・・特定国への関税引き下げは、「実質的にすべての貿易」について関税引き下げになるものでなければできない。それがWTO協定上のルールだ。米国の農産物に対してだけ関税を引き下げるといった“つまみ食い”は許されないのだ。それは日本が物品貿易協定(TAG)と呼ぼうが関係ない。「実質的にすべての貿易」とは国際的な相場観があって少なくとも9割以上をカバーしているのが通常だ。TPPでは日本は95%、離脱前の米国は100%の関税撤廃率であった。途上国に対しても、例えば東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を見ると、85%以上の関税撤廃を要求している。 日本の対米輸出を見ると、ざっくり言って、自動車の完成車3割、自動車部品2割、その他工業品5割だ。報道によると完成車は先送りで自動車部品の一部とその他の工業品の多くで関税を撤廃するという。それでは関税撤廃率は6〜7割といったところだ。完成車が含まれない限り、明らかにWTO違反となるのだ。 それでもあえて締結するのは大問題だ。 今後日本はアジア諸国をはじめ途上国と自由貿易協定(FTA)を締結するに当たって、およそ高い関税撤廃率を求めることは難しくなる。米国相手のときだけ基準を変える「二重基準だ」との批判も免れない。各国は日本の対応を厳しい目で見ていることを忘れてはならない。 数量規制に比べれば同じWTO違反といっても違反の程度は軽いとでも言いたいのかもしれないが、そういう問題ではない。 貿易の国際秩序が崩壊しかねない危機に直面している現在、ルール重視、WTO重視を主導すべき立場にあるのが日本だ。またこれまでの先人の努力もあって、そういう国際的な評価も得つつある。WTOを軽視している米国が違反するのとはわけが違う。 トランプ政権との蜜月関係を維持することはもちろん大事だ。しかし、短期的な日米関係のために中長期の日本の国際的な立ち位置を見失ってはならない。 報道によると、先日の自民党会合での説明で、この問題を問われると、茂木大臣は事務方に説明させている。メディアも大本営発表に従って、WTO違反かどうかについてはほとんど報道していない。 この問題を役人レベルの技術的な問題だとしているならば大きな間違いだ。「国内の業界が納得すればよい」「国内的な見せ方で乗り切ろう」という国内政治だけでは本質を見失う。日本の通商政策の根幹を揺るがす問題なのだ。 自動車の追加関税の確約が得られるかどうかばかりに目を奪われずに、メディアも国会もしっかりこの点をチェックしてもらいたい。今後内容が公表されてからすぐに協定署名の予定になっているだけに、今こそ、この問題をきっちり議論しておく必要があるだろう。 WTO違反でないことは、交渉のバランスが取れているかどうかを議論する以前の、大前提の必要条件なのだ。日本が大きな財産を失うとともに、将来に大きな禍根を残すことにならないよう願うばかりだ』、「特定国への関税引き下げは、「実質的にすべての貿易」について関税引き下げになるものでなければできない。それがWTO協定上のルールだ。米国の農産物に対してだけ関税を引き下げるといった“つまみ食い”は許されないのだ。それは日本が物品貿易協定(TAG)と呼ぼうが関係ない」、日本自らWTO違反をしたことは、「日本が大きな財産を失うとともに、将来に大きな禍根を残す」、それをマスコミは大本営発表だけで褒めそやしているとは嘆かわしいことだ。

次に、上記の続きを、9月30日付け日経ビジネスオンライン「日米貿易協定で日本がWTOルールの‟抜け穴”つくる?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00020/?P=1
・『日米貿易交渉の合意内容は本当に双方にメリットがある「ウィン・ウィン」と言えるのだろうか。結果を見ると、米国にとっては思惑通りだろう。 日本が米国産の牛肉や豚肉、小麦にかけている関税率の引き下げは、トランプ米大統領にとって最も実現したかった分野だ。2020年の大統領選で支持基盤となる中西部の農家にアピールできる。大統領選に間に合うよう妥結を急いだ。大枠合意から3週間で署名というのは、これまでの日米交渉にない異例の速さだ。通常、大筋合意から署名に至るプロセスでは、精緻な協定文に落とし込む作業があるために早くても3カ月はかかる』、安倍政権は「ウィン・ウィン」と強弁しているが、明らかに「ウィン・ルーズ」だ。
・『米国の“脅し”から設定された交渉目標  日本が成果として誇るのは、農産物の関税引き下げを環太平洋経済連携協定(TPP)の水準以内にとどめたことと、自動車の制裁関税を回避できたことだ。 これらが日本の交渉目標になったのは、米国が日本に対して、(1)農産物でTPP以上の要求をする、(2)自動車の制裁関税を検討する、という2つの“脅し”が背景にあってのことだ。 こうした“脅し”を振りかざして交渉するのが、米国の常とう手段である。その結果、交渉は日本の守り一辺倒になってしまった。これは米国のゲームプラン通りだろう。 ただし、これらの“脅し”を冷静に見極める必要がある』、「ディール好き」なトランプ政権に見事に乗せられたようだ。
・『“毒まんじゅう”を回避した意義は大きい  米国はTPPから離脱したために、農産物について競争相手のTPP参加国と比べて相対的に不利になってしまっている。こうした事態に対して、トランプ大統領は農家の不満を早急に解消したいはずだ。TPPの水準以上の要求は、単なる交渉術だろう。 自動車の制裁関税も仮に発動すれば、輸入車だけでなく、米国車のコストも大幅に上がることになる。その結果、ディーラーなどすそ野の広い米国自身の自動車関連産業に打撃になり、自分の首を絞めることになる。それは、米国の様々なシンクタンクの試算でも示されている。そうなれば、株価の暴落を招きかねない。 トランプ氏が大統領に再選されるためには株価の維持が不可欠だ。そのため、制裁関税を課すことが再選にとってプラスと判断するかどうか、慎重に見極めるはずだ。そうした意味で、これは実行できない“空脅し”となる可能性が高い。 ただしトランプ氏は予測不可能なので、こうした合理的な判断をするかどうかがわからない。それが大問題なのだ。そうした意味で今回は、「有事」の交渉だったと言える。トランプ氏を怒らせて、万が一でも日本車が25%の制裁関税をかけられるような事態を招きたくないと思うのは、自然な反応だ。 日本にとって、自動車への制裁関税が課されれば深刻な打撃になる。そのため、これを避けることが自動車業界にとっても最優先課題となった。そこで「協定の精神に反する行動を取らない」と共同声明に盛り込んだ。 さらに、「米国・メキシコ・カナダ協定」(USMCA)や米韓自由貿易協定(FTA)では追加関税を回避するため、米国に輸出する自動車や鉄鋼に数量制限が設けられたのに対し、日本は貿易を歪曲(わいきょく)する数量制限を受け入れなかったことは大事なことだ。数量制限は“毒まんじゅう”のようなもので、一旦飲まされると、後で嵩(かさ)にかかって米国の要求がエスカレートするのを覚悟しなければならない。これを回避した意義は大きい』、確かに「数量制限を受け入れなかった」のは数少ない成果のようだ。
・『日本が越えてはならない一線とは  だが、米国が日本から輸入している自動車と自動車部品にかけている関税の撤廃は実現しなかった。日本の自動車業界も25%の制裁関税の回避を優先して、これらの関税撤廃にかかわらなかったようだ。2.5%の関税なので、為替変動と比較すれば業界としてもそれほど実害がないとの判断だ。それは業界としては正しい判断だろう。しかし通商政策としてどうかは別問題だ。 メディアは今回の交渉で、日米間でバランスがとれたかに注目する。日本の大幅譲歩ではないかとの指摘も見られる。しかしこれまでの日米の貿易交渉を振り返ると、残念ながらバランスを目指してもそうならない歴史がある。安全保障を米国に依存している日本の置かれた状況からはやむを得ない。むしろ貿易交渉だけを取り出してバランス、勝敗を議論すること自体、あまり意味がない。 しかし国民感情もあるので、国内政治的には、「ウィン・ウィンだ」「バランスを確保した」と言わざるを得ない。 現実は日米貿易交渉での日本側の譲歩にはやむを得ないものと理解している。ただし、そこには越えてはならない一線もあることを忘れてはならない。今後の日本のあり方を考えた時、日本が守るべきものがあるのだ』、前回の厳しい論調と比べ、安倍政権への理解を幾分示したようだ。
・『日米は明らかに「同床異夢」  自動車・自動車部品は米国への輸出額の多くを占めている。これらを除外すると関税の撤廃率は貿易額の60%台にとどまることになり、世界貿易機関(WTO)のルールで目安とされる90%程度に遠く及ばない。 これまで日本は、米国が離脱したTPPで主導的な役割を果たし、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効にこぎ着けた。国際貿易機関(WTO)ルールの重視をうたい、インドや中国にも高い水準での自由化を呼びかけてきた。だが、米国との協定が「二重基準」とみなされれば、今後は他国に高い水準の関税撤廃率を強く要求できなくなる。 米国の自動車や自動車部品の関税については「更なる交渉による撤廃」が明記された。これは「WTO違反ではない」と説明するために大枠合意後、日本側が書き込む努力をしたものだ。そしてこれらも含めて、今回の合意の関税撤廃率を計算して、米側で92%、日本側で84%と発表して胸を張る。 米国は撤廃時期も書いていないし、米国も交渉を合意しただけで譲歩したわけではないとして、米国議会の承認も必要ないと判断したようだ。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表も記者会見で、「米国の自動車関税の撤廃はこの協定に含まれていない」とコメントしている。明らかにこれは同床異夢だ。 もちろん日本の交渉者の努力は評価する。だが、この一文の挿入によってWTO違反の“クロ”を多少なりとも“グレー”にしようという知恵だろうが、本質はそこではない。これで良いならばWTOルールにとって「抜け道」となり、他国にも同じやり方がまん延しかねない。その結果、日本がWTOルールを空文化する先鞭(せんべん)をつけることになってしまう。 米国と中国はWTOのルールを無視して、制裁・報復関税の応酬を続けている。その結果、戦後築き上げてきた国際秩序が崩壊の危機にさらされている。そうした状況だからこそ、日本はWTOやルールの重要性を訴え、それを主導する必要がある。そもそも米中のような巨大な国内市場を持たない日本のような国は、ルールを重視しなければ生き延びることはできない。その生命線を自ら崩してはならない』、「米国の自動車や自動車部品の関税については「更なる交渉による撤廃」が明記された。これは「WTO違反ではない」と説明するために大枠合意後、日本側が書き込む努力をしたものだ。そしてこれらも含めて、今回の合意の関税撤廃率を計算して、米側で92%、日本側で84%と発表して胸を張る」、見え透いた小細工だ。「同床異夢」というより、日本側が国内向けに嘘で塗り固めた虚構といえる。
・『今後の展開を読む  日米は2020年1月にも協定を発効させて、来春以降に「第2ラウンドの交渉」に入るとしている。しかしこれも額面通り受け取ってはならない。これは米国議会が「包括的な協定にすべし」としていることから、トランプ政権としては、今は「包括的な協定にするべく、さらに交渉する」と言わざるを得ないからだ。来年になって大統領選が佳境に入って、すぐに大統領選にプラスになるような果実を得られない交渉にトランプ大統領が果たして興味を示すだろうか疑問だ。 仮に第2ラウンドがあったとしても、米側は物品貿易の交渉は終わったとして、薬価制度の見直しやサービス分野の市場開放に焦点を移すだろう。百歩譲って、継続協議となった米国の自動車関税の撤廃を議論できたとしても、日本の農産物の関税引き下げという交渉のレバレッジを失ってしまって、果たして米国から譲歩を得られるだろうか。 残念ながら淡い期待はしない方がよさそうだ』、「日本の農産物の関税引き下げという交渉のレバレッジを失ってしまっ」たとは、本当に馬鹿なことをしたものだ。

第三に、スタンフォード大学講師のダニエル・スナイダー氏が9月27日付け東洋経済オンラインに掲載した「安倍首相はトランプに「使われて」いないか 日米貿易協定は「ウィンウィン」という幻想」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/305106
・『安倍晋三首相はひょっとしてドナルド・トランプ大統領の再選キャンペーンに加わったのだろう? これが、ニューヨークで開かれた安倍首相とトランプ大統領の首脳会談を見て、彼らが発表した貿易協定を読んだ後、筆者の頭に浮かんだ疑問である。 安倍首相は日本の記者団に対し、これは「お互いにメリットがあること」だと強調した。しかし、アメリカの貿易政策の専門家は、これをアメリカ大統領の勝利、より正確には、トランプ大統領の再選キャンペーンを後押しするものだと考えている』、「安倍晋三首相はひょっとしてドナルド・トランプ大統領の再選キャンペーンに加わったのだろう?」、というのは最大限の皮肉だ。
・『自らの成果として大いに喧伝する  「これによって、大統領選挙の年を迎えるトランプ氏に対する政治的圧力がいくらか緩和されるだろう」と、国際戦略研究センターのマット・グッドマン氏は話す。「農業部門以外の経済的利益は限られているが、トランプ氏は、彼にとって最初の、そして唯一の新たな二国間取引である合意を、大きな勝利であり、貿易については厳しく詰め寄る彼のアプローチの正当性が立証されたものとして大いに宣伝するだろう」。 茂木敏充外務相のもとで働いていた日本の交渉担当者は、協議に入るに当たりに非常に厳しい立場をとっていた。日本側は、アメリカがすでに欧州連合(EU)および環太平洋パートナーシップ参加国(TPP-11)に与えているのと同じレベルの農産物市場へのアクセスと、関税引き下げをアメリカにも認めるよう、アメリカ側が求めていることを知っていた。日本側がオバマ政権事も同じ問題を交渉していたことを踏まえると、今回は予想以上に譲歩したと言える。 ただし日本側は、自国の要求を通すために農産物を「交渉材料」として使った。その要求とは、いわゆる米通商拡大法232条に基づいて日本の自動車輸出へ追加関税を発動しない、あるいは数量規制を設けないとする、トランプ大統領による明確で文書化された約束だ。日本のある政府高官は、これが今回の交渉における彼らの「越えてはならない一線」であると打ち明ける。 その代わり、今回の共同声明では、農産物に関しては前もって譲歩を見せ、これにについては臨時国会で承認を得る予定だ。一方、自動車およびその他の主要品目についての合意は先延ばしにされ、はっきりとしたスケジュールがないままこの先も交渉が続く。 日本は、交渉中、および協定が履行されている間は、協定の「精神に反する」行動はとらないという言質をとりつけた。これは2018年9月に出された共同声明に記された文言と同じだが、これは232条に基づく訴えへの歯止めにはならなかった。 前述の政府高官は、日本側はこれを「十分な保証」と考えており、安倍首相との2人だけの会談においてトランプ大統領自身が、これは232条に基づく関税が発動されないことを意味する、と明言したと話す。茂木外相も日本の記者団に対し、協定の履行中はこの約束が尊重されるものと理解していると話した。 ニューヨークに拠点を置くコンサルティング会社テネオの日本専門家、トバイアス・ハリス氏も基本的には同じ見方だ。「交渉が始まった1年前の共同声明と同様に、この合意もまた、安倍首相の時間稼ぎ、そして最も有利とは言えない状況をコントロールする動きの1つなのかもしれない」と書いている』、「「精神に反する」行動はとらないという言質」、はどうとでも解釈できるので、「十分な保証」とはとても言えないだろう。
