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「大阪都構想」騒動 [国内政治]

今日はようやく決着がついた「大阪都構想」騒動を取上げよう。
まずは、「大阪都構想」を知る上でも、学者間の事前の論争を紹介したい。
5月12日付けダイヤモンド・オンラインで、京都大学大学院教授の藤井聡氏が反対派の他の学者の主張も引用しながら「「都構想」は大阪の衰退を決定づける“論外の代物”」と題して、概ね以下のような反対論を展開。
・大阪市役所等の推進勢力との一定の関係があった上山氏や佐々木氏、そして高橋氏のような学者を除けば、筆者は都構想に「賛成」している学者を文字通り一人も見たことがない。「都構想」なぞ、真面目な学者にとっては本来なら「取り上げるに値しない、そういう代物」、つまり「論外の代物」
・東京が繁栄しているのは、日本の有力企業の大半が、その本社を東京に置いているからだ
・そもそも、都区制度というものは、「本質的には中央集権化の手段として案出されたもの」(竹永三男・島根大学名誉教授・歴史学)であり、「分権の流れに逆行」(入江容子・愛知大学教授・地方自治論)
・「『大阪都構想』は…『特別区への格下げ』という“粗悪品”」(堀雅晴・立命館大学教授・行政学)
・大阪市が5分割され、それによって行政手続きが一挙に複雑化し、そこに行政パワーも財政も削がれることとなり、その結果として、「大都市の活力を削ぎ、長期低迷を生む」(木村收・阪南大学元教授・地方財政学)
・「二重行政論」については、都構想推進派の2名の大阪市特別顧問学者のもうお一方、上山氏の言葉を紹介しよう。彼もまた、特別顧問就任直前、次のような辛辣な批判を、維新が喧伝する「二重行政論」に対して差し向けている。「図書館が府と市で2つあって無駄だとか…けち臭い話…稼働率が高けりゃ置いとけばいいし、改善が進んでいる(府も市もあほじゃない)」
・財政学の森裕之・立命館大学教授は次のように指摘。「大阪府市は特別区になった場合の財政シミュレーションを示しているが、再編効果には大阪市の事業の民営化(地下鉄・バスや一般廃棄物事業など)や『市政改革プラン』など、『大阪都構想』による二重行政の解消とは関係のないものが意図的に盛り込まれている。それらを差し引けば、純粋な再編効果は単年度でせいぜい2~3億円程度」
・「都構想」は大阪の衰退を決定づける 事実と論理に基づく判断を
http://diamond.jp/articles/-/71331
なお、藤井聡氏は反対派の学者の主張を「「大阪都構想の危険性」に関する学者所見」として、ホームページ上で紹介。
http://satoshi-fujii.com/scholarviews/

これに対し、推進派で財務省出身の嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、5月15日のダイヤモンド・オンラインで「藤井教授に再反論する 「大阪都構想」は都市経営として合理的だ」として、概ね以下のように反論。
・基礎的自治体の適正規模は30~50万人 大阪都構想はその観点から合理的
・大阪市の規模が過大なのは事実 学問の世界は数ではない
http://diamond.jp/articles/-/71532?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor
なお、高橋洋一氏は、4月30日のダイヤモンド・オンラインで「「大阪都構想」を逃せば大阪の衰退はさらに進む」を寄稿しているが、ここでは省略。

住民投票結果を受けた事後報道のながで、興味深かったものを紹介しよう。
まずは、5月18日付け日刊ゲンダイ「橋下市長「政界引退」に大メディアが“茫然自失”だった理由」が、メディアの裏面を以下のように報じている。
・橋下市長の記者掌握術のうまさだけでなく、橋下市長は視聴率を稼げる男だという現実
・テレビ局の幹部は「大阪都構想が否決されると困る。他に数字を稼げる政治家はいないから飯の食い上げだ」と橋下勝利に“期待”。だからこそ、都構想賛成の報道が多かったのだが、大阪市民は冷静。金儲けしか頭にないメディアは今や、茫然自失
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159907/1

次に、同日の朝日新聞は「大阪都構想の次は「総合区」? 橋下氏「また頑張る」」と題して、以下のように報じた。なお、本日の読売新聞もほぼ同趣旨を報道。
・自民、公明両党が都構想の代わりに提案している、市を残したままで区の権限を強化する「総合区」構想が浮上。導入へ向けた議論が進む可能性
・橋下氏の記者会見では、総合区について「住民に身近なサービスを提供できるという意見もあった。維新市議団にも議論してもらいたい」と述べた。これまでは「区長を選挙で選べる特別区が必要」と訴えていたが、都構想廃案で方針を転換する考えだ
http://www.asahi.com/articles/ASH5L33T4H5LPTIL004.html

第三に、本日付けの日刊ゲンダイは「ハシモト劇場は終わらない? ウルトラCは「大阪第2都構想」」として、公明党大阪府本部が3月に公表した「ローカルマニフェスト」にある、「大阪市内の24ある行政区を10ほどに再編して区長の権限を強め、市議会の定数を現在の86から65に削減する」といった「都構想」に近い内容が浮上してくる可能性を示唆。上記の「総合区」との関連は不明。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159911/1

橋下氏らは記者会見で「大阪都構想」に向け、大阪市や大阪府の職員に膨大なエネルギーを費消させたことを一応詫びていた。しかし、冒頭の学者らの反対論にあるように、この構想は「論外の代物」なのに、メディアが正面切った批判を避けたこともあって、結果的に職員だけでなく、住民にも膨大なエネルギーを費やさせた。しかも、事後報道にあるように、これで「The End」とはならずに、まだくすぶり続けそうな様子だ。いくら「お笑い」が好きな土地柄とはいえ、「笑うに笑えない」騒動といえよう。
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