戦後70年談話(その1) [外交]
今日は、安部首相の戦後70年談話をめぐる問題をその1として取上げよう。
まず第一は、5月7日付けの日経ビジネスオンラインでの藤井裕久・民主党顧問へのインタビュー記事「安倍首相へ、終戦70年談話はやめよ 祖父・岸元首相も許さなかった海外派兵に道開いた孫」である。そのポイントは以下の通り。
・安倍首相の米議会演説は、彼の本心を語ったものではない。2013に国会で「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と答弁
・「戦後レジームからの脱却」というのもおかしな話。日本は戦後、平和を求める道を歩んできた。なぜ、そこから「脱却」する必要があるのか。しかも、その戦後レジームを作ってきた中心は自民党政権」。自民党はカネにはルーズだったが、平和には潔癖だった
・米国の肩代わりを受け入れるからこそ演説ができた(1つは政治的なもの、世界の警察としての役割の一部。安倍首相は集団的自衛権を行使できるようにすることで、これを肩代わりするつもり。もう1つは経済的なもの。すなわち、流動性の供給源としての役割。日本も米国も量的緩和政策を取ってきた。米国の方は今、その出口戦略に入っている。しかし、米国が金融を引き締めると世界全体の経済に悪影響が出かねないので、日本に対して金融緩和の維持・拡大を求めている
・安倍首相が現在進めている安全保障政策は優先順位が間違っている。かつて岸内閣が「国防の基本方針」を制定。この時に定めた優先順位はまず「国連」。その次が「国民の生活」。以下、「自衛隊」と「日米同盟」。私はこれは正しい優先順位だと思います。岸内閣は日本の安全保障政策の柱はきちんと維持。1つは自衛隊を海外に派遣しないこと。もう1つは、武力行使に加わらないこと
・日本は国連を通じて世界の平和に貢献すべき
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150501/280676/?P=1
第二は、5月8日付けの日経新聞が伝えた「米研究者ら、首相に注文 戦後70年談話「偏見なく過去清算を」」である。エズラ・ボーゲル米ハーバード大名誉教授、ハーバート・ビックス米ニューヨーク州立大名誉教授、ジョン・ダワー米マサチューセッツ工科大名誉教授ら米国の日本研究者ら187人が声明。そのポイントは以下の通り。
・安倍首相の戦後70年談話を念頭に「歴史解釈の問題は日本の成果を評価する上で障害になっている」と指摘。一方で「日本だけでなく、韓国と中国の民族主義的な暴言によってもゆがめられてきた」と記し、日本と中韓両国の努力を促した
・「可能な限り完全で、偏見のない(過去の)清算をしなければならない」。従軍慰安婦問題を「否定したり、小さなものとして無視したりすることは受け入れられない」とも強調
第三には、5月16日付け東洋経済オンラインに掲載された「上記の声明の中心人物2名へのインタビュー記事「「187人声明」は、"反日"でも"反韓"でもない 実現しなかった「読売新聞への独占提供」」である。そのポイントは以下の通り。
・声明は非難というよりも励ましを意図
・「慰安婦」問題を巡る日本の憂慮すべき風潮に対し意見。憂慮すべき風潮とは、ジャーナリストに対する脅迫が起きているとの報道、日本の研究仲間が政府の財政援助を受けるためにある種の問題を扱えない、さらには、「慰安婦」制度の犠牲者に対する無神経な意見など。
・慰安婦」問題の最近の発言の多くは、強い締めつけを受けている。上からの完全な検閲ではなく、むしろ、日本において、許容される発言の範囲が狭まっている。最近は日本の政策に対する非常に控えめな批判でさえ、「中国びいき」または「韓国びいき」と取られてしまう。日本で許容される議論の範囲がさらに狭くなれば、地域のリーダーという日本の目標は、さらに実現が難しくなる
・現在の日本政府は言葉を弄し、実際に起こったこと、前進するために述べる必要があることから関心を逸らす腹であるように思われる
・当初、この声明は読売新聞に独占ベースで提供したが、返事がなかったので公開
http://toyokeizai.net/articles/-/69930
