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鬼怒川堤防決壊問題 [社会]

今日は鬼怒川堤防決壊問題を取上げよう。

先ずは、9月17日付けダイヤモンド・オンライン「常総市役所の衝撃!自治体の新築庁舎は本当に頼れる防災拠点か?」のポイントを紹介したい(▽は小見出し)。
▽常総市の市庁舎浸水・孤立の衝撃
・全長177kmの鬼怒川の名の由来には諸説ありますが、もともと絹川・衣川だったのが、鬼怒川となった、というものも。今回の大規模かつ破壊的な水害を見ると、思わず頷いてしまいます。鬼怒川の堤防を越えた水流は瞬時に堤防を決壊させ、常総市の4分の1を覆い、住民数名を死亡・一時行方不明に追い込みました
・しかし今回、全国の自治体職員を驚かせたのは、その洪水の中で「防災拠点」としての機能を完全に失った常総市庁舎の姿でした。9月10日の夜、待機・活動していた市役所職員400名、避難してきた市民400名、自衛隊員・消防員・報道陣ら200名の計1000人を集めた市庁舎は、あえなくその自身のライフラインや通信・交通機能を喪失し、市の災害対策本部ごと孤立してしまいました
▽「防災=耐震」だった常総市役所
・常総市庁舎は2014年11月末に竣工した、全国でも最新鋭の庁舎のひとつのハズでした。特色を1つ挙げるとすれば「防災=耐震」であったということでしょう
・東日本大震災で震度6弱の揺れを観測した常総市では、市役所本庁の旧館が大きな被害を受けました。築後50年を越えていた旧館は、危険建物だということで使用禁止となり、多くの行政課が、新館や敷地内のプレハブ、近隣の公民館などに移転させられました。 直後に立ち上げられた「庁舎建設検討会」は、市役所の執行部や市議などをメンバーとし、T設計事務所の支援のもと、議論を重ねていきました。もちろん「災害対応機能」はその主要な検討ポイントであり、多くの時間が割かれました
・しかし、「災害=地震」であり、鬼怒川による「洪水」は、なぜかノーマークでした。「常総市洪水ハザードマップ」で、その危険は自らが既に市民に対し発信していたというのに
・市長は被災から4日後の14日、「(堤防が壊れる)『決壊』は想定していなかった。(洪水が起きても水が溢れるだけの)『越水』の想定だった」と語っています。大量に越水すれば、その水が堤防を駆け下るときに周囲を削り取って、堤防を破壊する(=越水破堤)ことは、東日本大震災のときの大きな教訓だったというのに
・それほどまでに洪水という災害は過小評価されていました。「鬼怒」川のほとりで
・でも問題はこれからです。この常総市での悲劇や失敗を、次への学び・防災・減災につなげられるか、が勝負なのです
▽想定外の災害にどう備えるのか。ハードよりソフト
・これからの100年、気象学の専門家が指摘するのは、「スーパー台風」などによる水害の激化です。豪雨や高潮による被害が、頻発するようになるだろう、ということです
・横浜市の新市庁舎(2020年1月竣工予定)は基本構想の中でこう謳っています。・浸水可能性はある。南海トラフ巨大地震による最大1.2m程度(のみ) ・電気・機械室や危機管理センター・非常用電源は、市庁舎の中層部に配置 ・設備システムの系統を浸水深以上の階と以下の階で分離し、システム全体の機能停止を防止
・きっとハード面ではこういった話なのでしょう。でもいくらハードにお金をかけようと、先般の社会保険業務センターでの情報漏洩事件に見られるように、ソフト面がいい加減ならこれも穴だらけの長城と化すでしょう
・全国自治体の職員のみなさん、浸水時間の想定は大丈夫でしょうか?常総市では平地に広く浸水したために排水効率が悪く、想定外に時間がかかっています。頼みの排水路も土砂や瓦礫で埋まって使い物になりませんでした
・設備システム系統の分離はされていますか? さすがに「1階の冠水テスト」などはやれないでしょう。分離したはずが、どこかでつながったり、同じ電源を頼りにしたりはしていませんか