・『追加関税のリスクは持続する  だが、多くのアメリカ人の通商問題専門家たちはより懐疑的だ。 ブルッキングス研究所のミレーヤ・ソリス氏は、「日本政府がこれをどのようにウィンウィンとして描写するのか想像し難しい」と話す。 「自動車部門は除外されている。また、トランプ大統領は、追加関税という脅威により、日本の農業市場への優先的アクセス条件が脅かされる可能性があると警告されたとは考えていない。これまでの状況から考えると、声明における非常に曖昧な約束に潜在的な問題があることがわかる。自動車関連は今回の協定に含まれないため、トランプ大統領は232条に基づく追加関税を、協定の精神を侵害するものと考えることはないだろう。従って、保証はなく、そのリスクは持続する」 実際、トランプ大統領と政府高官は、この協定について限定的な説明しかしていない。「現時点で、第232条に基づいた措置を、日本の自動車に対して行う意図は、われわれ、つまり大統領にはない」と、アメリカの首席貿易交渉官ロバート・ライトハイザーは発言した。 一方、トランプ大統領は、この誓約や第232条の問題についてはまったく言及しなかった。さらに重要なのは、日本側はトランプ大統領の誠実さを保つために持っていた最も効果的な“武器”をすでに手放してしまっていることである。 日本の政府高官らは、トランプ大統領の“不確実性”をよく心得ている。「トランプ大統領が確実に機嫌よくいられるようにしたい」とニューヨーク在住の日本の高官は話す。「貿易交渉についての報道は、トランプ大統領の予測不可能な感情的反応につながることがないように、合意で得たもの(または避けたもの)を強調しない」。 首脳会談に先駆けて、ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙などは、自動車関税問題に関してアメリカ側が明確に誓約することを拒否したため、この協議が行き詰まったと報じた。 ニューヨーク・タイムズ紙などは、日本側が「サンセット条項」、または、「スナップバック合意」と呼ばれる方法によってこの問題を回避しようと試みたと報道。これにより、アメリカが話を進めて、自動車関税を課した場合、農産物に対する関税免除は一時停止または撤廃される可能性がでることになるだろう』、「トランプ大統領は、この誓約や第232条の問題についてはまったく言及しなかった」、というのは将来の火種となる可能性を示唆している。「サンセット条項」は入ったのだろうか、記事ではどうも入らなかったようだ。
・『トランプ大統領側は成果を強調  今回発表された声明やアメリカ側の資料からは、今後こうした自動車関税について議論される兆し、ましてや合意にたどり着く兆候はまったく感じられない。それなのに日本の政府関係者は、まだ議論を続けようとしている。 「232条が課された場合、われわれは本協定を終了させる」と、日本の交渉担当の1人は語る。だが、日本の貿易政策専門家に言わせると、そのような措置が日本の法律において合法かどうかは微妙だ。本協定が国会を通過した場合、簡単に差し止めたり無効にしたりすることはできるのだろうか。 一方、トランプ大統領がアメリカ国民に伝えたかったことは非常に明確だった。ホワイトハウスとアメリカ通商代表部は、日本から得ようとしていたすべての農業利権についてアメリカの記者団に詳細に伝えていた。 「この第一段階である最初の関税合意により、日本はさらに72億ドル分のアメリカの食料および農産物への関税を撤廃あるいは減税することになるだろう」と、通商代表部は報告書に明記している。「協定が実施されれば、日本が輸入する食料と農産物の90%以上が非関税になるか、特恵関税の権利を受けることになるだろう」と。 今回の貿易交渉が、トランプ大統領の再選に向けたキャンペーンの一環であることは明らかだ。中国との貿易戦争によって重大な打撃を受けている農家からの支持は大きく下がっているうえ、貿易戦争は当面収まりそうにない。 翻って今回の声明は、トランプ大統領を支持するアメリカの農業関連団体の意見が大きく反映されている。文字どおり発表から数分以内に、ウォールストリート・ジャーナル紙や、他紙の記者は、トウモロコシ、小麦、その他製品の業界団体からこの偉大な「勝利」を称賛しているといったいくつものプレスリリースを受け取った』、確かにトランプ大統領にとっては、大きな勝利のようだ。
・『「ご機嫌取りをする日本に心底うんざり」  「これはアメリカの農家、牧場経営者、生産者にとって大きな勝利である」とトランプ大統領は語る。「そして私にとって非常に重要なことだ。また君たちがこのニュースを報道することが重要だ。なぜなら知ってのとおり、農家や牧場経営者や、ほかの多くの人々にとって、これはすばらしいことだからだ」 成果を強調しようと、こうした団体の代表者たちを伴った安倍首相を前に大統領はテレビ番組向けの一芝居をうち、それぞれにとって協定がどれほど得策であるかを証言するよう要求したのだった。「日本は特別な存在になる 」。トランプ大統領はそう結び、「そしてこれが私の特別な友達だ」と言って安倍首相に頷いてみせた。 皮肉なことに、こうしたこれ見よがしの愛情表現、そして安倍首相がトランプ大統領の政治目的に身を投じたのと時を同じくして、トランプ大統領が大々的にやり玉に上がった。民主党の大統領ナンバーワン候補であるジョー・バイデン氏を貶めるスキャンダルを渡すよう、ウクライナに対して圧力をかけようとしたというのだ。安倍首相に伴ってニューヨークに来ている日本人記者団は、安倍首相がトランプ大統領と会談している間にそんな騒ぎとなっている事実にはほとんどどこ吹く風という様子であった。 「ニクソン以来、(そしてトランプ大統領の日々の非道な振る舞いの度合いを考えても)、アメリカの政治・憲法上最大の危機的状況の真っ最中に安倍首相はのこのこやって来て、またしてもトランプ大統領にへつらうのか?」と、知日家のアメリカ人識者は話す。 「二国間自由貿易協定合意はいいことかもしれないが、世論のほうは最悪だ。貿易協定が締結されつつある時に、日本人がトランプ大統領がまたもや一大スキャンダルに直面しようとしていることを知る由もなかったのは事実なのだから。それにしても日本がトランプ大統領にご機嫌とりをする様にはもう心底うんざりする。日本の政策が世界の目から見てどれほど不愉快なものか、日本はまったくわかっていない」』、「「ニクソン以来、・・・・アメリカの政治・憲法上最大の危機的状況の真っ最中に安倍首相はのこのこやって来て、またしてもトランプ大統領にへつらうのか?」と、知日家のアメリカ人識者は話す」、「日本の政策が世界の目から見てどれほど不愉快なものか、日本はまったくわかっていない」、などは厳しいアメリカの見方なのだろう。いずれにしろ、「「ウィンウィン」という幻想」を振りまいた安倍政権、大本営発表を無批判に垂れ流した日本のマスコミの罪は深い。せめて国会での野党の追及に期待したい。
タグ:米国が日本に対して、(1)農産物でTPP以上の要求をする、(2)自動車の制裁関税を検討する、という2つの“脅し”が背景 トランプと日米関係 追加関税のリスクは持続する 米国の“脅し”から設定された交渉目標 交渉中、および協定が履行されている間は、協定の「精神に反する」行動はとらないという言質をとりつけた 細川昌彦 大統領選挙の年を迎えるトランプ氏に対する政治的圧力がいくらか緩和されるだろう 「日米貿易協定で日本がWTOルールの‟抜け穴”つくる?」 自動車関税の引き上げの脅しは『抜けない刀』で“空脅し”だからだ アジア諸国をはじめ途上国と自由貿易協定(FTA)を締結するに当たって、およそ高い関税撤廃率を求めることは難しくなる。米国相手のときだけ基準を変える「二重基準だ」との批判も免れない 日本も本来共同歩調を取るべきであるにもかかわらず、トランプ大統領との蜜月を崩すことを恐れてか、提訴はしていない 自らの成果として大いに喧伝する 関税撤廃率は6〜7割といったところだ。完成車が含まれない限り、明らかにWTO違反となる 通商拡大法232条による追加関税のWTO違反の措置である。既に米国は鉄鋼・アルミニウムについて発動しているが、欧州連合(EU)など各国からWTO違反として提訴されている 追加関税を脅しに、対米輸出の数量規制に追い込むことはメキシコ、カナダとの交渉で味をしめたライトハイザー通商代表の手法 WTO違反の追加関税は“空脅し”だ 安倍晋三首相はひょっとしてドナルド・トランプ大統領の再選キャンペーンに加わったのだろう? 今後継続協議といっても、農産物でカードを切ってしまって交渉のレバレッジを失った後では、残念ながら“気休め”にすぎない 自動車の「継続協議」は“気休め”か? 「安倍首相はトランプに「使われて」いないか 日米貿易協定は「ウィンウィン」という幻想」 東洋経済オンライン ダニエル・スナイダー 米国の農産物に対してだけ関税を引き下げるといった“つまみ食い”は許されない 米国に対して「TPPの水準までは譲歩する」と最初からカードを切ったことになる。米国は何の代償も支払わずして、このカードを手に入れることに成功したのだ 交渉前にあえて米農務長官がTPPの水準以上の要求発言をしたのも、単なる交渉戦術だ。 しかし日本はそれをまともに受け取ってしまった 先にカードを切ってしまった農産物 日本の農産物の関税引き下げという交渉のレバレッジを失ってしまって、果たして米国から譲歩を得られるだろうか 日米交渉はまたもや“守り一辺倒”に 「日米貿易協定、「WTO違反」までして譲歩するのか?!日本側は“守り一辺倒”になってしまった」 特定国への関税引き下げは、「実質的にすべての貿易」について関税引き下げになるものでなければできない。それがWTO協定上のルール 今後の展開を読む 完成車が含まれない限りWTO違反になる?! 自動車の追加関税を回避することを交渉の優先目標にした結果、米国の自動車関税の撤廃という日本の本来の要求の優先度が下がって、継続協議になったのだ。 これも米国の思惑通りの展開だろう ライトハイザー代表も記者会見で、「米国の自動車関税の撤廃はこの協定に含まれていない」とコメント 日経ビジネスオンライン 米国の自動車や自動車部品の関税については「更なる交渉による撤廃」が明記された。これは「WTO違反ではない」と説明するために大枠合意後、日本側が書き込む努力をしたものだ。そしてこれらも含めて、今回の合意の関税撤廃率を計算して、米側で92%、日本側で84%と発表して胸を張る 日本の政策が世界の目から見てどれほど不愉快なものか、日本はまったくわかっていない ニクソン以来、(そしてトランプ大統領の日々の非道な振る舞いの度合いを考えても)、アメリカの政治・憲法上最大の危機的状況の真っ最中に安倍首相はのこのこやって来て、またしてもトランプ大統領にへつらうのか?」と、知日家のアメリカ人識者は話す 「ご機嫌取りをする日本に心底うんざり」 今回の貿易交渉が、トランプ大統領の再選に向けたキャンペーンの一環 トランプ大統領側は成果を強調 日本が越えてはならない一線とは 数量制限は“毒まんじゅう”のようなもので、一旦飲まされると、後で嵩(かさ)にかかって米国の要求がエスカレートするのを覚悟しなければならない。これを回避した意義は大きい 日本側はトランプ大統領の誠実さを保つために持っていた最も効果的な“武器”をすでに手放してしまっていることである “毒まんじゅう”を回避した意義は大きい トランプ大統領は、この誓約や第232条の問題についてはまったく言及しなかった (その5)(日米貿易協定 「WTO違反」までして譲歩するのか?!日本側は“守り一辺倒”になってしまった、日米貿易協定で日本がWTOルールの‟抜け穴”つくる?、安倍首相はトランプに「使われて」いないか 日米貿易協定は「ウィンウィン」という幻想)
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イラン問題(その3)(ホルムズ海峡の日本船舶 守るのは有志連合ではない、有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」、数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備) [外交]

イラン問題については、6月27日に取上げた。今日は、(その3)(ホルムズ海峡の日本船舶 守るのは有志連合ではない、有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」、数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備)である。

先ずは、7月12日付け日経ビジネスオンラインが掲載した元衛艦隊司令官(海将)の香田洋二氏へのインタビュー「ホルムズ海峡の日本船舶、守るのは有志連合ではない」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/071200077/
・『米国のダンフォード統合参謀本部議長が7月9日、ホルムズ海峡の安全確保などを目的とする有志連合を結成すべく、関係国と調整していると明らかにした。日本政府も打診を受けたとされる。日本はこれにどう対応すべきなのか。安倍晋三首相が取り組むイラン・米国の仲介に影響はないのか。海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた香田洋二氏に聞いた。 Q:イランとの緊張が高まる中、米国が関係国との連携に動き始めました。 香田:今回の件で、強調しておきたいことが2つあります。1つは、ホルムズ海峡の周辺を航行する日本の民間船舶を守るのは誰なのか、をしっかり考える必要があること。日本の船舶に従事する船員の命を誰が守るのか、石油をはじめとするエネルギーの安定供給に誰が責任を持つのか、ということです。これはダンフォード氏に言われて始めるようなことではありません。この点について政府が議論していないとしたら、無責任のそしりを免れ得ません。 2つ目は、今回、米国が提唱する有志連合は、アフガニスタン戦争やイラク戦争の時に結成されたものとは全く異なる性格のものです。この2つの有志連合は、それぞれの国に攻め込むことを前提にしていました。しかし、今回の有志連合はホルムズ海峡周辺の安全確保と、航行秩序の維持が目的。武力行使を意図とした有志連合ではありません。集団的自衛権を持ち出すなど、両者を混同した議論が見受けられます』、議論の混迷を解きほぐしてもらいたいものだ。
・『軍事行動の可能性は低い  そもそもの話として、私は、米国もイランも軍事力に訴える可能性は低いと考えます。まずイランの側に立って考えてみましょう。イランにとって最悪なのは、国際社会の中で孤立することです。ホルムズ海峡で過激な行動を取れば、西側諸国などから経済支援を受けられなくなってしまいます。軍事攻撃を目的とする新たな有志連合の結成に正当な理由を与えることにもなりかねません。イランはそんなことはしないでしょう。 6月13日に日本とノルウェーのタンカーが攻撃される事態がありました。イランが過激な行動を取ったとしても、あの程度がせいぜいでしょう。私は、あの事件を起こしたのは革命防衛隊などの孫請け組織だと見ています。場所は、イラン領海の外縁から2カイリほど。イランが厳しく管理をしている海域ですから、イラン関連の組織がやったのは間違いありません。ただし、そのやり方は素人然としたものでした。今のタンカーは二重船体になっています。日本のタンカーへの攻撃は内側のタンクに及ぶものでなく、火災を発生させることもできなかった。 さらに、日本のタンカーと意識することなく攻撃したものとみられます。その場にいた、やりやすそうな船を選んだ。安倍首相がイランを訪問していた時ですから、イラン政府としては孫請け組織が「とんでもないことをしてくれた」と見ていたでしょう。 一方、米国にとっても、今の段階で軍事行動を起こすのは時期尚早です。イランが核合意を破り、低濃縮ウランの貯蔵量が2015年の核合意で規定した300kgを超えても、濃縮度を合意を上回る4~5%に上げることがあっても、核兵器の開発を始めるには、まだいくつものステップが残っています。軍事行動を要する事態には至っていません。 また、米国にとって現在の最大の脅威は中国です。イランに対処するために、北東アジアに置くべき軍事アセットを中東に回すのは考えづらいことです。加えて、軍事行動は一度始めたら、どこまでエスカレートするか分かりません。中東にくぎ付けになる可能性があり、リスクが大きすぎます』、さすが軍人らしく冷静な判断だ。
