SSブログ

バター不足問題 [経済政策]

今日はちょっと趣向を変えて、バター不足問題を取上げよう。

5月28日付けの日経新聞は「バター1万トン追加輸入 農水省が発表 10月末までに」を伝えた。ただ、バター不足問題は今回だけの話ではなく、近年は何回となく繰り返される問題である。
3月4日付けで公表されている農水省の「バター不足に関するQ&A」を見ても、通り一遍でさっぱり理解できない。しかも、内容はその後も更新されておらず、無責任の極みである。

そこで、農業ジャーナリストの浅川芳裕氏が解説する1月24日付けのHARBOR BUSINESS Online「バター不足の元凶。農水省バターマフィアのセコ過ぎる利権構造とは?」のポイントを紹介しよう。
・「常日頃から国産、外国産を問わず、仕入れルートや商品ラインナップを多様化して消費者ニーズに応えることで、小売り・食品業界は成り立っている。それが先進国における豊かな消費生活の前提」
・それを阻害しているのが農水省の天下り団体「農畜産業振興機構」によるバター輸入業務の独占
・輸入バターには特殊な関税割当制度が適用されていて、一定の輸入量までは一次税率(関税35%)が課せられ、その枠を超えると二次税率(関税29.8%+1kgあたり179円)が課せられる。ただし、一次税率の対象は600トンと極めて限られた数量で、これは機構が国際航空会社や国際物産展にあらかじめ割り当てるので、普通に輸入しようと思えば、より高率な二次税率を払わなければならない
・さらに、輸入業者はわざわざ機構にバターを買い入れてもらい、農水大臣が定めた1kgあたり最大806円の輸入差益(マークアップ)なるものを上乗せされた価格で買い戻さないといけないという、不可思議な制度
・例えば、国際価格500円のバターを1kg輸入したとする。まず関税29.8%プラス179円が課せられる。そこに輸入差益806円を上乗せすると1634円と輸入価格の3倍以上となり、流通業者や小売業者の儲けを乗せれば優に2000円を超える価格になってしまう。これほど高価格では、いくら農水省が緊急輸入しましたと言ったところで、せいぜいどうしても必要な業務用に回るくらいで、とても一般消費者にはとても手が出ない
・その上、機構は「輸入するバターの数量、時期について、国内の需給・価格動向などを勘案して決定」できる権限を握っているので、仮に民間業者が多少高くてもいいから輸入しようとしても、自由に輸入できないのだ。輸入できるのは機構が実施する入札時だけで、しかも一定の条件をクリアした指定輸入業者しか入札に参加できない
・「例えば、多様なバターが自由に生産・調達できないため、諸外国と比較して日本ではマーガリンのシェアが異常に高くなっている。つまり、その原料となる米国トウモロコシ農家を安定して潤わせる政策であり、国内の酪農保護とはむしろ正反対の結果を生んでいるという側面がある」
・「農畜産業振興機構」の仕事といえば、書類を右から左に流すだけ。それだけで巨額の収益を得ていることになる。農水省によれば24年度のバター輸入量は4千トンで、農畜産業振興機構に入った輸入差益は約23億円、緊急輸入が行われた昨年は1万3000トンだから、その約3倍の“儲け” があった。輸入差益は酪農家への助成に使われるとされるものの、農畜産業振興機構の15人の役員の大半は農水省OB及び出向者で、理事長の報酬は1672万3千円、一般職員の平均年収も665万円と、国家公務員平均を上回る高給を得ている(平成25年度)。農水省にとっては、実においしい利権に
・「この団体設立の大義名分は酪農家保護ですが、実際には消費者、バター関連業者、さらには酪農家にも厄災をもたらす厄介者。百歩譲って本当に農水省がバターの国家貿易が必要だと信じているなら、農水省本体がやればいいこと。なぜ民間開放の流れにかこつけて独立行政法人に仕事を回すのか。いずれその天下り団体で自分たちが高給を得るためなのです」
・農水省は酪農業の保護を謳って行う偏った補助金制度や輸入制限によってバター不足を生じさせている割には、現実には生乳生産量や酪農家の戸数は年々減少している。にもかかわらず、それを理由にバターが足りませんというのはあまりに矛盾してはいないか。その一方で、自分たちの生活の安泰だけは頑なに守ろうとする。そのツケが消費者に回ってくるのではたまったものではない
・ 「解決策は実にシンプルです。輸入利権を廃止し、バター輸入を自由化するだけなんですから」
http://hbol.jp/15641

「管理貿易」を続けたいのであれば、品不足を生じさせないよう、もっと円滑な運営も不可能ではない筈だが、農水省や農畜産業振興機構の運営は「お粗末」の一言に尽きる。上記の浅川芳裕氏の指摘にはないが、酪農家保護の名目以外にも、乳製品メーカー保護の目的も隠されている可能性もあるのではなかろうか。本来は現在の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を機にこうした不合理な仕組みを変えるべきと思うが、現実には現在の仕組みは何らかの形で温存されてしまう可能性が残念ながら高そうだ。マスコミも記者クラブの制約にとらわれず、もっと国民の立場に立って批判的に報道してもらいたいものだ。
タグ:バター不足問題 バター不足の元凶。農水省バターマフィアのセコ過ぎる利権構造とは? 先進国における豊かな消費生活 バター不足に関するQ&A HARBOR BUSINESS Online 浅川芳裕 農水省 バター1万トン追加輸入 農水省が発表 10月末までに 日経新聞 阻害しているのが農水省の天下り団体「農畜産業振興機構」によるバター輸入業務の独占 輸入バター 特殊な関税割当制度 一定の輸入量までは一次税率(関税35%) その枠を超えると二次税率(関税29.8%+1kgあたり179円) 一次税率の対象は600トンと極めて限られた数量 国際航空会社や国際物産展にあらかじめ割り当てる 普通に輸入 より高率な二次税率 輸入業者 機構にバターを買い入れてもらい 輸入差益(マークアップ)なるものを上乗せされた価格で買い戻さないといけない 不可思議な制度 機構は「輸入するバターの数量、時期について、国内の需給・価格動向などを勘案して決定」できる権限 民間業者が多少高くてもいいから輸入しようとしても、自由に輸入できない マーガリンのシェアが異常に高くなっている 米国トウモロコシ農家を安定して潤わせる政策 国内の酪農保護とはむしろ正反対の結果 農畜産業振興機構 24年度 輸入差益は約23億円 昨年は その約3倍の“儲け” 酪農家への助成 15人の役員の大半は農水省OB及び出向者 農水省にとっては、実においしい利権 独立行政法人に仕事を回すのか 天下り団体で自分たちが高給を得るため 生乳生産量や酪農家の戸数は年々減少 それを理由にバターが足りませんというのはあまりに矛盾 ツケが消費者に回ってくる 解決策 輸入利権を廃止し、バター輸入を自由化 「管理貿易」を続けたいのであれば もっと円滑な運営も不可能ではない筈 乳製品メーカー保護の目的 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0