第四には、5月24日付けZAKZAKに拓殖大学客員教授の藤岡信勝氏が寄稿した「欧米学者声明に異議 “持ち上げ”は慰安婦で謝罪させる罠か」である。そのポイントは以下の通り。
・この声明は一体、何なのか。まことに怪しい。連絡先の事務所も不明で、日付もない。いわば、怪文書の体裁だ
・日本の軍慰安婦は「国営性奴隷制」であるというのが本質規定。今回の声明には「強制連行」「性奴隷」「20万人」などの言葉がすっかり消えており、驚くべき変化
・「戦後日本が守ってきた民主主義、自衛隊への文民統制、政治的寛容さなどは祝福に値する」としたうえで、「慰安婦問題などの歴史解釈が(祝福の)障害となっている」と指摘
・一方で、「韓国と中国の民族主義的な暴言にもゆがめられてきた」と明言。韓国側が「20万人以上」などと主張する慰安婦の数についても「恐らく、永久に正確な数字が確定されることはない」としたhttp://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150522/dms1505221140010-n1.htm
第五には、5月27日付け日刊ゲンダイの「慰安婦問題で歴史学16団体が声明「過ち繰り返さない姿勢を」」である。そのポイントは以下の通り。
・歴史研究専門家らの国内16団体が都内で会見し、「いま求められているのは歴史研究や教育を通して問題を記憶にとどめ、過ちを繰り返さない姿勢だ」との声明を発表。一部政治家やメディアの姿勢に懸念を示した
・慰安婦問題の背景には、植民地支配や差別など不平等で不公正な構造が存在していたと指摘。歴史研究と教育を通じて慰安婦問題を記憶にとどめるよう求めた
・歴史学研究会が昨年10月に同様の趣旨の声明を出したことを機に、幅広い団体の連名で改めて見解をまとめた
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/160173/1
この問題は、戦後70年談話の8月が近づくにつれ、ヒートアップしていく可能性があり、今後も適宜、取上げてゆくつもりだ。なお、明日は金曜日なので休むので、明後日に期待を。
まず第一は、5月7日付けの日経ビジネスオンラインでの藤井裕久・民主党顧問へのインタビュー記事「安倍首相へ、終戦70年談話はやめよ 祖父・岸元首相も許さなかった海外派兵に道開いた孫」である。そのポイントは以下の通り。
・安倍首相の米議会演説は、彼の本心を語ったものではない。2013に国会で「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と答弁
・「戦後レジームからの脱却」というのもおかしな話。日本は戦後、平和を求める道を歩んできた。なぜ、そこから「脱却」する必要があるのか。しかも、その戦後レジームを作ってきた中心は自民党政権」。自民党はカネにはルーズだったが、平和には潔癖だった
・米国の肩代わりを受け入れるからこそ演説ができた(1つは政治的なもの、世界の警察としての役割の一部。安倍首相は集団的自衛権を行使できるようにすることで、これを肩代わりするつもり。もう1つは経済的なもの。すなわち、流動性の供給源としての役割。日本も米国も量的緩和政策を取ってきた。米国の方は今、その出口戦略に入っている。しかし、米国が金融を引き締めると世界全体の経済に悪影響が出かねないので、日本に対して金融緩和の維持・拡大を求めている
・安倍首相が現在進めている安全保障政策は優先順位が間違っている。かつて岸内閣が「国防の基本方針」を制定。この時に定めた優先順位はまず「国連」。その次が「国民の生活」。以下、「自衛隊」と「日米同盟」。私はこれは正しい優先順位だと思います。岸内閣は日本の安全保障政策の柱はきちんと維持。1つは自衛隊を海外に派遣しないこと。もう1つは、武力行使に加わらないこと
・日本は国連を通じて世界の平和に貢献すべき
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150501/280676/?P=1
第二は、5月8日付けの日経新聞が伝えた「米研究者ら、首相に注文 戦後70年談話「偏見なく過去清算を」」である。エズラ・ボーゲル米ハーバード大名誉教授、ハーバート・ビックス米ニューヨーク州立大名誉教授、ジョン・ダワー米マサチューセッツ工科大名誉教授ら米国の日本研究者ら187人が声明。そのポイントは以下の通り。