・『米国の狙いは中東の安定維持  Q:米国が有志連合の結成に向けて、動き始めたのはなぜでしょう。 香田:米国は、中東地域の安定を国益と考えているからです。冒頭でお話しした、考えておくべきことの2つ目と関連します。 シェール革命が起きて、エネルギー供給における中東依存度は下がっています。このため、米軍が中東に直接関与する必要性は小さくなっている。それでも、この地域の面としての安定を維持し、海上交通の秩序を維持することは依然として重要と見ているのです。先ほど触れたタンカーへの攻撃のようなイランの冒険を抑止する意図もあるでしょう。 ただし、そのための行動のすべてを米国が単独で賄うことはできません。なので、自国の船を護衛する力のある国は自分でやってほしいということです。 Q:先ほど、イランに軍事行動を起こす気はないと説明していただきました。そうであれば、米国が中心となって有志連合を結成することが、かえってイランを刺激することになりませんか。 香田:確かに、イランが態度を硬化させる可能性はあるかもしれません。ただし「刺激」はすでにしています。その一方で、毅然とした態度を取ることで、イランを増長させない効果が期待できます。 「刺激」が元でイランが軍事行動を起こすことがあれば、イランにとって虎の子である核関連施設を攻撃される恐れが生じ自殺行為です。そんなことはしないでしょう。また、刺激しようがしまいが、軍事行動を起こす時は起こすものです。 Q:ダンフォード氏は「米国が警戒活動を指揮する」と発言しています。具体的には何をするのでしょう。 香田:民間船舶の運航統制を考えているでしょう。自国の船を護衛する力のない国の民間船舶が、武装することなくペルシャ湾周辺を航行するのは好ましいことではありません。日本やNATO(北大西洋条約機構)加盟国の民間船舶の間に、こうした国の船を割り当てて航行すれば、これらにも警戒の目を及ぼすことができます』、日本がチャーターした船への攻撃が偶発的なものだとすれば、「有志連合」への参加の必要性はない筈だ。
・『日本は、日本の船を守るのか  Q:日本は有志連合に加わるべきでしょうか。 香田:これは、考えておくべきことの1つ目と関連します。日本の船を日本の政府や自衛隊が守るべきか否かを決心する必要がある。 自衛隊を海外に出すことに依然として抵抗があるようです。しかし、日本の船舶を守るのは日本しかありません。もちろん、憲法の枠内で行動するのが前提です。 政治的判断として「守らない」という選択もあり得ます。ただし、その時は船員の生命をどう考えるのか、という問題が生じます。エネルギーの安定供給も保証できません。 日本の船舶を日本政府が護衛するのに、集団的自衛権の議論は必要ありません。日本政府も自衛隊もイランの現状において集団的自衛権を行使することは考えていないでしょう。やってはいけないことです。 Q:日本の船は日本が守る、と決心した場合、どのような法的根拠で護衛艦を派遣することになるのでしょうか。 香田:まずは海上警備行動。この時、武器の使用については、警察官職務執行法第7条(正当防衛・緊急避難)にのっとることになります。 場合によっては、特別措置法を制定することになるかもしれません。 武力攻撃に至らない侵害に迅速に対処し、不法行為に切れ目なく対応すべく、政府は2015年、海上警備行動の発令手続きを迅速化するための閣議決定をしました。 Q:先ほど、第三国の船舶も護衛対象にする可能性をお話しいただきました。これは、海上警備行動で可能ですか。 自衛隊法 第82条 防衛大臣は、海上における人命若(も)しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。 香田:無防備の第三国の船舶が、護衛艦の至近距離において武装勢力に襲われるケースですね。こうした事態への対処は事前に決めておく必要があります。憲法違反の疑義があるならば、「助けない」という選択になります。 ただし、遭難など、海の上で困っている人がいたらお互いに助け合うという不文律があります。「海員の常務」と呼ばれるものです。これを適用することは可能です。自力で自国の船舶を守る力を持たない国と外交交渉をし、護衛対象にすることもあり得るでしょう。人道支援と考えることもできます』、なるほど。
・『「米艦防護」の必要はない  Q:ダンフォード氏は、「警戒活動を指揮する米国の艦船」も護衛の対象に想定しているようです。自衛隊が「米艦防護」を求められることはありませんか。2015年に成立した安保法制で、平時において自衛隊自身が保有する武器などを防護するために武器が使用できるのと同様に、米軍の艦船や航空機を防護するための武器使用が可能になりました。 香田:それはありません。米国の艦船は、自衛隊に護衛してもらわなくても、自力で守れます。 考える必要があるとすれば、極めてまれなケースですが、エンジンが故障した、電力が供給できなくなった、といった不慮の事故に米国の艦船が見舞われた時でしょう。これについては、どのように対処するか、政府は事前にルールを決めておく必要があります。先ほど触れた「海員の常務」と解釈することもできます。 Q:護衛艦を派遣する場合の任務と法的根拠について「国際平和支援法」に基づく後方支援を提供する可能性はありますか。安保法制の一環として、新たに制定された法律です。アフガニスタン戦争の際、日本は特別措置法を制定して、インド洋において多国籍軍に給油を実施しました。国際平和支援法はこうした措置を恒久法で定めるものです。 国際平和支援法1条 この法律は、国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国際連合憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの(以下「国際平和共同対処事態」という。)に際し、当該活動を行う諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等を行うことにより、国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。 香田:今回のケースにはなじまないと思います。今回の有志連合の目的はあくまで、ホルムズ海峡周辺の安全確保と航行秩序の維持です。武力攻撃が目的ではないので、国連安保理決議を必ずしも必要とする措置ではありません。もちろん、あった方が好ましくはありますが。 他国の部隊への給油などの支援措置があり得るとしたら、ペルシャ湾に艦船を派遣するものの資金がなく燃料の確保に困る国を支援するケースでしょう。その場合は、特別措置法を制定し、物品役務相互提供協定(ACSA)*を締結した国を支援できるようにすることになると思います。 *:自衛隊と他の国との間で物資や役務を融通しあう取り決め。食料、燃料、弾薬などの物品や、輸送、医療などの役務が対象。安全保障・防衛協力をスムーズに実施し、協力の実効性を高めることが狙い。国連平和維持活動(PKO)や共同訓練、大規模災害における協力を想定している』、「「米艦防護」の必要はない」というのは当然だろう。
・『日本の船舶を守ることに専念するなら、「仲介」に悪影響はない  Q:安倍首相が6月にイランを訪問し、米国・イラン間の緊張を緩和すべく仲介に乗り出しました。9月の国連総会で、イランのロウハニ大統領と再び会談することを検討し始めています。 米国が主導する有志連合に参加すると、仲介者としての中立を放棄しているようにイランからは見えるでしょう。仲介に支障をきたしませんか。 香田:リスクはあります。だからこそ、自衛隊の護衛艦は日本の船舶を護衛することに専念すべきです。この点を明確にする。それでもイランは日本の姿勢を難詰するかもしれません。しかし、日本の自衛隊が日本の船舶を護衛するのは当たり前のことです。クレームを付けられる筋の行動ではありません。 加えて、有志連合の目的がホルムズ海峡周辺の安全確保と航行秩序の維持であることを明瞭にすべきです。イランに攻め込む意図のものではない、と。ダンフォード氏の現在の言動だけでは不明瞭です。日本の外務省はこの点で努力する必要があると思います』、「有志連合の目的」をいくら「明瞭」にしたつもりでも、イランにとっては敵対行動と捉えられる可能性は大きく、やはり「仲介」が難しくなるとみておくべきではなかろうか。

次に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が7月18日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/208948
・『急浮上した「有志連合」 政府は対応に苦慮するが  7月9日、米統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード海兵大将は記者団に対し、ペルシャ湾の出入り口であるホルムズ海峡などの航海の安全確保のため「有志連合」結成を目指し関係諸国と調整中であることを表明した。11日には米国務次官補デビッド・スティルウェル空軍准将(予備役)が来日、外務省、防衛省などとイランや北朝鮮情勢につき意見交換を行った。 これに先立つ6月24日、トランプ米大統領はツイッターで「ホルムズ海峡を主たる原油輸入路としている日本、中国などが自国の船を自ら守るべきだ」と述べた。ダンフォード統参議長の「有志連合」結成論や、スティルウェル国務次官補の訪日は、トランプ大統領の意向を受けたものだと考えられる。日本政府は対応に苦慮しているが、「イラン包囲網」に参加する「大義」はあるのか』、さしもの安倍政権も今度ばかりは慎重姿勢のようだ。
・『米・イラン対立はトランプ政権が引き起こした  現在起きているイラン核合意をめぐる米国とイランの対立は、ひとえにトランプ政権が引き起こしたものだ。米・露・英・仏・中・独の6ヵ国とEUはイランの穏健派政府との2年以上の交渉の結果、2015年7月「イラン核合意」に達した。この合意では、イランは少なくとも15年間は、原子炉の燃料用の3.67%以上の濃縮ウランやプルトニウムを製造せず、濃縮用の遠心分離機の大幅な削減をし、その見返りにイランに対する経済制裁は解除することを定めている。 国連安全保障理事会もそれを支持する決議をし、IAEA(国際原子力機関)は2016年1月、イランが合意を完全に履行したことを確認した。これで経済制裁は解除に向かい、話し合いによる解決の成功例となった。 ところがトランプ大統領は2018年5月、一方的にイラン核合意離脱を宣言、経済制裁をすべて再発動した。米国はイランと取引をする外国金融機関等の企業にも制裁を再導入するとしている。それまでの対話の努力をすべてひっくり返す米国の離脱にはイランはもちろん、他の合意署名国も怒り、英、仏、独が遺憾の意を共同で表明したのは当然だ。 このためイランは7月7日、核合意で上限とされたウラン濃縮3.67%を超えた4.5%濃縮を行うことを宣言したが、核兵器用の濃縮ウランはウラン235の比率が90%以上であり、4.5%は核兵器開発には程遠い。経済制裁が解除されないことへのイランの不満を示すジェスチャーにすぎない。 米国はこれを「核合意違反」と非難するが、自国は核合意離脱を宣言。経済制裁を再開し、合意をほごにしたのだから、まるで契約を破棄して商品の代価は支払わず、「納入しないのは契約違反」と騒ぐようなものだ』、そもそも「米・イラン対立はトランプ政権が引き起こした」、というのはその通りだ。
・『「日本タンカー襲撃」でも米国の主張は不自然  6月13日にホルムズ海峡の出口であるオマーン湾で日本の国革産業が運航するタンカー「コクカ・カレイジャス」(パナマ船籍、1万9000総トン)と、ノルウェー企業が運航していたタンカー「フロント・アルタイル」(マーシャル諸島船籍、6万3000総トン)が爆発物による攻撃を受けたこの事件につき、米国は「イランに責任がある」と主張、中東地域を担当する米中央軍は「攻撃は吸着水雷(Limpet Mine)によるものだ」との声明を出した。また「イランの革命防衛隊が不発だった水雷を日本のタンカーから回収し、証拠隠滅している状況を米軍が撮影した」とする“証拠写真”を公表した。だがこの主張には極めて不自然、矛盾した点がある。 吸着水雷は強力な磁石を付けた小型爆弾で、アクアラングを背負ったダイバーがボートや小型潜水艇で港に潜入、停泊中の敵艦船の水線(海面の線)下に取り付け、時限信管で爆発させる。 第2次世界大戦中の1943年9月、英軍特殊部隊の14人がカヌー3隻でシンガポールの港に潜入、吸着水雷で日本の貨物船7隻を沈没、または破損させた。1945年7月には英軍の超小型潜水艇でシンガポールに潜入したダイバーが重巡洋艦「高雄」の船底に吸着水雷を付け、大亀裂を生じさせた。人が抱えて泳げるような小型水雷でも、水中では爆発の圧力が周囲の水に抑えられ、船に向かって集中するから相当な威力を発揮する。 だが「コクカ・カレイジャス」の破孔は1回目の午前6時45分頃の爆発によるもので、右舷船尾の水線より少し上だった。その約3時間後に起きた2回目の爆発は、右舷中央部の水線よりはるかに高い位置に小さな穴を生じさせた。 泳いで船に接近するダイバーは、目標の船の水線下には比較的容易に吸着水雷を付けられるが、泳ぎながら水線より上に爆弾を持ち上げて付けるのはシンクロナイズドスイミングより難しいし、水線下に穴をあけないと効果は乏しい。 まして2回目の攻撃の破孔は、水面から手が届かないような高い舷側に生じている。何のために、どうやって水雷を高い場所に取り付けたか、極めて不自然な話だ。もしヘリコプターか無人機が搭載する小型のミサイルを誤射すれば、このような被害が生じる可能性がある』、確かに米国の主張には、かなりの無理があるようだ。
・『つじつま合わない「証拠写真」 「反イラク感情」抱かせる狙い?  「コクカ・カレイジャス」の航海速力は14.3ノット(時速26キロ)、航行中にダイバーが泳いで水雷を取り付けるのはまず不可能だ。サウジアラビアのジュベイル港に停泊中か、あるいは10日に出港したのちカタールのムサイード港に寄港した際に付けられた、ということになる。 複数の水雷を付けるならほぼ同時に爆発するようにするはずで、3時間もの差があるのもおかしい。「コクカ・カレイジャス」の乗組員は「砲弾のような物が飛来した」と報告している。1回目の爆発は突然だから思い違いが起きる可能性もあるが、それによる右舷後部の火災を消し、緊張しているはずだから、もし右舷にもう1個異様な物体が付いていれば気付くだろう。「砲弾のような物が飛来した」との乗組員の証言は無視できない。 イランの巡視艇が「コクカ・カレイジャス」に接舷し、革命防衛隊員が不発の水雷を回収している」とする米軍の“証拠写真”はつじつまが合わない。不発があったか否か、は事件後はじめて分かる。事件発生後にはタグボートが駆けつけてアラブ首長国連邦のカルバ港へ曳航し、米駆逐艦「ベインブリッジ」も来て同船の乗組員を一時収容、船内の安全確認を行ったのち乗組員は元の船に戻った。多くの人々の関心が攻撃を受けた船に集中する中、イラン革命防衛隊員が船に乗り込んで証拠隠滅をはかる、と言うのは変だ。まるで火災現場に消防車やパトカーが集まる中、放火犯が現れて証拠品を回収するような話だ。この写真は13日の夜に撮影されたようで、もしイランの巡視艇が来たのなら、米国あるいは他の反イラン勢力の犯行の証拠を探そうとしていたとも考えられる。 米国は「吸着水雷」の磁石の破片を同船から回収し「イラン軍のパレードに出ていた物と酷似している」とも発表した。だが弾道ミサイルや戦車などが行進して威容を誇示するパレードに、特殊部隊が密かに使う小型水雷のようにまったく見栄えのしない物を出すとは考えにくい。 ポンペオ米国務長官は6月13日の記者会見で「イラン政府は日本のタンカーを攻撃、乗組員の生命を危険にさらした。安倍首相がイラン訪問中に事件を起こして日本を侮辱した」と述べた。だが「コクカ・カレイジャス」はパナマ船籍でパナマ国旗を掲げ、船尾にも船籍港の「パナマ」が書かれている。 船の所有者は法的にはパナマ企業で、それが日本企業の子会社であることは攻撃する側には簡単には分からない。ポンペオ国務長官は、米国の対イラン強硬策への国際社会の批判が強い中、なんとか日本人に反イラン感情を抱かせ、イラン包囲網に参加させようとしている様子だ。 米国は「イランがホルムズ海峡の封鎖を目指している」と言うが、それをすればイランは自国の原油輸出を妨げ自分の首を絞める結果となる。一方、米国はシェール・オイルの産出で石油輸出国になったから、ホルムズ海峡の閉鎖で原油価格が上昇すれば、米国を利することになるのは明らかだ。イランが軽々とそのような愚行をするとは考えにくい』、確かに、「ホルムズ海峡」の緊張は、イランにはマイナスの影響しかないが、米国への影響はプラスだ。