・1階にダイジなものは置いてありませんか?電気・機械室などを中層階に上げたとしても、ダイジな書類やデータや鍵やハンコの類が実は1階に置いてあったら台無しです。特に鍵は要注意。パスワード類も同じです。いざというとき本人がいないとシステムが動かないでは洒落になりません
・実行可能な対応マニュアルになっていますか?ソフト面を充実させすぎて、原子力発電所の危機対応マニュアルみたいになってしまったら、実行自体が怪しくなります
▽合併特例債による市庁舎改築ラッシュの果てに
・ここ数年、全国で雨後のタケノコのように自治体の新庁舎がつくられています。いわゆる「合併特例債」の威力です。政府は市町村合併の促進剤として「新庁舎建設には平方メートルあたり22万円分まで、政府がその約70%を負担する」というアメをばらまきました。老朽化した庁舎を抱えた多くの自治体がこれに飛びつきました
・期間限定のハズだったこの合併特例債は、その後要件が緩和された(建設単価平方メートルあたり40万円までOK)上で、震災後の「国土強靱化」に乗って期間も延長されました。「これは得だ」と財務基盤の弱い中小自治体が新庁舎建設へと動きました
・実質的な自治体負担額が激減したせいか、人口10万人以下の市での、大盤振る舞いが目立ちます。 そしてその建設基本計画で謳っていることは、いずこも同じ。「(1)市民に開かれた市庁舎」「(2)ホスピタリティとユニバーサルデザイン」「(3)環境に優しい」「(4)長期使い続けられる」、そして「(5)防災・危機管理拠点」です
・(1)と(5)が合わさって、市庁舎はたいてい「災害時の避難場所」にもなっています。1階に広いロビーや食堂を配置し、いざとなればそれらが市民の避難場所となる訳です。一石二鳥のデザイン!  あれ、本当にそれでいいのでしょうか?洪水時には浸水しかねない1階に「ダイジな命」を大量に抱えてしまっていいのでしょうか
▽自治体庁舎は本当に「防災拠点」たるべきなのか?
・自治体庁舎はアクセスの利便性や建て替え時の用地取得問題があって、簡単に「高台移転」とはいきません。存外、危険な場所にあるのです。そしてそこにすべての機能を詰め込もうとするのも、合理的ではありません。 それが今回の常総市庁舎浸水・孤立から学ぶべき最大の教訓ではないでしょうか
・ようやく孤立が解消された数日後、疲れた顔をした男性がテレビの取材に答えて曰く、「安心だと思って早めに市庁舎に来た。浸水する可能性があるならそう言ってほしかった。逃げる時間は十分にあったのに」  洪水時の避難場所から市庁舎はそもそも外すべきでした。市民が避難してきても、より適切な場所に誘導すべきでした。嵐の中で、あろうとも……
・そして「災害対策本部」として機能させたいなら、洪水に負けないインフラを整え、オペレーションするべきでした
・こういった教訓は、他山の石として他の自治体や住民が、活かさなければ意味がありません。折角つくったその新庁舎を、活かすも殺すも自治体職員と住民たち次第なのです
http://diamond.jp/articles/-/78631

次に、元三菱総合研究所理事の高橋乗宣氏が、9月18日付け日刊ゲンダイに寄稿した「国民の不安は「外敵」より「自然」の驚異」のポイントを紹介しよう。
・茨城・常総市の高杉徹市長が、非難の集中砲火を浴びている。鬼怒川の堤防決壊で甚大な被害を受けた地域に、前もって避難指示を出さなかったためだ。しかも、住民から「水位が上昇している」との通報があった地域にだけ避難指示を出し、決壊箇所に最も近い危険地域には「逃げろ!」と呼びかけなかったとは、オソマツな話だ
・気象庁は集中豪雨のたび、「危険だから河川には近づくな」とアナウンスする。堤防が決壊するほど危険な状況にさらされながら、自治体に「水位」を通報する余裕のあった住民がどれだけいたのか。災害の避難指示が住民の通報に頼り切っているのなら、あまりにも脆弱すぎる。これが地方行政の現状だとしたら、政府は直ちに根本から見直すべきだ。「地方創生」をうんぬんする前に、地方の人々が安心して暮らせる体制づくりを第一に考えた方がいい