・安倍首相の戦後70年談話を念頭に「歴史解釈の問題は日本の成果を評価する上で障害になっている」と指摘。一方で「日本だけでなく、韓国と中国の民族主義的な暴言によってもゆがめられてきた」と記し、日本と中韓両国の努力を促した
・「可能な限り完全で、偏見のない(過去の)清算をしなければならない」。従軍慰安婦問題を「否定したり、小さなものとして無視したりすることは受け入れられない」とも強調
第三には、5月16日付け東洋経済オンラインに掲載された「上記の声明の中心人物2名へのインタビュー記事「「187人声明」は、"反日"でも"反韓"でもない 実現しなかった「読売新聞への独占提供」」である。そのポイントは以下の通り。
・声明は非難というよりも励ましを意図
・「慰安婦」問題を巡る日本の憂慮すべき風潮に対し意見。憂慮すべき風潮とは、ジャーナリストに対する脅迫が起きているとの報道、日本の研究仲間が政府の財政援助を受けるためにある種の問題を扱えない、さらには、「慰安婦」制度の犠牲者に対する無神経な意見など。
・慰安婦」問題の最近の発言の多くは、強い締めつけを受けている。上からの完全な検閲ではなく、むしろ、日本において、許容される発言の範囲が狭まっている。最近は日本の政策に対する非常に控えめな批判でさえ、「中国びいき」または「韓国びいき」と取られてしまう。日本で許容される議論の範囲がさらに狭くなれば、地域のリーダーという日本の目標は、さらに実現が難しくなる
・現在の日本政府は言葉を弄し、実際に起こったこと、前進するために述べる必要があることから関心を逸らす腹であるように思われる
・当初、この声明は読売新聞に独占ベースで提供したが、返事がなかったので公開
http://toyokeizai.net/articles/-/69930
第四には、5月24日付けZAKZAKに拓殖大学客員教授の藤岡信勝氏が寄稿した「欧米学者声明に異議 “持ち上げ”は慰安婦で謝罪させる罠か」である。そのポイントは以下の通り。
・この声明は一体、何なのか。まことに怪しい。連絡先の事務所も不明で、日付もない。いわば、怪文書の体裁だ
・日本の軍慰安婦は「国営性奴隷制」であるというのが本質規定。今回の声明には「強制連行」「性奴隷」「20万人」などの言葉がすっかり消えており、驚くべき変化
・「戦後日本が守ってきた民主主義、自衛隊への文民統制、政治的寛容さなどは祝福に値する」としたうえで、「慰安婦問題などの歴史解釈が(祝福の)障害となっている」と指摘
・一方で、「韓国と中国の民族主義的な暴言にもゆがめられてきた」と明言。韓国側が「20万人以上」などと主張する慰安婦の数についても「恐らく、永久に正確な数字が確定されることはない」としたhttp://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150522/dms1505221140010-n1.htm
第五には、5月27日付け日刊ゲンダイの「慰安婦問題で歴史学16団体が声明「過ち繰り返さない姿勢を」」である。そのポイントは以下の通り。
・歴史研究専門家らの国内16団体が都内で会見し、「いま求められているのは歴史研究や教育を通して問題を記憶にとどめ、過ちを繰り返さない姿勢だ」との声明を発表。一部政治家やメディアの姿勢に懸念を示した
・慰安婦問題の背景には、植民地支配や差別など不平等で不公正な構造が存在していたと指摘。歴史研究と教育を通じて慰安婦問題を記憶にとどめるよう求めた
・歴史学研究会が昨年10月に同様の趣旨の声明を出したことを機に、幅広い団体の連名で改めて見解をまとめた
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/160173/1
この問題は、戦後70年談話の8月が近づくにつれ、ヒートアップしていく可能性があり、今後も適宜、取上げてゆくつもりだ。なお、明日は金曜日なので休むので、明後日に期待を。
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