・『米国の虫のいい構想 「自衛隊の派遣」否定は当然  ロイター通信によれば、ダンフォード大将が想定している「有志連合」では米軍は指揮統制や警戒監視、情報収集を行い、各国の商船はその国の艦艇が護衛するという。米海軍は護衛の艦艇を出さず、指揮だけするなら、安上がりにイラン包囲ができる虫の良い構想だ。 だが南シナ海の人工島問題で米海軍は中国海軍と張り合っているし、米中は「貿易戦争」のさなかだ。また中国はイラン核合意からの米国の離脱、制裁再開を批判しているから中国軍艦が米軍の指揮下に入ることはまずない。 イランは19世紀から北のロシア、南のインドを支配するイギリスの圧迫を受けたため、、日露戦争での日本の勝利を喜び、伝統的に親日だ。第2次世界大戦では中立を宣言したが、英軍とソ連軍は南北から侵攻し、イランは両国に占領された。皇帝は捕えられ島流しされて死亡した。 日本は米国が1980年に革命後のイランと国交を断絶しても、イランとの友好関係を保ち、国交を続けてきた。イラン核合意についてもそれを支持する立場だ。 「コクカ・カレイジャス」の乗組員の報告を聞いている日本政府は、米国が「イランの犯行」と叫んでも同調せず、「誰が攻撃したのか分からない」(石井国土交通相)「予断をもって発言することは控えたい」(菅官房長官)など慎重で、中立的姿勢を示した。岩屋防衛相も6月14日「我が国の存立を脅かす恐れはない」と述べ、自衛隊の派遣を否定した。岩屋氏は7月16日にも「現時点では有志連合に参加する考えはない」と述べている。 米国が「日本の船は日本が守れ」と海上自衛隊派遣を要求しても、日本の船会社が海外に子会社を作り、外国船籍にしている「便宜置籍」の外航船は2411隻。日本船籍の外航船はわずか219隻だから、日本船籍の船だけを守ってもあまり意味がない。政府は便宜置籍船も合わせて「日本関係船舶」と称しているが、法的にはパナマやリベリアなど、他国の主権下にある船を海上自衛隊が護衛し、必要があれば武力行使をすることが自衛権の範囲と言えるか否かは疑問だ。 日本の船会社はパナマ等の海外子会社の株主にすぎない。外国企業への出資者の権益を守ることが自衛権行使に当たるのならば、諸外国に進出している日系企業の工場等を戦乱や暴動などの際に守るために自衛隊を派遣したり、逆に日本にある中国企業の工場を中国軍が守ることも自衛権の行使ということになりかねない』、最後の部分は、大いに気を付けて考えるべきだ。
・『米国を「核合意復帰」に誘導するのが良策  仮に日本に食糧や石油などを運ぶ船が続々と撃沈され、日本国民の生存が脅かされるような事態になれば、海上自衛隊がどの国の船であろうが、日本に不可欠な物資を運ぶ商船を護衛し、通商路を確保するのは自衛の範囲だろう。だが今回の状況は岩屋防衛相も言う通り国家の存立に関わるような切迫した事態ではない。米国のオバマ政権が賛成して成立したイラン核合意に、米国が復帰さえすれば円満に解決する話だ。 自衛隊法82条(海上警備行動)は「海上の人命、財産の保護、治安維持のため自衛隊に海上で必要な行動をとることを命ずることができる」と定めている。だが武器使用は警察官職務執行法に準じて、正当防衛等の場合以外には人に危害を加えてはならない。 ソマリア沖での海賊退治に海上自衛隊を参加させた際、2009年に制定された海賊対処法(略称)は防護の対象を日本関係船舶に限らず、海賊行為の制止に武器使用も認めている。 だが海賊は「私的目的」で行動するものと定義され、軍艦、公船に対して適用されない。イラン革命防衛隊は正規軍とは別組織だが、同国政府に属するから海賊ではない。 もし日本が米国の要請に従い、ホルムズ海峡等に護衛艦、哨戒機、給油艦などを派遣するなら、新たな立法が必要だが、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱し、イランと取引する他の諸国の企業にも制裁を加えるとし、空母や爆撃機を派遣して威嚇するのに協力するための新法を制定するならば「横車協力法」と言わざるを得ない。今回は「有志連合」に加わる国は少ないだろう。自衛隊を米軍の指揮下に入れて、日本にとって「百害あって一利なし」の行動を取らせるよりは、他の諸国と連携して米国をイラン核合意への事実上の復帰に誘導するよう努める方が良策であるのは明らかだ』、「米国を「核合意復帰」に誘導するのが良策」というのは筋論だが、トランプ大統領がこれをのむ筈もないだろう。少なくとも、「有志連合」参加は見送るべきだろう。

第三に、9月20日付けNewsweek日本版「数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/post-13027_1.php
・『サウジアラビアは、高高度からの攻撃を抑止するため、数十億ドルを費やして西側から最新鋭の防空システムを購入してきた。だが、同国の巨大な石油産業の施設が大打撃を受け、安価な小型無人機ドローンや巡航ミサイルによる攻撃からの防御には、全く役立たないことが、図らずも証明されてしまった。 14日の攻撃で、サウジの原油生産量は約半分に落ち込んだ。隣国・イエメンとの4年半に及ぶ戦争で何度も重要資産が攻撃を受けながら、同国が適切な防衛態勢を整えていない実態を露呈した。 サウジと米国は、恐らく今回の攻撃の背後には、イランがいるとの見方をしている。ある米政府高官は17日、攻撃の起点はイラン南西部だったというのが米政府の考えだと説明した。3人の米政府高官は、攻撃にはドローンと巡航ミサイルの両方が使われたと語った。 イラン側は関与を否定し、サウジが主導する有志連合に敵対しているイエメンの集団が攻撃を実行したと主張。イエメンの親イラン武装勢力フーシ派は、自分たちが単独で攻撃したとする声明を発表している。 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、イランの弾道ミサイルと巡航ミサイルの発射能力は、中東で最強であり、イランや同国が支援する近隣の武装勢力とサウジの距離の近さを踏まえれば、サウジのいかなるミサイル防衛システムも事実上圧倒する可能性がある。 ただ、より限定的な攻撃でも、サウジにとって手に余ることが分かっている。例えば最近フーシ派は、サウジの民間空港や石油ポンプ設備、同国東部のシェイバー油田などの攻撃に成功した。 サウジのある安全保障関係者は「われわれは無防備だ。どの施設にも実質的な防空態勢が存在しない」と話した。 【関連記事】サウジのムハンマド皇太子、韓国に防空システム構築支援を要請  14日に攻撃されたのは、国営石油会社サウジアラムコの2つの石油精製施設。石油関連施設の被害としては、1990─91年の湾岸危機時にサダム・フセインのイラク軍がクウェートの油田を炎上させて以来の規模となった。 サウジ政府は暫定的な調査結果として、イラン製の兵器が使用されたと分かったが、発射地点はなお不明だと説明している。 当初、専門家はドローンによる攻撃と特定していたが、3人の米政府高官は、ドローンと巡航ミサイルを組み合わせた攻撃方法であり、初めに考えられたよりも複雑で高度な作戦だったことがうかがえると述べた。 サウジの安全保障専門家の1人は「サウジにとってこの攻撃は(米中枢同時攻撃の)9・11のようなものだ。今回の攻撃は、これまでの状況を一変させるゲームチェンジャーだ」と指摘。さらに「われわれが国防のために数十億ドルを投じた防空システムと米国製兵器は、どこにあるのか。これほど精密な攻撃ができるなら、海水淡水化工場などもっと多くの施設が標的になりかねない」と懸念する。 主要な都市や施設にサウジが配備している防空システムでは、長らく米国製の長距離地対空ミサイル「パトリオット」が、主要な役割を果たしてきた。実際、フーシ派がサウジの都市に向けて発射した高高度飛行の弾道ミサイルは、首都・リヤドを含む主要都市で見事に迎撃されてきた。 ところが、ドローンや巡航ミサイルは、より低速かつ飛行高度も低く、パトリオットにとって検知・迎撃が難しい。 ペルシャ湾岸諸国のある高官は「ドローンは、サウジにとって非常に大きな試練だ。なぜなら、しばしばレーダーをかいくぐって飛んでくる上に、イエメンやイラクとの国境線が長いためで、大変脆弱な状況に置かれている」と指摘した』、「サウジ」が自らの脆弱性を認識しながら、イエメンへの軍事介入を強化しているというのは、理解に苦しむ。イラン孤立化を狙って、わざと攻撃させた可能性すら考えられる。
・『安価な攻撃手段  アラムコの操業に詳しい関係者は、今回攻撃を受けたアブカイクの施設は、ドローンに対する防衛態勢が不完全だったと証言した。当局は、レーダーが適切にドローンを捉えたかどうか調査を進めている。 サウジと取引がある西側の防衛企業幹部は、1年前までアブカイクの防衛用にパトリオットが配備されていたと話す。 14日に適切な迎撃ができなかった理由について、記者団から聞かれた有志連合の報道官は「230発を超える弾道ミサイルが有志連合によって迎撃された。われわれはあらゆる脅威に対応しており、サウジの安全保障を確保する防衛能力がある」とだけ答えた。 サウジ政府の報道担当部門は、コメント要請に回答しなかった。 先のサウジ安全保障関係者と2人の業界関係者によると、同国政府は数年前からドローンの脅威を認識し、コンサルタントや関連業者と解決策を話し合っていたものの、新たな具体的措置を講じてこなかった。 米国防総合大学のデーブ・デロッシュ氏は「従来のほとんどの防空レーダーは、高高度からの脅威に向けて設計されている。巡航ミサイルとドローンは地表すれすれを飛んで来るが、地平線が丸い関係でレーダーに映らない。また、ドローンは小さ過ぎて、大半のレーダーに熱源として探知されない」と解説する。 たかだか数百ドル程度のドローンに対し、1発約300万ドルの高額なパトリオットミサイルで撃ち落とすのは、あまりにも割に合わない面がある。 米国の防空専門企業・ディドローンのヨルク・ランプレヒト最高経営責任者(CEO)兼共同創業者は、より有効なドローン迎撃策として、こちらからもドローンのスウォーム(群れ)を向かわせることを提案する。 また、ジャミング(電波妨害)などの技術によって、ドローンを制御不能にできるとしている。 ただ、頻繁にジャミングを行えば、産業活動が損なわれたり、周辺住民に健康被害を与えることにつながる恐れもある。 いずれにしても武装されたドローンは入手しやすくなる一方で、重要なインフラへの脅威は過剰なほどに高まりつつある、と専門家はみている。 サウジの政策担当者がずっと前から恐れているのは、中部と東部に淡水を供給している同国東部・ジュバイルの淡水化施設が攻撃される事態だ。 この施設が破壊されれば、数百万人が水を利用できなくなり、修理に長い期間を要する可能性があるとみられている』、確かに「淡水化施設が攻撃される事態」は、今回の石油産業の施設より打撃は深刻で、イランもさすがに控えたのかも知れない。
タグ:米国を「核合意復帰」に誘導するのが良策 つじつま合わない「証拠写真」 「反イラク感情」抱かせる狙い? イラン問題 数百万人が水を利用できなくなり、修理に長い期間を要する可能性 安価な攻撃手段 安価な小型無人機ドローンや巡航ミサイルによる攻撃からの防御には、全く役立たないことが、図らずも証明 高度からの攻撃を抑止するため、数十億ドルを費やして西側から最新鋭の防空システムを購入 「数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備」 「日本タンカー襲撃」でも米国の主張は不自然 修理に長い期間を要する可能性 中部と東部に淡水を供給している同国東部・ジュバイルの淡水化施設が攻撃される事態 トランプ大統領は2018年5月、一方的にイラン核合意離脱を宣言、経済制裁をすべて再発動 「イラン核合意」 米・イラン対立はトランプ政権が引き起こした 急浮上した「有志連合」 政府は対応に苦慮するが 「有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」」 ダイヤモンド・オンライン 田岡俊次 日本の船舶を守ることに専念するなら、「仲介」に悪影響はない 「米艦防護」の必要はない 「海員の常務」 日本は、日本の船を守るのか 米国の狙いは中東の安定維持 軍事行動の可能性は低い ホルムズ海峡の安全確保などを目的とする有志連合を結成すべく、関係国と調整 「ホルムズ海峡の日本船舶、守るのは有志連合ではない」 香田洋二 日経ビジネスオンライン (その3)(ホルムズ海峡の日本船舶 守るのは有志連合ではない、有志連合によるイラク包囲網への参加は「百害あって一利なし」、数千億円かけたサウジ防空システムに欠陥 わずか数万円のドローン攻撃に無防備) Newsweek日本版 米国の虫のいい構想 「自衛隊の派遣」否定は当然
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日韓関係(その8)(両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢、橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」、日韓が陥る「記憶の政治」の愚、日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」) [外交]

一昨日、昨日に続いて、日韓関係(その8)(両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢、橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」、日韓が陥る「記憶の政治」の愚、日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」)を取上げよう。「またか」とウンザリする向きもあろうかとは思うが、この問題の重要性を考慮すれば、異例の3日連続もアリだと考えた次第だ。

先ずは、軍事評論家、ジャーナリストの田岡俊次氏が9月10日付け日刊ゲンダイに掲載した「【寄稿】両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/261887
・『日韓の対立は昨年10月30日、韓国大法院が徴用工への補償を命じたのが発端と言われがちだが、実はそれ以前、10月10日から済州島で行われた国際観艦式に参加予定の日本の護衛艦は艦旗(旭日旗)を掲揚しないよう韓国側が求め亀裂が生じた。 旭日旗は中国が1895年の下関条約で韓国独立を認めた日清戦争でも翻り、今日の海上自衛隊旗章規則も掲揚を定める。「艦旗を掲げるな」と言うのは世界の海軍の礼儀に反し、海上自衛隊は参加を取り消した。 12月20日には韓国の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射する事件も発生、今年10月14日の相模湾での観艦式に中国は招くが、韓国海軍は招待されない。今後、韓国が詫びたり、日本の態度が変わることは考えにくく“日韓海軍冷戦”の状態は続くだろう。 これは文在寅大統領の思想傾向だけが原因ではない。韓国海軍は盧武鉉政権下の2005年に進水した1万9000トン級の揚陸艦(ヘリ空母)を「独島」(竹島)と命名、李明博政権下の2008年に進水した1800トン級の潜水艦は「安重根」(伊藤博文の暗殺犯)と名付けるなど、露骨な対決姿勢を示してきた。北朝鮮海・空軍は弱体だから、韓国海・空軍は予算拡大を狙うため、日本を仮想敵視するが、「日本と戦う」と言えば予算がつくのが問題だ。 日本では冷戦的世界観が残り「韓国は味方」と思いがちで、韓国の軍拡に関する報道はまれだが、海軍はヘリ空母1隻、1300~1800トン級の潜水艦16隻、巡洋艦3隻、駆逐艦・フリゲート23隻、1200トン級哨戒艦18隻を持ち、日本のヘリ空母4隻、巡洋艦2隻、その他の護衛艦41隻に数的には迫っている』、日本のヘリ空母に対抗して、ヘリ空母を建造、「潜水艦は「安重根」と名付けるなど、露骨な対決姿勢」、「「日本と戦う」と言えば予算がつく」、「日本では冷戦的世界観が残り「韓国は味方」と思いがち」、韓国が日本を仮想敵国として着々と軍拡にいそしんでいるとは不気味だ。しかも、「文在寅大統領の思想傾向だけが原因ではない」、日本の安全保障の考え方そのものを抜本的に見直す必要があるのかも知れない。