・昨年8月の広島市の土砂災害でも、土砂崩れ発生後に「避難勧告」が出されるなど、自治体の後手に回った対応が批判を浴びた。思えば広島の土砂崩れも鬼怒川の堤防決壊も同じ「線状降水帯」がもたらした記録的な豪雨が原因だ。たった1年前に75人もの犠牲者を出しながら、国も地方も自然の脅威から何ら教訓を得ていないかのような対応には、改めて嘆息するほかない
・温暖化した地球上では、かつてはほとんど耳にしなかった線状降水帯なるものが、しばしば来襲するに違いない。治水の専門家によると、今回の常総市の堤防のように、長雨による越水が懸念される場所は無数にあるそうだ
・そのひとつが、東京・足立区と葛飾区の境界に架かる「京成本線荒川橋梁」付近だ。鉄道橋が本来の堤防よりも低い位置を通っており、3日間で降水量550ミリ超の雨が荒川上流域で降り注げば、決壊する恐れがあるという。荒川が氾濫すれば都心は一面水浸しだ。経済活動は完全にマヒし、この国に壊滅的ダメージを与えかねない
・3・11以降、異常気象と自然災害の甚大な被害が相次ぎ、今や国民の「自然の脅威」に対する不安はピークに達している。安保関連法案の意義について、安倍首相は「国民の生命と安全、生活を守る」と繰り返してきたが、現在の国際情勢を鑑みても、日本にとって“外敵の脅威”が喫緊の課題とは思えない。この国を取り巻く気象環境こそ、むしろ差し迫った脅威と言えよう
・首相が本気で国民の安全を思うのなら、「海外との戦い」に意欲を燃やす前に、「自然との闘い」に立ち向かうべきだ
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/164147/1

ハザードマップでは危険とされる地域に建てた最新鋭の常総市庁舎が、「防災拠点」として1000名が集まったのに、浸水して孤立してしまった事実は、もう「マンガ」としか言いようがない。日本の組織が抱える「形式主義」、「硬直的対応」、「ハード重視」などといったの欠陥を如実に示している。
高橋氏が指摘する「たった1年前に75人もの犠牲者を出しながら、国も地方も自然の脅威から何ら教訓を得ていないかのような対応には、改めて嘆息するほかない」、「「海外との戦い」に意欲を燃やす前に、「自然との闘い」に立ち向かうべきだ」は至言である。
明日から毎週金曜日は更新を休むつもりなので、土曜日をお楽しみに。
タグ:気象庁 高橋乗宣 日刊ゲンダイ 避難指示 ダイヤモンド・オンライン スーパー台風 越水破堤 鬼怒川堤防決壊問題 常総市役所の衝撃!自治体の新築庁舎は本当に頼れる防災拠点か? 「防災拠点」としての機能を完全に失った常総市庁舎の姿 1000人を集めた市庁舎 市の災害対策本部ごと孤立 最新鋭の庁舎 災害対応機能 鬼怒川による「洪水」は、なぜかノーマーク 常総市洪水ハザードマップ 危険は自らが既に市民に対し発信 東日本大震災のときの大きな教訓 洪水という災害は過小評価 ハードよりソフト 水害の激化 ソフト面がいい加減ならこれも穴だらけの長城と化す 浸水時間の想定 設備システム系統の分離 実行可能な対応マニュアル 合併特例債 市庁舎改築ラッシュの果て 自治体庁舎はアクセスの利便性や建て替え時の用地取得問題 存外、危険な場所にある すべての機能を詰め込もうとする 国民の不安は「外敵」より「自然」の驚異 高杉徹市長 非難の集中砲火 住民の通報に頼り切っているのなら、あまりにも脆弱すぎる 広島市の土砂災害 土砂崩れ発生後に「避難勧告」 自治体の後手に回った対応が批判 広島の土砂崩れも鬼怒川の堤防決壊も同じ「線状降水帯」がもたらした記録的な豪雨が原因 1年前に75人もの犠牲者 国も地方も自然の脅威から何ら教訓を得ていないかのような対応 長雨による越水が懸念される場所は無数にあるそうだ 京成本線荒川橋梁 都心は一面水浸し この国に壊滅的ダメージ この国を取り巻く気象環境こそ、むしろ差し迫った脅威 、「海外との戦い」に意欲を燃やす前に 、「自然との闘い」に立ち向かうべきだ
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