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AIIB問題(その8) [外交]

AIIB問題については、3月25日、26日、4月1日、7日、16日、18日と取上げてきた。今日は久しぶりにその8として取上げたい。
参加問題を検討していた自民党は、6月3日に政府に対し、参加は「慎重に」対応してほしいと要望したこともあって、最近の政府の姿勢はより後ろ向きになったようだ。

しかし、最近の政府の発言には「負け惜しみ」的ニュアンスも目立つ。それを批判した記事が、5月24日付けの日刊ゲンダイ「AIIBをバカにしている場合か 「ODA」日本も焦げ付き2兆円超」である。そのポイントは以下の通り。
・安倍首相が21日に行われた講演で、アジア向けのインフラ投融資について、今後5年間で約13兆円を投じることをブチ上げた。中国が主導して創設する「AIIB」への対抗心をむき出しにして、「『安かろう、悪かろう』はいらない」「安物買いの銭失い」とAIIBをコキおろした
・ADBは、アジア諸国に対して高飛車な態度を取ってきたが、先月、融資の基準を“緩和”する計画が発覚したばかり。このままでは、AIIBに取って代わられると、手のひらを返すように「積極的に支援します」と訴えているのが現状
・厳しい審査のもと、支援を拒否されてきたアジア各国からすれば、「何を今さら」という感覚だろう。
・元外交官の天木直人氏は「AIIBは中国が国を挙げてとりかかっている国策。そんな国と同じ“土俵”で戦っても、勝てるわけがない。日本は“日本の原則”で戦うべき。安倍首相は中国に喧嘩を売るだけで、何の解決策もない。このままでは、安倍首相のプライドは満たされるかもしれませんが、日本は自滅」
・実は外務省がホームページでひっそりと公表しているデータ。「我が国の債務救済措置」というものだ。国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)が債権放棄した金額は、過去10年間で2兆円を超える。もちろん、国民の税金だ。安倍政権は「AIIBはうまくいかない」とバカにしているが、なんのことはない、日本のODAも結構“焦げ付いている”のだ
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/160097

次に、立命館アジア太平洋大学教授の塚田俊三氏が6月16日付け週刊エコノミストに寄稿した「日本企業の受注機会を逃すな AIIB参加慎重論への5つの反論」を紹介したい。そのポイントは以下の通り。
①運営は中国主導、受注者も恐らく中国企業が大半→受注企業の選定は借入国主導
②出資金は国民の税金から支払うので管理・運営体制の確認必要→日本の援助機関に出資した場合と比べ、出資の効果100倍。大半はコスト競争力の高い中国や韓国企業に流れるが、鉄道や空港、発電、橋梁等の分野では日本企業にも勝算
③世銀やADB案件での日本企業の受注率は低い。AIIBでも同様だろうから無理して加わる必要なし→受注率は0.5%に過ぎないが、それは両機関の融資対象が日本企業の得意分野ではないため。世銀の融資案件の55%は、教育、医療、農業、行政、金融等で、インフラ関連は45%。インフラ関連も発注額は小さく、大きなリスクを冒してまで入札に参加する性格のものではない。しかも、世銀やADBのインフラ融資対象はかなり限定。水力発電用ダム建設、原子力発電、都市鉄道、空港が敬遠されるなど「えり好み」がある。AIIBが狙うのは基幹インフラ。資金調達には従来型の債券発行に加え、インフラ投資ファンドも検討。案件の発注規模は格段に大きくなる
④AIIBには審査能力が期待できないから、不良案件に融資が振り向けられ、出資金が毀損する恐れ→世銀やADBは環境や土地収用について厳格な基準の順守を求める「セーフガード条項」があり、融資相手国には時間や費用面で大きな負担。AIIBは、迅速審査を表明、セーフガード条項の適用も大幅に緩めるだろう。審査能力は有能なスタッフをどれだけ確保できるかにかかっている
⑤日本が参加しなければ、AIIBの発行する債券は最上格の格付を獲得できないため、中国側は日本に参加を求める→多国間援助機関が発行する債券の格付は、出資国の構成も重要だが、それ以上に、財務管理の厳格性や優先弁済権が確保されているかどうかが重視。融資案件に対する借入国の国家補償があるか否かが重要。アフリカ開発銀行ですら、国家補償が確保されているためAAAの格付。日本の格付は中国より低いので、日本が参加してもAIIBの格付が大きく上がる訳ではない
・AIIBは世銀やADBと同様に協同組合に類似した組織なので、少額出資でも構わないから、とにかく参加しておくことが重要。政治・外交問題としてではなく、経済問題として捉えるべき

ODAの焦げ付きが2兆円超にも達しているのには驚いた。見苦しい「負け惜しみ論」ではなく、塚田俊三氏のような事実に基づく冷静な議論がもっと盛り上がってほしいものだ。
タグ:AIIB問題 自民党 参加は「慎重に」対応してほしいと要望 政府の姿勢はより後ろ向きに 負け惜しみ AIIBをバカにしている場合か 「ODA」日本も焦げ付き2兆円超 安倍首相 今後5年間で約13兆円を投じる アジア向けのインフラ投融資 、「『安かろう、悪かろう』はいらない 安物買いの銭失い AIIBをコキおろした ADB 高飛車な態度 融資の基準を“緩和” 何を今さら 天木直人 日本は“日本の原則”で戦うべき 安倍首相は中国に喧嘩を売るだけ 我が国の債務救済措置 債権放棄した金額は、過去10年間で2兆円を超える 塚田俊三 日本企業の受注機会を逃すな AIIB参加慎重論への5つの反論 受注企業の選定は借入国主導 鉄道や空港、発電、橋梁等の分野では日本企業にも勝算 受注率は0.5% 両機関の融資対象が日本企業の得意分野ではないため えり好み 基幹インフラ インフラ投資ファンド 厳格な基準の順守 セーフガード条項 融資相手国には時間や費用面で大きな負担 審査能力は有能なスタッフをどれだけ確保できるか 多国間援助機関が発行する債券の格付 財務管理の厳格性や優先弁済権が確保されているかどうかが重視 借入国の国家補償 アフリカ開発銀行 aaa 日本が参加してもAIIBの格付が大きく上がる訳ではない 協同組合に類似した組織 参加しておくことが重要 政治・外交問題としてではなく、経済問題として捉えるべき
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