・『「日本と戦う」で予算がつく  2隻目のヘリ空母や3700トン級潜水艦などが続々と進水し、来年度から5年間の中期国防計画では日本の「いずも」級(満載2万6000トン)を上回る3万トン級空母を建造、F35B戦闘機十数機を搭載する。 韓国は弾道ミサイル「玄武2C」(射程800キロ、名古屋に届く)、巡航ミサイル「玄武3C」(同1500キロ、日本全土に届く)の量産を進め、弾道・巡航ミサイルの総数は2000基に近い。核弾頭の代わりに弾道ミサイルは子爆弾約900発を放出し、広い地域の制圧を狙う。潜水艦、水上艦もそれを搭載、ミサイル128発を積む「合同火力艦」も中期防に入れている』、どうも北朝鮮ではなく、日本を仮想敵国と想定した装備のようだ。 空軍は、実質的には爆撃機であるF15K(戦闘行動半径1250キロ)59機など戦闘機500機を超え、航空自衛隊の330機をしのぐ。空中給油機もエアバス330の改装型4機を発注した。 北朝鮮は奥行き約500キロ、北京へも約900キロだから、射程1500キロの巡航ミサイルや空中給油機は何のためか。毎年2回演習をする「独島防衛」に必要とも考え難い。韓国陸軍は米陸軍の47万人より多い49万人だが、11万8000人を削減する。防衛費を増大する一方で北朝鮮に対抗する陸軍を減らし、海・空軍の増強をはかる。 韓国の今年度の国防予算は円換算で約4兆円、日本の8割だが、韓国は5年間に年平均7・5%ずつ増額する計画で日本と並ぶ。韓国のGDPは昨年1・66兆ドルでロシアの1・58兆ドルを上回る。日韓軍備競争は双方に不利益だが、それが起こりつつある形勢だ』、「戦闘機500機を超え、航空自衛隊の330機をしのぐ」、「空中給油機もエアバス330の改装型4機を発注」、「防衛費を増大する一方で北朝鮮に対抗する陸軍を減らし、海・空軍の増強をはかる」、韓国に対抗した軍拡競争に乗るべきではなく、あくまで軍事面を中心とした対話を強化すべきだろう。

次に、9月11日付けPresident Online「橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/29859
・『今回の日韓関係悪化の大元は、韓国大法院(最高裁)による徴用工判決だ。これに対して日本側は、輸出管理手続きの厳格化といった実質的な利益のない対抗手段ではなく、やられた分だけやり返すための法的な理屈を考えるべき。その手段とは? プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(9月10日配信)から抜粋記事をお届けします』、辣腕弁護士としての提案とは興味深そうだ。
・『韓国側の主張を分析したうえで日本の主張を徹底的に構築せよ  今回の韓国大法院の徴用工判決には、それなりの法的理屈があることを本メルマガで詳論してきた。1965年の日韓基本条約・請求権協定があるからハイ終わり、と簡単に言えるものではない。お互いに解釈の余地が生まれ得る問題だ。ゆえに、その点を踏まえて、日本は日本の立場の法的主張を準備しておくべきだ。 相手の主張を吟味することなく、自分の主張が絶対的に正しいものと信じ込んで法的論戦に臨むと、足元をすくわれる。韓国側の主張もそれなりに成立することを認識した上で、日本側の法的主張を徹底的に構築すべきだ。(略)さらに国際司法裁判所や仲裁委員会での判断を仰ぐ前に、国家の実力行使で解決するやり方もある。もちろん武力行使によらない実力行使だ。現在の日韓双方は、その報復合戦に突入している。ただし、実力行使を行うのであれば、その根拠を法的に構築すると同時に、これまでも散々論じてきたが、実害が最小限にとどまるような方法を採らなければならない』、日本政府は「日韓基本条約・請求権協定があるからハイ終わり」といった余りに単純化した主張から脱するべきだ。「報復合戦」も「実害が最小限にとどまるような方法を採らなければならない」、その通りだ。
・『李承晩ライン拿捕事件を韓国政府に賠償請求できるか  この点、日本の政治家やインテリの一部には、次のような歴史的事実を基に、「韓国政府」への実力行使を叫ぶ者がいる。 1952年発効のサンフランシスコ講和条約によって日本が主権を回復する直前に、当時の李承晩韓国大統領が、日本海に李承晩ラインなるものを一方的に引いて、竹島を実効支配した。今の中国が南シナ海でやっているのと同じようなことをやったのである。日本は当時、主権が回復していなかったのでなす術がなかった。その後、サンフランシスコ講和条約によって日本の主権が回復し、本来であれば日本の漁船が漁業をできる地域においても、韓国は李承晩ラインを盾に、日本漁船を拿捕し、多くの日本人漁師が韓国側に拘束された。拘束時に死亡者まで出ている。 この点について、日本側は韓国に補償請求しようとした。ところが1965年の日韓基本条約・日韓請求権協定時に、日韓の紛争は全て終結させる趣旨から、李承晩ラインに基づく日本漁船拿捕事件の補償は、全て日本政府が日本人漁師に行うことで決着した。自国民への補償は自国政府が行うという原則論である。そして実際、日本政府は日本人漁師に補償を行った。 そこで、日本の政治家やインテリの一部は、この点を蒸し返し、再度「韓国政府」に直接請求すればいいと主張する。 しかし、これは国際法上の「主権免除」という法的理屈を知らない主張だ。国際社会のルールにおいては、自国の裁判所において外国「政府」を直接訴えることはできない。すなわち日本の裁判所において「韓国政府」を直接訴えることはできないのである。「韓国政府」を直接訴えたいなら、「韓国の裁判所」で訴えるほかないのであるが、しかし、李承晩ラインを巡る補償について「韓国の裁判所」に「韓国政府」を訴えたところで、日本側が勝てる見込みはないだろう。韓国の裁判所では韓国側の法的理屈が採用されてしまうだろうから。 この点、韓国の元徴用工側は、うまくやっている。今回の韓国大法院が下した徴用工判決を見て欲しい。これは元徴用工の韓国国民が「韓国の裁判所」において韓国国内の「日本企業」を訴えている。「韓国の裁判所」において「日本政府」を訴えることはできないが、韓国国内の「日本企業」を訴えることはできるのである。 韓国国民が、徴用工問題で、「日本の裁判所」において、「日本政府」や「日本国内の日本企業」を訴えても負ける。先に述べたとおり、日本の裁判所は、元徴用工の個人補償について裁判所に訴えることはできないという立場だからだ。だから元徴用工たちは、自分たちの味方になってくれるだろう「韓国の裁判所」において韓国国内の「日本企業」を訴えて、勝訴判決を得たのである』、「李承晩ライン拿捕事件」はかろうじて思い出したが、「「韓国政府」に直接請求」することは、「国際法上の「主権免除」」で出来ないというのは、残念だがやむを得ない。「元徴用工たちは・・・「韓国の裁判所」において韓国国内の「日本企業」を訴えて、勝訴判決を得た」というのは鮮やかなやり方だ。
・これこそが日本の政治家の役割  日本側にもこのような緻密な戦術が必要である。韓国政府を訴えろ! では完敗する。だからこそ、日本側も、「日本の裁判所」で「日本国内の」「韓国企業」を訴えることはできないか。もっといえば、日本政府が「日本国内の」「韓国企業」の財産を差し押さえることができないか、を徹底的に考えるべきで、それが日本の政治家の役割だ。 李承晩ラインに基づく日本漁船拿捕事件や、その他のもので日本人や日本企業、さらには日本政府が「日本国内の」「韓国企業」を訴えることができるものはないか。最近、日本の外務省は、徴用工判決に基づく差押えやその現金化によって韓国内の日本企業に損害が出れば、日本政府は国際法に基づいて韓国側に損害賠償請求ができる、という見解を発出している。 加えて、韓国側が、徴用工判決とそれに基づく日本企業への差押え・現金化という日韓基本条約・日韓請求権協定に反する行動を貫くというのであれば、それこそ日韓基本条約・日韓請求権協定の破棄ということも視野に入れるべきである。それらを破棄すると日本側が韓国側に提供した5億ドルの資金を韓国側から戻してもらうことになる。ここを精査して、「日本の裁判所」に「韓国政府」を訴えるのではなく、「日本の裁判所」に「日本国内の」「韓国企業」を訴えたり、その財産を差し押さえたりすることができるように知恵を絞るのが日本の政治家の腕の見せどころだ。 (略) 政治家やインテリたちは、日韓関係の悪化で損をすることがないし、むしろそのことで仕事が増えるインテリも多いので、強硬策だけを叫んでいればいい。しかし、損をする民間人にとってはたまったものじゃない。加えて韓国が、日本の要求する輸出管理手続きをきちんと踏んでくれば、日本側は輸出許可を出さざるを得ず、そうなると韓国には何のプレッシャーにもならずに、徴用工判決の問題は何ら解決しない。 徴用工判決問題を解決するというなら、日本側の意図を明確にして、相手を動かす方策を実行すべきである。輸出管理手続きを厳格化し、「それは安全保障の問題だ!」などとごまかすべきではない。 「分捕られたなら、それを分捕り返す」。これが、日本側が採るべき本来の方策だ。(略)』、総論的にはその通りだが、実際には「「日本の裁判所」に「日本国内の」「韓国企業」を訴え」るための不当行為など、いくら頭をひねっても出てこないのではなかろうか。威勢がいい啖呵を切ることにかけては橋下氏は天才的だが、中味が乏しいこともあるようだ。

第三に、キャロル・グラック氏(コロンビア大学教授〔歴史学〕)が9月18日付けNewsweek日本版に掲載した「日韓が陥る「記憶の政治」の愚 どちらの何が正しく、何が間違いか」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/09/post-13004.php
・『<過去を政治の道具にする「記憶の政治」とは何か。泥沼の関係に陥りつつある日韓が仏独から学べること。本誌最新号「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集より> またしても、日本と韓国の間で緊張が高まっている。そして、またも双方が、敵意が膨れ上がる主な原因は「歴史問題」だと言い出している。 韓国人は、日本人が戦時中と植民地時代の行いを十分に認識してないと非難する。日本人は、自国で語られる歴史に欠けている部分を蒸し返されることにうんざりしている。過去を武器にして現在に損失をもたらしているという意味では、どちらの国も同罪だ。 日本人も韓国人もこれは「歴史」論争だと言っているが、実際に話しているのは「記憶」についてだ。 歴史と記憶は同じものではない。歴史とは過去に起きたことであり、記憶とは、そのストーリーをどのように語るかということだ。国家が自らのストーリーを語るときは特に、記憶は選択的、政治的、感情的になりがちだ。 国民の歴史という概念は目新しいものではない。全ての国が、時には英雄として、時には犠牲者として自分に都合よくストーリーを語るが、それらは常にアイデンティティーと国家の誇りに関わっている。 一方で、何が新しいかと言えば、いま私たちは「記憶の政治(メモリー・ポリティクス)」の時代を生きているということだ。記憶の政治では、歴史が国境を超えた問題になる。過去を利用して国内でアイデンティティーを築くだけでなく、国際関係でも過去を政治の道具にするのだ。 国境を超える記憶の政治は、1945年からの数十年間で変化してきた。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)など戦時中の不正義を事実として認め語ろうという努力を機に、「世界的な記憶の文化」が徐々に生まれてきた。 国の過去の中でより暗い部分とどう向き合うかについての基準には、公に認めること、正式な謝罪、被害者への賠償が含まれるようになった。こうした記憶の基準は、奴隷制や先住民族への暴力など自国民に対してだけでなく、戦争や内戦で対峙した昔の敵や、帝国主義時代の旧植民地にも適用される。 日本と韓国は今まさに、国家の歴史と国際的な記憶の政治の複雑な網にからめ捕られている』、「日本人も韓国人もこれは「歴史」論争だと言っているが、実際に話しているのは「記憶」についてだ。 歴史と記憶は同じものではない。歴史とは過去に起きたことであり、記憶とは、そのストーリーをどのように語るかということだ。国家が自らのストーリーを語るときは特に、記憶は選択的、政治的、感情的になりがちだ」、これが海外からの冷静な見方なのだろう。「日本と韓国は今まさに、国家の歴史と国際的な記憶の政治の複雑な網にからめ捕られている」、というのは言い得て妙だ。
・『日韓双方が正しく間違っている  韓国でリベラルな文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「われわれは二度と日本に負けない」と宣言するとき、彼は国家の経済への脅威について訴えている。親日派(「親日反民族行為者」)をやり玉に挙げるとき、彼は韓国の独立を、1948年に南北朝鮮がそれぞれ独立した冷戦下の反共産主義というより1919年の反日独立運動(三・一独立運動)に結び付けようとしている。このようにして、最終的に南北統一を目指す韓国の国民のストーリーに、北朝鮮が取り込まれていく。 こうしたレトリックは、国内的な目的のために日本に対する敵意を振りかざすものだ。) 一方、日本で保守派の安倍晋三首相が従軍慰安婦問題に関する新たな謝罪を拒み、強制連行という解釈を認めないとき、彼は国家のプライドと国内の政治基盤に語り掛けている。日本政府が韓国やアメリカなどに設置された「平和の少女像」の撤去を求めるのは、国際社会で日本の名誉が傷つけられると考えているからだろう。 そこでは記憶についての世界的な基準より、国力に関する愛国主義的な物語のほうが優先されている。これはどちらの国も正しくて、どちらの国も間違っていると言える。 韓国は、日本の戦争と植民地支配の過去は適切に認識されなければならず、将来にわたって日本の歴史の良い面も悪い面も教育しなければならないと主張する。これはそのとおりだ。また、韓国の裁判所が昨年、元徴用工問題で日本企業に賠償を命じる判決を出したことも、ドイツの戦時中の強制労働に関する判例をある程度なぞっていた。 日本は慰安婦問題で、不完全な部分はあるにせよ既に公式に謝罪と賠償をしたにもかかわらず、韓国が受け入れないことに戸惑っている。慰安婦をはじめとする戦争被害者のために市民社会の日本人が尽力していることも、韓国は認めようとしない。これについては日本の言うとおりだ。 一方、韓国は元徴用工への賠償金のために日本企業の資産を差し押さえて売却すると脅しているが、これは間違っている。こういう脅しは記憶についての世界的な基準からは外れている。 そして、日本は記憶をめぐる傷を貿易政策と安全保障政策にすり替えているが、これも間違っている。韓国が「日本の経済侵略対策特別委員会」を設置するなど、同じような報復をするのも間違っている』、日韓双方の主張をともに「間違っている」と切り捨てているが、その通りだろう。
