SSブログ

TPP問題(その3)TPAをめぐる不可思議なマスコミ報道 [外交]

TPP問題については、本ブログの4月21日、5月17日で取上げた。その後、米議会でTPA法(大統領貿易促進権限法)が通過、今後は大統領の権限が強まり、TPP交渉が促進されるとの報道が圧倒的である。そこで、今日はこの問題を(その3)として、特にTPAをめぐる不可思議なマスコミ報道を中心に取上げたい。

まず、選択7月号の「TPP「エゴ丸出し」米議会の策謀 安倍「米国追従路線」が陥る罠」のポイントを紹介しよう。
・「TPA」を正しく伝えぬメディア。TPAは従来は「貿易促進権限法」、今回のは「貿易優先事項説明責任法」で議会の影響力を強く温存。上下両院のどちらかが、議会側要望が守られてないと判断した場合、一旦与えた権限を取上げることができる
・「米国の雇用は失いたくないが、貿易相手国の市場は限りなく開放して欲しい」という米議会の身勝手な要求を反映した交渉姿勢がより強くなる
・ロビー活動に利用された「イルカ漁」。TPP反対論者が多い米議会民主党の環境保護派の説得材料に「イルカ漁」が使われた可能性
・安倍首相は、米議会演説で「TPPは単なる経済的利益を超えた長期的な安全保障上の大きな意義があることを忘れてはなりません」と、経済協議と安全保障を絡めた発言したが、米議員たちはこれに驚く。貿易交渉で日本は最終的には譲歩するだろうとのシグナルとして解釈可能

次に、TPAについて、より詳しく説明しているActs for Democracyの4月24日付け「2015年TPA法案をめぐる問題―日本政府は「法案提出」に騙され、いかなる交渉も進めてはならない―」の該当部分のポイントを紹介したい。
・本来TPAとは「Trade Promotion Authority」つまり「貿易促進権限」といわれ、2002年のTPA法案はまさに「Bipartisan Trade Promotion Authority Act of 2002」(2002年超党派貿易促進権限法)という名称であった
・だが2014年のTPA法案提出の際には「Trade Priorities Act=貿易の優先事項に関する法律」という名称で出された。頭文字だけをとった略称では同じTPAだが、大統領に貿易促進権限を与えるという意味あいよりも、議会から見た「優先順位」を定める法律の要素が強い
・そして今回出された新TPA法案の名称には2014年法案にさらに「Accountability=説明責任」という言葉が加えられている。つまり新TPA法案は、大統領に全権を与える法律ではなく、①貿易交渉における米国にとっての優先順位を議会が規定し、②政府に対して国会議員への情報公開を徹底させるための法律であり、この条件を守っている限りにおいて、大統領に一定の権限を与えるというものだ
・2014年法案の時点から、略称にした場合に同じ「TPA」にする意図が込められていたわけだが、今回の新TPA法案でも同じ手法が使われている
・日本のメディアは2014年法案時点から「TPA=貿易促進権限」法案と表記。しかし根本に立ち返ると、今回の法案の正式名称は同じ「TPA法案」であっても、日本語表記をする場合には「貿易の優先事項と説明責任に関する法」案とするのが正しい
・単なる翻訳・文言の違いを指摘しているのではない。大統領への「貿易促進権限法案」と、議会の側から提起される「貿易の優先事項と説明責任に関する」法案とでは、意味する本質と印象が大きく異なる。TPA法案をめぐる「作為」はまさにこのような部分に象徴されている(後半は省略)
http://uchidashoko.blogspot.jp/2015/04/2015tpa_24.html

第三に、元外務省高官の天木直人氏が6月25日付けブログで主張した「米貿易権限法成立は安倍政権の追い風にはならない」のポイントを紹介しよう。
・米民主党議員の一部が賛成に転じて成立させたということは、とりもなおさずTPP交渉における米国の利益追及がさらに強まる
・他国は、自らの譲歩から目をそらせるためにも、経済規模が最も大きい日本の譲歩に焦点を当て、TPP交渉の遅れを日本のせいにするだろう。日本への譲歩圧力が格段に強まることになる。米国議会のTPA可決は、決して安倍政権に追い風とはならない
http://new-party-9.net/archives/1989

なお、天木直人氏はTPA問題には触れていないが、選択やActs for Democracyの主張が正しいとすれば、大統領の権限が強まったのではなく、議会の権限・圧力が強まったことになり、日本は極めて不利な状況に立たされることになった。日本のメディアがこうした問題を無視して、昔のTPAを前提にした能天気な報道に終始するのは、官邸や外務省等の意向を忖度したためかはわからないが、いずれにしろ不可思議で残念なことだ。野党もしっかりしてもらいたい。
タグ:米議会 TPA法 TPP問題 大統領貿易促進権限法 通過 大統領の権限が強まり TPP交渉が促進 TPAをめぐる不可思議なマスコミ報道 選択7月号 TPP「エゴ丸出し」米議会の策謀 安倍「米国追従路線」が陥る罠 従来は「貿易促進権限法」 今回のは「貿易優先事項説明責任法」 議会の影響力を強く温存 米国の雇用は失いたくないが、貿易相手国の市場は限りなく開放して欲しい 米議会の身勝手な要求 反映した交渉姿勢がより強くなる 民主党の環境保護派の説得材料 「イルカ漁」が使われた可能性 安倍首相米議会演説 TPPは単なる経済的利益を超えた長期的な安全保障上の大きな意義 経済協議と安全保障を絡めた発言 米議員たちはこれに驚く 日本は最終的には譲歩するだろうとのシグナル Acts for Democracy 2015年TPA法案をめぐる問題―日本政府は「法案提出」に騙され、いかなる交渉も進めてはならない― 2002年のTPA法案 貿易促進権限法 2014年のTPA法案 Trade Priorities Act 貿易の優先事項に関する法律 新TPA法案 「Accountability=説明責任」という言葉が加えられている 優先順位を議会が規定 政府に対して国会議員への情報公開を徹底させる 日本のメディア 「貿易の優先事項と説明責任に関する」法案 意味する本質と印象が大きく異なる 天木直人 米貿易権限法成立は安倍政権の追い風にはならない 民主党議員の一部が賛成に転じて成立させたということは TPP交渉における米国の利益追及がさらに強まる 日本への譲歩圧力が格段に強まることになる 米国議会のTPA可決は、決して安倍政権に追い風とはならない 日本は極めて不利な状況
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0