・『仏独のようにはなれなかった  どちらの国も、過去の間違いを現在の間違いにすり替えているだけだ。75年近い年月の間に何も変わっていないかのように。だが実際は、多くのことが変わっている。「歴史問題」に関してもさまざまな変化が起きているのだ。 今から21年前の1998年に、金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相は日韓共同宣言に署名。日本による植民地支配が韓国に多大な損害と苦痛を与えたことを認めた上で、未来志向の両国関係を目指すと約束した。 その後、韓国で日本の映画や音楽、マンガなどが解禁され、J-POPとK-POPが人気を集めた。2002年にはサッカー・ワールドカップを共同開催。日本で韓流ブームが起きて、互いに観光客が増えた。日韓関係は新しい段階を迎えたと思われた。 私はその頃、日本と韓国が、60年代前半の仏独のような和解に向かっているかもしれないと書いた。しかし、私は間違っていた。それでも、長く敵対していたフランスとドイツが第二次大戦後に関係を修復できた理由を検証することは、役に立つのではないか』、「フランスとドイツ」とは事情が相当違いそうだが、まずはみてみよう。
・『【参考記事】韓国に対して、宗主国の日本がなすべきこと) フランスとドイツの関係を変えた要素は3つある。双方の市民社会団体と草の根の運動(初めはドイツのほうが積極的だった)、シャルル・ドゴール仏大統領とコンラート・アデナウアー西独首相という2人の力強い指導者の政治的な意思、冷戦とソ連の脅威という文脈におけるそれぞれの国益だ。 両国は1963年にエリゼ条約(仏独協力条約)を結んで敵対関係に終止符を打った。しかし、その関係を強固にしたのはその後の教育の変化と、若い世代を中心に社会のあらゆるレベルで交流が深まったこと、そして、EUを通じて地域的な力が強まったことだ。 こうした順応はもちろん個人の記憶を消し去りはしなかったが、それでも両国の関係を変え、両国とほかの西欧諸国との関係を変えた。 時代や歴史的背景は異なるが、フランスとドイツの相互理解を深めた要素は今日の日本と韓国にも通じるだろう。 今年6月初めの世論調査では日本人と韓国人の約半数が相手国に良くない印象を抱いているが、その傾向は変化してきており、今後も変わるだろう。両国とも、若者のほうが年長者より互いへの好感度が高い。観光や大衆文化が草の根レベルで影響を与えていると思われる。 金大中が未来志向の日韓関係を宣言したときのように、指導者の姿勢も変化を起こし得る。文大統領は今年8月15日に、日本の植民地支配からの解放を記念する式典で「日本が対話と協力の道に進むなら、われわれは喜んで手をつなぐ」と語った。日本政府もむき出しの敵意にばかり反応せず、こうした前向きの発言を積極的に受け止めることもできるだろう』、「文大統領は今年8月15日に」融和的演説をしたのに、頭に血が上っていた日本政府がこれを無視したのは、確かに外交的には失策だろう。。
・『「帝国の慰安婦」としての記憶  変化の背景には地域的な文脈もあった。仏独は、欧州というコミュニティーに共に参加することに共通の利益を見いだした。現在、日本と韓国の国益も東アジアの域内関係に同じくらい密接に結び付いているのではないか。 ただし、過去の敵が未来の友になるというシナリオには、もう1つ課題がある。フランスとドイツは戦争の敵国同士だったため、仏独の記憶の政治は戦争が軸になっていた。それに対し、韓国は日本の植民地だったため、韓国は慰安婦や徴用工の問題を、戦争というより植民地時代の抑圧として考える。 日本では少なくとも90年代前半以降、戦争の記憶を積極的に呼び起こす動きが広まっているが、帝国主義時代の過去にはあまり向き合ってこなかった。日本人は南京虐殺や七三一部隊、従軍慰安婦を知ってはいるが、例えば慰安婦については帝国主義ではなく戦争の産物と見なす人が多いだろう』、「日本では・・・帝国主義時代の過去にはあまり向き合ってこなかった」、というのは確かに大いに反省すべき材料だ。
・『帝国主義の歴史を持つ多くの国と同じように、日本は長い間、自らの帝政の悲惨な行為について公には沈黙を守ってきた。イギリス、オランダ、ベルギー、ドイツ、フランスでも、今なお帝国主義時代の記憶が問題化している。 確かに帝国主義の過去を乗り越えて和解を目指そうという決然たる努力に、大きな壁が立ちはだかることも多い。例えばフランスと旧植民地のアルジェリアは2003~07年に友好条約の締結を模索したが、かなわなかった。1962年にアルジェリアが独立を果たしてから数十年がたっても、1世紀以上に及んだ植民地支配とアルジェリア戦争の残忍な記憶は重く、「歴史の傷」を癒やすことはできなかった。 日韓の関係はフランスとアルジェリアより近く、より友好的だが、日本の植民地支配に対する韓国の記憶はほかの旧植民地と同じくらい強烈なものも少なくない。日本と韓国が歴史の溝を埋めようとするなら、植民地時代の知識を学んで歴史的事実を認めることがおそらく出発点になるだろう。 記憶の政治の時代を生きる困難について、解決策が分かっているとは言わない。それでも明白なことが2つある。 まず、ナショナリズムは現代の惨劇だ。世界のナショナリズムは、国内外のほぼあらゆる場所で不確実性に対する反応として生まれている。日本と韓国のナショナリズムは、海峡の両側で同じように人々の目を塞ぎ自分たちの国益さえ見失わせている。 そして、過去を政治の武器として利用することは、前向きではなく後ろ向きに生きるということだ。過ぎ去った過去が、これから訪れる未来を危機にさらす──そうした事態を許すということだ。(筆者の専門は日本近現代史。近著に『戦争の記憶 コロンビア大学特別講義──学生との対話──』〔講談社現代新書〕) <本誌2019年9月24日号掲載「日本と韓国:悪いのはどちらか」特集より>・・・』、「日本と韓国が歴史の溝を埋めようとするなら、植民地時代の知識を学んで歴史的事実を認めることがおそらく出発点になるだろう」、というのは正論ではあるが、現在の日本には無理なのではなかろうか。

第四に、作家の橘玲氏が9月17日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215024
・『10日ほど海外を旅行して、帰国してみると日韓対立がさらにヒートアップしていました。慰安婦財団解散、徴用工判決から「ホワイト国」除外、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄へと至る過程はいまさら繰り返すまでもないでしょう。 この問題が難しいのは、日韓両国のアイデンティティに直結していることです。そのため、相手国を擁護するかのような主張をするとたちまち「炎上」し、バッシングの標的にされてしまいます。こうして、まともなひとほどこの問題から距離を置こうとし、残るのは「ポピュリスト」ばかりということになります(事情は韓国も同じでしょう)。 そこでちょっと冷静になって、この問題を「2つのリベラリズムの対立」として読み解いてみましょう。ポイントは、「世界はますますリベラル化している」です。 日本の保守派は、「現在の法律を過去に遡って適用することはできない」といいます。これは一般論としてはそのとおりですが、「歴史問題」にそのまま当てはめることはできません。黒人を奴隷にしたり、新大陸(アメリカ)の土地を原住民から奪ったり、アフリカやアジアを植民地にすることは、西欧の当時の法律ではすべて「合法」だったのですから。現在の「リベラル」な人権概念を過去に適用することによって、はじめて奴隷制度や植民地主義を批判できるのです。 こうした「リベラリズム」の拡張はやっかいな問題を引き起こすため、欧米諸国の圧力でこれまで抑制されてきましたが、新興国の台頭によって「パンドラの箱」が開きかけています。インドではヒンドゥー原理主義者がイギリスの植民地統治を全否定し、「民族の歴史」を新たにつくりなおそうとしています。韓国の「歴史の見直し」は、こうした潮流の最先端として理解できるでしょう。そこでは、現在のリベラルな価値観を時空を超えて拡張し、過去を断罪することができるのです』、「こうした「リベラリズム」の拡張はやっかいな問題を引き起こすため、欧米諸国の圧力でこれまで抑制されてきましたが、新興国の台頭によって「パンドラの箱」が開きかけています・・・韓国の「歴史の見直し」は、こうした潮流の最先端として理解できるでしょう」、なるほど説得力がある説明だ。
・『それに対してもうひとつの「リベラリズム」は個人主義化です。ここでは自由と自己責任の論理が徹底され、自分が自由意思で行なったことにのみ全面的に責任をとることになります。逆にいえば、自分がやっていないことには責任をとる必要はないし、勝手に責任をとってはならないのです。 第二次世界大戦の終結から70年以上がたち、日本でも戦場を経験したひとはごくわずかになりました。とりわけ孫やひ孫の世代にあたる若者は、なぜ自分が生まれるはるか昔の出来事で隣国から執拗に批判されるのか理解できないでしょう。「反韓」ではなく「嫌韓」という言葉は、こうした気分をよく表わしています。 問題なのは、どちらの側にも「リベラルな正義」があることです。お互いが自分たちを「善」、相手を「悪」と思っている以上、そこに妥協の余地はありませんが、その一方で、どれほど批判しても相手の「正義」が揺らぐことはありません。こうして、罵詈雑言をぶつけ合いながら、アメリカや「国際社会」を味方に引き入れようとしてますます袋小路にはまりこんでいくのでしょう。 解決策としては、それぞれの国民が「いつまでもこんなバカバカしいことはやってられない」と気づくことでしょうが、それにはまだ長い時間がかかりそうです』、輸出環境の悪化は、日韓両国経済に打撃を与えるが、相対的に韓国の方がダメージが大きい筈だ。「バカバカ」しさに早目に気づいてもらいたいものだ。日本も早目に気づいてもらいたい点では同様だ。
タグ:解決策としては、それぞれの国民が「いつまでもこんなバカバカしいことはやってられない」と気づくことでしょうが、それにはまだ長い時間がかかりそうです 自分がやっていないことには責任をとる必要はないし、勝手に責任をとってはならないのです 日韓関係 もうひとつの「リベラリズム」は個人主義化 韓国の「歴史の見直し」は、こうした潮流の最先端として理解できるでしょう 「【寄稿】両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢」 日本では冷戦的世界観が残り「韓国は味方」と思いがちで、韓国の軍拡に関する報道はまれ 2008年に進水した1800トン級の潜水艦は「安重根」(伊藤博文の暗殺犯)と名付けるなど、露骨な対決姿勢 こうした「リベラリズム」の拡張はやっかいな問題を引き起こすため、欧米諸国の圧力でこれまで抑制されてきましたが、新興国の台頭によって「パンドラの箱」が開きかけています 現在の「リベラル」な人権概念を過去に適用することによって、はじめて奴隷制度や植民地主義を批判できるのです 日本の保守派は、「現在の法律を過去に遡って適用することはできない」といいます。これは一般論としてはそのとおりですが、「歴史問題」にそのまま当てはめることはできません これは文在寅大統領の思想傾向だけが原因ではない 「日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」【橘玲の日々刻々】」 ダイヤモンド・オンライン 橘玲 日本と韓国のナショナリズムは、海峡の両側で同じように人々の目を塞ぎ自分たちの国益さえ見失わせている。 そして、過去を政治の武器として利用することは、前向きではなく後ろ向きに生きるということだ。過ぎ去った過去が、これから訪れる未来を危機にさらす──そうした事態を許すということだ 「日本と戦う」と言えば予算がつく (その8)(両国に不利益な日韓の軍備競争が起こる形勢、橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」、日韓が陥る「記憶の政治」の愚、日韓対立の底流にある「2つのリベラリズムの対立」) 日本と韓国が歴史の溝を埋めようとするなら、植民地時代の知識を学んで歴史的事実を認めることがおそらく出発点になるだろう 「帝国の慰安婦」としての記憶 韓国に対して、宗主国の日本がなすべきこと 仏独のようにはなれなかった 元徴用工問題で日本企業に賠償を命じる判決を出したことも、ドイツの戦時中の強制労働に関する判例をある程度なぞっていた 韓国は、日本の戦争と植民地支配の過去は適切に認識されなければならず、将来にわたって日本の歴史の良い面も悪い面も教育しなければならないと主張する。これはそのとおりだ 日韓双方が正しく間違っている いま私たちは「記憶の政治(メモリー・ポリティクス)」の時代を生きている 日本人も韓国人もこれは「歴史」論争だと言っているが、実際に話しているのは「記憶」についてだ。 歴史と記憶は同じものではない。歴史とは過去に起きたことであり、記憶とは、そのストーリーをどのように語るかということだ 過去を武器にして現在に損失をもたらしているという意味では、どちらの国も同罪だ 「日韓が陥る「記憶の政治」の愚 どちらの何が正しく、何が間違いか」 Newsweek日本版 キャロル・グラック 「分捕られたなら、それを分捕り返す」。これが、日本側が採るべき本来の方策だ 日本政府が「日本国内の」「韓国企業」の財産を差し押さえることができないか、を徹底的に考えるべきで、それが日本の政治家の役割だ これこそが日本の政治家の役割 元徴用工の韓国国民が「韓国の裁判所」において韓国国内の「日本企業」を訴えている。 日本の裁判所において「韓国政府」を直接訴えることはできない 国際法上の「主権免除」 李承晩ライン拿捕事件を韓国政府に賠償請求できるか 実力行使を行うのであれば、その根拠を法的に構築すると同時に、これまでも散々論じてきたが、実害が最小限にとどまるような方法を採らなければならない 報復合戦 韓国側の主張もそれなりに成立することを認識した上で、日本側の法的主張を徹底的に構築すべき 日刊ゲンダイ “日韓海軍冷戦” 国際観艦式に参加予定の日本の護衛艦は艦旗(旭日旗)を掲揚しないよう韓国側が求め亀裂が生じた 韓国側の主張を分析したうえで日本の主張を徹底的に構築せよ 橋下徹「韓国に分捕られた分をこう取り返せ」」 PRESIDENT ONLINE 防衛費を増大する一方で北朝鮮に対抗する陸軍を減らし、海・空軍の増強をはかる 空中給油機もエアバス330の改装型4機を発注 田岡俊次 戦闘機500機を超え、航空自衛隊の330機をしのぐ 「日本と戦う」で予算がつく
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日韓関係(その7)(対韓輸出規制は 歴史問題の政争に貿易を巻き込んだ「愚策」だ、小田嶋氏:「旗」をめぐる最終的な悪夢) [外交]

昨日に続いて、日韓関係(その7)(対韓輸出規制は 歴史問題の政争に貿易を巻き込んだ「愚策」だ、小田嶋氏:「旗」をめぐる最終的な悪夢)を取上げよう。

先ずは、立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授の金子 勝氏が8月29日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「対韓輸出規制は、歴史問題の政争に貿易を巻き込んだ「愚策」だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/213106
・『韓国政府が22日、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定し、徴用工判決や慰安婦問題を機にした日韓対立は、通商分野に続いて安全保障上の協力にも波及した。 日韓関係が泥沼化しているのは、双方ともに国内の支持率を意識して対外強硬姿勢を続ける政権の思惑が色濃く、現実的な解決策を探ることができなくなっていることがある。 安倍晋三政権の対韓輸出規制も、政治の思惑を色濃く反映している』、金子氏の鋭い安倍政権批判を具体的にみてみよう。
・『変質した通商政策 経済的利益失う恐れ  戦後の自民党政権は、積極的か消極的かにかかわらず、長く憲法9条による平和主義と自由貿易主義を前提とした通商政策をとってきた。少なくとも政治と経済は分離する姿勢を保っていた。 だが、「対韓輸出規制」を境に通商政策は変質したといわざるをえない。 安倍政権は公然と経済的利益を無視しても、歴史修正主義という政治的イデオロギーとナショナリズムを最優先している。これまでの日本の通商政策とは異質のものだ。 一見すると、中国への制裁関税や中国通信大手ファーウェイ排除といったトランプ政権の通商政策をまねているかのように見える。だが、深いところで大きく違っている。 トランプ政権の対中政策は、「安全保障」上の理由を掲げ、実際、中国との覇権争いの性格を帯びてはいるが、中国に市場開放を求めて対中輸出の増加を目指す一方で、輸入製品の流入に歯止めをかけるなど「自国第一主義」の経済利益の追求に重きを置いている。 これに対して、安倍政権の対韓輸出規制は、徴用工判決や慰安婦問題の“報復手段”として、半導体素材の韓国への供給をおさえることで、文在寅政権をけん制する意図が見え隠れする。 すでに日韓の間で半導体分野では、サムスンなどの韓国メーカーに日本企業が素材や部品、製造装置を供給する水平分業や連携が進んでいる。だが政治の思惑や利害が優先されることで、経済的利益を一挙に失う恐れがある』、かつての日本の通商政策は、中国との国交回復以前から「政経分離政策」を一貫して採ってきた。「「対韓輸出規制」を境に通商政策は変質したといわざるをえない。 安倍政権は公然と経済的利益を無視しても、歴史修正主義という政治的イデオロギーとナショナリズムを最優先している」、その通りだ。
・『与党や外交ルートで議論なく官邸主導の「政治判断」  しかもこの間、危うい通商政策に対して与党内はおろか、外務省でさえまともな議論が行われた跡はない。「官邸主導」という名の首相の政治判断だけで物事が進んでいる状況だ。 日韓の対立の直接のきっかけは、2018年10月に、韓国の最高裁にあたる大法院が新日本製鉄(現日本製鉄)に対して、第2次世界大戦中の徴用工の補償について損害賠償を命じたことだった。 日本政府は、1965年、当時の朴政権と結んだ日韓基本協定に基づいて韓国政府が請求権放棄をいったん認めた以上、問題は「解決済み」としてきた。朴政権以降も、個人の請求権問題は国内措置として韓国政府が対処するという合意があったとする。 これに対して、韓国大法院は個人の請求権は消滅していないという判断を下し、文政権はこの問題には介入しない姿勢だ。企業に対する民事補償の請求については裁判所が判断すべきで、政府が介入すべきではないという立場である。 文政権の姿勢にはそれなりに根拠がないわけではない。 例えば、中国人強制連行・強制労働問題では、72年の日中共同声明による中国政府の戦争賠償の放棄後も、中国人元労働者が謝罪や賠償を求めて提訴した。 そして最終的には、2000年に花岡訴訟で鹿島建設が和解に応じたのをはじめ、その後、西松建設(09年)、三菱マテリアル(16年)が和解し、個人賠償は支払われた。 その際、日本政府は、民間同士のことだからとして、一切口を挟まなかった。 同様に、アメリカの裁判所でナチスの元強制労働者に対する賠償決定の判決が出たケースでは、フォルクスワーゲンやダイムラー、シーメンス、イーゲーファルベンら独大手12社が、「記憶・責任および未来」基金(00年7月)を設立して個人補償を支払った。 いずれも法廷内外で当事者が時間をかけて粘り強い折衝をすすめ、最終的には双方が現実的な判断をするという「知恵」を働かせ、問題を解決してきたのである。 だが徴用工判決問題で安倍政権は、外交ルートなどを通じて文政権と時間をかけてでも問題解決のために話し合うという姿勢はみせないまま。とったのは、フッ化水素、EUV用レジスト、フッ化ポリイミドの3品目を対象とする輸出規制という強硬策だった』、「与党や外交ルートで議論なく官邸主導の「政治判断」」というのは政治主導のマイナス面が出たようだ。「中国人元労働者が謝罪や賠償を求めて提訴」した件では、「鹿島建設・・・西松建設、三菱マテリアルが和解し、個人賠償は支払われた。 その際、日本政府は、民間同士のことだからとして、一切口を挟まなかった」、というのは、徴用工問題で日本政府が取っている立場とは真逆だ。「アメリカの裁判所でナチスの元強制労働者に対する賠償決定の判決が出たケースでは、フォルクスワーゲンやダイムラー・・・ら独大手12社が、「記憶・責任および未来」基金(00年7月)を設立して個人補償を支払った」、「だが徴用工判決問題で安倍政権は、外交ルートなどを通じて文政権と時間をかけてでも問題解決のために話し合うという姿勢はみせないまま」、というのは鋭い指摘だ。
・『一貫しない政府説明 曖昧な「安保上の管理」  参議院選挙前の時期を狙って、右翼的なポピュリズムをあおり、支持を得るために強硬姿勢をとることが得策との判断をしたのだと考えられるが、対韓輸出規制は、明らかに「二枚舌」であり説得力に欠けている。 世耕経産相は規制実施の方針を表明した当初から、「友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次いで、残念ながらG20(大阪サミット)までに満足する解決策が全く示されなかった」として、徴用工判決に対する不満を隠さなかった。 その後、安倍首相も「(韓国側が)日韓請求権協定に違反する行為を一方的に行っている」と繰り返し批判した。 しかし、徴用工判決問題を対韓輸出規制に絡めると、WTOルール違反の疑いが強いことに気付いたようだ。その後は、大量破壊兵器等の拡散防止、軍事転用防止とする「安全保障上の輸出管理策の一環」という説明に変えている。 だが、韓国政府の徴用工判決に関する姿勢を批判する中で、打ち出した対韓輸出規制を、「安全保障上の輸出管理」策とするのは明らかに無理がある。 さらに問題なのは、軍事転用や北朝鮮などへの横流しといった3品目に関する輸出規制の根拠が示せていないことだ。 小野寺五典・元防衛相は出演したTV番組で、フッ化水素はVX・サリン・ウラン濃縮過程に使われる素材だと述べたが、こうした化学兵器の製造には市販品で十分だ。 入手が難しい半導体製造に使う超高純度のものを使う必要はないし、韓国の業者がわざわざ北朝鮮に密輸するというのも不自然で根拠が見当たらない。) EUVレジストは、北朝鮮のレーダーに転用される恐れがあると説明されたが、実際にはオランダのASML社が製造した高性能露光機が、半導体の回路を焼き付ける際に使われる素材だ。 台湾のTSMCとサムソンがEUV露光技術の開発競争をしているが、露光機は1台ずつ納入先が追跡できるようになっている。実際、北朝鮮へ出荷すれば、すぐにわかってしまう代物だ。 こうした3品目の「横流し」への疑問が指摘される中で、結局、小野寺元防衛相が輸出規制の「根拠」として持ち出したのは、半導体素材3品目とは別の156件の「不適切な事案があった」ということだった。 しかしそれらの事案は、韓国の産業通商資源省がこの4年間に摘発した156件の事例の話だ。 このほかに、日本側が安全保障貿易管理の「違反の実例」として開示したものは、この4年で11社計約20件ある。 それらの中には、韓国経由で中国に送られたり、中国や香港経由で北朝鮮に輸出されようとしたものもあるが、それらは対韓輸出規制の対象になった3品目とは違うものだ。 こうして日本は対韓輸出規制の具体的な事例や根拠を示せないまま、韓国を「ホワイト国」から除外するという措置に行き着いたのである。 結局、「安全保障上の管理」とは表向きだけで、個別企業の輸出認可を「外交」交渉の手段として利用しているのが実態だと考えざるを得ない』、「対韓輸出規制は、明らかに「二枚舌」」、「徴用工判決問題を対韓輸出規制に絡めると、WTOルール違反の疑いが強いことに気付いたようだ」、「対韓輸出規制の具体的な事例や根拠を示せないまま」、など官邸の対応は拙速でお粗末過ぎる。
・『背景に産業政策の失敗 半導体やディスプレイで韓国に敗退  一連の対韓輸出規制を進めた経産省は、本来なら自由貿易を守り、企業や産業の利益を考えるべき立場だ。なぜ本末転倒の政策にのめりこんでいるのか。 それは、安倍側近の世耕経産相の下にあるからだけではないようにも思われる。背景には、産業政策の失敗を覆い隠す思惑が色濃くにじんでいる。 産業政策の失敗は目を覆いたくなるばかりだが、その象徴が「日の丸半導体」として世界を席巻した半導体産業だった。 日米半導体協定以降、“価格カルテル”(ダンピング禁止と外国製輸入割当)のもとで、日本企業が高収益を謳歌したが、積極的な技術開発や生産投資を進めたサムスンに代表される韓国や台湾メーカーにシェアを奪われた。液晶や有機ELなどのディスプレイも、同じようにサムスン、LGなどにやられた。 その後も、経産省は産業革新機構を通じて半導体のルネサス エレクトロニクスやディスプレイのジャパンディスプレイ(JDI)の事業再生を試みてきたが、うまくいかないまま2社は債務超過や赤字に陥っている。今や日本国内に国際競争力のある先端電子デバイスメーカーがなくなってきた。 次世代産業の育成もうまくいっていない。原発輸出の「原発ルネサンス路線」は東芝を経営危機に陥らせることになり、いまや日立製作所や三菱重工の経営の足を引っ張る。世界は、再生可能エネルギーへの転換を成長の起爆剤にと取り組んでいるなかで日本は大幅遅れだ。 情報通信産業やバイオ医薬産業でも遅れはひどいうえ、ニューライフサイエンスでの「加計問題」やスーパーコンピューターのペジー・コンピューティングの補助金詐欺など、不透明な支援の問題が後を絶たない。 こうした失敗をごまかし、産業競争力で負けてきた“うっぷん晴らし”をするかのように、官邸主導のあまりにレベルの低い外交に同調しているように見える』、「背景に産業政策の失敗 半導体やディスプレイで韓国に敗退」との指摘は、鋭く本質を突いているようだ。
・『日本企業の水平分業に支障 技術開発立ち遅れる恐れ  だが通商政策の変質は、より大きな禍根を残すことになるだろう。 確かに対韓輸出規制によって韓国の半導体企業は一時的には苦境に立たされるが、いずれ代替メーカーを見つけるか、取引先を多様化するに違いない。そして電子素材などの自主開発を加速させるだろう。 日本が将来、輸出規制を取り下げても、韓国企業がいったん覚えた不信感は消えることはない。97年のアジア経済危機の際に、露光機を独占的に供給していたニコンがサムソンらに現金払いを要求した。 それを機にサムソンはオランダのASML社の露光機に替えて、ニコンは切られていった。 今回の規制は、世界の成長の中心はアジアに移っているなか、韓国企業との連携や水平分業で生き残りを目指そうとしている日本の化学産業などの足を引っ張ることにもなりかねない。 対韓輸出規制3品目の1つであるフッ化ポリイミドは有機EL(液晶ガラスの代わりになる樹脂製フィルム)の素材で、日本の住友化学などがサムソン・ディスプレイやLGディスプレイに供給している。 JSRや富士フイルムや三菱マテリアルなども、台湾や韓国のメーカーから信頼を得て、高純度のフッ化水素やレジストなどを開発してきた。 日進月歩の技術進歩のもとで日本企業の素材開発は、韓国や中国メーカーの製造現場の経験やノウハウを踏まえた要求、情報をもとに進められてきた面がある。 だが韓国企業が日本の素材メーカーに情報を出さなくなったとたん、日本のメーカーの開発力も弱くなる』、「ニコンがサムソンらに現金払いを要求・・・それを機にサムソンはオランダのASML社の露光機に替えて、ニコンは切られていった」、というのは初めて知った。「韓国企業が日本の素材メーカーに情報を出さなくなったとたん、日本のメーカーの開発力も弱くなる」、というのも予想外のマイナス効果だ。
・『そして開発競争力の低下は、やがて貿易黒字の減少につながる。このまま日本の産業衰退が進めば、輸出できるものが徐々になくなっていく。 実際に、2018年の日本の貿易収支を見ると、1.2兆円の貿易赤字を記録し、2019年上半期(1~6月期)にも8888億円の貿易赤字に陥っている。7月の速報でも2495億円の貿易赤字となった。全体の輸出額は前年同月比で1.6%減少し、中国は9.3%、韓国は6.9%も減った。 韓国は、日本の貿易相手として中国・アメリカに次いで3位であり、日本は年2~3兆円に及ぶ対韓貿易黒字を得ている。米中貿易戦争の影響だけでなく、自ら仕掛けた“対韓経済戦争” が極めて愚かしい結果を導かない保証はない。 経産省は何があっても日本企業の利益を守らなければならなかったのに、それを突然、「歴史問題」の政争に巻き込み、逆に日本企業の利益を損なう危険性を引き起こした。このままでは日本の産業は滅びていくしかない』、非常に説得力に溢れた分析で、大いに参考になった。

次に、コラムニストの小田嶋 隆氏が9月13日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「旗」をめぐる最終的な悪夢」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00036/?P=1
・『いささか古い話、というよりも、この話題は、いまのところまだ決着していない、交渉過程の途上にあると思っているからこそ、あえて俎上に載せる気持ちになったわけなのだが、その「話題」というのは、「旭日旗」と五輪の観客席をめぐるお話だ。 発端は、韓国国会の文化体育観光委員会が、8月29日、国際オリンピック委員会(IOC)や東京五輪・パラリンピック組織委員会などに五輪会場内への旭日旗の持ち込み禁止を求める決議を採択したことだった。決議では旭日旗をあしらった道具の持ち込みや応援は「帝国主義に侵略された国家の苦痛の記憶を刺激する」と指摘し、五輪の理念に合わないと訴えた。 この記事中にある、韓国側からの旭日旗持ち込み禁止の申し入れと決議に対して、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は3日、「旭日旗は日本国内で広く使用されており、旗の掲示そのものが政治的宣伝とはならないと考えており、持ち込み禁止品とすることは想定していない」との方針を明らかにしている。 この産経新聞の記事が配信されると、ツイッター上の一部クラスタでは、ちょっとした騒動が起こった。 もっとも、ここでいう「ちょっとした騒動」というのは、本当のところ、たいした騒ぎではない。 この2ケ月ほど際立って神経質な展開で推移している日韓関係に、神経を高ぶらせている人々の間で、炎上が起こったというだけのことではある。 おそらく、大多数の日本人は、たいして気にもとめていない。それは韓国側でも同じことだ。 とはいえ、この旭日旗の問題は、この先に勃発するかもしれないより大きな問題の火種になる可能性を秘めている。 そんなわけなので、当欄としては、この問題をこれ以上こじれた話にしないためにも、現段階で論点を整理しておきたいと決意した次第だ。 9月8日の午後9時すぎに、私は以下のようなツイートを発信した。《旭日旗が論外な理由。過去:大日本帝国の軍旗として、侵略と暴虐の記憶を刻んでいるから。現在:排外主義者による街宣活動の象徴として在日コリアンを威圧するいやがらせのツールになっているから。未来:五輪での旭日旗の林立を夢見ているのが、いずれも歴史修正主義の旧軍賛美者ばかりだから。》 このツイートは、当稿執筆の時点で、2624件のRTと5239件の「いいね」を獲得しており、このほか、賛否あわせて109件の返信が寄せられている。いま、「賛否合わせて」と書いたが、正直なところを明かせば、「否」の方がずっと多い。ざっと見たところでは、賛否の比率は1対4くらいではなかろうかと思う。 もっとも、昨今のツイッター上のコミュニケーションでは、話題が何であれ、賛意を示す意味のリプライは、そもそもあまり投稿されないことになっている。このソーシャルメディアに集まる人々は、何かに反発を覚えたり、誰かの言いっぷりに腹を立てたりした時に限って返事を書く仕様になっている。だから、私は賛否の比率はあまり気にしていない。「いいね」の数も、本気で受け止めてはいない。いずれにせよ、ツイッターは議論の場ではない。どちらかといえば、中学生の雪合戦に近い。手にとった雪玉を手近な誰かに投げつけるという動作そのものが目的になっている。雪玉の性質や重さや投げ方の作法は、この際問題にならない。ただただ生身の人間に向かって質量のある物質を投げつけることの爽快感が、このゲームに参加する人間たちが共有している唯一のプロトコルということになる。 さて、私が当該ツイートの中で申し述べた見解は、自分では、現段階の当面のまとめとして、おおむね当を得たものだと思っている。 ただ、補足せねばならない部分もあるといえばある。 私が、今回、当欄で原稿を書き起こす気持ちになったのは、その「補足」のためだと申し上げてもよ い。 それほどに、この問題は、「補足」しなければならないノイズを多量に含んでいる』、「旭日旗が論外な理由」との小田嶋氏のツイートはその通りだ。
・『ツイート内で指摘した「旭日旗をスタジアムに持ち込むことの是非」の部分とは別に、今回のやりとりの中で重要なのは、「そもそもこの問題の発端はどこにあったのか」というお話だったりする。 これは、なかなか厄介な話で、「発端」に当たる事実は、細かい事実を拾っていけば、どこまでもさかのぼることができる。 であるから、「そもそも」という接頭辞の後に、より古い発掘話を提示してみせることで、少なくとも、その場の論争における形式上の勝利はゲットできてしまう。 と、この論争には結末がないことになる。つまり、「論争が続いている」(←言い換えれば「いまだに決着していない」)状態を引き延ばすことで利益を得る側が、論争を断念しない限り、この種の論争は永遠に続くわけだ。なんと不毛な活動だろうか。 思えば、「関東大震災における朝鮮人虐殺の有無」などは、この手法(つまり、出典の怪しい「そもそも」の資料を次々と持ち出すことによって「論争」を引き延ばす手法)によって、朝鮮人虐殺という「史実」を、「論争継続中の事案」すなわち「両論併記で処理すべき虚実不明の事件」に持っていくことに半ば成功してる。かように、不毛な論争に付き合うことは、それだけで極論家に有利なポジションを与えることになる。このことに注意せねばならない。 さて、ごく短いタイムスパンでの話をすれば、五輪組織委が、「旭日旗の競技会場への持ち込みを禁止しない」という昨今の国際常識から考えて異例な決断を公表するに至った理由は、そもそも五輪組織委に「旭日旗の競技場への持ち込み禁止」の申し入れを持ち出してきたのが、韓国国会の文化体育観光委員会だったからだと思われる。しかも韓国側は、同時にIOCにも同じ働きかけをしている。 この数ヶ月間の日韓関係を鑑みるに、日本側が、韓国側から一方的に求められた要求に対して、素直に従うことは考えにくい。仮に韓国側からの申し入れが、真っ当なものであったのだとしても、こちら側としては、「現今の日韓関係において、相手側の言い分をあっさり承諾することは、外交上の失点になる」という感じの判断が先行してしまうからだ。 実際のところ、五輪組織委のメンバーの中にも、今回の韓国側の申し入れが、穏当で常識的な要求であることを承知している人間はたくさんいるはずだ。なにしろ、スタジアムでの政治宣伝は、昨今、国際的なスポーツ団体が等しく悩まされている問題だ。民族融和と国際交流の場であり、世界平和を推進するための重要な機会として語られることの多い競技スポーツの観客席は、その一方、世界各地で、政治宣伝や民族差別感情を煽るための拠点として活発に利用されている。宗教対立や階級間の反発をスタジアムに持ち込む人々が、それぞれに自分たちの立場をシンボライズした旗やプラカードを持ち込む例も後をたたない。 であるから、近年、FIFAをはじめとする競技団体は、その種の政治宣伝に用いられる旗やシンボルを厳しく規制する方向で足並みを揃えている。 わかりやすい一例として、2017年4月25日のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ、水原三星(スウォン・サムスン、韓国)対川崎フロンターレの一戦で、川崎フロンターレのサポーターが応援の旭日旗を出した行為に対して、AFCが科した処分の内容とその背景について解説した記事にリンクを張っておく。 本来、旭日旗のスタジアム持ち込みについての様々な議論は、この時点で決着がついている。 細かい点でいまなおくすぶっている論点がいくつかあるといえばあるものの、大筋の結論は、この騒動の際に「カタがついて」いる。 してみると、その、すっかりカタがついていたはずの話をいまさらのように蒸し返して持ち出してきた韓国側の今回のやり方は、あれは「いやがらせ」ではないのかと言えば、そういう見方も成り立つ。むしろ、彼らがこの話を持ち出してきたタイミングからして、「いやがらせ」の成分を含んでいなかったということは考えにくいと言ってもよい。 とはいえ、日韓両国の関係が正常であれば、日本の五輪組織委とて、この程度の神経戦は、軽くスルーして、「おっしゃる通りですね。わかりました。旭日旗の持ち込みは禁止します」と、すんなり韓国側の申し入れを容認していたはずだ。 ところが、現在の日韓関係は、明らかにどうかしている。 てなことになると、五輪組織委としても、「ここですんなり韓国側の言いなりになったら、どれほど非難されるかわかったものじゃない」「匿名電話だの脅迫メールだのは、なんとか処理できるかもしれないけど、昨今の状況だと、官邸やら国交省やら外務省が圧力をかけてくるかもしれない」「というよりも、JOC(日本オリンピック委員会)の上の方の人たちが黙っていてくれないんじゃないかなあ」てな調子の「空気を読んだ」「忖度至上主義的な」判断に傾かざるを得ない。 現実問題として、仮に旭日旗のヤバさを認識していたのだとしても、政権の意向を無視して自分たちだけが「いい子」になることはできない。よって、「断固として」「毅然として」韓国側からの「いやがらせの」申し入れを拒絶して、旭日旗の正当性を容認するという方向で対応することになる。もちろん、これは、むしろ韓国側の思うつぼなのだが、それもこれも、当面の「空気」にはかなわない』、「水原三星対川崎フロンターレの一戦で、川崎フロンターレのサポーターが応援の旭日旗を出した行為」については、サポーターの馬鹿な行為に腹が立ったのをよく覚えている。今回、JOCが「「空気を読んだ」「忖度至上主義的な」判断」をしたのは、明らかに間違いで、国内からどんなに非難を浴びようとも、持ち込みを禁止すべきだったと思う。
・『ただ、組織委ならびに政府の中の人たちも、いくらなんでもこのまま旭日旗OKの方針を貫いて、五輪本番を迎えるつもりではないはずだ。彼らとしては、妥当なタイミングを見計らって、IOCなりほかの欧米諸国の誰かなりの「勧告」なり「助言」なりを受容する形で、旭日旗の持ち込みを「自粛」する(←周辺諸国の国民感情に「配慮」するとかなんとか言いながら、半ば恩に着せつつ)形で軟着陸するシナリオを想定しているはずだ。 つまり、「韓国からのイチャモンは断固として拒絶するが、IOCだとか欧米諸国だとかが示してくる遺憾の意とか憂慮の念には敏感に反応する用意があるよ」ということだ。 私自身も、ことここに至った以上、そのシナリオ(IOCに叱られて静かに尻尾を巻くソリューション)が一番望ましい展開だと思っている。 ただ、このシナリオにはちょっとした穴がある。というのも、IOCがそれはそれで腐った(デカい魚はアタマから腐る。そして、アタマの腐った魚は正常な判断ができない)組織だからだ。 IOCはこの問題を放置するかもしれない。というよりも、彼らが、現場の問題に適正に関与できるだけの能力と責任感を持っていると考える方がむしろどうかしている。彼らは、私の目には、うちの国の五輪組織委以上に無能で無責任で、ただただカネだけを欲しがっているだけの団体に見える。ちなみに、この見方は広く世界中で共有されている。IOCは単に無能なのではない。あれは腐った組織だ。 IOCがこの問題を放置する理由の第一は、単に面倒くさいからだ。当然だ。彼らは、利権につながらない仕事には興味を持たない。旭日旗のような、面倒くさいだけで誰ももうからない話にはハナもひっかけないだろう。 もう一つIOCがこの問題に興味を持たない理由は、日韓両国間の炎上案件に手を突っ込んで火傷をするリスクを取りに行くだけの根性を持っていないからだ。これも大いに考えられる。カネには転んでも状況は読めない。あそこはそういう組織だ。 ということになると、最悪なシナリオが浮上する。つまり、このまま「旭日旗OK」の判断を押し通して、引っ込みがつかないまま五輪本番を迎えてしまうということだ。と、サッカーであれバレーボールであれ、日韓戦の枠組みで処理される競技のスタジアムには、大量の愛国業者の皆さんが群れ集まってこれまた大量の旭日旗を持ち込むことになる。でもって、競技が始まると、観客席には旭日旗が林立乱舞し、その穏やかならぬ絵面(えづら)が、国際映像として世界中に配信される。 これこそが、最終的な悪夢だと思う。 最後に、これも炎上の種にしかならないとは思うのだが、メモ書きとして作ってしまったものなので、乗りかかったタイタニックというのか、歩き始めたインパール作戦の心持ちで書き起こしておくことにする。担当の編集者さんには気の毒な展開だが、私には、現在かかえている病気の症状を除けば、特段に恐れるべきものがない。 冒頭の部分でリンクを張った私のツイートに対して寄せられた返信をざっと読み返してみるに、このたびの五輪組織委による旭日旗容認の判断を擁護している人々の主張は、いくつかに分類できる。 本来なら、この種のクソリプまがいにいちいち反論するのは、ネット上の論争にかかわる人間として、適切な態度ではない。というのも、ここで議論が始まってしまうと、この話題が「議論の余地のある」「論争的な」「対立する二つの陣営の双方がそれなりの論拠を持っているはずの」「どっちもどっちの」「普通の人間は踏み込まない方がよい物騒な」話題であることを認めてしまうことにつながるからだ。実態は違う。本件は論争的な話題ではない』、「競技が始まると、観客席には旭日旗が林立乱舞し、その穏やかならぬ絵面(えづら)が、国際映像として世界中に配信される」、というのは本当に悪夢以外の何物でもない。JOCも他力本願ではなく、自ら持ち込み禁止に切り替えてほしいものだ。
・『旭日旗問題は、「ほとんどまったく議論の余地のない」「責任あるメディアが両論併記でお茶を濁してよいはずのない」「ほぼ100%、旭日旗持ち込み禁止を支持する側だけに正当性が宿っている」「ゼロ対100ないしは1対100の、論争に値しない」 論題だ。 私があえて、こういう場所で愛国業者の皆さんのクソリプに付き合ってさしあげているのは、彼らの偏狭かつ異様な見解に、ほんの少しでも影響を受けてしまう人々の心に、真っ当な反論を届けておくことも、ある種の文化的雪かきとして必要な作業なんではなかろうかと考えたからだ。 賢明な言論人の多くは「旭日旗容認派の主張に反論することは、無駄な炎上に通じることで、かえって彼らのアクロバティックな主張に支持者を増やすことになる。というのも、そもそも彼らの主張は、一部の営業右派メディアが商売として展開しているメディアの中で喧伝されているだけの、一般人の耳には到底届かない極論だからだ。マトモな言論人が彼らの相手をすることは、かえって、一般人の耳目を彼らの主張に集中させる機会をつくることになる。これは望ましくない」 という感じの主張を展開している。もっともだと思う。 ただ、時々はクソリプに一矢報いておかないと、気がついた時には、この国全体がクソリプをそのまま世論として共有するどうしようもない社会になってしまっているかもしれない。なので、以下、箇条書きで、クソリプへの返事を並べておく。 あらかじめ申し上げておくが、クソリプへの反論の反論に返事をするつもりはない。 最後通告として受け止めてほしい。 冒頭に引用した私のツイートへの反論は、おおよそ以下に示す5つの論点に分類することができる。 1.旭日旗に反対しているのは韓国だけで、その理由も多分にわが国へのいやがらせのカードにすぎない。 2.そもそも韓国側がスタジアムへの旭日旗の持ち込みを問題視し始めたのは、2011年1月25日、AFCアジアカップ2011準決勝「日本対韓国戦」において、キ・ソンヨン選手が前半にPKで得点した後、ゴールパフォーマンスで「猿」の物真似を行ったことが発端で、キ・ソンヨン選手が、その際に、メディアからの攻撃に対して、「スタジアムに掲げられていた旭日旗についカッとしてしまった」という趣旨の弁解をしたことに始まる。 3.朝日新聞の社旗だって旭日旗だぞ。 4.旭日旗は、公式に認められた日本の防衛組織である自衛隊の公式の旗であり、どこに出しても恥ずかしくないもので、実際自衛隊が国際的な交流の場所に参加する際には堂々と掲揚されている。 5.かつて軍による侵略の象徴として用いられた旭日旗がダメだというのなら、同じ理由でユニオンジャックや星条旗もNGだろうし、フランスの三色旗も論外だろう。また、「旧軍による侵略の象徴だったから持ち込めない」という文脈からすれば、日章旗だって同罪ということになるのでは?) 以上の5つの返信への私の当面の返信は以下の通りだ。マジメに読んでほしい。 1.韓国が自国民の旭日旗への反発感情や被害者意識を「外交カード」として利用しているのはその通りだと思う。ただ、旭日旗に反発しているのが「韓国だけ」だというのは、歴史を知らない人間の見方だ。正確には、「旭日旗への反発を表立った外交の場で外交カードとして持ち出している国が、いまのところ韓国以外に見当たらない」ということにすぎない。反発感情は、アジア、オセアニアはもとより、日本軍の捕虜となった軍人を数多くかかえるオランダや英国の国民の中にも底流している。 2.キ・ソンヨンの「猿真似パフォーマンス」に関しては、彼の行為の非をまず認定すべきだろう。ただ、それはそれとして、キ・ソンヨン選手が持ち出した「弁解」を発端として、韓国国内での旭日旗への反発が正当化されたと断言するのは、極論の類だと思う。旭日旗への反発感情は、韓国国内でずっと底流していたものだ。それを表立った抗議行動に「表面化」させる結果をもたらしたのが、キ・ソンヨン選手の「弁解」だったと見るのが穏当なところだ。 それまで、表立って語られることのなかった旭日旗への反発がいきなり浮上したように見えるのも、少なくともその時点までは、日韓戦のスタジアムで旭日旗を振るようなファンが登場していなかったから(もっとも、この時に本当に旭日旗が掲げられていたのかどうかについては、いまだに確たる結論が出ていないのだが)ということにすぎない。いずれにせよ、背景には2002年の日韓共催W杯におけるゴタゴタから、両国のサッカーファンの間に過剰な反発感情が醸成されていたことがある。旭日旗の持ち込みも、それに対する反発も、これらの背景を踏まえたものだ。 3.五輪の観客席で朝日新聞の社旗を振るような「まぎらわしい」ないしは「挑発的な」行為は、自粛した方がよい。実際、朝日の社旗を振る必然性はまったくないわけだし。 4.海上自衛隊の艦船が、彼らの公式の旗として旭日旗を掲げるのは当然の所作だ。国際舞台であっても、各国の軍隊の集まりという枠組みの中で、それぞれの国の軍隊が自国の礼法に則った旗を揚げている限りにおいて、何の問題もない。ただ、その海上自衛隊の旗を、わざわざ五輪のスタジアムに持ち込むことについては、なんらの理由も必然性も正当性もない。悪質な政治宣伝であり卑劣な挑発行為だ。 5.「そっちこそどうなんだ主義(Whataboutism)」に基づいた議論には乗らない。あまりにもばかげている。  長い原稿になってしまった。 最後にこんなことを書くのはなさけなくもくだらないのだが、一言だけ言っておく。 寄せられるコメントの中に「オダジマは原稿料欲しさに、やたらと長い原稿を書いている。見苦しい」という感じの批判が時々みかけられる。が、当欄の規定では、私の受け取るギャランティーは、原稿の文字量とは関係していない。2000文字程度であっさり仕上げようが、20000文字の長大なテキストをアップしようが、私が受け取る金額は同じだ。そこのところをわかってほしい。 なお、当欄に寄せられたコメントには返信はしない。その答えは、友達よ、風に吹かれている』、「私のツイートへの反論」もよく整理されており、その通りだと思う。いずれにしろ、JOCの再考を願って止まない。
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